JP3604051B2 - 低密度ガラス繊維濾紙及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば全血から血球を分離できるガラス繊維濾紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
血液中の構成成分例えば代謝産物、蛋白質、脂質、電解質、酵素、抗原、抗体などの種類や濃度の測定は通常全血を遠心分離して得られる血漿または血清を検体として行われている。遠心分離による全血からの血漿の分離は、少量から大量の血液まで適当な規模の遠心機を選べば、成分の回収を伴わずに一定の品質の血漿を回収できるという利点はあるが、遠心機を必要とすること、1回の分離操作に少なくとも5分〜10分はかかること、分離後遠心チューブからの血漿の採取の細心の注意が必要なことなどの問題がある。そこで、濾過により全血から血漿を分離する方法が検討されてきた。
【0003】
一方濾過膜を用いた全血からの血漿分離・回収方法としては、種々の技術が提案されており、中でもガラス繊維濾紙と多孔質膜とを積層して用いる方法が優れている。この時用いられるガラス繊維濾紙としては、ガラス繊維の太さが0.2〜5μmであり且つ、密度が0.1〜0.5の範囲のものが使われてきた(特開昭57−53661号公報、特開昭61−38608号公報等)。現在までの製造技術では、上記の範囲以外の、特に密度が0.1未満のガラス繊維濾紙をつくることはできず、その特性も知られていなかった。特公平5−52463には、ガラス繊維をカラム等に充填して用いる方法が開示されているが、単独での裁断や加工が可能なシート状の低密度のガラス繊維濾紙あるいはその製造方法を開示するものではない。また、カラムに充填したガラス繊維の塊の密度以外の特性と濾過特性との相関についても何等考察されていない。
【0004】
濾過による全血からの血漿の分離・回収で特に問題となるのは高いヘマトクリット(Hct)値を持つ血液の濾過である。これらの血液中には濾過・除去される対象となる赤血球が多量に含まれているので、濾過膜内で赤血球の破壊(溶血)が起こったり目詰まりを起こしたりし易い。現実問題として、Hct値が50%を超える血液の濾過については従来技術では対処しきれない状況にあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、単独での裁断や加工が可能な、低密度で透水速度及び吸水量が大きいシート状のガラス繊維濾紙及びその製造方法を提供することにある。本発明の他の課題は、Hct値の高い全血からでも血漿の分離・回収が可能な血液濾過器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、既存の製造法によって作られたガラス繊維濾紙を処理することにより、低密度化し、同時に透水速度及び吸水量を増大させることが可能なことを見出した。更に、こうして得られたガラス繊維濾紙を用いて全血を濾過することにより分離・回収される血漿の量が増加することを見出した。血漿の分離・回収の効率は、特に高いHct値を持つ全血で効果が大きいことが判った。ガラス繊維濾紙の密度を下げ、かつその中の空隙を大きくすることにより、Hctの高い血液であっても目詰まりを起こしにくくなり、結果として分離・回収される血漿の量を著しく増加させることができた。
【0007】
すなわち、本発明は、見掛密度0.02〜0.095g/cm3、透水速度5〜100mL/sec・cm3かつ吸水量70〜5000g/m2であるガラス繊維濾紙と、
ガラス繊維濾紙に剪断力を付与し、次いでこの剪断力から開放することを特徴とするガラス繊維濾紙の単位重量当たりの吸水量が上記剪断力の付与前より少なくとも10%増加したガラス繊維濾紙の製造方法に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のガラス繊維濾紙は市販のガラス繊維濾紙を処理することによって製造することができる。換言すれば市販のガラス繊維濾紙の製造工程に本発明の処理工程を組み込むことによって製造することができる。この原料であるガラス繊維濾紙は通常平均直径0.1〜5μmのガラス繊維からなっており、見掛密度0.1〜0.2g/cm程度、好ましくは0.1〜0.2g/cm程度で濾紙厚0.6〜3mm程度、好ましくは0.8〜2mm程度のものである。ガラス繊維は濾紙はガラス繊維が単に絡みあっただけの構造のものでもよく、絡みあった部分が水ガラスやポリマー等で接着固定されたものであってもよい。
【0009】
剪断力の付与は、しごき、もみ、屈曲等により行なえばよい。屈曲は例えばエンボスロールの通過等によって行なうことができる。屈曲は要は目的の吸水量の上昇等が得られるように行なえばよく、回数は1回以上であり屈曲角度(濾紙平面に対する角度)は15度以上である。剪断力は全面にわたって付与することが望ましい。
【0010】
この剪断力の付与は熱水あるいは有機溶剤中で行なうことによって本発明の効果を高めることができる。熱水の温度は50〜100℃が適当であり、70〜90℃が好ましい。有機溶剤は親水性のものがよく、例えばC〜Cのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等が適当である。有機溶剤を加熱して使用するとさらに効果が高まる。好ましい温度は50℃〜沸点の範囲である。
【0011】
剪断力からの解放は剪断力の付加をやめればよい。
【0012】
上記の剪断力の付与によって単位体積当りの吸水量を少なくとも10%、好ましくは20〜200%、特に好ましくは30〜100%向上させる。
【0013】
本発明のガラス繊維濾紙は上記の剪断力を付与する処理方法によって得ることができる。
【0014】
ガラス繊維の好ましい平均直径は0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.2〜3μmである。
【0015】
また、ガラス繊維濾紙の見掛密度は0.02〜0.09g/cm、好ましくは0.05〜0.08g/cmである。密度が低すぎると強度が弱くなるので、取り扱いが難しくなる。密度が高くなると濾過特性が悪くなる。
【0016】
測定方法:水平に置いたガラス繊維濾紙を一定面積に打ち抜いて、重量、面積、膜厚(無荷重状態)を測定し、単位体積当りの重量を見掛密度とした。膜厚の測定精度を上げる為に5枚重ねて測定した。
【0017】
単位体積当りの透水速度は0.5〜100mL/sec、好ましくは1〜50mL/sec・cmのものが適当である。透水速度が低すぎると濾過抵抗が増大し濾過の過程で血球が壊れる(溶血する)。透水速度が高いこと自身は問題ないが、空隙が大きすぎると血球濾過がうまくいかなくなる。
【0018】
透水速度は、入口を容積60mLの注射筒に接続し垂直に保持した濾過ユニット中に一定面積(直径24mmの円板)のガラス繊維濾紙を密閉保持し、一定量の水(60mL)を注射筒に加えて出口を開放して水を膜を通して流下させた時の50mLの水が透過するに要する時間から単位体積(cm)あたりの濾過量を算出し速度で表したものであり、mL/sec・cm等の単位を持つ。
【0019】
吸水量はガラス繊維濾紙の空隙体積に相当するもので、単位面積当たりの値として求める。測定は、ガラス繊維濾紙を直径20mmの円板に打ち抜き、乾燥時の重量を測定した後、十分量の水を入れた100mLのビーカー中に30秒間放置したのち、ピンセットでつまみ上げ、5秒間空中に保持して滴り落ちる付着水を滴下除去してから再度重量を測定して、吸水後の重量と乾燥重量との差から吸水量を求めた。この値から1m当たりの吸水重量(g)を算出した。本発明においては、吸水量が700g/m〜5000g/m、好ましくは900g/m〜3000g/mのガラス繊維濾紙が用いられる。
【0020】
ところで、同一の濾過膜を使用して全血から血漿を分離・回収する場合、血漿の回収量は濾過に使用する膜の面積に比例する。実用上の観点からは直径約20mm以下であることが望ましい。回収する血漿量は測定しようとする項目の数と測定器機に依存するが、最少の場合でも1項目当たり10μL必要であるので、5項目を測定しようとする場合には最低50μLは必要であり、更に取扱いの際のロスを考慮すれば、70μL、好ましくは100μLの血漿が必要となる。血液成分の測定を行う場合常に問題となるのはHctが50%以上の血液の存在である。このような高Hctの血液検体は通常測定では数%以下の出現頻度に過ぎないが、確実に存在する。特に新生児検体では過半数を占め、従来濾過法によって必要な血漿量を分離・回収することは非常に困難であった。本発明になるガラス繊維濾紙を用いると、このような高Hctの検体からも容易に血漿を分離・回収できる。
【0021】
この血液濾過特性は、上記した見掛密度、透水速度、吸水量のいずれか一つだけのパラメータとは対応しない。表1に、市販の低密度ガラス繊維濾紙を用いてHctの異なる血液を濾過した際の特性を示す。
【0022】
【表1】
Figure 0003604051
【0023】
また、Hctが45%の場合について、濾紙の単位透水速度と吸水量をパラメータとして血液濾過特性を整理した結果を図3に示す。これらから、Hctが45%の場合には、吸水量が約700g/m以上で単位透水速度が約0.7mL/sec・cm以上の条件を満たせば全て○であること、しかしHctが55%の血液の場合には全ての濾紙の濾過特性が不十分であることが判る。
【0024】
本発明のガラス繊維濾紙のみでも大部分の血球を分離・濾過することができるが、微多孔性膜を濾過の下流側に組み合わせることによって更に効率よく完全に分離することができる。
【0025】
好ましい微多孔性膜は表面を親水化されており血球分離能を有するものであり、実質的に分析値に影響を与える程には溶血することなく、全血から血球と血漿を特異的に分離するものである。この微多孔性膜は孔径がガラス繊維濾紙の保留粒子径より小さくかつ0.5μm以上、好ましくは0.5〜8μm程度、より好ましくは0.5〜4.5μm程度、特に好ましくは0.5〜3μm程度のものが適当である。また、空隙率は高いものが好ましく、具体的には、空隙率が約40%から約95%、好ましくは約50%から約95%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲のものが適当である。微多孔性膜の例としてはポリスルホン膜、弗素含有ポリマー膜等がある。
【0026】
ポリスルホンの微多孔性膜は、ポリスルホンをジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンあるいはこれらの混合溶媒等に溶解して製膜原液を作製し、これを支持体上に、又は直接凝固液中に流延し洗浄、乾燥して行うことにより製造することができる。詳細は特開昭62−27006号公報に開示されている。ポリスルホンの微多孔性膜は、そのほか特開昭56−12640号公報、特開昭56−86941号公報、特開昭56−154051号公報等のも開示されており、それらも使用することができる。
【0027】
弗素含有ポリマーの微多孔性膜としては、特表昭63−501594(WO 87/02267)に記載のポリテトラフルオロエチレンのフィブリル(微細繊維)からなる微多孔性のマトリックス膜(微多孔性層)、Gore−Tex(W.L.Gore and Associates社製)、Zitex(Norton社製)、ポアフロン(住友電工社製)などがある。その他に、US 3268872(実施例3及び4)、US 3260413(実施例3及び4)、特開昭53−92195(US 4201548)等に記載のポリテトラフルオロエチレンの微多孔性膜、US 3649505に記載のポリビニリデンフルオリドの微多孔性膜などがある。
【0028】
その他の非繊維多孔性膜としては、特公昭53−21677号、米国特許1, 421,341号等に記載されたセルロースエステル類、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテート/ブチレート、硝酸セルロースからなるブラッシュポリマー膜が好ましい。6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の微多孔性膜でもよい。その他、特公昭53−21677号、特開昭55−90859号等に記載された、ポリマー小粒子、ガラス粒子、けい藻土等が親水性または非吸水性ポリマーで結合された連続空隙をもつ多孔性膜も利用できる。
【0029】
繊維質多孔性層を構成する材料としては、濾紙、不織布、織物生地(例えば平織生地)、編物生地(例えば、トリコット編)等を用いることができる。これらのうち織物、編物等が好ましい。織物等は特開昭57−66359号に記載されたようなグロー放電処理をしてもよい。
【0030】
好ましい微多孔性膜はポリスルホン膜、酢酸セルローズ膜等であり、特に好ましいのはポリスルホン膜である。最も好ましい血液濾過材料は血液供給側からガラス繊維濾紙とポリスルホン膜をこの順に積層した積層体である。
【0031】
本発明で用いられる濾過材料は特開昭62−138756〜8号公報、特開平2−105043号公報、特開平3−16651号公報等に開示された方法に従って各層を部分的に配置された接着剤で接着して一体化することができる。
【0032】
本発明の濾過材料では、その表面のみで血球をトラップする訳ではなく、ガラス繊維濾紙の厚さ方向に浸透するに従って、初めは大きな血球成分、後には小さな血球成分と徐々に空隙構造にからめ、厚さ方向に全長にわたって血球を留め除去していく、いわゆる体積濾過作用によるものと理解される。
【0033】
濾過し得る全血の量は、ガラス繊維濾紙中に存在する空間体積と全血中の血球の体積に大きく影響される。ガラス繊維濾紙の密度が高い(粒子保持孔径が小さい)と赤血球がガラス繊維濾紙の表面近傍にトラップされるので、表面からごく浅い領域でガラス繊維濾紙中の空間が閉塞状態になってしまうことが多い。従って、それ以上の濾過が進まず、結果として濾過、回収し得る血漿量も少なくなる。この際、回収血漿量を増やそうとして更に強い条件で加圧すると、血球の破壊、すなわち溶血が起きてしまう。つまり表面濾過に近いプロセスとなり、濾紙の空間体積利用効率は低い。
【0034】
これに対し、ガラス繊維濾紙の密度を低くすると、血球は濾紙の深部(出口に近い領域)まで浸透していき血漿が通過できる空間が増すので、濾紙全体の空間体積が有効に利用され、回収される血漿の量も多くなる。
【0035】
【実施例】
実施例1
ワットマン社製ガラス繊維濾紙(GF/D、見掛密度0.11)を直径50mmの円板に打ち抜いた。GF/Dの乾燥時の厚さは1.0mmであった。蒸留水100mLをステンレス製のビーカーに入れ、ウォーターバス中で80℃に加温した。この中にガラス繊維濾紙の円板5枚を入れ、ピンセットでつまんでしごいた。ガラス繊維濾紙は徐々に膨潤し、およそ2分で厚さが3〜4倍になった。水を含んだ状態でディスクを取り出し、50mLアセトンが入ったガラスビーカー中に移し、水をアセトンで置換してから、50メッシュのナイロンネット上で送風乾燥した。乾燥の進行に伴い体積は徐々に収縮し、完全に乾燥した状態では膜厚は1.4mmになっていた。このものの見掛(無加重状態)の密度を測定したところ0.074であった。
【0036】
実施例2
実施例1と同様の操作においてワットマン社製ガラス繊維濾紙(GF/D)を熱水中でもみほぐした後、アセトンで脱水置換することなしに、直接ナイロンメッシュ上で送風乾燥した。無加重状態での膜厚は0.12mmであり、見掛密度は0.08であった。
【0037】
このもみほぐし処理前・後のガラス繊維濾紙を直径20mmの円板に打ち抜き乾燥重量を測定した。次に、各々の円板を20℃の蒸留水中に10秒間浸漬膨潤状態のままピンセットで水から取り出してしたたり落ちる水滴がなくなってから再度重量を測定し、両測定値の差からディスク1枚当りの吸水量と単位乾燥重量当りの吸水量を求め、処理後の吸水量の増加率を算出した。結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0003604051
【0039】
この結果から分かるように、浸漬時間を10秒から33秒に変化させると吸水量は僅かに増える程度であるが、本発明方法に従って処理すると吸水量は処理前の1.4〜1.6と顕著に増加する。また、熱水処理したのち電子レンジ中で乾燥した場合には吸水量は1.8〜1.9倍に増加することが分かった。
【0040】
実施例3
ワットマン社製ガラス繊維濾紙(GF/D)を直径50mmの円板に打ち抜いた。直径10mm、長さ100mmの表面に深さ1mm、直径4mmの円状の凹凸を有するステンレス製の円棒をつくった。2本の棒の間にガラス濾紙をはさみ軽く押しつけながら下の棒を30rpmの回転速度で回転させつつ、このものを層間剥離を生じないようにしながら、棒の間を2回通過させて扱いた。ガラス繊維濾紙はややほぐれた状態になった。見掛密度(無加重状態)を測定したところ0.082であった。
【0041】
実施例4
実施例1の熱水の代わりに60℃のイソプロパノールを用いた。約2分でガラス繊維濾紙の厚みは約3倍に膨潤した。このものを実施例2と同様にして、室温で送風乾燥したところ見掛密度は0.066であった。
【0042】
実施例5
アドバンテック製ガラス繊維濾紙(GA−100、見掛密度0.10)を巾3mm、長さ100mmの直方形に切った。
【0043】
モーターで駆動されている直径10mmの2本のゴムロールが接触しながら100rpmで回転するしごき装置を製作した。ローラーの間に上記のGA−100をはさみ込んでローラーを通し直後に120度の角度に誘導し、巻き上げた。ローラーでのしごき処理を表裏をかえて各2回づつ合計4回行った。しなやかな感じの濾紙が得られた。ガラス繊維濾紙はややほぐれて、ふくらんだ状態になった。見掛密度(無加重状態)を測定したところ0.082であった。
【0044】
実施例6
実施例5の2本のローラーでしごく代わりに手先で約1分間もみほぐした。見掛密度を測ったところ0.07であった。このものを実施例2と同様にして、直径20mmの円板に打ち抜いて乾燥状態および水に浸漬して濾紙の吸水重量を測った。元の未処理濾紙に比べて吸水量が約180%に増加した。
【0045】
実施例7
ガラス繊維濾紙(アドバンテック GA−100、直径47mm)の端から約1cmの部分を両手の指先で摘んで、上下に皺ができるように1個所につき1〜2回づつもみほぐした。このような処理を濾紙の全面について均一に行った。濾紙の破壊や毛羽立ちは起こらなかった。処理前には薄い板状であったものが厚みが増加し、可撓性に富んだフェルト状の円板になった。このままでは凹凸が残っていたが、平滑な平面上に置いて20gの平板を乗せたところ、容易に平らになった。もみほぐし処理前後において厚み、面積及び重量を測定し、これらの値から見掛密度を求めた。面積は処理前後で殆ど変わらなかったが、厚みは約1.7倍に増加し、見掛密度は0.067になっていた。
【0046】
このような操作と測定をガラス繊維濾紙5枚について繰り返したところ、同様の結果を得た。
【0047】
実施例8
実施例7で使用したアドバンテック GA−100に代えて、ワットマンGF/Dを用いた以外は実施例7と同様の操作及び測定を行ったところ、厚さは約1.4倍になり見掛密度は0.078になっていた。
【0048】
実施例9
ガラス繊維濾紙のメーカー7社から入手した市販品14種について実施例7と同様のもみほぐし処理を行った。それぞれ1枚を実施例2と同様の方法で水に浸漬し、処理前後の吸水量の比から水中での膨潤率を求めた。結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
Figure 0003604051
【0050】
テストした14種類のガラス繊維濾紙のうち、吸水量増加率が1.17のもの1種類と2.32のもの1種類をのぞき、その他は全て1.5〜1.8倍と非常に狭い範囲の値を示した。このことを本方式がガラス繊維濾紙の特異的な物性の1つの状態から他の状態に変化させる物理処理を行っていることを示している。
【0051】
実施例10
実施例3の棒でしごく代わりに2本の先の丸いプラスチック製のピンセットでガラス繊維濾紙を摘まみ約1分間左右にもみほぐした。
【0052】
見掛比重は0.084であった。ワットマンGF/Dに代えて、アドバンテックGA−100、GA−200、GB−100R、GD−120、ザルトリウス13430、ゲルマンPN61631、ミリポアAP−400、HD BG08025についても同様に処理した。見掛比重は、それぞれ処理前の0.9〜0.7になった。
【0053】
実施例11
実施例7〜10で作製したガラス繊維濾紙および処理をしなかったGF/Dをそれぞれ直径20mmに打ち抜き、重量を測定した。20℃の蒸留水50mLを入れたガラスビーカーに、上記濾紙円板を1枚づつピンセットで同様の実験を各条件についてそれぞれ5回づつ繰り返し平均した。結果は、表3とほぼ同じであり処理による吸水量の増加率は1.5〜1.8倍の範囲に入っていた。
【0054】
何も処理しなかった、GF/Dに比べて、処理したサンプルでは膨潤速度、膨潤率ともに1.2〜2.5倍程度大きくなった。このことは血漿濾過の過程で処理ガラス濾紙がより速く、多くの血液を取り込み、赤血球による濾紙の目詰まりを起こしにくくなることを示している。
【0055】
実施例12
図1,2に示す血液濾過ユニットを作製した。この濾過ユニットはいずれもアクリル樹脂製のフィルターホルダー1、中蓋2、及び上蓋3よりなっている。
【0056】
フィルターホルダー1は内径21mm、深さ5mmの円筒状のフィルター収容部5を有しており、その内部に下からいずれも直径20mmの内板状をした3枚のガラス繊維濾紙6、1枚のセルロース濾紙7及び1枚のポリスルホン膜8がこの順に収容されている。上端開口部には中央に直径6mmの円穴を有するアクリルシートが流出面積規制部材9として接着されている。フィルターホルダー1の底部中央には血液吸引口10が下方に突出し、そこにはマイクロピペット11が被嵌されている。また、底部周縁には周壁が垂下しその内周面には血液収容管4の開口フランジ13を掛止する周溝12が周溝12の下部及び血液収容管4の口部フランジ13にはいずれも切欠が設けられており、血液収容管4を90度回すと血液収容管4を下方に抜き出せるようになっている。
【0057】
中蓋2の下部に段差をもって拡径され、この大径部内周面とフィルターホルダー1の上部外周面とはそれぞれら螺条が刻まれていて両者は螺合している。中蓋2の中央部には濾過されてきた血漿を流出させる血漿流出口14が軸方向に形成されている。この流出口14の上方には血漿の上方への噴出を阻止する邪魔抜15がひさし状にせり出している。中蓋2の上部には楕円形の血漿受槽16が形成されている。
【0058】
上蓋3の下部内周面と中蓋2の上部外周面にはそれぞれ螺条が刻まれていて両者は螺合している。上蓋3の上面中央には空気吸引口17が形成され、そこにゴム球の如き空気吸引器具が取り付けられるようになっている。
【0059】
ガラス繊維濾紙にはワットマンGF/Dを、セルロース濾紙にはサイトセップ社製サイトセップを、そしてポリスルホン膜には富士写真フイルム社製PS−2を用い、健常者の全血(Hct42%)約1.5mLを血液収容管4に入れて濾過を行なったところ、10秒内で全く溶血のない血漿約180μLを濾別回収できた。一方、本発明の処理を行なわないガラス繊維濾紙(ワットマンGF/D)を用いて同様に濾過試験を行なったところ130μLの血漿が得られた。
【0060】
同様にしてHct45%の健常者全血を濾過したところ、表4のような結果が得られた。
【0061】
【表4】
Figure 0003604051
【0062】
実施例13
実施例12と同様の実験において、全血1.5mLに1MのLiSO水溶液30μLを混合したものを検体に用いた。溶血の全くない血漿270μLが回収された。
【0063】
一方、本法処理を行わないガラス繊維濾紙を用いたときには、溶血のできない血漿は190μLしか回収できなかった。
【0064】
実施例14
〔低密度ガラス繊維濾紙の効果〕
実施例12と同様の実験において、本法による低密度化処理の有無による回収血漿量を比較した。低密度化処理は直径125mmのワットマン社製GF/Dを過度の力を加えることなく、直径約50mmのボール状に丸めた。約5秒間もみしごいてから、広げ直し、平面性を回復するようにゴムロールで軽く押さえつけた。こうした処理をした後の膜厚は1.3mm、見掛密度は0.077であった。
【0065】
このものを20mmの円板に打ち抜いた。比較として、未処理のGF/Dを同じ大きさに打ち抜いた。実施例12と同様の用具で血漿分離を行った。その際、全血に予め血液濾過促進効果のある20mMのLiSOを加えた場合(+HL)と加えない場合(−HL)について分離回収された血漿量を比較した。結果を表5に示す。
【0066】
【表5】
Figure 0003604051
【0067】
いずれの濾過においても溶血のないきれいな血漿が濾過、回収された。低密度処理により回収血漿量は1.2〜6倍に増えた。
【0068】
この結果から分かるようにHctの高い全血ほど、低密度化処理の効果が大きいことが分かる。特にHct60%の血液では未処理品では殆ど血漿が回収できないのに処理品では5項目以上測定可能な量の血漿を回収できることが分かった。
【0069】
実施例15
ワットマン社製ガラス繊維濾紙GF/D(厚さ:1.12mm)を、巾100mm、長さ300mmの帯状に切り取り、直径30mm、高さ500mmのプラスチック製の円筒に巻き付けた。円筒を立てた状態に保ちながら内径35mm、外径60mm、高さ30mmのアルミニウム製の円筒に入れ巻き付けた濾紙を上から垂直に押し下げて、ガラス繊維濾紙の巾が約50mmになるようにして約10秒間圧縮した。
【0070】
ガラス繊維濾紙を取り出して巻きほぐしてから、平板上で軽くローラーをかけて水平にしてから、巾を測ったところ95mmになっていた。厚さは1.73mmであり、密度は0.0675であった。
【0071】
このように処理したガラス繊維濾紙を直径20mmの円板に打ち抜いて、蒸留水の中に13秒間浸漬した。浸漬前後に重量を測定し、円板1枚当たりの吸水量を算出したところ0.5279gであった。一方処理前の濾紙について同様の処理をして、吸水量を測定したところ0.3560gであった。吸水量は本発明方法の処理により約1.4倍に上昇していることが分かった。
【0072】
実施例16
実施例8で作製した濾紙(GF/D−Xとする。)および処理前の濾紙(GF/D)2枚を実施例12と同様の濾過ユニットにセットし、実施例12と同様の方法で全血を濾過した。結果は、表6の通りであった。
【0073】
本発明方法によりHL剤のない全血および20mMのLiSO全血とも血漿回収量が30%〜50%増加することが分かった。
【0074】
【表6】
Figure 0003604051
【0075】
【発明の効果】
本発明のガラス繊維濾紙は血液濾過性が改善され、血球を全く含まない血漿を高い分離率で取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で使用された血液濾過ユニットの側面断面図である。
【図2】上記血液濾過ユニットの中蓋の平面図である。
【図3】市販のガラス繊維濾紙を用いて、Hct値45%の血液を濾過したときの濾過特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1……フィルターホルダー
2……中蓋
3……上蓋
4……血液収容管
5……フィルター収容部
6……ガラス繊維濾紙
7……セルロース濾紙
8……ポリスルホン膜
9……流出面積規制部材
10…血液吸引口
11…マイクロピペット
12…周溝
13…口部フランジ
14…血漿流出口
15…邪魔板
16…血漿受槽
17…空気吸引口

Claims (6)

  1. 見掛密度0.02〜0.095g/cm、透水速度5〜100mL/sec・cmかつ吸水量70〜5000g/mであるガラス繊維濾紙
  2. 血球分離能を有する請求項1記載のガラス繊維濾紙
  3. ガラス繊維濾紙に剪断力を付与し、次いでこの剪断力から開放することを特徴とするガラス繊維濾紙の単位重量当たりの吸水量が上記剪断力の付与前より少なくとも10%増加したガラス繊維濾紙の製造方法
  4. 剪断力の付与を50〜100℃の熱水中で行なう請求項3記載の製造方法
  5. 剪断力の付与を有機溶剤中で行なう請求項3記載の製造方法
  6. 請求項2記載のガラス繊維濾紙又は請求項3記載の製造方法で製造されたガラス繊維濾紙を装着した血液濾過器
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