JP3613833B2 - 往復動用密封装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は往復動用の密封装置に関し、特にシールリップの摺動面に複数の突起を設けたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の往復動用密封装置としては、たとえば、図4(a)に示すようなものがある。すなわち、軸方向に相対往復移動自在に設けられるハウジング100と軸101間をシールするもので、ハウジング100の軸孔102内周に固定される環状の密封装置本体103と、密封装置本体103に一体的に取り付けられるシールリップ104とを備えている。
【0003】
そして、このシールリップ104のリップ摺動面には、圧力変動等による1段目突起105の接触状態を安定化させるということを主目的として、複数の突起105,106が設けられていた。各突起105,106の軸101との大気側の接触角α、油側の接触角βは、各段の突起105,106において、α1<β1,α2<β2として密封性を高めていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術の場合には、1段目突起105が油を掻き落とすために、後段の2段目以降の突起106での潤滑不足によって摩擦力が大きくなるという問題があった。
【0005】
また、密封圧力が高くなると、シールリップ104が軸に押し付けられるため、緊迫力が大きくなって、必然的に摩擦力も大きくなるという問題がある。
【0006】
また、図4(c)に示すように、シールリップ107のリップ摺動面に摩擦低減のために、複数の微細突起群108を設けたものも知られている。
【0007】
しかし、このような従来の多段微細突起群108で構成されるシールリップ107も、図4(e)に示すように、同一形状の微細突起109を配列して油を単に微細突起109間に保持し、それによる潤滑効果を期待するだけで、積極的な油の導入とその効果を活用するものではなかった。各微細突起109の密封対象流体側と大気側の接触角α,βは、上記従来例と同様にα1≦β1,α2≦β2に設定されており、微細突起109間に油が導入されなかった場合には、潤滑不足のために本来の摩擦低減効果が得られない。
【0008】
また、図4(f)に示すように、微細突起109先端の最大接触圧力(図中a)は、突起なしの場合(図中b)より相当大きくなっているために、油膜が薄くなるような条件では摩耗を促進してしまう。
【0009】
また、密封圧力が高くなってシールリップ107の押付け力が増加すると、押付け力が増加した分、油膜が薄くなって微細突起109間への油の導入が妨げられてしまい、さらに摩擦力の増加を助長する。
【0010】
また、その他の従来技術として実公平5−29419号公報に示されるものがある。
【0011】
これは、往復動用密封装置であって、ゴムまたは樹脂等からなる単材質タイプのシールがシリンダ状のハウジング及びコイルスプリング等のバネ部材により前記ハウジングに押し付けられて保持され、シール面に溝を形成する突起状のシールリップの軸に対する接触角を設定したものである。
【0012】
しかし、この従来技術でのシールは、ゴムまたは樹脂等からなる単材質製で剛性を持たせなければならず、それによって緊迫力がかなり高くなり、油膜を掻き落とす量も多くなることから油膜が相当薄くなってしまう。したがって、蓄圧効果を生ぜしめる油膜(流体)が少なくなることとなり、蓄圧効果が少なくなってしまう。
【0013】
また、緊迫力が高まることにより摩擦力も大きくなり、突起状のシールリップの変形が大きくなったり、シールが軸の往復動によって軸方向に変位することがある。よって、シールリップの角度が一定に保てなくなり、密封性や蓄圧効果が不安定となる傾向にある。
【0014】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シールリップの摩擦力低減を図ると共に、耐摩耗性向上を図り得る往復動用密封装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にあっては、軸方向に相対移動自在に設けられる2部材間をシールするもので、一方の部材に固定される環状の密封装置本体と、該密封装置本体から他方の部材に向かって延びて他方の部材に摺動自在に密封接触するシールリップとを備えた往復動用密封装置において、前記密封装置本体は、円筒状の外周嵌合部と、前記外周嵌合部の一端から半径方向内方に向かって延びる内向きフランジ部と、を備え、前記シールリップは、前記フランジ部の内端から軸方向密封対象流体側に延びるテーパ円筒形状であり、前記シールリップの大径の一端が前記フランジ部の内端に固定され、前記シールリップの小径のリップ先端部が前記他方の部材に密封接触し、前記シールリップの相手部材との接触面に、軸方向に所定距離だけ離間する一対の突起を設け、該突起先端を相手摺動面に摺動自在に接触させて突起間と相手摺動面間に空間を形成し、密封対象流体側の突起の、密封対象流体側の接触角をβ1とし、反密封対象流体側の接触角をα1とした場合に、α1≧β1に設定し、反密封対象流体側の突起の、密封対象流体側の接触角をβ2とし、反密封対象流体側の接触角をα2とした場合に、β2>α2に設定し、前記反密封対象流体側の突起の最大接触圧を、前記密封対象流体側の突起の最大接触圧より大きくしたことを特徴とする。
【0016】
また、一対の突起を、軸方向に複数組設けたことを特徴とする。
【0017】
突起の高さは、1〜500[μm]の範囲内で形成される微細突起であることが好ましい。
【0018】
【作用】
本発明にあっては、一対の突起の特有の接触角によって、密封すべき油等の流体を突起間に積極的に充填し、突起間の圧力を上昇させて蓄圧させる。流体の密封は主に2段目の突起で行う。
【0019】
すなわち、シールリップに対して相手部材が相対的に反密封対象流体側に移動した場合、密封対象流体側の突起の接触角がα1≧β1となっているので、突起接触面間において、密封対象流体が厚い油膜で突起間の谷部空間に流入する。一方、反密封対象流体側の突起の接触角がβ2>α2に設定されているので、谷部空間に流入した流体が極端に薄い油膜でしか(又は厚い油膜としては)外部に流出しない。また、シールリップに対して相手部材が相対的に密封対象流体側に移動した場合、密封対象流体側の突起において、谷部空間の流体の密封対象流体側への厚い油膜としての流出は阻止され、往復動をするにつれて突起間に密封対象流体が流入して蓄圧される。
【0020】
この突起間に蓄圧された圧力が密封圧力や緊迫力という摩擦力のもとになる力に対して打ち消す方向に働き、摩擦力を低減させる。つまり、蓄圧された流体で突起が設けられたシールリップ全体を持ち上げる効果がある。
【0021】
また、密封圧力が増大した場合、それに伴って突起間圧力も追随して大きくなり、摩擦低減効果も密封圧増大前よりも大きくなるという自己追随能力を有する。すなわち、密封圧力増大にともなって、各突起の接触面圧が増大して、蓄圧可能な限界圧力が増大するからである。
【0022】
一対の突起を複数組設ければ、往復運動によって発生する流体膜が各組の突起間に積極的に蓄積され、各突起間の圧力が上昇する。
【0023】
一組の突起間で発生する圧力の上昇速度は、その突起で形成される谷部空間の体積に大きく左右される。突起を微細突起で構成することにより、空間の体積は非常に小さくなり、流れ込む流体の量が流体膜程度の少量であっても、その空間に油等の流体を急速に充満させ、瞬時に蓄圧を達成することができる。つまり、微細突起の効果をうまく引き出すことができる。
【0024】
微細突起を構成要素とすると、実際に接触する面積が減少し、シールリップ形状や緊迫力付与用のばねが同一であれば、緊迫力も同じ値となるが、接触面積が小さく、突起先端で局所的に強く当たっているため、突起の最大接触圧力の値は、微細突起が無い場合に比較して相当大きくなる。このため、蓄圧される限界値が高くなり、その分摩擦低減効果も大きくなる。
【0025】
【実施例】
以下に本発明を図示の実施例に基づいて説明する。
【0026】
図1は本発明の第1実施例に係る往復動用密封装置を示している。この往復動用密封装置1は、軸方向に相対移動自在に設けられる2部材としてのハウジング2と、ハウジング2の軸孔3に挿通される軸4との間をシールするものであり、ハウジング2の軸孔3内周に固定される環状の密封装置本体としての金属環5と、金属環5から軸4に向かって延びて外周面に摺動自在に密封接触するシールリップ6とを備えている。
【0027】
金属環5は断面略L字形状の環状部材で、円筒状の外周嵌合部7と、この外周嵌合部7の一端から半径方向内方に向かって延びる内向きフランジ部8と、を備えている。
【0028】
シールリップ6は合成ゴム等のゴム状弾性材によって構成され、前記金属環5の内向きフランジ部8の内端から軸方向密封対象流体側Oに延びるテーパ円筒形状で、大径の一端が内向きフランジ部8の内端に固定され、小径のリップ先端部が軸4外周に密封接触している。また、リップ先端部の背面にはばね部材16が装着されている。
【0029】
このシールリップ6の相手軸4との接触面に、軸方向に所定距離だけ離間する一対の突起9,10が設けられている。この突起9,10先端は相手部材としての軸4表面に摺動自在に接触して突起9,10間と軸外周面間に空間11が形成されている。
【0030】
そして、図1(b)に示すように、密封対象流体側Oの突起9の、密封対象流体側Oの接触角をβ1とし、反密封対象流体側(空間11側)の接触角をα1とした場合に、α1をβ1以上に設定し(α1≧β1)、反密封対象流体側の突起10の、密封対象流体側(空間11側)の接触角をβ2とし、反密封対象流体側の接触角をα2とした場合に、β2をα2より大きくなるように設定している(α2<β2)。
【0031】
上記構成の往復動用密封装置にあっては、軸1が反密封対象流体側である大気側Aへ摺動すると、1段目突起9より2段目突起10に形成される油膜が薄くなり、つまり2段目突起10によって油膜が掻き落とされるため、1段目と2段目の突起9,10間に油が蓄積される。逆に、密封流体側Oへ軸4が摺動しても、同様に突起9,10間に油が蓄積される。この突起9,10間に油が充満されるに従って、突起9,10間の圧力Pが上昇し蓄圧される。
【0032】
すなわち、軸1が大気側Aに移動した場合、1段目の突起9の接触角がα1≧β1となっているので、突起9接触面間において、密封対象流体が突起9,10間の空間11内に流入する。一方、2段目の突起10の接触角がβ2>α2に設定されているので、空間11内に流入した流体が極端に薄い油膜でしか(又は厚い油膜では)外部に流出しない。また、シールリップ6に対して軸4が密封対象流体側Oに移動した場合、1段目の突起9において、空間11内の流体が密封対象流体側Oへ厚い油膜として流出することが阻止され、往復動をするにつれて突起9,10間の谷部空間11に密封対象流体が流入することになる。
【0033】
この蓄圧された油等の流体が、図1(d)に示すようにシールリップ6を持ち上げる方向に働き、密封圧力によって増大してしまう軸4に対する緊迫力を打ち消し、軸4にかかる垂直力Wを低減する。摩擦係数fが一定ならば、摩擦力F=f×Wとなるため、Wの低減分だけFは減少して良好な摺動を達成する。
【0034】
リップ間圧力Pは、1段目、2段目突起9,10の最大接触圧力より上昇しようとすると、油膜として突起9,10間外へ流出するため、最大接触圧力よりも高くならない限界圧力値をもつ。
【0035】
密封圧力が上昇した場合、シールリップ6全体が軸4へ押付けられ、1段目、2段目突起9,10先端の最大接触圧力も増大する。その増大によって突起9,10間の蓄圧の限界値が大きくなって、突起間圧力Pは増加し、シールリップ6を持ち上げる力が増加するため、密封圧力に起因する摩擦力増加を押さえる効果がある。つまり、密封圧力に対する自己追随効果を有している。
【0036】
突起9,10各段の最大圧力に、突起間圧力Pが近づいていくと、それ以上蓄積されようとする油は油膜として突起9,10間外へ流出する。大気側Aへ油が流出すると密封性が低下してしまう。その密封性を向上させるためには、油を油側Oへ戻るようにする必要性がある。
【0037】
そのためには、図1(c)のように、2段目突起10の最大接触圧P2を1段目突起9のP1より大きくすると、より低い1段目突起9の最大接触圧P1の山を越えて油が油側Oへ戻るように蓄圧性能を制御することで摩擦力を低減すると共にシール性向上を図ることができる。
【0038】
さらに、上記の蓄圧性能を制御する方法としては、α1,β1で定まる1段目突起の形状とα2,β2で定まる2段目突起の形状を、α1≧β1、α2<β2の条件下で、一対の突起間に形成される谷部空間に対して両突起の形状を断面非対称とし、β2≧α1、α2<β1と設定することが好適である。
【0039】
本発明は、シールリップ6の突起9,10間の積極的蓄圧効果によって負荷容量(シールリップ6を持ち上げる能力)を分担させて低摩擦化させる。そのため、本案の偏心追随性の良好な構造である片持ち支持のシールリップ6に適用させた場合には、密封圧の増減に応じて、突起9,10の先端に生じる接触圧も増減し、その変動に対して蓄圧効果が追随するため、圧力変動による影響を受けにくい安定した低摩擦特性が得られる。特に、本発明ではシールリップ6が片持ち構成となっているので、自由端側が変形しやすく、蓄圧力に対する応答性が優れている。
【0040】
従来の形状においては、1段目突起が油を掻き落とすために2段目突起の潤滑性が悪く摩擦力と摩耗が大きい。これに対して、本発明の形状は、積極的に2段突起9,10まで油を供給するため、2段目突起10の潤滑性を良くする。このため、2段目突起10の摩擦力と摩耗を低減する効果も有している。
【0041】
−実験例−
緊迫力が等しい二種類のサンプル、つまり図4(a)に示される従来形状のサンプルAと、図1に示される本発明の形状のサンプルBを用いて、表1に示す軸4となす接触角になるように作成し、摩擦力を計測した。
【0042】
【表1】
試験は、図2に示す装置で行った。
【0043】
サンプルSはチャンバ20の下部に装着し、その上部に油21を入れる。サンプルSのシールリップは軸22表面と表1の接触角をなして接触している。この状態で、軸22を上下方向に正弦波で加振し、そのときの摩擦力をロードセル等の力検出器23で計測した。また、突起9,10間に発生する圧力は、ゴム状弾性材からなる1段目と2段目の突起9,10の中間に細い軟質チューブを埋め込んで計測した。
【0044】
試験条件は、油種;パラフィン系鉱油、ロッドストローク;50[mm]、加振周波数;1.2[Hz]、チャンバー内圧力;0.25[MPa](2.5[kgf/cm2 ])、温度;27[℃]とした。
【0045】
得られた結果を、図2(b),(c)にストローク位置と摩擦力の関係で示し、表2に突起間発生圧力Pと、図2(b),(c)で求められるストローク中央位置での片側平均摩擦力を示す。
【0046】
【表2】
従来形状のサンプルと本発明のサンプルBを比較すると、図2(b),(c)に示すように、摩擦力が本発明のサンプルにおいて格段に低減されていることが明らかであり、表2によると、その片側平均摩擦力は41%にまで低減されている。また、突起間圧力Pは、従来のサンプルAでは発生せず、本発明のサンプルBのみ0.15[MPa]発生しており、摩擦力を低減する効果を有することが明らかである。
【0047】
図3には、本発明の第2実施例にかかる往復動用密封装置が示されている。
【0048】
この第2実施例では、シールリップ16の軸4との接触部の全領域にわたり、図3(c)に示すように、油等の密封対象流体側Oに最も近い1段目突起13と軸4との接触角α1,β1をα1≧β1とし、2段目突起14と軸4との接触角α2,β2を、α2<β2とし、これら1段目と2段目の突起13,14を一組として、複数組の微細突起群15を突起高さ5〜50[μm]の範囲内で形成したものである。この微細突起群15の背面にばね部材16が装着されている。
【0049】
その他の構成は第1実施例と同一であるので、同一の構成部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0050】
本第2実施例の往復動用密封装置では、軸4との接触角を対向させた2段の微細突起を1組を基本とする微細突起群15において、軸4が大気側へ摺動すると、1段目突起13と比べ2段目突起14で形成される油膜が薄くなり、つまり2段目突起14によって油膜が掻き落とされ、逆に軸4が密封対象流体側Oへ摺動すると2段目突起14と比べ1段目突起13で形成される油が薄くなるため、いずれの摺動方向においても、1段目と2段目の突起13,14間に油が蓄積される。油が突起13,14間に充満されるにしたがって、突起間圧力が上昇して蓄圧が達成される。最初に最も油側に位置する2段1組の突起13,14間が蓄圧され、順次大気側の突起間に蓄圧領域が拡大されていく。
【0051】
図4(c)に示した従来のシールリップの微細突起群においては、積極的に突起109間に油を導入する形状となっていないために、接触摺動領域内で潤滑不足に陥りやすく、摩擦力が増加し摩耗しやすい。特に、大気側に近い接触域の突起では、油側に近い突起で油が阻止されるために、潤滑不足となって摩耗しやすい。また、密封圧力が増大した場合には、摺動によって発生する油膜が薄くなるために、突起の摩耗が促進されやすい。
【0052】
これに対して、本発明の微細突起群15においては、2段1組の微細突起13,14間に積極的に油を蓄積する形状となっているために、各微細突起13,14は必ず油と接し、潤滑性が良好で低摩擦で摩耗が少ないという効果をもたらす。
【0053】
本案の微細突起への適用については、微細化することで接触面積が小さくなり接触面圧がその先端で激増するため、蓄圧が増大し、一段と低摩擦化を図ることができる。また、油を貯える突起13,14間の体積が非常に小さくでき、蓄圧つまり低摩擦化に即効性が得られる点がポイントである。
【0054】
微細突起13,14の各高さは5〜50[μm]が最適であるが、1〜500[μm]でもその効果を有している。
【0055】
なお、微細突起を設ける際に、図3(d)に示すように、所定の平坦部17を形成する場合もある。これは、シールの初期の大気圧状態ではシールリップ12の先端部12aのみ、または先端部12aと微細突起の何本かが軸に接触し、比較的高圧になった場合、多数の微細突起が接触するように設定することにより、密封流体の圧力に応じた蓄圧効果を発現させたり、耐摩耗性等を狙ったものである。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特有の接触角構造を有する一対の突起を設けたので、突起間に油等の流体を積極的に蓄圧してシールリップを全体を持ち上げて軸にかかる垂直力を小さくすることができ、摩擦力低減、摩耗低減を図ることができる。
【0057】
また、密封圧力が増大した場合、それに伴って突起間圧力も追随して大きくなり、摩擦低減効果も密封圧増大前よりも大きくなるという自己追随能力を有する利点もある。
【0058】
一対の突起を複数組設けることで、各組の突起間に流体を蓄積させて、摩擦力低減、摩耗低減の効果を高めることができる。
【0059】
また、突起を微細突起で構成することにより、谷部体積は非常に小さくなり、流れ込む流体の量が流体膜程度の少量であっても、その空間に油を急速に充満させ、瞬時に蓄圧を達成することができる。つまり、微細突起の効果をうまく引き出すことができる。
【0060】
微細突起を構成要素とすると、実際に接触する面積が減少し、シールリップ形状や緊迫力付与用のばねが同一であれば、緊迫力も同じ値となるが、接触面積が小さく、突起先端で局所的に強く当たっているため、最大接触圧力の値は、微細突起が無い場合に比較して相当大きくなる。このため、蓄圧される限界値が高くなり、その分摩擦低減効果も大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の第1実施例に係る往復動用密封装置を示すもので、同図(a)は要部断面図、同図(b)はシールリップの接触状態を示す図、同図(c)は接触部の面圧分布を示す図、同図(d)は接触部間の蓄圧状態を示す図である。
【図2】図2(a)は図1の装置の実験装置を示す図、同図(b),(c)は実験結果を示すグラフである。
【図3】図3は本発明の第2実施例に係る往復動用密封装置を示すもので、同図(a)は要部断面図、同図(b)はシールリップの接触状態を示す図、同図(c)は接触部の拡大図、同図(d)はリップ先端に平坦部を設けたリップ先端部の拡大である。
【図4】図4は従来の往復動用密封装置を示す図である。
【符号の説明】
1 往復動用密封装置
2 ハウジング
3 軸孔
4 軸
5 金属環(密封装置本体)
6 シールリップ
7 円筒状嵌合部
8 内向きフランジ部
9 突起
10 突起
11 空間
12 シールリップ
13 微細突起
14 微細突起
15 微細突起群
20 チャンバ
21 油
22 軸
23 力検出器
O 密封対象流体側
A 大気側(反密封対象流体側)
α1,α2 接触角(密封対象流体側)
β1,β2 接触角(反密封対象流体側)
Claims (3)
- 軸方向に相対移動自在に設けられる2部材間をシールするもので、一方の部材に固定される環状の密封装置本体と、該密封装置本体から他方の部材に向かって延びて他方の部材に摺動自在に密封接触するシールリップとを備えた往復動用密封装置において、
前記密封装置本体は、円筒状の外周嵌合部と、前記外周嵌合部の一端から半径方向内方に向かって延びる内向きフランジ部と、を備え、
前記シールリップは、前記フランジ部の内端から軸方向密封対象流体側に延びるテーパ円筒形状であり、前記シールリップの大径の一端が前記フランジ部の内端に固定され、前記シールリップの小径のリップ先端部が前記他方の部材に密封接触し、
前記シールリップの相手部材との接触面に、軸方向に所定距離だけ離間する一対の突起を設け、該突起先端を相手摺動面に摺動自在に接触させて突起間と相手摺動面間に空間を形成し、
密封対象流体側の突起の、密封対象流体側の接触角をβ1とし、反密封対象流体側の接触角をα1とした場合に、α1≧β1に設定し、
反密封対象流体側の突起の、密封対象流体側の接触角をβ2とし、反密封対象流体側の接触角をα2とした場合に、β2>α2に設定し、
前記反密封対象流体側の突起の最大接触圧を、前記密封対象流体側の突起の最大接触圧より大きくしたことを特徴とする往復動用密封装置。 - 一対の突起を、軸方向に複数組設けたことを特徴とする請求項1に記載の往復動用密封装置。
- 突起の高さは、1〜500[μm]の範囲内で形成される微細突起である請求項2に記載の往復動用密封装置。
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