JP3603313B2 - バリ取り方法およびバリ取り装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はバリ取り方法およびバリ取り装置に関し、例えば硬質ゴム成形品等の高分子材料の成形品に形成されたバリをヤスリで引っかけ、引っ張ることによって、成形品を削り込むことなく、そのバリを取るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、成形品のバリ取りは、ワイヤブラシ等(必要に応じて研削砥石、カッター、ナイフ等)を用いて行っていた。すなわち、図5または図6に示すワイヤブラシ21,22を回転させながら、そのワイヤの先端をバリに当接させて、押し付けることにより、バリを削り取っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来のバリ取り方法にあっては、成形品が高分子材料等の軟質材の場合、バリを削り取ることが難しいという課題があった。詳しくは、この高分子材料の成形品(図7に示す自動車のハンドル23)は、上下一対の金型同士を重ね合わせて形成される凹部にエラストマの溶湯を注入することにより、成形される。このとき、金型同士の重ね合わせ面にも、エラストマの溶湯が流れ出し、ハンドル23の外周には、バリ23Aが形成される。このバリ23Aの厚さは0.1〜0.5mm程度である。このバリ23Aは、大変柔らかく、かつ、薄いため、その厚さ方向に対して曲がり易いものである。この結果、その軸線周り方向に回転するワイヤブラシ21(22)のワイヤの先端21A(22A)をバリ23Aに当接させると、バリ23Aが曲がり易いため、バリ23Aがワイヤの先端21A(22A)から逃げてしまい、バリ23Aの削り残しが発生することがあった。さらに、先端21A(22A)を削り残しのバリ23Aに押圧接触させようとすると、バリ23A以外のハンドル23までを削り取ってしまうこともあった。また、研削砥石を回転させてバリに当接させても、同様の結果であった。
【0004】
また、バリ23Aの削り残しを発生させることなく、バリ23A以外のハンドル23までを削り取ることのないバリ取り方法として、人手を要してナイフでバリを削り取る方法もある。しかし、この方法では、作業者に疲れが発生し、かつ、作業時間も長時間を要していた。
【0005】
そこで、本発明は、高分子材料の成形品に形成されたバリを、短時間に、成形品を削り込むことなく、そのバリを取ることができるバリ取り方法およびバリ取り装置を提供することを、その目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1のバリ取り方法は、高分子材料の成形品に形成された軟質可撓性のバリをその成形品との境界部から破断するバリ取り方法あって、表面に多くの尖った小突起を有する掛止工具の前記表面を前記バリに当接させて、該掛止工具を移動させることで、該掛止工具の前記小突起の少なくとも1つを前記バリに引っかけ、前記境界部に引張力を与えて、前記バリを前記成形品から引きちぎるようにすることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2は、請求項1記載の構成において、前記掛止工具を、前記バリの突出方向に対して直交する方向に移動させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3のバリ取り装置は、高分子材料の成形品に形成された軟質可撓性のバリをその成形品との境界部から破断するバリ取り装置であって、表面に多くの尖った小突起を有する掛止工具と、前記掛止工具の前記表面を前記バリに当接させて、該掛止工具を往復移動させる往復移動手段とを有し、前記往復移動手段による前記掛止工具の往復移動により、前記掛止工具の前記小突起の少なくとも1つを前記バリに引っかけ、前記境界部に引張力を与えて、前記バリを前記成形品から引きちぎるようにしたことを特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明の請求項1に係るバリ取り方法は、高分子材料の成形品に形成されたバリを取る方法である。このバリ取り方法にあっては、表面に多くの尖った小突起を有する掛止工具の前記表面をバリに当接させて、該掛止工具を移動させることで、該掛止工具の前記小突起の少なくとも1つを前記バリに引っかけ、前記境界部に引張力を与えて、前記バリを前記成形品から引きちぎるようにする。すなわち、掛止工具の小突起の少なくとも1つがバリを引っかけると、成形品とバリとの境界部においては、引張力が発生し、バリは引っ張られつつ切断される。すなわち、成形品からバリは引きちぎられる。したがって、軟質可撓性のバリであっても十分にバリ取りができ、その結果、無理に工具をバリに押圧接触させる必要性もなくなるので、成形品を削り込むことなく、バリを確実に取り去ることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係るバリ取り装置によれば、表面に多くの尖った小突起を有する掛止工具の表面をバリに当接させて、該掛止工具を往復移動させる。そして、その往復移動により、前記掛止工具の前記小突起の少なくとも1つを前記バリに引っかけ、前記境界部に引張力を与えて、前記バリを前記成形品から引きちぎるようにする。すなわち、掛止工具の小突起の少なくとも1つがバリを引っかけると、成形品とバリとの境界部においては、引張力が発生し、バリは引っ張られつつ切断される。しかも、掛止工具が多数の小突起を有し、さらに、往復運動により確実に引っかけがなされる結果、バリは成形品との境界部で確実に破断する。すなわち、成形品からバリは引きちぎられる。したがって、軟質可撓性のバリであっても十分にバリ取りができ、その結果、無理に工具をバリに押圧接触させる必要性もなくなるので、成形品を削り込むことなく、バリを確実に取り去ることができる。
【0012】
【実施例】
以下、本発明に係るバリ取り方法およびバリ取り装置の実施例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例に係るバリ取り装置の概略を示す図である。このバリ取り装置は、図1に示すように、ロボット本体1と、このロボット本体1に回動自在に軸支され、伸縮自在のロボットアーム2と、このロボットアーム2の先端に回動自在に把持されたツールホルダ(往復運動機構)3と、このツールホルダ3の先端に着脱自在に取り付けられたヤスリ4と、で構成されている。工業用ロボットとして用いられるロボット本体1は、内部もしくは外部のプログラマブルな制御装置8の制御を受けるものであり、昇降可能である。る。また、ロボットアーム2は少なくとも5〜6の自由度を有し、上方支持アームおよび下方支持アームで構成されている。
【0013】
このツールホルダ3は、図2に示すように、水分を除去した圧縮空気を動力源として、その軸線方向に掛止工具としてのヤスリ4を往復動させるものである。このときの圧縮空気の圧力は4〜7kg/cmを要し、ヤスリ4の往復回数は3700回/分程度である。図2の拡大図および図3の分解斜視図に示すように、ツールホルダ3は上記ロボットアーム2に把持されるハウジング3Aを備えている。このハウジング3Aには、ホース3Bが接続される。このホース3Bは、コンプレッサ(図示略)からの圧縮空気を導入するためのものである。
【0014】
そして、ハウジング3Aには、第1スプリング3Cと、シリンダ3Dと、ピストン3Eと、プラグ3Fと、第2スプリング3Gと、フィルタ3Hと、が収容、配設されるものである。これらは、キャップ3Iでハウジング3A内に整列、固定される。また、上記ホース3Bの先端は、バルブニップル3Jに連結される。このバルブニップル3Jは、ハウジング3Aに固設されるバルブ3Kに、Oリングを介して連結される。
【0015】
また、シリンダ3Dの先端部には穴が形成されている。この穴にヤスリ4の把持部を挿入して、ヤスリ4は止めネジ3Lでシリンダ3Dに着脱自在に固定可能である。そして、このヤスリ4はシリンダ3Dの軸線方向へ往復運動が可能である。なお、3Mはガイドキーである。
【0016】
ヤスリ4は、このように、ツールホルダ3に着脱自在に取り付けることができるので、図3に示す最適のヤスリ4A,4B,4C,4D,4E,4Fを選ぶことができる。一般的に、ヤスリは多数の切刃(目)を有した硬化鋼製工具であり、ワークの面の削り取り、角取り等に使用され、その外面を細かく削り落とすものであり、耐摩耗性も良好である。そして、このヤスリ4の切刃は、掛止工具の掛止部として機能する。なお、4Aは平ヤスリ、4Bは丸ヤスリ、4Cは三角ヤスリ、4Dは甲丸ヤスリ、4Eはサポータ、4Fはラバーパッドである。そして、各ヤスリの目の種類は複目、波目、単目、鬼目でよく、各ヤスリの目の荒さは荒目、中目、細目、油目でよい。各ヤスリの目数は呼び寸法が100〜400の範囲が普通サイズである。
【0017】
また、図1に示すように、5は自動車のハンドルである。6はこの自動車のハンドル5を固定する支持台(固定部材)である。このハンドル5は、金属製の部材で補強され、エラストマ製であり、その外周には、薄肉のバリ5Aが形成されている。バリ5Aの厚さは0.1〜0.5mm程度である。このように、支持台6はロボット本体1に近接して配設されている。
【0018】
次に、このバリ取り装置を用いて、自動車のハンドル5に形成されたバリ5Aを取る方法を説明する。
【0019】
まず、ロボットアーム2を伸ばし、ハンドル5にヤスリ4を近づける。次いで、ヤスリ4の軸線方向がハンドル5の軸線方向と平行になるように、アーム2の軸支角度とツールホルダ3の把持角度を調節する。次に、ヤスリ4をその軸線方向に往復動させる。次いで、このヤスリ4をバリ5Aに当接させる。すなわち、ヤスリ4はバリ5Aの突出方向に対して直交するように当てられるものである。そして、ヤスリ4をバリ5Aに当接させながら、ロボットアーム2の旋回によって、ツールホルダ3をハンドル5の周りを一方の向きに旋回させる。すなわち、ヤスリ4はバリ5Aに当接しながら、ハンドル5の軸線を中心に、その外周に沿って旋回する。
【0020】
このとき、ヤスリ4がヤスリ4の軸線方向に沿って往復動しているので、ヤスリ4の多数の目のいくつかが、バリ5Aに引っかかり易い。さらに、バリ5Aはヤスリ4の往復動によって、ハンドル5の本体部との境界部において、上方向または下方向に引っ張り荷重を受ける。この結果、バリ5Aはハンドル5の本体部との境界部で破断する。すなわち、ハンドル5の本体部からバリ5Aは引きちぎられる。したがって、軟質可撓性のバリであっても十分にバリ5Aを取ることができ、ハンドル5の本体部を削り込むことなく、バリ5Aを確実に取り去ることができる。なお、ロボットアーム2は固定しておき、ハンドル5をその軸線を中心にして、回転させてもよい。
【0021】
また、このときのバリ取り方法は、人手を要しないので、短時間に自動的に行うことができる。
【0022】
なお、本発明に係るバリ取り装置は、図4に示すように、ツールホルダ3を支持台7に固定し、ロボットのアーム2の先端に自動車のハンドル5を把持させて、バリ5Aを取り去ってもよい。また、成形品(バリ)はエラストマ製に限られず、プラスチック製の軟質材で、弾性特性のよいものでもよい。また、エラストマは、具体的には架橋構造エラストマ、鎖状熱可塑性エラストマであるが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、バタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、多硫化ゴム、ニトリルイソプレンゴム、シリコンゴム、ポリ塩化ビニル系エラストマ、塩素系ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合エラストマ、エチレンプロピレン共重合体系エラストマ、スチレンブタジエンエラストマ、ウレタンゴム、フッ素ゴムでもよい。
【0023】
成形品に対して、曲がり易いバリであっても、ヤスリの目に引っかかり易い場合は、厚さ0.5mm以下の薄いひらひらしたバリでも取り去れる。なお、バリ厚は0.5mm以上でもよい。また、ヤスリに限られることなく、表面に多くの尖った小突起のある金属、陶製の板状の物でも、バリを引っかけ易い物であればよい。また、ヤスリ等の形状も円板状でもよく、このときは、回転運動で、円板状の物の平面部をバリに当接させてもよい。ヤスリの軸線方向に往復動させるツールホルダは、モータまたはソレノイド等の電気的アクチュエータを用いたものでもよい。
【0024】
【発明の効果】
本発明によれば、短時間に、成形品を削り込むことなく、そのバリを取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るバリ取り装置の概略を示す側面図である。
【図2】本発明の一実施例に係るバリ取り装置のツールホルダとヤスリを示す拡大斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係るバリ取り装置のツールホルダとヤスリの拡大分解斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例に係るバリ取り装置の概略を示す側面図である。
【図5】従来のバリ取り装置のワイヤブラシを示す斜視図である。
【図6】従来のバリ取り装置のワイヤブラシを示す斜視図である。
【図7】従来のバリ取り方法を説明するための自動車のハンドルを示す側面図である。
【符号の説明】
1…ロボット本体、2…ロボットアーム、3…ツールホルダ(往復動機構)、4…ヤスリ(掛止工具)、5…ハンドル(高分子材料の成形品)、5A…バリ、6…支持台(固定部材)

Claims (3)

  1. 高分子材料の成形品に形成された軟質可撓性のバリをその成形品との境界部から破断するバリ取り方法あって、
    表面に多くの尖った小突起を有する掛止工具の前記表面を前記バリに当接させて、該掛止工具を移動させることで、該掛止工具の前記小突起の少なくとも1つを前記バリに引っかけ、前記境界部に引張力を与えて、前記バリを前記成形品から引きちぎるようにすることを特徴とするバリ取り方法。
  2. 前記掛止工具を、前記バリの突出方向に対して直交する方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載したバリ取り方法。
  3. 高分子材料の成形品に形成された軟質可撓性のバリをその成形品との境界部から破断するバリ取り装置であって、
    表面に多くの尖った小突起を有する掛止工具と、
    前記掛止工具の前記表面を前記バリに当接させて、該掛止工具を往復移動させる往復移動手段とを有し、
    前記往復移動手段による前記掛止工具の往復移動により、前記掛止工具の前記小突起の少なくとも1つを前記バリに引っかけ、前記境界部に引張力を与えて、前記バリを前記成形品から引きちぎるようにしたことを特徴とするバリ取り装置。
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