JP3608954B2 - 増圧式クッション回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス機械で行う閉塞成形において、上型と下型を所要の閉塞力で押圧するクッションシリンダに圧油を供給する増圧式クッション回路に関し、クッションシリンダのストローク初期の初期力を小さくし、下死点前の所要の位置から最大力を発生させ、プレスエネルギの無駄な消費を無くし、プレス能力を最大限に活用したい場合に有効である。
【0002】
【従来の技術】
プレス機械で行う閉塞成形は、例えば、図4(e)に示す成形品1を図4(a)に示す素材2から図3に示す1工程で成形する。図3(a)の中心線左側に示す第1位置で、下型3のダイス4穴に素材2を供給し、素材2の下端を下型3に固定してダイス4穴内に挿入したパンチ5で支持する。プレス機械のスライドとともに下降する上型6のダイス7がダイス4に当接する。上型6に固定しダイス7穴内に挿入したパンチ8は、まだ素材2に当接していない。
【0003】
図3(a)の中心線右側に示す第2位置で、スライドとともにパンチ8が下降し素材2の上端面に当接する。図ではダイス4,7の当接面を基準として表したので、相対的に下型3が上昇している。
【0004】
図3(b)に示す第3位置で、パンチ8が下降し、パンチ5との間で素材2の上下の端面を成形し、図4(c)に示す中間成形品9に成形する。この第3位置の成形時にダイス4とダイス7を離れさせるように作用する成形力は、まだ発生しない。この成形力に対抗する閉塞力は、下型3のダイス4を押し上げるクッションピン10を介して図示していないベッド内に設けた下主シリンダ、すなわち下クッションシリンダと、上型6のダイス7を押し下げるクッションピン11を介して図示していないスライド内に設けた上主シリンダ、すなわち上クッションシリンダとにより発生させる。パンチ8の下降に伴い、クッションピン10及び11を介して上主シリンダ及び下主シリンダは所要のストロークを行う。
【0005】
図3(c)の中心線左側に示す第4位置で、パンチ8がさらに下降し、パンチ5との間で図4(d)に示す第2中間成形品12に成形する。この時、ダイス4及び7に作用する成形力は、図5にBで示す約100tfである。
【0006】
図3(c)の中心線右側に示す第5位置で、パンチ8が下死点まで下降し、パンチ5との間で図4(e)に示す成形品1に成形する。この時、ダイス4及び7に作用する成形力は、図5にCで示す約115tfである。
【0007】
以上のように、図3に示す閉塞成形により図4(e)に示す成形品1を成形すると、図5にA−B−Cで示す上下ダイス7,4を開こうとする力が作用する。この成形力に対抗してダイス4及び7に閉塞力を作用させる必要がある。
【0008】
図6は、前述の上及び下主シリンダに所要の油圧に調整した圧油を供給する空油圧回路13の従来例である。主シリンダ14は、ブースター15、逆止弁16を介して所要の油圧を有する油圧源17に接続し、所要の空圧を有する空圧源18の圧力空気を、圧力調整可能な調整弁19、逆止弁20、安全弁21を有するエアタンク22を介してブースター15に供給し、調整弁19で、例えば、4.8kg/cm2に空圧を調整してブースター15に供給することにより、主シリンダ14は、図5に示す最大125tfとなるD−G−E線に沿って動作し、上下ダイス7,4を開こうとする力A−B−C線に対抗して一定の閉塞力を発生させる。この回路13は、成形中圧力を変化させる調整を行わない常圧式回路である

【0009】
図7(a)は、上述の一定の閉塞力を図5に示す上下ダイス7,4を開こうとする力A−B−C線に近づけるために従来用いられた4段式主シリンダ23で、圧油供給口24から一定圧力に調整された圧油を供給し、第1ピストン25、第2ピストン26、第3ピストン27及び第4ピストン28がストロークとともに順に当接して協働し、図7(b)の能力線図に示す段階的な閉塞力を発生させるが、この例で最大閉塞力125tfを発生させるには、40mm以上のストロークが必要となる。この図7(b)では、第1〜第4ピストン25〜28をNo.1〜No.4で示した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の図6に示した一定の閉塞力を与える常圧式回路は、図5のA−B−Cで示す成形力が、主シリンダのストロークの初期に小さな閉塞力で十分であるのに対し、最初から最大閉塞力を発生させるため、プレス機械は大きなエネルギを無駄に使用し、プレス機械の能力を効率よく使用することが出来ない。
他方、図7に示す段階的に閉塞力を増加させる多段式シリンダによるものは、ストロークの初期の閉塞力は小さいが、大きくストロークしなければ所要の閉塞力が発生しないと言う欠点があり、金型のストロークを長くするので金型構造等が複雑となり、金型設計の自由度が小さくなる。また、多段式シリンダは、スペースも広く必要になる。
【0011】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、クッション能力を、ストローク初期の初期力は小さくし、所要の位置から下死点までは所要の最大力として省力化を図るとともに、クッションシリンダのストロークも小さく出来る増圧式クッション回路を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するために、本発明は、油圧源からブースターを介してクッションシリンダに接続した油圧回路と、空圧源からブースターに接続した空圧回路とを有する増圧式クッション回路において、空圧源に隣接して、空圧源の圧力空気をクッションシリンダに所要の最大力を発生させる油圧を供給出来る空圧に調整する最大力設定用の主調整弁を設けるとともに、この主調整弁からブースターまでの回路の途中に2列の分岐回路を設け、一方の分岐回路には、空圧源側から順に、第1エアタンクと、空圧源側に向けて開く第1逆止弁を設け、他方の分岐回路には、空圧源側から順に、クッションシリンダに所要の初期力を発生させる油圧を供給出来る空圧に調整する初期力設定用の副調整弁と、第2エアタンクと、ブースター側に向けて開く第2逆止弁を設ける

【0013】
【作用】
クッションシリンダは、初期力を発生させる油圧を供給された状態でストロークして油を圧縮し、油圧が次第に上昇し最大油圧に達した後は、第1逆止弁から圧力空気が第1エアタンクに逃げ、クッションシリンダは最大油圧を保持して下死点までストロークする。副調整弁により初期力を調整することにより、ストローク初期の閉塞力が小さくてよい域では小さな初期力、大きな閉塞力が必要な下死点前の任意の位置ではクッションシリンダを最大力にすることが出来、各種の閉塞成形に必要な閉塞力を効率よく得ることが出来る。
【0014】
【発明の実施の形態】
図1及び図2に本発明における増圧式クッション回路の一実施例を示す。
図1(a)は、増圧式クッション回路30を示し、クッションシリンダ31には油圧源32から逆止弁33を通りブースター34で制御された圧油を供給する油圧回路35を設け、ブースター34には制御用の空圧回路36を接続している。
【0015】
空圧回路36は、空圧源37の圧力空気を減圧調整してクッションシリンダ31に所要の最大力を発生させるための最大力設定用の主調整弁38、続いて逆止弁39を設け、逆止弁39からブースター34までの回路を途中で2列の第1分岐回路40と第2分岐回路41とに分岐している。
第1分岐回路40には、空圧源37側から順に、安全弁43付の第1エアタンク42と、空圧源37側に向けて開く第1逆止弁44とを設けている。
【0016】
第2分岐回路41には、空圧源37側から順に、クッションシリンダ31に所要の初期力を発生させるための所要の空圧を調整出来る初期力調整用の副調整弁45と、安全弁47付の第2エアタンク46と、ブースター34側に向けて開く第2逆止弁48とを設けている。
【0017】
図1(b)は、増圧式クッション回路30を設けたクッションシリンダ31における空圧調整と能力(tf)とストローク(mm)との関係の一例を示している。この場合、図1(a)に示す主調整弁38に設定調整した空圧は、4.8kg/cm2でクッションシリンダ31の能力は線P−Pに沿って移動し、最大力はストローク40mmの下死点で125tfである。また、副調整弁45に設定する空圧を2kg/cm2,2.5kg/cm2,3kg/cm2,4kg/cm2とした場合、ダイクッション能力はストロークに伴い右肩上がりにQ−Q,R−R,S−S及びT−Tの各曲線に沿って変化する。これらの線が主調整弁38で設定した4.8kg/cm2の能力線P−Pに到達し、Q1,R1,S1及びT1点に至ると、以後、ブースター34の空圧は4.8kg/cm2を越え、各曲線の一点鎖線部に沿って変化しようとするが、第2逆止弁48には逆流出来ないので第1逆止弁44を通り第1分岐回路40に逆流し、第1エアタンク42に吸収され、ダイクッションシリンダ31の能力はそれぞれR1−P,S1−P及びT1−Pに沿って移動し、最大力125tfに保持されて下死点に至る。
【0018】
図1(b)において、図5の成形力A−B−Cに対応させるためには、副調整弁45で空圧を約3.3kg/cm2に設定し、ストローク20mmで最大力を発生させればよい。このように、初期力から最大力に至るまでは、プレスエネルギの消費を少なくして省力化を図ることが出来る。なお、副調整弁45で最大力と等しい空圧を設定すれば常圧式と同様の能力一定としても使用することが出来る。主調整弁38で空圧を種々に設定し、クッションシリンダ31の最大力を変え、副調整弁45の設定空圧を種々に変化させれば、各種の閉塞成形において、初期力を小さくし、かつ下死点前の任意の位置で最大力を発生させ、成形力の変化に近い閉塞力を得ることが出来、クッション能力に要するプレスエネルギを最小限とすることにより、プレス能力を最大限まで活用出来る。また、クッションシリンダのストロークを小さく出来、金型構造の設計の自由度を向上させることが出来る。
【0019】
図2は、増圧式クッション回路30を適用したプレス機械60を示す。
ベッド49に据え付けたボルスタ50上に下型51を固定し、ベッド49内に下型51用のクッションシリンダである下主シリンダ52を設け、スライド53下面に固定した上型54用のクッションシリンダである上主シリンダ55をスライド53内に設け、下主シリンダ52及び上主シリンダ55に圧油を供給するために、図1(a)に示した増圧式クッション回路30を設けている。
【0020】
増圧式クッション回路30は、下主シリンダ52と上主シリンダ55を接続した回路をブースター34を経由して油圧源32に至る油圧回路35と、ブースター34から空圧源37に至る空圧回路36を図1(a)に示すとおりに設けている。但し、空圧回路36は、主調整弁38とブースター34との間の二点鎖線で囲んだP部内の回路を省略しているが、M部には図1(a)に示す逆止弁39と第1分岐回路40及び第2分岐回路41を設けている。
【0021】
なお、この図に示す下型51は、同調用の補助シリンダ56と、これに関連する図示しない空油圧回路を設けているが、本発明と直接関係しないので説明を省略する。また、上下シリンダをダイセットに設けても同様であり、シリンダを上下単独に設けても同様である。
【0022】
増圧式クッション回路を油圧サーボ弁式とする等、本発明の技術的思想に基づく設計変更は、全て本発明に含まれることは言うまでもない。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、最大力設定用の主調整弁と、初期力設定用の副調整弁とを設け、第1分岐回路の第1逆止弁及び第2分岐回路の第2逆止弁の作用によりクッションシリンダの能力を調整したので、クッションシリンダのストローク初期には小さい初期力を発生し、下死点前の任意の位置で最大力を発生するので、プレス機械のエネルギを無駄に消費することなく、また、比較的短いストロークで最大力を発生するので、金型構造の設計に十分な自由度を持たせることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)増圧式クッション回路の回路図
(b)クッションシリンダの能力線図
【図2】プレス機械の要部斜視図
【図3】工程順説明図
【図4】素材から成形品までの工程順説明図
【図5】閉塞成形の成形力と、所要の閉塞力を示す線図
【図6】従来例における空油圧回路図
【図7】(a)従来例における4段式主シリンダの要部正面図
(b)従来例における4段式主シリンダの能力線図
【符号の説明】
1は成形品、2は素材、3は下型、4,7はダイス、5,8はパンチ、6は上型、9は中間成形品、10,11はクッションピ、12は第2中間成形品、13は空油圧回路、14は主シリンダ、15はブースター、16,20は逆止弁、17は油圧源、18は空圧源、19は調圧弁、21は安全弁、22はエアタンク、23は4段式主シリンダ、24は圧油供給口、25は第1ピストン、26は第2ピストン、27は第3ピストン、28は第4ピストン、30は増圧式クッション回路、31はクッションシリンダ、32は油圧源、33は逆止弁、34はブースター、35は油圧回路、36は空圧回路、37は空圧源、38は主調整弁、39は逆止弁、40は第1分岐回路、41は第2分岐回路、42は第1エアタンク、43は安全弁、44は第1逆止弁、45は副調整弁、46は第2エアタンク、47は安全弁、48は第2逆止弁、49はベッド、50はボルスタ、51は下型、52は下主シリンダ、53はスライド、54は上型、55は上主シリンダ、56は補助シリンダ、60はプレス機械、である。

Claims (1)

  1. 油圧源からブースターを介してクッションシリンダに接続した油圧回路と、空圧源からブースターに接続した空圧回路とを有する増圧式クッション回路において、
    前記空圧源の圧力空気を、前記クッションシリンダに所要の最大力を発生させる油圧を供給出来る空圧に調整する最大力設定用の主調整弁を設けるとともに、この主調整弁から前記ブースターまでの回路の途中に2列の分岐回路を設け、一方の前記分岐回路には、前記空圧源側から順に、第1エアタンクと、前記空圧源側に向けて開く第1逆止弁を設け、他方の前記分岐回路には、前記空圧源側から順に、前記クッションシリンダに所要の初期力を発生させる油圧を供給出来る空圧に調整する初期力設定用の副調整弁と、第2エアタンクと、ブースター側に向けて開く第2逆止弁を設けたことを特徴とする増圧式クッション回路。
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