JP3608431B2 - シリンジ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、シリンジ装置に係り、更に詳しくは、チャンバ内に粘性材料が自動的に供給されるとともに、ノズルから安定的に粘性材料を吐出するシリンジ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、携帯電話のケース合せ面にシールを行うために、UVシリコーン等の粘性材料をビード状に吐出するシリンジ装置が利用されている。このようなシリンジ装置においては、粘性材料の吐出量を安定した状態に維持することが要求されるとともに、量産性を良好に保持するため粘性材料の補充作業を迅速且つ容易に行う必要がある。そこで、所定量の粘性材料を吐出する毎に自動的にチャンバ内に粘性材料を供給可能とした装置が提案されている(例えば、特開平10−272409号公報)。
【0003】
同公報に開示されたシリンジ装置50は、図5に示されるように、吐出用の第1のシリンジ51と、この第1のシリンジ51に導通管52を介して連結される第2のシリンジ54と、前記導通管52を開閉するバルブ55とを備えて構成されている。前記第1のシリンジ51は、粘性材料Mを収容するチャンバ56を有するシリンジ本体57と、前記導通管52を挿通するとともに、シリンジ本体57内で上下動可能なピストン58と、前記チャンバ56に連通するノズル59と、前記シリンジ本体57内の圧力を調整する通気路60とを備えている。
【0004】
このシリンジ装置50は、通気路60に正圧を付与してピストン58を押し下げることにより第1のシリンジ51におけるチャンバ56内の粘性材料Mがノズル59から吐出される。そして、所定量の粘性材料Mを吐出した後、バルブ55を開放するとともに、通気路60より第1のシリンジ51内に負圧を付与することによりピストン58が上昇され、粘性材料Mが第2のシリンジ54から導通管52を通ってチャンバ56内に供給されることとなる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記シリンジ装置50の構成にあっては、粘性材料の供給時及び吐出待機時には、ピストン58の上下動における滑動抵抗やチャンバ56内の圧力等の予期しづらい負荷が付与される傾向が強くなる。このため、通気路60による負圧調整が極めて困難となって、前記負圧が弱い状態で付与された場合、図6(A)〜(C)に示されるように、粘性材料Mはノズル59の先端から垂れ下がるような、いわゆる液ダレした状態となる傾向が強い。このような状態で吐出すると、吐出開始点及び終了点の粘性材料Mの幅及び高さが不均一となり、これらを連結する部分に凹凸ができてしまい、ひいては、シール精度を良好に維持することが困難になるという不都合を招来する。また、補充された粘性材料Mは、第1のシリンジ51の内部、中央部から下へ下へと補充されるので、ピストン58直下に滞留してしまう粘性材料Mが出てしまい、これが長期にわたり使用されずに滞留されると、粘性材料M自体が変質したりしてシールに悪い影響を及ぼす虞がある。
【0006】
【発明の目的】
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、吐出される粘性材料の開始点及び終了点を均一な状態を維持して吐出することができ、更に、充填された材料の滞留も生じないシリンジ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は、粘性材料を収容するチャンバを備えたシリンジ本体と、このシリンジ本体内に配置されて前記粘性材料に吐出圧を付与するプランジャと、前記チャンバ内に粘性材料を供給する流路と、前記シリンジ本体の先端側に設けられて、前記チャンバに連通するノズルとを備えたシリンジ装置において、
前記チャンバ内に粘性材料を補充するときの内圧上昇を抑制する開放手段と、前記ノズルの先端を適宜開閉可能とする液ダレ防止手段とを備え
前記流路の下流端は、前記プランジャ内に接続されるとともに、前記粘性材料は、前記プランジャを通過してチャンバ内に供給される、という構成を採っている。このような構成を採用すれば、チャンバ内に粘性材料を供給する際、チャンバの内圧上昇を抑制するとともに、液ダレ防止手段がノズルの先端を塞ぐことにより、従来例に示されるような、ノズルの先端から吐出材料がはみ出るような状態となる虞を有効に回避することができる。これにより、粘性材料は、塗布開始点及び終了点において、均一な状態を維持しながら吐出されることとなり、シール精度不良等の要因を排除することができる。しかも、流路からチャンバ内に供給される粘性材料は、当該チャンバ内で滞流を生じなくなり供給された順に吐出されることとなり、前記供給を繰り返し行った場合にも古い粘性材料が残留することなく、粘性材料がチャンバ内で劣化してしまう虞を排除することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、前記開放手段は、前記粘性材料の吐出待機時及び補充時にシリンジ本体内の空気圧を調整する通気路を備えて構成される、という構成を採用するとよい。このようにすれば、前記供給時における内圧上昇の抑制を効果的に行うことができるとともに、一回の吐出作業が完了して次の吐出作業への待機時において、液ダレした状態となることなく、綺麗な状態を維持することが可能となる。
【0010】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1には、本実施例に係るシリンジ装置の概略正面断面図が示されている。この図において、シリンジ装置10は、粘性材料Mを収容するチャンバ11を備えたシリンジ本体12と、このシリンジ本体12内に配置されたプランジャ13と、前記チャンバ11内に粘性材料Mを供給する流路15と、前記シリンジ本体12の先端側に設けられたノズル16と、前記シリンジ本体12内の空気圧を調整する通気路17を有する開放手段18と、前記ノズル16の先端を開閉可能な液ダレ防止手段19とを備えて構成されている。ここで、本発明に使用される粘性材料Mは、特に限定されるものでないが、粘度が50000cps以上のものが対象とされている。
【0012】
前記シリンジ本体12は、本実施例では、30cc程度の容量を有するように設定されている。このシリンジ本体12は、図中上下方向に延びる略円筒状に形成される周壁12Aと、この周壁12Aの下端側周縁に連設されたテーパ状の底壁12Bとを備え、上端側が開放した形状となっている。この底壁12Bには、チャンバ11に連通するスペーサ筒21が設けられており、このスペーサ筒21の下部外周に前記ノズル16が設けられている。また、底壁12Bの上端側外周面には、径方向に突き出るように形成されたフランジ22が設けられており、このフランジ22を上下方向から挟み付けるようにカバー部材25が装着されている。
【0013】
前記カバー部材25は、シリンジ本体12内に密着するように収容された挿入部26と、この挿入部26の外周側に設けられたOリング27と、前記挿入部26の上方に連設されて前記フランジ22の最大幅寸法より大きい径に形成された蓋部28と、この蓋部28の下面とともにフランジ22をねじ29により挟み付ける固定部材30とを備えて構成されている。このカバー部材25の軸中心位置には、前記流路15の外径と略同一の内径の貫通穴32が形成されているとともに、この貫通穴32の内面には、流路15の上下動をスムースに許容する表面処理が施されたブッシュ33と、Oリング34とが設けられている。
【0014】
前記プランジャ13は、シリンジ本体12内において密閉性を保持しながら上下動可能、且つ、チャンバ11内に収容された粘性材料Mに吐出圧を付与可能に設けられている。このプランジャ13の軸中心位置には、前記流路15を受容可能な供給口35が形成され、この供給口35よりチャンバ11内に粘性材料Mが補充される。
【0015】
前記流路15は、後述するセンサから付与される供給指令信号に対応して粘性材料Mを供給する図示しないタンク及びポンプに接続されている。この流路15は、前記貫通穴32に挿通されるとともに、下流端15Aがプランジャ13の供給口35内に接続されている。これにより、供給される粘性材料Mは、常に供給口35からチャンバ11内に補充される一方、流路15は、プランジャ13の上下動に伴って移動することとなる。ここで、カバー部材25の上方位置における流路15回りには、プランジャ13の上下高さ位置を検出するセンサ37が装備されている。
【0016】
前記センサ37は、前記流路15回りに設けられたドグ38と、このドグ38の図1中左側に配置されてこの高さ位置を検出するレベルセンサ39と、前記レベルセンサ39より上方に位置するとともに、何らかの障害によってレベルセンサ39が作動しない際の予備としてドグ38の高さ位置を検出するオーバーランセンサ40とを備えて構成されている。これにより、レベルセンサ39はドグ38の高さ位置、つまり、プランジャ13の高さ位置を検出して前記タンクに粘性材料Mの供給指令信号及び供給停止信号を付与することにより、チャンバ11内の粘性材料Mが常に所定範囲量に維持されることとなる。
【0017】
前記ノズル16は、吐出管41と、この吐出管41を形成するとともに前記スペーサ筒21に装着される袋ナット状の固定部42とを備えて構成されている。この吐出管41の開口径は、特に限定されるものでないが、本実施例では、0.2mm〜2.2mmの範囲に設定されている。また、このノズル16には、図示しないロボットに装着される支持部材45が設けられており、このロボットを制御してシリンジ装置10を所定吐出位置に移動可能としている。
【0018】
前記開放手段18は、吸気及び排気可能に設けられた図示しないポンプに接続されるとともに、カバー部材25の外面側からシリンジ本体12内に通じる通気路17を備えている。この通気路17は、シリンジ本体内12におけるプランジャ13とカバー部材25との間の密封空間46の空気圧を調整して、すなわち、正圧及び負圧を付与してプランジャ13の上下動が可能となっている。これにより、チャンバ11内に粘性材料Mを補充したときの内圧上昇の抑制と、吐出圧の付与とが行われる。
【0019】
前記液ダレ防止手段19は、アングル状に形成されたアーム部材47と、このアーム部材47の先端側に設けられて前記吐出管41に接触する金属或いはゴム状のシール部材48と、このアーム部材47の基端側を支持して図1中矢印方向に回転させるロータリーアクチュエータ49とを備えて構成されている。このロータリーアクチュエータ49は、動作指令信号が付与されることによりアーム部材47を回転させて、吐出管41の開閉を行うようになっている。
【0020】
なお、本実施例における開放手段18、液ダレ防止手段19、センサ37及びシリンジ装置10を支持するロボットは、図示しない制御装置を介して全体的に制御される。
【0021】
次に、本実施例の全体的動作について説明する。
【0022】
ここでは、シリンジ装置10は、予め設定した軌跡に沿って粘性材料Mの吐出位置がティーチングされているものとし、チャンバ11内には、図1に示されるように、粘性材料Mが設定された上限量収容されて一回目の吐出作業を行う状態であるものとする。このような状態において前記吐出作業は、通気路17より密封空間46内に正圧が付与されることにより、プランジャ13が下降して粘性材料Mを吐出管41より吐出して行われる。この吐出作業が完了して次の吐出作業への待機中には、プランジャ13の下降及び吐出管41から粘性材料Mの液ダレを防止するため、通気路17より比較的弱い負圧が付与される。そして、前記吐出作業を繰り返し行うことにより、ドグ38がチャンバ11内の粘性材料Mの減少に伴って図2に示される位置まで下降すると、この位置をレベルセンサ39が検出してその時点で行われている吐出作業の完了後、ロータリーアクチュエーター49に動作指令信号が付与されることにより、アーム部材47を回転して吐出管41が塞がれることとなる。この後、前記タンクに供給指令信号が付与されて、粘性材料Mが流路15を通ってチャンバ11内に供給されるとともに、チャンバ11内の内圧上昇を抑制可能な比較的強い負圧が通気路17より密封空間46内に付与される。そして、粘性材料Mが補充されるとプランジャ13及びドグ38が上昇して図4に示される高さに位置すると、レベルセンサ39がこの位置を検出することにより、粘性材料Mの供給及び通気路17からの負圧の付与を停止させるとともに、アーム部材47を回転させて吐出管41を開放し、シリンジ装置10は再び図1に示される状態となる。
【0023】
従って、このような実施例によれば、前述した粘性材料Mの吐出及び供給作業を一連の工程として自動的に繰り返し行うことができる。また、粘性材料Mの吐出待機時及び補充時において、開放手段18の負圧調整と液ダレ防止手段19とにより吐出材料Mが吐出管41から垂れ下がるようなことがないので、吐出の開始点及び終了点が均一な状態に確保されるという効果を得る。
【0024】
なお、前記実施例では、鉛直方向下向きに粘性材料Mを吐出する場合について図示、説明したが、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、粘度にもよるがシリンジ本体12を傾倒或いは横向きにして吐出方向を変えても、前述したような吐出作業を行うことが可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、シリンジ装置は、チャンバの内圧上昇を抑制する開放手段と、ノズルを開閉する液ダレ防止手段とを備えて構成されているから、供給時におけるノズルから粘性材料のはみ出し或いは汚れを防止して、吐出の精度を良好に確保することができるという効果を得る。
【0026】
また、開放手段はシリンジ本体内の空気圧を調整する通気路を備えた構成としたから、粘性材料の吐出待機時及び補充時それぞれの空気圧を適宜調整して、ノズルの液ダレを確実に防止することができる。
【0027】
更に、流路の下流端はプランジャ内に接続されているから、吐出及び供給作業を繰り返し行った場合、チャンバ内に古い粘性材料が残留して劣化させる虞を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例に係るシリンジ装置の概略正面断面図。
【図2】図1のシリンジ装置の粘性材料を吐出した後の状態を示す概略正面断面図。
【図3】図2のシリンジ装置の吐出管を塞いだ状態を示す概略正面断面図。
【図4】図3のシリンジ装置の粘性材料の供給後の状態を示す概略正面断面図。
【図5】従来のシリンジ装置の概略正面断面図。
【図6】(A)〜(C)は、ノズルの液ダレした状態を示す概略図。
【符号の説明】
10 シリンジ装置
11 チャンバ
12 シリンジ本体
13 プランジャ
15 流路
16 ノズル
17 通気路
18 開放手段
19 液ダレ防止手段
M 粘性材料

Claims (2)

  1. 粘性材料を収容するチャンバを備えたシリンジ本体と、このシリンジ本体内に配置されて前記粘性材料に吐出圧を付与するプランジャと、前記チャンバ内に粘性材料を供給する流路と、前記シリンジ本体の先端側に設けられて、前記チャンバに連通するノズルとを備えたシリンジ装置において、
    前記チャンバ内に粘性材料を補充するときの内圧上昇を抑制する開放手段と、前記ノズルの先端を適宜開閉可能とする液ダレ防止手段とを備え
    前記流路の下流端は、前記プランジャ内に接続されるとともに、前記粘性材料は、前記プランジャを通過してチャンバ内に供給されることを特徴とするシリンジ装置。
  2. 前記開放手段は、前記粘性材料の吐出待機時及び補充時にシリンジ本体内の空気圧を調整する通気路を備えて構成されていることを特徴とする請求項1記載のシリンジ装置。
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