JP3603355B2 - 臓器保存装置用酸素付加装置 - Google Patents

臓器保存装置用酸素付加装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は臓器保存装置用酸素付加装置(oxygenator)に関する。さらに詳しくは人体から摘出した臓器をドナーに移植するまでの間、保存又は運搬に用いる臓器保存装置において、臓器への還流液に酸素を十分供給する酸素付加装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
摘出した臓器を保存するには単純冷却保存法がある。これは単に容器内で臓器を冷凍或いは冷温状態で保存するものだが、この方法によると臓器の保存期間に限界がある。
【0003】
このため低温還流保存法という方法が用いられている。この装置の構造は灌流チェンバの他に酸素付加装置・熱交換器・送液ポンプからなり、更に温度・灌流圧・灌流量などのモニターや制御装置を有している。
【0004】
灌流チェンバに送られる灌流液の例を挙げると、低温沈降法による血漿(CPP)・硫酸マグネシウム・デキストロース・インスリン・ペニシリン・ハイドロコーチゾンからなる液や血漿蛋白部分(PPF)・アルブミン基調液がある。
【0005】
生体から摘出された臓器を長期間保存するにあたり、臓器を構成する細胞組織に十分な酸素を供給する必要があり、微生物の場合ならば、細孔のあいた部材で保存液に空気を送り込み微小気泡の存在があっても許されるが、臓器に酸素を供給する場合、臓器に気泡が直接接することは好ましくない。その点に注意して灌流液に酸素を溶解させねばならい。そのため気泡混入が発生しない型での酸素付加装置がある。
【0006】
例えばハウジング内に内径が2〜3mmで、外径が3〜3.5mm、長さが1〜2mのシリコンチューブを入れ、チューブ内に灌流液を流し、チューブの外部に純度95%の酸素又は大気を入れて、灌流液に酸素を溶解させていた。この場合シリコンが使用されるのは、それのガス透過性が高いからである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酸素の移動量が大きく、かつ、小型の酸素付加装置とするにはシリコンチューブでは不十分であった。本発明はこの問題点を解決するためになされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液体の入口・出口及び気体の入口・出口を有する容器内に半透性中空繊維束を詰め、容器内壁に液密に密接した固定部材で上記半透性中空繊維束両端を固定し、該半透性中空繊維の両端はそれぞれ開口状態に保たれたまま上記液体(又は気体)の入口・出口に連通させてあることを特徴とする臓器保存装置用酸素付加装置を要旨とする。
【0009】
本発明において、容器(必要に応じてキャップも用いられる)の材質はポリオレフィン・ポリカーボネート・ポリアクリレート・ポリアクリルニトリル・ポリスチレン・ポリ塩化ビニル等が挙げられる。また、容器の形態は筒状が製作上好ましい。この場合容器の両端に流体の出入口が設けられる。しかし容器の形態を筒状にこだわる必要もなく、例えば中空繊維束を容器内で折り曲げて収納しても差し支えない。
【0010】
本発明において、半透性中空繊維は多孔性膜が筒状になったもので、孔は微細であり、材質はポリアミド・ポリエステル・ポリビニルアルコール・ポリカーボネート・ポリオレフィン・ポリスルホン・ポリアクリレート等が使用される。半透性中空繊維の形態例は膜の孔径は0.05〜0.1μm、内径が100〜1000μm、膜厚が10〜50μmである。以上のような多孔性膜を中空繊維状にして用いるのは、気−液の距離を短縮させるのみならず、気−液接触面積(これを有効膜面積という。)を大にできるからであり、また、装置の製作がし易いことによる。
【0011】
本発明において、容器内壁と固定部材を液密に密接するのは気体と灌流液を分離しておくためである。本発明において、固定部材の材料としてはエポキシ樹脂・ポリウレタン・シリコン樹脂等が挙げられる。
【0012】
本発明の酸素付加装置を使用するに際しては、中空繊維内に灌流液を通し中空繊維の外側に空気又は酸素を流してよく、逆に中空繊維内に空気又は酸素を通し中空繊維の外側に灌流液を流してもよい。いずれにしても空気又は酸素を所定の圧力にしておくことが必要である。
【0013】
【作用】
本発明の酸素付加装置を使用すれば、半透性膜の孔から空気又は酸素が灌流液に移行するが、その孔径が気泡が発生しないほどの細孔であるため気泡が灌流液に混入するおそれがない。また膜が細い中空繊維の束であるので、有効膜面積が大となり空気又は酸素が灌流液に効率よく移行でき、たとえ大気を用いたとしても灌流液中の酸素の溶解量が飽和点に達することができる。
【0014】
【発明の効果】
本発明は上記の構成であるので、灌流液への酸素の移行量が大きく、かつ、小型の酸素付加装置が得られる。その結果、本発明の酸素不可装置により摘出臓器をより長期にわたり、良好な状態で保存でき、かつ移植後の生着率向上が期待できる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を図面により説明する。図1は本発明の臓器保存装置用酸素付加装置の一例を示し、それを側面から眺めた断面図である。
【0016】
図において、流体出入口6、6’を有するキャップ7’、7が流体入口5、5’を有する外筒4の両端に嵌合され、全てポリカーボネート製でできたハウジング1を形成している。
【0017】
外筒4内に半透性中空繊維2が外筒の長手方向と平行の位置で詰められてある。外筒4内で該繊維2の両端をポリウレタンの固定部材3、3’で固定してある。なお、固定部材3、3’は外筒4の内壁に密接している。中空繊維2の各フィラメントの先端は開口状態に保たれ流体出入口6、6’に連通させてある。
【0018】
灌流液に酸素を溶解するときは、流体入口6から灌流液を流入させ、中空繊維2の内側を通り、流体出口6’から取り出される。一方、流体入口5から空気又は所定の圧力で酸素を送り込み、空気又は酸素は中空繊維2の外側を通り、流体出口5’から取り出される。
【0019】
本発明の効果をみるために以下の実験を行った。
外径200μm、膜厚15μmのアセテートの中空糸の約7000本(有効膜面積0.7平方メートル)の両端をハウジング内で固定し、1つのモジュールを作製し、中空糸内に窒素置換によって脱酸素化した蒸留水を通し、中空糸外に大気を流量0.6リットル/分で通気、蒸留水の流量を20〜200ミリリットル/分とした場合、モジュール出口で蒸留水の酸素分圧は180mmHg(飽和点)となり、十分な置換が可能となった。
【0020】
また逆に中空糸内に大気を中空糸外に水を流しても、ほぼ同じ結果であった。
【0021】
一方、蒸留水をCPP・硫酸マグネシウム・デキストロース・インスリン・ペニシリン・ハイドロコーチゾンからなる液に替えて上記実験を行っても同様の結果が得られた。
【0022】
比較のために、ハウジング内に内径が2mmで、外径が3mm、長さが1.5mのシリコンチューブを入れ、チューブ内に窒素置換によって脱酸素化した蒸留水を通し、チューブの外部に大気を流量0.6リットル/分で通気入れて、蒸留水の流量を20〜200ミリリットル/分とした場合、モジュール出口で蒸留水の酸素分圧は140mmHgとなり、実施例よりも劣る結果となった。
【0023】
更にまた、マウス摘出肝をPPF系の灌流液で保存した結果、上記シリコンの酸素付加装置で通気したとき保存できた期間は3〜4日であったが、上記本発明による酸素付加装置で通気したとき1週間以上の保存が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の臓器保存装置用酸素付加装置の一例を示し、それを側面から眺めた断面図。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 中空繊維
3 固定部材
4 外筒
5 流体出入口
6 流体出入口
7 キャップ

Claims (2)

  1. 灌流液の入口・出口及び大気の入口・出口を有する容器内にアセテートの半透性中空繊維束を詰め、容器内壁に液密に密接した固定部材で上記半透性中空繊維束両端を固定し、該半透性中空繊維の両端はそれぞれ開口状態に保たれたまま上記灌流液の入口・出口に連通させてあることを特徴とする臓器保存装置用酸素付加装置。
  2. 灌流液の入口・出口及び大気の入口・出口を有する容器内にアセテートの半透性中空繊維束を詰め、容器内壁に液密に密接した固定部材で上記半透性中空繊維束両端を固定し、該半透性中空繊維の両端はそれぞれ開口状態に保たれたまま上記大気の入口・出口に連通させてあることを特徴とする臓器保存装置用酸素付加装置。
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