JP3613866B2 - 艶消し表面を有する発泡体およびその製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は接着性に優れた表面を有し、かつ同時に艶消し性を付与することで意匠性を向上させた発泡体とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリオレフィン系に代表される発泡体の表面の密着性、接着性を向上させるには、空気中あるいは炭酸ガスなどの不活性ガス中でコロナ放電処理し、表面にカルボニル基あるいはカルボキシル基などの接着性官能基を発現させたり、あるいはアクリル系、ウレタン系、ポリエチレンイミン系のプライマ−を塗布するなどの化学的表面処理方法が用いられてきた。しかしコロナ放電処理のごとき電気的な方法の場合、処理後の環境状態により表面官能基が変質し経日変化を生じ接着性が安定しない問題があったり、あるいは、発泡体自体が空気層を含む絶縁体であるためフィルムのような薄膜に処理する場合とは異なり大掛かりな放電装置が必要であり、汎用性の点で問題があった。一方、接着性プライマ−処理は、確実に接着性を向上させることには最も有効であると考えられるが、発泡体をプライマ−処理した後の保管性に問題があった。
【0003】
また、通常、発泡体表面には「スキン層」と呼ばれる非常になめらかで光沢を有する層が存在する。このスキン層は平面性という点では好ましいが、ギラギラ感が強く、特に意匠性を重要視する使用分野においては艶消し表面を有する発泡体に対して強い要望があった。このため従来はスキン層を薄くスライスして、内部に含まれている気泡面を表面に出すことにより艶消し性を付与していたが、発泡体自体の強度が低下すると共に、この面に直接印刷すると模様が惚けて鮮明な印刷ができないと言う問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、発泡体表面の密着性と艶や消し性を同時に満足する優れた表面特性を有する発泡体を提供せんとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、かかる従来技術の課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の発泡体は、表面に微細な凹凸を有し、かつ艶消し表面を有する発泡体であって、該凹凸の平均直径が0.3〜50μm、密度が300〜20000個/ cm 2 、深さまたは高さが直径の0.2〜1.0倍であることを特徴とするものである。かかる発泡体の製造方法は、発泡体を物理的表面処理方法により処理することを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記課題、つまり発泡体表面の密着性と艶や消し性を同時に満足する優れた表面特性を有する発泡体について、鋭意検討し、特定な凹凸を表面に形成させてみたところ、コロナ放電処理やプライマ−を塗布すること無く、表面の接着性を向上させると共にスキン層に艶消し性を付与した発泡体を提供することができることを究明したものである。
本発明の接着性向上とスキン層に艶消し性の付与を行う発泡体は、例えばポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂成分を50%以上含有するポリオレフィン系発泡体で、少なくとも片面にスキン層を有し、発泡倍率が2〜40倍のものであれば良い。具体的に樹脂成分としては密度が0.900〜0.940g/cm3 の高圧法低密度ポリエチレンあるいは中低圧イオン重合法によるエチレンと炭素数が3以上のα−オレフィンとの共重合体、いわゆる直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンとアクリル酸との共重合体、エチレンとアルキルアクリレ−ト共重合体などのエチレン系樹脂、ポリプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂、すなわちホモポリプロピレン樹脂、ポリプロピレンとエチレンあるいは炭素数が4以上のα−オレフィンとのランダムあるいはブロック共重合体などの単独あるいはこれらの混合物が例示される。これらの樹脂にアゾジカルボン酸アミドのごとき分解型化学発泡剤、ヒンダ−ドフェノ−ル系熱安定剤やチオ系熱安定剤、顔料、無機充填剤、架橋剤、架橋助剤などを配合し、シ−ト状に成形した後、電子線を照射して架橋、あるいは架橋剤として過酸化物を配合した場合は過酸化物の半減温度以上に加熱して架橋後、発泡剤の分解温度以上に急速に加熱して両スキン付き架橋発泡体としたものが例示できる。この時、発泡方法は公知の竪型あるいは横型熱風発泡法、横型薬液浴上発泡法のいずれでも良い。また、樹脂成分としては同様なものを用い、分解型発泡剤を用いることなく樹脂に揮発性溶剤を含浸あるいは溶解させ押出し機から押出すと同時に発泡させた未架橋の押出し発泡体も例示できる。また、発泡体の発泡倍率は2〜40倍、好ましくは5〜30倍、より好ましくは5〜25倍であるが、発泡倍率が2倍未満では本発明の目的であるスキン層の接着性向上とスキン層の艶消しは達成されるものの、発泡体本来の特性、すなわち軽量性、断熱性、緩衝性などが悪化し、実用的に特性メリットが少ないので本発明においては対象外とする。また、発泡倍率が40倍を越えるとスキンの強度が弱いため表面凹凸加工時に破れが生じやすくなり、本発明の発泡体を得るには製造条件が狭く、安定化製品が得られなくなるので好ましくない。
【0007】
本発明ではかかるスキン層に微細な凹凸を有することを特徴とするものである。前記の発泡体のスキン層に存在する微細な凹凸としては、以下に述べる特定される平均直径、密度、深さまたは高さを有するものであることが必須である。すなわち、該凹凸の平均直径としては、下限値に関しては、0.3μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは3μm以上である。また上限値に関しては、50μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは13μm以下である。該凹凸の密度としては、下限値に関しては、300個/cm2 以上、好ましくは1000個/cm2 以上、さらに好ましくは2000個/cm2 以上である。上限値に関しては、20000個/cm2 以下、好ましくは10000個/cm2 以下、さらに好ましくは5000個/cm2 以下である。該凹凸の直径に対する深さまたは高さは、0.2〜1.0倍、好ましくは0.3〜0.8倍、さらに好ましくは0.5〜0.7倍である。これらの範囲内にあることが、接着性と表面のギラギラ感防止の艶消しが同時に満足される効果を奏させる上から必須である。また、微細な凹凸の形状は特に限定されるものではなく、外径の形状としては円形、楕円形、線状などが挙げられる。凹凸を設ける手段等を考慮すると、発泡体の基準面より凹で有る形状や傷状の形状が好ましく設けられる。また、前記の凹凸が接したり、重なり合っていても良く、そのことにより元のスキン層が殆ど完全に覆い尽くされていることがむしろ好ましい。
【0008】
前記の発泡体のスキン層に微細な凹凸を設ける物理的表面処理方法としてはスキン層に20〜300メッシュの球形あるいは角取りした不定形無機粒子、未処理不定形無機粒子の単独あるいはこれらのミックス品を高速でぶつける事により極力スキン層を破る事なく微細な凹凸を設けるサンドブラスト法や、回転ロ−ルに線径が0.2〜1.0mm、長さが5〜50mmの剛性の強い細線を細密に埋め込んだブラッシングロ−ルにより極力スキン層の気泡膜を破る事なく微細なスジ状の凹凸を設けるブラッシングロール法などが例示できる。この時、極力スキン層の気泡膜を破る事なく微細な凹凸を設けると言う事は、実際、発泡体の製造時、発泡ガスの逸散により気泡が破れたりしているので皆無にはできないので少なくとも本加工により未処理の表面状態から20%以上の破れが無いようにする事が印刷したときの鮮明度の悪化を招かない限度である。
【0009】
本発明の微細な凹凸を設けた加工面の接着性とはJIS K 6768−1971 に規定されるホルムアミド/エチレングリコ−ルモノエ−テル混合液からなる濡れ標準液で評価し、その指数で37〜50dyn/cmに相当し、このものは43dyn/cm以上ではセロハンフィルム用のインキを用いて印刷しても、インキ面のセロ−テ−プ剥離テストでインキの脱離はないほど、また、37dyn/cm以上ではポリプロピレンフィルム用のインキを用いて印刷しても同様な印刷性を示し、本発明の効果が確認できる。
【0010】
本発明の微細な凹凸を設けた加工面の艶消し度は100ルクスの光源ランプを発泡体上1mに設置し、点灯し、発泡体に対し30°の角度から目視を行い、平面的なギラギラの反射感のないものが好ましい。また、加工面の艶消し度は入射光に対する反射光の光線反射率で定義される光沢度によっても評価することができ、本発明の艶消し表面を有する発泡体の光沢度は30%以下である。さらに好ましくは15%以下の光沢度を有するもので、これらの発泡体は目視外観も非常に優れた表面を有するものである。
【0011】
次に本発明の一態様について説明する。
【0012】
高圧法低密度ポリエチレン(密度0.923,MI 3、融点 108℃)の全20メッシュパス粉砕品70kgに発泡剤としてアゾジカルボンアミド6kgとジニトロソペンタメチレンテトラミン0.5kg、熱安定剤としてIrganox
1010(チバガイギ−社製)0.2kgを配合し、ヘンシェルミキサ−で均一混合して発泡用樹脂組成物とした。この組成物をシリンダ−温度が120〜140℃に設定されたベント付き押出し機に導入、溶融混練りし、セットされた口金より押出しし、ロ−ル温度が65℃に設定されたポリシングタイプのシ−ト成形機にかけ、空気の巻き込みのない厚さが2mm,幅640mmの連続シ−ト状の発泡性シ−トを得た。このシ−トに電子線照射機により架橋度が27%となる様に電子線を照射し(照射エネルギ−:8.3Mrad)架橋を施した。この架橋発泡性シ−トをRHヒータ−と280℃の熱風循環装置を備えた竪型熱風発泡装置に連続的に供給して発泡し、発泡装置の出口において冷却と表面平滑性を付与する鏡面仕上げ金属ロ−ルを通過させ厚さが4.0mm、幅が1350mm、発泡倍率が15倍の発泡体を連続的に巻き取った。この発泡体の濡れ指数は32dyn/cmで、その表面は金属ロ−ル表面が転写されたが如く、極めて平滑で、光の反射度が高くキラツイており、艶消し感は全くなかった。この発泡体をシリカ系の平均粒径が70メッシュと平均粒径が180メッシュ(混合比率2/1)のサンドを用い、ロ−タリ−ブレ−ド6枚、ロ−タリ−回転数2800回転のロ−タに連続的に供給し、加速度のついたサンド粒子を排出口より排出し、排出口より50mmの位置を排出口に対して直角の位置を発泡体が通過するように配したサンドブラスト装置に発泡体を6m/minの速度で走行させサンドブラストによる表面凹凸処理を行った。衝突したサンドは衝突面近辺で掃除機により回収されるが、念のため表面を水洗、乾燥して製品とした。この発泡体の処理面の濡れ指数は42dyn/cmであり、未処理品の32dyn/cmより大幅に向上した。このスキン層の光線反射度は一見平滑性が失われたごとく反射せず艶消しされていた。
【0013】
一般的にサンドブラスト法あるいはヘアライン法による表面艶消しはシ−ト、フィルム、金属泊などの処理法であるが、ゴムシ−トなど表面の柔らかい、反発弾性の大きい材料には特別に超高速のサンドを衝突させないと効果が得られにくく、さらに緩衝性の高い発泡体は高速のサンドの衝撃を吸収し、表面艶消し効果はないとの考え方であったが、サンドの形状、粒径分布、サンド衝突速度を適正化したためシ−ト、フィルム、金属箔同様の表面艶消し効果が得られたものと考えられる。また、シ−ト、フィルム、金属箔等の場合、処理面の濡れ指数が高くなることはなく、まして発泡体に本方法が適用でき、しかも接着性が向上することすら予想も出来なかった。
【0014】
サンドの衝突により表面に微細な凹凸、あるいはスジ状の凹凸が無数に発生し、凹凸の大小、深さの度合いにより濡れ評価液の塗布幅の後退を防ぎ、従って、濡れ性が上がったと考えられる。さらに、インキなどを塗布したとき、塗布面のインキのハジキ状態は濡れ評価液と同様にハジクことはないが、インキと発泡体の接着性は発泡体表面に接着性官能基が無いと考えられる以上、接着することは考えにくいが、これはインキ成分が微細な凹凸部分に浸透し、アンカ−効果により固定化され、被膜強度はインキの凝集力によって保たれることにより接着性向上と認められると考えられる。
【0015】
本発明による発泡体は極めて優れた密着性を示すため、フィルムなどと同様の易印刷性が得られるためシルク印刷、オフセット印刷、シ−ル印刷など多様な印刷方法が適用でき、また、印刷インキも通常の種類から熱硬化型、紫外線吸収性など多様なものに適用できるため、装飾用、ラベル、包装用など従来、発泡体の適用が見送られていた分野に適用できる。さらに表面艶消しとなっているためフィルムなど平面的な印刷感と異なり重厚感がでるため各種の複合体の分野にも適用できる。例えば本発明の発泡体に印刷を行い、さらに透明なポリエステルフィルムあるいは本発明と同様のマット加工したフィルム、シ−トなどの表面保護層を設け複合体とすることにより室内装飾、自動車内装装飾、あるいは非印刷面に粘着剤層を設けることにより粘着テ−プとしたり、あるは発泡体を難燃化したものを用いて装飾壁紙代替に用いたり、電化製品の本体外装に適用したりフィルム、シ−トにはない緩衝性、成形性、断熱性を生かし新たな分野への展開が期待できる。また、本発明の発泡体の処理面を使いタイルなどの装飾用セラミック製品表面艶消し用基材にも適用できる。
【0016】
【実施例】
次に本発明による接着性に優れた艶消し表面を有する発泡体について、実施例に基づいて説明する。
【0017】
実施例1〜3,比較例1〜3
表1に示す発泡体を用い、前記で説明した装置を使い、表1に示す条件で加工品を得た。実施例1〜3の発泡体はすべて表面の微細な凹凸の平均直径が0.3〜50μm、密度が300〜20000個/cm2 、深さまたは高さが直径の0.2〜1.0倍である発泡体であった。
[表面の濡れ性・接着性・艶消し性評価]
実施例1〜3、および比較例1〜3でえられた発泡体について、表面の濡れ性、接着性、および艶消し性について評価を行った。評価結果を表2に示す。
(1)濡れ性
JIS K 6768−1971 に規定されるホルムアミド/エチレングリコ−ルモノエ−テル混合液からなる表面張力30〜52dyn/cm の間の1dyn/cm 置きに調整された濡れ標準液を綿棒(市販品)に十分含ませて、測定表面に塗布し、液の塗布幅の変化をみて5秒以内にもとの塗布幅の約80%以上を保持している液の下限値を表面濡れ性とし、37dyn/cm以上を合格とした。
(2)接着性
(1)項の表面濡れ性が40dyn/cm以下はポリプロピレン用印刷インキ(PPST:東洋インキ製造(株)社製),40dyn/cm以上にはセロファン用印刷インキ(CCST:東洋インキ製造株式会社製)を#50のバ−コ−タで塗布した。80℃の熱風乾燥機で3分乾燥して溶媒を除去後、セロファン粘着テ−プ(24mm幅:積水化学株式会社製)をインキ面に張り付け、粘着テ−プの一端を剥離し、素早く180°剥離し、剥離面のインキの残存状態と発泡体の状態を見て次の評価基準で判定した。
【0018】
「最良」 : 剥離面の発泡体表面材破
「良」 : 剥離面のインキの残存面積が70%以上
「不良」 : 剥離面のインキの残存面積が70%以下
(3)艶消し性
本発明の発泡体表面の艶消し性は、▲1▼目視外観評価、▲2▼光沢度の2項目において評価した。
【0019】
▲1▼目視外観評価
発泡体上1mに設置した100ルクスの光源ランプを点灯させ、発泡体に対し30°の角度から目視を行い、ギラギラの反射感のないものを「良」、ギラギラの反射感のあるものを「不良」とした。評価結果は表2に示した。
【0020】
▲2▼光沢度
光沢計(村上色彩技術研究所製:GMX−101型)を用いて得られた発泡体の光沢度を測定した。測定結果は表2に示した。
【0021】
結果を表2に示した。
【0022】
このように本発明による発泡体は極めて優れた接着性を示すため、印刷インキの接着力や金属蒸着膜の接着力が高い。また発泡体表面に艶消し性が付与されているため、印刷面のギラギラ感を無くすことができ、高級感が得られるため包装材料、ラベル、梱包材料、装飾材料などの分野に好適に用いることができる。
【0023】
【発明の効果】
本発明の発泡体はコロナ放電処理や接着性プライマ−処理を施すこと無く、発泡体の表面に微細な凹凸を設けることにより、接着性と表面のギラギラ感防止のための艶消し性付与が同時に満足された発泡体である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による表面に微細な凹凸を有し、かつ艶消し表面を有する発泡体の表面の走査型電子顕微鏡写真(150倍、角度45度)の一例である。
【図2】本発明による表面に微細な凹凸や艶消し表面を有しない従来の発泡体の表面の走査型電子顕微鏡写真(150倍、角度45度)の一例である。
【表1】 【表2】
Claims (7)
- 表面に微細な凹凸を有し、かつ艶消し表面を有する発泡体であって、該凹凸の平均直径が0.3〜50μm、密度が300〜20000個/ cm 2 、深さまたは高さが直径の0.2〜1.0倍であることを特徴とする発泡体。
- 該表面の光沢度が30%以下であることを特徴とする請求項1記載の発泡体。
- 該表面の光沢度が15%以下であることを特徴とする請求項1記載の発泡体。
- 該発泡体がポリオレフィン系発泡体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の発泡体。
- 発泡体を物理的表面処理方法により処理することを特徴とする請求項1記載の発泡体の製造方法。
- 該物理的表面処理方法がサンドブラスト処理であることを特徴とする請求項5記載の発泡体の製造方法。
- 該物理的表面処理方法がブラッシングロール処理であることを特徴とする請求項5記載の発泡体の製造方法。
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