JP3610463B2 - 水質浄化装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は水質浄化装置に関し、特に景観を損なうことなく、大量の水の水質浄化を簡単かつ確実に行うことのできる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
家庭排水や工業排水等の浄化には濾過、沈降分離、微生物処理等がよく利用されているが、微生物処理は小型のシステムを構築できることから、種々実用化される傾向にある。
【0003】
例えば、1.微生物を担持させた担体を汚水槽内に懸濁させ、汚水を槽内に送り込む方法(特開昭56ー89897号公報、特開昭57ー30596号公報、特開昭63ー248499号公報、等参照)、2.微生物を担持させた担体粒子にて流動床を構成し、流動床に汚水を循環させる方法(特開平2ー119993号公報参照)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来公報記載の方法はいずれも汚水処理システムを別途構築する必要があり、湖沼、河川、池、ダム等の大量の水の浄化には大型の装置を必要として適用し難く、又日本庭園の鑑賞池等、景観を要求される場所には無機的な汚水処理システムを設置すると景観が損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑み、湖沼、河川、池、ダム等において簡単に水質の浄化を行うことのでき、しかも周囲の景観を損なうことのないようにした水質浄化装置を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明に係る水質浄化装置は、水中に投入されて設置可能な籠体内には多孔性の担体を収容し、担体には水中生物の生物循環連鎖の一部を構成する複数種の光合成細菌を付着させるとともに、生物循環連鎖を構成する各種水中生物の繁殖を促進させるミネラル水溶液を注入し、光合成細菌から始まる生物循環連鎖中の水中生物にて水質処理を可能としたことを特徴とする。
【0007】
光合成細菌は備長炭を使用した上述の水質浄化装置を鑑賞池に投入し、備長炭の中にコロニーを形成していた複数種類の細菌、例えば5種類の細菌を培養して使用した。水中生物の生物循環連鎖とは細菌、微生物、プランクトン、藻類、水生小動物、魚類で構成される生物連鎖をいう。担体は白炭が好ましいが、生産量の点で使用が制限されることが懸念されるので、活性炭や樹脂発泡材を単独又は組合せ、あるいは白炭と組合せて使用してもよい。
【0008】
即ち、籠体内には複数の第1担体と第2担体とを隣接して充填し、第1担体は相互に三次元に連続した多数の透孔する有する白炭又は活性炭、第2担体は第1担体とは異なる形態の多数の透孔を有する樹脂発泡材とすると、第1、第2の担体にはその表面からの深さ及び透孔の特性に対応し、光合成細菌から始まる生物循環連鎖の一部を構成する複数の異なる水質処理微生物が効率よく繁殖されるので好ましい。
【0009】
水溶液のミネラルは天然ミネラルがよく、具体的には天然岩石から抽出したリン、鉄、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、マンガン、コバルト、ニッケル、ゲルマニウム、バナジウム、ケイ素、アルミニウム、リチウム、フッ素、イオウ、ルビジウム、ストロンチウム等を含む天然ミネラルを使用するのがよい。これらには生物循環連鎖を構成する水中生物の生体内に生物電気や活性電位を生じさせてイオン化の働きを良くし、細胞を活性化するとともにホルモンバランスを良くし、これによって生物循環連鎖を構成する水中生物の繁殖を促進する効果があると考えられる。例えば、コンクリート人工池で錦鯉や金魚を養殖する場合、コンクリートの強アルカリ性に起因して錦鯉等が弱りやすいので、第1、第2の担体に天然ミネラル水溶液を注入しておくと、天然ミネラルが池の水に微量ながら溶け出して錦鯉を活性にする。
【0010】
かかるミネラルは第1、第2担体に注入するために水溶液として使用するが、本件発明者の実験によれば500倍〜1000倍の水で溶解した水溶液が最適であった。
【0011】
籠体の形状は特に限定されず、多角筒状や円筒状等を採用でき、又網状としてもよく、周壁をパンチングして多孔性としてもよい。籠体の材料はステンレス鋼等の金属材料、ポリエチレンや塩化ビニル等の樹脂材料を用いることができる。籠体は水質を浄化する場所に投入すれば浄化床となる。河川では増水したり、水流が強くなったりすると、流されるおそれがあるので、籠体を固定するのが好ましい一方、庭園の鑑賞池等、水の澱んだ場所にはかかる固定は不要であり、最適である。
【0012】
第1、第2の2種類の担体を用い、しかも第1担体を相互に三次元に連続した多数の透孔する有する木炭又は活性炭とし、第2担体を第1担体とは異なる形態の多数の透孔を有する樹脂発泡材とした場合、第1担体である木炭又は活性炭は他に類を見ないような非常に多数の透孔を有し、しかも相互に三次元に連続した複雑な透孔形態をなす。従って、表層の透孔、中間層の透孔及び芯近傍の透孔には各々異なる水質処理微生物が付着し、水中に長時間浸漬しても水質変化に耐えて増殖することとなる。第1担体の木炭には白炭や活性炭を使用できるが、特に馬目樫でできた備長炭が透孔率が高く、細菌のコロニーの形成に最適である。
【0013】
第2の担体である樹脂発泡材は第1担体とは異なる形態の透孔を有するので、第1担体とは異なる微生物が繁殖しやすい。第2担体はポリエチレン等の多孔質樹脂発泡材を使用するが、微生物が付着し生息しうる発泡率とする必要がある。第2担体は第1担体と同様に小片の組合せとしてもよいが、取扱い上、一体のものとしてもよい。
【0014】
第1担体と第2担体とは混在して籠体内に充填してもよいが、第1担体を籠内に保持する上で、下記参考例に示されるように第1担体と第2担体とを層状に充填するのがよい。
【0015】
担体中の光合成細菌から水質処理微生物が自然発生的に繁殖するが、好気性微生物の場合にはエアーレーションを行って増殖させるのがよい。即ち、水質処理微生物が好気性微生物の場合、籠体には底部に水密構造の収納室を設け、収納室を水面上方にエアー吸入口を有するエアー通路に連通させ、籠体の底部収納室にはエアーポンプを配設してエアーポンプからの気泡にて籠体の第1、第2担体をエアーレーションするのが好ましい。
【0016】
エアーポンプの電源はDC6V〜12VやDC6V〜24Vの電池又はバッテリー、AC100Vの商用電源を用いることもできるが、装置を設置する状況によってはかかる電源がない場合もある。そこで、籠体にエアーポンプに通電するためのソーラーパネルを水面上方に位置するように設け、電源を確保するのがよい。ソーラーパネルは籠体の上方に支持してもよく、又籠体の上方に浮体を設けてソーラパネルを支持してもよい。
【0016】
【作用および発明の効果】
本発明によれば、多孔性担体にミネラル水溶液を注入するとともに、培養した光合成細菌を付着させ、水中での生物循環連鎖を構成する各種水中生物を繁殖させ、これによって水質を浄化するようにしたので、水質処理微生物のみで浄化を行う場合に比して浄化効率が高い。即ち、微生物担体中にミネラル水溶液を注入しているので、ミネラル成分が微量ずつ水中に溶け出し、赤虫やヤゴ等の水中生物の住環境、緑色藻等の藻類の繁殖環境を整えることができ、各種の水中生物を繁殖させ、自然の水質浄化サイクルを確保して水質を効率よく浄化できる。さらに、例えば鑑賞魚用のコンクリート製池の水質浄化に適用すると、鑑賞魚に必要かつ十分な餌を提供して健康的に育成できる。
【0017】
また、水質処理装置を投入式とし、しかも水没させうるようにしたので、湖沼、河川、池、ダム等の大量の水の浄化する場合にも必要な数だけ造って水中に投入すればよい。しかも、日本庭園の鑑賞池等の場合にも自然の景観を損なうことがない。その結果、文化遺産の濠や池、庭園やゴルフ場の池、農業用溜池、鑑賞用水槽、水族館のプール、生簀、養魚場等、多様な場所の水質処理に適用することが可能となる。
【0018】
また、籠体内の第1、第2担体を異なる透孔形態とし、ミネラル水溶液を注入すると、各種の水質処理微生物が自然発生しやすく、さらにその後の生物循環連鎖を構成する各種水中生物も繁殖しやすい。特に、第1担体を複雑な透孔形態の木炭又は活性炭としているので、多種多様な水質処理微生物が第1担体に繁殖しやすく、又何らかの原因、例えば水温の急変や水の急流によって第2担体の微生物が剥離した場合にも第1担体の微生物によって第2担体の微生物が回復するまで装置の水質処理能力を維持できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明による水質浄化装置における担体の構造例を示す。図において、籠体10はステンレス鋼線を円筒網状に製作して構成され、高さは設置すべき水深よりも若干低い寸法に設定され、水中Wに投入されて水没されるようになっている。
【0020】
籠体10内には外側及び中央に第2担体である多孔性ポリエチレン発泡材20、20がレイアウトされ、その間には第1担体である白炭30が充填され、こうして多孔性ポリエチレン発泡材20、20と白炭30とが相互に隣接して層状に充填されている。
【0021】
多孔性ポリエチレン発泡材20、20及び白炭30には天然ミネラル水溶液が注入され、これはリン(87ppm )、鉄(10100ppm )、カルシウム(494ppm )、ナトリウム(205ppm )、カリウム(1110ppm )、マグネシウム(5860ppm )、銅(15.2ppm )、亜鉛(36.7ppm )、マンガン(235ppm )、コバルト(10.2ppm )、ニッケル(39.5ppm )、ゲルマニウム(5ppm )、バナジウム(18ppm )、ケイ素(69ppm )、アルミニウム(5610ppm )、リチウム(4.5ppm )、フッ素(66ppm )、イオウ(63700ppm )、ルビジウム(15ppm )、ストロンチウム(2ppm )を含み、天然岩石から抽出された天然ミネラルが使用され、これを500倍〜1000倍の水に溶解したものを使用した。
【0022】
また、多孔性ポリエチレン発泡材20、20及び白炭30には培養した5種類の光合成細菌が付着されている。この光合成細菌は備長炭を使用した上述の水質浄化装置を鑑賞池に投入し、備長炭の中にコロニーを形成していた複数種類の細菌のうちの5種類を培養して使用した。
【0023】
本件発明者は第1担体に白炭15kgを使用した40個の本例の水質浄化装置を用い、深さ1.5mで約1000tの水を貯留する錦鯉の鑑賞池に適当な間隔で投入し、水没させて水質浄化の効果を調べたところ、2年が経過しても池底には錦鯉の排泄物、木の葉、藻等の堆積物は少なく、池底が見える程度に透明度が保持されていることが確認された。また、装置の下方に赤虫やヤゴが発生し、本装置に藻類が付着し、錦鯉の餌となっていることが分かった。しかも、コンクリート製の池でよく見られる錦鯉の褪色はほとんど見られず、例えば赤色は赤色に、白色は白色にくっきりと鮮明な色となり、さらには寄生虫等も目に見えて減少し、しかも錦鯉の餌の食いも非常によく、又稚魚の繁殖と稚魚の育成もよく、錦鯉の快適な住環境であることが確認されたが、これらもミネラルによる効果であると考えられる。
【0024】
また、水温の急変や長雨による増水によって水質浄化性能が一時的に低下し、水の汚れが若干みられるようになったが、2〜3日すると、性能が回復し、水の透明度が元に戻ることが確認された。
【0025】
他方、本例の水質浄化装置を投入する場所は水が澱んでいるよりもゆるやかな水流がある方がよいことが分かった。従って、池や濠等、水が澱んた場所に使用する場合にはゆるやかな水流を造るのがよい。
【0026】
図3は他の担体の構造例を示し、本例では籠体10を直方体状に形成し、籠体10内には外側から第2担体20、第1担体30、第2担体20、第1担体30の順で層状に充填している。
【0027】
図4は本発明に係る水質浄化装置の好ましい実施例を示す。本実施例では籠体10の上方の水面より高い位置にソーラーパネル40が支持され、籠体10の底部には水密構造の収納室11が形成され、収納室11内にはモータ50及びエアーポンプ51が内蔵され、モータ50にはソーラパネル40からの電源線が接続されている。また、収納室11は水面上方にエアー吸入口を有するエアー路12に連通され、エアーポンプ51に外気が供給され、エアーポンプ51からのエアーが第1、第2担体20、30に供給されてエアーレーションが行われ、第1、第2担体20、30ではこれに付着した好気性微生物の増殖が促進され、水質浄化性能がアップされるようになっている。なお、エアー通路12のエアー吸入口は雨水の侵入を防止するカバーを設けるのがよく、又水面変動を考慮すると浮子式とするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水中に投入し設置した水質浄化装置の担体の構造例を示すを示す概略正面図である。
【図2】図1の内部構造を示す一部切開断面斜視図である。
【図3】他の担体の構造例を示す断面平面図である。
【図4】本発明による水質浄化装置の好ましい実施例を示す正面構成図である。
【符号の説明】
10 籠体
11 収納室
12 エアー通路
20 第2担体
30 第1担体
40 ソーラパネル
50 モータ
51 エアーポンプ
Claims (2)
- 水中に投入されて設置可能な籠体内には多孔性の担体が収容され、担体には水中生物の生物循環連鎖の一部を構成する複数種の光合成細菌が付着されるとともに、生物循環連鎖を構成する各種水中生物の繁殖を促進させるミネラル水溶液が注入されており、光合成細菌から始まる生物循環連鎖中の水中生物にて水質処理を可能となした水質浄化装置であって、
籠体(10)内には複数の第1担体(30 ・・・) と第2担体(20 ・・・) とが隣接して充填され、第1担体(30)は相互に三次元に連続した多数の透孔を有する白炭又は活性炭、第2担体(20)は第1担体(30)とは異なる形態の多数の透孔を有する樹脂発泡材からなり、第1、第2の担体(30、20) にはその表面からの深さ及び透孔の特性に対応し、光合成細菌から始まる生物循環連鎖の一部を構成する複数の異なる水質処理微生物を繁殖可能となす一方、
水質処理微生物が好気性微生物であり、籠体 (10) は底部に水密構造の収納室 (11) を有し、収納室 (11) が水面上方にエアー吸入口を有するエアー通路 (12) に連通され、籠体 (10) の底部収納室 (11) にはエアーポンプ (51) が配設されてエアーポンプ (51) からの気泡にて籠体(10)の第1、第2担体(30 、20) が担体内部からエアーレーションされるようにしてなることを特徴とする水質浄化装置。 - 籠体にはエアーポンプ(51)に通電するためのソーラーパネル(40)が水面上方に位置するように設けられている請求項1記載の水質浄化装置。
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JP25694795A Expired - Fee Related JP3610463B2 (ja) | 1995-09-07 | 1995-09-07 | 水質浄化装置 |
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