JP3605703B2 - 複合繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、複合繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等のチタン酸金属塩化合物は、誘電体、半導体、圧電体等の材料として広範囲に利用されており、工業的にも大量生産されている。一方、これらの化合物を繊維形状化させることによって、粒子配向セラミックスへの応用が期待されているため、その製造法について幾つかの報告がなされている。
【0003】
例えば、特公昭62−7160号公報、特開平3−69511号公報等には、チタン酸カリウム繊維、二酸化チタン繊維等を二価の金属イオンを含む溶液と密閉容器中又は水熱条件下において反応させることによる繊維状のチタン酸金属塩の製造方法が記載されている。しかしながら、このような方法で得られるチタン酸アルカリ金属塩繊維は、溶解析出反応のために未反応の原料繊維表面にチタン酸金属塩の微粒子が付着した構造となっているので、表面に付着した微粒子は剥離し易く、また未反応の原料繊維は、繊維中のチタン成分が表面に析出して金属成分と反応したため抜け殻状となっており、繊維強度が小さいという欠点がある。
【0004】
また上記特公昭62−7160号公報には、水和チタン酸カリウムからなる原料繊維を二価の金属イオンを含む溶液と常圧下で反応させた後、熱処理することによる繊維状チタン酸金属塩の製造方法も記載されている。しかしながら、この方法で得られるチタン酸金属塩は、実際には粒状物の集合体であり、見掛け上は繊維状となる場合もあるが、繊維強度は小さく破壊されやすいという欠点がある。
【0005】
更に繊維状チタニア化合物の表面にチタンとアルカリ土類金属とのモル比率が1:1となるようにアルカリ土類金属の炭酸塩を沈着させた後、加熱処理することによるチタン酸アルカリ土類金属繊維の製造法も報告されている(特開平3−16917号公報)。しかしながら、この方法によれば、繊維状物が一部形成されるだけで、大部分は粒状物となり、しかも形成された繊維状物は、強度が低く、破損されやすいという欠点がある。
【0006】
更に特公昭62−55243号公報には、チタン酸カリウム繊維とバリウム化合物とを混合し、焼成することによるチタン酸バリウム繊維の製造法が記載されている。また、特開昭63−260822号公報には、チタン酸繊維とバリウム化合物とを混合し、更にこれらにフラックス成分としてNaCl、KCl等を加えて焼成することによるチタン酸バリウム粒子の製造法が記載されている。しかしながら、これら二つの方法では、得られるチタン酸バリウムは、微小粒子又はその集合体となって原料の繊維形状は殆ど消滅しており、一般に市販されている形状異方性を有しない粒状物と比べて優位性は殆ど認められない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の一つの目的は、高強度且つ低比重で、繊維形状を有する複合繊維を提供することにある。
【0008】
本発明の他の一つの目的は、樹脂に配合された際に容易に繊維強化高誘電性樹脂組成物を得ることのできるような高誘電性の繊維状物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の一つの目的は、樹脂に配合された際に誘電正接を低くするか、又は誘電正接の増加の少ない繊維状物、及び斯かる繊維状物を樹脂に配合してなる樹脂組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の一つの目的は、500メガヘルツ以上の高周波帯域、例えば1〜30ギガヘルツといった周波数帯域においても誘電正接の小さい複合繊維、及び斯かる複合繊維を配合してなる樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記のような課題を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、繊維状チタニア化合物の表面に、チタン成分が金属成分に対して過剰となるような所定の割合で、二種以上の金属元素の炭酸塩を沈着させ、その後加熱処理することによって結晶質であるチタン酸金属塩(二種以上のチタン酸金属塩の固溶体)の粒状物が非結晶質酸化チタンからなるマトリックス中に包み込まれて複合一体化した構造であり、且つ繊維長と繊維径の比が3以上である従来にない繊維状物が得られることを見い出した。而して更にこの繊維状物を詳しく調べてみたところ、実に驚くべきことに高誘電性且つ低誘電正接性の複合繊維であり、しかも高周波帯であっても斯かる性質が衰えないという優れた性質を有する複合繊維であることを見い出した。本発明は斯かる知見に基づき完成されたものである。
【0012】
即ち、本発明は、一般式 MO・TiO2 (式中、Mは二種以上の金属元素を示す)で表される組成を有するチタン酸金属塩結晶を非結晶質酸化チタンが包み込む形で複合一体化した繊維状物であって、二種以上の金属元素MとTiとのモル比が1:1.005〜1.5の範囲にあり、且つ繊維長と繊維径の比が3以上である複合繊維、繊維状チタニア化合物の表面に、溶液反応によって二種以上の金属元素Mの炭酸塩をM:Ti(モル比)=1:1.005〜1.5となるように沈着させた後、加熱処理することを特徴とする上記複合繊維の製造方法、並びに上記複合繊維を樹脂に配合してなる誘電性樹脂組成物に係る。
【0013】
まず本発明の複合繊維につき説明する。
【0014】
本発明の誘電性複合繊維は、結晶質MO・TiO2 (式中、Mは少なくとも2種以上の金属元素)と非結晶質TiO2 とからなる繊維状物質であり、電子顕微鏡観察、化学分析、X線回折等によると各繊維は均一な一本の繊維形状を有し、MO・TiO2 で表される組成を有するチタン酸金属塩結晶の粒状物を、非結晶質TiO2 が包み込んだ構造であることが認められる。図1に本発明の複合繊維の構造を模式的に示す。このような構造を有する本発明の誘電性複合繊維は、表面にBaO・TiO2 が付着した繊維状物や、BaO・TiO2 の微粒子が連続して集合し見掛け上繊維状をなしたものといった従来のチタン酸金属塩、或いは全体がBaO・TiO2 のみからなるものとは全く異なる構造を有するものであり、マトリックスとなる非結晶質のTiO2 部分が繊維形状の保持と繊維強度の向上に大きく寄与するため、高強度の繊維状物となる点が特に優れている。更に、樹脂の充填剤とした際にも形状保持率が高いため、形状異方性に由来する高誘電性を維持することができ、優れた誘電特性を示す樹脂組成物を得ることができる。
【0015】
本発明の誘電性複合繊維では、二種以上の金属元素MとTiとのモル比は1:1.005〜1.5の範囲である。Tiのモル比が1.005未満の場合は、マトリックスとなる非結晶質のTiO2 部分の占める割合が小さすぎるために、繊維強度が低く焼成後の生成物が繊維形状を保っていなかったり、破損し易い複合繊維となるため好ましくない。また、Tiのモル比が1.5以上の場合は、繊維強度は大きくなるが、誘電率が低下するため好ましくない。
【0016】
上記複合繊維の繊維長と繊維径の比(平均)は3以上10未満であるのが望ましい。
【0017】
上記一般式において、Mで表される二種以上の金属元素としては、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、鉛、亜鉛、ベリリウム及びカドミウムからなる群から選ばれた少なくとも二種以上が例示できる。中でも、高周波帯域において高い誘電率、低い誘電正接性が得られるものとして、Mがバリウムとストロンチウムを共に含むものが好ましい。
【0018】
次に、本発明の誘電性複合繊維の製造方法について説明する。
【0019】
本発明の複合繊維の原料繊維としては、繊維状チタニア化合物を用いる。該チタニア化合物としては、繊維長と繊維径の比が3以上、好ましくは3以上10未満であり繊維形状を有する一般式TiO2 ・mH2 O(式中mは0≦m≦3の実数である)で表される成分が90%以上であるものが好ましく用いられる。このような、繊維状チタニア化合物は、例えば、繊維状チタン酸アルカリ金属塩を酸性溶液中で処理して、脱アルカリ反応を行なうことによって容易に得ることができる。前記チタニア化合物は、m=0である針状もしくは繊維状の酸化チタンであってもよい。
【0020】
本発明の方法によれば、まず、上記の繊維状チタニア化合物を分散媒に分散させてスラリーとする。その際用いられる好ましい分散媒は水であるが、各種の有機溶媒等であってもよい。
【0021】
次に、二種以上の金属元素の化合物の溶液を同時に、又は順次、該スラリーに添加する。斯かる金属元素の化合物としては金属のハロゲン化塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、次亜塩素酸塩、過塩素酸塩等を例示でき、これらは各々の金属に対して一種又は二種以上を混合して用いてもよい。これらの金属元素の化合物を溶解させて溶液とする際の溶媒としては、水又は各種の有機溶媒を用いることができるが、経済性、安全性、環境汚染防止等の観点から水系溶液が好ましい。従って、各種金属化合物も水溶性のものを選択することが望ましい。添加量としては繊維状チタニア化合物1モルに対して、二種以上の金属元素のモル数の合計が1.005〜1.5となるように添加する。その際には、添加する二種以上の金属元素化合物のうち最も量の少ないものの金属元素のモル数が繊維状チタニア化合物中のTi 1モルに対して0.005モルを下回らないようにする必要がある。0.005モルを下回った場合には、特に高周波における誘電損失が大きくなるため好ましくない。
【0022】
次に炭酸イオンを含有する溶液を攪拌しながら添加するか又は攪拌下の溶液中に炭酸ガスを吹き込むこむことにより、二種以上の金属化合物の炭酸塩を繊維状チタニア化合物表面に沈着させることができる。この際に用いることのできる炭酸イオンを含有する溶液としては炭酸アンモニウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液等を挙げることができる。好ましくは炭酸アンモニウム水溶液及び炭酸水素アンモニウム水溶液を挙げることができる。繊維状チタニア化合物に沈着させるべき二種以上の金属元素Mの炭酸塩の量としては、目的とする最終の誘電性複合繊維におけるM/Tiのモル比を念頭において計算し、仕込めばよい。
【0023】
この際、反応中の溶液のpHを8〜10の弱アルカリ性に調整することによって、生成した炭酸塩の溶液中での溶解を防ぐことができる。即ち、本発明のこの方法によれば、金属元素化合物中の金属元素のほぼ総量が繊維状チタニア化合物の表面に沈着するため、原料金属元素化合物の仕込み比を任意に調整することによって目的物中の金属元素配合割合を所望の値に調整できる。この際に用いるアルカリ性溶液としては、アンモニア水等の金属イオンを含有しないアルカリ性溶液を用いることが好ましい。アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩等の溶液を用いた場合、目的以外の金属イオンの混入が生じることがあり、また生成物中の金属含有比率の調整が難しくなるため適当ではない。
【0024】
以上の溶液反応は、通常0〜90℃の範囲で可能である。
【0025】
本発明では、斯くして繊維状チタニア化合物の表面に二種以上の金属元素Mの炭酸塩を所望量沈着させた後、濾別、水洗、乾燥等を適宜行なってもよい。
【0026】
次に、上記炭酸塩が沈着せしめられた繊維状チタニア化合物を加熱処理する。加熱方法としては、特に制限はなく、電気炉、ガス燃焼炉、高周波加熱炉、外熱式もしくは内熱式のロータリーキルン、ローリングキルン、焙焼炉、流動焼成炉等任意の加熱炉を用いることができる。加熱処理温度は、700〜1100℃程度、加熱処理時間は加熱炉の種類、原料繊維の繊維形状、用いる金属等によって適正な時間が異なるものの3分間〜24時間程度の範囲内で、通常は1〜8時間程度適宜加熱すればよい。
【0027】
このようにして得られた複合繊維は、原料繊維の形状をほぼ保持している。得られた複合繊維は、加熱処理した後のものをそのまま用いてもよいが、必要により適宜水洗、酸洗、分級、解繊等を行なって使用してもよい。更には各種表面処理剤で表面処理して使用することもできる。斯かる表面処理剤としては、例えばエポキシシラン、アミノシラン、アクリルシラン等のシラン系カップリング剤又はチタネート系カップリング剤等を挙げることができる。
【0028】
また、本発明の繊維は、その取扱い時の作業性を向上させたり或いは貯蔵時の塊化を防止するために、適当な大きさの顆粒とすることもできる。顆粒化方法としては特に制限されず、公知の方法が採用できる。例えば本発明の繊維に水や適当なバインダーを加え、機械的に造粒すればよい。また、バインダーを用いて、又は用いずにスプレードライ法等により造粒してもよい。
【0029】
本発明の複合繊維は、結合剤と混合して樹脂組成物として用いることができる。結合剤としては、特に制限はなく、合成高分子やその他のものを随意選択可能である。
【0030】
合成高分子のうち、熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル及び若干のポリスチレンもしくはスチレンブタジエン系エラストマーを添加したポリフェニレンエーテル系樹脂が耐衝撃性や成形性の点で好ましい。またメタロセン触媒を使用して構造制御を行なうことにより得られるシンジオタクチックポリスチレン、5−メチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂等の環状オレフィンを成分に含む環状ポリオレフィン及びマレイミドを共重合したABS樹脂は熱変形温度が高いため好ましい。また1,4−ジアミノブタンとアジピン酸を縮合重合して得られるポリアミド−4,6、ヘキサメチレンジアミン及びテレフタル酸から得られるポリアミド6T、テレフタル酸の一部をイソフタル酸もしくはアジピン酸で置き換えた変性ポリアミド−6/6T、ヘキサメチレンジアミン及びテレフタル酸を共重合してなるポリアミド−6,6/6T等の耐熱性ポリアミド樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂、芳香族ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、サーモトロピック液晶ポリエステル樹脂、エチレン/テトラフルオロエチレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルコキシビニルエーテルコポリマー等の熱溶融性フッ素樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂等も好ましく用いることができる。本発明では、これらの中から1種単独で、又は2種以上混合してポリマーアロイとしたものを使用できる。
【0031】
熱可塑性樹脂を2種以上混合して用いる場合に好ましいものとしては、ポリエーテルイミド樹脂/ポリフェニレンエーテル系樹脂、シンジオタクチックポリスチレン/ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂/ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンサルフィド樹脂/ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂/ポリフェニレンエーテル系樹脂等を例示することができる。これらは、耐熱性、耐衝撃性、寸法安定性、絶縁性等の点で好ましい性質を有する。
【0032】
更に、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、トリアジン樹脂及び熱硬化変性をした熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂等を挙げることができる。グリシジルエーテル型耐熱性多官能エポキシ樹脂に硬化剤としてフェノール樹脂の変性や触媒の選択により熱時低弾性化の図られた樹脂組成物は特に好ましく用いることができる。
【0033】
また、天然樹脂及びその誘導体、含金属有機化合物、無機質結合剤、無機化合物及び有機化合物のエマルジョン等から1種単独又は2種以上を自由に選択して使用できる。
【0034】
更に、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、メッキ性改良のためにタルク、ピロリン酸カルシウム等の微粒子状充填剤を配合してもよい。また、ガラス繊維、ミルドガラスファイバー、チタン酸カリウムウィスカー等の強化繊維、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、染料・顔料等の着色剤、フッ素樹脂等の潤滑性付与剤、離型性改良剤、帯電防止剤、デカブロモビフェニルエーテルやヘキサブロモビスフェニル、臭素化ポリスチレン、テトラブロモビスフェノールA及びオリゴマーと臭素化ポリカーボネートオリゴマー等のハロゲン化ポリカーボネート、ハロゲン化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、リン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド等のリン系難燃剤等の難燃剤、更には三酸化アンチモン等のアンチモン系化合物やホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウム等の難燃助剤を適宜配合してもよい。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0036】
実施例1
繊維状チタニア水和物(TiO2 ・1/8H2 O、平均繊維長15μm、平均繊維径0.3μm)20.0g(0.244モル)を1リットルの脱イオン水に分散させ、攪拌しながらアンモニア水(25%)を10ml滴下し、pHを9に調整した後、20.0重量%の酢酸バリウム水溶液153g(0.120モル)及び20.0重量%の酢酸ストロンチウム水溶液127g(0.123モル)を各々同時に滴下した。滴下は、室温(20℃)で攪拌しながら30分間かけて行なった。その後、15重量%の炭酸アンモニウム水溶液200gを60分間かけて攪拌しながら滴下した。滴下終了後、更に30分間攪拌を続けた後、濾過、水洗、乾燥したところ白色の繊維状物61gを得た。
【0037】
この繊維状物は、X線回折、赤外吸収スペクトル(IR)及び走査型電子顕微鏡(SEM)観察の結果から、原料繊維である繊維状チタニア化合物の繊維形状を保持し、その表面に炭酸バリウム、炭酸ストロンチウムが沈着していることが判明した。また蛍光X線分析の結果より、Ba/Sr/Ti=0.490/0.504/1.000(モル比)であり、M=Ba+SrとすればM/Ti=1/1.006(モル比)の組成を示すものであることが判明した。
【0038】
この繊維状物質30gをアルミナ製るつぼに移し、大気雰囲気中で970℃にて3時間加熱処理することにより、24.5gの白色の繊維状物質を得た。
【0039】
得られた繊維状物質をIR分析したところ、炭酸塩の吸収ピークは完全に消失していた。また、これを化学分析及び蛍光X線分析したところ、Ba/Sr/Ti=0.490:0.504:1.000(モル比)であり、得られた繊維状物は、結晶質(Ba,Sr)TiO3 が99.4モル%及び非結晶質TiO2 0.6モル%からなるものであることが確認された。
【0040】
次いで、PPS(ポリフェニレンサルフィド)樹脂(商標名:トープレンPPS T−4トープレン(株)製)25重量部に対して、得られた繊維状物75重量部を混合し、混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。測定方法としては、引っ張り強度はJIS−K−7113、曲げ強度及び曲げ弾性率はJIS−K−7203、IZOD衝撃強度(ノッチ付)はJIS−K−7110、誘電率及び誘電正接はJIS−K−6911に準じ、3GHzにおける誘電率及び誘電正接は空洞共振法にて測定した。結果を表1に示す。
【0041】
実施例2〜4
実施例1と同様の方法で、原料繊維の繊維状チタニア水和物に対する酢酸バリウム、酢酸ストロンチウムの仕込み量を変え、Ba/Sr/Tiのモル比が0.37/0.60/1(モル比)であり、結晶質(Ba,Sr)TiO3 が97モル%及び非晶質TiO2 が3モル%からなる白色繊維状物質(実施例2)、及びBa/Sr/Tiのモル比が0.45/0.45/1(モル比)であり、結晶質(Ba,Sr)TiO3 が90モル%及び非晶質TiO2 が10モル%からなる白色繊維状物質(実施例3)、及びBa/Sr/Tiのモル比が0.33/0.34/1(モル比)であり、結晶質(Ba,Sr)TiO3 が67モル%及び非晶質TiO2 が33モル%からなる白色繊維状物質(実施例4)を各々得た。
【0042】
更に、実施例1と同様にして、実施例2〜4で得られた繊維状物をPPS樹脂と混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した結果を併せて表1に示す。
【0043】
実施例5
実施例1と同様の繊維状チタニア水和物20gを1リットルの脱イオン水に分散させ、攪拌しながらアンモニア水(25%)を10ml添加し、pH=9に調整した後、20重量%の塩化バリウム水溶液114gと20重量%の塩化カルシウム水溶液62gを各々同時に滴下した。滴下は、室温(20℃)で30分間かけて行なった。その後、15重量%の炭酸アンモニウム水溶液172gを60分間かけて滴下した。滴下終了後、30分間攪拌を続けた後、中間処理、濾別、水洗い、乾燥することにより、白色の繊維状物質52gを得た。得られた繊維状物質のうち30gをアルミナ製ルツボに移し、大気雰囲気中で、990℃、3時間加熱処理することにより、24.4gの白色繊維状物質を得た。
【0044】
このものを化学分析したところ、Ba/Ca/Ti=0.45/0.46/1(モル比)であり、得られた繊維状物は、結晶質(Ba,Ca)TiO3 が91モル%及び非結晶質TiO2 9モル%からなるものであることが確認された。
【0045】
また、実施例1と同様にして、上記で得られた繊維状物をPPS樹脂と混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例6
実施例1と同様の繊維状チタニア水和物20gを1リットルの脱イオン水に分散させ、攪拌しながらアンモニア水(25%)を10ml添加し、pH=9に調整した後、20重量%の塩化バリウム水溶液122gと20重量%の塩化マグネシウム水溶液54gを各々同時に滴下した。滴下は、室温(20℃)で30分間かけて行なった。その後、15重量%の炭酸アンモニウム水溶液165gを60分間かけて滴下した。滴下終了後、30分間攪拌を続けた後、中間処理、濾別、水洗、乾燥することにより、白色の繊維状物質52gを得た。この繊維状物をアルミナ製ルツボに移し、大気雰囲気中にて970℃、3時間加熱処理することにより、23.5gの白色繊維状物質を得た。
【0047】
このものを化学分析したところ、Ba/Mg/Ti=0.48/0.46/1(モル比)であり、得られた繊維状物は、結晶質(Ba,Mg)TiO3 が94モル%及び非結晶質TiO2 6モル%からなるものであることが確認された。
【0048】
また、実施例1と同様にして、上記で得られた繊維状物をPPS樹脂と混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例1
実施例1と同様の方法で、原料繊維の繊維状チタニア水和物に対する酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム水溶液の使用量を調整して、Ba/Sr/Ti=0.50/0.50/1(モル比)の生成物を得た。これは仕込みのモル比と差がなかった。分析の結果、結晶質の(Ba,Sr)TiO3 が100モル%であり、非晶質部分は検出されなかった。SEM分析の結果からは、原料繊維の形状がかなり消滅しており、粒状物が混在していた。また、上記生成物を実施例1と同様にPPS樹脂と混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した結果を表1に示す。
【0050】
比較例2
実施例1と同様の方法で、原料繊維の繊維状チタニア水和物に対する酢酸バリウム水溶液のみの使用量を調整して、Ba/Ti=0.95/1(モル比)の生成物を得た。分析の結果、結晶質のBaTiO3 が95モル%であり、非結晶質TiO2 部分が5モル%からなる白色繊維状物質であった。このものについても、実施例1と同様にPPS樹脂と混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
比較例3
試薬のBaTiO3 (平均粒径0.5μm、富士チタン工業(株)製)を分析した結果、100%結晶質のBaTiO3 であった。このものについて実施例1と同様の方法で、PPS樹脂と混練して得たコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例7
実施例1と同様の方法で原料繊維の繊維状チタニア水和物に対する酢酸バリウム、酢酸ストロンチウムの仕込み量を変え、Ba/Sr/Tiのモル比が0.23/0.50/1(モル比)であり、結晶質(Ba,Sr)TiO3 が73モル%及び非結晶質TiO2 が27モル%からなる白色繊維状物質を作成した。
【0054】
このものについて実施例1と同様に測定した結果を表2に示す。
【0055】
実施例8
実施例1と同様の方法で原料繊維の繊維状チタニア水和物に対する酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム及び酢酸マグネシウムを用いて仕込み量を調整し、Ba/Sr/Mg/Tiのモル比が0.30/0.30/0.25/1(モル比)であり、結晶質(Ba,Sr,Mg)TiO3 が85モル%及び非結晶質TiO2 が15モル%からなる白色繊維状物質を製造した。
【0056】
このものについて実施例1と同様に測定した結果を併せて表2に示す。
【0057】
実施例9
実施例1と同様の方法で原料繊維の繊維状チタニア水和物に対する酢酸バリウム、酢酸ストロンチウム、酢酸マグネシウム、及び酢酸カルシウムを用いて仕込み量を調整し、最終生成物としてBa/Sr/Mg/Ca/Tiのモル比が0.50/0.23/0.10/0.10/1(モル比)であり、結晶質成分(Ba,Sr,Mg,Ca)TiO3 が95モル%及び非結晶質TiO2 が5モル%からなる白色繊維状物質を製造した。
【0058】
このものについて実施例1と同様に測定した結果を併せて表2に示す。
【0059】
比較例4
(Ba,Sr)TiO3 粉体(平均粒径0.8μm、共立窯業(株)製)を分析したところ、100%結晶質の(Ba0.5 Sr0.5 )TiO3 (Ba/Sr/Tiのモル比が0.50/0.50//1)であった。このものについても実施例1と同様に測定した結果を併せて表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例10〜12
LCP(サーモトロピック液晶ポリエステル)樹脂(商品名:ベクトラC950、ポリプラスチックス(株)製)に実施例1で得られた繊維状物を表3に示す割合で混合し、混練して得られた各コンパウンドの機械的強度及び誘電特性を実施例1と同様の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0062】
比較例5〜7
実施例10〜12と同じ樹脂及び比較例2で得られた繊維状物を用い、上記実施例10〜12と同様にしてコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。結果を表3に示す。
【0063】
比較例8〜10
実施例10〜12と同じ樹脂及び比較例4で得られた繊維状物を用い、上記実施例10〜12と同様にしてコンパウンドの機械的強度及び誘電特性を測定した。結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合繊維の構造を模式的に示したグラフである。
Claims (5)
- 一般式 MO・TiO2 (式中、Mは二種以上の金属元素を示す)で表される組成を有するチタン酸金属塩結晶を非結晶質酸化チタンが包み込む形で複合一体化した繊維状物であって、二種以上の金属元素MとTiとのモル比が1:1.005〜1.5の範囲にあり、且つ繊維長と繊維径の比が3以上である複合繊維。
- 前記Mが、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、鉛、亜鉛、ベリリウム及びカドミウムからなる群から選ばれた少なくとも二種以上の金属元素を示す、請求項1に記載の複合繊維。
- 複合繊維の繊維長と繊維径の比(平均)が3以上10未満である請求項1又は請求項2記載の複合繊維。
- 繊維状チタニア化合物の表面に、溶液反応によって二種以上の金属元素Mの炭酸塩をM:Ti(モル比)=1:1.005〜1.5となるように沈着させた後、加熱処理することを特徴とする請求項1記載の複合繊維の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の複合繊維と結合剤とからなる樹脂組成物。
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