JP3823844B2 - 回転電機およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は回転電機のステータおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の回転電機において、回転電機を効率よく冷却するために、ステータのスロット(コイルが収装される溝部)の内部を冷却通路として利用してコイルを直接冷却できるようにしたものが、本出願人より特願2000−379791として提案されている。
【0003】
この回転電機では、スロット開口部に配置されたプレートの外側面(ロータ側面)上に樹脂を充填することにより樹脂層を形成する。樹脂層を形成するための方を取り除く際には電磁鋼板が捲れ上がったりステータが傷ついたりするが、プレートは樹脂層の形成後に取り除く必要がないため、この不具合を避けることができる。また、プレートの上部にストッパー部を設けることにより、樹脂の漏れを防止するとともに、プレートの移動を制限できるため寸法管理、製造工程が簡単になる。
【0004】
【発明が解決しようとしている問題点】
しかしながらこのようなステータにおいて、冷却通路を閉塞するための樹脂を充填する際に、プレートとストッパー部との密着が良好に達せられずにスロット内部に樹脂が漏れることがある。これにより、冷却に必要な冷却液を流す通路面積を確保することができなくなりコイルの冷却効率が低下する。
【0005】
そこで本発明は、樹脂を充填する際に、スロット内部に形成した冷却通路の通路面積を確保できる回転電機を提供することを目的とする。
【0006】
【問題点を解決するための手段】
上記の問題を解決するため、請求項1にかかる発明では、スロットの開口部付近にプレートを配置し、ティースの先端面に当接させて樹脂充填用の金型を配置した樹脂充填前の状態で、プレートの内側面とストッパー部との間に形成される非充填空間の断面積よりもプレートの外側面と金型との間に形成される充填空間の断面積が大きくなるようプレートとティース先端の形状を設定する構成とした。
【0007】
かかる構成によれば、非充填空間よりも先に充填空間の方へ樹脂を流し込むことが可能となる。充填空間へ流入した樹脂はプレートをスロット内側方向へ押圧するので、充填が進むにつれて非充填空間は小さくなり、やがてプレートの内側面がストッパー部に密着する。以上の作用により、スロット内部へ樹脂を漏らすことなく樹脂充填層を形成することができる。
【0008】
また、請求項6にかかる発明では、ティースの先端面に当接させて樹脂充填用の金型を配置し、この金型とティース先端付近に設けたストッパー部との間にプレートを配置した後、金型の内部に形成した樹脂供給通路を介してプレートの外側面側より樹脂を充填して樹脂充填層を形成する製造方法とした。
【0009】
かかる方法によれば、非充填空間と充填空間の断面積の大小関係等に関係なく、必ず充填空間の方へ先に樹脂が流れ込むことが可能となり、プレートとティース先端の形状の設計自由度が大きくなる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に従って本発明の第一の実施形態を説明する。ここでは、回転電機を永久磁石式同期電動機とし、電動機の縦断面を図1、横断面を図2に示す。
【0011】
図1において、回転電機のケース1は、円筒板1Aとこの円筒板1Aの軸方向両端の開口を閉塞する側板1B、1Cから形成する。
【0012】
ケース1内に周方向に均等に永久磁石6が配置された円柱形のロータ2を収容する。ロータ2は、その回転軸2Aの両端をそれぞれベアリング3を介して側板1B、1Cに支持することにより、回転軸2Aを中心に回転自在となっている。
【0013】
円筒板1Aの内周面に、ロータ2の外周を取り囲むように円筒形のステータ5を配置する。ステータ5の内周面とロータ2の外周面との間には、ロータ2が回転するための所定のエアギャップ7を設ける。
【0014】
ケース1内部に配置されたステータ5の軸方向の両端に、環状の冷却ジャケット10、11を形成する。冷却ジャケット10には円筒板1Aを貫通するオイル供給口16を介して、冷却用オイルが供給される。この冷却オイルは、ステータ5内に形成された冷却通路29(図2参照)を流れて反対側の冷却ジャケット11へ導かれ、冷却ジャケット11に形成した円筒板1Aを貫通するオイル排出口17から外部へ排出される。前記冷却ジャケット10と11を形成するために、ステータ5の両端からその内周面の延長上に円筒形状の樹脂層14A、14Bを形成する。
【0015】
また、図2に示すように、ステータ5をステータコア20と、このステータコア20の周囲に巻装されるコイル30とから構成する。
【0016】
ステータコア20は、所定個数(本実施の形態では12個)の分割コア21を円環状に連ねた分割コア構造にて形成する。ここで、本実施形態では、ステータコア20を分割コアとしたが分割されていない環状のステータコアを用いてもよい。各分割コア21は略T字型の電磁鋼板をロータ2の回転軸2A方向(図2の紙面に垂直方向)に所定枚数積層して形成する。
【0017】
分割コア21は、円筒板1Aの内周に沿った円環の一部となるバックコア部22と、このバックコア部22からステータコア20の内周半径方向に突出するティース部23とからなっている。
【0018】
周方向に均等に設けられたティース部23間に形成される凹部(溝部)をスロット25とする。コイル30は各ティース部23に集中巻きされることにより、スロット25内部に収容された状態となっている。このスロット25を前記冷却ジャケット10からの冷却用のオイルを通す冷却通路29とするために、ロータ2の外周に面したスロット25の開口部41に、開口部41を閉塞するプレート40を装着する。このプレート40のロータ2側の面(図3における外側面40a)を前述した樹脂層14で覆い、冷却通路29のシール性を確保する。
【0019】
このような冷却通路29を形成するティース部23、プレート40等の詳細を図3に示す。
【0020】
ティース部23の先端の開口部41に臨む両端面には、断面がV字状に開く溝を形成し、この溝をプレート40が装着されるプレート保持溝28とする。そしてこの保持溝28の両傾斜面を構成するロータ2側の突起を突起部26、スロット25側の突起をストッパー部27とする。ストッパー部27は、樹脂層14の充填時にプレート40を支持する機能と、ティース部23へのコイル30の巻回範囲を規定する機能とを果すものである。
【0021】
さらに、各スロット25の開口部41は、冷媒の漏れを防ぐためにプレート40の外側から樹脂層14により閉塞される。これにより、スロット25内部の空間は画成され、冷却用オイルが流通する冷却通路29を形成できる。
【0022】
冷却通路29を閉塞するための樹脂層14を形成する方法を図4に示したステータ5の縦断面図を用いて説明する。
【0023】
外径がステータ5の内径とほぼ等しい円柱形状の内金型61をステータ5の内周に貫通配置する。また、内金型61の外周には内径が内金型61の外径よりも大きく、また内金型61と同心の円筒状の外金型62を、ステータコア20の両端に当接するように配置する。外金型62の軸方向の長さは、図1におけるケース1の軸方向の幅と等しくなるように形成し、また、内金型62のステータコア20から突出している部分の軸方向の長さは外金型62より長くなるように形成する。外金型62のステータコア20に当接していない方の端部には、内金型61に当接する端部62aを形成する。
【0024】
これにより、内金型61と外金型62の間には、樹脂形成後に樹脂層14(図1参照)の両端部14A、14Bとなる環状の空間Aが形成される。また同時に、ストッパー部27と内金型61との間に区画形成される軸方向に延びる空間B(図5のB1〜B3)が形成され、この空間Bを外金型62の内側の環状空間Aに連通させる。
【0025】
また、内金型61の一端に環状空間Aに連通する樹脂供給路Cを形成し、樹脂を図4の矢印で示すように樹脂供給路Cから環状空間Aに供給する。
【0026】
ここで、プレート40の寸法は、スロット25の開口部41の寸法(隣り合うティース部23のプレート保持溝28間の空間の寸法)より小さくしてある。これは、電磁鋼板の積層構造を有するステータコア20の場合、その寸法精度が低いためスロット開口部41の寸法にある程度ばらつきが生じることを考慮し、プレート40のスロット開口部41への配置を容易に行えるようにするためである。
【0027】
上記のような寸法設定のため、スロット開口部41へプレート40を配置しただけの状態(図5)では、プレート40のストッパー部27と対峙する面とストッパー部27との間に隙間が生じることになるが、樹脂の充填を行うと、樹脂充填時の圧力がプレート40の外側面40a(内金型61側の面)からスロット25内部方向に作用してプレート40がスロット25方向へ移動し、プレート40の内側面がストッパー部27に密着する(図3参照)。
【0028】
ただし、プレート40の内側面とストッパー部27とが重なり合う隙間に形成される非充填空間B1、B2の面積S1、S2がプレート40の外側面40aと突起部26と内金型61で画成される樹脂充填対象となる充填空間B3の面積S3より大きいと、空間Aから空間Bへ樹脂が流れ込む時に、非充填空間B1、B2のほうへ先に樹脂が流れ込んでしまい、上記したプレート40とストッパー部27との密着が良好に達成されなくなる。このような状態になると、充填樹脂がスロット25内部に漏れでてしまうので、冷却通路29の通路面積が確保できなくなる。
【0029】
そこで、スロット開口部41へプレート40を配置した樹脂充填前の状態でプレート40が最も外側(内金型61側)に位置した場合でも、充填空間B3の面積S3が非充填空間B1,B2の面積S1、S2より大きくなるように、すなわち、S3>S1且つS3>S2が成立するようにプレート40およびステータコア20の形状を設定し、より望ましくは、S3>S1+S2が成立するような設定とする。
【0030】
このように、樹脂充填前の状態で、プレート40の内側面とストッパー部27との間に形成される非充填空間B1、B2の各断面積よりもプレート40の外側面40aとの間に形成される充填空間の断面積が大きくなるように設定することで、非充填空間B1、B2よりも先に充填空間B3の方へ樹脂を流し込むことが可能となる。特に、プレート40の左右に形成される二つの非充填空間B1、B2の総断面積よりも充填空間B3の面積が大きくなるようにすることで、非充填空間B1、B2よりも先に充填空間B3へ樹脂が流れ込む。充填空間B3に流入した樹脂はプレート40をスロット25内側方向に押圧するので、充填が進むにつれて非充填空間B1、B2が小さくなり、やがてプレート40の内側面がストッパー部27に密着する。これにより樹脂がスロット25内部に漏れるのを抑制することができ、冷却通路29の通路面積を確保することができる。また、樹脂充填時に、ティース部23の最先端に突起部26を設け、プレート40の内金型61方向への移動を突起部26で制限するようにすることで、樹脂層14を確実に形成することができる。さらに、プレート40の側面をプレート保持溝28に対応した傾斜面より形成する。これにより、ティース部23の形状に多少の誤差が生じても、プレート40の外側面40aから充填圧力がかかることにより、プレート40とティース部23が密着する。
【0031】
第2の実施形態のスロット25およびプレート40の詳細を図6に示す。
【0032】
ここでは、ティース部23の先端をコイル巻装部分よりも細くするとともに突起部26(図3参照)を設けずにストッパー部27のみを設け、プレート40をスロット25内部に向け凸形状に形成した。このときプレート40の外側面40aに、樹脂が充填される溝43を設ける。樹脂の充填空間の一部となる溝43の面積S3は、プレート40が最も内周側(スロット25外側)に配置されたときにもストッパー部27とプレート40の間に形成される非充填空間B1、B2のそれぞれの面積S1、S2よりも大きくなるようにプレート40を形成し、より好ましくはS3>S1+S2が成立するように形成する。
【0033】
このように、プレート40の外側面40aに軸方向に延びる溝を設けることで、樹脂充填空間B3を確実に確保することができる。樹脂充填時には、樹脂はまず充填空間B3に供給されその圧力によりプレート40がスロット25内部側へ移動するので、プレート40の基端部分とストッパー部27の密着が良好に達成され、スロット25内部に樹脂が漏れるのを抑制することができる。
【0034】
第3の実施形態は、第2の実施形態において溝43を形成する替わりに、プレート40の外側面40aに外側に向けて2つの突起部42を形成する。このとき、突起部42間と内金型61で形成される空間を充填空間B3とし、ストッパー部27とプレート40の外周側面により形成される空間を非充填空間B1、B2とする。このとき、S3>S1かつS3>S2が成立し、より好ましくはS3>S1+S2が成立するようにプレート40を形成する。
【0035】
このように、プレート40の外側面40aに突起部42を設けることで、確実に充填空間B3の断面積を確保することができる。これにより、プレート40とストッパー部27の密着が良好に達成され、樹脂を充填する際にスロット25の内部に樹脂が漏れるのを抑制することができる。
【0036】
第4の実施形態は、プレート40やティース部23の先端形状を工夫して樹脂漏れを防止する第1から第3の実施形態と異なり、樹脂の充填経路を工夫することで樹脂漏れを防止するものである。すなわち、この実施形態では、図8に示したようにステータ5の軸方向中央に設けた樹脂供給路Cから樹脂を供給する。すなわち、内金型61の内部に設ける樹脂供給路Cの供給口を軸方向の略中央部におけるプレート40の外側面40aに対峙するように開口させる。このようにして樹脂を充填することで、まず充填空間B3に樹脂が充填されるので充填圧力が確実にプレート40の外側面40aに作用してプレート40をスロット25の内部側へ移動させる。
【0037】
このように、ティース部23の先端面に当接させて樹脂充填用の金型61、62を配置し、内金型61とティース部23の先端付近に設けたストッパー27との間にプレート40を配置した後、内金型61の内部に形成した樹脂供給通路Cを介してプレート50の外側面40a側より樹脂を充填して樹脂層14を形成することで、非充填空間B1、B2と充填空間B3との断面積の大小に関係なく、かならず充填空間B3の方へ先に流し込むことができるので、プレート40とティース23の先端の形状の設計自由度が大きくなる。
【0038】
但し、樹脂硬化後の処理(例えば内金型61の取り外しや樹脂供給路C内で硬化した放射状の樹脂の除去)については、図4の充填方法を用いたほうが容易となる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるわけではなく、特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲以内で様々な変更が成し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に用いる回転電機の縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態に用いる回転電機の横断面図である。
【図3】第1の実施形態における樹脂充填後のステータの詳細図である。
【図4】第1の実施形態における樹脂の充填方法を示す図である。
【図5】第1の実施形態における樹脂充填時のステータの詳細図である。
【図6】第2の実施形態における樹脂充填時のステータの詳細図である。
【図7】第3の実施形態における樹脂充填時のステータの詳細図である。
【図8】第4の実施形態における樹脂の充填方法を示す図である。
【符号の説明】
2 ロータ
5 ステータ
7 エアギャップ(回転空隙)
23 ティース部
25 スロット部
27 ストッパー部
30 コイル
40 プレート
41 開口部
42 突起部(突起)
43 溝
B1 非充填空間
B2 非充填空間
B3 充填空間
Claims (6)
- ティースに巻装したコイルをスロット内部に収容してなるステータを備え、
前記スロットの開口部を、開口部付近に配置されるプレートとこのプレートの外側面上に形成される樹脂充填層とで閉塞することにより、スロット内部に冷媒通路を形成する回転電機において、
前記ティースの先端付近にストッパー部を設け、樹脂充填時における前記プレートのスロット内側方向への移動を前記ストッパー部で制限するとともに、
前記スロットの開口部付近に前記プレートを配置し、前記ティースの先端面に当接させて樹脂充填用の金型を配置した樹脂充填前の状態で、前記プレートの内側面と前記ストッパー部との間に形成される非充填空間の断面積よりも前記プレートの外側面と前記金型との間に形成される充填空間の断面積が大きくなるよう前記プレートと前記ティース先端の形状を設定することを特徴とする回転電機。 - 前記プレートの左右に形成される2つの非充填空間の総断面積よりも充填空間の断面積が大きくなるようにした請求項1に記載の回転電機。
- 前記ティースの最先端に突起部を設け、前記プレートの前記金型方向への移動を前記突起部で制限するようにした請求項1または2に記載の回転電機。
- 前記プレートの外側面に軸方向に延びる溝を設けた請求項1または2に記載の回転電機。
- 前記プレートの外側面に突起を設けた請求項1または2に記載の回転電機。
- ティースに巻装したコイルをスロット内部に収容してなるステータを備え、
前記スロットの開口部を、開口部付近に配置されるプレートとこのプレートの外側面上に形成される樹脂充填層とで閉塞することにより、スロット内部に冷媒通路を形成する回転電機の製造方法において、
前記ティースの先端面に当接させて樹脂充填用の金型を配置し、
この金型と前記ティースの先端付近に設けたストッパー部との間に前記プレートを配置した後、
前記金型の内部に形成した樹脂供給通路を介して前記プレートの外側面側より樹脂を充填して前記樹脂充填層を形成することを特徴とする回転電機の製造方法。
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