JP3613786B2 - コンデンサマイクロホン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動膜背後に形成した空洞部よりなる背気室と外部との通気構造を改善したコンデンサマイクロホンに関する。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサマイクロホンは、平坦な周波数応答特性が安定して得られるので、標準マイクロホンとして、また精密測定用マイクロホンとして広く用いられている。コンデンサマイクロホンの原理は、可動電極として機能する導電性の振動膜と固定電極とを狭い空隙を隔てて対向配置し、機械信号で振動膜を振動させ、電極間の空隙が変化することによる静電容量の変化から電気信号を得ている。
【0003】
従来のコンデンサマイクロホンを図6に示し説明する。図6において、ハウジング部材1は、導電性の部材からなり、外形は筒状で両端に大小の開口を有し、大きい方の開口に向かって径が大きくなる複数の段差が内周面と外周面の各々に形成されている。ハウジング部材1の小さい開口端から所定部位までの外周面には雄ねじ1eが形成され、ハウジング部材1の大きい開口端から所定部位までの内周面には雌ねじ1fが形成され、ハウジング部材1の内周面の一つの段差には、周方向に延在し軸方向に平坦な段上面1aが形成され、この段上面1aの近傍の壁面には内部と外部を貫通して通気孔2が設けられている。
【0004】
複数の孔7aを設けたフランジ7bが軸部の一端に形成された導電性の電極部材7には、両端面が平行な所定厚みのドーナツ状をした絶縁部材12が挿通された状態で、軸部の他端に袋ナット8を螺合して、絶縁部材12が電極部材7の軸部の途中に固定されている。
【0005】
リング部材3の一端面に張りわたされている振動膜6は、リング部材3の一端面に配置された状態で環状の振動膜固定部材4がリング部材3の外側に圧入することにより固定されている。リング部材3の内周面には、雌ねじ3fが形成されており、ハウジング部材1の外周面に形成された雄ねじ1eに螺合して、振動膜6はハウジング部材1の小さい開口を閉じるように取付けられている。雄ねじ1eには、ナット部材11が螺合されており、雌ねじ3fと雄ねじ1eのねじ結合の緩み止めに使用されている。
【0006】
また、ハウジング部材1の内周面に形成された段上面1aには、図6に示すように、環が一ケ所繋がっていない通気リング13が、その環の切れ目13aが通気孔2の位置に一致するように配置され、この通気リング13の後に絶縁性の部材からなる絶縁部材12が配置され、さらに絶縁部材12の下に環状の押し当て部材5が配置されている。
【0007】
バックリング9は、押し当て部材5の内径と略等しい内径の環状の突出部9bを端面に有した筒状に形成されており、筒状の外周面には雄ねじ9eが形成されている。バックリング9の雄ねじ9eとハウジング部材1の大きい開口の内周面に形成された雌ねじ1fとを螺合し締付けることにより、絶縁部材12は、押し当て部材5を介してバックリング9の環状の突出部9bに圧接され、ハウジング部材1の内部の所定の部位に固定されている。
【0008】
絶縁部材12が、ハウジング部材1の内部の所定の部位に固定されることで、電極部材7もハウジング部材1の内部の所定の部位にハウジング部材1と絶縁された状態で固定され、振動膜6と複数の孔7aを設けた電極部材7のフランジ7bとが狭い空隙を隔てて対向配置される。この場合、振動膜の背後に空洞部よりなる背気室10が形成され、この背気室10の内部形状と通気リング13の環の切れ目13aおよび通気孔2が形成する連通孔(通気部分) の内部形状は、コンデンサマイクロホンの低周波数領域の周波数特性に影響する音響抵抗として機能する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図5に示すコンデンサマイクロホンをインテンシティーマイクロホンとして使用する場合、低周波数領域における位相特性のばらつきを小さくする必要がある。低周波数領域における位相特性のばらつきを小さくするためには、低周波数領域のカットオフ周波数をできるだけ低くしなければならない。例えば、10Hzでの位相特性のばらつきを小さくするためには、カットオフ周波数を1桁下の1Hz程度にすることが好ましい。
【0010】
低周波数領域のカットオフ周波数を低くするために、通気リング13の厚み、環の切れ目13aの幅を狭めることによって音響抵抗を大きくすることが考えられる。しかし、このようにして環の切れ目13aを形成した場合、通気リング13の厚みや幅のわずかなばらつきによって連通孔(通気部分)の内部形状が変化し、音響抵抗の値が大幅に変化する。これに伴って、カットオフ周波数がばらついて、低周波数領域の位相特性のばらつきが大きくなるという問題があった。
【0011】
本発明は、振動膜背後に空洞部よりなる背気室と連通孔(通気部分)の内部形状のばらつきによる音響抵抗のばらつきを改善し、低周波数領域におけるカットオフ周波数のばらつきを小さくすると共に、低いカットオフ周波数を得ることができるコンデンサマイクロホンを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、筒状で両端が開口したハウジング部材の開口の一方を振動膜で閉じ、音響回路を形成した連通部材でハウジング部材の筒内を閉じて背気室を形成し、この背気室と背気室以外の内部空間とを前記音響回路を介して通気させると共に、前記背気室以外の内部空間と外部空間とを所定の通気手段によって通気させた。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のコンデンサマイクロホンにおいて、前記音響回路は、弧状の連通孔を含むものである。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1記載のコンデンサマイクロホンにおいて、前記音響回路は、音響抵抗材を充填した空間を含むものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係るコンデンサマイクロホンの断面図、図2(a)は連通部材の断面図、図2(b)は(a )のA−A線断面矢視図、図3は本発明の他の実施の形態に係るコンデンサマイクロホンの断面図、図4(a)は他の実施の形態の連通部材の断面図、図4(b)は(a)のB−B線断面矢視図である。尚、各図面の同符号は同じものを示している。
【0016】
本発明に係るコンデンサマイクロホンは、図1に示すように、ハウジング部材1、振動膜6、電極部材7、連通部材100等から成る。そして、ハウジング部材1の一端を振動膜6で閉じ、ハウジング部材1の中途を連通部材100で閉じて、振動膜6と連通部材100との間に背気室10を形成している。
ハウジング部材1は筒形状を有し、導電性の部材からなる。ハウジング部材1は、最小径の小径筒部1bと中径筒部1cと最大径の大径筒部1dの3つの筒部により構成されている。小径筒部1bの外周面には雄ねじ1eが形成され、大径筒部1dの内周面には雌ねじ1fが形成されている。
【0017】
小径筒部1bの内周面の径は開口側から所定長さまでが大きく途中からテーパ状に小さくなり、小径筒部1 b に対応する内周面に繋がっている。この小径筒部1bの最小径の内周面は、同径のまま小径筒部1bから中径筒部1cに連続している。中径筒部1cでは、最小径の内周面は途中に段差を有して径がやや大きく一定の中径の内周面に繋がっている。この中径の内周面は大径筒部1dの内周面に連続し、大径筒部1dでは途中に段差を有して大径筒部1dの開口に連続し雌ねじ1fが形成された最大径の内周面に繋がっている。そして、各段差の部分には、周方向に延在し軸方向に平坦な段上面1a、1gが形成されている。そして、段上面1aの近傍には内部と外部を貫通して通気孔2が設けられている。
【0018】
振動膜6は、リング部材3の一端面に張りわたされた状態で、環状の振動膜固定部材4をリング部材3の外側に圧入することにより固定されている。振動膜6は、リング部材3の内周面の雌ねじ1fをハウジング部材1の外周面の雄ねじ1eに螺合することによりハウジング部材1の端面を閉じる。また、リング部材3のねじ込み深さを調整することにより、振動膜6に所望の張力が作用するようにしている。ナット部材5は、ハウジング部材1とリング部材3とのねじ結合の緩みを防止するために雄ねじ1eに螺合されている。
【0019】
また、導電性の電極部材7は、一端部に円筒状にフランジ7bが形成され、その軸部は途中に段差を有して若干、径の小さな軸部の中央に繋がり、さらに径が小さくなった軸部の他端に繋がっている。軸部の他端の外周面には、雄ねじが形成されている。電極部材7と連通部材100とは、電極部材7の軸部に連通部材100を挿通した状態で軸部の雄ねじに袋ナット8を螺合することにより、組み立てられている。
【0020】
電極部材7と連通部材100の組立て物は、連通部材100の上端面をハウジング部材1の段部1aに当接させ、ハウジング部材1の下端面とバックリング9の間に、ドーナツ状の押し当て部材5を介在させた状態で、バックリング9の雄ねじ9eをハウジング部材1内周面に形成された雌ねじ1fを螺合し締付けることにより、ハウジング部材1に固定されている。
【0021】
連通部材100は、図2(a)に示すように、下部部材14と上部部材15を同軸に重ねて構成したものである。下部部材14及び上部部材15は、共に絶縁部材によりドーナツ状に形成されている。下部部材14には、図2(b)から明らかなように、上面に略半円弧状に溝14bが形成されており、溝14bの一端側は外部周縁部に向かって折れ曲がり開口14aを形成している。また、上部部材15には、図2(a)に示すように、厚み方向に貫通孔15aが設けられている。
【0022】
連通部材100の下部部材14と上部部材15とを同軸に重ねた状態では、上部部材15に設けた貫通孔15aと下部部材14の溝14bの端部14cと連通させている。即ち、連通部材100においては、貫通孔15から溝14bの端部14cを経て下部部材14に形成された開口14aに至る連通孔が形成される。
連通部材100がハウジング部材1に固定された状態においては、連通部材100の周囲に内部空間S1が形成される。この内部空間S1は、ハウジング部材1の内周と連通部材100の外周との間に形成された筒状の空間と、ハウジング部材1の内周とバックリング9とで形成された環状の空間からなる。
従って、背気室10と内部空間S1は、連通部材100に形成された貫通孔15aから溝14bの端部14 c を経て下部部材14に形成された開口14aに至る連通孔によって通気されることになる。また、内部空間S1と接するハウジング部材1には、通気孔2が形成されているので、内部空間S1とマイクロホンの外部空間とは、この通気孔2によって通気されることになる。
【0023】
次に、本発明に係るコンデンサマイクロホンの作用について説明する。本発明に係るコンデンサマイクロホンにおいては、背気室10とマイクロホン外部とは、連通部材100に形成された連通孔、内部空間S1及び通気孔2を介して通気される。そして、これらの経路では、連通部材100に形成された連通孔が最も大きな音響抵抗を有する。音響抵抗は、細管の断面積に大きく依存し、長さに単純に比例するものである。従って、長さの短い連通孔の場合、所望の音響抵抗を得るためには、断面積を小さくしなければならず、この音響抵抗のばらつきを小さくしようとした場合、断面形状の寸法には、非常に厳しい寸法精度が要求される。
【0024】
本発明に係るコンデンサマイクロホンは、背気室10と内部空間S1とを長さが十分長い連通部材100に形成された連通孔で通気させているので、所望の音響抵抗を得るための断面積を、比較的大きくすることができる。このため、音響抵抗のばらつきに関して、断面形状の寸法には厳しい寸法精度が要求されない。従って、比較的容易に音響抵抗のばらつきを小さくできる。
【0025】
また、ハウジング部材1から取り外しができる連通部材100に背気室10と内部空間S1とを通気させる連通孔を形成しているので、所望する低域のカットオフ周波数が得られないときは、連通部材100を交換することができる。従って、製品の歩留まりの向上に大きく寄与できる。
【0026】
なお、本発明に係るマイクロホンは上述の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、上述の実施の形態においては、絶縁部材で形成した連通部材100
に、背気室10と内部空間S1を通気する連通孔を形成した場合について説明した。しかし、絶縁部材に代えて導電部材で形成した連通部材200を用いても良い。但し、この場合は、図3に示すように、連通部材200と電極部材7とを絶縁するために、絶縁部材で成る保持部材24を下部部材34の下側に配置する必要がある。また、連通部材200の内周が電極部材と接触しないようにするために連通部材200の内周径を連通部材100の内周径より大きくする必要がある。
【0027】
また、連通部材100に代えて図4(a)に示すような連通部材300を用いても良い。下部部材44と上部部材45は、共に絶縁部材からなる。下部部材44はドーナツ状の筒体で、上面が開口し壁面に内部と外部を貫通する開口44aを備えており、所定の幅と深みを有する環状の空間44bも備えている。また、上部部材45は、下部部材44と略同一の径を有しドーナツ状の形状をしており、厚み方向に貫通孔45aを備えている。
【0028】
空間44bには、図4(b)に示すように、不織布等の音響抵抗材40が充填されている。なお、空間44bに充填する音響抵抗材40としては、上述の不織布の他にグラスウール、連続通気発泡樹脂材料を使用してもよい。そして、下部部材44に上部部材45が同軸に重ねられた状態では、上部部材45に設けた貫通孔45aは、下部部材44の開口44aと連通している。即ち、下部部材44と上部材45が同軸に重ねられた状態では、上部部材45に形成された貫通孔45aから下部部材44の空間44bを経て下部部材44に形成された開口44aに至る連通孔が形成される。
【0029】
連通部材300を使用した場合は、音響抵抗材の充填の度合いによって音響抵抗を変えられるので、カットオフ周波数が極端に低いコンデンサマイクロホンを実現できる。これにより、所望する低域の位相のばらつきが少ないコンデンサマイクロホンを実現できる。
【0030】
さらに、上述の実施の形態では、ハウジング部材1,21の壁面に通気孔2を設けてマイクロホンの内部空間S1とマイクロホン外部を通気した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、マイクロホンの内部空間S1及び内部空間S2を介してマイクロホン外部を通気してもよい。この場合、内部空間S1と内部空間S2とは、バックリング9に形成した連通孔(不図示)、又はハウジング部材1,21の内周に形成した雌ねじ1fとバックリング9の雄ねじ9eとのねじ結合の隙間を介して通気させる。内部空間S2とマイクロホン外部とは、ハウジング部材1 , 21の内周に形成した雌ねじ1fとこの雌ねじ1fと螺合するプリアンプ ( 不図示 ) の雄ねじとのねじ結合の隙間を介して通気させる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、振動膜で一端を閉じた筒状のハウジング部材の筒内を連通部材で閉じて背気室を形成し、背気室の外部への通気路を形成する音響回路を連通部材に設けたから、音響回路の加工が容易であり、また、音響回路の特性の調整も容易になる。また、ハウジング部材から取り外しができる連通部材に音響回路を形成しているので、所望する低域のカットオフ周波数が得られないときは、連通部材を交換することができ、製品の歩留まりの向上に大きく寄与できる。
【0032】
また、請求項2の発明によれば、長さが十分長い弧状の連通孔は、所望の音響抵抗を得るための断面積を、比較的大きくすることができるのため、音響抵抗のばらつきに関して、断面形状の寸法には、厳しい寸法精度が要求されないため、比較的容易に音響抵抗のばらつきを小さく押さえることが可能となる。
【0033】
また、請求項3の発明によれば、音響抵抗材の充填の度合いによって音響抵抗を変えられるので、カットオフ周波数が極端に低いコンデンサマイクロホンを実現できるので、所望する低域の位相のばらつきが少ないコンデンサマイクロホンを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコンデンサマイクロホンの断面図
【図2】(a)は連通部材の断面図、(b)は(a)のA−A線断面矢視図
【図3】本発明の他の実施の形態に係るコンデンサマイクロホンの断面図
【図4】(a)は他の実施の形態の連通部材の断面図、(b)は(a)のB−B線断面矢視図
【図5】従来のコンデンサマイクロホンの断面図
【図6】図5に示す通気リングの上面図
【符号の説明】
1、21…ハウジング部材、1a…段上面、2…通気孔、3…リング部材、4…振動膜固定部材、5…押し当て部材、6…振動膜、7…電極部材、7b…フランジ、8…袋ナット、9…バックリング、10…背気室、11…ナット部材、14、34、44…下部部材、15、35、45…上部部材、14a、44a…開口、14b…溝、24…保持部材、40…音響抵抗材、44b…空間、15a、45a…貫通孔、100、200、300…連通部材、S1、S2…内部空間。
Claims (3)
- 筒状で両端が開口したハウジング部材の前記開口の一方を振動膜で閉じ、音響回路を形成した連通部材で前記ハウジング部材の筒内を閉じて背気室を形成し、この背気室と背気室以外の内部空間とを前記音響回路を介して通気させると共に、前記背気室以外の内部空間と外部空間とを所定の通気手段によって通気させたことを特徴とするコンデンサマイクロホン。
- 前記音響回路は、弧状の連通孔を含むことを特徴とする請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
- 前記音響回路は、音響抵抗材を充填した空間を含むことを特徴とする請求項1記載のコンデンサマイクロホン。
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