JP3603564B2 - スポット溶接装置の溶接制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低コストで初期の隙間による溶接不良を防止することができるスポット溶接装置の溶接制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スポット溶接の通電方式として、通電を1回だけ行う一段通電方式(図6参照)と、本通電の前に予備通電を行う二段通電方式(図7参照)とがある。通常は、二段通電方式に比べて消費電力やサイクルタイムが小さい一段通電方式が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常の一段通電方式においては、接合する板(被溶接材)の間に大きな隙間があると、被溶接材間の接触面積が小さくなって電流密度が大きくなりすぎるため、スパッタや気泡が発生するおそれがある。さらに、板厚が大きい場合は、被溶接物の接合強度に不足を来すおそれもある。しかし、この通電方式では、当然のことながら、二段通電方式に比べて、複雑な制御を必要とせず、サイクルタイムは短く、消費電力は小さくて済むというメリットがある。
【0004】
一方、二段通電方式においては、予備通電を行って板どうしの接触面におけるなじみを良くしてから本通電を行うので、たとえ被溶接物に隙間があったとしても隙間有り時の上記溶接不良(接合強度不足、スパッタ発生、気泡発生など)を防止することができる反面、適当なクール時間をはさんで通電を2回行うため、通電のタイミング制御が複雑であるとともに、サイクルタイムの増加や消費電力の増大を招くおそれがある。
【0005】
例えば、自動車のボデーのスポット溶接を例にとると、近時、衝突時の安全対策として、被溶接材1枚ごとの板厚を厚くしたり板組として2枚組を3枚組にするなどしてボデーの板厚を厚くすることが試みられており、その際、できるだけ低いコストで十分な溶接品質を確保することが求められている。特に、溶接する板組に隙間がある場合には、溶接不良の原因になりやすいので、板厚を厚くする際にはより一層その点への配慮が必要である。
【0006】
本発明は、スポット溶接における上記課題に着目してなされたものであり、低コストで初期の隙間による溶接不良を防止することができるスポット溶接装置の溶接制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、電極チップにより被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、前記電極チップによって被溶接物に加えられる加圧力を検出する加圧力検出手段と、前記加圧力検出手段の出力が所定値に達した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は通電モードを一段通電方式に設定する通電方式設定手段とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の構成によると、電極位置検出手段は加圧動作時の電極チップの位置を検出し、加圧力検出手段は電極チップによって被溶接物に加えられる加圧力を検出する。隙間推定手段は、加圧力検出手段の出力(加圧力)が所定値に達した時点における電極位置検出手段の出力(電極チップの位置)とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する。通電方式設定手段は、隙間推定手段の出力(推定隙間)をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、あらかじめ予備通電を行って被溶接物の接触面におけるなじみを良くしてから本通電を行うべく、通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は、二段通電を必要とするほどの隙間は存在しないものと判断して、通電モードを通常の一段通電方式に設定する。
【0009】
請求項2記載の発明は、サーボモータの回転により電極チップを移動させて被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、前記サーボモータのモータ電流を検出するモータ電流検知手段と、前記モータ電流検知手段の出力の変化により前記電極チップによって被溶接物に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は通電モードを一段通電方式に設定する通電方式設定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の構成によると、電極位置検出手段は加圧動作時の電極チップの位置を検出し、モータ電流検知手段はサーボモータのモータ電流を検出する。隙間推定手段は、モータ電流検知手段の出力の変化により電極チップによって被溶接物に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における電極位置検出手段の出力(電極チップの位置)とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する。通電方式設定手段は、隙間推定手段の出力(推定隙間)をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、あらかじめ予備通電を行って被溶接物の接触面におけるなじみを良くしてから本通電を行うべく、通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は、二段通電を必要とするほどの隙間は存在しないものと判断して、通電モードを通常の一段通電方式に設定する。
【0011】
請求項3記載の発明は、電極チップにより被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、前記電極チップによって被溶接物に加えられる加圧力を検出する加圧力検出手段と、前記加圧力検出手段の出力が所定値に達した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、溶接電流をあらかじめ隙間の大きさごとに設定された最適溶接電流値の中の当該推定隙間に対応する最適溶接電流値に変更する溶接電流変更手段とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の構成によると、電極位置検出手段は加圧動作時の電極チップの位置を検出し、加圧力検出手段は電極チップによって被溶接物に加えられる加圧力を検出する。隙間推定手段は、加圧力検出手段の出力(加圧力)が所定値に達した時点における電極位置検出手段の出力(電極チップの位置)とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する。溶接電流変更手段は、隙間推定手段の出力(推定隙間)をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、例えば一段通電における溶接電流を、あらかじめ隙間の大きさごとに設定された最適溶接電流値の中の当該推定隙間に対応する最適溶接電流値に変更する。
【0013】
請求項4記載の発明は、サーボモータの回転により電極チップを移動させて被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、前記サーボモータのモータ電流を検出するモータ電流検知手段と、前記モータ電流検知手段の出力の変化により前記電極チップによって被溶接物に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、溶接電流をあらかじめ隙間の大きさごとに設定された最適溶接電流値の中の当該推定隙間に対応する最適溶接電流値に変更する溶接電流変更手段とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の構成によると、電極位置検出手段は加圧動作時の電極チップの位置を検出し、モータ電流検知手段はサーボモータのモータ電流を検出する。隙間推定手段は、モータ電流検知手段の出力の変化により電極チップによって被溶接物に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における電極位置検出手段の出力(電極チップの位置)とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する。溶接電流変更手段は、隙間推定手段の出力(推定隙間)をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、例えば溶接電流における溶接電流を、あらかじめ隙間の大きさごとに設定された最適溶接電流値の中の当該推定隙間に対応する最適溶接電流値に変更する。
【0015】
【発明の効果】
したがって、請求項1または2記載の発明によれば、被溶接物の隙間が無い(または小さい)場合は通常の一段通電を行い、被溶接物の隙間が大きい場合に限り二段通電を行うので、初期の隙間による溶接不良を防止することができるとともに、毎回二段通電を行う場合と比較して消費電力とサイクルタイムを小さく抑えることができる。
【0016】
請求項3または4記載の発明によれば、被溶接物の隙間が大きい場合には溶接電流を推定隙間の大きさに対応する最適溶接電流値に変更して所定の溶接を行うので、例えば、隙間があっても溶接電流を増加させれば一段通電でも良い、つまり品質上問題ないような場合には、複雑な二段通電を行うことなくサイクルタイムや消費電力の増大を招かずに隙間有り時の溶接不良を防止することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、自動車のボデーのスポット溶接に適用する場合を例にとる。
【0018】
《第1実施形態》
図1は本発明が適用されるスポット溶接装置の全体構成の要部を示す模式図である。このスポット溶接装置は、溶接ガン、溶接ロボット(共に図示せず)、制御手段30などから構成されている。溶接ガンは溶接ロボットの手首部に取り付けられている。溶接ガンの開放・加圧動作、および溶接ロボットの動きは、制御手段30によって制御される。
【0019】
溶接ガンは、図示しないフレームを有しており、このフレームには図示しないホルダを介して一対の電極チップ11,12が対向して装着されている。フレームの上部にはサーボモータ13が取り付けられている。電極チップ12は、適当な伝達機構14を介してサーボモータ13の回転によって軸方向に移動するように構成されている。伝達機構14は、例えば、軸継手、ボールネジ、軸受部、ナットなどから構成されている。電極チップ12の位置は、サーボモータ13に取り付けられた電極位置検出手段としてのエンコーダ15によって検出可能となっている。
【0020】
なお、本実施の形態では、サーボモータ13の回転量によって間接的に電極チップ12の位置を検出しているが、電極チップ12の進退移動距離を直接検出する電極位置検出手段であってもよい。
【0021】
電極チップ12は、例えば、図示しない溶接ケーブルを介して、溶接ロボットに固定された溶接トランス(図示せず)に電気的に接続されている。溶接トランスは、タイマ機能を有する後述するコントローラ40を介して溶接電源(図示せず)に接続されている。コントローラ40は制御手段30と接続されている。
【0022】
上記のように溶接ロボットの動きは制御手段30によって制御されるが、制御手段30には複数の溶接位置が教示されており、溶接ロボットは教示された溶接位置に溶接ガンを位置決めするようになっている。制御手段30には、溶接ロボットの各軸の位置情報が入力され、これに基づいて溶接ロボットによって移動される溶接ガンの位置情報が把握される。また、制御手段30には、電極チップ12の位置情報がエンコーダ15から入力される。このエンコーダ15からの位置情報に基づいて、制御手段30は、サーボモータ13の回転を制御し、電極チップ12の位置決めを行う。電極チップ12の位置決めは、電極チップ11,12によって被溶接物20に所定の加圧力が加えられたことが検知された時点で完了する。被溶接物20に所定の加圧力が加えられたことは、後述するように、サーボモータ13のモータ電流を監視することによって検知される。
【0023】
上記構成によるスポット溶接作業の全体の流れは、次のとおりである。自動車の組立ラインでは、コンベアによって車両ボデーが間欠的に搬送され、車両ボデーの停止時にスポット溶接作業が行われる。車両ボデーが所定の位置に位置決めされると、待機状態にあった溶接ロボットによって溶接ガンが溶接位置に向かって移動される。溶接ガンが所定の位置に位置決めされると、サーボモータ13の回転によって電極チップ12が移動し、電極チップ11,12による被溶接物20の加圧が行われる。加圧力が所定値になると、電極チップ11,12間に適当時間溶接電流が流され、被溶接物20の溶接が行われる。つまり、スポット溶接の三大条件である電流値、通電時間、加圧力を制御しながら被溶接物20の溶接が行われる。
【0024】
図2は上記したスポット溶接装置の溶接制御装置の概略構成を示すブロック図である。ここでは、初期の隙間による溶接不良(接合強度不足、スパッタ発生、気泡発生など)を防止するのに好適な通電制御を実現するための構成のみが示されている。
【0025】
この溶接制御装置は、各種演算処理を行うCPU31、サーボモータ13のモータ電流を検出するモータ電流検知手段32、上記電極位置検出手段15、および前記コントローラ40から構成されている。CPU31は、打点位置の被溶接物20の隙間の大きさを推定する隙間算出部33、あらかじめ設定された打点位置ごとの基準総板厚のデータを記憶する総板厚記憶部34、推定隙間の大きさを判定して通電モードを設定する隙間判定部35、および推定隙間と比較される基準値(基準隙間)を記憶する基準値記憶部36を有している。
【0026】
より詳細には、隙間算出部33は、隙間推定手段として機能し、モータ電流検知手段32の出力の変化により電極チップ11,12によって被溶接物20に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における電極位置検出手段(エンコーダ)15の出力(電極チップ12の位置情報)と総板厚記憶部34に記憶されている打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物20の推定隙間を算出する機能を有している。推定隙間は、実際の電極チップ12の位置情報に基づく打点位置の測定総板厚(電極チップ11,12間の距離に相当する)から基準総板厚を減算することによって求められる。被溶接物20における打点位置の基準総板厚は、複数の被溶接材21a,21bの板厚の組合せによってあらかじめ把握されている。
【0027】
隙間判定部35は、通電方式設定手段として機能し、打点位置における被溶接物20の推定隙間をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は通電モードを一段通電方式に設定する機能を有している。
【0028】
モータ電流検知手段32は、加圧力検出手段として機能するものであって、例えば、サーボアンプで構成されている。サーボアンプは、溶接ロボットの各軸のサーボモータに流れる電流を検出し、フィードバックされた電流値と指令値との差に基づいてそれらサーボモータの負荷電流を制御するとともに、溶接ガンの電極チップ12を移動させるサーボモータ13に流れるモータ電流を検出し、フィードバックされた電流値と指令値との差に基づいてサーボモータ13のモータ電流を制御するようになっている。電極チップ11,12が被溶接物20に接触し、加圧が開始される時点では、負荷の増加によってサーボモータ13のモータ電流が大きく変化するので、そのモータ電流を監視することによって被溶接物20に所定の加圧力が加えられたことを検知することができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、サーボモータ13のモータ電流によって間接的に被溶接物20に加えられる加圧力を検出しているが、圧力センサなどを用いて加圧力を直接検出する加圧力検出手段であってもよい。
【0030】
コントローラ40は、上記のように溶接トランスと接続されており、溶接電流、溶接時間、加圧時間などを制御する機能を有している。コントローラ40への通電モードの指令は、制御手段30のCPU31から出力される。
【0031】
図3は上記した溶接制御装置の動作を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS11では、溶接ガンが所定の位置に位置決めされると、サーボモータ13の回転によって電極チップ12が移動し、隙間算出部33にて、モータ電流検知手段(サーボアンプ)32によりサーボモータ13のモータ電流を監視して電極チップ11,12の位置決めが完了したことを検出する。すなわち、電極チップ11,12が被溶接物20に接触して所定の加圧力を加えたことをモータ電流の変化によって検知する。この時点で、サーボモータ13は回転を停止される。
【0033】
ステップS12では、電極チップ11,12の位置決めが完了した時点での電極チップ12の位置が電極位置検出手段(エンコーダ)15によって検知され、隙間算出部33にて、この位置情報から被溶接物20の打点位置の総板厚を測定する。この測定総板厚は、当該時点における電極チップ11,12間の距離に相当する。
【0034】
ステップS13では、隙間算出部33にて、ステップS12で得られた打点位置の測定総板厚から総板厚記憶部34に記憶されている打点位置の基準総板厚を減算することによって、打点位置における重ね合わされた被溶接物20の推定隙間を算出する。
【0035】
ステップS14では、隙間判定部35にて、ステップS13で得られた推定隙間が基準値記憶部36に記憶されている基準隙間よりも大きいかどうかが判断される。
【0036】
ここで、YESの場合、つまり、推定隙間が基準隙間よりも大きいと判断された場合は、被溶接材21a,21bどうしの密着状態が悪いとみなし、あらかじめ予備通電を行って被溶接材どうしの接触面におけるなじみを良くしてから本通電を行うべく、通電モードを二段通電(図7参照)に設定する(ステップS15)。
【0037】
これに対し、NOの場合、つまり、推定隙間が基準隙間以下であると判断された場合は、二段通電を必要とするほどの隙間は存在しないものとみなし、通電モードを短時間で済む通常の一段通電(図6参照)に設定する(ステップS16)。
【0038】
通電モードが設定されると、その指令がコントローラ40に与えられ、設定された通電モードに従って打点位置における被溶接物20のスポット溶接が実行される(ステップS17)。
【0039】
したがって、本実施の形態によれば、被溶接物20の隙間が無い(または小さい)場合は通常の一段通電により短時間で溶接を行い、被溶接物20の隙間が大きい場合は、これを自動検知して、二段通電により、あらかじめ予備通電を行って被溶接材21a,21bどうしの接触面におけるなじみを良くした後、本通電により被溶接材21a,21bを接合するようにしたので、被溶接物20の隙間によって溶接不良(接合強度不足、スパッタ発生、気泡発生など)が発生するおそれがある場合は二段通電が行われることになり、初期の隙間による上記溶接不良を防止することができる。また、二段通電は必要時、つまり被溶接物20の隙間が大きい場合にのみ行われるので、毎回二段通電を行う場合と比較して消費電力とサイクルタイムを小さく抑えることができる。
【0040】
《第2実施形態》
図4は図1に示すスポット溶接装置の溶接制御装置の他の概略構成を示すブロック図である。ここでも、初期の隙間による溶接不良(接合強度不足、スパッタ発生、気泡発生など)を防止するのに好適な通電制御を実現するための構成のみが示されている。なお、図4において図2と共通する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0041】
本実施の形態では、被溶接物20の隙間が大きい場合には、算出された推定隙間の大きさに応じて溶接電流を増大させて一段通電を行うことによって、溶接不良を防止するようにしている。
【0042】
そのための構成として、制御手段30を構成するCPU31aは、前記隙間算出部33、前記総板厚記憶部34、推定隙間の程度を判定する隙間判定部35a、前記基準値記憶部36、最適な溶接電流の値を設定する最適溶接電流決定部37、および各隙間の大きさに対応する最適な溶接電流(一段通電の場合)の値を記憶する最適値記憶部38を有している。
【0043】
最適値記憶部38に記憶される最適溶接電流値は、一段通電を前提に、あらかじめ所定の板組で隙間の大きさを変えて、実験などを行って、おのおのの隙間に対応する最適な溶接電流の値を決定したものである。最適溶接電流決定部37は、生産中、隙間判定部35aで推定隙間が基準値を上回ったと判断された場合に、最適値記憶部38から推定隙間に対応する最適溶接電流値を読み出して、その値による一段通電をコントローラ40に指示する機能を有している。なお、溶接電流変更手段は隙間判定部35aと最適溶接電流決定部37により構成されている。
【0044】
図5は上記した溶接制御装置の動作を示すフローチャートである。ここで、ステップS21〜ステップS23の各処理は、図3中のステップS11〜ステップS13の各処理とまったく同じであるから、その説明は省略する。
【0045】
ステップS24では、隙間判定部35aにて、ステップS23で得られた推定隙間が基準値記憶部36に記憶されている基準隙間よりも大きいかどうかが判断される。
【0046】
ここで、YESの場合、つまり、推定隙間が基準隙間よりも大きいと判断された場合は、被溶接材21a,21bどうしの密着状態が悪いとみなし、最適溶接電流決定部37にて、最適値記憶部38から推定隙間に対応する最適溶接電流値を読み出して、一段通電における溶接電流をその最適溶接電流値に変更する(ステップS25)。
【0047】
これに対し、NOの場合、つまり、推定隙間が基準隙間以下であると判断された場合は、溶接電流を上げなければならないほどの隙間は存在しないものとみなし、一段通電における通常の溶接電流値を変更することなく、ただちにステップS26に進む。
【0048】
ステップS26では、最適溶接電流決定部37からの指示がコントローラ40に与えられ、その指示に従って打点位置における被溶接物20のスポット溶接が実行される。すなわち、推定隙間が基準値よりも大きい場合は、推定隙間に対応する最適溶接電流値による一段通電を行い、推定隙間が基準値以下である場合は、あらかじめ設定された通常の溶接電流値で一段通電を行う。
【0049】
したがって、本実施の形態によれば、被溶接物20に隙間があっても溶接電流を増加させれば一段通電でも一定の溶接品質を確保しうるような場合、例えば、直流溶接の場合、板厚が小さい場合、アルミ溶接の場合などには、複雑な二段通電を行うことなくサイクルタイムや消費電力の増大を招かずに隙間有り時の溶接不良を防止することができる。
【0050】
なお、隙間に対応した溶接電流増加による溶接不良の防止は、二段通電の場合にも適用することができる。すなわち、例えば、板厚がさらに大きい被溶接物をスポット溶接するような場合には、溶接不良を確実に防止するため、隙間が基準値を上回った場合に行われる二段通電における本通電の溶接電流を、隙間の大きさに対応する最適溶接電流値に変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるスポット溶接装置の全体構成の要部を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るスポット溶接装置の溶接制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図2の溶接制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2実施形態に係るスポット溶接装置の溶接制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】図4の溶接制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】一段通電方式を示す特性図である。
【図7】二段通電方式を示す特性図である。
【符号の説明】
11,12…電極チップ
13…サーボモータ
15…エンコーダ(電極位置検出手段)
20…被溶接物
30…制御手段
31…CPU
32…サーボアンプ(モータ電流検知手段、加圧力検出手段)
33…隙間算出部(隙間推定手段)
34…総板厚記憶部
35…隙間判定部(通電方式設定手段)
35a…隙間判定部(溶接電流変更手段)
36…基準値記憶部
37…最適溶接電流決定部(溶接電流変更手段)
38…最適値記憶部
40…コントローラ

Claims (4)

  1. 電極チップにより被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、
    加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、
    前記電極チップによって被溶接物に加えられる加圧力を検出する加圧力検出手段と、
    前記加圧力検出手段の出力が所定値に達した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、
    前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は通電モードを一段通電方式に設定する通電方式設定手段と、
    を有することを特徴とするスポット溶接装置の溶接制御装置。
  2. サーボモータの回転により電極チップを移動させて被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、
    加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、
    前記サーボモータのモータ電流を検出するモータ電流検知手段と、
    前記モータ電流検知手段の出力の変化により前記電極チップによって被溶接物に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、
    前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は通電モードを二段通電方式に設定し、推定隙間が基準隙間以下である場合は通電モードを一段通電方式に設定する通電方式設定手段と、
    を有することを特徴とするスポット溶接装置の溶接制御装置。
  3. 電極チップにより被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、
    加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、
    前記電極チップによって被溶接物に加えられる加圧力を検出する加圧力検出手段と、
    前記加圧力検出手段の出力が所定値に達した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、
    前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、溶接電流をあらかじめ隙間の大きさごとに設定された最適溶接電流値の中の当該推定隙間に対応する最適溶接電流値に変更する溶接電流変更手段と、
    を有することを特徴とするスポット溶接装置の溶接制御装置。
  4. サーボモータの回転により電極チップを移動させて被溶接物を加圧しこれに適当時間通電することによって局部を溶接するスポット溶接装置の溶接制御装置において、
    加圧動作時の前記電極チップの位置を検出する電極位置検出手段と、
    前記サーボモータのモータ電流を検出するモータ電流検知手段と、
    前記モータ電流検知手段の出力の変化により前記電極チップによって被溶接物に所定の加圧力が加えられたことを検知した時点における前記電極位置検出手段の出力とあらかじめ設定された打点位置の基準総板厚とから、打点位置の被溶接物の隙間の大きさを推定する隙間推定手段と、
    前記隙間推定手段の出力をあらかじめ設定された基準隙間と比較し、推定隙間が基準隙間よりも大きい場合は、溶接電流をあらかじめ隙間の大きさごとに設定された最適溶接電流値の中の当該推定隙間に対応する最適溶接電流値に変更する溶接電流変更手段と、
    を有することを特徴とするスポット溶接装置の溶接制御装置。
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