JP3608312B2 - 試料調製方法及びこれに用いる試薬キット - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酵素によるDNA相補鎖合成を利用したDNA分析方法、DNA塩基配列決定方法に用いられるDNA試料の調製方法及びこれに用いる試薬キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲノム解析を中心にDNA塩基配列決定の高効率化のニーズが高まっている。放射性同位元素を用いてDNA断片を標識し、ゲル電気泳動によりDNAの長さを計測して、人手によって行なう従来の塩基配列決定法に代わり、DNAを蛍光体で標識し、ゲル電気泳動しながら光を当てて自動的にDNA断片を光学検出する装置(DNAシーケンサー)が普及してきている。この装置は、目的とするDNAにプライマーと呼ばれるDNAオリゴマーをハイブリダイズさせ、酵素を用いた相補鎖合成で塩基配列決定に用いる種々の長さのDNA断片を作製し、ゲル電気泳動でDNA断片の長さを調べて塩基配列決定するものでサンガー法あるいはダイデオキシ法と呼ばれている。ここで一度に塩基配列決定できる長さは、ゲルによる長さ分離能で決められており、400〜700塩基長である。これより長い数K塩基から数十K塩基のDNA塩基配列決定は手間と時間のかかる作業である。
【0003】
従来、長いDNA(数K〜数十K塩基)の塩基配列決定にはショットガン法が用いられてきた。ショットガン法では試料DNAを超音波などを用いてランダムに切断し、DNA断片をクローニングして大腸菌等に埋め込み、コロニー培養した後、各コロニー中の大腸菌を培養してDNAのコピーを増やす。次いで試料DNAを抽出して解析する。この方法では、取り出したコロニーに含まれるDNAには断片化した試料DNAが含まれるが、DNA断片が試料DNAのどの部分であるのか、塩基配列決定するまで分からないため、決定しようとするDNA鎖長の10〜20倍ものDNAに相当するDNA断片を取り解析しなくてはならない。このため、時間と手間が大いにかかり大きな障害となっている。
【0004】
一方、塩基配列決定しようとするDNA断片を端から順に決めていく方法(プライマーウォーキング;Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86、6917−6921(1989))も提案されている。この方法では、DNA断片の塩基配列を決定したら、その中から次のプライマー領域を選びダイデオキシ法により塩基配列を再び決定する。このため無駄が少なく効率の良い塩基配列決定ができるが、時系列的に塩基配列を決めていくので時間がかかる点と、解析の都度プライマーを用意する手間がかかる点に欠点がある。
【0005】
従来技術ではないが、上記欠点を克服する方法(フラグメントウォーキング法)が発明者により提案されている(特願平7−238141号)。このフラグメントウォーキング法では、塩基配列決定しようとする試料DNAを4塩基認識酵素などの制限酵素で完全に切断し、重複のない断片群を作製する。生成したDNA断片では制限酵素が認識して切断する部分の塩基配列を除くと塩基配列は未知である。こられDNA断片は既知の塩基配列を持ったプライマーがハイブリダイズし相補鎖合成の起点となるプライミングサイトを特に持ってない。そこで生成したDNA断片の3’末端側に既知の塩基配列のオリゴマーを結合してプライミングサイトとする。プライマーをDNA断片にハイブリダイズさせ相補鎖合成でDNA伸長鎖を作る時、プライマーの3’末端の2塩基(選別配列と呼ぶ)がDNA断片と完全に相補的でピッタリとハイブリダイズしている時には反応が進行するが、そうでない時には反応が遅いか全く進まないことが知られている。そこで蛍光標識プライマーの3’末端(相補鎖伸長側)に任意の2塩基(16通りの塩基配列がある)をつけておき、DNA断片の中から蛍光標識プライマーと完全に相補な配列を持つ特定の断片を選び相補鎖合成したり、塩基配列決定できる(DNA Research 1、231−237(1994))。
【0006】
DNA断片群中に含まれるDNA断片の種類が少なく、1種のプライマーと完全に相補的なDNA断片が1個の時には各断片の塩基配列を上記プライマーを用いて、それぞれ決定できる。1種のプライマーが2つ以上のDNA断片とハイブリダイズする場合には、予め長さ分離するなどしてから上述の操作を行なう。このようにして、フラグメントウォーキング法では、混合状態にあるDNA断片の塩基配列を、16種のプライマーを用いてクローニングなどせずに、重複なく簡単に並列して決定できる。DNA断片相互のつながりを決定し、試料DNA全体の塩基配列を決めるには次の様に行なう。前述した16種の蛍光標識プライマーは末端にプライミングサイトを持つ断片DNAにだけハイブリダイズし、元の切断されていない試料DNAにはハイブリダイズしない。しかし、断片DNAにハイブリダイズした上記プライマーを相補鎖伸長すると、伸長した部分は元の試料DNAと相補的であり、元の試料DNAにハイブリダイズする。そこで、上記プライマーを用いて各DNA断片の塩基配列決定用の相補鎖合成反応を行なう時、反応温度を昇降するサイクルシーケンス条件下で行ない、反応液中に未切断の試料DNAを加えると、DNA断片の塩基配列に加えて、切断部に続く元の試料DNAの塩基配列をも決定できる。この方法では異なる16種のプライマーを用いて各DNA断片とそれに続く塩基配列を並列して決定でき非常に効率が良い。この方法は、DNA断片から次のDNA断片へ塩基配列をつなげて歩いて行くのに似ているのでフラグメントウォーキング法と呼んでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
フラグメントウォーキング法は非常に効率の良い方法であるが、プライマーとして、3’末端の2塩基すべての組み合わせの16種のプライマーを用意する必要がある。蛍光式DNAシーケンサーには、現在、1色方式(DNA断片の末端塩基種を1種の蛍光体で識別し、末端塩基種が異なるDNA断片を異なる泳動路で泳動させる)、及び4色方式(DNA断片の末端塩基種に対応して4種の蛍光体で識別し、DNA断片を同一の泳動路で泳動させる)があるが、高スループットを達成するには4色方式が都合が良い。しかし、上記のフラグメントウォーキング法を4色方式に適用しようとすると、16×4=64もの蛍光標識プライマーを最低でも用意する必要があり、フラグメントウォーキング法の実用面での課題の1つとなっている。
【0008】
本発明の目的は、この課題を解決し、市販のユニバーサルプライマーあるいは手持ちの少数のプライマーを用いて、フラグメントウォーキング法を容易に実行するための、DNA分析方法、DNA塩基配列決定方法に用いられるDNA試料の調製方法、及びこれに用いる試薬キットを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、3’末端に2塩基からなる選別配列を持つプライマーにアンカーをつけたアンカー付の選別プライマー(以下、簡単のためにアンカープライマーと呼ぶ)を用いて、鋳型となるDNA断片のコピー数をPCRで増やす。アンカー部分の相補鎖がDNA断片の末端に導入されるが、アンカー部分に蛍光標識プライマーをハイブリダイズさせ塩基配列決定反応を行なう。アンカープライマー(合計16種)は蛍光標識されている必要はなく、塩基配列決定用に使用する蛍光標識プライマーには、通常のシーケンシングに用いている4種の蛍光体でそれぞれ標識されたユニバーサルプライマーを用いる。
【0010】
16種のアンカープライマーは、混合DNA断片の中の特定のDNA断片にハイブリダイズして相補鎖伸長し、特定のDNA断片のコピー数を増やすのに用いられる。この結果、DNA断片の混合物の中から、アンカープライマーが完全にハイブリダイズするDNA断片だけを増やし、特定のDNA断片を実質的に抜き出すことができる。抜き出されたDNA断片には、蛍光標識プライマーがハイブリダイズする部分が導入されており、シーケンシング反応を行なうことができるようになっている。即ち、通常のポリメラーゼ反応のプライマーとなり得る塩基配列をもつユニバーサルな蛍光標識プライマーを用い、蛍光標識プライマーの種類を増やすことなくフラグメントウォーキング法を容易に実行できる。
【0011】
このような蛍光標識プライマーの例としては、M13系ベクターに用いる、塩基配列(配列番号1)
5’−TGTAAAACGACGGCCAGT−3’
をもつプライマー、T7系ベクターに用いる、塩基配列(配列番号2)
5’−GTAATACGACTCACTATAGGGC−3’
をもつプライマー等の、一般にユニバーサルプライマーと呼ばれるプライマーの他に、任意の配列をもつ蛍光標識プライマーが利用できる。もちろん、蛍光標識として周知の蛍光体が利用できる。
【0012】
本発明の構成の特徴を以下に詳細に説明すると、本発明の構成(a)では、
(1)試料DNAを制限酵素で切断し、複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であるオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチド、及び上記制限酵素により認識される配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる選択配列とを有し、5’末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列を有するアンカープライマーを用いて相補鎖合成しDNA鎖を得る工程と、
(4)少なくとも上記アンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしないプライマーを用いて、工程(3)で得た上記DNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行なう工程とを有する試料調製方法に特徴がある。
【0013】
本発明の構成(b)では、
(1)試料DNAを切断して複数長さのDNA断片を生成す工程と、
(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であるオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチドと実質的に相補な塩基配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる上記DNA断片を選別するための配列とを有し、5’末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列を有するアンカープライマーと、上記アンカー配列と実質的に同じ塩基配列を有し、単独では上記DNA断片に安定にハイブリダイズしないプライマーを用いて、上記DNA断片をその末端塩基配列毎に区分けしてPCR増幅する工程とを有する試料調製方法に特徴がある。
【0014】
本発明の構成(c)では、
(1)試料DNAを制限酵素で切断し、複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であるオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチド、及び上記制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる選択配列とを有し、5’末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列を有し、上記認識部配列の一部の塩基が置換され、上記制限酵素で切断できない塩基配列部分を有するアンカープライマーと、上記制限酵素で切断を受ける塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、
(4)増幅された上記特定のDNA断片の片方の末端を切断したDNA鎖を得る工程と、
(5)少なくとも上記アンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしない蛍光標識プライマーを用いて、工程(4)で得た上記DNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行ない相補鎖合成DNA断片を得る工程と、(6)上記蛍光標識プライマーと上記相補鎖合成DNA断片とを用い、工程(4)で得た上記DNA鎖、上記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、上記DNA鎖の塩基配列と上記DNA鎖の塩基配列に隣接する部分の上記試料DNAの塩基配列を決定する塩基配列方法に特徴があり、上記蛍光標識プライマーは、少なくとも上記アンカー配列と実質同じ配列を持つことにも特徴がある。
【0015】
本発明の構成(d)では、
(1)試料DNAを第1の制限酵素で切断し、複数長さのDNA断片を生成する工程と、
(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であり、第2の制限酵素による認識部配列をもつオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチド、及び上記第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第1の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列を有し、上記認識部配列の一部の塩基が置換され、上記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーと、上記オリゴヌクレオチド、及び上記第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第2の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列を有し、上記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、上記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、
(4)増幅された上記特定のDNA断片の第1の末端を上記第2の制限酵素により切断して第1のDNA鎖を、増幅された上記特定のDNA断片の第2の末端を上記第1の制限酵素により切断して第2のDNA鎖をそれぞれ得る工程と、
(5)少なくとも上記第1のアンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしない第1の蛍光標識プライマーと、少なくとも上記第2のアンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしない第2の蛍光標識プライマーとを用いて、工程(4)で得た上記第1、第2のDNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行ない第1、第2の相補鎖合成DNA断片を得る工程と、
(6)上記第1、第2の蛍光標識プライマーと上記第1、第2の相補鎖合成DNA断片とを用い、工程(4)で得た上記第1、第2のDNA鎖、上記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、上記第1、第2のDNA鎖の塩基配列と、上記第1、第2のDNA鎖の塩基配列に隣接する部分の上記試料DNAの塩基配列を決定する塩基配列方法に特徴があり、上記第1の蛍光標識プライマーは、少なくとも上記第1のアンカー配列と実質同じ配列を、上記第2の蛍光標識プライマーは、少なくとも上記第2のアンカー配列と実質同じ配列を、それぞれ持つことにも特徴がある。
【0016】
本発明の構成(e)では、ライゲーション用オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列と、制限酵素が認識する認識部配列と、ユニバーサルプライマーと同じ配列とを有し、3’末端側に1塩基〜4塩基からなる選択配列を有し、DAN断片の末端の塩基配列を選択を可能とする複数のアンカープライマーからなる試薬キットに特徴があり、上記アンカープライマーは、上記DAN断片の末端の2塩基の配列を選択する選択配列が、2塩基からなるすべての組み合わせの塩基配列を含むことにも特徴がある。
【0017】
本発明の構成(f)では、少なくともライゲーション用オリゴヌクレオチド、相補鎖合成用プライマーからなる試薬キットにおいて、上記相補鎖合成用プライマーが、上記オリゴヌクレオチドと実質的に相補な配列、制限酵素が認識する認識部配列と、この認識部配列の3’末端側に2塩基からなる選択配列とを有する16種のプライマーからなる第1のプライマーセットと、この第1のプライマーセットの各プライマーの5’末端側にアンカー配列を付加し、上記各プライマーの上記認識部配列の一部の塩基を置換した16種のプライマーからなる第2のプライマーを含む試薬キットに特徴がある。
【0018】
本発明の構成(g)では、少なくともライゲーション用オリゴヌクレオチド、相補鎖合成用プライマーからなる試薬キットにおいて、上記相補鎖合成用プライマーが、上記オリゴヌクレオチド、及び第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第1の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列を有し、上記認識部配列の一部の塩基が置換され、上記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーセットと、上記オリゴヌクレオチド、及び上記第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第2の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列を有し、上記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、上記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーセットを含む試薬キットに特徴があり、上記第1、第2の選択配列の塩基が2塩基からなり、2塩基からなるすべての組み合わせの塩基配列を含むことにも特徴がある。
【0019】
本発明の構成(h)では、構成(a)、(b)の試料調製方法により調製された試料を分析する分析方法に特徴がある。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施例)
図1は、本発明の試料調製法を用いるDNA解析プロセスを説明する図である。解析しようとする試料DNA301(数Kb〜10Kbの長を持つ)を含む溶液302を2分割して、それぞれ第1のチューブ302−1、第2のチューブ302−2に分取する。第1のチューブ302−1に含まれる試料DNAを制限酵素Nla IIIで切断し、DNA断片群303を得る。Nla IIIは塩基配列−CATG−を認識し、3’末端に−CATG(3’)の塩基配列を持つDNA断片を生成する。使用する制限酵素は、Sau 3Al、Hha I、Mae Iの他何でも良いが、切断部位が頻度高く現われる4塩基認識酵素が良い。DNA断片群303を含む液320にDNAオリゴマー304を添加して、制限酵素による切断部の少なくとも3’末端に既知の塩基配列を持つDNAオリゴマー304を結合する。DNAオリゴマー304を結合する方法には、terminal deoxynucleotidyl transferaseによるポリA鎖の付加とライゲーションを用いた方法があるが、ここではライゲーションを用いた例で説明する。ライゲーション反応生成物を含む液321は、2分割してチューブ322、323に分取しておく。
【0022】
図2は、DNAオリゴマー304をライゲーション結合したDNA断片を示す図である。図2において、N、及びnは塩基配列を決定しようとするDNA断片を構成するヌクレオチド(A、T、G、Cのいずれかである)であり、Nla IIIにより認識される認識配列305は5’−CATG−3’である。DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖の3’末端側は相補鎖合成しないようにdideoxynucleotideで置換するなどして相補鎖がこれ以上伸びないようにする。もちろん、DNAオリゴマーの段階で3’−OHをアミノ基やビオチン等の残基で修飾し、3’伸長を妨げる型としておいて良い。DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖の3’末端側は相補鎖合成しないようにするのは、使用するアンカープライマーによる相補鎖合成でアンカープライマーの3’末端(DNA断片の選別を行なうための塩基配列を持つ部分)がDNA断片と完全に相補的でない場合には、アンカー部分と相補的な鎖ができないようにするためである。アンカープライマーの3’末端がDNA断片と完全にマッチした鎖では、反対側の末端(合成鎖の3’末端)にアンカープライマーの一部がハイブリダイズし、更に、伸長してアンカー部分と相補的な塩基配列を3’末端側に持つDNA断片が合成される。
【0023】
図3(a)は、DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするアンカープライマーセット(アンカープライマーセット▲1▼)の概念図、図3(b)は、DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするプライマーセット▲2▼の概念図である。DNA断片に導入されたDNAオリゴマー304に相補的な部分315と、その5’末端側にアンカー配列311とを持ち、3’末端側のXXで示す2塩基(1〜4塩基で良い)からなる選別配列312を持つ16種(1〜4塩基に対応して4〜256種)のアンカープライマーセット306を用意する。選別配列312は特定のDNA断片をDNA断片の混合物の中から選択するための塩基配列である。このアンカープライマーセット306のアンカー部分311あるいはアンカー部分311を含む部分の塩基配列は実質ユニバーサル配列としておく。この時、図3(a)の313に示す様に、アンカープライマーセット306の3’末端から6塩基目の塩基(制限酵素の認識配列内の1つ、ここではCである)を、別の塩基、例えばTに変えたアンカープライマー(アンカープライマーセット▲1▼)16種と、変化させずCのままのプライマーセット307(プライマーセット▲2▼)とを用意する。この例では、図3(b)に示す様に、プライマーセット▲2▼にはアンカーをつける必要はないが、後のチェックに都合のよいように、Texas
RedあるいはFITCで蛍光標識314をつけておく。
【0024】
1種の蛍光体で蛍光標識されたプライマーセット▲2▼とDNA断片混合物とを用いてプライマーの伸長反応を行なう。即ち、図1に示す様に、ライゲーション反応生成物を含む液を含むチューブ322から、液を16本のチューブ322−1、322−2、…、322−16に分注し、ぞれぞれ異なるプライマーを入れて相補鎖合成をする。即ち、各チューブにはそれぞれ異なった選別配列312を有するプライマーが加えられる。相補鎖合成の産物はゲル電気泳動される。図4は、相補鎖合成の産物のゲル電気泳動スペクトルの例である。電気泳動パターンには、選別配列312を有するプライマーと、DNA鎖(2本鎖)のうちの+鎖、及び−鎖のそれぞれとから相補鎖合成された産物が、泳動開始点から等距離Lに対を成して出現する。プライマーの3’末端の2塩基が完全にDNA断片とマッチする時には相補鎖合成がおこり、そのDNA断片と同じ長さの蛍光標識DNA断片が生成する。そこで図4のスペクトルを得ることでDNA断片群中にいかなる長さの断片があり、その末端の塩基配列は何であるかがわかる。図5は、検出されたDNA断片の構造例を示す図である。例えば、選別配列(プライマー選択配列)AGを持つプライマー、及び選別配列(プライマー選択配列)TCを持つプライマーで得たelectropherogramには、DNA鎖長約400塩基のDNA断片が現われる。
【0025】
これらから、元の試料DNAを制限酵素により切断した2本鎖DNA断片の中には、長さが約400bpであり、それぞれの鎖の3’末端側の塩基配列がそれぞれ3’□GTACTC…5’、及び3’□GTACAG…5’であるDNA断片が含まれることがわかる。ここで「□」はライゲーションでDNA断片中に導入したオリゴマーの塩基配列であり、「…」はDNA断片に固有の塩基配列である。制限酵素認識部の塩基配列3’GTAC5’に続く5’末端側の塩基配列は、それぞれAG、及びTCに相補的な塩基配列となる。即ち、図5に示したDNA断片がDNA断片混合物中にあることがわかる。このDNA断片だけを取り出すには末端塩基配列がAG、及びTCをそれぞれ持つアンカープライマーを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)を行ない、そのDNA断片のコピー数を他より数桁大きくすればよい。
【0026】
このようにして得たDNA断片の塩基配列、及びそれらに連なる元の試料DNAの塩基配列を、4種の蛍光体でそれぞれ標識されたプライマーを用いて決定する。既存の4種の蛍光標識プライマーを用いてシーケンシングをするために、PCR用のプライマーとして5’末端側にアンカーの入ったアンカープライマーセット306▲1▼を用いる。即ち、このアンカープライマーは、図3(a)にす様に既存のプライマーと共通なアンカー配列311、ライゲーションでDNA断片の3’末端側に導入されたDNAオリゴマー304と実質相補であり、アンカープライマーセット306に共通する共通プライマー配列315、制限酵素が認識する塩基配列の1部あるいは全部と共通な塩基配列、及び3’末端側に2塩基からなる選別配列312を持つプライマーである。アンカー配列311と共通プライマー配列315は、一部が共通でも良いが、共通部分の長さは8マー以下であり、4種の蛍光体でそれぞれ標識された既存のプライマー単独では、DNA断片に導入したDNAオリゴマー304の塩基配列に安定にハイブリダイズし相補鎖合成を行なうことはできないことが必要である。共通プライマー配列315はDNAオリゴマー304と実質相補な塩基配列を持つ。また、アンカー部分311の塩基配列は10マー以上、望ましくは15マー以上が安定なハイブリダイズを得る上で必要である。
【0027】
ここでプライマー配列に工夫をする。即ち、これらアンカープライマー▲1▼は、DNA断片に導入されたDNAオリゴマー304と相補な塩基配列と、3’末端に2塩基の選択配列(XX)312を持つが、制限酵素が認識する塩基配列−CATG−の5’末端側の1塩基の種類を変化させておく。図3(a)の例では、塩基配列−CATG−のうちCをTに変化させてあり(Tの代わりにA、Gとしてもよい)、このアンカープライマーは、3’末端から6塩基目の塩基T313がミスマッチを起こすが、DNA断片の末端に導入されたDNAオリゴマー304に安定にハイブリダイズし、相補鎖を形成する。この結果、形成されたDNA鎖は本実施例で用いた制限酵素で切断できない型となる。なお、塩基配列−CATG−のうちAを、T、G、Cのいずれかに変化させても、このアンカープライマーは、3’末端から5塩基目の塩基がミスマッチを起こすが、DNA断片の末端に導入されたDNAオリゴマー304に安定にハイブリダイズし、相補鎖を形成する。この結果同様に、形成されたDNA鎖は本実施例で用いた制限酵素で切断できない型となる。また、16種のプライマー(プライマーセット▲2▼)を用意する。これらプライマーは図3(b)に示すように、アンカー配列を持たないが、選択配列(XX)312を持ったプライマーであり、3’末端から2塩基目から6塩基目の塩基配列は塩基配列−CATG−に相補であり、5’末端の蛍光標識314をつけてもよく、つけなくてもよい。
【0028】
図4の結果を用いて、130塩基より長いDNA断片をPCR増幅するのに必要なPCR用選別プライマーを決定する。図1に示すように、チューブ323に分取された液を、PCRの組み合わせの数(k)(電気泳動パターンにおいて、相補鎖合成された産物が、泳動開始点から等距離に出現する対の数以下であり、決定されたPCR用選別プライマーの種類の数に等しい)の容器323−1、323−2、…、323−kに分割し、容器にそれぞれ異なるPCR用選別プライマーを添加して、選別プライマーを用いたPCR増幅を行なう。このPCR増幅には、アンカープライマーセット▲1▼、及びプライマーセット▲2▼のプライマーの組合せを用いる。ここで130塩基(通常150塩基)以下のDNA断片は解析しなくても、次に述べるように各DNA断片の接続操作で全体塩基配列を決定できるのでPCR増幅は行なわない。
【0029】
PCR増幅で得たDNA断片を透析などで精製し、塩基配列決定用の鋳型とする。図6は、アンカープライマー▲1▼を用いた相補鎖合成(PCR増幅)により得られる産物の一例を示す図である。図6において、304’の部分はDNAオリゴマー304の伸長部分である。ここで得たDNA断片は、アンカープライマーセット306(アンカープライマーセット▲1▼)のアンカープライマー、及びプライマーセット307(プライマーセット▲2▼)のプライマーをそれぞれ末端に持つDNA断片である。プライマーセット307のプライマーが結合した部分305の−CATG−は先に用いた制限酵素を用いると、切断部位400で切断されるが、アンカープライマーセット306のアンカープライマーの結合した側の部分351の−CATA−は−CATG−と異なるため先に用いた制限酵素により切断されない。
【0030】
この結果、先の制限酵素でPCR増幅産物を切断後1本鎖として、アンカー配列311と同じ塩基配列を持つ蛍光標識プライマー330(*は蛍光標識を示す)を用いて相補合成すると、3’末端側に元の試料DNA301と相補な塩基配列を持ち、元の試料DNA鎖にハイブリダイズして更に相補鎖伸長可能なDNA断片(相補鎖伸長した蛍光標識プライマー402)が生成する。次いで、先に第2のチューブ302−2に分取した断片化前の元の試料DNA301と、塩基配列決定用の試薬(ddNTP:dideoxynucleotide triphosphateを含む試薬)とを加えてシーケンシング反応を行なう。蛍光標識プライマー330を用いたシーケンシング反応からPCR増幅したDNA断片の塩基配列がわかり、予め用意した上記の相補鎖伸長した蛍光標識プライマー402を用いたシーケンシング反応からこのDNA断片がつながるべき塩基配列(つなぎの塩基配列)がわかる。即ち、DNA断片の塩基配列と、この塩基配列に隣接する塩基配列を決定できる。
【0031】
図6に示すDNA断片は、アンカープライマーセット306のアンカープライマーとプライマーセット307(プライマーセット▲2▼)のプライマーをそれぞれ末端に持つDNA断片である。異なるPCR選別プライマー(図3(a)、図3(b)において、異なる選別配列を持つプライマーセット307、306のプライマー)を用いた反応から、試料DNA301の塩基配列を読むことができる。上記シーケンス反応では、異なる発光波長を持つ4種の蛍光体でそれぞれ標識されたプライマーを用いて、いわゆるA反応、C反応、G反応、及びT反応を行なうもので、蛍光標識プライマー330として通常の4色プライマーを用いることができるので、取り扱いが簡単で便利である。即ち、3’末端に選択配列を持つ16種の蛍光標識プライマー(4色なので合計64種のプライマーとなる)を作る必要がない利点がある。
【0032】
(第2の実施例)
本実施例は2本鎖DNAの塩基配列を3’末端、5’末端の両側から同時に決定する例である。図7は、選択配列を持つアンカープライマー、標識プライマーとDNA断片の関係を示す図である。蛍光標識されたフォワードプライマー(+鎖を相補鎖伸長合成するために使用されるプライマー)171、及びプライマー(−鎖を相補鎖伸長合成するために使用されるプライマー)371を用いるが、標識蛍光体はそれぞれTexas Red(314、発光波長615nm)、及びCy−5(141、発光波長654nm)を用いた。以後、これらプライマーを、プライマー−a(171、フォワードプライマー)、プライマー−b(371)と呼ぶ。プライマー−a(171)、−b(371)、アンカープライマー(361、362)とDNAオリゴマー304を末端に付けたDNA断片の関係を図7に示した。プライマー−a(171)とアンカープライマー−a(361)のアンカー配列は実質共通の塩基配列を持ち、プライマー−b(371)とアンカープライマー−b(362)のアンカー配列は実質共通の塩基配列を持つ。プライマー−a、−bは、部分的にDNA断片にハイブリダイズすることはあっても安定ではなくアンカープライマーの存在なしでは相補鎖合成は起こさない塩基配列としてある。即ち、アンカープライマーが伸長してできたDNA鎖316の部分にだけ安定にハイブリダイズし、シーケンシング産物を作る。
【0033】
DNA断片に結合させるDNAオリゴマーの塩基配列の中にclass2Aの制限酵素Fok Iによる制限酵素認識部(−GGATG−)318を入れておく。この制限酵素Fok Iは制限酵素認識部318より3’末端側の9塩基の部位317を切断する制限酵素で、後で述べるように、DNA断片に結合したDNAオリゴマーを除去するのに用いることができる。アンカープライマー−a(361)は制限酵素認識部(但し、塩基が置換された制限酵素認識部である)351(ここではNla IIIによる制限酵素認識部)の塩基配列−CATG−を一部変化させ313のようにC→Tとし−TATG−と変化させて、制限酵素Nla IIIで切断できなくしたものとするが、class2Aの制限酵素切断の認識配列(−GGATG−)318は持つので、Fok Iでは切断される。一方、アンカープライマー−b(362)は制限酵素認識配列部−CATG−305は保存するが、class2Aの制限酵素の認識配列(−GGATG−)の一部319を変化させ−GTATG−とし、Fok Iでは切断されないようにしてある。即ち、アンカープライマー−aと−bを用いて、PCR増幅した産物は制限酵素Nla IIIで片側を、class2Aの制限酵素で反対側を切断でき、それぞれDNA断片の末端に導入したDNAオリゴマーを除去できるよう工夫してある。もちろん、アンカープライマー−a、及び−bは、3’末端に2塩基からなる選別配列312(図7の例では、AG、TC)を持っており、それぞれ16種のプライマーからなるアンカープライマーセットである。
【0034】
以下、手順に従って説明する。第1の実施例と同様に解析しようとする試料DNA(数Kb〜10Kb)を含む液が2分割される。分割された一方の液は、試料DNAを制限酵素Nla III(他の4塩基認識酵素でもよい)で切断する。制限酵素による切断部には既知の塩基配列を持ったDNAオリゴマーをライゲーションにより結合する。ここで用いたDNAオリゴマーは、塩基配列(配列番号3)、
5’−GTAAAACGACGGCCAGTGGATGCATG−3’
をもつヘルパーオリゴマー101と、塩基配列(配列番号4)、
3’−CATTTTGCTGCCGGTCACCTAC−5’
の3’端にビオチン(Bio)が導入され、5’端にリン酸基(P)を有する
3’ Bio−CATTTTGCTGCCGGTCACCTAC P−5’
の構造を持つリンカーオリゴマー102である。ヘルパーオリゴマー101は、Nla IIIにより生じる突出端であるCATG−3’を除いた塩基配列はリンカーオリゴマー102の塩基配列と相補的な関係にあり、ビオチン(Bio)は伸長反応をブロックするために導入されたものであり、3’端のOH基をビオチン(Bio)以外の物質で修飾してもよい。DNAオリゴマーを導入したDNA鎖には、一方の末端近傍にNla III、他方の末端の近傍にFok Iにより認識される切断部が存在する。導入されたリンカーオリゴマー102の3’末端は、これ以上鎖伸長しないようにビオチンでロックされている。ライゲーションの収率が悪い場合は、5’−Pを持たないリンカーを用いて、ヘルパオリゴマー101のみをライゲーションした後、ポリメラーゼ反応で相補鎖を合成する。
【0035】
この場合、3’末端はターミナルヌクレオチジルトランスフェラーゼでジデオキシヌクレオチドを3’末端に導入してロックする。この手法を用いれば、プライマー同士がライゲーションでダイマーとなることを防げれるので、高効率でヘルパオリゴマー101とリンカーオリゴマー102の塩基配列をDNA鎖に導入できる。DNA断片のセルフライゲーションは大過剰(100倍)のオリゴマーを用いることで防止できる。アンカープライマー−a(アンカープライマーセットa)、及びアンカープラマイマー−b(アンカープライマーセットb)は、導入されたDNAオリゴマー、及びNla IIIによる認識部に共通してハイブリダイズするが、アンカープライマー−aは、Nla IIIによる認識部の塩基配列が−CATGNN3’から−TATGNN3’へと変化している。一方、アンカープライマー−bは、Fok Iによる認識部の塩基配列が−GGATGCATGNNから−GTATGCATGNNへと変化している。これらの変化は、いずれも相補鎖合成には支障のない点置換である。
【0036】
図8は、選択配列を持つアンカープイライマーを用いてDNA断片を選別してPCRを行なうに先立ち少量のDNA断片でプライマーの対を決定する方法を説明する図である。DNA断片の混合物をPCR増幅するためのプライマーの対を決定するために、第1の実施例と同様の電気泳動スペクトルを作る。即ち、先に2分割された一方の試料溶液(制限酵素により切断されたDNA断片群を含む)を、さらに、図8に示すように16分割しそれぞれ容器に収納し、それぞれにアンカープライマーセットbに属する16種のプライマー110を1種づつ加え、更に蛍光標識(*)されたフォワードプライマー111を加え、サイクルシーケンシングの条件下で相補鎖伸長して、フォワードプライマー111から伸長した相補鎖106を形成する。ここではアンカープライマー−bを用いたが、アンカープライマー−a、あるいはまったく点置換を持たないプライマーセットでも同様に使用できる。反応ではまずアンカープライマー−b(110)がDNA断片100にハイブリダイズし、3’末端が完全にマッチしたものについて相補鎖伸長103がおこる。ここでマッチしない側の鎖は伸長しない。相補鎖は導入オリゴマー(ヘルパーオリゴマー101)部分まで行なわれ、結果として伸長鎖の3’末端にヘルパオリゴマー101にハイブリダイズする塩基配列104ができる。熱サイクル反応により、この相補鎖伸長103は、更に続いて、プライマー110のアンカー配列と相補な塩基配列105を3’末端にもつDNA断片を形成する。即ち、フォワードプライマー111のハイブリダイズする塩基配列105部分が形成される。この塩基配列105部分にフォワードプライマー111がハイブリダイズし、伸長した相補鎖106を形成する。以後は、通常のPCRと同様に反応が進み、アンカープライマー−aの末端塩基配列が完全にハイブリダイズする、DNA断片と実質同じ長さ(両端のアンカープライマーの長さだけ長い)の蛍光標識DNA断片を得る。
【0037】
ここではDNA断片混合物の長さを、DNA断片の末端の2塩基種毎に求めるのに用いたが、DNA断片混合物をその末端の2塩基配列毎にPCR増幅する手法としても有効である。選別配列を2塩基から3あるいは4塩基に増やすと1塩基ミスマッチしていてもプライマーとして機能することがある。これを防ぐため、例えば3塩基の選択配列を持つ場合、アンカープライマーの3’末端から4塩基目(選択配列の手前の塩基)にイノシンを入れ、末端の結合力を弱める。この場合、更に選択配列にミスマッチがあると相補鎖合成は非常に困難になり選別特性を上げるのに都合が良い。
【0038】
各16種のアンカープライマー−b毎に得られた蛍光標識DNA鎖をゲル電気泳動分離して、混合物中に含まれるDNA鎖の末端塩基配列と長さを知ることができる。このようにして得られた末端塩基配列と長さを用いて、PCR用プライマーを決めるが、2つのプライマーはそれぞれアンカープライマー−a、及び−bから1種づつ選ぶ。この2つのプライマー(例えば、アンカープライマー−a(361)、及び−b(362))を用いてPCR増幅することにより、図7に示すような、一方の末端近傍にNla III、他方の末端希望にFok Iによる切断部を持つDNA断片を得る。得られた種々のDNA断片をエタノール沈殿により精製した後、バッファー液に溶かしてそれぞれ2分割し、各DNA断片について(a)、及び(b)の溶液を得る。(a)の溶液にはNla IIIを入れ、(b)の溶液にはFok Iを入れ、DNA断片を切断する。Nla IIIにより切断されたDNA断片を1本鎖化し、蛍光標識プライマー171(フォワードプライマー)を用いてサイクル反応下で相補合成すると、3’末端側に元の試料DNA301と相補な塩基配列を持ち、元の試料DNA鎖にハイブリダイズして更に相補鎖伸長可能なDNA断片(相補鎖伸長した蛍光標識プライマー404)が生成する。同様にして、Fok Iにより切断されたDNA断片を1本鎖化し、蛍光標識プライマー371を用いてサイクル反応下で相補合成すると、3’末端側に元の試料DNA301と相補な塩基配列を持ち、元の試料DNA鎖にハイブリダイズして更に相補鎖伸長可能なDNA断片(相補鎖伸長した蛍光標識プライマー406)が生成する。このようにして、元の試料DNA鎖301にハイブリダイズしてさらに相補鎖伸長可能なDNA断片404、406を予め用意する。
【0039】
次いで、両者を混合し(最後まで別々でも良い)、制限酵素による切断前の全長をもつ試料DNA301を加え、更に、塩基配列決定用の試薬(ddNTP:dideoxynucleotide triphosphateを含む試薬)とを加えてサイクルシーケンシング反応を行なう。この反応により、DNA鎖の前後の塩基配列決定に必要な情報を得ることができる。即ち、蛍光標識プライマー171、371を用いたシーケンシング反応からPCR増幅したDNA断片の塩基配列がわかり、上記の相補鎖伸長した蛍光標識プライマー404、406を用いたシーケンシング反応からこのDNA断片がつながるべき塩基配列(つなぎの塩基配列)がわかる。即ち、第1の実施例と同様にDNA断片の塩基配列と、この塩基配列に隣接する塩基配列を決定できる。
【0040】
ここではプライマーはDNA2本鎖(+、−鎖)に対応して2色(2種の蛍光標識されたプライマー)であり、A、C、G、Tの識別は、異なる電気泳動路で行なう、即ち、末端塩基種毎に異なる電気泳動路で泳動させる(Bio/Technology、9、648−651(1991))。
【0041】
一方、4色蛍光体プライマー(4種の蛍光体のそれぞれで標識されたプライマー)を用いる時には、(a)の溶液と(b)の溶液を混合せずに、第1の実施例と同様にして行なう。このようにDNA鎖の両端に異なる切断部を持つプライマーでPCRを行なうことで、2本鎖の両側から同時に塩基配列決定をできるので効率が良い。また、両末端の続きの塩基配列を同時に知ることができるので、塩基配列決定するDNA断片の数を最小にできる利点がある。
【0042】
以上の各実施例での試料DNAの長さは数Kb〜10Kbであればよく、検査対象から抽出されたDNAから断片化されたDNA断片試料であってもよいことはいうまでもない。
【0043】
【発明の効果】
プライマーセットを用いて塩基配列決定する方法は多色計測を用いるシステムでは準備するプライマーの数が多く大変であったが、本発明ではアンカープライマーにDNA断片の選別機能を持たせることにより、少数の既存プライマーを用いて簡単に長い試料DNAの塩基配列決定ができる。さらに、DNA鎖の両端に制限酵素により切断可能な異なる切断部を持つプライマーでPCRを行ない、2本鎖の両側から同時に塩基配列決定できるので効率が良い。
【0044】
(配列表)
配列番号:1
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
TGTAAAACGACGGCCAGT
配列番号:2
配列の長さ:22
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
GTAATACGACTCACTATAGGGC
配列番号:3
配列の長さ:26
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
GTAAAACGACGGCCAGTGGATGCATG
配列番号:4
配列の長さ:22
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
CATCCACTGGCCGTCGTTTTAC
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試料調製法を用いるDNA解析プロセスを説明する図。
【図2】DNAオリゴマーをライゲーション結合したDNA断片を示す図。
【図3】(a)は、DNAオリゴマーを結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするアンカープライマーセットの概念図、(b)は、DNAオリゴマーを結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするプライマーセットの概念図。
【図4】16種の選択プライマーを用いて得たDNA断片の相補鎖合成の産物のゲル電気泳動スペクトルの例を示す図。
【図5】検出されたDNA断片の構造例を示す図。
【図6】アンカープライマーを用いた相補鎖合成(PCR増幅)により得られる産物の一例を示す図。
【図7】選択配列を持つアンカープライマー、標識プライマーとDNA断片の関係を示す図。
【図8】選択配列を持つアンカープイライマーを用いてDNA断片を選別してPCRを行なうに先立ち少量のDNA断片でプライマーの対を決定する方法を説明する図。
【符号の説明】
301…切断前の試料DNA、302…試料DNAを含む溶液、302−1…第1のチューブ、302−2…第2のチューブ、303…制限酵素切断されたDNA断片群、304…DNAオリゴマー、304’…DNAオリゴマーの伸長部分、305…制限酵素認識配列部−CATG−、306…アンカープライマーセット、307…プライマーセット、311…アンカー配列、312…選別配列、313…アンカープライマーセットの3’末端から6塩基目の塩基、314…蛍光標識(Texas Red)、141…蛍光標識(Cy−5)、315…DNAオリゴマーに相補的な部分(共通プライマー配列)、316…アンカープライマーが伸長してできたDNA鎖(相補鎖合成されたアンカー配列)、317…制限酵素Fok Iの制限酵素認識部より3’末端側の9塩基の部位、318…制限酵素Fok Iによる制限酵素認識部(−GGATG−)、319…class2Aの制限酵素の認識配列(−GGATG−)の一部、320…DNA断片群を含む液、321…ライゲーション反応生成物を含む液、322、323…チューブ、322−1、322−2、〜、322−16…チューブ、323−1、323−2、〜、323−k…容器、330…蛍光標識プライマー、351…塩基が置換された認識配列、361…アンカープライマー−a(AG選別配列を持ったアンカープライマー)、362…アンカープライマー−b(TG選別配列を持ったアンカープライマー)、371…プライマー−b、171…プライマー−a(フォワードプライマー)、100…DNA断片、101…ヘルパーオリゴマー、102…リンカーオリゴマー、103…DNA断片の合成相補(相補鎖伸長鎖)、104…リンカーオリゴマーにハイブリダイズする塩基配列、105…プライマーのアンカー配列と相補な塩基配列、106…プライマー111から伸長した相補鎖、110…アンカープライマーセットに属する16種のプライマー、111…フォワードプライマー、400…制限酵素切断部位、402、404、406…相補鎖伸長した蛍光標識プライマー。
【発明の属する技術分野】
本発明は酵素によるDNA相補鎖合成を利用したDNA分析方法、DNA塩基配列決定方法に用いられるDNA試料の調製方法及びこれに用いる試薬キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゲノム解析を中心にDNA塩基配列決定の高効率化のニーズが高まっている。放射性同位元素を用いてDNA断片を標識し、ゲル電気泳動によりDNAの長さを計測して、人手によって行なう従来の塩基配列決定法に代わり、DNAを蛍光体で標識し、ゲル電気泳動しながら光を当てて自動的にDNA断片を光学検出する装置(DNAシーケンサー)が普及してきている。この装置は、目的とするDNAにプライマーと呼ばれるDNAオリゴマーをハイブリダイズさせ、酵素を用いた相補鎖合成で塩基配列決定に用いる種々の長さのDNA断片を作製し、ゲル電気泳動でDNA断片の長さを調べて塩基配列決定するものでサンガー法あるいはダイデオキシ法と呼ばれている。ここで一度に塩基配列決定できる長さは、ゲルによる長さ分離能で決められており、400〜700塩基長である。これより長い数K塩基から数十K塩基のDNA塩基配列決定は手間と時間のかかる作業である。
【0003】
従来、長いDNA(数K〜数十K塩基)の塩基配列決定にはショットガン法が用いられてきた。ショットガン法では試料DNAを超音波などを用いてランダムに切断し、DNA断片をクローニングして大腸菌等に埋め込み、コロニー培養した後、各コロニー中の大腸菌を培養してDNAのコピーを増やす。次いで試料DNAを抽出して解析する。この方法では、取り出したコロニーに含まれるDNAには断片化した試料DNAが含まれるが、DNA断片が試料DNAのどの部分であるのか、塩基配列決定するまで分からないため、決定しようとするDNA鎖長の10〜20倍ものDNAに相当するDNA断片を取り解析しなくてはならない。このため、時間と手間が大いにかかり大きな障害となっている。
【0004】
一方、塩基配列決定しようとするDNA断片を端から順に決めていく方法(プライマーウォーキング;Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86、6917−6921(1989))も提案されている。この方法では、DNA断片の塩基配列を決定したら、その中から次のプライマー領域を選びダイデオキシ法により塩基配列を再び決定する。このため無駄が少なく効率の良い塩基配列決定ができるが、時系列的に塩基配列を決めていくので時間がかかる点と、解析の都度プライマーを用意する手間がかかる点に欠点がある。
【0005】
従来技術ではないが、上記欠点を克服する方法(フラグメントウォーキング法)が発明者により提案されている(特願平7−238141号)。このフラグメントウォーキング法では、塩基配列決定しようとする試料DNAを4塩基認識酵素などの制限酵素で完全に切断し、重複のない断片群を作製する。生成したDNA断片では制限酵素が認識して切断する部分の塩基配列を除くと塩基配列は未知である。こられDNA断片は既知の塩基配列を持ったプライマーがハイブリダイズし相補鎖合成の起点となるプライミングサイトを特に持ってない。そこで生成したDNA断片の3’末端側に既知の塩基配列のオリゴマーを結合してプライミングサイトとする。プライマーをDNA断片にハイブリダイズさせ相補鎖合成でDNA伸長鎖を作る時、プライマーの3’末端の2塩基(選別配列と呼ぶ)がDNA断片と完全に相補的でピッタリとハイブリダイズしている時には反応が進行するが、そうでない時には反応が遅いか全く進まないことが知られている。そこで蛍光標識プライマーの3’末端(相補鎖伸長側)に任意の2塩基(16通りの塩基配列がある)をつけておき、DNA断片の中から蛍光標識プライマーと完全に相補な配列を持つ特定の断片を選び相補鎖合成したり、塩基配列決定できる(DNA Research 1、231−237(1994))。
【0006】
DNA断片群中に含まれるDNA断片の種類が少なく、1種のプライマーと完全に相補的なDNA断片が1個の時には各断片の塩基配列を上記プライマーを用いて、それぞれ決定できる。1種のプライマーが2つ以上のDNA断片とハイブリダイズする場合には、予め長さ分離するなどしてから上述の操作を行なう。このようにして、フラグメントウォーキング法では、混合状態にあるDNA断片の塩基配列を、16種のプライマーを用いてクローニングなどせずに、重複なく簡単に並列して決定できる。DNA断片相互のつながりを決定し、試料DNA全体の塩基配列を決めるには次の様に行なう。前述した16種の蛍光標識プライマーは末端にプライミングサイトを持つ断片DNAにだけハイブリダイズし、元の切断されていない試料DNAにはハイブリダイズしない。しかし、断片DNAにハイブリダイズした上記プライマーを相補鎖伸長すると、伸長した部分は元の試料DNAと相補的であり、元の試料DNAにハイブリダイズする。そこで、上記プライマーを用いて各DNA断片の塩基配列決定用の相補鎖合成反応を行なう時、反応温度を昇降するサイクルシーケンス条件下で行ない、反応液中に未切断の試料DNAを加えると、DNA断片の塩基配列に加えて、切断部に続く元の試料DNAの塩基配列をも決定できる。この方法では異なる16種のプライマーを用いて各DNA断片とそれに続く塩基配列を並列して決定でき非常に効率が良い。この方法は、DNA断片から次のDNA断片へ塩基配列をつなげて歩いて行くのに似ているのでフラグメントウォーキング法と呼んでいる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
フラグメントウォーキング法は非常に効率の良い方法であるが、プライマーとして、3’末端の2塩基すべての組み合わせの16種のプライマーを用意する必要がある。蛍光式DNAシーケンサーには、現在、1色方式(DNA断片の末端塩基種を1種の蛍光体で識別し、末端塩基種が異なるDNA断片を異なる泳動路で泳動させる)、及び4色方式(DNA断片の末端塩基種に対応して4種の蛍光体で識別し、DNA断片を同一の泳動路で泳動させる)があるが、高スループットを達成するには4色方式が都合が良い。しかし、上記のフラグメントウォーキング法を4色方式に適用しようとすると、16×4=64もの蛍光標識プライマーを最低でも用意する必要があり、フラグメントウォーキング法の実用面での課題の1つとなっている。
【0008】
本発明の目的は、この課題を解決し、市販のユニバーサルプライマーあるいは手持ちの少数のプライマーを用いて、フラグメントウォーキング法を容易に実行するための、DNA分析方法、DNA塩基配列決定方法に用いられるDNA試料の調製方法、及びこれに用いる試薬キットを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、3’末端に2塩基からなる選別配列を持つプライマーにアンカーをつけたアンカー付の選別プライマー(以下、簡単のためにアンカープライマーと呼ぶ)を用いて、鋳型となるDNA断片のコピー数をPCRで増やす。アンカー部分の相補鎖がDNA断片の末端に導入されるが、アンカー部分に蛍光標識プライマーをハイブリダイズさせ塩基配列決定反応を行なう。アンカープライマー(合計16種)は蛍光標識されている必要はなく、塩基配列決定用に使用する蛍光標識プライマーには、通常のシーケンシングに用いている4種の蛍光体でそれぞれ標識されたユニバーサルプライマーを用いる。
【0010】
16種のアンカープライマーは、混合DNA断片の中の特定のDNA断片にハイブリダイズして相補鎖伸長し、特定のDNA断片のコピー数を増やすのに用いられる。この結果、DNA断片の混合物の中から、アンカープライマーが完全にハイブリダイズするDNA断片だけを増やし、特定のDNA断片を実質的に抜き出すことができる。抜き出されたDNA断片には、蛍光標識プライマーがハイブリダイズする部分が導入されており、シーケンシング反応を行なうことができるようになっている。即ち、通常のポリメラーゼ反応のプライマーとなり得る塩基配列をもつユニバーサルな蛍光標識プライマーを用い、蛍光標識プライマーの種類を増やすことなくフラグメントウォーキング法を容易に実行できる。
【0011】
このような蛍光標識プライマーの例としては、M13系ベクターに用いる、塩基配列(配列番号1)
5’−TGTAAAACGACGGCCAGT−3’
をもつプライマー、T7系ベクターに用いる、塩基配列(配列番号2)
5’−GTAATACGACTCACTATAGGGC−3’
をもつプライマー等の、一般にユニバーサルプライマーと呼ばれるプライマーの他に、任意の配列をもつ蛍光標識プライマーが利用できる。もちろん、蛍光標識として周知の蛍光体が利用できる。
【0012】
本発明の構成の特徴を以下に詳細に説明すると、本発明の構成(a)では、
(1)試料DNAを制限酵素で切断し、複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であるオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチド、及び上記制限酵素により認識される配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる選択配列とを有し、5’末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列を有するアンカープライマーを用いて相補鎖合成しDNA鎖を得る工程と、
(4)少なくとも上記アンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしないプライマーを用いて、工程(3)で得た上記DNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行なう工程とを有する試料調製方法に特徴がある。
【0013】
本発明の構成(b)では、
(1)試料DNAを切断して複数長さのDNA断片を生成す工程と、
(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であるオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチドと実質的に相補な塩基配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる上記DNA断片を選別するための配列とを有し、5’末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列を有するアンカープライマーと、上記アンカー配列と実質的に同じ塩基配列を有し、単独では上記DNA断片に安定にハイブリダイズしないプライマーを用いて、上記DNA断片をその末端塩基配列毎に区分けしてPCR増幅する工程とを有する試料調製方法に特徴がある。
【0014】
本発明の構成(c)では、
(1)試料DNAを制限酵素で切断し、複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であるオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチド、及び上記制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる選択配列とを有し、5’末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列を有し、上記認識部配列の一部の塩基が置換され、上記制限酵素で切断できない塩基配列部分を有するアンカープライマーと、上記制限酵素で切断を受ける塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、
(4)増幅された上記特定のDNA断片の片方の末端を切断したDNA鎖を得る工程と、
(5)少なくとも上記アンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしない蛍光標識プライマーを用いて、工程(4)で得た上記DNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行ない相補鎖合成DNA断片を得る工程と、(6)上記蛍光標識プライマーと上記相補鎖合成DNA断片とを用い、工程(4)で得た上記DNA鎖、上記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、上記DNA鎖の塩基配列と上記DNA鎖の塩基配列に隣接する部分の上記試料DNAの塩基配列を決定する塩基配列方法に特徴があり、上記蛍光標識プライマーは、少なくとも上記アンカー配列と実質同じ配列を持つことにも特徴がある。
【0015】
本発明の構成(d)では、
(1)試料DNAを第1の制限酵素で切断し、複数長さのDNA断片を生成する工程と、
(2)上記DNA断片の少なくとも3’末端側に塩基配列が既知であり、第2の制限酵素による認識部配列をもつオリゴヌクレオチドを付加する工程と、
(3)上記オリゴヌクレオチド、及び上記第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第1の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列を有し、上記認識部配列の一部の塩基が置換され、上記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーと、上記オリゴヌクレオチド、及び上記第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第2の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列を有し、上記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、上記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、
(4)増幅された上記特定のDNA断片の第1の末端を上記第2の制限酵素により切断して第1のDNA鎖を、増幅された上記特定のDNA断片の第2の末端を上記第1の制限酵素により切断して第2のDNA鎖をそれぞれ得る工程と、
(5)少なくとも上記第1のアンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしない第1の蛍光標識プライマーと、少なくとも上記第2のアンカー配列と実質的に同じ配列を有し、上記試料DNAに直接ハイブリダイズしない第2の蛍光標識プライマーとを用いて、工程(4)で得た上記第1、第2のDNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行ない第1、第2の相補鎖合成DNA断片を得る工程と、
(6)上記第1、第2の蛍光標識プライマーと上記第1、第2の相補鎖合成DNA断片とを用い、工程(4)で得た上記第1、第2のDNA鎖、上記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、上記第1、第2のDNA鎖の塩基配列と、上記第1、第2のDNA鎖の塩基配列に隣接する部分の上記試料DNAの塩基配列を決定する塩基配列方法に特徴があり、上記第1の蛍光標識プライマーは、少なくとも上記第1のアンカー配列と実質同じ配列を、上記第2の蛍光標識プライマーは、少なくとも上記第2のアンカー配列と実質同じ配列を、それぞれ持つことにも特徴がある。
【0016】
本発明の構成(e)では、ライゲーション用オリゴヌクレオチドと相補的な塩基配列と、制限酵素が認識する認識部配列と、ユニバーサルプライマーと同じ配列とを有し、3’末端側に1塩基〜4塩基からなる選択配列を有し、DAN断片の末端の塩基配列を選択を可能とする複数のアンカープライマーからなる試薬キットに特徴があり、上記アンカープライマーは、上記DAN断片の末端の2塩基の配列を選択する選択配列が、2塩基からなるすべての組み合わせの塩基配列を含むことにも特徴がある。
【0017】
本発明の構成(f)では、少なくともライゲーション用オリゴヌクレオチド、相補鎖合成用プライマーからなる試薬キットにおいて、上記相補鎖合成用プライマーが、上記オリゴヌクレオチドと実質的に相補な配列、制限酵素が認識する認識部配列と、この認識部配列の3’末端側に2塩基からなる選択配列とを有する16種のプライマーからなる第1のプライマーセットと、この第1のプライマーセットの各プライマーの5’末端側にアンカー配列を付加し、上記各プライマーの上記認識部配列の一部の塩基を置換した16種のプライマーからなる第2のプライマーを含む試薬キットに特徴がある。
【0018】
本発明の構成(g)では、少なくともライゲーション用オリゴヌクレオチド、相補鎖合成用プライマーからなる試薬キットにおいて、上記相補鎖合成用プライマーが、上記オリゴヌクレオチド、及び第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第1の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列を有し、上記認識部配列の一部の塩基が置換され、上記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーセットと、上記オリゴヌクレオチド、及び上記第1の制限酵素により認識する認識部配列と実質的に相補な配列と、3’末端側に1〜4塩基からなる第2の選択配列を有し、5’末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列を有し、上記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、上記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーセットを含む試薬キットに特徴があり、上記第1、第2の選択配列の塩基が2塩基からなり、2塩基からなるすべての組み合わせの塩基配列を含むことにも特徴がある。
【0019】
本発明の構成(h)では、構成(a)、(b)の試料調製方法により調製された試料を分析する分析方法に特徴がある。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施例)
図1は、本発明の試料調製法を用いるDNA解析プロセスを説明する図である。解析しようとする試料DNA301(数Kb〜10Kbの長を持つ)を含む溶液302を2分割して、それぞれ第1のチューブ302−1、第2のチューブ302−2に分取する。第1のチューブ302−1に含まれる試料DNAを制限酵素Nla IIIで切断し、DNA断片群303を得る。Nla IIIは塩基配列−CATG−を認識し、3’末端に−CATG(3’)の塩基配列を持つDNA断片を生成する。使用する制限酵素は、Sau 3Al、Hha I、Mae Iの他何でも良いが、切断部位が頻度高く現われる4塩基認識酵素が良い。DNA断片群303を含む液320にDNAオリゴマー304を添加して、制限酵素による切断部の少なくとも3’末端に既知の塩基配列を持つDNAオリゴマー304を結合する。DNAオリゴマー304を結合する方法には、terminal deoxynucleotidyl transferaseによるポリA鎖の付加とライゲーションを用いた方法があるが、ここではライゲーションを用いた例で説明する。ライゲーション反応生成物を含む液321は、2分割してチューブ322、323に分取しておく。
【0022】
図2は、DNAオリゴマー304をライゲーション結合したDNA断片を示す図である。図2において、N、及びnは塩基配列を決定しようとするDNA断片を構成するヌクレオチド(A、T、G、Cのいずれかである)であり、Nla IIIにより認識される認識配列305は5’−CATG−3’である。DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖の3’末端側は相補鎖合成しないようにdideoxynucleotideで置換するなどして相補鎖がこれ以上伸びないようにする。もちろん、DNAオリゴマーの段階で3’−OHをアミノ基やビオチン等の残基で修飾し、3’伸長を妨げる型としておいて良い。DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖の3’末端側は相補鎖合成しないようにするのは、使用するアンカープライマーによる相補鎖合成でアンカープライマーの3’末端(DNA断片の選別を行なうための塩基配列を持つ部分)がDNA断片と完全に相補的でない場合には、アンカー部分と相補的な鎖ができないようにするためである。アンカープライマーの3’末端がDNA断片と完全にマッチした鎖では、反対側の末端(合成鎖の3’末端)にアンカープライマーの一部がハイブリダイズし、更に、伸長してアンカー部分と相補的な塩基配列を3’末端側に持つDNA断片が合成される。
【0023】
図3(a)は、DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするアンカープライマーセット(アンカープライマーセット▲1▼)の概念図、図3(b)は、DNAオリゴマー304を結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするプライマーセット▲2▼の概念図である。DNA断片に導入されたDNAオリゴマー304に相補的な部分315と、その5’末端側にアンカー配列311とを持ち、3’末端側のXXで示す2塩基(1〜4塩基で良い)からなる選別配列312を持つ16種(1〜4塩基に対応して4〜256種)のアンカープライマーセット306を用意する。選別配列312は特定のDNA断片をDNA断片の混合物の中から選択するための塩基配列である。このアンカープライマーセット306のアンカー部分311あるいはアンカー部分311を含む部分の塩基配列は実質ユニバーサル配列としておく。この時、図3(a)の313に示す様に、アンカープライマーセット306の3’末端から6塩基目の塩基(制限酵素の認識配列内の1つ、ここではCである)を、別の塩基、例えばTに変えたアンカープライマー(アンカープライマーセット▲1▼)16種と、変化させずCのままのプライマーセット307(プライマーセット▲2▼)とを用意する。この例では、図3(b)に示す様に、プライマーセット▲2▼にはアンカーをつける必要はないが、後のチェックに都合のよいように、Texas
RedあるいはFITCで蛍光標識314をつけておく。
【0024】
1種の蛍光体で蛍光標識されたプライマーセット▲2▼とDNA断片混合物とを用いてプライマーの伸長反応を行なう。即ち、図1に示す様に、ライゲーション反応生成物を含む液を含むチューブ322から、液を16本のチューブ322−1、322−2、…、322−16に分注し、ぞれぞれ異なるプライマーを入れて相補鎖合成をする。即ち、各チューブにはそれぞれ異なった選別配列312を有するプライマーが加えられる。相補鎖合成の産物はゲル電気泳動される。図4は、相補鎖合成の産物のゲル電気泳動スペクトルの例である。電気泳動パターンには、選別配列312を有するプライマーと、DNA鎖(2本鎖)のうちの+鎖、及び−鎖のそれぞれとから相補鎖合成された産物が、泳動開始点から等距離Lに対を成して出現する。プライマーの3’末端の2塩基が完全にDNA断片とマッチする時には相補鎖合成がおこり、そのDNA断片と同じ長さの蛍光標識DNA断片が生成する。そこで図4のスペクトルを得ることでDNA断片群中にいかなる長さの断片があり、その末端の塩基配列は何であるかがわかる。図5は、検出されたDNA断片の構造例を示す図である。例えば、選別配列(プライマー選択配列)AGを持つプライマー、及び選別配列(プライマー選択配列)TCを持つプライマーで得たelectropherogramには、DNA鎖長約400塩基のDNA断片が現われる。
【0025】
これらから、元の試料DNAを制限酵素により切断した2本鎖DNA断片の中には、長さが約400bpであり、それぞれの鎖の3’末端側の塩基配列がそれぞれ3’□GTACTC…5’、及び3’□GTACAG…5’であるDNA断片が含まれることがわかる。ここで「□」はライゲーションでDNA断片中に導入したオリゴマーの塩基配列であり、「…」はDNA断片に固有の塩基配列である。制限酵素認識部の塩基配列3’GTAC5’に続く5’末端側の塩基配列は、それぞれAG、及びTCに相補的な塩基配列となる。即ち、図5に示したDNA断片がDNA断片混合物中にあることがわかる。このDNA断片だけを取り出すには末端塩基配列がAG、及びTCをそれぞれ持つアンカープライマーを用いて、PCR(Polymerase Chain Reaction)を行ない、そのDNA断片のコピー数を他より数桁大きくすればよい。
【0026】
このようにして得たDNA断片の塩基配列、及びそれらに連なる元の試料DNAの塩基配列を、4種の蛍光体でそれぞれ標識されたプライマーを用いて決定する。既存の4種の蛍光標識プライマーを用いてシーケンシングをするために、PCR用のプライマーとして5’末端側にアンカーの入ったアンカープライマーセット306▲1▼を用いる。即ち、このアンカープライマーは、図3(a)にす様に既存のプライマーと共通なアンカー配列311、ライゲーションでDNA断片の3’末端側に導入されたDNAオリゴマー304と実質相補であり、アンカープライマーセット306に共通する共通プライマー配列315、制限酵素が認識する塩基配列の1部あるいは全部と共通な塩基配列、及び3’末端側に2塩基からなる選別配列312を持つプライマーである。アンカー配列311と共通プライマー配列315は、一部が共通でも良いが、共通部分の長さは8マー以下であり、4種の蛍光体でそれぞれ標識された既存のプライマー単独では、DNA断片に導入したDNAオリゴマー304の塩基配列に安定にハイブリダイズし相補鎖合成を行なうことはできないことが必要である。共通プライマー配列315はDNAオリゴマー304と実質相補な塩基配列を持つ。また、アンカー部分311の塩基配列は10マー以上、望ましくは15マー以上が安定なハイブリダイズを得る上で必要である。
【0027】
ここでプライマー配列に工夫をする。即ち、これらアンカープライマー▲1▼は、DNA断片に導入されたDNAオリゴマー304と相補な塩基配列と、3’末端に2塩基の選択配列(XX)312を持つが、制限酵素が認識する塩基配列−CATG−の5’末端側の1塩基の種類を変化させておく。図3(a)の例では、塩基配列−CATG−のうちCをTに変化させてあり(Tの代わりにA、Gとしてもよい)、このアンカープライマーは、3’末端から6塩基目の塩基T313がミスマッチを起こすが、DNA断片の末端に導入されたDNAオリゴマー304に安定にハイブリダイズし、相補鎖を形成する。この結果、形成されたDNA鎖は本実施例で用いた制限酵素で切断できない型となる。なお、塩基配列−CATG−のうちAを、T、G、Cのいずれかに変化させても、このアンカープライマーは、3’末端から5塩基目の塩基がミスマッチを起こすが、DNA断片の末端に導入されたDNAオリゴマー304に安定にハイブリダイズし、相補鎖を形成する。この結果同様に、形成されたDNA鎖は本実施例で用いた制限酵素で切断できない型となる。また、16種のプライマー(プライマーセット▲2▼)を用意する。これらプライマーは図3(b)に示すように、アンカー配列を持たないが、選択配列(XX)312を持ったプライマーであり、3’末端から2塩基目から6塩基目の塩基配列は塩基配列−CATG−に相補であり、5’末端の蛍光標識314をつけてもよく、つけなくてもよい。
【0028】
図4の結果を用いて、130塩基より長いDNA断片をPCR増幅するのに必要なPCR用選別プライマーを決定する。図1に示すように、チューブ323に分取された液を、PCRの組み合わせの数(k)(電気泳動パターンにおいて、相補鎖合成された産物が、泳動開始点から等距離に出現する対の数以下であり、決定されたPCR用選別プライマーの種類の数に等しい)の容器323−1、323−2、…、323−kに分割し、容器にそれぞれ異なるPCR用選別プライマーを添加して、選別プライマーを用いたPCR増幅を行なう。このPCR増幅には、アンカープライマーセット▲1▼、及びプライマーセット▲2▼のプライマーの組合せを用いる。ここで130塩基(通常150塩基)以下のDNA断片は解析しなくても、次に述べるように各DNA断片の接続操作で全体塩基配列を決定できるのでPCR増幅は行なわない。
【0029】
PCR増幅で得たDNA断片を透析などで精製し、塩基配列決定用の鋳型とする。図6は、アンカープライマー▲1▼を用いた相補鎖合成(PCR増幅)により得られる産物の一例を示す図である。図6において、304’の部分はDNAオリゴマー304の伸長部分である。ここで得たDNA断片は、アンカープライマーセット306(アンカープライマーセット▲1▼)のアンカープライマー、及びプライマーセット307(プライマーセット▲2▼)のプライマーをそれぞれ末端に持つDNA断片である。プライマーセット307のプライマーが結合した部分305の−CATG−は先に用いた制限酵素を用いると、切断部位400で切断されるが、アンカープライマーセット306のアンカープライマーの結合した側の部分351の−CATA−は−CATG−と異なるため先に用いた制限酵素により切断されない。
【0030】
この結果、先の制限酵素でPCR増幅産物を切断後1本鎖として、アンカー配列311と同じ塩基配列を持つ蛍光標識プライマー330(*は蛍光標識を示す)を用いて相補合成すると、3’末端側に元の試料DNA301と相補な塩基配列を持ち、元の試料DNA鎖にハイブリダイズして更に相補鎖伸長可能なDNA断片(相補鎖伸長した蛍光標識プライマー402)が生成する。次いで、先に第2のチューブ302−2に分取した断片化前の元の試料DNA301と、塩基配列決定用の試薬(ddNTP:dideoxynucleotide triphosphateを含む試薬)とを加えてシーケンシング反応を行なう。蛍光標識プライマー330を用いたシーケンシング反応からPCR増幅したDNA断片の塩基配列がわかり、予め用意した上記の相補鎖伸長した蛍光標識プライマー402を用いたシーケンシング反応からこのDNA断片がつながるべき塩基配列(つなぎの塩基配列)がわかる。即ち、DNA断片の塩基配列と、この塩基配列に隣接する塩基配列を決定できる。
【0031】
図6に示すDNA断片は、アンカープライマーセット306のアンカープライマーとプライマーセット307(プライマーセット▲2▼)のプライマーをそれぞれ末端に持つDNA断片である。異なるPCR選別プライマー(図3(a)、図3(b)において、異なる選別配列を持つプライマーセット307、306のプライマー)を用いた反応から、試料DNA301の塩基配列を読むことができる。上記シーケンス反応では、異なる発光波長を持つ4種の蛍光体でそれぞれ標識されたプライマーを用いて、いわゆるA反応、C反応、G反応、及びT反応を行なうもので、蛍光標識プライマー330として通常の4色プライマーを用いることができるので、取り扱いが簡単で便利である。即ち、3’末端に選択配列を持つ16種の蛍光標識プライマー(4色なので合計64種のプライマーとなる)を作る必要がない利点がある。
【0032】
(第2の実施例)
本実施例は2本鎖DNAの塩基配列を3’末端、5’末端の両側から同時に決定する例である。図7は、選択配列を持つアンカープライマー、標識プライマーとDNA断片の関係を示す図である。蛍光標識されたフォワードプライマー(+鎖を相補鎖伸長合成するために使用されるプライマー)171、及びプライマー(−鎖を相補鎖伸長合成するために使用されるプライマー)371を用いるが、標識蛍光体はそれぞれTexas Red(314、発光波長615nm)、及びCy−5(141、発光波長654nm)を用いた。以後、これらプライマーを、プライマー−a(171、フォワードプライマー)、プライマー−b(371)と呼ぶ。プライマー−a(171)、−b(371)、アンカープライマー(361、362)とDNAオリゴマー304を末端に付けたDNA断片の関係を図7に示した。プライマー−a(171)とアンカープライマー−a(361)のアンカー配列は実質共通の塩基配列を持ち、プライマー−b(371)とアンカープライマー−b(362)のアンカー配列は実質共通の塩基配列を持つ。プライマー−a、−bは、部分的にDNA断片にハイブリダイズすることはあっても安定ではなくアンカープライマーの存在なしでは相補鎖合成は起こさない塩基配列としてある。即ち、アンカープライマーが伸長してできたDNA鎖316の部分にだけ安定にハイブリダイズし、シーケンシング産物を作る。
【0033】
DNA断片に結合させるDNAオリゴマーの塩基配列の中にclass2Aの制限酵素Fok Iによる制限酵素認識部(−GGATG−)318を入れておく。この制限酵素Fok Iは制限酵素認識部318より3’末端側の9塩基の部位317を切断する制限酵素で、後で述べるように、DNA断片に結合したDNAオリゴマーを除去するのに用いることができる。アンカープライマー−a(361)は制限酵素認識部(但し、塩基が置換された制限酵素認識部である)351(ここではNla IIIによる制限酵素認識部)の塩基配列−CATG−を一部変化させ313のようにC→Tとし−TATG−と変化させて、制限酵素Nla IIIで切断できなくしたものとするが、class2Aの制限酵素切断の認識配列(−GGATG−)318は持つので、Fok Iでは切断される。一方、アンカープライマー−b(362)は制限酵素認識配列部−CATG−305は保存するが、class2Aの制限酵素の認識配列(−GGATG−)の一部319を変化させ−GTATG−とし、Fok Iでは切断されないようにしてある。即ち、アンカープライマー−aと−bを用いて、PCR増幅した産物は制限酵素Nla IIIで片側を、class2Aの制限酵素で反対側を切断でき、それぞれDNA断片の末端に導入したDNAオリゴマーを除去できるよう工夫してある。もちろん、アンカープライマー−a、及び−bは、3’末端に2塩基からなる選別配列312(図7の例では、AG、TC)を持っており、それぞれ16種のプライマーからなるアンカープライマーセットである。
【0034】
以下、手順に従って説明する。第1の実施例と同様に解析しようとする試料DNA(数Kb〜10Kb)を含む液が2分割される。分割された一方の液は、試料DNAを制限酵素Nla III(他の4塩基認識酵素でもよい)で切断する。制限酵素による切断部には既知の塩基配列を持ったDNAオリゴマーをライゲーションにより結合する。ここで用いたDNAオリゴマーは、塩基配列(配列番号3)、
5’−GTAAAACGACGGCCAGTGGATGCATG−3’
をもつヘルパーオリゴマー101と、塩基配列(配列番号4)、
3’−CATTTTGCTGCCGGTCACCTAC−5’
の3’端にビオチン(Bio)が導入され、5’端にリン酸基(P)を有する
3’ Bio−CATTTTGCTGCCGGTCACCTAC P−5’
の構造を持つリンカーオリゴマー102である。ヘルパーオリゴマー101は、Nla IIIにより生じる突出端であるCATG−3’を除いた塩基配列はリンカーオリゴマー102の塩基配列と相補的な関係にあり、ビオチン(Bio)は伸長反応をブロックするために導入されたものであり、3’端のOH基をビオチン(Bio)以外の物質で修飾してもよい。DNAオリゴマーを導入したDNA鎖には、一方の末端近傍にNla III、他方の末端の近傍にFok Iにより認識される切断部が存在する。導入されたリンカーオリゴマー102の3’末端は、これ以上鎖伸長しないようにビオチンでロックされている。ライゲーションの収率が悪い場合は、5’−Pを持たないリンカーを用いて、ヘルパオリゴマー101のみをライゲーションした後、ポリメラーゼ反応で相補鎖を合成する。
【0035】
この場合、3’末端はターミナルヌクレオチジルトランスフェラーゼでジデオキシヌクレオチドを3’末端に導入してロックする。この手法を用いれば、プライマー同士がライゲーションでダイマーとなることを防げれるので、高効率でヘルパオリゴマー101とリンカーオリゴマー102の塩基配列をDNA鎖に導入できる。DNA断片のセルフライゲーションは大過剰(100倍)のオリゴマーを用いることで防止できる。アンカープライマー−a(アンカープライマーセットa)、及びアンカープラマイマー−b(アンカープライマーセットb)は、導入されたDNAオリゴマー、及びNla IIIによる認識部に共通してハイブリダイズするが、アンカープライマー−aは、Nla IIIによる認識部の塩基配列が−CATGNN3’から−TATGNN3’へと変化している。一方、アンカープライマー−bは、Fok Iによる認識部の塩基配列が−GGATGCATGNNから−GTATGCATGNNへと変化している。これらの変化は、いずれも相補鎖合成には支障のない点置換である。
【0036】
図8は、選択配列を持つアンカープイライマーを用いてDNA断片を選別してPCRを行なうに先立ち少量のDNA断片でプライマーの対を決定する方法を説明する図である。DNA断片の混合物をPCR増幅するためのプライマーの対を決定するために、第1の実施例と同様の電気泳動スペクトルを作る。即ち、先に2分割された一方の試料溶液(制限酵素により切断されたDNA断片群を含む)を、さらに、図8に示すように16分割しそれぞれ容器に収納し、それぞれにアンカープライマーセットbに属する16種のプライマー110を1種づつ加え、更に蛍光標識(*)されたフォワードプライマー111を加え、サイクルシーケンシングの条件下で相補鎖伸長して、フォワードプライマー111から伸長した相補鎖106を形成する。ここではアンカープライマー−bを用いたが、アンカープライマー−a、あるいはまったく点置換を持たないプライマーセットでも同様に使用できる。反応ではまずアンカープライマー−b(110)がDNA断片100にハイブリダイズし、3’末端が完全にマッチしたものについて相補鎖伸長103がおこる。ここでマッチしない側の鎖は伸長しない。相補鎖は導入オリゴマー(ヘルパーオリゴマー101)部分まで行なわれ、結果として伸長鎖の3’末端にヘルパオリゴマー101にハイブリダイズする塩基配列104ができる。熱サイクル反応により、この相補鎖伸長103は、更に続いて、プライマー110のアンカー配列と相補な塩基配列105を3’末端にもつDNA断片を形成する。即ち、フォワードプライマー111のハイブリダイズする塩基配列105部分が形成される。この塩基配列105部分にフォワードプライマー111がハイブリダイズし、伸長した相補鎖106を形成する。以後は、通常のPCRと同様に反応が進み、アンカープライマー−aの末端塩基配列が完全にハイブリダイズする、DNA断片と実質同じ長さ(両端のアンカープライマーの長さだけ長い)の蛍光標識DNA断片を得る。
【0037】
ここではDNA断片混合物の長さを、DNA断片の末端の2塩基種毎に求めるのに用いたが、DNA断片混合物をその末端の2塩基配列毎にPCR増幅する手法としても有効である。選別配列を2塩基から3あるいは4塩基に増やすと1塩基ミスマッチしていてもプライマーとして機能することがある。これを防ぐため、例えば3塩基の選択配列を持つ場合、アンカープライマーの3’末端から4塩基目(選択配列の手前の塩基)にイノシンを入れ、末端の結合力を弱める。この場合、更に選択配列にミスマッチがあると相補鎖合成は非常に困難になり選別特性を上げるのに都合が良い。
【0038】
各16種のアンカープライマー−b毎に得られた蛍光標識DNA鎖をゲル電気泳動分離して、混合物中に含まれるDNA鎖の末端塩基配列と長さを知ることができる。このようにして得られた末端塩基配列と長さを用いて、PCR用プライマーを決めるが、2つのプライマーはそれぞれアンカープライマー−a、及び−bから1種づつ選ぶ。この2つのプライマー(例えば、アンカープライマー−a(361)、及び−b(362))を用いてPCR増幅することにより、図7に示すような、一方の末端近傍にNla III、他方の末端希望にFok Iによる切断部を持つDNA断片を得る。得られた種々のDNA断片をエタノール沈殿により精製した後、バッファー液に溶かしてそれぞれ2分割し、各DNA断片について(a)、及び(b)の溶液を得る。(a)の溶液にはNla IIIを入れ、(b)の溶液にはFok Iを入れ、DNA断片を切断する。Nla IIIにより切断されたDNA断片を1本鎖化し、蛍光標識プライマー171(フォワードプライマー)を用いてサイクル反応下で相補合成すると、3’末端側に元の試料DNA301と相補な塩基配列を持ち、元の試料DNA鎖にハイブリダイズして更に相補鎖伸長可能なDNA断片(相補鎖伸長した蛍光標識プライマー404)が生成する。同様にして、Fok Iにより切断されたDNA断片を1本鎖化し、蛍光標識プライマー371を用いてサイクル反応下で相補合成すると、3’末端側に元の試料DNA301と相補な塩基配列を持ち、元の試料DNA鎖にハイブリダイズして更に相補鎖伸長可能なDNA断片(相補鎖伸長した蛍光標識プライマー406)が生成する。このようにして、元の試料DNA鎖301にハイブリダイズしてさらに相補鎖伸長可能なDNA断片404、406を予め用意する。
【0039】
次いで、両者を混合し(最後まで別々でも良い)、制限酵素による切断前の全長をもつ試料DNA301を加え、更に、塩基配列決定用の試薬(ddNTP:dideoxynucleotide triphosphateを含む試薬)とを加えてサイクルシーケンシング反応を行なう。この反応により、DNA鎖の前後の塩基配列決定に必要な情報を得ることができる。即ち、蛍光標識プライマー171、371を用いたシーケンシング反応からPCR増幅したDNA断片の塩基配列がわかり、上記の相補鎖伸長した蛍光標識プライマー404、406を用いたシーケンシング反応からこのDNA断片がつながるべき塩基配列(つなぎの塩基配列)がわかる。即ち、第1の実施例と同様にDNA断片の塩基配列と、この塩基配列に隣接する塩基配列を決定できる。
【0040】
ここではプライマーはDNA2本鎖(+、−鎖)に対応して2色(2種の蛍光標識されたプライマー)であり、A、C、G、Tの識別は、異なる電気泳動路で行なう、即ち、末端塩基種毎に異なる電気泳動路で泳動させる(Bio/Technology、9、648−651(1991))。
【0041】
一方、4色蛍光体プライマー(4種の蛍光体のそれぞれで標識されたプライマー)を用いる時には、(a)の溶液と(b)の溶液を混合せずに、第1の実施例と同様にして行なう。このようにDNA鎖の両端に異なる切断部を持つプライマーでPCRを行なうことで、2本鎖の両側から同時に塩基配列決定をできるので効率が良い。また、両末端の続きの塩基配列を同時に知ることができるので、塩基配列決定するDNA断片の数を最小にできる利点がある。
【0042】
以上の各実施例での試料DNAの長さは数Kb〜10Kbであればよく、検査対象から抽出されたDNAから断片化されたDNA断片試料であってもよいことはいうまでもない。
【0043】
【発明の効果】
プライマーセットを用いて塩基配列決定する方法は多色計測を用いるシステムでは準備するプライマーの数が多く大変であったが、本発明ではアンカープライマーにDNA断片の選別機能を持たせることにより、少数の既存プライマーを用いて簡単に長い試料DNAの塩基配列決定ができる。さらに、DNA鎖の両端に制限酵素により切断可能な異なる切断部を持つプライマーでPCRを行ない、2本鎖の両側から同時に塩基配列決定できるので効率が良い。
【0044】
(配列表)
配列番号:1
配列の長さ:18
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
TGTAAAACGACGGCCAGT
配列番号:2
配列の長さ:22
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
GTAATACGACTCACTATAGGGC
配列番号:3
配列の長さ:26
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
GTAAAACGACGGCCAGTGGATGCATG
配列番号:4
配列の長さ:22
配列の型:核酸
鎖の数:1本鎖
トポロジー:直鎖状
配列の種類:他の核酸、合成DNA
配列
CATCCACTGGCCGTCGTTTTAC
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の試料調製法を用いるDNA解析プロセスを説明する図。
【図2】DNAオリゴマーをライゲーション結合したDNA断片を示す図。
【図3】(a)は、DNAオリゴマーを結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするアンカープライマーセットの概念図、(b)は、DNAオリゴマーを結合した後のDNA鎖(1本鎖)の末端にハイブリダイズするプライマーセットの概念図。
【図4】16種の選択プライマーを用いて得たDNA断片の相補鎖合成の産物のゲル電気泳動スペクトルの例を示す図。
【図5】検出されたDNA断片の構造例を示す図。
【図6】アンカープライマーを用いた相補鎖合成(PCR増幅)により得られる産物の一例を示す図。
【図7】選択配列を持つアンカープライマー、標識プライマーとDNA断片の関係を示す図。
【図8】選択配列を持つアンカープイライマーを用いてDNA断片を選別してPCRを行なうに先立ち少量のDNA断片でプライマーの対を決定する方法を説明する図。
【符号の説明】
301…切断前の試料DNA、302…試料DNAを含む溶液、302−1…第1のチューブ、302−2…第2のチューブ、303…制限酵素切断されたDNA断片群、304…DNAオリゴマー、304’…DNAオリゴマーの伸長部分、305…制限酵素認識配列部−CATG−、306…アンカープライマーセット、307…プライマーセット、311…アンカー配列、312…選別配列、313…アンカープライマーセットの3’末端から6塩基目の塩基、314…蛍光標識(Texas Red)、141…蛍光標識(Cy−5)、315…DNAオリゴマーに相補的な部分(共通プライマー配列)、316…アンカープライマーが伸長してできたDNA鎖(相補鎖合成されたアンカー配列)、317…制限酵素Fok Iの制限酵素認識部より3’末端側の9塩基の部位、318…制限酵素Fok Iによる制限酵素認識部(−GGATG−)、319…class2Aの制限酵素の認識配列(−GGATG−)の一部、320…DNA断片群を含む液、321…ライゲーション反応生成物を含む液、322、323…チューブ、322−1、322−2、〜、322−16…チューブ、323−1、323−2、〜、323−k…容器、330…蛍光標識プライマー、351…塩基が置換された認識配列、361…アンカープライマー−a(AG選別配列を持ったアンカープライマー)、362…アンカープライマー−b(TG選別配列を持ったアンカープライマー)、371…プライマー−b、171…プライマー−a(フォワードプライマー)、100…DNA断片、101…ヘルパーオリゴマー、102…リンカーオリゴマー、103…DNA断片の合成相補(相補鎖伸長鎖)、104…リンカーオリゴマーにハイブリダイズする塩基配列、105…プライマーのアンカー配列と相補な塩基配列、106…プライマー111から伸長した相補鎖、110…アンカープライマーセットに属する16種のプライマー、111…フォワードプライマー、400…制限酵素切断部位、402、404、406…相補鎖伸長した蛍光標識プライマー。
Claims (11)
- (1)試料DNAを制限酵素で切断して複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)前記DNA断片の少なくとも3'末端側に塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドを付加する工程と、(3)前記制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列とを有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記制限酵素で切断できない塩基配列部分を有するアンカープライマーと、前記制限酵素で切断を受ける塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、(4)増幅された前記特定のDNA断片の片方の末端を切断したDNA鎖を得る工程と、(5)少なくとも前記アンカー配列と実質的に同じ配列を有し、前記試料DNAに直接ハイブリダイズしない蛍光標識プライマーを用いて、前記工程(4)で得た前記DNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行ない相補鎖合成DNA断片を得る工程と、(6)前記蛍光標識プライマーと前記相補鎖合成DNA断片とを用い、前記工程(4)で得た前記DNA鎖、前記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、前記DNA鎖の塩基配列と前記DNA鎖の塩基配列に隣接する部分の前記試料DNAの塩基配列とを決定することを特徴とする塩基配列決定方法。
- (1)試料DNAを制限酵素で切断して複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)前記DNA断片の少なくとも3'末端側に塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドを付加する工程と、(3)前記制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列とを有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記制限酵素で切断できない塩基配列部分を有するアンカープライマーと、前記制限酵素で切断を受ける塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、(4)増幅された前記特定のDNA断片の片方の末端を切断したDNA鎖を得る工程と、(5)少なくとも前記アンカー配列と実質的に同じ配列を有し、前記試料DNAに直接ハイブリダイズしない蛍光標識プライマーを用いて、前記工程(4)で得た前記DNA鎖、前記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、前記DNA鎖の塩基配列と前記DNA鎖の塩基配列に隣接する部分の前記試料DNAの塩基配列とを決定することを特徴とする塩基配列決定方法。
- 請求項1または請求項2に記載の方法において、前記蛍光標識プライマーは、少なくとも前記アンカー配列と実質同じ配列を持つことを特徴とする塩基配列決定方法。
- (1)試料DNAを制限酵素で切断して複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)前記DNA断片の少なくとも3'末端側に塩基配列が既知のオリゴヌクレオチドを付加する工程と、(3)前記制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上のアンカー配列と
を有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記制限酵素で切断できない塩基配列部分を有するアンカープライマーと、前記制限酵素で切断を受ける塩基配列を有するプライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程とを有し、増幅された前記特定のDNA断片の塩基配列を決定することを特徴とする塩基配列決定方法。 - (1)試料DNAを第1の制限酵素で切断して複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)前記DNA断片の少なくとも3'末端側に塩基配列が既知であり、第2の制限酵素が認識する認識部配列をもつオリゴヌクレオチドを付加する工程と、(3)前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第1の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列とを有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーと、前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第2の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列とを有し、前記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、前記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、(4)増幅された前記特定のDNA断片の第1の末端を前記第2の制限酵素により切断して第1のDNA鎖を、増幅された前記特定のDNA断片の第2の末端を前記第1の制限酵素により切断して第2のDNA鎖を、それぞれ得る工程と、(5)少なくとも前記第1のアンカー配列と実質的に同じ配列を有し、前記試料DNAに直接ハイブリダイズしない第1の蛍光標識プライマーと、少なくとも前記第2のアンカー配列と実質的に同じ配列を有し、前記試料DNAに直接ハイブリダイズしない第2の蛍光標識プライマーとを用いて、前記工程(4)で得た前記第1、第2のDNA鎖を鋳型として相補鎖合成を行ない第1、第2の相補鎖合成DNA断片を得る工程と、(6)前記第1、第2の蛍光標識プライマーと前記第1、第2の相補鎖合成DNA断片とを用い、前記工程(4)で得た前記第1、第2のDNA鎖、前記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、前記第1、第2のDNA鎖の塩基配列と、前記第1、第2のDNA鎖の塩基配列に隣接する部分の前記試料DNAの塩基配列とを決定することを特徴とする塩基配列決定方法。
- (1)試料DNAを第1の制限酵素で切断して複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)前記DNA断片の少なくとも3'末端側に塩基配列が既知であり、第2の制限酵素が認識する認識部配列をもつオリゴヌクレオチドを付加する工程と、(3)前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第1の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列とを有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーと、前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第2の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列とを有し、前記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、前記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程と、(4)増幅された前記特定のDNA断片の第1の末端を前記第2の制限酵素により切断して第1のDNA鎖を、増幅された前記特定のDNA断片の第2の末端を前記第1の制限酵素により切断して第2のDNA鎖を、それぞれ得る工程と、(5)前記第1、第2の蛍光標識プライマー用い、前記工程(4)で得た前記第1、第2のDNA鎖、前記試料DNAを鋳型としてシーケンシング反応を行なう工程とを有し、前記第1、第2のDNA鎖の塩基配列と、前記第1、第2のDNA鎖の塩基配列に隣接する部分前記試料DNAの塩基配列とを決定することを特徴とする塩基配列決定方法。
- 請求項5または請求項6に記載の方法において、前記第1の蛍光標識プライマーは、少なくとも前記第1のアンカー配列と実質同じ配列を、前記第2の蛍光標識プライマーは、少なくとも前記第2のアンカー配列と実質同じ配列を、それぞれ持つことを特徴とする塩基配列決定方法。
- (1)試料DNAを第1の制限酵素で切断して複数長さのDNA断片を生成する工程と、(2)前記DNA断片の少なくとも3'末端側に塩基配列が既知であり、第2の制限酵素が認識する認識部配列をもつオリゴヌクレオチドを付加する工程と、(3)前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第1の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列とを
有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーと、前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第2の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列とを有し、前記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、前記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーとを用いて、PCRにより特定のDNA断片を増幅する工程とを有し、増幅された前記特定のDNA断片の塩基配列を決定することを特徴とする塩基配列決定方法。 - 少なくともライゲーション用オリゴヌクレオチド、相補鎖合成用プライマーからなる試薬キットにおいて、前記相補鎖合成用プライマーが、前記オリゴヌクレオチドと実質的に相補な配列と、制限酵素が認識する認識部配列と、該認識部配列の3'末端側に2塩基からなる選択配列とを有する16種のプライマーからなる第1のプライマーセットと、該第1のプライマーセットの各プライマーの5'末端側にアンカー配列を付加し、前記各プライマーの前記認識部配列の一部の塩
基を置換した16種のプライマーからなる第2のプライマーとを含むことを特徴とする試薬キット。 - 少なくともライゲーション用オリゴヌクレオチド、相補鎖合成用プライマーからなる試薬キットにおいて、前記相補鎖合成用プライマーが、第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基からなる第1の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第1のアンカー配列とを有し、前記認識部配列の一部の塩基が置換され、前記第1の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第1のアンカープライマーセットと、前記第1の制限酵素が認識する認識部配列と前記オリゴヌクレオチドの配列とに実質的に相補な配列と、3'末端側の1塩基〜4塩基
からなる第2の選択配列と、5'末端側に少なくとも8マー以上の第2のアンカー配列とを有し、前記オリゴヌクレオチドの一部の塩基が置換され、前記第2の制限酵素で切断できない塩基配列部分を有する第2のアンカープライマーセットを含むことを特徴とする試薬キット。 - 請求項10に記載の試薬キットにおいて、前記第1、第2の選択配列の塩基が2塩基からなり、前記第1、第2のアンカープライマーセットは、前記2塩基からなる全ての組み合わせの塩基配列を含むことを特徴とする試薬キット。
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