JP3608210B2 - 新規化合物mk7924およびその製造法 - Google Patents
新規化合物mk7924およびその製造法 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は新規な化合物であるMK7924およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および本発明が解決しようとする課題】
従来、微生物が生産する駆虫薬としてアベルメクチン〔アンチミクロバイアル・エイジェンツ・アンド・ケモセラピイ(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)第15巻、第361頁(1979年)〕およびハイグロマイシンB〔ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアテイ(Journal of American ChemicalSociety)第80巻、第2714頁(1958年)〕等がすでに実用化されている。その後も微生物由来駆虫薬の探索が続けられているが、実用性を有するものはほとんどアベルメクチン類、またはハイグロマイシン類に分類されるのが現状であり、上記2物質とまったく異なるタイプの化合物は僅少である。また、これらのアベルメクチン類、ハイグロマイシン類には、毒性が比較的強い等の問題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは殺線虫活性を指標として駆虫活性物質を探索した結果、落葉落枝より分離されたコロノフォラ グリガリア(Coronophora gregaria)L2495株の培養物中に新規な殺線虫活性物質を見出だし、本発明を完成するに至った。
【0004】
すなわち、本発明の要旨は、(I)式で表される新規物質MK7924およびその製造法に存する。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の新規物質(以下「MK7924」と略記する)は、例えばMK7924を生産する能力を有するコロノフォラ(Coronophora)属に属する微生物の培養液から採取することができる。かかる微生物としては、コロノフォラ属に属し、MK7924を生産する能力を有するものであれば特に制限はされない。
【0005】
具体的には、本発明者らが落葉落枝より分離し、工業技術院生命工学工業技術研究所に生命研菌寄第13905号(FERM P−13905)として寄託されているコロノフォラ グリガリア(Coronophora gregaria)L2495株(以下「本菌株」と略記することがある)が挙げられる。本菌株の微生物学的性状は以下のとおりである。
【0006】
I.形態学的特徴
子嚢殻は宿主植物体上に散在あるいは群生する、はじめ植物樹皮下に埋没して生じ、のちに樹皮を破り乳頭状に突出した頸部を生じる、球形〜亜球形、直径1〜2.8mmに至る、子座を有さず。頸部は孔口内壁に無色のペリフィシスを有する。子嚢殻の殻壁は厚さ140〜190μm、5〜9層の多角形細胞から成り、外側は黒褐色で厚膜、内側は淡褐色、薄膜となる。子嚢は多数生じ、棍棒型、長い柄を有す、(146〜170)×(15〜20)μm、頂端は丸く、一重壁を有す、多胞子性(polysporus)。子嚢胞子はウインナソーセージ形、(9〜11.8)×(2.5〜3.0)μm、一細胞性、無色、平滑。
【0007】
II.各種培地上における培養上の特徴
▲1▼ジャガイモ・ブドウ糖寒天培地(PDA)上、27℃、7日間の培養
コロニーは7日間で直径7cmに拡がる、コロニー色調ははじめ白色、のちに中央部で黄味がかった白色を呈する、基底菌糸は放射状に伸長し、分枝する、巾2.8〜6.6μm、隔壁を有する。気生菌糸は豊富に形成される。PDA培地上ではアナモルフおよびテレオモルフは観察されなかった。
▲2▼麦芽寒天培地(MA)上、27℃、7日間の培養
コロニーは7日間で直径6.5cmに拡がる、コロニー色調ははじめ白色、のちに明るい茶灰色となる、基底菌糸は放射状に伸長し、分枝する、巾2.5〜8.5μm、隔壁を有する。気生菌糸は豊富に形成される。MA培地上ではアナモルフおよびテレオモルフは観察されなかった。
【0008】
III .生理学的性質
▲1▼最適生育条件
・最適pH;6(LCA液体培地中、7日間培養)
・最適温度;27℃(PDA培地上、7日間培養)
▲2▼生育の範囲
・pH範囲;pH4〜9(LCA液体培地中、7日間培養)
・温度範囲;15〜30℃、10℃および37℃では生育不可。(PDA培地上、7日間培養)
【0009】
IV.分類学的考察
本菌株(L2495)は1)樹木の樹皮上に大型の子実体を形成する、2)子実体は菌糸マットと呼ばれる子座(stroma)を持たない、3)子嚢は一重壁構造である、4)子嚢胞子は多胞子性(polysporus)である特徴を有す。特に多胞子性の子嚢胞子を有することは本菌株(L2495)の顕著な特徴の一つであり、Munk(1957)の“Danish Pyrenomycetes”およびDennis(1968)の“British Ascomycetes”に示される検索表によって属の検索を行ったところ、上記性状を有する菌群としてバルセラ(Valsella)属、デイアトリペーラ(Diatripella)属、カロスファエリア(Calosphaeria)属、ディトペイラ(Ditopella)属、コロノフォラ(Coronophora)属の5属が挙げられた。しかし、前者4属は子嚢殻が子座によって囲まれる特徴を有すことから、明らかに本菌株とは区別された。本菌株はコロノフォラ属の特徴によく合致した。本菌株は子嚢菌亜門−核菌網−Coronophorales−Coronophoraceae−Coronophora属に帰属する。
【0010】
Munkの“Danish Pyrenomycetes” pp289〜pp292によれば、コロノフォラ属には4種が知られている(コロノフォラ グリガリア(C.gregaria)、コロノフォラ アンガスタータ(C.angustata)、コロノフォラ アネクサ(C.annexa)、コロノフォラ オビパーラ(C.ovipara))。これらの種は子実体の大きさ、子嚢の大きさ、子嚢胞子の形態によって識別されている(表1参照)。本菌株の形態的性状はコロノフォラ グリガリアにほぼ一致した。本菌株の子嚢胞子がコロノフォラ グリガリアに比べてやや大きめである点に疑問はあるが、このような差異は種内における変異と考えられる。従って本菌株(L2495)はコロノフォラ グリガリア(Coronophora gregaria)L2495と同定した。
【0011】
【表1】
【0012】
本菌株は、他の菌類に見られるようにその性状が変化しやすい。例えば、本菌株に由来する突然変異株(自然発生または誘発性)、形質接合体または遺伝子組換え体であっても、MK7924物質を生産するものは全て本発明に使用できる。
【0013】
本発明のMK7924物質は、コロノフォラ属に属するMK7924物質生産菌を、例えば米を培地とした固体培養にて培養することにより得ることができる。このとき、米の他に玄米、麦、ひえ、粟、とうもろこし等の雑穀類や、ポテトデキストロース寒天なども使用することができる。また、通常の微生物が利用し得る栄養物を含有する液体培地で培養することも可能である。このときの炭素源としては、グルコース、水飴、デキストリン、シュークロース、デンプン、糖蜜、動植物油等が利用でき、窒素源としては大豆粉、小麦胚芽、コーンスティープリカー、魚粕、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、その他の無機窒素源、例えばアンモニウム塩等が用いられる。その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、燐酸、硫酸、およびその他のイオンを生成することができる無機塩類を添加しても差し支えない。また菌の発育を助け、MK7924物質の生産を促進するような有機および無機物も、必要に応じて適宜添加することができる。
【0014】
培養は、例えば好気または嫌気的条件下、好ましくは好気的条件下で静置的に行われる。培養に適当な温度は15〜30℃であり、好ましくは25〜27℃である。MK7924物質の生産は培地や培養条件により異なるが、通常10〜14日間でその蓄積量が最大に達する。従って、培養中のMK7924物質の蓄積量が最大になったときに培養を停止し、培養液から目的とする物質を単離・精製する。
【0015】
本発明のMK7924物質を培養物から単離・精製するには、その性状を利用した通常の分離手段、例えば溶媒抽出法、イオン交換樹脂法、吸着または分配カラムクロマトグラフィー法、ゲルろ過法、透析法、沈澱法等を単独、あるいは適宜組合わせて使用する。例えば培養液中に蓄積されたMK7924物質は、水と混ざらない有機溶媒、例えば酢酸エチル、ブタノール等で抽出すると、有機溶媒層に抽出される。またMK7924物質は、培養菌体中からはアセトン−水、メタノール−水、酢酸エチル等で抽出することができる。MK7924物質を更に精製するには、シリカゲル、アルミナ、各種合成吸着剤等を用いるカラムクロマトグラフィーを行うのがよい。
以上のような方法により得られたMK7924は無色の粉末で以下の性状を有し、優れた殺線虫活性を示す。
【0016】
【0017】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
【0018】
製造例1
1)培養
米60g、水60mlを三角フラスコに入れ、121℃、20分間高圧滅菌した。ついでコロノフォラ グリガリアL2495を5白金耳づつ植菌し、26℃で14日間静置培養した。
【0019】
2)精製
上記1)で得られた培養菌体に50%アセトン水溶液0.7リットルを添加、撹拌した後、遠心分離して菌体アセトン抽出液を得た。この抽出液を減圧下で0.35リットルまで濃縮後、合成吸着剤HP−20(三菱化成社製)に吸着させ、100%メタノールで溶出させた。この100%メタノール溶出画分を減圧下で濃縮し、茶褐色の油状物を得た。ついでこの油状物をクロロフォルム/メタノール=20/1で平衡化させたシリカゲル(Kieselgel 100Merk)に付し、ステップワイズでメタノールの比率を増加させた。本物質はクロロフォルム/メタノール=7/3溶出画分に含まれていた。このクロロフォルム/メタノール=7/3溶出画分を減圧下で濃縮し、黄褐色油状物500mgを得た。この黄褐色油状物を40mlの蒸留水に懸濁後、40mlの酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を取り、無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下で濃縮したところ、黄褐色油状物300mgを得た。ついでこの油状物を3mlのメタノールに溶解し、4℃で一昼夜放置したところ、白色沈殿が析出した。この白色沈殿を除いた上清を減圧下で濃縮し、溶媒を蒸発させたところ、約200mgの黄白色物質が得られた。この黄白色物質を少量のアセトニトリルに溶解し、逆相カラム(MCl−GEL ODS lHU 10φ×30mm 三菱化成社製)を用いた高速分取液体クロマトグラフィーにより精製し、純度98%以上のMK7924物質約150mgを得た。得られたMK7924物質の紫外吸収、赤外吸収、 1H−NMR,13C−NMR,およびマスの各スペクトルの測定結果は次のとおりであった。
【0020】
【表2】
【0021】
試験例1
土壌自活性線虫カエノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)を用いた殺線虫活性試験
土壌自活性線虫カエノルハブディティス エレガンスを滅菌水に懸濁し、これにアッセイに供するサンプルを加えた後、20℃で線虫を飼育し、その運動性を観察してサンプルの殺線虫活性を評価した。
【0022】
ポジテイブコントロールにはアベルメクチン100ppm,ハイグロマイシンB100ppmを用い、−、±、+、++、+++の5段階評価で殺線虫活性を評価した。
以下に本物質を評価した結果を示す。
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】
本発明のMK7924物質は殺線虫活性を有しており、駆虫薬としての有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】MK7924物質のメタノール溶液中で測定した紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図2】MK7924物質の臭化カリ錠法における赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】MK7924物質の重メタノール中で測定した500MHz 1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】MK7924物質の重メタノール中で測定した500MHz13C−NMRスペクトルを示す図である。
【産業上の利用分野】
本発明は新規な化合物であるMK7924およびその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術および本発明が解決しようとする課題】
従来、微生物が生産する駆虫薬としてアベルメクチン〔アンチミクロバイアル・エイジェンツ・アンド・ケモセラピイ(Antimicrobial Agents and Chemotherapy)第15巻、第361頁(1979年)〕およびハイグロマイシンB〔ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアテイ(Journal of American ChemicalSociety)第80巻、第2714頁(1958年)〕等がすでに実用化されている。その後も微生物由来駆虫薬の探索が続けられているが、実用性を有するものはほとんどアベルメクチン類、またはハイグロマイシン類に分類されるのが現状であり、上記2物質とまったく異なるタイプの化合物は僅少である。また、これらのアベルメクチン類、ハイグロマイシン類には、毒性が比較的強い等の問題があった。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは殺線虫活性を指標として駆虫活性物質を探索した結果、落葉落枝より分離されたコロノフォラ グリガリア(Coronophora gregaria)L2495株の培養物中に新規な殺線虫活性物質を見出だし、本発明を完成するに至った。
【0004】
すなわち、本発明の要旨は、(I)式で表される新規物質MK7924およびその製造法に存する。
以下、本発明につき詳細に説明する。
本発明の新規物質(以下「MK7924」と略記する)は、例えばMK7924を生産する能力を有するコロノフォラ(Coronophora)属に属する微生物の培養液から採取することができる。かかる微生物としては、コロノフォラ属に属し、MK7924を生産する能力を有するものであれば特に制限はされない。
【0005】
具体的には、本発明者らが落葉落枝より分離し、工業技術院生命工学工業技術研究所に生命研菌寄第13905号(FERM P−13905)として寄託されているコロノフォラ グリガリア(Coronophora gregaria)L2495株(以下「本菌株」と略記することがある)が挙げられる。本菌株の微生物学的性状は以下のとおりである。
【0006】
I.形態学的特徴
子嚢殻は宿主植物体上に散在あるいは群生する、はじめ植物樹皮下に埋没して生じ、のちに樹皮を破り乳頭状に突出した頸部を生じる、球形〜亜球形、直径1〜2.8mmに至る、子座を有さず。頸部は孔口内壁に無色のペリフィシスを有する。子嚢殻の殻壁は厚さ140〜190μm、5〜9層の多角形細胞から成り、外側は黒褐色で厚膜、内側は淡褐色、薄膜となる。子嚢は多数生じ、棍棒型、長い柄を有す、(146〜170)×(15〜20)μm、頂端は丸く、一重壁を有す、多胞子性(polysporus)。子嚢胞子はウインナソーセージ形、(9〜11.8)×(2.5〜3.0)μm、一細胞性、無色、平滑。
【0007】
II.各種培地上における培養上の特徴
▲1▼ジャガイモ・ブドウ糖寒天培地(PDA)上、27℃、7日間の培養
コロニーは7日間で直径7cmに拡がる、コロニー色調ははじめ白色、のちに中央部で黄味がかった白色を呈する、基底菌糸は放射状に伸長し、分枝する、巾2.8〜6.6μm、隔壁を有する。気生菌糸は豊富に形成される。PDA培地上ではアナモルフおよびテレオモルフは観察されなかった。
▲2▼麦芽寒天培地(MA)上、27℃、7日間の培養
コロニーは7日間で直径6.5cmに拡がる、コロニー色調ははじめ白色、のちに明るい茶灰色となる、基底菌糸は放射状に伸長し、分枝する、巾2.5〜8.5μm、隔壁を有する。気生菌糸は豊富に形成される。MA培地上ではアナモルフおよびテレオモルフは観察されなかった。
【0008】
III .生理学的性質
▲1▼最適生育条件
・最適pH;6(LCA液体培地中、7日間培養)
・最適温度;27℃(PDA培地上、7日間培養)
▲2▼生育の範囲
・pH範囲;pH4〜9(LCA液体培地中、7日間培養)
・温度範囲;15〜30℃、10℃および37℃では生育不可。(PDA培地上、7日間培養)
【0009】
IV.分類学的考察
本菌株(L2495)は1)樹木の樹皮上に大型の子実体を形成する、2)子実体は菌糸マットと呼ばれる子座(stroma)を持たない、3)子嚢は一重壁構造である、4)子嚢胞子は多胞子性(polysporus)である特徴を有す。特に多胞子性の子嚢胞子を有することは本菌株(L2495)の顕著な特徴の一つであり、Munk(1957)の“Danish Pyrenomycetes”およびDennis(1968)の“British Ascomycetes”に示される検索表によって属の検索を行ったところ、上記性状を有する菌群としてバルセラ(Valsella)属、デイアトリペーラ(Diatripella)属、カロスファエリア(Calosphaeria)属、ディトペイラ(Ditopella)属、コロノフォラ(Coronophora)属の5属が挙げられた。しかし、前者4属は子嚢殻が子座によって囲まれる特徴を有すことから、明らかに本菌株とは区別された。本菌株はコロノフォラ属の特徴によく合致した。本菌株は子嚢菌亜門−核菌網−Coronophorales−Coronophoraceae−Coronophora属に帰属する。
【0010】
Munkの“Danish Pyrenomycetes” pp289〜pp292によれば、コロノフォラ属には4種が知られている(コロノフォラ グリガリア(C.gregaria)、コロノフォラ アンガスタータ(C.angustata)、コロノフォラ アネクサ(C.annexa)、コロノフォラ オビパーラ(C.ovipara))。これらの種は子実体の大きさ、子嚢の大きさ、子嚢胞子の形態によって識別されている(表1参照)。本菌株の形態的性状はコロノフォラ グリガリアにほぼ一致した。本菌株の子嚢胞子がコロノフォラ グリガリアに比べてやや大きめである点に疑問はあるが、このような差異は種内における変異と考えられる。従って本菌株(L2495)はコロノフォラ グリガリア(Coronophora gregaria)L2495と同定した。
【0011】
【表1】
【0012】
本菌株は、他の菌類に見られるようにその性状が変化しやすい。例えば、本菌株に由来する突然変異株(自然発生または誘発性)、形質接合体または遺伝子組換え体であっても、MK7924物質を生産するものは全て本発明に使用できる。
【0013】
本発明のMK7924物質は、コロノフォラ属に属するMK7924物質生産菌を、例えば米を培地とした固体培養にて培養することにより得ることができる。このとき、米の他に玄米、麦、ひえ、粟、とうもろこし等の雑穀類や、ポテトデキストロース寒天なども使用することができる。また、通常の微生物が利用し得る栄養物を含有する液体培地で培養することも可能である。このときの炭素源としては、グルコース、水飴、デキストリン、シュークロース、デンプン、糖蜜、動植物油等が利用でき、窒素源としては大豆粉、小麦胚芽、コーンスティープリカー、魚粕、酵母エキス、肉エキス、ペプトン、その他の無機窒素源、例えばアンモニウム塩等が用いられる。その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、塩素、燐酸、硫酸、およびその他のイオンを生成することができる無機塩類を添加しても差し支えない。また菌の発育を助け、MK7924物質の生産を促進するような有機および無機物も、必要に応じて適宜添加することができる。
【0014】
培養は、例えば好気または嫌気的条件下、好ましくは好気的条件下で静置的に行われる。培養に適当な温度は15〜30℃であり、好ましくは25〜27℃である。MK7924物質の生産は培地や培養条件により異なるが、通常10〜14日間でその蓄積量が最大に達する。従って、培養中のMK7924物質の蓄積量が最大になったときに培養を停止し、培養液から目的とする物質を単離・精製する。
【0015】
本発明のMK7924物質を培養物から単離・精製するには、その性状を利用した通常の分離手段、例えば溶媒抽出法、イオン交換樹脂法、吸着または分配カラムクロマトグラフィー法、ゲルろ過法、透析法、沈澱法等を単独、あるいは適宜組合わせて使用する。例えば培養液中に蓄積されたMK7924物質は、水と混ざらない有機溶媒、例えば酢酸エチル、ブタノール等で抽出すると、有機溶媒層に抽出される。またMK7924物質は、培養菌体中からはアセトン−水、メタノール−水、酢酸エチル等で抽出することができる。MK7924物質を更に精製するには、シリカゲル、アルミナ、各種合成吸着剤等を用いるカラムクロマトグラフィーを行うのがよい。
以上のような方法により得られたMK7924は無色の粉末で以下の性状を有し、優れた殺線虫活性を示す。
【0016】
【0017】
【実施例】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって限定されるものではない。
【0018】
製造例1
1)培養
米60g、水60mlを三角フラスコに入れ、121℃、20分間高圧滅菌した。ついでコロノフォラ グリガリアL2495を5白金耳づつ植菌し、26℃で14日間静置培養した。
【0019】
2)精製
上記1)で得られた培養菌体に50%アセトン水溶液0.7リットルを添加、撹拌した後、遠心分離して菌体アセトン抽出液を得た。この抽出液を減圧下で0.35リットルまで濃縮後、合成吸着剤HP−20(三菱化成社製)に吸着させ、100%メタノールで溶出させた。この100%メタノール溶出画分を減圧下で濃縮し、茶褐色の油状物を得た。ついでこの油状物をクロロフォルム/メタノール=20/1で平衡化させたシリカゲル(Kieselgel 100Merk)に付し、ステップワイズでメタノールの比率を増加させた。本物質はクロロフォルム/メタノール=7/3溶出画分に含まれていた。このクロロフォルム/メタノール=7/3溶出画分を減圧下で濃縮し、黄褐色油状物500mgを得た。この黄褐色油状物を40mlの蒸留水に懸濁後、40mlの酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を取り、無水硫酸ナトリウムで脱水後、減圧下で濃縮したところ、黄褐色油状物300mgを得た。ついでこの油状物を3mlのメタノールに溶解し、4℃で一昼夜放置したところ、白色沈殿が析出した。この白色沈殿を除いた上清を減圧下で濃縮し、溶媒を蒸発させたところ、約200mgの黄白色物質が得られた。この黄白色物質を少量のアセトニトリルに溶解し、逆相カラム(MCl−GEL ODS lHU 10φ×30mm 三菱化成社製)を用いた高速分取液体クロマトグラフィーにより精製し、純度98%以上のMK7924物質約150mgを得た。得られたMK7924物質の紫外吸収、赤外吸収、 1H−NMR,13C−NMR,およびマスの各スペクトルの測定結果は次のとおりであった。
【0020】
【表2】
【0021】
試験例1
土壌自活性線虫カエノルハブディティス エレガンス(Caenorhabditis elegans)を用いた殺線虫活性試験
土壌自活性線虫カエノルハブディティス エレガンスを滅菌水に懸濁し、これにアッセイに供するサンプルを加えた後、20℃で線虫を飼育し、その運動性を観察してサンプルの殺線虫活性を評価した。
【0022】
ポジテイブコントロールにはアベルメクチン100ppm,ハイグロマイシンB100ppmを用い、−、±、+、++、+++の5段階評価で殺線虫活性を評価した。
以下に本物質を評価した結果を示す。
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】
本発明のMK7924物質は殺線虫活性を有しており、駆虫薬としての有用性が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】MK7924物質のメタノール溶液中で測定した紫外吸収スペクトルを示す図である。
【図2】MK7924物質の臭化カリ錠法における赤外吸収スペクトルを示す図である。
【図3】MK7924物質の重メタノール中で測定した500MHz 1H−NMRスペクトルを示す図である。
【図4】MK7924物質の重メタノール中で測定した500MHz13C−NMRスペクトルを示す図である。
Claims (2)
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP27973793A JP3608210B2 (ja) | 1993-11-09 | 1993-11-09 | 新規化合物mk7924およびその製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP27973793A JP3608210B2 (ja) | 1993-11-09 | 1993-11-09 | 新規化合物mk7924およびその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JPH07133287A JPH07133287A (ja) | 1995-05-23 |
JP3608210B2 true JP3608210B2 (ja) | 2005-01-05 |
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ID=17615196
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JP27973793A Expired - Fee Related JP3608210B2 (ja) | 1993-11-09 | 1993-11-09 | 新規化合物mk7924およびその製造法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP6969770B2 (ja) * | 2017-01-13 | 2021-11-24 | 学校法人北里研究所 | 抗真菌薬に対する活性増強作用を有する新規化合物及びその製造方法 |
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1993
- 1993-11-09 JP JP27973793A patent/JP3608210B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH07133287A (ja) | 1995-05-23 |
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