JP3613961B2 - 炭化ケイ素繊維の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭化ケイ素繊維の製造方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、炭素供給源として活性炭素繊維を用い、かつケイ素供給源としてケイ素及びケイ素酸化物から選ばれた1種以上の粉体を用いて、直接炭化ケイ素繊維を製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強度の高い炭化ケイ素繊維を製造する簡便な方法としては、多孔質炭素繊維と一酸化ケイ素(SiO)ガスとを、温度800〜2000℃で反応させる方法が、特開平6−192917号公報に開示されている。
又、特開平7−97281号公報には、比表面積が100〜3000m2 /gの多孔質炭素繊維からなるシート状又はその他の三次元構造体例えばハニカム構造体に、一酸化ケイ素ガスを800〜2000℃の温度で反応させることにより、シート状、又はその他の三次元構造体をなす炭化珪素材料を得る方法が開示されている。
これらの方法により、いずれも耐熱性や強度に優れた炭化ケイ素繊維もしくはそれからなる構造体を簡便に製造することが可能であるが、しかし、この方法には、ケイ化反応を効率よく進めるためには、減圧下で反応を行う必要があり、このため製造設備が複雑であって、生産効率を実用上十分に高い水準に上げることが困難であるという問題があった。
【0003】
特開平1−111800号公報には、炭化ケイ素ホイスカー(ウィスカー)の製造方法が開示されており、この方法においては炭素又は炭素前駆体と、それに均一に混合された極微粒子状二酸化ケイ素とから第1反応域を形成し(ただし、二酸化ケイ素と、炭素又はその前駆体中の炭素との重量比は約5:1以上である。)、また不融性炭素前駆体又は活性炭からなり、気孔率が70容量%以上で、線状の長さが200μ以上の多孔性物質からなる第2反応域を、前記第1反応域に緊密に隣接させて形成し、両方の反応域を、非酸化性雰囲気下において所定の反応温度(1200〜1700℃)に加熱して第一反応域で一酸化ケイ素を形成し、直ちにこの一酸化ケイ素を第2反応域に拡散させてこの第2反応域内で上記活性炭、又は上記炭素前駆体域中の炭素と前記一酸化ケイ素とを反応させて炭化ケイ素を形成し、このとき少なくとも一酸化ケイ素と炭素とが相互に反応する第2反応域付近に、連続的に利用可能なホイスカー形成触媒が新たに供給される。
【0004】
この方法は、極微粒子の二酸化ケイ素と炭素の混合物から一酸化ケイ素ガスを生成させ、次いで一酸化ケイ素を活性炭素が多孔質状に充填されている別の反応域に導入、通過させることによって鉄化合物のような触媒の存在下に活性炭素と反応させて炭素の表面にホイスカーを生成させる方法である。このホイスカーは、炭化ケイ素(SiC)から構成される結晶物質であるが、直径が0.5〜1μm、かつアスペクト比が20〜100の細長い微細小繊維状のものであるため、強度、弾性モジュラス、及び破断伸びは非常に高いものであるが、実用上、補強材としては、活性炭繊維を一酸化ケイ素ガスで炭化ケイ素化して得られる前記炭化ケイ素繊維にくらべると、あまり有効なものではない。ここでいうアスペクト比とは、長さを直径で除した値である。このように、ホイスカーは、炭素が一酸化ケイ素ガスの存在下に加熱された時に、炭素から生成される一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2 )、メタン(CH4 )等の炭素化合物が一酸化ケイ素と反応して炭素粒子の表面に生成、生長するものであって、これは活性炭素繊維と一酸化ケイ素との反応により炭素繊維自身が炭化ケイ素化されて生成される前記の炭化ケイ素繊維とは異なるものである。
【0005】
更に、活性炭素繊維と一酸化ケイ素ガスとの反応で炭化ケイ素繊維を製造する従来の方法では、ケイ素源と多孔質活性炭素繊維とを、別個に炉内に置き一酸化ケイ素ガスを発生させて、次いでこのガスを活性炭素繊維に接触反応させて炭化ケイ素化するものであるが、(1)一酸化ケイ素ガスは多孔質活性炭素繊維の表面から内部に浸透し、炭化ケイ素化の反応が進むため、多孔質炭素繊維の比表面積をできるだけ大きくしないと反応効率が高められないこと、(2)しかしながら反応温度を1800℃を超える高い温度にすると、比表面積を大きくしておいても、熱により多孔質の細孔が潰れて、反応時には比表面積が小さくなり、反応効率が低下すること、(3)反応雰囲気を減圧にしない場合、反応に必要な一酸化ケイ素ガス濃度を得ることが難しいので生産効率が極めて悪いこと、および(4)反応効率が悪いため、シート状体で特に嵩高いものや、その他の三次元構造体の多孔質活性炭素繊維材料の場合、炭化ケイ素化反応が均一に進行せず炭化ケイ素化されない部分が発生すること、などという問題点もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記の問題点に鑑み、強度が高く、耐熱性に優れた炭化ケイ素繊維を効率よく製造する方法について鋭意検討した。その結果、活性炭素繊維をガス化したケイ素(Si)及び/又はケイ素とケイ素酸化物(SiOx )と反応させるためには、予めこれらケイ素及び/又はケイ素酸化物のガスを生成させておき、これらのガスを活性炭素繊維と反応させる従来の方法よりも、活性炭素繊維と、ケイ素及び二酸化ケイ素の粉体とを予め混合しておき、この混合物を、炭素、ケイ素、ケイ素酸化物、及び炭化ケイ素と反応する物質を実質的に含まない雰囲気中において、加熱し、オンサイトにおいて、即ち活性炭素繊維の表面において前記ケイ素及び/又はケイ素酸化物のガスを発生させ、直ちにこのガスと活性炭素繊維とを反応させて炭素を炭化ケイ素化させることにより、前記の問題を解消し、比較的低い反応温度で良質の炭化ケイ素繊維を効率よく得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、炭素、ケイ素、ケイ素酸化物及び炭化ケイ素と反応する物質を実質的に含まない雰囲気中において、ケイ素及び/又はケイ素酸化物のガスの発生とこの発生ガスと活性炭素繊維又はそれから形成された構造体との反応とを、同時に行わせて、炭化ケイ素繊維を効率よく製造する方法を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の炭化ケイ素繊維の製造方法は、繊維径が1〜20μmで、BET窒素吸着法による比表面積が300〜2000m2 /gの活性炭素短繊維と、ケイ素及び二酸化ケイ素との混合モル比1:0.1〜1:2の混合物を含有するケイ素供給源粉体とを混合し、この混合物を1200〜1500℃の温度において、かつ前記温度において、炭素、ケイ素、ケイ素酸化物、及び炭化ケイ素と反応する物質を実質的に含まない雰囲気中において加熱して、前記活性炭素繊維を炭化ケイ素繊維に変換することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の方法において、前記加熱工程雰囲気中の酸素分圧、及び窒素分圧の合計値が103 Pa以下に制限されてもよい。
本発明の方法において、前記加熱工程が、不活性ガス流を、前記活性炭素短繊維と、前記ケイ素−二酸化ケイ素混合物との混合物中に通しながら行われてもよい。
上記本発明の方法において、前記不活性ガスが、アルゴン、ヘリウム、及びネオンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものであることが好ましい。
上記本発明の方法において、前記不活性ガス流が大気圧下にあってもよい。
上記本発明の方法において、前記加熱工程の雰囲気が103 Pa以下の減圧下にあってもよい。
上記本発明の方法の混合工程において、前記ケイ素供給源粉体の重量が、前記活性炭素繊維の重量の1.2〜20.0倍であることが好ましい。
上記本発明の方法において、前記活性炭素繊維と前記ケイ素供給源粉体との混合工程が、揮発性媒体、並びにバインダーの前記揮発性媒体中溶液及び分散液から選ばれた少なくとも1員の存在において行われてもよい。
上記本発明の方法において、前記活性炭素繊維が、シート、又は三次元構造体の形状をなしていてもよい。
上記本発明の方法において、前記シート、又は三次元構造体の形状をなしている活性炭素繊維物品と前記ケイ素供給源粉体とが、前記物品を前記粉体の前記揮発性媒体中分散液中に浸漬し、次に前記揮発性媒体を蒸発除去することによって混合されてもよい。
上記本発明の方法において、前記加熱工程が完了した後に、残留している未反応ケイ素供給源粉体を、得られた炭化ケイ素繊維から、アルカリ金属水酸化物の水溶液、及びフッ化水素酸を含む水溶液から選ばれた洗浄液による少なくとも1回の洗浄工程によって除去してもよい。
本発明方法において、前記ケイ素供給源粉体が、149μm以下の粒径を有する粒子からなる分画を、前記ケイ素供給源粉体の合計重量に対し90重量%以上の含有量で含み、かつ44μm以下の粒径を有する粒子からなる分画を、前記ケイ素供給源粉体の合計重量に対し、60重量%以下の含有量で含むものであることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、活性炭素短繊維と、ケイ素及び二酸化ケイ素との、混合モル比:1:0.1〜1:2の混合物を含むケイ素供給源粉体とを混合し、この混合物を1200〜1500℃の温度において、かつ前記温度において炭素、ケイ素、ケイ素酸化物及び炭化ケイ素と反応する物質を実質的に含まない雰囲気中において加熱して、それによって、前記活性炭素繊維の表面においてケイ素及びケイ素酸化物のガスを発生させ、これらのガスと前記活性炭素繊維との間で直ちに炭化ケイ素化反応を行わせることに特徴がある。
本発明に用いられる活性炭素繊維には、繊維径が1〜20μmで、BET窒素吸着法による比表面積が300〜2000m2 /gであって、好ましくは長さが0.1〜50mmの短繊維、および実質的に長さの制限がない連続繊維(フィラメント、ヤーン等)を包含し、これらは紡績糸、モノフィラメント糸、マルチフィラメント糸などのいずれであってもよい。又、本発明に用いられる活性炭素繊維は、シート状体(フェルト、布など)或いはその他の三次元構造体(ハニカム、パイプ、三次元織物等)に形成されていてもよい。
【0010】
本発明に好適な活性炭素繊維の、BET窒素吸着法により測定した比表面積は、300〜2000m2 /g、好ましくは500〜1500m2 /gの範囲内にある。
比表面積が300m2 /g未満では、炭化ケイ素化反応工程において十分にケイ素化反応が進行せず、得られる繊維中に未反応の炭素が残存するため、結果として炭化ケイ素繊維の特徴を十分に発現しうる製品が得られない。又、比表面積が2000m2 /gを超えて大きい場合は、活性炭素化(賦活)工程における活性炭素繊維の収率が低いということであり、これは不経済であるばかりではなく、活性炭素繊維としての強度が不足し、その結果、得られる炭化ケイ素化された繊維の強度も不十分になる。
【0011】
前記の特性を有する本発明方法用活性炭素繊維は、公知の方法により製造される。有機物質からなるプレカーサー繊維を活性炭素化する方法については、例えば、特公昭58−20883号公報に、アクリロニトリル系繊維を酸化性雰囲気中200〜300℃の温度において、収縮率が自由収縮率の50〜90%となるように張力を加えながら、この繊維を、その飽和酸素結合量の80重量%以上まで酸化処理し、次いでこれに水蒸気雰囲気中で活性化処理を施すことにより、活性炭素繊維を製造する方法が開示されており、この方法を本発明のための活性炭素繊維の製造に用いることもできる。
【0012】
特開平6−306710号公報には、化石燃料から得られるピッチを原料とする活性炭素繊維について記載されており、この活性炭素繊維は、芳香族炭素比率が0.6以上で、分子量が200〜450、軟化点が200℃以下の芳香族重質油又はピッチを溶融紡糸した後、得られた繊維を酸触媒の存在下においてニトロ化試薬により液相ニトロ化し、次いでこれを不融化し、賦活処理することを含む活性炭素繊維製造方法により製造される。
特に、活性炭素繊維の短繊維を得ようとする場合は、予め所望の長さに紡糸された、或いは所望の長さに切断された前記プレカーサー繊維を活性炭素化するか、もしくはプレカーサー長繊維を活性炭素化した後にこれを短繊維化すればよい。
【0013】
本発明に好適な活性炭素繊維は、前記のように、1〜20μm、好ましくは5〜15μmの範囲内の繊維径を有するものである。繊維径が1μmより小さいと、ハンドリングが困難になり、また繊維径が20μmを超えて大きくなると、一酸化ケイ素との反応を均一に行わせることが難しくなる。
活性炭素繊維として短繊維を用いる場合、好適な繊維長は0.1〜50mmであり、より好ましくは1〜30mmである。繊維長が0.1mmより小さいと、反応後に繊維と粉体とを物理的な方法により分離することが難しくなることがある。また繊維長が50mmを超えて大きくなると、繊維とケイ素やケイ素酸化物の粉体との均一な混合が困難となる。また、このような繊維から乾式或いは湿式法によりシート形成を行う際に、得られるシートの地合が悪くなったり、取扱いが困難になり、シート化がうまく行えないなどの不都合を生ずることがある。
【0014】
活性炭素繊維を予めシート状構造体(シート、ウェブ等)の形状に形成するには、例えば特開平2−255516号公報に開示されているように、ピッチを溶融紡糸して連続(長)繊維とする工程と、この繊維を捕集、堆積させてウェブとする工程と、このシート状繊維集合体を不融化する工程と、不融化したシートを賦活する工程とを連続して行うピッチ系活性炭素繊維の製造方法を用いることができる。
又、炭素繊維用プレカーサー繊維や炭素繊維を、乾式又は湿式によりフェルト状シートに形成し、これを活性炭素繊維化したもの、或いは、活性炭素繊維のステープルを上記と同様にしてシート化したものを本発明方法の出発原料として用いることもできる。更に、炭素繊維用プレカーサー繊維又は炭素繊維の長繊維もしくは紡績糸から織物を製造し、この織布を活性炭素化したもの、或いは活性炭素繊維の長繊維からなる織布等を本発明方法の出発原料として用いることができる。
一方、活性炭素繊維からなる三次元構造体は、前記のフェルトや布のような構造体をコルゲート加工して巻いたもの、或いはハニカム状に加工したもの等を包含する。
【0016】
前記ケイ素及び二酸化ケイ素酸化物混合粉末を活性炭素繊維と混合して1200〜1500℃に加熱すると、ケイ素(Si)及びケイ素酸化物(SiOx )のガスが発生し、これらが活性炭素繊維と反応して活性炭素繊維が炭化ケイ素繊維に変換される。
ケイ素粉体に二酸化ケイ素粉体を混合して使用すると、効率的にケイ素及びケイ素酸化物(SiOx )のガスの発生が促進される。その場合のケイ素と二酸化ケイ素のモル比は1:0.1〜1:2であり、好ましくは1:0.5〜1:1.5の範囲である。ケイ素に対する二酸化ケイ素のモル比が0.1未満では、ケイ素ガスに対する活性化効果が不十分になり、また前記モル比が2を超えると、前記活性化の効果は飽和して、経済的に不利になる。
【0017】
活性炭素繊維として繊維長が0.1〜50mmの短繊維を用いる場合、前記ケイ素化ガスを生成するために用いる前記粉体粒子の大きさは100メッシュ(目開き149μm)のふるいを通過する分画(粒径が149μm以下の粒子分画)が90重量%以上で、かつ325メッシュ(目開き44μm)を通過する分画が(粒径が44μm以下の粒子分画)60重量%以下であることが好ましい。前記粉体粒子の100メッシュのふるいを通過する分画が90重量%未満のものは、ケイ素と二酸化ケイ素の混合物において、ケイ素と二酸化ケイ素の粒子同士が接触する機会が少なくなり、このために加熱時にケイ素及び/又はケイ素の酸化物のガスを発生する反応が起き難くなることがある。又、炭化ケイ素化反応後に短繊維と前記粉体を分離する操作を行う場合、繊維と粉体の分離の容易さがやや低下することがある。
一方、325メッシュのふるいを通過する分画が60重量%を超えると、炭化ケイ素化反応時に、前記ケイ素及び二酸化ケイ素のガスを発生するため粉体粒子同士が結合して塊状となることがあり、また、反応後に炭化ケイ素繊維と粉体とを分離する工程において、繊維と粉体の分離の容易さがやや低下することがある。
【0018】
活性炭素繊維を予めシート状構造体、例えばフェルトに形成して用いる場合、好適なケイ素及び二酸化ケイ素のガスを生成するための前記粉体粒子の大きさは、325メッシュ(目開き44μm)を通過する分画が90重量%以上であることが好ましい。325メッシュのふるいを通過する分画が90%未満では、フェルト中の活性炭素繊維と粉体粒子とが均一に、かつ十分に接触できずこのため、炭化ケイ素化反応が均一に行われないことがある。
本発明方法により炭化ケイ素繊維のシート状或いはその他の三次元構造体を作製する場合、ケイ素及び二酸化ケイ素のガスを発生させるため用いるガス発生源としては、固体状の二酸化ケイ素を、100メッシュのふるいを通過する分画が90重量%以上で、325メッシュを通過しない分画が60重量%以下となるように粉砕したものを用いることが好ましい。
【0019】
ケイ素及び二酸化ケイ素含有粉体の使用量は、活性炭素繊維の乾燥重量の1.2〜20倍であることが好ましく、より好ましくは1.5〜10倍である。ケイ素及び二酸化ケイ素含有粉末の添加量が1.2倍未満では、活性炭素繊維の炭化ケイ素化反応が十分進行しないことがあり、従って、好ましい性質を備えた炭化ケイ素繊維が得られないことがある。又、その添加量が20倍を超える多量で用いられると、反応に関与しない粉末を多量に使用することになり不経済である。
【0020】
本発明方法では、活性炭素繊維と、加熱によってケイ素及び二酸化ケイ素のガスを発生する無機粉体粒子とを混合して用いるが、これらを混合する方法は、活性炭素繊維が短繊維である場合、ケンミックスミキサー(愛工舎社製)のような混合撹拌機、ドラムミキサー(例えば、カヤバ工業社製)、リボン型混合機(例えば、徳寿工作所製)等を用いる方法を挙げることができ、これらの中から適宜選択して用いられる。
上記混合操作において重要なことは、混合が均一に行われることもさることながら、活性炭素繊維が過度の機械力により破壊されることを避けることである。この混合操作において、適当量の液体やバインダーを添加することにより均一な混合が行われることもある。
【0021】
この場合、混合用液体としては水、アルキルアルコール類(メチルアルコール、及びエチルアルコール等)、アルキルケトン(例えばアセトン)、及び芳香族炭化水素(例えばトルエン)等のように、工業的に通常用いられている揮発性溶媒類等を用いることができるが、とりわけ好適な混合用液体は水である。
混合用液体の添加量は活性炭素繊維1kg当たり0.1〜2kgの範囲である。混合用液体の量が0.1kg/kg未満では粉体が繊維に十分付着しないことがあり、また、液体の量が2kg/kgを超えて多くなると、粉体が混合用液体に流されるため、繊維上に粉体を付着させることができないことがある。
混合用バインダーとしては、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂(例えばメチルメタクリレートの単独重合体及び共重合体)メチルセルロースのような各種のセルロース誘導体、ポリビニルブチラール、デンプン類、パルプ、及びミクロフィブリルセルロース等のようにセラミックスの成形に通常用いられているものが用いられるが、特にポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0022】
混合用バインダーとしてポリビニルアルコールを用いる場合、その固形分濃度が0.1〜5重量%の水溶液として使用することが好ましい。
混合用バインダーの使用量は、活性炭素繊維1kg当たり0.01〜0.10kgの範囲内にあることが好ましい。混合用バインダーの使用量が0.01kg/kg未満では、十分な結合強度が得られないことがありまたそれが、0.10kg/kgを超えて多いと、混合後の原料が過度に硬くなり、その後ケイ素化反応が阻害されることがある。混合用バインダーに好ましい特性としては、粉体を活性炭素繊維に十分に固定するとともに、それらが加熱により容易に分解し、実質的に灰分を残留させないことなどである。
活性炭素繊維と粉体を混合する際に、前記のような混合用液体又はバインダーを使用すると、得られる繊維と粉体との混合物は、直径が2〜50mmの範囲内の粒状に固まり、これを乾燥すると、ハンドリング性に優れた原料粒を得ることができる。
【0023】
活性炭素繊維と、ケイ素供給源粉体とを混合する他の方法として、活性炭素繊維とケイ素供給源粉体とを、大量の水中に、撹拌しながら分散し、得られたスラリーを、脱水工程に供し、得られた湿潤混合物を乾燥するという方法がある。この混合方法において、必要により、バインダーをスラリーに添加する。このバインダーは、活性炭素繊維とケイ素供給源粉体とから得られた混合物を、脱水工程及び乾燥工程の後においても、均一な混合状態に保持するために有効であり、また、得られた混合物の取扱い性を向上させるのに有効である。また、バインダーは、活性炭素繊維とケイ素供給源粉体との混合物を、前記脱水工程及び乾燥工程中に、加熱炉に充填しやすい適当な形状に成形することを可能にする。
【0024】
一方、活性炭素繊維として予めシート状構造体、たとえばフェルト状に形成したものを用いる場合、このシート状構造体と、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉体とを混合する方法としては、前記粉体を適当な分散媒に分散させておき、その分散液をシート状構造体に含浸させる方法を用いることができる。この方法によれば、単に前記粉体をシート状構造体に振りかけるよりもシート状構造体内の活性炭素繊維と粉体とをより均一に混合することができる。分散媒は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の各種アルコール類、トルエン、ベンゼン等の各種炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等の各種ケトン類、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル等の各種エーテル類、水、並びにその他一般的な液体から適宜に選択して用いることができる。
前記粉体を分散媒に分散させる際の固形分濃度は、5〜60重量%の範囲内にあることが好ましい。分散のために、湿式のボールミル、各種の回転式の羽根をもった分散・攪拌機(ホモミキサー、ブレンダー等)、ペイントシェーカー、超音波分散機等を用いることができる。
【0025】
本発明方法において、前記粉体を分散媒に分散させる際に、粉体の分散を助け、粉体の沈降を抑制するために、分散媒中にそれに可溶な高分子化合物を添加することもできる。分散媒が水である場合、高分子化合物として、ポリビニルアルコールおよびメチルセルロースが好適に用いられる。また分散媒がテトラヒドロフランの場合、ポリビニルブチラールおよびポリスチレンを好適に用いることができる。これらの高分子化合物からなるバインダーは、前記粉体混合物をシート状構造体に含浸後に、分散媒を蒸発させることにより、前記粉体を活性炭素繊維に固定してその脱落を防ぐ効果もある。
これらのバインダーの濃度は、分散媒の重量当り固形分濃度で0.1〜5重量%であることが好ましい。
前記粉体を含浸させて、シート状構造体中に含まれる活性炭素繊維と粉体とを混合した後、分散媒は風乾又は加熱乾燥によって除去される。この加熱乾燥は、分散媒の沸点以上の温度で行われることが望ましいが、蒸気圧の高い液体の場合、沸点以下でも差し支えない。一般には、送風式乾燥機を用いて60〜180℃の範囲で1〜数時間乾燥させることが好ましい。
【0026】
本発明方法において上記のようにして得られた活性炭素繊維と前記無機粉体との混合物を加熱する。このときに用いられる加熱炉は、1200〜1500℃の温度において炭素、ケイ素、ケイ素酸化物及び炭化ケイ素と反応する物質を実質的に含まない雰囲気中、例えば不活性ガス雰囲気中又は減圧下における加熱炭化ケイ素化が可能である限り、特にその種類に制限は無い。即ち、このような炉は、管状炉、トンネル炉、箱形炉、キルン、転炉、流動層炉等の中から適宜選択することができる。また加熱工程は、バッチ式又は連続式で、上記特定雰囲気中例えば不活性ガス雰囲気中又は減圧下において行なわれる。本発明方法の一実施態様において、前記混合物の加熱工程は、この混合物中に、不活性ガスを流しながら行われる。
本発明方法の加熱工程に用いられる不活性ガスは、実質的にヘリウム、ネオン、アルゴン等から選ばれた成分からなるガスであることが好ましい。不活性ガスにおける酸素及び窒素の分圧の合計値は103 Pa以下であることが好ましく、より好ましくは102 Pa以下である。不活性ガスに含まれる酸素は、0.001容量%以下、窒素は1容量%以下にコントロールされることが望ましい。
これらの不活性ガスを、設定された反応温度で、炉内に配置された混合粉末層を通して流す場合、活性炭素繊維と前記粉末との相互間隔、即ち、繊維同士或いは繊維と粉体との間に形成される空隙をガスが十分にかつ均一に流れることが望ましい。前記混合物中の間隙中をガスが十分に流れないと、活性炭素繊維と、前記粉体から発生したケイ素及び/又はケイ素酸化物のガスとの反応によって副生したガスが活性炭素繊維の周りに滞留して十分に取り除かれないため、炭化ケイ素化反応が十分に進行しなくなることがある。
【0027】
不活性ガスを浪費せずに、かつ反応を効率よく行わせるためには、不活性ガスが、活性炭素繊維と前記粉体との混合物が占める空間(充填層)以外の炉内空間をできるだけ流れないようにすることが好ましい。また不活性ガスは炉内に滞留することなく、炉内を一定の方向に流れて通過することが好ましい。
具体的には、反応炉の炉心管に、その断面を完全に塞ぐように前記混合物を充填し、不活性ガスをこの炉心管内を通過させることによりこの目的を達成することができる。この場合、炉に充填した混合粉体の空隙率は、60〜99.9容積%の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは70〜90容積%の範囲である。本発明方法において混合粉体の空隙率は、炉内へ充填された前記混合粉体の真の容積をAとし、前記炉の充填空間の容量をBとすれば、下記式(1)により算出される。上記真の容積Aは、混合粉体の比重と重量とから算出することができる。
空隙率(%)=〔(B−A)/B〕×100 …(1)
【0028】
この空隙率が60容積%より小さいと、不活性ガスが混合粉体の間隙中を十分に流通することができず、このため、炭化ケイ素化反応で副生したガスが活性炭繊維の周りから十分に除去されなくなり、結果として活性炭素繊維の炭化ケイ素化が不十分となることがある。又、空隙率が99.9容積%より大きいと、炉中の活性炭素繊維の充填率が低過ぎて、炭化ケイ素繊維の製造効率の低下を招くばかりか、前記粉体から発生するケイ素及び/又はケイ素の酸化物のガスが稀釈されるため、活性炭素繊維と十分に反応しなくなることがある。
前記不活性ガスの流量は、活性炭素繊維と、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉体との合計重量1kg当たり1〜100リットル/分の範囲内にあることが好ましい。流量が1リットル/分/kg未満では、反応によって副生したガスが除去されずに系内に蓄積することがあり、また流量が100リットル/分/kgを超えて多くなると、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有ガスの一部が活性炭素繊維の炭化ケイ素化に用いられることなく、系外に流出してしまうことがあるため、いずれの場合も炭化ケイ素化反応が不十分になることがある。
【0029】
不活性ガス流中において炭化ケイ素生成反応が行われる場合、炉内の圧力は、大気圧〜大気圧の1.2倍の範囲内、なかでも標準状態における大気圧(1.0気圧(atm ),1013.25hPa )下であれば良好に反応を行うことができる。ただし、炉内への外気の侵入を防ぐために、ガス出口側に背圧弁を設けて炉内の圧力を炉外の圧力より僅かに高めに維持することが好ましい。
【0030】
本発明方法の他の実施態様として、1200〜1500℃における加熱工程が103 Pa以下の、好ましくは1〜103 Paの減圧下において行われる。この加熱工程用減圧雰囲気は、1200〜1500℃の温度において、炭素、ケイ素、ケイ素酸化物及び炭化ケイ素と反応する物質、例えば、酸素、窒素、水、及び二酸化炭素を実質的に含まないものである。
【0031】
本発明方法の加熱工程において、前記混合物の加熱速度は、50〜1500℃/時間の範囲内において適宜選択されて用いられることが好ましい。加熱による昇温過程において、温度が700〜1100℃の範囲内で一旦昇温を止めて、その温度を暫時、例えば30分〜5時間の範囲の間保持することにより、ウィスカーの生成を防止し、炭化ケイ素化反応を効率よく進めることができる。この場合、1100℃以下の温度域におけるガス雰囲気として、不活性ガスとして、酸素濃度が0.001容量%以下の窒素ガスが用いられてもよい。
又、温度を上記のように保持する代わりに、炉の温度が700〜1100℃の範囲内にある時、時間を十分にかけて前記混合物を昇温することによっても、前記の特定の温度を特定時間保持する場合と同じ効果を得ることができる。炉の温度を、1100℃を超えて保持を継続するとウィスカーが生成するという不都合を生じ、また温度700℃未満で保持してもケイ素又はケイ素酸化物が揮発しないので無意味である。
【0032】
ウィスカーは、前記のように、炭化ケイ素(SiC)から構成される直径が0.5〜1μmでアスペクト比が20〜100の細長い繊維状結晶物質であって、そのディメンジョンが小さいため通常の繊維としては使用できないものである。本発明方法ではこのウィスカーの生成は極力防止する必要があるため、炭化ケイ素化反応が行われる前に、活性炭素繊維中に含まれる炭素を含む揮発成分は、加熱により除去しておくことが好ましく、このため、前記のように活性炭素繊維と、前記ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有無機粉体との混合物を、炭化ケイ素化反応が起こる前に予備加熱しておくことが好ましい。この目的のために、本発明方法に用いられる活性炭素繊維として、予め700〜1100℃に加熱処理されたものを用い、それによって、炭化ケイ素化反応時における前記混合物の加熱時間を短縮することができる。当然のことながら、本発明方法においては、反応系にウィスカー生成用触媒を含有させることはない。
【0033】
前記のようにして予備加熱し、炭素を含む揮発性物質が実質的に除去された活性炭素繊維と、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉体との混合物は、温度1200〜1500℃の範囲、好ましくは1200〜1400℃の範囲に加熱され、その温度で所定時間保持される。温度が1200℃より低いと、活性炭素繊維と、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉体から生成するガスとの反応が十分に進行せず、得られる炭化ケイ素繊維の耐熱性や強度が不足するという結果を招く。又、温度が1500℃を超えて高いと、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉体が凝固して塊となり、得られた炭化ケイ素繊維と、前記無機粉体との分離操作が困難となる。
【0034】
前記加熱温度を1200〜1500℃の範囲に保持する時間は、温度が高い場合は比較的短く、温度が低い場合には比較的長く設定されるが、10分〜10時間、好ましくは1〜5時間の範囲内で適宜選択して用いられる。時間が10分より短いと、十分に炭化ケイ素化反応が進行しないことがあり、時間が10時間を超えて長くなると、不必要なエネルギーを消費することになるのみならず、繊維内における炭化ケイ素の結晶の成長が発生して、繊維強度に好ましくない影響を及ぼすことがある。
十分に炭化ケイ素化反応が終了した後、得られた炭化ケイ素繊維含有混合物は室温まで冷却されるが、その冷却速度には特に制限はない。
【0035】
炉から取り出された前記混合物は、炭化ケイ素化繊維と、未反応無機粉体とを含むものであるから、繊維が粉体から分離捕集される。分離の方法は、一般に用いられるふるい分けが好適に用いられる。ふるい分けは、湿式、もしくは乾式で行うことが可能であるが、予め生成した混合物を水中で分散又は離解させておき、その分散液を湿式でふるい分けする方法が有効である。湿式のふるいわけに用いられるふるいの目孔の大きさは、JIS Z 8801に規定される標準ふるいにおいて88〜210μmであることが好ましく、より好ましくは105〜177μmである。
湿式ふるい分けにより捕集された繊維を乾燥した後、これに、乾燥状態で、更にやや目孔の大きいふるいによりふるい分けを施すことも有効である。この乾式のふるい分けに用いられるふるいの目孔の大きさは、JIS Z 8801に規定される標準ふるいにおいて149〜1000μmであることが好ましい。乾式のふるい分けには、ふるいに機械的に振動或いは揺動を与えるような装置を用いることが有効である。
【0036】
又、得られた炭化ケイ素繊維と未反応粉体とを分離する方法としては、水樋を用いる方法も好適である。即ち、繊維と粉体の密度差や、流体から受ける抵抗の差を利用して、繊維と粉体とを分離することができる。この方法のために有効な装置としては、公知のもの(化学工学演習、第1版、東京化学同人社発行、藤田重文編、203頁)をそのまま用いることができる。
本発明方法における繊維と未反応粉体との分離に上記と同様な原理によって分級を行う表面流分級のような公知の沈降分級装置(化学工学便覧、第3版、丸善社発行、化学工学協会編、882頁)も用いることができるし、更に、公知の乾式もしくは湿式の遠心分離装置(化学工学便覧、第3版、丸善社発行、化学工学協会編、885〜897頁)も用いることもできる。
【0037】
前記未反応粉体を分離除去した炭化ケイ素繊維から、更に厳密に残留粉体を除去する必要がある場合、もしくは繊維から炭化ケイ素以外の成分(不純物)を除去する必要がある場合には、分離捕集した炭化ケイ素繊維に、アルカリ金属水酸化物の水溶液による洗浄、及び/又はフッ化水素酸を成分として含む水溶液による洗浄の少なくとも一つを施すことによりその目的を達成することができる。
即ち、前記繊維を先ず、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物の水溶液で洗浄することにより、ケイ素と二酸化ケイ素の一部を除去し、水洗後、引き続きフッ化水素酸を成分として含む水溶液で洗浄することにより残存する二酸化ケイ素を完全に除去することができる。これらの液による洗浄はその順序を入れ替えて行っても差し支えないし、或はそのいずれか一つのみであってもよい。
【0038】
水酸化アルカリ水溶液の濃度は、10〜25重量%の範囲であり、このような濃度の水酸化アルカリ溶液中で前記繊維を煮沸することにより、前記除去効果をより一層高めることができる。フッ化水素酸を成分として含む水溶液は、フッ化水素を約46重量%を含む市販のものをそのまま用いても差し支えない。これと概ね同重量の濃硝酸(HNO3 の含有率は全重量当たり60〜70重量%)を混合して用いても差し支えない。
水酸化アルカリ又はフッ化水素酸を成分として含む水溶液で洗浄する時間は、それぞれ1〜5時間の範囲であることが好ましい。
本発明方法によれば、ケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉体を、活性炭素繊維及びその繊維から形成されたシート状、或はその他の三次元構造体と混合し、前述の特定の雰囲気中において、例えば不活性ガス流中において、又は減圧下において、加熱することにより活性炭素繊維の表面でケイ素及び/又はケイ素酸化物を含有するガスを発生させ、活性炭素繊維とこれらのガスとを反応させて、ウィスカーを生成することなく、炭化ケイ素繊維を効率よく製造することができる。
【0039】
【実施例】
本発明方法を下記実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲は勿論下記実施例により限定されるものではない。尚、下記実施例及び比較例中で用いられるふるいの目孔の大きさは、JIS Z 8801に規定される標準ふるいに従って表示されたものであり、また、「%」は特に断らない限り「重量%」である。
【0040】
実施例1
繊維長6mm、比表面積1000m2 /g、及び繊維径13μmのピッチ系活性炭素繊維(商品名:リノベスA−10、大阪ガス社製)を、送風式乾燥機中で120℃で5時間乾燥し、この乾燥繊維10gを、ケイ素粉末(試薬一級、和光純薬工業社製)30gと二酸化ケイ素粉末(試薬一級、和光純薬工業社製)65gとを乳鉢で十分に混合した粉体と良く混合し、この混合物(ケイ素/二酸化ケイ素混合モル比=1:1.01)を、内径45mmのムライト炉心管中に、150mmの長さにわたって充填した。
用いられた上記ケイ素粉末は、149μmのふるいを通過する分画が100%、44μmのふるいを通過する分画が45%のものであった。一方、上記二酸化ケイ素粉末は、149μmのふるいを通過する分画が100%、44μmのふるいを通過する分画が10%のものであった。
【0041】
上記活性炭素繊維と、ケイ素及び二酸化ケイ素の粉末との混合物の、炉心管中における空隙率は、充填された状態で96容積%であった。この炉心管を管状炉内に取り付け、炉心管内を、アルゴンガス(純度99.99容量%)を250ml/分で流しながら、室温から900℃まで3時間かけて昇温し、900℃に3時間保持し、更に1350℃まで1時間かけて昇温し、1350℃に4時間保持した。その後炉内温度を室温まで2時間かけて冷却した。
冷却後、得られた繊維と未反応粉末との混合物を炉心管から取り出し、10リットルの水の中で攪拌機(商品名:アジター、シマザキ社製)を用いて攪拌して繊維を離解させた。この混合物を含む分散液を、149μmのふるいに通し、ふるいを通過しなかった繊維を流水で洗浄した。
【0042】
次に、この繊維を捕集し、105℃の送風式乾燥機中で乾燥した後、この乾燥繊維を600μmのふるいにかけ、繊維に付着残留している粉末をふるい分け除去した。
得られた繊維を秤量したところ、その重量は14gであり、光学顕微鏡による観察によれば、炭化ケイ素化の前後で、この繊維の繊維径と長さには実質的な変化は認められなかった。
この繊維を空気中800℃で40分間加熱したが、重量減少は見られず、炭素の存在は検出されなかった。空気中加熱の前後における繊維形態を走査型電子顕微鏡で観察した結果、加熱の前後で繊維形態に変化は認められなかった。
又、この繊維を粉末化してX線回折を測定した結果、この繊維は炭化ケイ素からなることが判明した。
【0043】
比較例1
実施例1と同様にして炭化ケイ素繊維を製造した。但し、管状炉による加熱する際の温度パターンにおいて、室温から900℃まで3時間かけて昇温し、900℃に3時間保持し、更に1600℃まで1時間30分かけて昇温し、1600℃に4時間保持した後、室温まで3時間で冷却した。
冷却後に、炉の内容物を取り出したところ、全体が融着一体化しており、水中で攪拌して繊維の離解を試みたが、一部が塊として分離しただけで繊維のみを回収することができなかった。
【0044】
実施例2
実施例1において製造した炭化ケイ素化後の未洗浄繊維1.0gを、500mlの20%濃度(NaOHとして)の水酸化ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業社製)の水溶液中に入れ、30分間煮沸した後、水洗して、乾燥した。乾燥後の重量は0.96gであった(洗浄繊維A)。
この洗浄繊維Aを、更にフッ化水素酸(試薬特級、和光純薬工業社製)250mlに濃硝酸(試薬特級、和光純薬工業社製)250mlを加えた混合溶液に1時間浸漬した後、水洗して、乾燥した。乾燥後の重量は0.91gであった(洗浄繊維B)。
これらの繊維A,Bの酸素含有量を酸素窒素分析装置(LECO TC−436、LECO社製)で測定したところ、未洗浄繊維において5.5%、洗浄繊維Aにおいて5.2%、洗浄繊維Bにおいて1.5%であった。目視による観察では、未洗浄繊維には僅かに粉体が付着していたが、洗浄繊維Aでは付着粉体の量はかなり減少しており、洗浄繊維Bには粉体は全く認められなかった。
【0050】
実施例3
実施例1で用いたのと同じ繊維長6mm、比表面積1000m2 /g及び繊維径13μmのピッチ系活性炭素繊維を、送風式乾燥機中で、120℃で5時間乾燥した。この乾燥繊維30gと、ケイ素粉末(試薬、和光純薬工業社製)55g及び二酸化ケイ素粉末(試薬、和光純薬工業社製)120gとを撹拌式混合機(ケンミックスミキサー、愛工舎社製)で3分間乾燥状態で混合(ケイ素/二酸化ケイ素混合モル比=1:1.02)し、続いてこれに水30gと、2%ポリビニルアルコール(クラレポバール124、クラレ社製)水溶液30gとを添加し、更に3分間攪拌して混合した。
得られた混合物は、直径が2〜10mmの粒径を呈しており、このものを120℃で3時間乾燥したが、乾燥後も形状は変わらず、粉体の脱落も殆どなかったが、多孔質粒状体となった。
この粒状物を、管状型電気炉中の内径70mmのアルミナ製炉心管中に充填した。充填された粒状混合物の空隙率は85容積%であった。
【0051】
この炉心管に、純度が99.99容量%の窒素ガスを2.0リットル/分の流量で流しながら、500℃まで5時間かけて昇温し、更に900℃まで2時間かけて昇温し、900℃に3時間保持した。次に、不活性ガスを、窒素から純度が99.99容量%のアルゴンに切り替え、1.0リットル/分の流量で流しながら、1380℃まで1.5時間かけて昇温し、1380℃に4時間保持した後、室温まで6時間かけて冷却した。
炉心管から取りだした反応生成物を、10リットルの水の中で攪拌機(アジター、シマザキ社製)を用いて攪拌して得られた繊維を離解させ、繊維と粉体とを含む水性スラリーを調製した。別に、頂部が解放された繊維取り出し口を有し、底部が密閉されている内径50mm、長さ600mmの円筒からなり、更に底部から30mmの高さの位置に水供給口と、300mmの高さの位置にスラリー供給口とを備えた沈降分離装置を準備した。
【0052】
この装置中に、前記水供給口から水を0.5リットル/分の流量で導入しながら、前記スラリーをスラリー供給口より0.5リットル/分の流量で供給し、円筒の頂部からオーバーフローする水流によって繊維を流出させ、粉体は円筒の底部に沈降させた。採取した繊維を120℃の送風式乾燥機で乾燥したところ、32gの繊維が得られた。この繊維には粉体は含まれておらず、空気中800℃で40分間加熱したが重量変化はなかった。この繊維を粉末化してX線回折を測定したところ、繊維は炭化ケイ素からなることが判明した。
【0053】
実施例4
実施例1において用いたものと同一の、繊維長6mm、比表面積1000m2 /g及び繊維径13μmのピッチ系活性炭素繊維を、送風式乾燥機中で、120℃で5時間乾燥した。この乾燥繊維50gと、ケイ素粉末(試薬、和光純薬工業社製)100g及び二酸化ケイ素粉末(試薬、和光純薬工業社製)150gとをケイ素/二酸化ケイ素混合モル比=1:0.702において、10リットルの水に分散させ、バインダーとして、酢酸ビニルエマルジョン2g、2%ポリビニルアルコール(クラレポバール124、クラレ社製)水溶液50g、及びデンプン2gを加え、モーター(ヘイドン・スリーワンモータ、新東科学社製)を用いて攪拌機を500rpm の回転数で回転して10分間攪拌した。この混合液を、遠心脱水機(遠心機 型式H−120B、コクサン社製)を用いて2000rpm で3分間遠心脱水し、得られたマット状の混合物を、5〜30mm程度の大きさのペレットに粉砕し、120℃で3時間乾燥させた。乾燥後もこのペレットは形状に変化がなく、また粉体の脱落もみられなかった。このペレット280gを、管状型電気炉中の内径70mmのアルミナ製炉心管中に充填した。充填されたペレットの空隙率は80容量%であった。
【0054】
この炉心管内を油回転式真空ポンプで50リットル/分の排気速度で排気しながら、室温から900℃まで5時間かけて昇温し、900℃に3時間保持した。さらに1360℃まで1.5時間かけて昇温し、1360℃に4時間保持した後、室温まで6時間かけて冷却した。昇温から冷却までは、連続して真空ポンプにて排気を続けていたが、1200℃付近から、1360℃保持後1時間ほどの間、炉心管の圧力は、13〜200Paであった。
【0055】
炉心管から取り出した反応生成物を、10リットルの水の中で攪拌機(アジター、シマザキ社製)を用いて攪拌して得られた繊維を離解させ、繊維と粉体とを含むスラリーを149μmのふるいに通し、ふるいを通過しなかった繊維を流水で洗浄した。
次に、この繊維を捕集し、105℃の送風式乾燥機中で乾燥させてから、600μmのふるいにかけ、繊維状の付着残留粉末をふるい分け除去した。
【0056】
この繊維を秤量したところ重量は70gであり、光学顕微鏡による観察では、炭化ケイ素化工程の前後において繊維の繊維径と長さに実質的な違いは認められなかった。またこの繊維を粉末化してX線回折を測定したところ、繊維は炭化ケイ素からなることが確認された。
【0057】
【発明の効果】
本発明方法は、活性炭素繊維又はその繊維から形成されたシート状或いはその他の三次元構造体を、その近傍においてケイ素及び/又はケイ素酸化物含有粉末から発生したガスとを反応させて、炭化ケイ素繊維を効率よく製造することができる。
Claims (12)
- 繊維径が1〜20μmで、BET窒素吸着法による比表面積が300〜2000m2 /gの活性炭素繊維と、ケイ素粉末と二酸化ケイ素との、混合モル比1:0.1〜1:2の混合物を含有するケイ素供給源粉体とを混合し、この混合物を1200〜1500℃の温度において、かつ前記温度において、炭素、ケイ素、ケイ素酸化物、及び炭化ケイ素と反応する物質を実質的に含まない雰囲気中において加熱して、前記活性炭素繊維を炭化ケイ素繊維に変換することを特徴とする炭化ケイ素繊維の製造方法。
- 前記加熱工程雰囲気中の酸素分圧、及び窒素分圧の合計値が103 Pa以下に制限される、請求項1に記載の方法。
- 前記加熱工程が、不活性ガス流を前記活性炭素繊維と、前記ケイ素−二酸化ケイ素混合物含有ケイ素供給源粉体との混合物中に通しながら行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記不活性ガスが、アルゴン、ヘリウム、及びネオンからなる群から選ばれる少なくとも1種からなる、請求項3に記載の方法。
- 前記不活性ガス流が大気圧下にある、請求項3に記載の方法。
- 前記加熱工程の雰囲気が103 Pa以下の減圧下にある、請求項1に記載の方法。
- 前記混合工程において、前記ケイ素供給源粉体の重量が、前記活性炭素繊維の重量の1.2〜20.0倍である、請求項1に記載の方法。
- 前記活性炭素繊維と前記ケイ素供給源粉体との混合工程が、揮発性媒体、並びにバインダーの前記揮発性媒体中溶液及び分散液から選ばれた少なくとも1員の存在において行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記活性炭素繊維が、シート、又は三次元構造体の形状をなしている、請求項1に記載の方法。
- 前記シート、又は三次元構造体の形状をなしている活性炭素繊維物品と前記ケイ素供給源粉体とが、前記物品を前記粉体の前記揮発性媒体中分散液中に浸漬し、次に前記揮発性媒体を蒸発除去することによって混合される、請求項9に記載の方法。
- 前記加熱工程が完了した後に、残留している未反応ケイ素供給源粉体を、得られた炭化ケイ素繊維から、アルカリ金属水酸化物の水溶液、及びフッ化水素酸を含む水溶液から選ばれた洗浄液による少なくとも1回の洗浄工程によって除去する、請求項1に記載の方法。
- 前記ケイ素供給源粉体が、149μm以下の粒径を有する粒子からなる分画を、前記ケイ素供給源粉体の合計重量に対し90重量%以上の含有量で含み、かつ44μm以下の粒径を有する粒子からなる分画を、前記ケイ素供給源粉体の合計重量に対し、60重量%以下の含有量で含むものである、請求項1に記載の方法。
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