JP3611804B2 - 発芽玄米の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、玄米の浸漬、発芽時に問題となる微生物汚染による品質劣化の低減化と均一な発芽を実現した安全性の高い発芽玄米及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、健康に関する関心はますます高まっている。生活習慣病の予防法のひとつとして日本食の良さが見直されてきており、特に玄米食がブームとなっている。しかし、炊飯の手間がかかるとか、食感が悪い、糠臭い等の問題があり、玄米食が一般に浸透しているとは言い難い。それに代わる玄米として発芽玄米が知られている。発芽玄米は、通常の玄米に比して消化吸収性が良く、γ−アミノ酪酸、フェルラ酸等の栄養成分を含有していることから、機能性食品として評価されている。
【0003】
ところで、発芽玄米自体はその浸漬、発芽工程上で微生物の増殖が起こり、異臭などの原因となっていた。そのため、流通させるためには、一食分等のように熱処理した発芽玄米を小容量の真空パックにして、さらに加熱殺菌を行う等して対処する必要があった。
【0004】
上記の問題に鑑み、微生物の除去、静菌を行い、保存性を高める手段として、従来とは異なる乾燥した発芽玄米が考えられる。乾燥工程で殺菌を行うことが可能であり、水分量も低いことから、通常の白米と同様に流通、保存が可能である。しかし、環境に存在したり玄米の果皮に付着していた菌が、食中毒の原因となる毒素生産菌である場合には、浸漬、発芽時に菌が増殖するため、発芽工程、乾燥工程を経て、殺菌を行うことができても、エンテロトキシン、ヒスタミン等の毒素が残存する可能性があり、食品衛生上好ましくない。
【0005】
浸漬・発芽時の菌の増殖を防ぐ方法として、浸漬前の洗米あるいは1%程度の搗精を行うことで、粒表面に付着した微生物を減少させることができる。しかし、浸漬、発芽に要する時間、玄米を静置することで、微生物は再び増殖することから、前述した問題は解決することはできない上に、搗精を行うことで発芽率が悪くなる問題がある。
【0006】
また、従来の無菌米飯の微生物制御法として、浸漬時の水温を20℃以下に保つ方法が知られている(無菌包装の最先端と無菌化技術、p366、1999)。しかし、この温度条件を発芽玄米に応用した場合では、玄米の発芽進度のばらつき等の要因となりやすく、所望の発芽条件に達するには時間もかかるため、安定した発芽玄米を工業的に生産する方法としては好ましくない。
また、発芽玄米の浸漬、発芽時の微生物制御法に応用可能な技術として特許第2504898号公報、特開平5−292836号公報、特開平5−292837号公報、特開平5−252833号公報、特開2000−93097号公報の技術が公知となっている。
【0007】
特許第2504898号公報では、洗浄した玄米をジベレリンを添加した水中に浸漬、ジベレリンを添加した水で保水しながら、所望の温度に保温し、発芽させることが提示されている。しかし、ジベレリンのような植物成長促進物質を添加したとしても、数時間から数十時間の発芽時間を経過した場合においては、菌の増殖は必然的に起こるため、発芽玄米の工業的製造における制菌効果としては弱い。特開平5−252833号公報は、玄米もやしを製造するに当たって、玄米自体或いは供給される水に、活性化又は/及び制菌性を付与する処理を施すようにした製造方法に関するものである。しかし、この発明で提示されている二価三価鉄塩を含有する水、磁気処理水、電場処理水、過飽和又は活性化酸素水、H2O2水溶液等化学反応による処理水、又は光合成菌・藻による処理水を使用した場合は、製造コストが高くなる。また、通常遠赤外線セラミックス等と称される活性化物体、或いは麦飯石に代表される各種水質調整用鉱物による処理水を使用した場合は、コスト的な面では、先述の処理水に比較してメリットがあるが、制菌効果は弱い。
【0008】
特開平5−292836号公報、特開平5−292837号公報のように水洗した玄米を籠内に均し、該籠を発芽槽の温水に浸し、次いで該発芽槽内に温水を供給して籠内に少量の流れを生じさせる手段をもって玄米の腐敗を防ぐ方法をもって微生物の制御方法として応用できるが、この方法では制菌することは可能であるが、玄米を均す籠は、玄米の層が厚くなって粒間の隙間がなくなると、下層の玄米が腐敗してしまうことから層高を高くすることができない。そうすると、工業レベルで大量の玄米を発芽処理するには、広大な面積を要するため、好ましくない。また、特開平5−292837号公報による方法で発酵防止剤を供給することも可能であるが、この発明で提示されている発酵防止剤の酢酸のような酸を使用した場合、浸漬水のpHが強酸性であれば、微生物の制御は可能であるが、発芽タンクの劣化を早めるという問題や発芽玄米自体の風味が変わるという問題が生じる。また、この発明で好ましいとされるpH4.5〜5.2程度の弱酸性では効果が弱い。一方、酢酸以外の発酵防止剤として、安息香酸、ソルビン酸、安息香酸Na等の薬剤も提示されているが、一般消費者の食品への薬剤添加を望まないという見解が増大していることを考慮した場合、主食として常食する食品に対して薬剤を使用することはあまり好ましくない。
【0009】
一方、特開2000−93097号公報は、玄米を攪拌させ、且つ浸漬水を循環させ、その際に0.3μ径以下のUF膜を使用して除菌を行うことで、菌の除去と水の使用量の低減化が可能となっている。しかし、各米粒表面から滲出する微生物を確実に洗い去るための手段である攪拌による玄米粒の流動化は、微生物の除去には有効であるが、玄米粒自体の傷を発生させ、その為に糠層、胚芽に存在する栄養成分の滲出までも促進させてしまうデメリットがある。
【0010】
ところで、発芽玄米の大量生産に関しては、玄米自体の発芽速度のばらつきが問題となっている。鈴木らの報告によると原料玄米を仕込む際に、玄米密度が大きくなることによって発芽速度が遅くなる傾向があることが報告されている(鈴木ら、農業施設、Vol.30、No.1、p1−10、1999)。また、例えばコニカル型発芽タンク等のように、原料玄米を仕込む場合、玄米粒の層高を高くして大量に発芽処理すると、上層部、下層部における発芽速度は、有意に下層部の発芽速度が遅くなる問題も生じている。
したがって、工業的に発芽玄米を製造するにあたっては、玄米の浸漬、発芽時において増殖する微生物を安易な方法で効果的に制菌、除去することができ、且つ玄米の均一な発芽を制御する手段が求められていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、均一な発芽をさせつつ、玄米の浸漬、発芽時の微生物汚染を容易に防ぐことができる安全性の高い発芽玄米の製造法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、上記の目的は、発芽玄米の製造に際し、浸漬・発芽工程中に微小気泡を供給することで達成されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、
1.水中に浸漬した玄米に微小気泡を供給する工程を含むことを特徴とする発芽玄米の製造法、
2.水中に浸漬した玄米に微小気泡及び水を供給する工程を含むことを特徴とする発芽玄米の製造法、
3.微小気泡を連続的又は間歇的に供給する上記1又は2の発芽玄米の製造法、
4.水を連続的又は間歇的に供給する上記1、2又は3の発芽玄米の製造法、
5.水中に浸漬した玄米に微小気泡が分散した水を連続的又は間歇的に供給する工程を含むことを特徴とする発芽玄米の製造法、
6.空気の供給速度が0.1〜1.5m3/m2/hであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1の発芽玄米の製造法、
7.水の供給速度が100〜2,000L/m2/hであることを特徴とする上記1〜6のいずれか1の発芽玄米の製造法、
である。
【0013】
【発明の実施の形態】
発芽玄米の製造法においては、例えば、玄米を発芽するまで水に浸漬するか、あるいは所望の時間浸漬し、その後脱水を行い、間歇的に散水を行って、所定時間、高湿度の条件下で発芽させる。本発明の製造法においては、浸漬中に空気を微小気泡として連続的又は間歇的に供給し、玄米と空気を接触させることが重要である。玄米はほぼ靜置の状態で空気と接触するのが好ましい。玄米が流動している状態では粒の破壊、あるいは可水溶性の旨み成分、機能成分の溶出が促進され、炊飯時の食味を損なうという点で好ましくない。
【0014】
空気は玄米全体と接触させるために、発芽槽等の容器の下部より供給するのが好ましい。空気の供給は、連続的でも間歇的でもよい。間歇的に供給する場合は、例えば、30分〜2時間に1回、10分間以上供給することが好ましい。10分未満の供給量では、玄米粒の洗浄度は低く、本発明の効果は弱い。また、インターバルが2時間を超える場合にも同様である。気泡の大きさは玄米粒の大きさより小さいことが好ましく、2mm径以下であることがより好ましい。玄米粒よりも大きくなると、発芽槽中の米粒層の一部に空気の通り道ができるだけで、米粒全体への気泡の拡散が十分でないことが多い。
【0015】
空気の供給速度は、0.1〜1.5m3/m2/hが好ましい。0.1m3/m2/h未満でも浸漬中の微生物の除去は可能であるが、通常流通している精白米米などの一般生菌数である10の3乗〜10の4乗レベルに比較すると依然として多くなる傾向があり、効果が弱い。一方、空気の供給量が単位時間あたり1.5m3/m2/hを超える空気供給速度では、微生物の制菌、除去は効果的だが、大量生産を目的とした場合、設備自体のコストが大きくなり過ぎる問題がある。微小気泡とするには、公知の方法でよく、例えば、空気の供給口に焼結金属あるいは、メッシュの細かいフィルターを設置することで、空気が噴出する際に微小気泡として供給することが可能である。
【0016】
本発明においては、空気を供給すると同時に、水を連続的又は間歇的に供給するのが好ましい。間歇的に供給する場合は、例えば、3時間に1回30分以上供給するのが好ましい。供給時間が30分未満では、米粒の除菌効果が弱い。また、インターバルが3時間を超えると、発酵臭等の異臭が発生する。水も、発芽槽等の容器の下部より供給するのが好ましい。流水の供給速度は、100〜2,000L/m2/hが好ましい。100L/m2/h未満の場合は、水を供給しない場合と比較して、若干の除菌効果はあるものの、精白米のレベルには及ばない。また、水の供給速度が2,000L/m2/hを超える場合は、水の使用量が多すぎる、玄米が流動するという問題や玄米からの栄養成分の流出が高くなる傾向がある。
空気と水は別々に供給してもよいが、空気を水に分散させて供給してもよい。例えば、水の供給ノズルの中に空気を供給して微小気泡に分散させて、容器に供給することができる。
【0017】
本発明の発芽玄米を製造するには、例えば次のような方法による。
玄米をそのまま、あるいは玄米を通常2乃至4回程洗米し、水切りしたものを、発芽槽(発芽用タンク)に浸漬する。その時、玄米をあらかじめ搗精することで、米粒に付着している異物、微生物を除去することが可能となるが、搗精の程度は浸漬吸水率、発芽率に影響を与えるので、この点も考慮して定めることが好ましい。洗米に供する水は、水道水、蒸留水、井戸水、酸性水、電解食塩水、オゾンを溶存させた水等の食品用に使用できる水であれば、いずれの使用も可能である。
【0018】
発芽槽の浸漬条件は、通常20乃至40℃の温水中でに発芽するまで浸漬するか、あるいは例えば3乃至5時間程浸漬し、その後脱水を行い、間歇的に散水を行って、所定時間、高湿度の条件下で発芽させる方法がある。使用する温水は、前記の洗米工程で例示した様な水が例示でき、食品用に使用できる水であれば、いずれも可能である。浸漬している間に、連続的または間歇的に微小気泡を供給し、かつ好ましくは水を連続的または間歇的に供給する。あるいは微小気泡分散水を連続的に供給する。
【0019】
発芽の程度は、一般的には胚の部分から0.5mm〜2.0mm程度の膨らみ、あるいは突起部、幼芽が確認できる程度の状態が良い。発芽後は、加熱処理して、発芽を停止させるが、その方法としては、蒸煮させても良いし、熱風あるいはマイクロウェーブ、冷却等の適当な方法により、温度処理あるいは乾燥させても良い。
【0020】
前述のように、発芽玄米は浸漬工程を経るため、水分を高含有しており、例え浸漬・発芽中の微生物の増殖抑制、除去を行ったとしても、そのままでは保存性に問題がある。したがって、通常は、発芽工程終了後に乾燥させる方が望ましい。
通常は、浸漬・発芽タンクから発芽玄米を排出して次の乾燥工程へ移行するが、乾燥前に、発芽玄米がほぼ単粒状態になる程度まで付着水を除去し、ついで湿熱処理を施して乾燥するのが好ましい。単粒状態とは発芽玄米粒が表面の付着水によって大部分が互い付着していない状態である。これによって、湿熱処理、乾燥工程時のハンドリングが行いやすくなり、粒同士あるいは機器壁面への付着、α化度の不均一、乾燥むらを防ぐことが可能となり、乾燥効率も改善できる。表面の付着水の除去は、例えば、排出した発芽玄米を水切りコンベア上に載せて行うことができるし、その際に振動を与えたり、送風を行うことでより効率良く表面の付着水を除去することができる。また、必要に応じて、例えば攪拌機能をもった回転羽、スクリューなどで攪拌を行うと尚良い。
【0021】
湿熱処理法とは、具体的には、飽和水蒸気か熱水あるいは過熱蒸気を熱媒体として、対象物を加熱する方法である。この場合には、加熱対象物と熱媒体を直接接触させ加熱する方法と相対湿度60%以上の雰囲気で熱媒体を伝導加熱方式の熱源として、加熱する方法のどちらでも実施可能である。具体的な条件は、例えば、蒸気温度98〜180℃で3秒〜30分間処理することができる。蒸気温度が98℃以下の場合、α化、乾燥自体には問題はないが、所望のα化に要する時間が長くなるため、工業的に大量生産を行う場合には、あまり好ましくない。一方で、180℃を超えるとα化が進みすぎる問題があり、乾燥の仕上がりや浸漬時間が限定されたり、長期浸漬時の米飯の食味が悪くなる。処理時間は、3秒未満では、粒のα化度にムラが生じやすいこともあるが、実際の工程における制御も難しい。また、処理時間が30分を超えると発芽玄米のα化が進行し過ぎたり、粒の膨化が発生するため、白米とブレンドして長時間浸漬する場合には、発芽玄米粒が崩壊し易くなる。
【0022】
また、上述した湿熱処理以外の方法として、米飯製造や発酵工業等で行われる米の蒸煮処理を用いた方法が例示できる。例えば、発芽処理した玄米を0.1〜7.0kg/cm2、好ましくは0.1〜2.0kg/cm2の条件下で、3秒〜30分間、好ましくは10秒〜30分間蒸煮処理すると良い。ここで、蒸気圧が、0.1kg/cm2未満では、本発明の効果は弱く、処理時間が3秒未満でも同様である。逆に処理時間が長くなりすぎると、α化が進み過ぎ、白米と一緒に炊飯したときの食味の低下や粒のブロッキングが生じ易くなり、乾燥工程のハンドリングが悪くなる傾向がある。一方、蒸気圧が7.0kg/cm2を超えても、本発明の効果は得られるが、圧力が高すぎ、安全性に問題がある。
【0023】
乾燥は、対流(熱風)乾燥法、放射乾燥法、伝導乾燥法、電磁波等による均一発熱法、真空乾燥法、凍結乾燥法等のいずれの方法をもっても行うことが可能である。また、所望の水分値に達するまでに、工程中にテンパリングを行うことで、仕上がりが美しく、砕米の発生をより低減させることが可能である。
本発明の製造法によると、発芽の程度が均一で、かつ微生物が産生する残存毒素が、例えばヒスタミンなどでは、原料玄米の約2/3〜1/2以下、また従来の製法で得られる発芽玄米の約1/3以下程度まで低減化された発芽玄米が得られる。本発明の方法により得られる発芽玄米は、微生物の汚染が低減化されており、独特の臭みがなく、一方で、発芽玄米の旨み成分は、十分に保持されていることから、食味も良好である。
【0024】
本発明の発芽玄米は、単独であるいは玄米、精米と混合して炊飯し、食用に供したり、煎餅等の米菓、パン類、ビーフン等の加工食品の原料として用いることができる。また、必要に応じてビタミン類、ミネラル類、γ−オリザノール、トコトリエノール、フェルラ酸等の機能成分による栄養強化を、浸漬吸水あるいはコーティング等の適当な処理により行ってもよい。
【0025】
【実施例】
以下に本発明を実施例で詳細に説明する。
実施例1
原料玄米(香川県産ヒノヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温(25℃)で18時間気相発芽させた。玄米を5時間浸漬中は、0.1m3/m2/h量のエアレーションを行い、水は単位時間当たり、480L/hを供給した。その後、98℃、5分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、発芽玄米を得た。
【0026】
実施例2
原料玄米(香川県産ヒノヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温(25℃)で18時間気相発芽させた。玄米を5時間浸漬中は、1.5m3/m2/h量のエアレーションを行い、水は単位時間当たり、300L/hを供給した。その後、98℃、5分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、発芽玄米を得た。
【0027】
実施例3
原料玄米(香川県産ヒノヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温(25℃)で18時間気相発芽させた。玄米を5時間浸漬中は、2.0m3/m2/h量のエアレーションを行い、水は単位時間当たり、300L/hを供給した。その後、98℃、5分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、発芽玄米を得た。
【0028】
実施例4
原料玄米(香川県産ヒノヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温(25℃)で18時間気相発芽させた。玄米を5時間浸漬中は、0.1m3/m2/h量のエアレーションを行い、水は単位時間当たり、2,000L/hを供給した。その後、98℃、5分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、発芽玄米を得た。
【0029】
実施例5
原料玄米(香川県産ヒノヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温(25℃)で18時間気相発芽させた。玄米を5時間浸漬中は、0.1m3/m2/h量のエアレーションを行い、水は単位時間当たり、80L/hを供給した。その後、98℃、5分間蒸煮し、引き続き80℃の流動層乾燥を20分間行い、発芽玄米を得た。
【0030】
比較例1
原料玄米(長野県産コシヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温で18時間気相発芽させた。玄米を浸漬中は、エアレーション、水の連続供給は行わなかった。発芽処理後、98℃、20分間蒸煮し、冷却し、その後ポリエチレン製の袋に充填後、レトルト殺菌を行い、水分量が36.0%の発芽玄米を得た。
【0031】
比較例2
原料玄米(長野県産コシヒカリ)を30℃の恒温水中で5時間浸漬させ、その後水抜きし、室温で18時間気相発芽させた。玄米を浸漬中は、エアレーションは行わず、水は単位時間当たり、480L/hを供給した。発芽処理後、98℃、20分間蒸煮し、冷却し、その後ポリエチレン製の袋に充填後、レトルト殺菌を行い、水分量が36.0%の発芽玄米を得た。
【0032】
各実施例、比較例の水分量、官能試験(食感:硬さ、粘り、臭い)の結果を表1にまとめた。官能試験は、パネラー9名(20代〜50代)を対象に実施し、評価を以下のようにした。実施例、比較例で製造した発芽玄米は、浸漬時間30分、1.5倍加水で電気炊飯器で炊飯した。
◎:非常に美味しい ○:美味しい △:まあ美味しい ・:まずい
実施例1〜5では、食味もほぼ良好であったが、微小気泡の流量が大きい実施例3においては、発芽玄米の特有の甘み、旨みが弱い傾向が見られ、可溶性の甘み、旨み成分の溶出によるものと考えられる。また、水の流量が小さい実施例5においては、炊飯直後の糠臭さが他の実施例よりも顕著であった。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1〜5、比較例1及び2の菌産生の残存毒素量(ヒスタミン)、黄色ぶどう球菌産生エンテロトキシン(定性試験)、バチルス・セレウス菌、発芽槽上下の発芽率、γ−アミノ酪酸量を表2に示した。セレウス菌は、製造、充填後の最終包装形態のものを試験に供し、食品衛生検査指針にしたがって、実施した(平板塗抹培養法)。ヒスタミン量は、RIA固相法で測定した。エンテロトキシンは、ELISA法で測定した。発芽率は、発芽槽の上部、下部よりサンプリングを行い、発芽の程度が胚の部分から0.5mm〜2.0mm程度の膨らみ、あるいは突起部、幼芽が確認できる程度の状態のものをカウントし、その比率を求めた。
【0035】
【表2】
【0036】
本発明の実施例においては、微生物由来のヒスタミン量が、低減化されており、エンテロトキシンも検出されなかった。一方、比較例においては、レトルト殺菌による工程は経ているものの、ヒスタミン量は原料玄米よりも高値となっている。以上のことから、本発明の製造方法は、従来の製法による発芽玄米よりも、発芽処理時に問題となる毒素産生菌の増殖が抑制され、さらに除去されていることが分かった。微小気泡の流量が大きい実施例3においては、可溶性の有効成分であるγ−アミノ酪酸の量が低い傾向が見られた。一方、水の流量が小さい実施例5においては、ヒスタミン量が他の実施例より高い傾向があり、比較的、洗浄効果が弱いことが分かった。また、本発明の範囲外である比較例1,2においては、発芽率のばらつきが認められた。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、玄米を浸漬中に微小気泡と接触させるので、均一な発芽をさせつつ、微生物汚染を容易に防ぐことができ、安全性の高い発芽玄米を提供することが可能となる。
Claims (5)
- 水中に浸漬した玄米に径が2mm以下の微小気泡及び水を、空気の供給速度が0.1〜1.5m 3 /m 2 /h、水の供給速度が100〜2,000L/m 2 /hで供給する工程を含むことを特徴とする発芽玄米の製造法。
- 微小気泡を連続的又は間歇的に供給する請求項1の発芽玄米の製造法。
- 水を連続的又は間歇的に供給する請求項1又は2の発芽玄米の製造法。
- 水中に浸漬した玄米に微小気泡が分散した水を連続的又は間歇的に供給する工程を含むことを特徴とする請求項1、2又は3の発芽玄米の製造法。
- 玄米はほぼ静置の状態で空気と接触させる請求項1〜4のいずれか1項の方法。
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