JP3610705B2 - トラックの荷台移動拘束構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の急制動時や衝突時等における荷台の移動を拘束し、キャブの損傷,損壊の防止やキャブ内の乗員の収容空間の確保を図るに好適なトラックの荷台移動拘束構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
いわゆる小型トラック(1.5トン積)以上の中大型トラックの荷台は荷台床板とその周りに立設して配置されるアオリ板等から形成され、荷台床面はその補強のための横根太および縦根太等を介してフレーム上に固持される。図5は横根太14および縦根太15を介してフレーム16上に固持される荷台13を示す。なお、横根太14は車両の前後方向に対して直交し、適宜間隔を介して複数本配設され、その上面は荷台13の荷台床板13aの下面に接して配置される。一方、縦根太15は横根太14の下面にその上面を接して車両の前後方向に沿って複数本配設される。また、縦根太15の下面はフレーム16の上面の上板16aに接して配置される。
【0003】
図5に示すように、縦根太15にはボルト締結の作業を容易に行なわせるための溝部9が形成され、縦根太15と横根太14とは両者を貫通して溝部9内にその下端を突出するボルト10と溝部9内のナット11とにより締結されて結合される。なお、ボルト10の頭部は横根太14の上面に設けた凹穴12に沈設され、荷台床板13aに干渉しないようにされている。
【0004】
また、図6に示すように、縦根太15とフレーム16とは、Uボルト20を縦根太15の上面に当接して配置されるリテーナ21を介してナット22,ワッシャ23を用いて締結することにより、結合される。
【0005】
また、縦根太15とフレーム16との間にはブレース17が架設され、ブレース17は縦根太15にボルト18a,ナット19aにより固持されると共に、フレーム16にボルト18,ナット19により固持される。
【0006】
図5乃至図7に示した以上の構造により、荷台13はフレーム16上に固持され、通常の作用力では荷台13は移動しない。しかしながら、車両の急制動時や衝突時には荷台に大きな慣性力が生ずる。そのため、前記したブレース17やUボルト20等による連結結合構造では前記の慣性力に抗しきれず、ボルト等が破断されて荷台13が前後方向に大きく移動する場合がある。そのため、荷台13が図略のキャブの背面に衝突し、キャブを損傷又は損壊すると共に、キャブ内の乗員の収容空間が狭くなる等の問題点がある。すなわち、従来技術では荷台13に加わる慣性力による慣性エネルギーが効果的に吸収されないため、荷台13が大きく移動し、かかる問題点が生じている。
【0007】
そこで、従来技術においても、衝突時等における荷台の移動を防止する種々の工夫が行われている。その一例として実開平3−72092号公報が挙げられる。この「車体構造」は、フレームと荷台をゴムマウントを介して結合すると共に、前記ゴムマウントに弾性実用域を超過する相対移動が発生した時にフレームと荷台との間の相対移動量を規制するストッパーを荷台とフレームとの間に設けたものである。また、フレームと荷台との間の移動防止構造ではないが、車両衝突時における衝突エネルギーを吸収するための公知技術として実開昭64−16970号公報が挙げられる。この「エネルギ吸収形ステアリング装置」はステアリング軸を支承するステアリングコラムと車体側に固定されるコラムブラケットとの間にU字形の折曲部を介し塑性変形可能なカーリングプレートを介設し、衝突時において前記カーリングプレートを塑性変形させて衝突エネルギーを吸収するものである。特に、前記カーリングプレートの幅寸法を可変とし、吸収エネルギーを増大させるようにする点に特徴を有するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
図5乃至図7に示した従来の荷台支持構造では、前記したようにボルトの締結力により荷台の移動を防止するもので限界がある。また、実開平3−72092号公報に示したものはストッパーによって相対移動量を規制するものでストッパー作用時においてショックが発生し、かつストッパーが破断される恐れもある。また、荷台およびフレームの双方に互いに係合するストッパーを設けるため構造が複雑になる。また、ゴムマウントとストッパーとを併用するため全体構造が複雑なものになり、かつどの位置でストッパーを作用させるかについて不明確である。一方、実開昭64−16970号公報の場合は前記の公知技術と異なり衝突エネルギーが序々に吸収されるものであるが、カーリングプレートおよびその支持構造が複雑であり、荷台とフレームとの間に複数個適用するとコスト高になると共に、構造上荷台とフレームとの間には装着し難いものである。
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みて創案されたものであり、車両衝突時や急制動時における押圧エネルギーを序々に吸収し荷台の移動を抑制すると共に、構造が簡単で、安価に実施できるトラックの荷台移動拘束構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するために、フレームと荷台床板との間に設けられる縦根太を介して前記フレーム上に固持される荷台の前後方向の移動を拘束する荷台移動拘束構造であって、前記フレーム上に接して固持される前記根太の下面側に溝部を設け、該溝部内に該溝部の壁面に沿う外輪郭を有する帯板を嵌め込んで縦根太と横根太とを締結する締結具により前記溝部内に固定すると共に、前記帯板の前記荷台の移動方向と反対側の面の移動を拘束する舌状板を前記フレーム上に設け、前記舌状板はその先端側を前記帯板に当接すると共にその基端部を前記フレーム側に連結するものからなり、前記基端部側は前記帯板側からの押圧力により押圧方向に切り裂き可能に形成することを特徴とする。また、
前記帯板の前記舌状板の先端側が当接する部位の下方側には、前記先端側の下方側へのずれを防止するための凸状部が一体的に屈曲形成されるトラックの荷台移動拘束構造を特徴とするものである。
【0011】
溝部に嵌まり込んだ帯板にはフレーム上に設けた舌状板の先端側が当接する。なお、舌状板は帯板の下方側に突出して形成される凸状部に支持され、下方への移動を拘束される。車両の急制動や衝突時には荷台に大きな慣性力が作用し、舌状板の先端には帯板側から大きな押圧力が作用する。舌状板の基端部側は切り裂き可能に形成されているため、舌状板に大きな押圧力が作用すると基端部側に切り裂きが生じ、荷台からの衝突エネルギーを吸収する。このため、荷台の移動は抑制され、荷台によるキャブの損傷,損壊が防止され、かつキャブ内の乗員の収容空間が確保される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のトラックの荷台移動拘束構造の実施の形態を図面を参照して詳述する。図1に示すように、荷台13は横根太14およびその下方に配置される縦根太15を介してフレーム16上に固持される。前記したように、縦根太15とフレーム16とはUボルト20やブレース17により連結され、横根太14と縦根太15とはボルト10、ナット11により連結される。
【0013】
図1および図2に示すように、フレーム16の上板16aに接する縦根太15の下面には略弧状の溝部9が多数個形成される。この溝部9の壁面には図3に示す帯板2が図2に示すように嵌まり込んで固定される。
【0014】
帯板2は、一枚の板を溝部9の壁面に相当する外輪郭形状に屈曲成形したものからなり、詳細構造としては上面側に平坦面を有し、その両側に弧面を形成するものからなる。また、一方の弧面の下端側には内部に向かって突起する凸状部7が一体的に形成される。また、上方の前記平坦面の中央にはボルト10が通る貫通孔8が穿孔される。図1および図2に示すように、横根太14と縦根太15とを貫通するボルト10の頭部は、横根太14の凹穴12内に収納され、ボルト10の下端は溝部9内に突出し、ナット11により帯板2を溝部9の壁面に押圧して締め込む。
【0015】
図4に示すように、本例では舌状板1はフレーム16の上板16aの一部を切り込んで屈曲せしめて形成されるものからなる。すなわち、フレーム16の上板16aの一部に基端部4を残した状態でU字形状のスリット5を入れ、スリット5によって囲まれた上板16aの部分を基端部4を残して上方にめくり上げ弧形状に形成したものからなる。なお、めくり上げた先端部にはカール部3が形成される。なお、スリット5は基端部4側に終端部を形成するため舌状板1のめくり上げ方向に押圧力が作用すると上板16aは前記終端部をトリガー(引き金ね部)として切り裂かれ、図4に2点鎖線で示すように切り裂き線6が上板16aに形成される。なお、舌状板1のめくり上げ方向の押圧力はカール部3の押圧によって生ずる。
【0016】
図1および図2に示すように、舌状板1は縦根太15の溝部9内に配置され、図2によく示すように、溝部9の帯板2の内面の図の後端面に舌状板1のカール部3を当接させて配置される。カール部3は凸状部7により下方への移動が拘束される。なお、舌状板1は、図1に示すようにすべての溝部9内に配置されなくてもよい。また、舌状板1は帯板2の後面側に当接して配置されるが、前面側に当接して配置してもよい。これにより縦根太15の取り付け位置決め用のストッパーとしても使用可能である。
【0017】
次に、本例の作用を説明する。車両が急制動をかけた場合や衝突時には図1に示すように荷台13には矢印C方向(前方向)に移動する慣性力が発生する。この慣性力は荷台13をフレーム16に固持するためのUボルト20やブレース17およびボルト10等にも作用するが、舌状板1にも作用する。荷台13から加わる慣性力がある力を越える場合には、前記したUボルト20等による締結力のみでは荷台13の移動を防止できれず、舌状板1のカール部3に大きな力が作用する。このため、舌状板1は切り裂き線6(図4)を形成しながら図2の点線の位置までめくり上げられる。このめくり上げは慣性エネルギーを吸収するように作用するため、荷台13からの慣性エネルギーは舌状板1のめくり上げ変形に伴って吸収される。従って、荷台13の移動が大巾に減少することになる。勿論、荷台13からの押圧力が極めて大きくなると、図2に示したボルト10もナット11との結合点近傍で切断される恐れもあるが、舌状板1があるため、仮りにボルト10等が破断されても、舌状板1により慣性エネルギーを吸収する。以上により荷台13の移動が拘束されるため、荷台13とキャブ(図略)との衝突がさけられ、キャブの損傷,損壊が防止される。このため、キャブ内の乗員の収容空間が安全状態に保持される。
【0018】
本例では舌状板1をフレーム16上の上板16aを利用して形成したが、別体品をフレーム16上に固着してもよい。また、溝部9の形状やこれに嵌まり込む帯板2の形状を図示のものとしたが、勿論この形状に限定するものではない。また、本例では舌状板1は縦根太15の溝部9内に配置したが、横根太14側に配置してもよい。
【0019】
【発明の効果】
1)本発明の請求項1に記載のトラックの荷台移動拘束構造によれば、荷台に連結する根太の溝部にフレーム側に形成される舌状板を当接せしめ、荷台の移動を拘束すると共に、舌状板の切り裂き線の形成によって慣性エネルギーを吸収するため、荷台の移動を大巾に低減することができる。これにより、荷台によるキャブの損傷や損壊が防止される。また、乗員の収容空間も確保される。また、舌状板が当接する溝部の壁面に帯板を嵌め込むことにより舌状板が比較的剛性のある帯板により支持されるため、舌状板の変形と切り裂きが円滑に、かつ確実に行われ、慣性エネルギーの吸収が効果的に行われる。
2)本発明の請求項2に記載のトラックの荷台移動拘束構造によれば、凸状部により舌状板のカール部の下方への移動が防止されるため、舌状板の変形,切り裂きが円滑に行われ、慣性エネルギーの吸収効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の舌状板を設けた荷台移動拘束構造を示す側面図。
【図2】図1の舌状板の配置される部位の拡大図。
【図3】本発明に使用される帯板の形状を示す斜視図。
【図4】本発明の舌状板の詳細構造を示す斜視図。
【図5】従来の荷台のフレームとの連結構造を示す側面図。
【図6】図5のA矢視の背面図。
【図7】図5のB−B線拡大断面図。
【符号の説明】
1 舌状板
2 帯板
3 カール部
4 基端部
5 スリット
6 切り裂き線
7 凸状部
8 貫通孔
9 溝部
10 ボルト
11 ナット
12 凹穴
13 荷台
13a 荷台床板
14 横根太
15 縦根太
16 フレーム
16a 上板
17 ブレース
18 ボルト
18a ボルト
19 ナット
19a ナット
20 Uボルト
21 リテーナ
22 ナット
23 ワッシャ
Claims (2)
- フレームと荷台床板との間に設けられる縦根太を介して前記フレーム上に固持される荷台の前後方向の移動を拘束する荷台移動拘束構造であって、前記フレーム上に接して固持される前記根太の下面側に溝部を設け、該溝部内に該溝部の壁面に沿う外輪郭を有する帯板を嵌め込んで縦根太と横根太とを締結する締結具により前記溝部内に固定すると共に、前記帯板の前記荷台の移動方向と反対側の面の移動を拘束する舌状板を前記フレーム上に設け、前記舌状板はその先端側を前記帯板に当接すると共にその基端部を前記フレーム側に連結するものからなり、前記基端部側は前記帯板側からの押圧力により押圧方向に切り裂き可能に形成することを特徴とするトラックの荷台移動拘束構造。
- 前記帯板の前記舌状板の先端側が当接する部位の下方側には、前記先端側の下方側へのずれを防止するための凸状部が一体的に屈曲形成されるものである請求項1に記載のトラックの荷台移動拘束構造。
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JP31415896A JP3610705B2 (ja) | 1996-11-12 | 1996-11-12 | トラックの荷台移動拘束構造 |
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