JP3606803B2 - 加飾シート材の真空成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の技術分野】
本発明は加飾シート材の真空成形方法に係わり、更に詳しくは、合成樹脂成形品に対応する成形面を有する真空成形型に加飾シート材の隅角部を弛みなく巻き込むことを可能にした加飾シート材の真空成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば自動車の内装部品の製造に際して、合成樹脂材で成形した成形品に装飾を目的として、同成形品に加飾シート材が添設されている。通常は、この樹脂材には、木目調や皮革調の樹脂シート、発泡樹脂材を一体化した樹脂シートや、布、不織布などが添設されている。この加飾シート材と合成樹脂材を成形した成形品とを接合して、最終製品としての良好な外観意匠性を有する内装部品が得られる。
【0003】
この種の樹脂材の加飾シート材の成形方法の一例が、例えば特開平6−198728号公報に開示されている。同公報に開示された成形方法によれば、発泡樹脂材を樹脂シートに一体化した加飾シート材を使用して、中央寄りが相対的に高く隆起された曲面形状の真空成形型を、熱軟化された加飾シート材に接近させ、同加飾シート材をクランプにより引張した状態で中央寄りの高位の隆起部から周囲の相対的に低位の隆起部に掛け渡して接触させることにより真空成形を行っている。
【0004】
この真空成形時に、前記加飾シート材を前記真空成形型の中央寄り成形面に接触させると共に、前記クランプを前記真空成形型の側部に徐々に接近させ、前記クランプの接近に伴って前記真空成形型を加飾シート材に向けて移動させることにより、その加飾シート材の中央寄り成形面から側部寄り成形面までが引張力を緩和された状態で前記真空成形型の型面に概ね沿わされ、このとき、真空吸引して同真空成形型の型面形状に沿った加飾シート材を形成している。そのため、発泡層の肉厚変化による加飾シート材の膨出変化を防ぐことができ、全体に均一な厚みを有する深絞り成形可能な加飾シート材を確実に成形することができるというものである。
【0005】
また、例えば特開平9−48067号公報には、発泡樹脂材からなる中間層の表面側に所定伸び率の樹脂材料からなる表皮層を、裏面側に表皮層より伸び率の低い樹脂材料からなるバリア層を有する三層樹脂シートである加飾シート材、及びその加飾シート材の真空成形方法が開示されている。同公報に開示された加飾シート材は、同加飾シート材の周辺巻込み部の予定された切断位置より外側の位置で、前記バリア層及び前記中間層に予定された前記切断位置の長さ方向と略平行に延びる断面略三角形をなす4本のスリットを形成している。
【0006】
この加飾シート材を用いて真空成形する際には、先ず、前記加飾シート材全体を予備加熱して塑性変形可能な状態に軟化したのち、同加飾シート材を真空成形型の上方から被せて加飾シート材挟持用のプラグにより真空成形型に対してクランプし、気密に封止する。次に、同真空成形型の表面に連通する多数の吸引孔を介して、前記加飾シート材を真空成形型に対して真空吸着することにより、前記真空成形型の上下両端のコーナ部及び同下端のコーナ部から内方に窪む凹部に対応する第1〜第3の曲げ部を有する型形状と合致した所定形状の加飾シート材が賦形される。その後、その加飾シート材を冷却したのち、同加飾シート材の余剰な周辺巻込み部を切断してトリミングする。
【0007】
この従来の真空成形方法によれば、加飾シート材は、その第3曲げ部よりも前記加飾シート材挟持用プラグ側の所定位置にスリットを形成しているため、真空吸着時において、加飾シート材の前記第3曲げ部に応力が集中しても、同第3曲げ部は引張方向に断裂して加飾シート材の伸長方向に移動する。従って、同加飾シート材の第3曲げ部より第2曲げ部では、中間層が過度に伸長して薄肉となり、ソフト感を喪失するようなことはないと共に、バリア層の断裂が加飾シート材の中央成形部に至り、加飾シート材の外観を損なうおそれもないとしている。
【0008】
また、加飾シート材の前記第3曲げ部の表面層は伸び率の高い樹脂材料からなるため、引張力により断裂して中央成形部に影響を及ぼすことなく、加飾シート材は、前記スリットの内側部分の位置が中間層の伸長した分だけ内方へずれた位置となる。従って、加飾シート材の前記第2曲げ部近傍の肉厚が減少したり、その表面層に断裂が生じる等の不具合を防止することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記特開平6−198728号公報に開示された加飾シート材の真空成形方法では、上述したような作用効果を得るため、真空成形時に、加飾シート材の周辺巻込み部を挟持するクランプを真空成形型の側部に徐々に接近させ、前記クランプの接近に伴って真空成形型を加飾シート材に向けて移動している。
【0010】
一方、上記特開平9−48067号公報に開示された加飾シート材の真空成形方法は、加飾シート材の周辺巻込み部の所定位置にスリットを形成しているため、真空吸着時において、加飾シート材の周辺巻込み部に応力が集中しても、加飾シート材の周辺巻込み部が引張方向に断裂して加飾シート材の伸長方向に移動している。
【0011】
しかしながら、前述の各公報では、加飾シート材の中央成形部や略直線状をなす緩やかな周辺巻込み部に対しては、局部的な薄肉化や破損等の発生を防止することはできるものの、真空吸着時に真空成形型の裏面側に巻き込まれた加飾シート材の周辺巻込み部が、互いに真空成形型の裏面側の複数の角部に向けて大きく伸長して拡がる。その結果、前記真空成形型の複数の角部に対応する加飾シート材の隅角部が外部に膨出して浮き上がり、外観上の見栄えを損ねるという問題点がある。これらの公報に開示された加飾シート材の真空成形方法は、加飾シート材の隅角部に生じた弛みを除去するという技術的課題に関して何ら着目も言及もされていない。
【0012】
本発明は、上記従来の課題を解消すべくなされたものであり、その具体的な目的は、樹脂フィルム、布、不織布などの多様な加飾シート材の隅角部を弛みなく美麗に賦形することを可能にした加飾シート材の真空成形方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段及び作用効果】
本件請求項1に係る発明は、周縁に1以上の角部を有するフランジ部を備えた真空成形型に加飾シート材を真空成形する方法であって、クランプにより前記加飾シート材の少なくとも一部の周辺巻込み部を挟持し、同加飾シート材を加熱軟化すること、加熱軟化した前記加飾シート材を前記成形型に配して、同加飾シート材の中央成形部を除く隅角部を第1隅角部押圧手段により上記角部の内側に向けて押圧し、前記隅角部を前記角部に巻き込むこと、前記加飾シート材の前記中央成形部を真空吸着すると共に、同加飾シート材の前記隅角部を除く周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に真空吸着により巻き込むこと、前記周辺巻込み部を巻き込んだ状態で、前記加飾シート材の前記隅角部の外側に隣接する弛み部分を第2隅角部押圧手段により上記角部近傍の内側に向けて押圧し、前記弛み部分を前記角部近傍に巻き込むことを含んでなることを特徴とする加飾シート材の真空成形方法にある。
【0014】
上記方法によれば、加熱軟化した加飾シート材の隅角部を第1隅角部押圧手段により、周縁に1以上の角部を有するフランジ部を備えた真空成形型の前記角部の内側に向けて押圧し、その角部に加飾シート材の前記隅角部をしわの生じないように巻き込む。この隅角部を巻き込んだ状態で、真空成形型に加飾シート材の中央成形部を真空吸引する。次いで、同加飾シート材の隅角部を除く周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に吸着して巻き込むと同時に、又は巻き込んだ状態で第2隅角部押圧手段により前記加飾シート材の前記隅角部の外側に隣接して発生する弛み部分を真空成形型の前記角部に隣接する部位を内側に向けて押圧して巻き込む。
【0015】
このように2段階で加飾シート材の隅角部とその隣接部分を真空成形型の前記角部とその近傍の内側に吸着して巻き込むため、加飾シート材の隅角部が、加飾シート材の軟化、収縮性に基づいて均一に伸び、しわのない平坦状に成形されると共に、加飾シート材の隅角部を除く周辺巻込み部を吸着して巻き込むときに生じる浮き上がった局部的な弛み部分をも、平坦状に押し潰して真空成形型の前記角部近傍の裏面側に密着されて成形することができる。
【0016】
こうして、加飾シート材の賦形時に生じる弛みを確実に除去することができると共に、肉厚が略均一な綺麗な加飾シート材を得ることができる。また、得られた加飾シート材は、局部的に弛みができたりすることなく合成樹脂材で成形した成形品と接合して最終製品としての外観意匠的にも優れたものとなる。なお、前記加飾シート材は、予め合成樹脂材で成形した成形品に貼着する場合と、射出によるインサート成形にて成形品に一体化する場合とがある。
【0017】
請求項2に係る発明は、周辺巻込み部の少なくとも一部に同周辺巻込み部に平行なスリット状の切欠部を形成し、前記クランプにより前記加飾シート材の前記切欠部を有する周辺巻込み部を挟持し、真空吸引により前記切欠部の内側周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に巻き込むことを特徴としている。
【0018】
加飾シート材の隅角部は緊張した状態で引っ張っておくことが好ましく、また、加飾シート材の隅角部以外の周辺巻込み部は巻き込みやすくしておくことが好ましい。
【0019】
この加飾シート材の真空成形方法は、周辺巻込み部の少なくとも一部に周辺巻込み部に略平行なスリット状の切欠部を形成し、その成形時にクランプにより加飾シート材の切欠部の外側の周辺巻込み部を挟持しておく。このため、成形開始前には加飾シート材を緊張状態でしっかりと固定することができ、成形が開始されると、切欠部内側の周辺巻込み部に自由度があるため、真空吸引により加飾シート材の隅角部を除く切欠部内側の前記周辺巻込み部を真空成形型のフランジ部の裏面側に自由に巻き込むことが可能となり、加飾シート材の周辺巻込み部の厚さを局部的に減少させたり、同加飾シート材の中央成形部に裂断が生じたりすることを未然に阻止することが可能となる。従って、加飾シート材を一層容易に確実に且つ綺麗に賦形することができる。
【0020】
請求項3に係る発明は、前記切欠部を2以上形成し、その切欠部間の連結部を、前記切欠部の内側周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に巻き込む真空成形時に、自動的に破断することを特徴としている。
【0021】
真空成形型に加飾シート材を配するとき、同加飾シート材の周辺巻込み部とクランプとの間で前記真空成形型の外周縁部に気密に接合されることが好ましく、前記加飾シート材の切欠部を浮かさずに正確にセットすることが好ましい。
【0022】
この真空成形方法は、切欠部の中間部に内外周辺巻込み部を連結する破断可能な連結部を形成し、クランプにより加飾シート材の外側周辺巻込み部を把持しているため、特に真空成形型のセット時から真空吸引の初期であって前記連結部が破断されるまでは、前記連結部と周辺巻込み部との連結により加飾シート材の周辺巻込み部に良好な保形性を確保され、真空成形型と加飾シート材との間に形成される吸引空間の気密性が保持されており、加飾シート材が真空吸引されるときの緊張力により前記連結部が破断されると、前記切欠部の内側周辺巻込み部に自由度が与えられ、円滑な変形をもたらすことが可能となる。
【0023】
請求項4に係る発明は、前記第1隅角部押圧手段に、前記加飾シート材の前記隅角部を押圧するシート材押圧面を有すると共に、上記真空成形型のフランジ部の裏面側の角部の近傍に形成された内方に窪むシート材押込み凹部に、前記加飾シート材の隅角部を押し込む楔状突部を有する押圧プラグを用い、前記加飾シート材の隅角部に隣接する弛み部分を前記押圧プラグの前記楔状突部により前記真空成形型の前記シート材押込み凹部に押し込み、前記加飾シート材の前記周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に巻き込む真空成形時に、前記弛み部分の一部を前記シート材押込み凹部の近傍に発生させるように制御することを特徴としている。
【0024】
この加飾シート材の真空成形方法によれば、前記押圧プラグの楔状突部により、加飾シート材の前記隅角部に隣接する弛み部分を真空成形型の前記シート材押込み凹部に押し込むため、前記周辺巻込み部を真空成形型の前記フランジ部の裏面側に巻き込む真空成形時に、前記弛み部分の一部を前記シート材押込み凹部の近傍に発生するように制御することができると共に、前記周辺巻込み部を真空成形型の前記フランジ部の裏面側に巻き込む真空成形時に大きく伸長して拡がる加飾シート材の弛み部分を前記シート材押込み凹部内に向けて寄せ集めることができる。
【0025】
請求項5に係る発明は、前記第2隅角部押圧手段に、前記真空成形型の前記シート材押込み凹部に嵌着する楔状突部を有する押圧プラグを用い、前記加飾シート材の露呈する一部の弛み部分を押し潰し、前記加飾シート材の前記周辺巻込み部の全ての弛み部分を前記真空成形型の前記シート材押込み凹部内に沿って巻き込むことを特徴としている。
【0026】
真空成形前に、上記第1隅角部押圧手段である押圧プラグを用い、予め加飾シート材の前記隅角部を真空成形型におけるフランジ部の角部の内側に向けて押圧して巻き込むことにより、成形品の角部にしわが生じないが、次いで行われる加飾シート材の真空吸着により、加飾シート材の前記隅角部を除く周辺巻き込み部を真空成形型の前記フランジ部の裏面側に巻き込むとき、前記押圧プラグの楔状突部で押圧されている両側の周辺巻き込み部分に局部的な弛みが生じる。
【0027】
その加飾シート材の局部的な弛み部分を、前記第2隅角部押圧手段である押圧プラグの楔状突部により真空成形型の前記シート材押込み凹部内に押しやって、前記加飾シート材の露呈する一部の弛み部分を前記シート材押込み凹部内に沿って押し潰して巻き込むことにより、前記局部的な弛み部分をも加飾シート材の表面から取り除くことができるようになる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本実施形態では、加飾シート材が合成樹脂材を成形した成形品と接合した最終製品として、自動車のグローブボックスリッドを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば自動車のコンソールリッド、ピラーガーニッシュ、リヤラゲージトリム、ドアトリムや天井部材、或いは一般的な居住空間におけるシートバックなどにも適用される。
【0029】
図1は本発明の代表的な実施形態である加飾シート材Sを真空成形により製造するための製造装置の概略図であり、図2は同製造装置を部分的に示す概略図である。
【0030】
これらの図において、符号1は真空成形型であり、同真空成形型1は雄型形式を採用している。この真空成形型1は、平板部1a及び同平板部1aから上方に突設されたフランジ部1bを有しており、同フランジ部1bと平板部1aとの間に内方に窪む環状凹部1cを形成している。前記フランジ部1bは、周縁に4つの角部1d,…,1dを有しており、同フランジ部1bの上部には、加飾シート材Sの中央成形部S1と接合する成形面1eが形成されている。その成形面1e及び前記環状凹部1cには、複数の微小な真空吸引孔1f,…,1fが所定部位に穿設されている。
【0031】
図2に示すように、真空成形型1の前記環状凹部1cの角部の両側周辺部には、内方に窪む略V字形をなすシート材押込み凹部1g,1gがそれぞれ形成されている。このシート材押込み凹部1gは、加飾シート材Sの真空成形時に、大きく伸長して拡がる加飾シート材Sの浮き上がった弛み部分S7の全てを真空成形型1の前記フランジ部1bの裏面側に逃がすためのものである。
【0032】
前記真空成形型1の上方には、上下動自在の可動型に支持された支持体2が備えられている。この支持体2の4つの角部には、加飾シート材Sの第1隅角部押圧手段であるシート材賦形用の押圧プラグ3が、水平移動自在に設けられると共に、その支持体2の角部を除く4つの周辺部には、押圧プラグ3と同一水平面上にあって、加飾シート材Sの第2隅角部押圧手段であるシート材賦形用押圧プラグ4が水平移動自在に設けられている。
【0033】
各押圧プラグ3,4は、真空成形型1の前記環状凹部1cに対応する押圧面を有しており、その押圧面の両側端縁には、前方に突出する楔状突部3a,4aがそれぞれ突設されている。これらの楔状突部3a,4aは、互いに接合した状態で真空成形型1の前記シート材押込み凹部1gの形状に合致する略三角柱半割り形の楔型をなしており、前記シート材押込み凹部1gに嵌着されるようになっている。
【0034】
前記押圧プラグ3の楔状突部3aは、真空成形前に加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を前記シート材押込み凹部1gに押し込むためのもので、その隅角部S3〜S6に隣接する弛み部分S7を押圧プラグ3の楔状突部3aにより前記シート材押込み凹部1gに押し込むと共に、真空成形時に、前記弛み部分S7の一部を前記シート材押込み凹部1gの近傍に露呈するように制御する。一方の前記押圧プラグ4の楔状突部4aは、真空成形時に、前記シート材押込み凹部1g内に浮き上がった弛み部分S7を押し潰すと共に、前記周辺巻込み部S2の全ての弛み部分S7を前記シート材押込み凹部1g内に沿って巻き込むものである。
【0035】
図7に示すごとく押圧プラグ3,4は、前記支持体2の支持枠2aに固設されたシリンダ5のロッド端に連結部材を介して支持されており、真空成形型1の前記環状凹部1c内に水平に挿脱される。このように構成された押圧プラグ3,4は前記支持体2と独立して駆動されるため、単にシリンダ5により水平方向に駆動するだけでよく、駆動機構が単純になる。
【0036】
本実施形態にあっては、前記支持体2が、真空成形型1に対して上下方向に移動することにより開閉がなされる。図示せぬ駆動手段により駆動される長尺体をなす4個のシート材挟持用クランプ6,…,6は、真空成形型1と支持体2との間の水平面上に並設されており、更には、図示を省略したシート材加熱用の面ヒータと、同じく図示せぬシート材供給部とが備えられている。図示例によれば、前記クランプ6は、加飾シート材Sの4つの隅角部S3〜S6を含む周辺巻込み部S2を挟持して真空成形型1と支持体2との間に移動するようになっている。
【0037】
なお、以上のごとく構成された製造装置7は、これに限定されるものではなく、前記シート材供給部を設けることなく、例えば手動で加飾シート材Sを供給することも可能であり、シート材挟持用クランプ6を真空成形型1に退避自在に固設して加飾シート材Sの周辺巻込み部S2を挟持することも可能である。また、可動型及び固定型を型合わせすることにより加飾シート材Sの真空成形を実施することもできる。
【0038】
本発明の加飾シート材Sの真空成形方法は、上記製造装置7を使って実施される。図3〜図8は、その代表的な方法を示している。以下、上記製造装置7を使用して、図9に示すグローブボックスリッド8に加飾を施すための加飾シート材Sを真空成形する方法について図3〜図8を参照して説明する。
【0039】
図3〜図5は、加飾シート材Sを真空成形する工程の一例を示す部分斜視図であり、図6〜図8は、同工程を示す部分断面図であり、図6(a)〜図8(a)は、図3のA−A線断面側の真空成形型1に対する真空成形工程を示しており、図6(b)〜図8(b)は、図3のB−B線断面側の真空成形型1に対する真空成形工程を表している。
【0040】
図9に示す本発明の適用対象となるグローブボックスリッド8は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂材からなり、その表面には、加飾シート材Sとしてポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂材の裏面に積層した発泡ポリプロピレン又は発泡ポリエチレンなどが一体に添設されている。加飾シート材Sとしては、加熱時に伸長可能なものが適当であり、例えば織編物、不織布、PVCシートにポリプロピレン、ポリエチレン、TPO、ABS、PC、TPE等のバッキング材を施したものなどが適用される。
【0041】
加飾シート材Sを真空成形するには、先ず、真空成形型1と支持体2とを開き、図示せぬシート材供給部から加飾シート材Sを供給し、4個のクランプ6,…,6により加飾シート材Sの4つの隅角部S3〜S6を含む周辺巻込み部S2を挟持する。その状態で、図示せぬ面ヒータにより加飾シート材Sを加熱して軟化させたのち、加熱軟化した加飾シート材Sを前記クランプ6により真空成形型1と支持体2との間に水平移動させる。そののち、図示せぬシート材供給部や面ヒータを退避させる。ここで、真空成形型1と支持体2との間にクランプ6に挟持された加飾シート材Sを配したのち、図示せぬ面ヒータにより加飾シート材Sを加熱軟化させることもできる。
【0042】
加飾シート材Sを加熱軟化させたのち、図3及び図6に示すように、加熱軟化した加飾シート材Sを真空成形型1の成形面1eの上方から気密に接合する。それと同時に、支持体2を真空成形型1に対して下降させる。このとき、加飾シート材Sに対して真空成形型1を移動させることもできる。加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の厚さは、クランプ6により緊張状態にあるため、若干薄くなっている。この状態で、加飾シート材Sと真空成形型1の環状凹部1cとの間に環状の密閉空間が形成される。
【0043】
次に、シリンダ5を伸長して水平方向に駆動させることにより、環状の前記密閉空間を介して真空成形型1におけるフランジ部1bの角部1dの内側に向けて押圧プラグ3を水平移動させる。図4及び図7(b)に示すように、押圧プラグ3の押圧面により、加飾シート材Sの中央成形部S1を除く隅角部S3〜S6を緊張力に抗するように押圧して前記フランジ部1bの角部1dの内側に巻き込み、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を真空成形型1の環状凹部1cの角部に密接させる。それと同時に、押圧プラグ3の楔状突部3aで、前記環状凹部1cの角部に隣接するシート材押込み凹部1g内に向けて加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の一部分を引っ張って押し込む。これにより、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6に隣接する弛み部分S7の一部を前記シート材押込み凹部1gの近傍に露呈するように制御することができる。
【0044】
続いて、図示せぬ吸引ポンプを介して真空成形型1の真空吸引孔1fから真空吸引することにより、加飾シート材Sの中央成形部S1を真空吸着すると共に、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を除く周辺巻込み部S2を緊張力に抗するように真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に真空吸着により巻き込む。加飾シート材Sの周辺巻込み部S2は、真空成形型1の環状凹部1cの4つの角部に向けて大きく伸長して拡がる。図4及び図7(a)に示すごとく大きく伸長して拡がる加飾シート材Sの弛み部分S7は、前記シート材押込み凹部1g内に向けて寄せ集まり、加飾シート材Sが外部に局部的に膨出して、加飾シート材Sの弛み部分S7が浮き上がる。
【0045】
このとき、前記周辺巻込み部S2を巻き込むとき同時に、又は巻き込んだ状態で、前記シリンダ5を伸長させて水平方向に駆動させ、押圧プラグ4を加飾シート材Sの周辺巻込み部S2と真空成形型1の環状凹部1cとの間の環状の密閉空間を介して真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に向けて移動させる。図5及び図8(a)に示すように、押圧プラグ4の楔状突部4aで、浮き上がった加飾シート材Sの弛み部分S7を前記環状凹部1cの角部に隣接するシート材押込み凹部1g内に沿って押し潰しながら、真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に巻き込む。これにより、押圧プラグ4の楔状突部4aがシート材押込み凹部1g内に嵌着して、前記加飾シート材Sが真空成形型1の成形面1eに沿った形状に賦形される。加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の厚さは変化せず、しかも真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に容易に巻き込まれて密着するため、アンダー形状部の成形が綺麗に確実になされる。
【0046】
そして、図示せぬ吸引ポンプを停止し、前記押圧プラグ3,4を退避し、型開したのち、クランプ6の挟持を解除して賦形された加飾シート材Sを真空成形型1から取外す。その後、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を含む余分な周辺巻込み部S2を切断してトリミングする。
【0047】
このように、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6の近傍に生じる浮き上がった局部的な弛み部分S7が、加飾シート材Sの軟化、収縮性に基づいて均一に伸び、平坦状に変形されると共に、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6に生じる浮き上がった局部的な弛み部分S7が平坦状に押し潰されて真空成形型1の角部の裏面側に沿って密着され、真空成形型1の成形面1eに沿って吸着される。このため、加飾シート材Sの賦形時に生じる弛み部分S7を確実に除去することができると共に、肉厚が略均一な綺麗な加飾シート材Sを効果的に得ることができる。
【0048】
また、得られた加飾シート材Sは、局部的に弛みがよったりすることなく前記グローブボックスリッド8に貼着され、最終製品としての外観意匠に優れたものとなる。なお、本実施形態では加飾シート材Sを予め合成樹脂材で成形した成形品に貼着するものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、射出によるインサート成形により成形品と一体化することも可能である。
【0049】
図10〜図12は、上記実施形態における加飾シート材S及びクランプ6の変形例をそれぞれ示している。上記第1実施形態では、加飾シート材Sの4つの隅角部S3〜S6を含む周辺巻込み部S2を4個の長尺状のクランプ6,…,6にて挟持した構成であったものを、この変形例では、周辺巻込み部S2の少なくとも一部をクランプ6にて挟持している。更に、他の変形例として、周辺巻込み部S2の少なくとも一周縁部に略平行なスリット状の切欠部S8を形成し、加飾シート材Sの切欠部S8を有する周辺巻込み部S2の一部分をクランプ6により挟持している。なお、これらの図において上記実施形態と実質的に同じ部材には同一の符号と部材名を付している。従って、これらの部材に関する詳細な説明は省略する。
【0050】
図10において、加飾シート材Sの4つの隅角部S3〜S6を4個の短尺状のクランプ6,…,6にて挟持している。この第1変形例によれば、加飾シート材Sの真空吸着時に、加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を除く周辺巻込み部S2を真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に拘束されることなく自由に巻き込むことが可能となり、加飾シート材Sの中央成形部S1及び周辺巻込み部S2が綺麗に賦形できる。
【0051】
第2変形例にあっては、図11に示すように、周辺巻込み部S2の対向する2辺には、周辺巻込み部S2の周縁部に略平行なスリット状の切欠部S8がそれぞれ形成されている。その切欠部S8は、加飾シート材Sの内側周辺巻込み部S2を真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に自由に巻き込むためのものである。
【0052】
真空成形時に、加飾シート材Sの加熱時間が長いと、加飾シート材Sの発泡層の縮みによって内側に向かうカール現象が発生しやすいため、賦形された加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の外観品質が低下する場合がある。この第2変形例では、前記切欠部S8の中間部に、同切欠部S8を挟んだ内外周辺巻込み部S2を破断可能な連結部S9をもって連結している。前記切欠部S8の周辺巻込み部S2の外端縁を長尺状のクランプ6により挟持して、内側周辺巻込み部S2を真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に巻き込む真空成形時に、前記連結部S9が自動的に破断されるようになっている。なお、1つの切欠部S8に複数の連結部S9を形成することも可能である。
【0053】
この第2変形例における加飾シート材Sの真空成形方法は、真空成形型1のセット時から真空吸引の初期であって、前記連結部S9が自動的に破断されるまでは、その連結部S9と周辺巻込み部S2との連結により、加飾シート材Sの周辺巻込み部S2に良好な保形性を確保し、真空成形型1と加飾シート材Sとの間に形成される密閉空間の気密性を十分に保持している。加飾シート材Sが真空吸引されるときの緊張力により、前記連結部S9が自動的に破断されると、前記切欠部S8の内側周辺巻込み部S2に自由度が与えられ、加飾シート材Sは円滑に変形される。以降は、上記第1実施形態と同様に、加飾シート材Sが効果的に賦形される。
【0054】
上記第2変形例によれば、真空吸引により加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を除く内側周辺巻込み部S2を真空成形型1のフランジ部1bの裏面側に拘束されることなく真空吸着して自由に巻き込むことが可能となり、しかも、加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の厚さが局部的に減少したり、加飾シート材Sの中央成形部S1に断裂が生じたりすることを未然に防止することが可能である。従って、加飾シート材Sの中央成形部S1及び周辺巻込み部S2を一層綺麗に賦形することができる。
【0055】
また、上記第2変形例によれば、2個の長尺状のクランプ6により加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の2辺をそれぞれ挟持すれば足りるため、加飾シート材Sを挟持するクランプ数を減らすことが可能となり、多種類の加飾シート材Sを賦形する場合にも、クランプ6のみを変更すればよく、廉価に対処することが可能である。なお、上記第2変形例にあっては、加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の一辺に2つの独立した切欠部S8を形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、加飾シート材Sの周辺巻込み部S2の所定の一辺にわたって単一の切欠部S8を形成してもよい。
【0056】
また、加飾シート材Sの全周にわたって前記切欠部S8を形成することも可能である。この場合には、図12に示すごとく加飾シート材Sの隅角部S3〜S6を除く4辺に周辺巻込み部S2の周縁部と略平行なスリット状の切欠部S8をそれぞれ形成している。
【0057】
この第3変形例における加飾シート材Sの真空成形方法にあっては、図12に示すように長尺状をなす4個のクランプ6,…,6により、上記第2変形例と同様に前記切欠部S8の外側周辺巻込み部S2を挟持し、真空吸引時に、前記切欠部S8の内側周辺巻込み部S2を真空成形型1の裏面側に吸着して巻き込む。これにより、4辺の前記切欠部S8の内側周辺巻込み部S2に自由度を与え、円滑な変形をもたらして加飾シート材Sの中央成形部S1及び周辺巻込み部S2が効果的に賦形される。
【0058】
また、上記第3変形例における4個のクランプ6,…,6の四隅部に、上記押圧プラグ3,4を真空成形型1のフランジ部1bの隅角部1dの下面に向けて進退可能に一体に設けることもでき、この場合には、クランプ6と押圧プラグ3,4とが一体化できるため、可動型である支持体2を使用する必要がなくなり、装置自体のコンパクト化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態である加飾シート材を真空成形により製造するための製造装置の概略図である。
【図2】同製造装置を部分的に示す概略図である。
【図3】加飾シート材を真空成形する工程を示す部分斜視図である。
【図4】図3の次の工程を示す部分斜視図である。
【図5】図4の次の工程を示す部分斜視図である。
【図6】加飾シート材を真空成形する工程を示す部分断面図である。
【図7】図6の次の工程を示す部分断面図である。
【図8】図7の次の工程を示す部分断面図である。
【図9】本発明の適用対象となる成形品の斜視図である。
【図10】同加飾シート材及びクランプの第1変形例を示す斜視図である。
【図11】同加飾シート材及びクランプの第2変形例を示す斜視図である。
【図12】同加飾シート材及びクランプの第3変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 真空成形型
1a 平板部
1b フランジ部
1c 環状凹部
1d 角部
1e 成形面
1f 真空吸引孔
1g シート材押込み凹部
2 支持体
2a 支持枠
3,4 押圧プラグ
3a,4a 楔状突部
5 シリンダ
6 クランプ
7 製造装置
8 グローブボックスリッド
S 加飾シート材
S1 中央成形部
S2 周辺巻込み部
S3〜S6 隅角部
S7 弛み部分
S8 切欠部
S9 連結部

Claims (5)

  1. 周縁に1以上の角部を有するフランジ部を備えた真空成形型に加飾シート材を真空成形する方法であって、
    クランプにより前記加飾シート材の少なくとも一部の周辺巻込み部を挟持し、同加飾シート材を加熱軟化すること、
    加熱軟化した前記加飾シート材を前記成形型に配して、同加飾シート材の中央成形部を除く隅角部を第1隅角部押圧手段により上記角部の内側に向けて押圧し、前記隅角部を前記角部に巻き込むこと、
    前記加飾シート材の前記中央成形部を真空吸着すると共に、同加飾シート材の前記隅角部を除く周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に真空吸着により巻き込むこと、
    前記周辺巻込み部を巻き込んだ状態で、更に前記加飾シート材の前記隅角部の外側に隣接する弛み部分を第2隅角部押圧手段により上記角部近傍の内側に向けて押圧し、前記弛み部分を前記角部近傍に巻き込むこと、
    を含んでなることを特徴とする加飾シート材の真空成形方法。
  2. 周辺巻込み部の少なくとも一部に同周辺巻込み部に平行なスリット状の切欠部を形成し、前記クランプにより前記加飾シート材の前記切欠部を有する周辺巻込み部を挟持し、真空吸引により前記切欠部の内側周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に巻き込むことを含んでなることを特徴とする請求項1記載の加飾シート材の真空成形方法。
  3. 前記切欠部を2以上形成し、その切欠部間の連結部を、前記切欠部の内側周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に巻き込む真空成形時に、自動的に破断することを含んでなることを特徴とする請求項2記載の加飾シート材の真空成形方法。
  4. 前記第1隅角部押圧手段に、前記加飾シート材の前記隅角部を押圧するシート材押圧面を有すると共に、上記真空成形型のフランジ部の裏面側の角部の近傍に形成された内方に窪むシート材押込み凹部に、前記加飾シート材の隅角部を押し込む楔状突部を有する押圧プラグを用い、
    前記加飾シート材の隅角部に隣接する弛み部分を前記押圧プラグの前記楔状突部により前記真空成形型の前記シート材押込み凹部に押し込み、前記加飾シート材の前記周辺巻込み部を前記フランジ部の裏面側に巻き込む真空成形時に、前記弛み部分の一部を前記シート材押込み凹部の近傍に発生させるように制御することを含んでなることを特徴とする請求項1〜3記載の加飾シート材の真空成形方法。
  5. 前記第2隅角部押圧手段に、前記真空成形型の前記シート材押込み凹部に嵌着する楔状突部を有する押圧プラグを用い、前記加飾シート材の露呈する一部の弛み部分を押し潰し、
    前記加飾シート材の前記周辺巻込み部の全ての弛み部分を前記真空成形型の前記シート材押込み凹部内に沿って巻き込むことを
    含んでなることを特徴とする請求項4記載の加飾シート材の真空成形方法。
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