JP3777024B2 - 磁界の検出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はアモルファス磁性エレメントを用いた磁界センサ及びその磁界センサにより外部磁界を検出する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アモルファス合金ワイヤとして、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向の磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤが開発されている。例えば、Co70.515Si10Fe4.5が開発されている。
【0003】
かかる零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤに高周波電流したときに発生するワイヤ両端間出力電圧中のインダクタンス電圧分は、ワイヤの横断面内に生じる円周方向磁束によって上記の円周方向に易磁化性の外殻部が円周方向に磁化されることに起因し、従って、周方向透磁率μθも同外殻部の円周方向の磁化に依存する。
【0004】
この通電中のアモルファスワイヤにワイヤ軸方向の外部磁界を作用させると、上記通電による円周方向磁束と外部磁束との合成により、上記円周方向に易磁化性を有する外殻部に作用する磁束の方向が円周方向からずれ、それだけ円周方向への磁化が生じ難くなり、上記周方向透磁率μθが変化し、上記インダクタンス電圧分が変動することになる。
更に、上記通電電流の周波数がMHzオ−ダになると、高周波表皮効果を無視し得なくなり、表皮深さδ=(2ρ/wμθ)1/2(μθは前記した通り、円周方向透磁率、ρは電気抵抗率、wは角周波数)がμθにより変化し、このμθが前記した通り、外部磁界によって変化するので、ワイヤ両端間出力電圧中の抵抗電圧分も外部磁界で変動するようになる。
そこで、外部磁界による上記インダクタンス電圧分と抵抗電圧分の双方、すなわち、ワイヤ両端間出力電圧の変動(以下、外部磁界による出力電圧の変動をインピ−ダンス効果という)から外部磁界を検出することが提案されている(特開平7−181239号)。
【0005】
上記零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤのインピ−ダンス効果は、自発磁化の方向が正周方向の磁区と負周方向の磁区とが交互に位置してなる外殻部の磁区が、外部磁界によりある角度(α°)ずらされた周方向交流磁界により回転されて周方向透磁率μθが外部磁界で変化されること、及びその外部磁界で変化される周方向透磁率μθで表皮深さが変動されることとに依存し、上記ずれ角度α°の正負では差異が生じないから、上記ワイヤ軸方向の外部磁界の正負、すなわち+Hexと−Hexとでは出力に差は生じず、対称にパラメ−タ変化が生じる。
このため、コイルによりバイアス磁界をかけ、線形特性にすることが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記磁界センサにおいては、アモルファス磁性エレメントと電極との電気的・機械的に安定な溶接が不可欠である。
而るに、その溶接には、溶融したアモルファス合金を冷却時、結晶化させないように(アモルファス状態を維持させるように)高度の技術を必要とし、汎用の電極材である銅との溶接は至難である。
そこで、本発明者はアモルファス合金との溶接が可能な材料を鋭意探求したところ、磁性材料の中に、アモルファス合金と比較的容易に溶接できるものが多いことを知った。
その溶接が容易な理由としては、磁性材がFe、Co、Cr等を多量に含み、アモルファス合金組成中の原子と共通する原子を多く含有することによると推定される。
【0007】
本発明の目的は、上記零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス磁性ワイヤのバイアス磁界作用下でのインピ−ダンス効果を利用して外部磁界を検出する場合、磁界センサの電極にアモルファス磁性エレメントとの溶接が容易な磁性材を使用し、機械的に過酷な条件、例えば、激しい振動下でも良好なリニア特性で検出することを可能とする磁界センサ及び磁界の検出方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る磁界の検出方法は、磁性材電極の間にアモルファス磁性エレメントを溶接し、該アモルファス磁性エレメントの近傍にコイルを配設した磁界センサの磁性材電極を前記コイルで予め磁化し、該アモルファス磁性エレメントに電流を流し、前記磁化された磁性材電極の発生磁界をバイアス磁界として外部磁界を前記アモルファス磁性エレメントの両端間電圧の変化から検出することを特徴とし、検出に先立ち、磁界センサの磁性材電極の磁化調整をそのセンサのコイルによる着磁処理または/及び脱磁処理で行うことができ、また、磁界の検出中、コイルに検出出力から負帰還をかけることもできる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明に係る磁界センサの一例を示している。
図1において、1は絶縁基板、例えば、ガラスエポキシ基板、セラミックス基板等であり、その寸法は、縦及び横とも10mm以下である。2a,2bは磁性材からなる一対のバ−状電極であり、並行配置で先端側を絶縁基板1の片面側に固定してある。これらのバ−状電極2a,2bの後端部は絶縁基板1の外部に引出してある。3はバ−状電極の先端21a,21b間に溶接により接続したアモルファス磁性エレメントとしてのアモルファス磁性ワイヤであり、局在磁気に対する検出範囲を広くするために、一端部を一方の電極の先端21aからはみ出させてもよい。
このアモルファス磁性ワイヤ3には、自発磁化の方向がワイヤ周方向に対し互いに逆方向である磁区が交互に磁壁で隔てられた構成の外殻部を有する、零磁歪乃至は負磁歪のアモルファス合金ワイヤを使用してある。
4はアモルファス磁性エレメントの近傍に並設したコイルであり、発生磁界の方向をアモルファス磁性エレメントの軸方向に一致させるように絶縁基板上に配設してある。
【0010】
図2は本発明に係る磁界の検出方法を説明するための図面であり、Hexは被検出外部磁界を、Hbは磁性電極の磁化により発生させたバイアス磁界を示している。
その電極の磁化は、コイルに直流電流を流してその発生磁界で着磁する方法、上記センサのコイル以外の手段で行う方法の何れによってもよい。前者の場合は、電磁力ピックアップ等で電極が不測的に磁化されていることもあるので、磁界センサのコイルに交流電流を漸次減少しつつ流して電極を一旦脱磁処理し、次いで、コイルに直流電流を流して着磁することが望ましい。
外部磁界Hexを検出するには、高周波電源5を電極2a,2b間に接続し、アモルファス磁性ワイヤ3に高周波電流を流し、ワイヤ両端間出力電圧V
を測定して行く。この出力電圧は、自発磁化の方向が正周方向の磁区と負周方向の磁区とが交互に位置してなるアモルファス磁性ワイヤの外殻部の磁区が、外部磁界によりある角度(α°)ずらされた周方向交流磁界で回転されて周方向透磁率μθが外部磁界で変化されること、及びその外部磁界で変化される周方向透磁率μθで表皮深さが変動されること等によるのであり、上記ずれ角度α°の正負のみの相違では出力電圧に差異は生じず、従って、外部磁界が大きさが等しく正負方向のみが相違する場合、バイアス磁界Hbが0であると、出力電圧に差異が生じず、リニア特性にはならない。
【0011】
而るに、バイアス磁界Hbの作用のもとでは、外部磁界(Hb+Hex)に対する出力電圧値と外部磁界(Hb−Hex)に対する出力電圧値とが相違するから、被検出外部磁界−Hexに対する出力電圧と被検出外部磁界+Hexに対する出力電圧とを異ならし得、被検出外部磁界の極性を判別でき、バイアス磁界Hbを適切に設定することにより、図に示すように、ある外部磁界の範囲内では、リニア特性で磁界を検出できる。
【0012】
かかる磁界の検出中、電極の磁化に使用した磁界よりも強い磁界が外部磁界として作用することがあり、かかる過大磁界のもとでは電極の磁化の増大が余儀なくされ、逆に、逆方向の外部磁界による保磁力の低下で磁化が弱められることもあり、または、経時的な保持力低下により磁化が弱められることもあり、かかる場合、上記バイアス磁界の狂いが惹起されるから、適時、或いは、磁界検出に先立って、コイルによる着磁処理または脱磁処理により、電極の磁化を調整する(リセットする)ことが有効である。
【0013】
上記において、出力特性の直線性をより一層に向上させるために、出力V0をコイルに負帰還させることができる。すなわち、帰還がかかっていない場合、出力Vは(Hb+Hex)をHとして、V=AHで与えられるが、負帰還係数をβとすると、V/H=A/(1+Aβ)が成立し、β≧Aとする負帰還回路を構成することにより、V/H=1/βとして、高度の直線特性を付与できる。
上記のように、本発明によれば、磁界センサの電極に磁性材を使用しているにもかかわらず、磁化電極による磁界をバイアス磁界として作用させることによりリニア特性で外部磁界を良好に検出できる。
従って、本発明によれば、磁界センサの磁性電極とアモルファス磁性エレメントとの電気的・機械的安定な溶接により、振動下等の過酷な環境のもとでも、外部磁界を良好なリニア特性にて検出できる。
【0014】
上記磁性材には、実施例で使用したもの以外に、次ぎのような硬質磁性体や半硬質磁性体を使用できる。
(1)硬質磁性体
Fe、Co、Cr、Ni−Co合金(Co20重量%,Ni80重量%)、パ−マロイ(Fe10重量%,Ni90重量%)、スーパ−マロイ(Fe50重量%,Ni50重量%)、コバ−ル(Co17〜18重量%,Ni28〜29重量%,残部Fe)。
(2)半硬質磁性体
17%Cr鋼(C0.7重量%,Cr2.5重量%,Co17重量%,残部Fe)、36%Co鋼(C0.7重量%,Cr4重量%,Co36重量%,残部Fe)、バイカロイ系合金(V10〜20重量%,Cr10〜20重量%,Co52重量%,残部Fe)、P−6合金(V4重量%,Co45重量%,Ni6重量%,残部Fe)Fe−Ni−Al合金(Al9重量%,Co微量,Cu微量,Ni14〜18重量%)、Fe−Mn−Ti合金(Ti3重量%,Mn12〜13重量%,残部Fe)、Fe−Mn合金(Mn12.5重量%,残部Fe)、Fe−Mn−Cr−N合金(N若干,Cr7重量%,Mn12重量%,Co若干,Mo若干,残部Fe)、マルエ−ジング鋼(Co0.01重量%,Al0.16重量%,Si0.1重量%,P0.007重量%,Ti19.7重量%,Mn0.18重量%,Co12.15重量%,Ni19.74重量%,Mo3.13重量%,残部Fe)、Fe−Cr−Co合金(Si1.5重量%,Cr25〜35重量%,Co10重量%,残部Fe)、Fe−Cr−Mo合金(Co12重量%,Mo8重量%,残部Fe)、Fe−Cr−Ni−Cr合金(Cr6〜9重量%,Co22重量%,Ni14〜11,残部Fe)、炭素鋼(C0.5重量%,残部Fe)、FNC合金(Ni16〜18重量%,Cu6重量%,残部Fe)、Fe−Mn−Co合金(Mn5〜10重量%,Co13〜20重量%,残部Fe)、Fe−Ni−Al−Ti合金(Al3〜4.5重量%,Ti若干,Ni14〜23重量%,残部Fe)、Fe−Co−Ni−Cr−Cu(Co20〜25重量%,Ni12重量%、Cr7〜5重量%,Cu3重量%,残部Fe)、リカロイ(Nb3.1重量%,残部Fe)、Fe−Co−Cu−V合金(V0.9重量%,Co16.3重量%,Cu20.9重量%,残部Fe)、Co−Cr鋼(C0.80〜0.84重量%,Cr4.4〜4.6重量%,Mn0.5〜0.6重量%,Co14〜15重量%,残部Fe)、Co−Fe−Au合金(Fe12重量%,Au6重量%,残部Co)、Co−Fe−Ti合金(Ti3重量%,Fe12重量%,残部Co)、Co−Fe−Be合金(Be1.3重量%,Fe10.2重量%,残部Co)、ニブコロイ(Fe12重量%,Nb3重量%,残部Co)、Fe−Cu合金(Fe60重量%,残部Cu)、Fe−Cu−Mn合金(Mn1.7重量%,Fe80重量%,残部Cu)等。
【0015】
上記アモルファス磁性エレメントとしては、上記アモルファス磁性ワイヤ以外に、基板上に真空蒸着やイオンスパッタリング等により形成したアモルファス磁性薄膜(厚み0.001〜5μm)を使用することもできる。
上記電極は、箔の貼着の外、金属箔積層絶縁基板の金属箔のエッチング、溶射、スパッタリング、蒸着、めっき等により形成できる。
【0016】
本発明において使用する磁界検出装置としては、例えば、上記磁界センサをインダクティブ素子とするコルピッツ発振回路を組立て、更に、外部磁界によるこの発振回路の振幅変調を復調する復調回路を接続したものを使用できる
【0017】
【実施例】
〔実施例〕
使用した磁界センサは次の通りである。
図2において、絶縁基板1には厚み1.0mmセラミックス板を、アモルファス磁性ワイヤには、外径50μmのCo70.515Si10Fe4.5アモルファスワイヤを使用した。電極2a,2b各部の寸法は、a=5.0mm,b=6.0mm、c=10.30mm,d=0.5mm,e=0.3mm,f=0.3mm,g=0.5mm,h=2.3mmとした。バイアスコイルを巻いた外径0.5mmのチュ−ブにアモルファス磁性ワイヤを通し、ワイヤ各端と各電極とを溶接した。
電極には厚み0.1mmのJIS SK-4 表1の半硬質磁性材料(C0.90〜1.00、Si0.35以下、Mn0.50以下、P0.03以下、S0.03以下、Cu0.03以下、Ni0.25以下、Cr0.20以下、残部Fe)を使用した。
磁界センサのアモルファスワイヤの通電電流を約10mA,約40MHzとし、外部磁界Hex−0.8Oe〜+0.8Oeに対し、リニア出力特性を得るために、コイルで電極を磁化したところ、磁化によるバイアス磁界約0.5Oeで、図3の出力特性を得た(図3で、100mAが0.16Oeに相当)。
〔比較例〕
電極に厚み0.1mmの銅箔を使用し、バイアス磁界はコイルの通電により発生させた。
図3とほほ同様な出力特性を得ることができたが、磁界センサの電極とアモルファス磁性ワイヤとの溶接強度を評価するために、引張り試験を行ったところ、実施例のものでは、アモルファス磁性ワイヤが破断したが、後者のものでは、溶接界面が簡単に剥離した。
【0018】
【発明の効果】
本発明に係る磁界の検出方法によれば、アモルファス磁界センサの電極にアモルファス磁性エレメントとの強固な溶接を可能な磁性材を用いているから、振動下等の過酷な条件のもとでも安定して磁界検出でき、また、磁性電極の磁化に基づくバイアス磁界の作用のもとで検出しているからリニア特性での検出が可能であり、かつ、電極の磁化状態を容易に適正値に調整できるから、そのリニア特性も安定である。
従って、本発明によれば、機械的に過酷な環境のもとでも安定・高精度の磁界検出が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る磁界センサの一例を示す図面である。
【図2】 本発明に係る磁界の検出方法の説明に使用した図面である。
【図3】 本発明の実施例の感度特性を示す図表である。
【符号の説明】
1 絶縁基板
2a 磁性材電極
2b 磁性材電極
3 アモルファス磁性エレメント
4 コイル
5 高周波電源

Claims (3)

  1. 磁性材電極間に外部磁界検出用のアモルファス磁性エレメントを溶接し、該アモルファス磁性エレメントの近傍にコイルを配設した磁界センサの磁性材電極を前記コイルにより予め磁化し、前記アモルファス磁性エレメントに電流を流し、前記磁化された磁性材電極の発生磁界をバイアス磁界として外部磁界を前記アモルファス磁性エレメントの両端間電圧の変化から検出することを特徴とする磁界の検出方法
  2. 請求項1記載の磁界の検出方法において、検出に先立ち、磁界センサの磁性材電極の磁化調整をそのセンサのコイルによる着磁処理または/及び脱磁処理で行うことを特徴とする磁界の検出方法。
  3. 磁界の検出中、コイルに検出出力から負帰還をかけることを特徴とする請求項1または2記載の磁界の検出方法。
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