JP3603815B2 - 回転電機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷却機構をもった回転電機に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転電機(モータ、または発電機、またはモータ兼発電機)において、ステータを効率良く冷却するために、ステータのスロット(ステータコイルが収装される溝部)の内部を冷媒通路として冷媒(たとえば冷却用オイル)を流し、発熱部位であるステータコイルやステータを直接冷却できるようにしたものが特開平4−364343号公報に提案されている。
【0003】
この特開平4−364343号公報の回転電機では、ステータ内周側とスロット内部に金型を配置し、ステ一夕コアと金型によって画成された空間にエンジニアプラスチック材料を射出・充填して、これを硬化させることでスロット開口部を閉塞し、内部に冷媒通路を形成している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、ステータコアと樹脂材料の密着性が悪いと、冷媒通路の水密性が悪化し、その合わせ目から冷媒が漏れ出ることがある。冷媒がステータ内周面からロータ側に漏れ出ると、ロータ回転時のフリクションが大きくなり、回転電機の回転効率が低下してしまう。
【0005】
特開平5−328656号公報によると、ステータコアと樹脂材料を同じ線膨張率の材料とすることにより、熱収縮の影響を無くし、接合面の剥離を防ぐようしたものも提案されているが、ステータコアと樹脂材料との結合性が悪く、接合面に応力が作用すると、剥離が生じ易いという問題がある。
【0006】
本発明はこのような問題を解決することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、ステータコアのスロットにコイルを収容し、ステータ内周面に開口するスロットの開口部を閉塞してスロット内部に冷媒通路を形成した回転電機において、前記ステータの端部にステータコアを構成する磁性材と異なる材質のエンドプレートを配置し、このエンドプレートの外側を通して前記コイルを巻き回してエンドプレートをステータコアと一体的に結合し、ステータ端部からステータ内周面に沿って突出する筒部と前記エンドプレートとの接合面に垂直な方向への剥離を防止するようにエンドプレートの外端面にステータ内周に略沿って係合部を設け、前記筒部を前記エンドプレートの係合部と一体化するように樹脂成型により形成し、この筒部の外周側に前記冷媒通路と連通する冷媒を導く環状空間を区画形成する。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記エンドプレートは少なくともステータコアよりも前記樹脂材との密着性が高い非導電性部材で形成される。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記係合部はエンドプレートにステータ内周に略沿って形成した段部である。
【0010】
第4の発明は、第1または第2の発明において、前記係合部はエンドプレートにステータ内周に略沿って形成した溝部である。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、前記筒部は前記スロットの開口部を閉塞するプレートの外端面に形成した係合部とも一体的に連結されている。
【0012】
【発明の作用および効果】
第1の発明において、ステータコアの端部に設けられる筒部は、エンドプレートと一体的に結合するように樹脂成型されるが、このときエンドプレートをステータコアを形成する部材、すなわち、電磁鋼板とは異なった部材とすることで、相互の接合面の密着性がよくなり、かつ筒部とエンドプレートとの接合面に垂直な方向への剥離を防止するようにエンドプレートに形成した係合部と樹脂成型される筒部が一体的に結合するので、熱収縮や振動などが作用しても、エンドプレートと筒部との間で剥離を起こしにくく、この結果、ステータコアのスロット内部の冷媒通路に冷媒を導くため筒部の外周側に設けた環状空間から、ステータ内周側への冷媒の漏れ出しを確実に阻止することができる。
【0013】
第2の発明では、とくに樹脂成型される筒部との密着性のよいエンドプレートとしたので、さらに接合部の密着性が高められる。
【0014】
第3、第4の発明では、エンドプレートに設けた段部や溝部により筒部との結合力がさらに高められ、高い応力や振動などに対しても耐久性を維持できる。
【0015】
第5の発明では、スロット開口部を閉塞して冷媒通路を画成するためのプレートと筒部とを一体的に樹脂成型するときの結合強度が高まり、冷媒通路等からの冷媒の漏れ出しを一層確実に阻止できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面にしたがって本発明の実施の形態を説明する。
【0017】
図1、図2に回転電機(モータ、または発電機、またはモータ兼発電機)の全体構成を示す。
【0018】
図1において、回転電機のケース1は、円筒板1Aと、この円筒板1Aの軸方向両端の開口を閉塞する側板1B、1Cからなる。
【0019】
ケース1内には、円柱形のロータ2が収容される。ロータ2は、その回転軸2Aの両端がそれぞれベアリング3を介して側板1B、1Cに支持され、回転軸2Aを中心に回転自在となっている。
【0020】
円筒板1Aの内周面には、円筒形のステータ5が、ロータ2の外周を取り囲むように配置される。ステータ5の内周面とロータ2の外周面との間には、所定の間隙が設けられている。
【0021】
ステータ5の軸方向の両端とケース1の内側との間には、環状空間からなる冷却ジャケット10、11が形成される。冷却ジャケット10には円筒板1Aを貫通するオイル供給口16を介して、冷却用オイルが供給される。この冷却オイルは、ステータ5内に形成された冷媒通路29(図2参照)を流通して、反対側の冷却ジャケット11へ導かれる。この冷却オイルは、冷却ジャケット11に形成されて円筒板1Aを貫通するオイル排出口17から外部へ排出される。
【0022】
図2に示すように、ステータ5は、ステータコア20と、このステータコア20の周囲に巻装されるコイル30とから構成される。
【0023】
スタータコア20は、所定個数(本実施の形態では12個)の分割コア21を、円環状に連ねて構成される(分割コア構造)。各分割コア21は、略T字型の電磁鋼板を、ロータ2の回転軸2A方向(図2の紙面に垂直方向)に所定枚数積層して形成される。
【0024】
ステータコア20(分割コア21)は、ケース1の円筒板1A内周面に沿うリング状のバックコア部22と、このバックコア部22からステータコア20の内周側半径方向に突出するティース部23とを備える(ただし図3参照)。
【0025】
隣接するティース部23の間の凹部(溝部)は、スロット25となる。コイル30は、各ティース部23に集中巻きされることにより、スロット25内部に収容された状態となっている。
【0026】
このスロット25を前記冷却ジャケット10からの冷却用のオイルを通す冷媒通路29とするために、スロット25のロータ2の外周に面した開口部27には、プレート40が装着される(ただし図7参照)。なお、プレート40はティース部23の先端付近の両側面に設けた、軸方向に延びる突条部28Aと28Bとの間に挿入保持され、後述するように、その外側にはステータ内周面と同一面となるように樹脂材料が充填され、樹脂層50が形成され、冷媒通路29が密封される。
【0027】
次に前記冷却ジャケット10と11を形成するために、ステータ5の両端からその内周面の延長上に円筒部14が設けられ、この円筒部14はケース1の側板1B、1Cまで達して、ケース1の円筒板1Aの内周とステータ5の両端との間に、環状の空間を区画形成している。
【0028】
円筒部14は樹脂材料の成型加工によりステータ5と一体的に形成されるのであるが、円筒部14とステータ5との密着性を高め、その接合面からの冷却用オイルの漏れを防ぐために、次のような構成が採用されている。
【0029】
図3から図10を参照して、この構成を詳しく説明する。
【0030】
図3のステータコア20のティース部23と同幅の図4に示すような、エンドプレート31が、図5に示すように、ステータ5の軸方向の両端に密着して配置され、コイル30はこのエンドプレート31の外側からステータコア20に巻き回される。これにより、エンドプレート31は積層された電磁鋼板よりなるステータコア20と一体的に結合される。
【0031】
図6、図7に示すように、このようにしてコイル30を巻装したステータコア20の各ティース部23の両側には、前記したプレート40を装着してスロット25の開口部27を閉塞する。
【0032】
次いで、図8のように、ステータ5の内周に密接する円柱状の内金型61を貫通配置し、またステータ5の両端には内金型61の外側に位置して円筒型の外金型62を配置し、これら金型61と62の間に所定の間隙をもたせて環状空間Aを区画形成する。また、同時に、ステータコア20のスロット25に配置した前記プレート40が円筒型の外金型62と、軸方向から見て、完全に重複するように設定し、プレート40の外側と内金型61との間に区画形成される軸方向に延びる空間Bを、外金型62の内側の前記環状空間Aとのみ連通するようにさせる。
【0033】
このように金型61と62をセットした状態で、この金型空間に樹脂材料を充填することにより、図9に示すように、ステータ5の両端に円筒部14が、またスロット開口部27にはステータ内周面に一致する樹脂層50が、互いに一体化した状態で樹脂成型により形成される。
【0034】
このとき、ステータコア20の両端面に配置したエンドプレート31と円筒部14の接合面の密着性を高めるため、エンドプレート31は少なくともステータコア20を構成する電磁鋼板よりも樹脂材料との密着性が良い非導電性の部材で構成される。
【0035】
そして、また図4あるいは図5にも示すように、エンドプレート31の端面には、円筒部14との接合面について、ステータ内周に沿って平行に延びる係合部としての、段部32が形成されている。
【0036】
これにより樹脂モールドされる円筒部14を構成する樹脂材料とエンドプレート31との結合性を高めている。
【0037】
なお、この段部32に代えて、図10に示すように、ステータ内周に沿って平行に延びる溝部33を形成し、この溝部33に円筒部14を構成する樹脂材料が入り込み、図9において、円筒部14とエンドプレート31の接合面に対して垂直方向に応力がかかったときとの剥離を防ぐようにしてもよい。
【0038】
また、この係合部はエンドプレート31だけではなく、図7に示すように、スロット開口部27に装着するプレート40の端面にも、その延長上に位置するように段部42などとして形成し、エンドプレート31、プレート40の端面に円筒部14を樹脂モールドにより形成するときに、これらと一体的に結合させ、その結合強度を高めるようにしてもよい。
【0039】
したがって、このようにして形成された、ステータ5の両端からステータ内周面とその内周面が一致するように延び出す円筒部14は、ステータ両端のエンドプレート31との接合面の密着性及び結合強度が高まり、また、ステータ内周面にスロット開口部27を埋める樹脂層50とも一体に結合される。
【0040】
したがって、エンドプレート31と円筒部14の接合面に垂直に大きな応力や振動力が作用しても、互いに剥離することなく常に高い結着力を維持することが可能となる。
【0041】
これらにより、ケース1の円筒板1Aの内周と、ステータ両端と、円筒部14の外周との間に形成される冷却ジャケット10、11の高い水密性を維持し、かつスロット25に沿って形成される冷媒通路29の水密性も同様に維持することができ、この結果、両冷却ジャケット10と11と、これらの間を接続する冷媒通路29とを流れるステータ5の冷却用オイルが、ステータコア20と円筒部14、樹脂層50との接合面から漏れ出ることを確実に防止できる。
【0042】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内において、さまざまな変更が可能であることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における回転電機を示す断面図である。
【図2】同じく図1のA−A断面を示す断面図である。
【図3】ステータコアの正面図である。
【図4】エンドプレートの正面図である。
【図5】ステータコアに巻線を施した状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図6】同じくステータコアをケースに装着した状態を示す一部の断面図である。
【図7】同じくステータコアにプレートを装着した状態を示す一部の断面図である。
【図8】同じくステータコアに金型をセットした状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図9】同じく樹脂成型後のステータコアの状態を示すもので、(A)は正面図、(B)は側面図である。
【図10】本発明の他の実施形態におけるエンドプレートを示すもので、(A)は正面図、(B)はそのB−B断面を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ケース、
1A 円筒板
1B 側板
1C 側板
5 ステータ
14 円筒部
10 冷却ジャケット
11 冷却ジャケット
20 ステータコア
23 ティース部
25 スロット
29 冷媒通路
30 コイル
31 エンドプレート
32 段部
33 溝部
40 プレート
50 樹脂層
Claims (5)
- ステータコアのスロットにコイルを収容し、
ステータ内周面に開口するスロットの開口部を閉塞してスロット内部に冷媒通路を形成した回転電機において、
前記ステータの端部にステータコアを構成する磁性材と異なる材質のエンドプレートを配置し、このエンドプレートの外側を通して前記コイルを巻き回してエンドプレートをステータコアと一体的に結合し、ステータ端部からステータ内周面に沿って突出する筒部と前記エンドプレートとの接合面に垂直な方向への剥離を防止するようにエンドプレートの外端面にステータ内周に略沿って係合部を設け、前記筒部を前記エンドプレートの係合部と一体化するように樹脂成型により形成し、この筒部の外周側に前記冷媒通路と連通する冷媒を導く環状空間を区画形成したことを特徴とする回転電機。 - 前記エンドプレートは少なくともステータコアよりも前記樹脂材との密着性が高い非導電性部材で形成される請求項1に記載の回転電機。
- 前記係合部はエンドプレートにステータ内周に略沿って形成した段部である請求項1または2に記載の回転電機。
- 前記係合部はエンドプレートにステータ内周に略沿って形成した溝部である請求項1または2に記載の回転電機。
- 前記筒部は前記スロットの開口部を閉塞するプレートの外端面に形成した係合部とも一体的に連結されている請求項1に記載の回転電機。
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