JP3605220B2 - リチウム鉄酸化物およびその合成法ならびにリチウム電池 - Google Patents

リチウム鉄酸化物およびその合成法ならびにリチウム電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム電池の電極活物質として用いることのできるリチウム鉄酸化物およびその合成法、さらにはリチウム鉄酸化物を電極活物質として用いたリチウム電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のポータブル機器の開発にともない、その電源として電池の需要は非常に大きなものとなっている。特に、リチウム電池は、リチウムが小さな原子量を持ちかつイオン化エネルギーが大きな物質であることから、高エネルギー密度を得ることができる電池として各方面で盛んに研究が行われている。
このようなリチウム電池に用いられる正極活物質として、最近は電池の起電力を高いものとし、高エネルギー密度化を図るために、LiCoOあるいはLiNiOなどの4Vの電圧を発生する正極活物質の検討が盛んに行われている。しかしながら、LiCoOあるいはLiNiOなどのコバルトやニッケルを含む化合物は、コストが高く、またCoやNiの産出量は比較的少ないものであることから、実用電池用の材料としては最適なものとはいい難い。そこで、CoあるいはNiを他の遷移金属元素、特に安価で豊富に存在するFeに置き換えた鉄化合物とすることで、上記の課題を解決することが期待されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
先に述べたLiCoOあるいはLiNiOは、層状岩塩型(αNaFeO 型)の結晶構造を有する。しかしながら、同様に層状岩塩型構造の化合物が得られているものは、前記のCo、Niの他にV、Crのみである。Feを用いた場合には、高温合成法では不規則配列の正方晶岩塩型の構造、低温合成法では正方晶の規則配列の化合物となり、いずれの化合物もリチウム電池用電極活物質としては作用しないものであった。
本発明は、上記の課題を解決し、リチウム電池用電極活物質として作用するリチウム鉄酸化物LiFeO(0<x≦2)の合成法を提供することを目的とする。
本発明は、また低コストで資源的にも豊富な鉄化合物を正極活物質として用いたリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のリチウム鉄酸化物の合成法は、少なくともオキシ水酸化鉄とリチウム化合物を出発物質とし、水蒸気を含有した雰囲気下で加熱する工程を有する。
ここで、オキシ水酸化鉄としては、γFeOOHを用いる。
また、出発物質におけるリチウム化合物とオキシ水酸化鉄の混合比は、リチウムと鉄のモル比でLi/Fe≧1となる範囲であることが好ましい。さらに、好ましくは、Li/Fe≧1.4となる範囲である。
また、加熱工程の後、30℃以下の水中に浸漬する工程を有することが好ましい。
【0005】
また、出発物質のリチウム化合物としては、LiO、LiOHおよびLiO H・HOよりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
また、加熱工程における加熱温度は350℃以下とする。なかでも100℃以上であることが好ましい。
また、加熱工程における水蒸気圧を、加熱温度での飽和水蒸気圧よりも低い状態とする。
本発明のリチウム電池は、少なくともリチウムイオン伝導性を有する電解質層と、上記のリチウム鉄酸化物を含む電極を具備する。
【0006】
【発明の実施の形態】
オキシ水酸化鉄は、層状構造の層間あるいはトンネル構造のトンネル内にプロトンが存在した結晶構造を有する。この物質を水蒸気存在下でリチウム化合物と加熱すると、プロトンとリチウムイオンのイオン交換反応が生じることにより、水が脱離するとともに層間あるいはトンネル内にリチウムイオンが導入される。その結果、得られるLiFeO(0<x≦2)は層状構造を有するものとなり、層間に存在するリチウムイオン が、電気化学的に層間あるいはトンネルに出入りすることで、リチウム電池用電極活物質として作用する。このように少なくともオキシ水酸化鉄とリチウム化合物を出発物質とし、水蒸気を含有した雰囲気下で加熱することにより、リチウム電池の電極活物質として作用するリチウム鉄酸化物を合成することができる。
【0007】
さらに、オキシ水酸化鉄として、FeO8面体が連なったジグザグ層状構造 を有するγFeOOHを用いた場合には、リチウム化合物との反応において、同様のHOの脱離とともに、同時に層のずれが引き起こされ、6配位8面体を層 間に形成し、その位置にリチウムが導入される。その結果、得られるLiFeO(0<x≦2)はLiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するものとなる。このジグザグ層状構造を有するLiFeO(0<x≦2)は、リチウムイオンの電気化学的な層間への出入り が特に円滑に行われ、リチウム電池用電極活物質として用いた場合には、リチウム電池がより大電流での作動が可能になるなどの優れた性能を示す。従って、オキシ水酸化鉄としてはFeO8面体が連なったジグザグ層状構造を有するγFeOOHが特に好ましく用いられる。
【0008】
上記の合成法により合成された試料には、出発物質あるいは不規則配列スピネルβLiFe、不規則配列αLiFeOなどが不純物として混在する可能 性がある。このように不純物の混在する生成物を電極活物質として用いた場合の電池の容量は、不純物の混在しないものを用いた場合に比べ低いものとなる。そのため、下記の方法により不純物の存在しないリチウム鉄酸化物を得るための合成法がより好ましく用いられる。
また、上記の合成法において、不純物としては不規則配列スピネルβLiFeが生じやすい。この化合物は、LiFeO(0<x≦2)よりもリチウム含有量が小さな化合物であることから、出発物質中のリチウム含有量を化学量論比よりも大きなものとすることで、この不規則配列スピネルβLiFeの生成を抑えることができる。そのため、出発物質であるオキシ水酸化鉄とリチウム化合物の混合比としては、不規則配列スピネルβLiFeが生成しにくいLiとFeのモル比Li/Fe≧1となる範囲、特に不規則配列スピネルβLiFeがほとんど生成しないLi/Fe≧1.4の範囲が好ましく用いられる。
【0009】
また、このように化学量論比よりも過剰のリチウム化合物を出発物質として用いた場合には、LiOHなどの過剰のリチウム化合物が反応生成物中に残存しやすい。この残存するリチウム化合物は、リチウム化合物を水中に溶解させることで取り除くことができる。ただし、熱水を用いた場合には不規則配列のαLiFeOが生成したり、あるいはまた反応生成物が分解し、出発物質のオキシ水酸 化鉄が生成したりする。そのため、残存するリチウム化合物を除去するためには、リチウム化合物をオキシ水酸化鉄が生成しない温度範囲の冷水中に溶解させることが必要である。そのため、リチウム電池の電極活物質として作用するリチウム鉄酸化物を得るためには、出発物質を加熱した後、30℃以下の水中に浸漬する方法が好ましく用いられる。
【0010】
出発物質として用いられるリチウム化合物としては、オキシ水酸化鉄との反応によりHOを生じる化合物を用いることで、HOを加えない密閉反応管中でも水蒸気雰囲気となり、イオン交換反応が進行するため、所望のリチウム鉄酸化物を得ることができる。しかしながら、例えばLiCOを用いた場合には、炭酸ガスの発生が生じ、不純物が生じる可能性がある。LiO、LiOHあるいは LiOH・HOを用いた場合には、以下の式(1)、(2)あるいは(3)で表される反応により水蒸気のみが発生する反応となることから、水蒸気を導入せずとも水蒸気雰囲気下で反応を進行させることができ、かつ不純物の生成の可能性を抑えることができる。そのため出発物質として用いられるリチウム化合物としては、LiO、LiOH、LiOH・HO、あるいはこれらリチウム化合物を 含む複数のリチウム化合物の混合物が特に好ましく用いられる。
【0011】
【化1】
Figure 0003605220
【0012】
また、プロトンとリチウムイオンのイオン交換反応時において、350℃よりも高い温度で反応させた際には、高温安定相であると考えられるαLiFeOが生成 しやすい。そのため合成時の加熱温度範囲としては、350℃以下の温度範囲が特に好ましく用いられる。それに対して低温で反応させた場合には、このようなαLiFeOは生成し難いが、温度が低すぎた場合には、プロトンとリチウムイオンのイオン交換反応の反応速度が遅く、長い反応時間が必要であるため合成法としては実用的でない。そのため、合成時の加熱温度としては、100℃以上の温度範囲が好ましく用いられる。
また、飽和水蒸気圧下でイオン交換反応を行った場合には、不規則配列αLiFeOが生成する。そのため、イオン交換反応を行う際の水蒸気圧としては、 加熱温度での飽和水蒸気圧よりも低い状態が好ましく用いられる。
上記合成法により得られるジグザグ層状構造を有するリチウム鉄酸化物は、LiFeOで表されるが、実際イオン交換反応により得られる物質には反応時の条件によって不定比性が生じやすいため、LiFeO(0<x≦2)で表されるものとなる。
【0013】
このようにして得られたリチウム鉄酸化物は、リチウムイオン導電性の電解質中で高い電気化学的活性を示す。そのため、このようなリチウム鉄酸化物を電極活物質として用いることにより、コバルトあるいはニッケルなどの資源量に限りがあり、コスト的にも高価な材料を用いることなしにリチウム電池を構成することができる。また、さらに現在リチウム電池用の電極活物質として実用化されつつあるLiCoOの理論容量密度は274mAh/gであるが、リチウムイオ ンのデインターカレーション反応にともない構造変化が生じるために、実際に可逆的に使うことのできる容量はその約半分の130mAh/g程度である。それに対して、このリチウム鉄酸化物の容量密度は283mAh/gであり、このリチウム鉄酸化物を電極活物質として用いた場合、より高容量のリチウム電池を構成することができる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明をその実施例によりさらに詳しく説明する。
[実施例1]
本実施例においては、出発物質としてγFeOOHとLiOH・HOを用いてLiFeOで表されるリチウム鉄酸化物を合成し、その電気化学的な活性度を 調べた。
まず、γFeOOHとLiOH・HOをモル比で1:1の割合で混合し、さらにこの混合物を金のチューブ中に封管した。この金のチューブを電気炉中に入れ、80℃から500℃までの温度で24時間反応させた。ただし、金のチューブの内容積は、前記の反応式(3)より計算される加熱温度での水蒸気容積の1.5 〜3倍の容積とした。
【0015】
このようにして得られた合成物の同定ならびにその結晶構造をX線回折法により調べた。その結果、100℃〜350℃の温度範囲で合成したものについては、斜方晶LiMnOと極めて類似のX線回折ピークが観測され、この温度範囲で 合成された物質が斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するLiFeOが主なる生成物であることがわかった。また、同時に不規則配列スピネル βLiFeに対応するピークも観測されており、不純物として不規則配列スピネルβLiFeが生成していることがわかった。100℃より低い反応温度で合成した試料では、出発物質の一つであるγFeOOHに対応するピークの強度が強くあらわれ、γFeOOHが主なる生成物であることがわかった。また、350℃より高い反応温度で合成したものについては、αLiFeOに対応す るピークが強く観測され、αLiFeOが主なる生成物であった。
また、80℃の反応温度で合成した試料について、80℃でさらに240時間加熱したところ、γFeOOHに相当するピーク強度は小さくなった。このことより、80℃でこのイオン交換反応を行うには長時間の反応時間が必要であることがわかった。
以上のように、本発明によるとジグザグ層状構造を有するリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0016】
次に、以上のようにして得られたリチウム鉄酸化物のうち、100℃〜300℃の温度範囲で合成したものの電気化学的な特性を以下の方法で評価した。
まず、リチウム鉄酸化物80wt%と、結着剤のポリ四フッ化エチレンおよび導電材のカーボンの各々10wt%を混合し、これを集電体としてのチタンのメッシュに充填し、動作極とした。このようにして得た動作極に、チタンのリード端子をスポット溶接した。また、金属リチウム箔をチタンメッシュに充填し、同様にリード端子をスポット溶接することで対極、参照極を構成した。
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO)を炭酸プロピレンとジメ トキシエタンを体積比で1:1の割合で混合した溶媒中に1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
【0017】
このようにして得た動作極、対極、および参照極を電解質中に浸漬し、電気化学セルを構成した。この電気化学セルを用い、1.5V〜3.5V vs.Li の電位範囲で、10mV/secの掃引速度で電位掃引を行い、電位−電流特性を調べた。ただし、電気化学セルの構成ならびに測定はアルゴンを満たしたドライボックス中で行った。
その結果、得られた電位−電流曲線より2V〜3Vの間で酸化還元反応が生じていることがわかり、このようにして得たリチウム鉄酸化物が、リチウムイオン導電性を有する電解質中で電気化学的に活性であることがわかった。
また、同様の測定を不規則配列スピネルβLiFeについても行ったところ、電気化学的な活性をほとんど示さなかった。本実施例により得られた試料の電気化学的な活性は、斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するL iFeOによるものであることがわかった。
以上のことより、本発明によると、リチウム電池の電極活物質として用いることが可能なリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0018】
[実施例2]
本実施例においては、出発物質を封じるチューブとして実施例1で用いた金チューブに代えて銀チューブを用いた以外は実施例1と同様にリチウム鉄酸化物を合成し、生成物を同定しその電気化学的特性を調べた。
その結果、得られた合成物ならびにその電気化学特性は実施例1とほぼ同様の結果を示した。
以上のことより、本発明によるとリチウム電池の電極活物質として用いることが可能なリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0019】
[実施例3]
本実施例においては、出発物質を金ボートに入れ、室温においてHO中でバ ブリングしたアルゴンガスを通じた反応管中に入れ、反応管を加熱する方法で反応させた以外は実施例1と同様にリチウム鉄酸化物を合成し、合成物を同定しその電気化学的特性を調べた。
その結果、得られた生成物ならびにその電気化学特性は、実施例1とほぼ同様の結果を示した。
以上のことより、本発明によるとリチウム電池の電極活物質として用いることが可能なリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0020】
[比較例1]
本比較例においては、飽和水蒸気圧下での合成を行った例について説明する。
出発物質ならびに合成法は、実施例1とほぼ同じ方法でリチウム鉄酸化物を合成した。ただし、反応物質を金チューブ中にいっぱいに充填し、さらにHOを 加え、加熱中の金チューブ内部が飽和水蒸気圧の雰囲気になるようにした。
このようにして合成したリチウム鉄化合物の同定をX線回折法により行ったところ、不規則配列のαLiFeOが主に生成したことがわかり、実施例1で得 られたジグザグ層状構造を有するリチウム鉄酸化物の生成比はごく小さなものであった。
また、このようにして合成したリチウム鉄化合物の電気化学特性を実施例1と同様の方法で調べたところ、酸化還元電流値が実施例1で得られたものよりも極めて小さく、このリチウム鉄酸化物の電気化学的活性があまり高くないことがわかった。
以上のように、リチウム電池の電極活物質として用いることのできるリチウム鉄酸化物の合成法としては、飽和水蒸気圧下での合成は適していないことがわかった。
【0021】
[実施例4]
本実施例においては、出発物質として用いるリチウム化合物を実施例1で用いたLiOH・HOに代えてLiOHとし、LiFeOで表されるリチウム鉄酸 化物を合成し、その合成物の同定とその電気化学的特性を調べた。
まず、γFeOOHとLiOHをモル比で1:1の割合で混合し、さらにこの混合物を金のチューブ中に封管した。この金のチューブを電気炉中に入れ、80℃から500℃までの温度で反応させた。ただし、金のチューブの内容積は、前記の反応式(2)より計算される加熱温度での水蒸気容積の1.5〜3倍の容積とした。
このようにして得られた試料の同定をX線回折法により行った。その結果、得られたX線回折図形は実施例1とほぼ同じであり、100℃〜350℃の温度範囲で合成された試料には、斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有す るLiFeOが含まれていることがわかった。
【0022】
次に、以上のようにして得られたリチウム鉄酸化物のうち、100℃〜350℃の温度範囲で合成したものの電気化学的な性質を実施例1と同様の方法で評価した。
その結果、得られた電位−電流曲線より2V〜3Vの間で酸化還元反応が生じていることがわかり、このようにして得たリチウム鉄化合物が、リチウムイオン導電性を有する電解質中で電気化学的に活性であることがわかった。
以上のことより、本発明によるとリチウム電池の電極活物質として用いることが可能なリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0023】
[実施例5]
本実施例においては、出発物質として用いるリチウム化合物を実施例1で用いたLiOH・HOに代えてLiOとし、LiFeOで表されるリチウム鉄酸化物を合成し、その合成物の同定とその電気化学的特性を調べた。
まず、γFeOOHとLiOをモル比で2:1の割合で混合し、さらにこの 混合物を金のチューブ中に封管した。この金のチューブを電気炉中に入れ、80℃から500℃までの温度で反応させた。ただし、金のチューブの内容積は、前記の反応式(1)より計算される加熱温度での水蒸気容積の1.5〜3倍の容積とした。
【0024】
このようにして得られた試料をX線回折法により同定した。その結果得られたX線回折図形は実施例1とほぼ同じであり、100℃〜350℃の温度範囲で合成された試料には、斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するLi FeOが含まれていることがわかった。
次に、以上のようにして得られたリチウム鉄酸化物のうち、100℃〜350℃の温度範囲で合成したものの電気化学的な性質を実施例1と同様の方法で評価した。
その結果、得られた電位−電流曲線より2V〜3Vの間で酸化還元反応が生じていることがわかり、このようにして得たリチウム鉄化合物が、リチウムイオン導電性を有する電解質中で電気化学的に活性であることがわかった。
以上のことより、本発明によるとリチウム電池の電極活物質として用いることが可能なリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0025】
[実施例6]
本実施例においては、出発物質として用いるリチウム化合物を実施例1で用いたLiOH・HOに代えてLiOH・HOとLiOHの混合物とし、リチウム鉄酸化物を合成し、その合成物の同定とその電気化学的特性を調べた。
まず、γFeOOHとLiOH・HOとLiOHをモル比で2:1:1の割合で混合し、さらにこの混合物を金のチューブ中に封管した。この金のチューブを電気炉中に入れ、80℃から500℃までの温度で反応させた。ただし、金のチューブの内容積は、次の反応式(4)より計算される加熱温度での水蒸気容積の1.5〜3倍の容積とした。
【0026】
【化2】
Figure 0003605220
【0027】
このようにして得られた試料をX線回折法により同定した。その結果、得られたX線回折図形は実施例1とほぼ同じであり、100℃〜350℃の温度範囲で合成された試料には、斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するL iFeOが含まれていることがわかった。
次に、以上のようにして得られたリチウム鉄酸化物のうち、100℃〜350℃の温度範囲で合成したものの電気化学的な性質を実施例1と同様の方法で評価した。
その結果、得られた電位−電流曲線より2V〜3Vの間で酸化還元反応が生じていることがわかり、このようにして得たリチウム鉄化合物が、リチウムイオン導電性を有する電解質中で電気化学的に活性であることがわかった。
以上のことより、本発明によるとリチウム電池の電極活物質として用いることが可能なリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0028】
[実施例7]
本実施例においては、出発物質として実施例1で用いたLiOH・HOとγFeOOHの混合比を変化させてLiFeOで表されるリチウム鉄酸化物を合成 し、その合成物の同定ならびにその電気化学的特性を調べた。
まず、LiOH・HOとγFeOOHの混合比をモル比で1:1〜2:1、すなわちLi/Fe=1.0〜2.0の範囲で変化させた以外は、実施例1と同様の方法でリチウム鉄酸化物を合成した。ただし、合成時の加熱温度は250℃とした。
このようにして得られた試料の同定をX線回折法により行った。その結果、試料のX線回折図形より主なる相は、実施例1で得られた斜方晶LiMnOと同 様のジグザグ層状構造を有するLiFeOであった。また、Li/Fe≧1. 4の範囲で合成した試料のX線回折図形には、実施例1で観測された不規則配列スピネルβLiFeに対応する回折ピークはほとんど観測されず、またLi/Fe≧1.2の範囲で合成した試料では、LiOHに対応する回折ピークが不純物として観測された。
【0029】
次に、以上のようにして得られたリチウム鉄酸化物の電気化学的な性質を実施例1と同様の方法で評価した。
その結果、いずれの試料も、リチウムイオン導電性を有する電解質中で電気化学的な活性を示した。
以上のように、出発物質であるオキシ水酸化鉄とリチウム化合物の比をLi/Fe≧1.4の範囲とする本発明によると、不純物相として不規則配列スピネルβLiFeを生じることなしに、リチウム電池の電極活物質として用いることのできるリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0030】
[実施例8]
本実施例においては、出発物質として用いるリチウム化合物を実施例7で用いたLiOH・HOに代えてLiOHとした以外は実施例7と同様の方法でリチウム鉄酸化物を合成し、その合成物を同定しその電気化学的特性を調べた。
その結果、得られたX線回折図形は、実施例7とほぼ同様の傾向を示し、またいずれの試料もリチウムイオン導電性を有する電解質中で電気化学的な活性を示した。
以上のように、出発物質であるオキシ水酸化鉄とリチウム化合物の比をLi/Fe≧1.4の範囲とする本発明によると、不純物相として不規則配列スピネルβLiFeを生じることなしに、リチウム電池の電極活物質として用いることのできるリチウム鉄酸化物が得られることがわかった。
【0031】
[実施例9]
本実施例においては、実施例7で得たリチウム鉄化合物を冷水中に浸漬することでリチウム鉄酸化物を合成した例について説明する。
まず、実施例7で得たリチウム鉄化合物を様々な温度の水中に30分間浸漬した。その後濾過し、減圧雰囲気下で乾燥させた。
このようにして得た試料の同定をX線回折法により行った。その結果、30℃以下の温度の水中に浸漬したものについては、斜方晶LiMnOと同様のジグ ザグ層状構造を有するLiFeOと不規則配列スピネルβLiFeに対応 する回折ピークの強度比は、実施例7とほぼ同様であったが、いずれの出発物質の組成で合成したものにも実施例7において観測されたLiOHの存在を示唆する回折ピークは観測されなかった。
以上のように、出発物質であるオキシ水酸化鉄とリチウム化合物の比をLi/Fe≧1.4の範囲とし、さらに得られたリチウム鉄酸化物を冷水中に浸漬することにより、リチウム電池の電極活物質として用いることのできる、斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するリチウム鉄酸化物が不純物の混在な く得られることがわかった。
【0032】
[実施例10]
本実施例においては、実施例8で得たリチウム鉄化合物を実施例9と同様に水中に浸漬することでリチウム鉄酸化物を合成した。
このようにして得た試料の同定をX線回折法により行った。その結果、浸漬する水の温度を30℃以下として得られた試料については、斜方晶LiMnOと 同様のジグザグ層状構造を有するLiFeOと不規則配列スピネルβLiFe に対応する回折ピークの強度比は、実施例8とほぼ同様であったが、いずれ の出発物質の組成で合成したものにも実施例8において観測されたLiOHの存在を示唆する回折ピークは観測されなかった。
以上のように、出発物質であるオキシ水酸化鉄とリチウム化合物の比をLi/Fe≧1.4の範囲とし、さらに得られたリチウム鉄酸化物を冷水中に浸漬することにより、リチウム電池の電極活物質として用いることのできる、斜方晶LiMnOと同様のジグザグ層状構造を有するリチウム鉄酸化物が不純物の混在な く得られることがわかった。
【0033】
[比較例2]
本比較例においては、実施例9における冷水に代えて熱水によりLiOHを取り除いた。
まず、実施例7で得た試料を熱水中に入れ、30分間煮沸した。その後減圧で乾燥し、得られた試料の同定をX線回折法により行った。その結果、X線回折図形にはLiOHに対応する回折ピークは観測されなかったが、不規則配列αLiFeOに対応するピークが強くあらわれ、この相が主なる生成物であることが わかった。
また、このようにして合成したリチウム鉄化合物の電気化学特性を実施例1と同様の方法で調べたところ、酸化還元電流値が実施例1で得られたものよりも極めて小さく、このリチウム鉄酸化物の電気化学的活性があまり高くないことがわかった。
以上のように、リチウム電池の電極活物質として用いることのできるリチウム鉄酸化物の合成において、不純物のLiOHを取り除く方法としては、熱水に浸漬する方法は適していないことがわかった。
【0034】
[実施例11]
本実施例においては、γFeOOHとLiOH・HOを用いて合成したLiFeOで表されるリチウム鉄酸化物を正極活物質として用い、リチウム電池を構 成し、その特性を評価した。
LiFeOで表されるリチウム鉄酸化物としては、実施例1と同様の方法で 合成したもののうち、反応温度を250℃としたものを用いた。
まず、リチウム鉄酸化物80wt%に、結着剤としてのポリ四フッ化エチレンを10wt%、導電材としてのカーボンを10wt%混合し、その20mgを直径14mmの円盤に打ち抜いたチタンのメッシュからなる集電体に充填し、正極とした。
また、負極としては直径14mmの円盤に打ち抜いた金属リチウム箔を用いた。
電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO)を炭酸プロピレンとジメ トキシエタンを体積比で1:1の割合で混合した溶媒中に1Mの濃度で溶解させたものを用いた。
【0035】
これらの正極、負極、電解質を用い、セパレータとしては厚さ50μmのポリプロピレンの微多孔質膜を用い、図1に示した断面を持つリチウム電池を構成した。図1において、1は正極、2は集電体を兼ね正極を保持するためのチタンメッシュ、3はステンレス鋼製の電池ケース、4は負極、5はチタンのメッシュ、6は封口板、7はセパレータ、8はガスケットである。
このようにして得たリチウム電池を1mAの定電流で1.6V〜4.1Vの電圧範囲で充放電試験を行った。その結果、得られた2サイクル目の充放電曲線を図2に示す。
図2よりこの電池が2V〜3Vの電圧範囲で充放電可能なリチウム電池となっていることがわかる。
以上のことより、本発明によると鉄化合物を電極活物質としたリチウム電池が得られることがわかった。
【0036】
[実施例12]
本実施例においては、実施例11で用いたリチウム鉄酸化物に代えて実施例9で得たリチウム化合物のうち、Li/Fe=1.5の出発物質を用い、浸漬する水の温度として0℃の水を用いたものを正極活物質として用い、実施例11と同様のリチウム電池を構成し、その特性を評価した。その結果、得られた2サイクル目の充放電曲線を図3に示す。
図3よりこの電池が2V〜3Vの電圧範囲で充放電可能なリチウム電池となっており、またその容量は、実施例11において得られたリチウム電池の容量よりも大きなものであることがわかる。
また、比較のために、LiCoOを正極活物質として用いたリチウム電池を 構成した。
また、正極活物質としては以下の方法で合成したLiCoOを用いた。
出発物質としてはLiCOとCoを用いた。このLiCOとCoをモル比で3:2の割合で混合し、アルミナ製坩堝中で酸素気流中750℃で24時間焼成し、LiCoOを得た。
【0037】
このようにして得たLiCoOを正極活物質として用いた以外は、実施例1 1と同様の方法でリチウム電池を構成し、その充放電特性を充放電電圧範囲を3V〜4.2Vとした以外は実施例11と同様の方法で調べた。
その結果、得られた2サイクル目の充放電曲線を図4に示す。
図3と図4より、各々の電池のエネルギーおよび容量を計算したところ、電極活物質として本発明により得たリチウム鉄酸化物を用いたものではそれぞれ9.2mWhおよび4.3mAh(LiFeO 1g当たり269mAh)と理論容量密度に近い値であった。それに対してLiCoOを電極活物質として用いた電池のエネルギーおよび容量はそれぞれ7.2mWhおよび1.9mAh(LiCoO 1g当たり119mAh)で、本発明により得られた活物質を用いた電池がより高いエネルギー密度を有することがわかった。
以上のことより、本発明により得られた不純物の存在の極めて少ないリチウム鉄酸化物を電極活物質として用いることで、鉄化合物を電極活物質とし、さらに高容量、高エネルギーのリチウム電池が得られることがわかった。
【0038】
[実施例13]
本実施例においては、γFeOOHとLiOHを用いて合成したリチウム鉄酸化物を負極活物質として用い、リチウム電池を構成し、その特性を評価した。
LiFeOで表されるリチウム鉄酸化物としては、実施例4と同様の方法で 合成したもののうち、反応温度を250℃としたものを用いた。
まず、リチウム鉄酸化物80wt%に、結着剤としてポリ四フッ化エチレンを10wt%、導電材としてカーボンを10wt%混合し、その20mgを直径14mmの円盤に打ち抜いたチタンのメッシュからなる集電体に充填し、電極を構成した。
このようにして得た電極を、実施例11で用いた過塩素酸リチウムを炭酸プロピレンとジメトキシエタンの混合溶媒に溶解させた電解液中でリチウムに対して3Vの電位で電解し、リチウム電池用の負極とした。
【0039】
また、正極活物質としては実施例12で合成したLiCoOを用いた。この LiCoOの80wt%に結着剤としてポリ四フッ化エチレンを10wt%、 導電材としてカーボンを10wt%混合し、その50mgを直径14mmの円盤に打ち抜いたチタンのメッシュに充填し、正極とした。
このようにして得た正極と負極を用いた以外は実施例11と同様の方法でリチウム電池を構成した。
このリチウム電池を1mAの定電流で0〜2.6Vの電圧範囲で充放電試験を行った。その結果、得られた2サイクル目の充放電曲線を図5に示す。
図5よりこの電池が1V〜2Vの電圧範囲で充放電可能なリチウム電池となっていることがわかる。
以上のことより、本発明によると鉄化合物を電極活物質としたリチウム電池が得られることがわかった。
【0040】
[実施例14]
本実施例においては、γFeOOHとLiOH・HOを用いて合成したLiFeOで表されるリチウム鉄酸化物を用い、電解質として0.6LiS−0.4SiSで表される硫化物系リチウムイオン導電性非晶質固体電解質を用いて全 固体リチウム電池を構成し、その特性を評価した。
リチウム鉄酸化物としては、実施例1と同様の方法で合成したもののうち、反応温度を250℃としたものを用いた。
硫化物系リチウムイオン導電性固体電解質0.6LiS−0.4SiSは、以下のように合成した。
硫化リチウム(LiS)と硫化ケイ素(SiS)をモル比で3:2の割合で混合し、その混合物をガラス状カーボンの坩堝中に入れた。その坩堝を縦型炉中に入れ、アルゴン気流中において950℃まで加熱し、混合物を溶融状態とした。2時間加熱の後、坩堝を液体窒素中に落とし込み急冷し0.6LiS−0.4SiSで表されるリチウムイオン導電性非晶質固体電解質を得た。
【0041】
このようにして得たリチウムイオン導電性非晶質固体電解質を粉砕したものと上記のリチウム鉄酸化物を重量比で1:1の割合で混合し、その90wt%と導電材としてのカーボン10wt%を混合して正極材料とした。
また、負極としては直径10mmの円盤に打ち抜いた厚さ0.1mmの金属リチウム箔を用いた。
上記のようにして得た正極材料20mgと負極の金属リチウム箔を固体電解質を介して直径10mmの円盤状に一体に成型し、全固体リチウム電池素子とした。この全固体リチウム電池素子をステンレス鋼製電池ケースに入れ、ガスケットを配して封口し、全固体リチウム電池を構成した。
このようにして得た全固体リチウム電池を100μAの定電流で1.6V〜4.0Vの電圧範囲で充放電試験を行った。その結果、得られた2サイクル目の充放電曲線を図6に示す。
図6よりこの電池が2V〜3Vの電圧範囲で充放電可能なリチウム電池となっていることがわかる。
以上のことより、本発明によると鉄化合物を電極活物質とした全固体リチウム電池が得られることがわかった。
【0042】
[実施例15]
本実施例においては、電解質として0.01LiPO−0.63LiS− 0.36SiSで表される硫化物系リチウムイオン導電性非晶質固体電解質を 用い、リチウム鉄酸化物としては実施例9で得たリチウム化合物のうち、Li/Fe=1.5の出発物質を用い、浸漬する水の温度として0℃の水を用いたものを用いた以外は実施例14と同様の方法で、全固体リチウム電池を構成し、その特性を評価した。
硫化物系リチウムイオン導電性固体電解質0.01LiPO−0.63Li2S−0.36SiSは、出発物質としてリン酸リチウム(LiPO)と硫化リチウム(LiS)と硫化リチウム(SiS)をモル比で1:63:36の割合で混合したものを用い、ガラス状カーボン坩堝中に入れ、950℃で2時間加熱の後、融液を双ローラーに流し込み急冷し、合成したものを用いた。
このようにして得た全固体リチウム電池を用いて実施例14と同様の充放電試験を行ったところ、この電池が2V〜3Vの電圧範囲で充放電可能な全固体リチウム電池となっていることがわかった。
以上のことより、本発明によると鉄化合物を電極活物質とした全固体リチウム電池が得られることがわかった。
【0043】
[実施例16]
本実施例においては、電解質として0.30LiI−0.35LiS−0. 35Bで表される硫化物系リチウムイオン導電性非晶質固体電解質を用いた以外は実施例14と同様の方法で、全固体リチウム電池を構成し、その特性を評価した。
硫化物系リチウムイオン導電性固体電解質0.30LiI−0.35LiS −0.35Bは、出発物質としてヨウ化リチウム(LiI)と硫化リチウム(LiS)と硫化ホウ素(B)をモル比で6:7:7の割合で混合したも のを用い、減圧下で石英ガラス管中に封入したものを950℃で2時間加熱の後、水中に落とし込み急冷することで合成したものを用いた。
このようにして得た全固体リチウム電池を用いて実施例14と同様の充放電試験を行ったところ、この電池が2V〜3Vの電圧範囲で充放電可能なリチウム電池となっていることがわかった。
以上のことより、本発明によると鉄化合物を電極活物質とした全固体リチウム電池が得られることがわかった。
【0044】
[実施例17]
本実施例においては、リチウム鉄酸化物として実施例9で得たリチウム化合物のうち、浸漬する水として温度10℃の水を用い、Li/Fe=1.5の出発物質を用いたものを用いた以外は実施例14と同様の方法で、全固体リチウム電池を構成し、その特性を評価した。
このようにして得た全固体リチウム電池を用いて実施例14と同様の充放電試験を行ったところ、この電池が2V〜3Vの電圧範囲で充放電可能なリチウム電池となっており、かつ電池容量は実施例14で得た全固体リチウム電池よりも大きなものであった。
以上のことより、本発明により得られた不純物の存在の極めて少ないリチウム鉄酸化物を電極活物質として用いることで、鉄化合物を電極活物質とし、さらに容量の大きな全固体リチウム電池が得られることがわかった。
【0045】
なお、上記の実施例においては、出発物質のオキシ水酸化鉄としてγFeOOHを用いたもののみについて説明したが、その他のオキシ水酸化鉄、例えばトンネル構造を有するβ型のものを出発材料として用いた場合も、得られるリチウム鉄酸化物は、出発物質の構造を反映した構造となり、リチウム電池の電極活物質として用いた場合にリチウムイオンの拡散速度等に変化が生じるのみであり、同様にリチウム電池の電極活物質として用いることのできるリチウム鉄化合物を得ることができる。したがって、本発明は出発物質としてオキシ水酸化鉄としてγFeOOHを用いたもののみに限定されるものではない。
また、実施例においては、出発物質として用いるリチウム化合物がLiOH・ HO、LiOH、LiOならびにこれらの混合物である例についてのみ説明したが、Li、Liなどあるいはこれらを含んだ混合物などの実施例では説明しなかったリチウム化合物を出発物質として用いても同様の効果が得られることはいうまでもなく、本発明は出発物質として用いるリチウム化合物がこれら実施例に挙げたものに限定されるものではない。
【0046】
また、上記の実施例におけるリチウム電池としては、リチウム鉄酸化物を正極活物質に用いた場合には負極活物質として金属リチウムを用いたもの、リチウム鉄酸化物を負極活物質として用いた場合には正極活物質としてLiCoOを用 いたものについてのみ説明した。しかし、負極活物質としてはその他LiーAlなどのリチウム合金あるいは黒鉛材料など、正極活物質としてはその他LiNiOなどを用いた場合も同様にリチウム電池を構成することができることはいう までもない。さらに、電解質についてもLiPFを溶質としたもの、溶媒とし て炭酸エチレンなどを加えたものなど、また固体電解質としてLiS−P 系、LiI−Al系などの実施例に挙げた以外の電解質を用いることも可能であり、本発明はリチウム電池としてこれら実施例に挙げたものに限定されるものではない。
なお、上記の実施例においては、リチウム鉄酸化物をLiFeOで表したが、イオン交換反応によって得られる物質には不定比性が生じやすく、本発明により得られるリチウム鉄酸化物も例外ではなく、LiFeO(0<x≦2)で表すのが適当である。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、リチウム電池の電極活物質として作用するリチウム鉄酸化物を合成することができる。
【図表の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるリチウム電池の縦断面図である。
【図2】本発明の一実施例におけるリチウム電池の充放電曲線図である。
【図3】本発明の他の実施例におけるリチウム電池の充放電曲線図である。
【図4】本発明の比較例であるリチウム電池の充放電曲線図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例におけるリチウム電池の充放電曲線図である。
【図6】本発明の実施例における全固体リチウム電池の充放電曲線図である。
【符号の説明】
1 正極
2 正極集電体
3 電池ケース
4 負極
5 負極集電体
6 封口板
7 セパレータ
8 ガスケット

Claims (10)

  1. 少なくともオキシ水酸化鉄とリチウム化合物を含む出発物質を水蒸気を含有した雰囲気下で加熱する工程を有し、前記オキシ水酸化鉄が、γFeOOHからなることを特徴とするリチウム鉄酸化物の合成法。
  2. 前記出発物質におけるリチウム化合物とオキシ水酸化鉄の混合比が、リチウムと鉄のモル比でLi/Fe≧1となる範囲である請求項1記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  3. 前記出発物質におけるリチウム化合物とオキシ水酸化鉄の混合比が、リチウムと鉄のモル比でLi/Fe≧1.4となる範囲である請求項記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  4. 前記加熱工程の後、30℃以下の水中に浸漬する工程を有する請求項または記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  5. リチウム化合物が、Li2O、LiOHおよびLiOH・H2Oよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  6. 前記加熱工程における加熱温度が350℃以下である請求項1記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  7. 前記加熱工程における加熱温度が100℃以上である請求項記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  8. 前記加熱工程における水蒸気圧が、加熱温度での飽和水蒸気圧よりも低い請求項1記載のリチウム鉄酸化物の合成法。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載の合成法により得られるジグザグ層状構造を有するLixFeO2(0<x≦2)で表されるリチウム鉄酸化物。
  10. 少なくともリチウムイオン伝導性を有する電解質層、および請求項記載のリチウム鉄酸化物を含む電極を有するリチウム電池。
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