JP3611743B2 - ヒートシール接着性フィルム及びそれを使用したカード状物品 - Google Patents

ヒートシール接着性フィルム及びそれを使用したカード状物品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
フィルムを複数貼り合わせたカード状物品の製造に用いるヒートシール接着性フィルム及びこれを用いたカード状物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、テレホンカード、定期券、通行券、病院の診察券等のカード状物品は、基材フィルムであるポリマーフィルムを2層ないし多層に貼り合わせて作製されているが、基材フィルムに塗布された接着剤層同士を、又は該接着剤層と他の基材とを加熱圧着するヒートシールによって製造されることが多い。
このようなヒートシールによる融着接合で形成されたカードには、通常、耐久性(耐クリープ性)、接着強度と共にカードの平滑性が要求される。更に、近年においては、薄型のカードが要求されるようになり、カード厚さが薄くなることによって、カ−ド状物品が反ったり、捻れないことも重要な要件となっている。
【0003】
しかしながら、薄いカードの場合には、接着剤の変形の影響を受けやすく、平滑性を出すことが困難になってきている。この一般的解決方法としては、ヒートシール接着剤として収縮性の小さいポリマーを用いたり、低温で接着成形したり、あるいは接着剤層を架橋する等の方法が用いられている。
基材フィルムと接着剤層とを接着するために、基材フィルム上に極めて薄い層(接着剤層)を形成し、この層を少量(絶対量)の架橋剤を用いて架橋させていた。この方法は接着剤層と基材との接着には有効であったが、基材フィルムの収縮、捻れ、反り等には効果は小さかった。
また、接着剤層のみで解決するために、架橋剤の添加及び/又は収縮性の小さいポリマーの採用等が検討されているが、架橋剤の添加を多量にすると接着剤層の収縮は小さくなるがヒートシ−ル性は低下する等の問題があり、平滑性且つヒートシール性を同時に満足する優れた材料や方法が見い出されていないのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的はヒートシール接着剤層(HS層)のヒートシール接着性を低下させずに、且つシール成形品であるカ−ド状物品が反ったり、捻れないようにすることができるヒートシール接着性フィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は以下の本発明によつて達成される。即ち本発明は、接着剤層同士又は接着剤層と他の基材フィルムを重ね、加圧加熱してカード状物品を作製するためのヒートシール接着性フィルムにおいて、該ヒートシール接着性フィルムは、フィルム状基材の少なくとも一方の面に中間層(以下ではMC層と称する)とヒートシール性を有する接着剤層(以下ではHS層と称する)がこの順に形成され、MC層は架橋性ポリマーとしてガラス転移温度(以下ではTgと称する)が5〜120℃のポリエステル(以下ではPESと称する)とTgが−40〜50℃のポリウレタン(以下ではPUと称する)及び架橋剤を含む、厚さが0.5〜200μmの層であって、架橋剤の含有量が架橋性ポリマーの官能基当量に対して少なくとも4倍であり、PES/PU(重量比)が3/7〜7/3の範囲であり、HS層はMC層中の架橋剤で架橋可能なヒートシール性ポリマーを含む層であることを特徴とするヒートシール接着性フィルム及び上記のヒートシール接着性フィルムのHS層同士又はHS層と他の基材とが融着接合されてなることを特徴とするカード状物品である。
【0006】
【発明の実施の形態】
次に発明の好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明のヒートシール接着性フィルムは、ヒートシール接着剤層(HS層)と基材フィルムの間に中間層(MC層)を設け、MC層が収縮性に抵抗のあるガラス転移温度(Tg)の高いポリエステルと基材フィルム及びHS層に対して接着性の良い架橋性ポリマーとしてのポリウレタンからなり、更に、MC層中に架橋性ポリマーの官能基の当量より大過剰の架橋剤を存在させたことが特徴である。
【0007】
その結果、MC層自身は架橋によって強度を向上させると共に、MC層中の過剰の架橋剤をHS層と基材フィルム中にも拡散によって浸透させ、基材フィルム及びHS層に分配させた架橋剤によって、MC層とHS層及び基材フィルムとの界面を強固に接合して一体化させ、且つ、HS層の表面近傍は架橋剤濃度が低いことからヒートシール接着能が保持される。
また、MC層の厚さ及びMC層を形成するポリマーのTg、HS層のフィラー量を制御すること及び架橋剤をHS層へも分配させることによって(HS層においては、MC層との接合面の濃度が濃く、HS層表面になるほど濃度が薄くなる架橋剤の濃度勾配が生じる)HS層のヒートシール性を保持すると同時にHS層の部分的架橋によってHS層の収縮を最小限とすることが可能となった。
更に、具体的な効果として、このヒートシール接着性フィルムを用いて得られるカード状物品に、優れた耐熱性、耐折り曲げ性が付与されると共に反り等の捻れ変形に対する耐性をも付与させることが可能となった。
【0008】
以下に本発明のヒートシール接着性フィルムを構成する各成分について説明する。
本発明において使用される基材フィルムは、従来からカード状物品の製造に使用されている基材フィルムがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6,6、ナイロン6、芳香族ポリアミド等のフィルムが挙げられ、特にポリエステル系、ポリアミド系のポリマーフィルムが使用される傾向にある。基材フィルムの厚さは、通常、5〜1000μmの範囲であり、5μm未満ではMC層形成成分の溶液等の塗布が困難であり、1000μmを超えるとヒートシールによる変形も起こし難く、MC層による収縮による影響も少ないが、薄型のカードの作製には不向きである。
基材フィルムとしては延伸、未延伸フィルムが共に使用された、また、コロナ放電処理、酸化処理等の表面処理フィルムが好ましい。
【0009】
本発明を特徴づける中間層(MC層)は基材フィルムとHS層の間に介在する層である。
MC層にはこの層を形成する架橋性ポリマーの架橋剤として多官能性化合物が、架橋性ポリマーの官能基当量よりも大過剰に添加される。架橋剤を大過剰に加えることで過剰の架橋剤の一部が基材フィルム及びHS層に拡散により浸透、溶解し、架橋性ポリマーを架橋させることにより、架橋剤の一部が該ポリマーに連結した状態でMC層と基材フィルム及びHS層との間に介在し、そのアンカー効果によって、ヒートシール接着によるMC層と基材層及びHS層との強固な一体化をはかることができる。
【0010】
MC層の形成に用いられる好ましい架橋性ポリマーは、ポリエステル(PES)とポリウレタン(PU)である。
ポリエステル(PES)は、Tgが5〜120℃の範囲のものが好ましく、更に好ましくはTgが10〜100℃の範囲のものである。Tgが5℃未満ではヒートシール接着時にPESが収縮あるいは捻れる傾向にあり、Tgが120℃を超えるものはヒートシール性が悪くなる。
一方、ポリウレタン(PU)は、Tgが−40℃〜50℃の範囲のものが好ましく、更に好ましくはTgが−30〜35℃の範囲のものである。Tgが−40℃未満のものは合成が難しく、Tgが50℃を超えるものは柔軟性を失い、折り曲げ等条件によっては接着不良を起こす恐れがあり好ましくない。
両ポリマーの好ましい使用割合は、PES/PU(重量比)が3/7〜7/3の範囲、好ましくは3.5/6.5〜6.5/3.5である。PESの割合が3未満の場合にはHS層の収縮を抑えることが困難であり、また、PUの割合が3未満では基材フィルムへの接着性不良及び/又は柔軟性不足を生じる恐れががあり、好ましくない。
【0011】
MC層を形成するポリマーとして、上記のポリエステル及びポリウレタン以外に、必要に応じて、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、ポリアミド、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレンゴム、スチレン− ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその鹸化物、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂等のランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体が単独あるいは2種以上を組合わせて使用される。これらのポリマーは架橋性であっても非架橋性であってもよい。また、使用量はポリエステルとポリウレタンの合計に対して50重量%以下である。
【0012】
ポリエステルやポリウレタン等の架橋性ポリマー中に含有される官能基としては、例えば、水酸基、メチロール基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、重合性の不飽和基、メルカプト基、エポキシ基、ハロゲン基等があり、官能基の種類によって最適の架橋剤が選択される。
従って、MC層に添加される架橋剤は、ポリウレタン及びその他の架橋性ポリマーの官能基の種類によって決められ、各種官能基を有するポリマーの架橋に従来から使用されている架橋剤はいずれも使用可能であり、特に限定されない。
【0013】
例えば、ポリウレタンの架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート( TDI) 、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等及びそれらのビュウレット体、トリメチロールプロパン等とのアダクト体、イソシアヌレート3量体等の分子中に2〜6個のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート類、更にはそのイソシアネート基をアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等)、フェノール誘導体(例えば、フェノール、ニトロフェノール等)、ラクタム(例えば、カプロラクタム等)、活性メチレン系化合物(例えば、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等)等でブロックしたブロックイソシアネート(安定化イソシアネート)等が挙げられる。また、上記の有機ポリイソシアネート類より合成されるカルボジイミド系化合物及びその誘導体等も使用可能である。
【0014】
又、例えば、架橋性ポリマーの官能基がエポキシ基の場合、架橋剤としては、例えば、ポリメチレンジアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、1,3− アミノシクロヘキサン、ジアミノフェニルスルホン、4, 4′−ビストルイジン、m−フェニレンジアミン、N−メチルピペラジン、モルホリン、トリエタノールアミン、ジアルキルアミノエタノール、2,5−ジメチル2,5−ヘキサン等のアミン類;無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、無水マレイン酸、エチレングリコールビストリメリテート、m−カルボキシフェニル−3,4−アンハイドラド、m−カルボキシフェニル−3,4− アンハイドライドジメチルシラン等の酸無水物類、その他トリグリシジルイソシアヌレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等のエポキシ化合物類、ポリエーテルポリオール、ポリブタジエングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のアルコール類、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の重合性不飽和化合物類、その他シランカプリング剤類、テトライソプロピルチタネート、アセチルアセトチタネートあるいはアルミニウムアルコレート、アルミニウムキレート類、ジメチロール尿素、メチロールメラミン、ブチル化メチロールメラミンのアミノ樹脂の誘導体等が挙げられる。架橋性ポリマーの官能基は上記の例に限定されるものではない。
【0015】
架橋剤の分子量は100〜10,000の範囲が好ましく、更に好ましくは200〜7, 000の範囲である。分子量が10,000を超えると、溶媒への溶解性やHS層を形成するポリマーとの相溶性が影響し、HS相への架橋剤の拡散性が低下し、MC層とHS層との層間の接着が悪くなる。必要により触媒を共存させて架橋を促進させることもできる。
架橋剤のMC層への添加量は、MC層中のポリエステル及びポリウレタンやその他の架橋性ポリマーの全官能基当量に対して少なくとも4倍の過剰が好ましい。過剰分の一部は基材あるいはHS層に拡散、浸透し、分配される。従ってMC層は架橋剤を一時的に保持する層としての役割をする。過剰量の上限は特にないが、過剰が過ぎるとMC層における架橋剤の濃度が溶解度以上の過飽和状態となり、ヒートシール接着性フィルムの保管や貯蔵中にHS層表面に架橋剤が析出したり、ブリードするので好ましくない。多くとも100倍、更に好ましくは70倍以下である。
【0016】
MC層の膜厚は、0.5〜200μmの範囲が好ましく、更に好ましくは1〜150ミクロンである、0.5μm未満ではHS層と基材フィルムとの接着を強固にする効果が発現されるのみで、架橋MC層によるHS層の収縮を制御する効果を発現させることができず、また架橋剤の添加量が制限されることからMC層と接するHS層への架橋剤の分配量が極めて少なくなり、HS層の耐久物性を向上させる効果は小さい。また、200μmを超えると薄型のカードを製造することが困難となる。
【0017】
HS層は熱によってHS層同士又はHS層と他の基材とが接着できる層であっる。HS層を形成するポリマーは特に限定されないが、MC層の架橋剤によって架橋される官能基を有する架橋可能なポリマーが好ましい。代表例としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びその鹸化物、塩素化ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、これらのポリマーは単独あるいは2種以上が組み合わせて使用される。特にポリエステルが好ましい。
HS層の厚さは1〜300μmの範囲が好ましく、更に好ましくは5〜200μmである。1μm未満ではMC層に同化されたり、MC層から供給される架橋剤はHS層中では濃度勾配がない均一濃度層となり、架橋剤の分配の調整が困難であることからヒートシール性能を発現させることが困難である。又、300μmを超えるとMC層によるHS層の収縮性等の特性の制御が困難となる。
【0018】
HS層への架橋剤はMC層から供給され、HS層のヒートシール性と収縮性等の特性とをバランスさせるためにHS層への架橋剤の添加は必要ないが、場合により、HS層のヒートシール後の物性を調整するためにヒートシール性が損なわれない範囲で添加することができる。又、HS層にエタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を添加することによって、架橋剤が有機ポリイソシアネートの場合には架橋速度を調整することができる。これは、MC層から供給される有機ポリイソシアネートがアルコール類によってブロックされ安定化するからと考えられる。
【0019】
MC層は、基材フィルムの少なくとも一方の表面上にMC層形成成分の溶液を塗布することによって形成される。
また、HS層は、MC層上にHS層形成成分の溶液を塗布する方法及び溶融ラミネート方式によって形成される。
MC層及びHS層形成成分の溶液(以下では形成溶液と称する)は、それぞれの成分を溶媒に溶解及び分散させて調製するが、使用する溶媒はMC層及びHS層形成成分の良溶媒で調製されるのが一般的である。
最も好ましい方法はHS層の形成時にMC層形成成分に対する良溶媒を用いることである。この時に溶媒はMC層を膨潤させる作用とMC層に含有されている過剰の架橋剤をHS層に抽出運搬する作用がある。この場合HS層のMC層近傍では架橋剤濃度が高く、HS層表面ほど架橋剤濃度は低く、HS層が架橋した場合にはMC層近傍の架橋密度は高く、HS層の表面に近付くほど架橋密度は小さいかまたは架橋していないことが重要である。
【0020】
MC層形成溶液及びHS層形成溶液を調製する場合には、その成分の種類によって最適の良溶媒を選択することが好ましく、良溶媒はとくに限定されない。例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘキサン等が単独及び2種以上の混合溶剤として使用される。
【0021】
本発明のヒートシール接着性フィルムは、適当な手段で基材フィルムの少なくとも一方の表面に、先ず、MC層形成溶液を塗布し、次いでその上にHS層形成溶液を塗布し、乾燥させる。一般的にはHS層の乾燥時にMC層の架橋を行わせ、同時にMC層とHS層との界面で共架橋を生ぜしめ、両層の界面を一体化する。HS層の乾燥条件は、MC層の架橋性ポリマー及びその架橋剤の種類によって異なり、一概に決められないが、例えば、室温〜150℃で0.5秒〜24時間程度である。
【0022】
一方、HS層を溶媒を用いない溶融ラミネート方式で形成する場合も、HS層形成溶液を用いる場合と同様に架橋剤分配による効果が奏される。溶融ラミネート方式は、MC層上にポリマーとフィラー等からなるHS層形成組成物をシート状に押し出す方式である。加熱されたHS層によってMC層も温度が上がり、MC層中の過剰の架橋剤の基材フィルム及びHS層への拡散が促進され、架橋剤の分配が行われる。その結果、MC層とHS層の界面の補強、HS層のヒートシール性やHS層のMC層による熱変形やクリープ等の耐熱性で良好の結果が得られた。
【0023】
HS層中には、反りや捻じれを防止するために、必要により、フィラー等の各種添加剤を含有させることができる。フィラーとしては、例えば、シリカ微粒子、タルク、炭酸カルシウム等の充填剤;有機顔料、無機顔料、カーボンブラック顔料等の顔料等が挙げられる。フィラーの添加量はHS層中のポリマーに対して30〜70重量%の範囲、好ましくは40〜60重量%の範囲である。30重量%未満ではHS層の収縮が大きくなりやすく、70重量%を超えるとヒートシール性が低下し、実用的でない。
MC層には、通常、フィラーは添加しないが、フィルムの反りや捻れのないことが強く要求される時にはフィラーを添加してフィルムの収縮を抑えることができる。MC層へのフィラーの添加量はMS層と基材フィルム及びHS層との接着性を考慮して決定されるが、MC層中のポリマーに対して65重量%以下のの範囲である。添加量が65重量%を超えるとMC層と基材フィルム及び/又はHS層との接着が低下するので好ましくない。
【0024】
HS層には、フィラー以外に、難燃剤(例えば、水酸化アルミウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、赤燐等の無機難燃剤、テトラブロモビスフェノールA(TBA)、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、TBAエポキシオリゴマー、TBAカボネートオリゴマー、エチレンビステトラブロムフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル、トリブロモフェニルマレイミド、テトラブロモペンタエリスリトール、トリス(ペンタブロモベンジル)イソシアヌレート等の臭素系難燃剤、トリメチルホスフェート、トリエチルホスエート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロムクロロピロピル)ホスフェート、ビス(2,3−ジブロモプロピル)2,3−ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート等リン系難燃剤)、可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸系エステル類、脂肪族一塩基酸エステル類、脂肪族二塩基酸エステル類、二価アルコールエステル類、オキシ酸エステル類、ポリエステル系、エポキシ系等)、ポリアミド系ワックス類等も適宜添加することができる。
【0025】
以上の各成分を溶媒に溶解及び混合、分散させて調製したMC層形成溶液及びHS層形成剤溶液の基材フィルムへの塗布は、従来公知の塗装方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、ロールコータ、グラビア方式、フローコータ方式、リバース方式、スプレー方式、熱溶融ラミネート方式のTダイ等が利用できる。MC層形成溶液を塗布及び乾燥させ、引き続きHS層形成溶液を塗布し、乾燥させるインライン方式が好ましい。
【0026】
このようにして得られる本発明のヒートシール接着性フィルムは、それぞれHS層同士を重ね、あるいはHS層と他の基材フィルムとを重ね、加圧下に加熱することによって各種カード状物品が製造される。
カード状物品の用途としては、例えば、テレホンカード、プリペイドカード、身分証明書、定期券、通行券、診察券、遊技券等あるいはこれらの用途の非接触のICカード等があり、歪みのない平滑なフィルムを要求される分野に適用できる。
【0027】
【実施例】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。
実施例及び比較例で使用するMC層形成溶液及びHS層形成溶液は下記の通りである。Tgは、DSCを用い、昇温速度10℃/minの条件で測定した。
【0028】
(1)MC層形成溶液A
Tgが60℃の飽和ポリエステル(PES:平均分子量約8,000)とTgが10℃のポリウレタン(PU:ポリエステルポリオール使用)を固形分重量比でPES/PUが1(水酸基価=15mgKOH/g)のトルエン−MEK溶液(固形分40重量%)架橋剤溶液(TDI、HMDIからなる有機ジイソシシアネートの固形分40重量%溶液、NCO含有量=20重量%)を添加及び混合して作製したNCO基/OH基(当量比)が10の溶液。
【0029】
(2)MC層形成溶液B
上記のMC層形成溶液Aに水酸化アルミニウム、シリカからなるフィラーを、フィラー/ポリマーの重量比が10/90の固形分比となるように添加して作製したトルエン−MEK溶液(固形分40重量%)。
【0030】
(3)MC層形成溶液C
Tgが5℃の飽和ポリエステル(平均分子量約23,000、水酸基価= 5mgKOH/g)のトルエン−MEK溶液(固形分30重量%)。
(4)HS層形成剤溶液
水酸化アルミニウム、シリカからなるフィラーをMC層形成溶液Cに、フィラー/ポリマーの重量比が50/50の固形分比となるように添加して調製したトルエン−MEK溶液(固形分40重量%)。
【0031】
実施例1
2軸延伸のPETフィルム(厚さ25μm、PET収縮率0.3%)に上記のMC層形成溶液Aを15g/m (固形分換算)となるように50℃で塗布し、引き続き、HS層形成剤溶液Dを50g/m (固形分換算)となるように連続的に塗布し、80℃で30分乾燥させ、同時にMC層を架橋させた。
得られた上記ののヒートシール型シート2枚を用いて、両シートのHS間に100μmのICチップとアンテナを挟み、150℃、5kg/cmの圧力で1分間加熱プレスし、非接触ICカードを作った。この製品はフラットであって、反りはほとんど認めらず、二枚のシートは引っ張り試験では材破し、ICチップは取り出せなかった。
【0032】
実施例2
MC形成溶液AをMC形成溶液Bに代えた他は実施例1と同じ操作で非接触ICカードを作った。この製品は極めてフラットであって、反りはほとんど認めらず、二枚のシートは引っ張り試験では材破し、ICチップは取り出せなかった。
【0033】
実施例3
実施例1のMC層にTダイより100μm厚さのポリエチレンを溶融ラミネートしてヒートシール型シートを2枚作製した。各シートのHS層間に100μmのICチップとアンテナを挟み、130℃、5kg/cm の圧力で1分間加熱プレスすることにより非接触ICカードを作った。この製品は極めてフラットであって、反りはほとんど認めらず、二枚のシートは引っ張り試験では材破しICチップは取り出せなかった。
【0034】
比較例1
実施例2でMC層形成溶液Bに代えて、MC層形成溶液Cに架橋剤をNCO基/OH基の当量比が1となるように添加した塗布液を乾燥時で約0.05μm厚さになるように塗布し、その上にHS層形成溶液Dを実施例1と同じように塗布及び乾燥させた。
以下、実施例1と同様にしてICカードを作った。この製品は引っ張り試験では材破し、ICチップは取り出せなかったが明らかな反りが認められた。
【0035】
更に、収縮性及びカール性を比較するために以下の実験を行った。
熱によって著しく収縮する熱収縮性PETフィルム(厚さ25μm;収縮率70℃で約5%)を用い、これに前記のMC層形成溶液及びHS層形成溶液を塗布し、耐収縮性及び耐カール性を評価した。
評価は、MC層形成溶液等を塗布した熱収縮性PETフィルムを70℃で5分間熱処理し、幅×長さから求めた収縮率(%)と観察したフィルムのカールの状態で行った。
【0036】
MC層形成溶液等を塗布した熱収縮性PETフィルム(幅25mm、長さ150mm)の長さ方向に50mm間隔でマ−クを付けて3個の長方形を描き、一方の端をテープで固定後、熱処理し、その中央部の長方形の幅×長さを測定する。また、フィルムのカールの程度は、固定されていない開放されている他方の端のカール度合いを観察する。結果を下記の如くに表示する。
◎:幅が熱処理前の幅の95%以上あり、カールが認められない場合
○:幅が熱処理前の幅の95〜80%で、若干カールしている場合
△:幅が熱処理前の幅の80〜20%で、かなりカールしている場合
×:幅が熱処理前の幅の20〜0%である場合
尚、ブランクとして熱収縮性PETフィルム単独を熱処理した。収縮率は95.5%であった。カールは認められなかった。以下の実験はブランクとの比較である。
(塗布体はブランクより収縮とカールを伴いブランクが最良となる。)
【0037】
(1)実施例に対応する実験
〔実験1〕
熱収縮性PETフィルムにMC層形成溶液Aを乾燥後の厚さが5、15及び30g/mとなるように室温で塗布し、室温で24時間乾燥させた後、熱処理を行う。
〔実験2〕
熱収縮性PETフィルムに実施例1と同様にしてMC層形成溶液A及びHS層形成溶液Dを塗布し、乾燥させた後、熱処理を行う。
〔実験3〕
熱収縮性PETフィルムにに実施例2と同様にしてMC層形成溶液B及びHS層形成溶液Dを塗布し、乾燥させた後、熱処理をう。
【0038】
(2)比較例に対応する実験
〔実験4〕
熱収縮性PETフィルムにMC層形成溶液Cを乾燥後の厚さが5、15及び30g/mとなるように室温で塗布し、室温で24時間乾燥させた後、熱処理を行う。
〔実験5〕
熱収縮性PETフィルムに比較例1と同様にしてMC層形成溶液Cに架橋剤を添加した溶液及びHS層形成溶液Dを塗布し、室温で24時間乾燥させた後、熱処理をう。
以上の実験結果を表1に示す。
【0039】
表 1
Figure 0003611743
(注)MC−A:MC層形成溶液A
MC−B:MC層形成溶液B
MC−C:MC層形成溶液C
MC−C :MC層形成溶液C(架橋剤添加)
HS−D:HS層形成溶液D
【0040】
【発明の効果】
以上の本発明によれが、薄型のカード状物品を製造した場合にも、表面平滑性、耐収縮性及び耐カール性に優れたカード状物品の製造が可能なヒートシール接着性フィルムが提供される。

Claims (4)

  1. 接着剤層同士又は接着剤層と他の基材フィルムを重ね、加圧加熱してカード状物品を作製するためのヒートシール接着性フィルムにおいて、該ヒートシール接着性フィルムは、フィルム状基材の少なくとも一方の面に中間層(以下ではMC層と称する)とヒートシール性を有する接着剤層(以下ではHS層と称する)がこの順に形成され、MC層は架橋性ポリマーとしてガラス転移温度(以下ではTgと称する)が5〜120℃のポリエステル(以下ではPESと称する)とTgが−40〜50℃のポリウレタン(以下ではPUと称する)及び架橋剤を含む、厚さが0.5〜200μmの層であって、架橋剤の含有量が架橋性ポリマーの官能基当量に対して少なくとも4倍であり、PES/PU(重量比)が3/7〜7/3の範囲であり、HS層はMC層中の架橋剤で架橋可能なヒートシール性ポリマーを含む層であることを特徴とするヒートシール接着性フィルム。
  2. 架橋剤が分子中に2〜6個のイソシアネート基、ブロックイソシアネート基又はカルボジイミド基を有する多官能性化合物である請求項1のヒートシール接着性フィルム。
  3. HS層はヒートシール性ポリマーに対して30〜70重量%のフィラーを含有する請求項1又は2に記載のヒートシール接着性フィルム。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のヒートシール接着性フィルムのHS層同士又はHS層と他の基材とが融着接合されてなることを特徴とするカード状物品。
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