JP3604572B2 - マグネシウム合金部材のめっき方法およびマグネシウム合金めっき部材ならびに該部材のめっき剥離方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金部材のめっき方法、該方法により得られるめっき部材および該めっき部材からめっき被膜を剥離させる剥離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は比重が約1.8Mg/m3と、実用金属中もっとも小さく、唯一プラスチックに匹敵しうる軽量金属材料である。そのため、ポータブル電子機器や輸送機器部材には最適の材料であり、近年特に注目されている。またリサイクルの点で、プラスチックに比べて地球環境に対する負荷が小さいという特徴を有しており、家電製品を中心として実用化が進行している。このマグネシウム合金を量産する工法には、ダイカスト法とチクソモールディング法とがあるが、作業者の安全性と対環境性という観点から後者が急速に普及してきている。これらマグネシウム合金の表面処理に関しては、耐食性という観点から化成処理や陽極酸化などが一般的に行われているが、導電性や熱伝導性および耐摩耗性を付与するためには金属めっきが必要となる。
従来のマグネシウム合金への金属めっき方法は、所定の前処理後、亜鉛置換、シアン化浴銅めっき、無電解ニッケルめっきを行うのが基本であり、さらに銀や金めっき、あるいは蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの乾式めっきによりアルミニウムなどを形成する方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のめっき方法によって最表面に形成されるニッケル被覆は、耐食性が十分ではなく、マグネシウム合金素材の耐食性を劣化させるため、マグネシウム合金のリサイクルが難しくなるという問題がある。また、その他のめっき材料である金や銀はめっき液原料として高価であり、乾式めっきは膜厚が数ミクロン程度で耐摩耗性に劣る上、工程が複雑となり、また設備が高価になるという問題がある。
本発明はこれらの問題点を解決して、比較的安価で、かつリサイクル性に優れた金属めっきが得られるめっき方法および該めっき被膜を有するめっき部材ならびに該めっき被膜の剥離方法を提供するためになされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のマグネシウム合金部材のめっき方法は、マグネシウム合金からなる被めっき物に亜鉛置換を施した後、シアン化浴銅めっき、ピロリン酸銅めっきを順次行い、その上層にクロムめっきを行うことを特徴とする。
【0005】
また、本発明のマグネシウム合金めっき部材は、合金部材表面に亜鉛置換層、ストライク銅めっき層、電解銅めっき層および硬質クロムめっき層が順次形成されていることを特徴とする。
【0006】
さらに、本発明のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法のうち第1の発明は、上記発明のマグネシウム合金めっき部材をアルカリ液中で電解して該部材表層部からめっき被膜を剥離させることを特徴とする。
第2の発明のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法は、第1の発明のめっき剥離方法において、電解の前処理として機械的な研磨工程を含むことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明では、各種のマグネシウム合金部材を被めっき物として使用することができ、その組成や形状、用途等については特に限定されるものではない。
上記マグネシウム合金部材にめっきを施すに当たっては、通常は前処理が行われる。この前処理としては、図1、2に示すように、機械研磨、脱脂、酸洗い、エッチング、活性化処理が挙げられる。
上記機械研磨としては、バフ研磨、バレル研磨等を挙げることができる。この機械研磨は、前処理としては特に必須というものではないが、汚染物質を効果的に除去できるため、図1に示すように、後の脱脂処理等の負担を軽減することができる。
次に行われる脱脂では、合金部材表面の酸化物やよごれ等が除去される。この脱脂では、図1、2に示されるように、有機溶剤やアルカリ液等が用いられる。これらの脱脂では合金部材を浸漬したり、ブラシ等に溶液をつけて部材をこする等の方法が採られる。また、図2に示すように、アルカリ液等によって電解脱脂を行うことも可能である。上記の脱脂は、一つの方法でも良く、また複数の方法を組み合わせて複数工程により脱脂を行うものであってもよい。
【0008】
上記脱脂後は、図1に示すように、所望により酸洗い(酸処理)を行うことができ、酸洗い後は、中性化するためにアルカリ洗い(アルカリ処理)を行うこともできる。なお、上記した機械研磨を施したものでは、汚れの除去が十分になされているため、この酸洗い(およびアルカリ洗い)を省略することも可能である。
上記処理後には、酸性浴を用いたエッチング処理を行うが、電解脱脂を行ったものでは、電解作用によってこのエッチング処理を省略することもできる(図2)。
【0009】
その後、酸化物の除去等を目的にフッ素イオンを含む酸性溶液等によって活性化処理がなされる。
活性化処理後は、亜鉛置換処理がなされる。この処理では硫酸亜鉛やピロリン酸塩等を含む浴を用いて合金部材の表面に亜鉛めっき層を形成する。該浴には一般にアルカリ性浴が用いられる。この処理においては亜鉛めっき層が合金部材の表面に強固に密着して形成される。
【0010】
上記亜鉛置換の後は、その上層にシアン化浴銅めっきを施す。このめっきでは、公知のシアン化浴を用いて電解めっきを施すことができ、例えばシアン化銅、シアン化ナトリウムを含む浴等を用いてめっきを行う。めっきの際の電解条件は本発明としては特に限定されないが、電流密度4〜6A/dm2の範囲を例示できる。この際に形成する銅めっき層の厚さは、2〜6μmとするのが望ましい。さらに、この上層にはピロリン酸銅めっきを施す。このピロリン酸めっきでは、ピロリン酸銅やピロリン酸カリを含む電解液等を用いて電解メッキを行う。上記の電解条件は上記シアン化浴銅めっきと同様にこの発明としては特に限定されるものではないが、電流密度2〜6A/dm2の範囲を例示できる。また、この浴を用いた電解により形成される銅めっき層の厚さは、6〜13μm厚とするのが望ましい。このピロリン酸銅メッキによれば、ピンホールのない緻密で密着性の優れたメッキ層が得られる。
【0011】
これらの2層の銅めっき層を形成することにより、上層に直接にクロムめっきを施すことができる。クロムめっき層は優れた耐食性を有しており、マグネシウム合金の腐食を防止してリサイクルを容易にする。このクロムめっき層にはさらにバフ研磨等により研磨を行うことにより、導電性や耐摩耗性のみならず、光沢のある装飾メッキとしての用途が可能となる。
上記によりめっきが施されたマグネシウム合金部材は、優れた耐食性に加えて、良好な導電性や耐摩耗性、熱伝導性を有しており、優れた表面性状を有している。
【0012】
本発明のめっき方法により得られるマグネシウム合金部材は、使用後、リサイクルを目的として、所望によりバフ研磨等の研磨により汚れを除去した後、アルカリ液中で電解処理される。アルカリ液としては炭酸ソーダー等を用いることができ、このときの電解条件としては2〜8Vの電解電圧を示すことができる。この電解により、銅およびクロムめっきがマグネシウム合金から確実に剥離され、該マグネシウム合金を再利用することが可能になる。なお、電解に先立って上記した研磨を行うことにより電解によるめっき層の剥離が一層確実になされる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明する。
まずAl、Zn、Mnを含有し、残部マグネシウムからなる合金素材を、トルエン含有からなる有機溶剤に2〜8分浸漬して溶剤脱脂し、さらに炭酸ソーダーからなるアルカリ性浴中に4〜10分浸漬して脱脂した。その後、リン酸からなる酸性浴中にて酸処理した後、水酸化ナトリウム浴中にてアルカリ処理した。次に無水クロム酸系の液を用いて酸化膜を除去(エッチング)し、リン酸系の液を用いて素材の表面を活性化した。
【0014】
また、他の供試材として、上記と同じ合金素材を用いて、バフ研磨を行った後、上記と同様のアルカリ性浴で脱脂を行い、上記と同じ、エッチング、活性化を行った。この工程では、機械研磨によって前記供試材に比べて活性化前の工程が簡略化され、全体の作業時間が約半分となった。なお、その表面性状は前記供試材と異なるところはなかった。
【0015】
次いで、両供試材を水酸化ナトリウムからなるアルカリ性浴中で亜鉛置換し、青化第一銅含有からなるシアン浴中で4〜6A/dm2の電解条件でシアン化浴銅めっき層を約4μm厚に形成した。さらにその上層には、ピロリン酸銅含有からなるピロリン酸浴中で、2〜6A/dm2の電解条件で厚付銅めっき層を約6μm厚に形成した。この上層には、さらに無水クロム酸含有からなる酸性浴中で、電解条件10〜40A/dm2で電解クロムめっきを行い、その表面をバフ研磨して光沢仕上げした。
【0016】
一方、従来法として、上記活性化処理を施した供試材に対し、上記と同じシアン化浴を用いて、電解条件4〜6A/dm2で4μm厚のストライク銅めっきを施し、その上層に、8〜14μm厚の電解ニッケルめっきを行った。また、比較例として、上記ストライク銅めっき上に、1〜3μm厚の電解クロムめっきを施した。しかし、この比較例ではピット、ピンホールが生じ、素材表面の腐食の不具合があった。
【0017】
上記した発明材と従来材について、JIS H 8502からなる耐食性試験を行ったところ、発明材では、以下に示すように優れた耐食性を示したのに対し、従来材では耐食性に劣っていた。
【0018】
次いで、上記発明材および従来材について、バフ研磨した後、シアンおよびキレート剤を含む炭酸ソーダーからなるアルカリ液中で、電解条件2〜8Vで電解を行い、銅めっき層およびクロムめっき層を剥離した。めっき被膜剥離後の供試材表面を電子線マイクロアナライザーとオージェ電子分光分析により分析したところ、発明材ではクロム、銅はともに検出されなかった。一方、従来材では、ニッケル、銅共に検出され素材も腐食が有り、スマット(酸化物)が除去出来ていなかった。
従って、発明材では、めっき被膜剥離後の素材表面には、めっき成分が残留しておらず、リサイクル時にも不純物の混入がほとんど無く、リサイクルを容易に行うことができる。一方、従来材では、酸化物等の混入があるため、リサイクルが容易でないことが明らかである。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のマグネシウム合金部材のめっき方法によれば、マグネシウム合金からなる被めっき物に亜鉛置換を施した後、シアン化浴銅めっき、ピロリン酸銅めっきを順次行い、その上層にクロムめっきを行うので、表層のクロムめっき層が下層に確実に密着して形成され、耐食性および耐久性に優れためっき被膜が形成される。
【0020】
また、本発明のマグネシウム合金めっき部材によれば、合金部材表面に亜鉛置換層、ストライク銅めっき層、電解銅めっき層および硬質クロムめっき層が順次形成されているので、そのめっき層により優れた耐食性が得られるとともに被膜の耐久性にも優れている。
また、本発明のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法によれば、このめっき部材をアルカリ液中で電解して該部材表層部からめっき被膜を剥離させるので、めっき層が確実に部材表面から剥離され、しかも得られた部材の腐食が抑えられているので、容易にリサイクル化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す工程図である。
【図2】同じく他の実施形態を示す工程図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、マグネシウム合金部材のめっき方法、該方法により得られるめっき部材および該めっき部材からめっき被膜を剥離させる剥離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
マグネシウム合金は比重が約1.8Mg/m3と、実用金属中もっとも小さく、唯一プラスチックに匹敵しうる軽量金属材料である。そのため、ポータブル電子機器や輸送機器部材には最適の材料であり、近年特に注目されている。またリサイクルの点で、プラスチックに比べて地球環境に対する負荷が小さいという特徴を有しており、家電製品を中心として実用化が進行している。このマグネシウム合金を量産する工法には、ダイカスト法とチクソモールディング法とがあるが、作業者の安全性と対環境性という観点から後者が急速に普及してきている。これらマグネシウム合金の表面処理に関しては、耐食性という観点から化成処理や陽極酸化などが一般的に行われているが、導電性や熱伝導性および耐摩耗性を付与するためには金属めっきが必要となる。
従来のマグネシウム合金への金属めっき方法は、所定の前処理後、亜鉛置換、シアン化浴銅めっき、無電解ニッケルめっきを行うのが基本であり、さらに銀や金めっき、あるいは蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの乾式めっきによりアルミニウムなどを形成する方法も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のめっき方法によって最表面に形成されるニッケル被覆は、耐食性が十分ではなく、マグネシウム合金素材の耐食性を劣化させるため、マグネシウム合金のリサイクルが難しくなるという問題がある。また、その他のめっき材料である金や銀はめっき液原料として高価であり、乾式めっきは膜厚が数ミクロン程度で耐摩耗性に劣る上、工程が複雑となり、また設備が高価になるという問題がある。
本発明はこれらの問題点を解決して、比較的安価で、かつリサイクル性に優れた金属めっきが得られるめっき方法および該めっき被膜を有するめっき部材ならびに該めっき被膜の剥離方法を提供するためになされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のマグネシウム合金部材のめっき方法は、マグネシウム合金からなる被めっき物に亜鉛置換を施した後、シアン化浴銅めっき、ピロリン酸銅めっきを順次行い、その上層にクロムめっきを行うことを特徴とする。
【0005】
また、本発明のマグネシウム合金めっき部材は、合金部材表面に亜鉛置換層、ストライク銅めっき層、電解銅めっき層および硬質クロムめっき層が順次形成されていることを特徴とする。
【0006】
さらに、本発明のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法のうち第1の発明は、上記発明のマグネシウム合金めっき部材をアルカリ液中で電解して該部材表層部からめっき被膜を剥離させることを特徴とする。
第2の発明のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法は、第1の発明のめっき剥離方法において、電解の前処理として機械的な研磨工程を含むことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明では、各種のマグネシウム合金部材を被めっき物として使用することができ、その組成や形状、用途等については特に限定されるものではない。
上記マグネシウム合金部材にめっきを施すに当たっては、通常は前処理が行われる。この前処理としては、図1、2に示すように、機械研磨、脱脂、酸洗い、エッチング、活性化処理が挙げられる。
上記機械研磨としては、バフ研磨、バレル研磨等を挙げることができる。この機械研磨は、前処理としては特に必須というものではないが、汚染物質を効果的に除去できるため、図1に示すように、後の脱脂処理等の負担を軽減することができる。
次に行われる脱脂では、合金部材表面の酸化物やよごれ等が除去される。この脱脂では、図1、2に示されるように、有機溶剤やアルカリ液等が用いられる。これらの脱脂では合金部材を浸漬したり、ブラシ等に溶液をつけて部材をこする等の方法が採られる。また、図2に示すように、アルカリ液等によって電解脱脂を行うことも可能である。上記の脱脂は、一つの方法でも良く、また複数の方法を組み合わせて複数工程により脱脂を行うものであってもよい。
【0008】
上記脱脂後は、図1に示すように、所望により酸洗い(酸処理)を行うことができ、酸洗い後は、中性化するためにアルカリ洗い(アルカリ処理)を行うこともできる。なお、上記した機械研磨を施したものでは、汚れの除去が十分になされているため、この酸洗い(およびアルカリ洗い)を省略することも可能である。
上記処理後には、酸性浴を用いたエッチング処理を行うが、電解脱脂を行ったものでは、電解作用によってこのエッチング処理を省略することもできる(図2)。
【0009】
その後、酸化物の除去等を目的にフッ素イオンを含む酸性溶液等によって活性化処理がなされる。
活性化処理後は、亜鉛置換処理がなされる。この処理では硫酸亜鉛やピロリン酸塩等を含む浴を用いて合金部材の表面に亜鉛めっき層を形成する。該浴には一般にアルカリ性浴が用いられる。この処理においては亜鉛めっき層が合金部材の表面に強固に密着して形成される。
【0010】
上記亜鉛置換の後は、その上層にシアン化浴銅めっきを施す。このめっきでは、公知のシアン化浴を用いて電解めっきを施すことができ、例えばシアン化銅、シアン化ナトリウムを含む浴等を用いてめっきを行う。めっきの際の電解条件は本発明としては特に限定されないが、電流密度4〜6A/dm2の範囲を例示できる。この際に形成する銅めっき層の厚さは、2〜6μmとするのが望ましい。さらに、この上層にはピロリン酸銅めっきを施す。このピロリン酸めっきでは、ピロリン酸銅やピロリン酸カリを含む電解液等を用いて電解メッキを行う。上記の電解条件は上記シアン化浴銅めっきと同様にこの発明としては特に限定されるものではないが、電流密度2〜6A/dm2の範囲を例示できる。また、この浴を用いた電解により形成される銅めっき層の厚さは、6〜13μm厚とするのが望ましい。このピロリン酸銅メッキによれば、ピンホールのない緻密で密着性の優れたメッキ層が得られる。
【0011】
これらの2層の銅めっき層を形成することにより、上層に直接にクロムめっきを施すことができる。クロムめっき層は優れた耐食性を有しており、マグネシウム合金の腐食を防止してリサイクルを容易にする。このクロムめっき層にはさらにバフ研磨等により研磨を行うことにより、導電性や耐摩耗性のみならず、光沢のある装飾メッキとしての用途が可能となる。
上記によりめっきが施されたマグネシウム合金部材は、優れた耐食性に加えて、良好な導電性や耐摩耗性、熱伝導性を有しており、優れた表面性状を有している。
【0012】
本発明のめっき方法により得られるマグネシウム合金部材は、使用後、リサイクルを目的として、所望によりバフ研磨等の研磨により汚れを除去した後、アルカリ液中で電解処理される。アルカリ液としては炭酸ソーダー等を用いることができ、このときの電解条件としては2〜8Vの電解電圧を示すことができる。この電解により、銅およびクロムめっきがマグネシウム合金から確実に剥離され、該マグネシウム合金を再利用することが可能になる。なお、電解に先立って上記した研磨を行うことにより電解によるめっき層の剥離が一層確実になされる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を説明する。
まずAl、Zn、Mnを含有し、残部マグネシウムからなる合金素材を、トルエン含有からなる有機溶剤に2〜8分浸漬して溶剤脱脂し、さらに炭酸ソーダーからなるアルカリ性浴中に4〜10分浸漬して脱脂した。その後、リン酸からなる酸性浴中にて酸処理した後、水酸化ナトリウム浴中にてアルカリ処理した。次に無水クロム酸系の液を用いて酸化膜を除去(エッチング)し、リン酸系の液を用いて素材の表面を活性化した。
【0014】
また、他の供試材として、上記と同じ合金素材を用いて、バフ研磨を行った後、上記と同様のアルカリ性浴で脱脂を行い、上記と同じ、エッチング、活性化を行った。この工程では、機械研磨によって前記供試材に比べて活性化前の工程が簡略化され、全体の作業時間が約半分となった。なお、その表面性状は前記供試材と異なるところはなかった。
【0015】
次いで、両供試材を水酸化ナトリウムからなるアルカリ性浴中で亜鉛置換し、青化第一銅含有からなるシアン浴中で4〜6A/dm2の電解条件でシアン化浴銅めっき層を約4μm厚に形成した。さらにその上層には、ピロリン酸銅含有からなるピロリン酸浴中で、2〜6A/dm2の電解条件で厚付銅めっき層を約6μm厚に形成した。この上層には、さらに無水クロム酸含有からなる酸性浴中で、電解条件10〜40A/dm2で電解クロムめっきを行い、その表面をバフ研磨して光沢仕上げした。
【0016】
一方、従来法として、上記活性化処理を施した供試材に対し、上記と同じシアン化浴を用いて、電解条件4〜6A/dm2で4μm厚のストライク銅めっきを施し、その上層に、8〜14μm厚の電解ニッケルめっきを行った。また、比較例として、上記ストライク銅めっき上に、1〜3μm厚の電解クロムめっきを施した。しかし、この比較例ではピット、ピンホールが生じ、素材表面の腐食の不具合があった。
【0017】
上記した発明材と従来材について、JIS H 8502からなる耐食性試験を行ったところ、発明材では、以下に示すように優れた耐食性を示したのに対し、従来材では耐食性に劣っていた。
【0018】
次いで、上記発明材および従来材について、バフ研磨した後、シアンおよびキレート剤を含む炭酸ソーダーからなるアルカリ液中で、電解条件2〜8Vで電解を行い、銅めっき層およびクロムめっき層を剥離した。めっき被膜剥離後の供試材表面を電子線マイクロアナライザーとオージェ電子分光分析により分析したところ、発明材ではクロム、銅はともに検出されなかった。一方、従来材では、ニッケル、銅共に検出され素材も腐食が有り、スマット(酸化物)が除去出来ていなかった。
従って、発明材では、めっき被膜剥離後の素材表面には、めっき成分が残留しておらず、リサイクル時にも不純物の混入がほとんど無く、リサイクルを容易に行うことができる。一方、従来材では、酸化物等の混入があるため、リサイクルが容易でないことが明らかである。
【0019】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のマグネシウム合金部材のめっき方法によれば、マグネシウム合金からなる被めっき物に亜鉛置換を施した後、シアン化浴銅めっき、ピロリン酸銅めっきを順次行い、その上層にクロムめっきを行うので、表層のクロムめっき層が下層に確実に密着して形成され、耐食性および耐久性に優れためっき被膜が形成される。
【0020】
また、本発明のマグネシウム合金めっき部材によれば、合金部材表面に亜鉛置換層、ストライク銅めっき層、電解銅めっき層および硬質クロムめっき層が順次形成されているので、そのめっき層により優れた耐食性が得られるとともに被膜の耐久性にも優れている。
また、本発明のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法によれば、このめっき部材をアルカリ液中で電解して該部材表層部からめっき被膜を剥離させるので、めっき層が確実に部材表面から剥離され、しかも得られた部材の腐食が抑えられているので、容易にリサイクル化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示す工程図である。
【図2】同じく他の実施形態を示す工程図である。
Claims (4)
- マグネシウム合金からなる被めっき物に亜鉛置換を施した後、シアン化浴銅めっき、ピロリン酸銅めっきを順次行い、その上層にクロムめっきを行うことを特徴とするマグネシウム合金部材のめっき方法
- 合金部材表面に亜鉛置換層、ストライク銅めっき層、電解銅めっき層および硬質クロムめっき層が順次形成されていることを特徴とするマグネシウム合金めっき部材
- 請求項2記載のマグネシウム合金めっき部材をアルカリ液中で電解して該部材表層部からめっき被膜を剥離させることを特徴とするマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法
- 電解の前処理として機械的な研磨工程を含むことを特徴とする請求項3記載のマグネシウム合金めっき部材のめっき剥離方法
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JP2007227906A (ja) * | 2006-01-25 | 2007-09-06 | Toray Ind Inc | 導電性基板およびその製造方法 |
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1999
- 1999-01-11 JP JP00453899A patent/JP3604572B2/ja not_active Expired - Fee Related
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