JP3607447B2 - 磁界センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はアモルファス磁性エレメントを用いた磁界センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アモルファス合金ワイヤとして、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向の磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが開発されている。例えば、Co70.5B15Si10Fe4が開発されている。
【0003】
かかる零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤに高周波電流したときに発生するワイヤ両端間出力電圧中のインダクタンス電圧分は、ワイヤの横断面内に生じる円周方向磁束によって上記の円周方向に易磁化性の外殻部が円周方向に磁化されることに起因し、従って、周方向透磁率μθも同外殻部の円周方向の磁化に依存する。
【0004】
この通電中のアモルファスワイヤにワイヤ軸方向の外部磁界を作用させると、上記通電による円周方向磁束と外部磁束との合成により、上記円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずれ、それだけ円周方向への磁化が生じ難くなり、上記周方向透磁率μθが変化し、上記インダクタンス電圧分が変動することになる。。
【0005】
而して、上記アモルファスワイヤをブリッジの一辺に組み込み、このブリッジの平衡により上記ワイヤ両端間出力電圧(抵抗による電圧降下分と上記したインダクタンスによる電圧降下分)のうち、抵抗電圧分を打ち消してインダクタンス電圧分のみを検出し、上記ワイヤ軸方向の外部磁界に対するこの検出電圧の変動から当該外部磁界を検出することが提案されている(特開平6−283344号公報)。
【0006】
更に、上記通電電流の周波数がMHzオ−ダになると、高周波表皮効果を無視し得なくなり、表皮深さδ=(2ρ/wμθ)1/2(μθは前記した通り、円周方向透磁率、ρは電気抵抗率、wは角周波数)がμθにより変化し、このμθが前記した通り、外部磁界によって変化するので、ワイヤ両端間出力電圧中の抵抗電圧分も外部磁界で変動するようになる。
そこで、外部磁界による上記インダクタンス電圧分と抵抗電圧分の双方、すなわち、ワイヤ両端間出力電圧の変動(以下、外部磁界による出力電圧の変動をインピ−ダンス効果といい、インダクタンス成分の変動をインダクタンス効果という)から外部磁界を検出することも提案されている(特開平7−181239号)。
【0007】
このインピ−ダンス乃至はインダクタンス効果を使用した外部磁界検出法によれば、ワイヤ長さ1mm程度の微小寸法でも、交流磁界で1/105Oeの磁界検出分解能を保証できる。
このインピ−ダンス乃至はインダクタンス効果を使用した外部磁界検出においては、巻線型誘導検出とは異なり、巻線ヘッドを必要とせず小型化を図り得、しかも高感度であるために、巻線誘導検出再生磁気ヘッドに代替するものとして、オ−ディオテ−プレコ−ダ、ビデオテ−プレコ−ダ、コンピュ−タ、ロ−タリエンコ−ダ−等の分野で実用化が期待されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤのインピ−ダンス効果は、自発磁化の方向が正周方向の磁区と負周方向の磁区とが交互に位置してなる外殻部の磁区が、外部磁界によりある角度(α°)ずらされた周方向交流磁界により回転されて周方向透磁率μθが外部磁界で変化されること、及びその外部磁界で変化される周方向透磁率μθで表皮深さが変動されることとに依存し、上記ずれ角度α°の正負では差異が生じないから、上記ワイヤ軸方向の外部磁界の正負、すなわち+Hexと−Hexとでは出力に差は生じず、対称にパラメ−タ変化が生じる。
このため、バイアス磁界をかけ、線形特性にすることが知られているが、センサ装置の構造の複雑化が否めない。
【0009】
本発明の目的は、上記零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤのインピ−ダンス若しくはインダクタンス効果を利用する磁界センサにおいて、センサ構造の簡易性を保証しつつ、出力を線形にできる磁界センサを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁界センサは、アモルファス磁性エレメントを電極間に配設し、該エレメントに電流を流し、同エレメント軸方向の被検出外部磁界をバイアス磁界の重畳のもとで上記アモルファス磁性エレメントの両端間電圧またはインダクタンス成分の変化によって検出する磁界センサにおいて、上記電極に永久磁石を用い、この磁石の静磁界を上記バイアス磁界として作用させることを特徴とする構成である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る磁界センサの一例を示す図面である。
図1において、1は絶縁基板、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板等であり、その寸法は、縦及び横とも10mm以下である。2a,2bは永久磁石からなる一対のバ−状電極であり、並行配置で先端側を絶縁基板1の片面側に固定してある。これらのバ−状電極2a,2bの後端部を絶縁基板1の外部に引出し、一方のバ−状電極2aの先端部をかぎ状とし、そのかぎ状先端21aと他方のバ−状電極2bの先端21bとの間に静磁界を作用させるようにバ−状電極2a,2bを着磁してある。3はバ−状電極の先端21a,21b間にはんだ付けや溶接等により接続したアモルファス磁性エレメントとしてのアモルファス磁性ワイヤであり、局在磁気に対する検出範囲を広くするために、一端部31を一方の電極の先端21aからはみ出させることが望ましい。
【0012】
このアモルファス磁性ワイヤ3には、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向である磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが使用される。
【0013】
図2は本発明に係る磁界センサの使用状態を示している。
図2において、Hexは被検出外部磁界を、Hbは磁石電極2a,2bによる静磁界を示している。
この被検出外部磁界Hexを検出するには、高周波電源4を電極2a,2b間に接続し、アモルファス磁性ワイヤ3に高周波電流を流し、ワイヤ両端間出力電圧V
を測定して行く。
図3の(ロ)はバイアス磁界が零のときの外部磁界−出力電圧特性の一例を示し、対称形である。
すなわち、既述した通り、外部磁界により出力電圧に変動が生じるのは、自発磁化の方向が正周方向の磁区と負周方向の磁区とが交互に位置してなるアモルファス磁性ワイヤの外殻部の磁区が、外部磁界によりある角度(α°)ずらされた周方向交流磁界で回転されて周方向透磁率μθが外部磁界で変化されること、及びその外部磁界で変化される周方向透磁率μθで表皮深さが変動されること等によるのであり、上記ずれ角度α°の正負のみの相違では出力電圧に差異は生じない。従って、外部磁界の極性を判別できない。
【0014】
これに対し、バイアス磁界Hbを作用させると、外部磁界(Hb+Hex)に対する出力電圧値と外部磁界(Hb−Hex)に対する出力電圧値とが相違するから、被検出外部磁界−Hexに対する出力電圧と被検出外部磁界+Hexに対する出力電圧とを異ならし得、被検出外部磁界の極性を判別できる。
而して、電極を着磁して永久磁石とするだけで、被検出外部磁界を極性を判別して検出でき、極性判別可能とするために特別の部材を付加する必要が無く、構造の簡易化を図ることができる。
【0015】
本発明に係る磁界センサの電極には、アモルファス磁性ワイヤのはんだ付けまたは溶接時の加熱のもとでも安定な磁気特性を呈し、かつ保磁力の大きいものが使用され、例えば、Feを主成分とし、Ni、Co等を配合した合金を着磁したものを使用できる。
本発明に係る磁界センサにおいて、アモルファス磁性エレメントには、上記アモルファス磁性ワイヤ以外に、基板上に真空蒸着やイオンスパッタリング等により形成したアモルファス磁性薄膜(厚み0.001〜5μm)を使用することもできる。
本発明において使用する永久磁石には、半硬質磁性材料も含まれる。
【0016】
本発明に係る磁界センサは、その出力端にフィルタ−や増幅器が接続されて磁界センサ装置に組み立てられる。
例えば、本発明の磁界センサをインダクティブ素子とするコルピッツ発振回路を組立て、更に、外部磁界によるこの発振回路の振幅変調を復調する復調回路を接続して磁界センサ装置にすることができる。
また、本発明に係る磁界センサの出力電圧のインダクタンス電圧成分は抵抗電圧成分に較べ立上りが鋭いから、フィルタ−に通し、インダクタンス電圧成分のみを取り出し、このインダクタンス電圧成分を出力とすることもできる。
更に、表皮効果が弱く、外部磁界に対する抵抗値電圧成分の変動が少なく、抵抗値電圧成分がほぼ一定の場合は、ブリッジを組んでインダクタンス電圧成分のみを取り出し、インダクタンス電圧成分の変動で外部磁界を検出することもできる。
【0017】
これら何れの場合でも、本発明に係る磁界センサにおいては、電極を永久磁石とすることで素子自体にバイアス手段を内蔵させているので、バイアスをかけるための回路を必要とせず、センサ装置全体の小型化を図ることができる。
なお、本発明は、上記アモルファス磁性エレメント以外にも、磁気−抵抗効果を利用するMR磁界センサ等にも適用可能である。
【0018】
【実施例】
〔実施例〕
図2において、絶縁基板1には厚み1.0mmセラミックス板を、電極2a,2bには厚み0.1mmのJIS SK-4 表1の半硬質磁性材料(C0.90〜1.00、Si0.35以下、Mn0.50以下、P0.03以下、S0.03以下、Cu0.03以下、Ni0.25以下、Cr0.20以下、残部Fe)をそれぞれ使用し、各部の寸法は、a=5.0mm,b=6.0mm、c=10.30mm,d=0.5mm,e=0.3mm,f=0.3mm,g=0.5mm,h=2.3mmとした。
アモルファス磁性ワイヤには、外径50μmのCo70.5B15Si10Fe4アモルファスワイヤを使用し、上記静磁界を約0.5Oeとするように電極を着磁した。
アモルファスワイヤの通電電流を約10mA,約40MHzとし、被検出外部磁界Hexをほぼ−0.8Oe〜+0.8Oeに変化させて、ワイヤ両端間出力電圧を測定したところ、図3の(イ)の通り極性判別可能な特性であった(図3において、100mAで0.16Oeに相当)。
〔比較例〕
電極を着磁しなかった以外、実施例に同じとした。ワイヤ両端間出力電圧の測定結果は、図3の(ロ)の通りであり、対称形特性であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明に係る磁界センサにおいては、外部磁界検出素子を電極間に配設し、該ワイヤに電流を流し、同ワイヤ軸方向の被検出外部磁界をバイアス磁界の印加のもとで上記電極間電圧の変化によって極性判別のもとで検出する場合、電極を磁石で構成すればよく、構成が極めて簡単であり、センサ全体の小型化を図り得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁界センサを示す平面図である。
【図2】本発明に係る磁界センサの使用状態を示す図面である。
【図3】図3の(イ)は本発明の実施例の感度特性を示す図表、図3の(ロ)は比較例の感度特性を示す図表である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
2a 電極
2b 電極
3 アモルファス磁性エレメント
4 高周波電源
Claims (4)
- 外部磁界検出エレメントを電極間に配設し、外部磁界をバイアス磁界の重畳のもとで検出する磁界センサにおいて、上記電極に永久磁石を用い、この磁石の静磁界を上記バイアス磁界として作用させることを特徴とする磁界センサ。
- アモルファス磁性エレメントを電極間に配設し、該エレメントに電流を流し、外部磁界をバイアス磁界の重畳のもとで上記アモルファス磁性エレメントの両端間電圧の変化によって検出する磁界センサにおいて、上記電極に永久磁石を用い、この磁石の静磁界を上記バイアス磁界として作用させることを特徴とする磁界センサ。
- アモルファス磁性エレメントを電極間に配設し、該エレメントに電流を流し、外部磁界をバイアス磁界の重畳のもとで上記アモルファス磁性エレメントの両端間電圧のインダクタンス成分の変化によって検出する磁界センサにおいて、上記電極に永久磁石を用い、この磁石の静磁界を上記バイアス磁界として作用させることを特徴とする磁界センサ。
- アモルファス磁性エレメントの一端側の先端部がその一端側が接続された一方の電極に対し外側にはみ出されている請求項2または3記載の磁界センサ。
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