JP3602452B2 - 孔版印刷用原紙ならびにその製造方法および製版方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は孔版印刷用原紙ならびにその製造方法および製版方法に関し、さらに詳しくは高強度および高感度を維持しつつ低エネルギーで製版することができ、製版装置の簡素化等を図ることができる孔版印刷用原紙ならびにその製造方法および製版方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より孔版印刷用原紙としては、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の結晶性熱可塑性樹脂フィルムに、天然繊維、化学繊維、合成繊維またはこれらを混抄した薄葉紙、不織布、紗等の多孔性支持体を接着剤で貼り合わせた構造のものが知られている(例えば、特開昭51−2512号公報、特開昭57−182495号公報等)。
このような孔版印刷用原紙では、熱可塑性樹脂フィルムの画像に対応した部分に熱エネルギーを付与し、該部分を溶融し、穿孔させることにより製版が行われる。従って、製版に必要なエネルギーは、同材質フィルムの場合は熱可塑性樹脂フィルムの厚さで決定されるが、該フィルムの耐久性を保持するためにはある程度の厚さが必要となる。一方、製版感度を向上させるためには熱可塑性樹脂フィルムの厚さを薄くする必要がある。このように、熱可塑性樹脂フィルムの厚さに関して強度と感度には相反する要求特性があり、これらの双方を同時に満足させることは困難であった。また、孔版印刷用原紙の製版には熱可塑性樹脂フィルムを溶融穿孔するための一定以上の熱エネルギーの付与が必要であり、製版エネルギーの低減が困難であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、必要な強度を有しながら、低エネルギーで製版でき、穿孔性に優れ、かつインク転移量の調整が容易で裏移りが少なく、印刷性と画像鮮明性に優れ、さらに原紙の搬送性も良好な孔版印刷用原紙ならびにその製造方法および製版方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について、鋭意検討した結果、多数のインク通過が可能な厚み方向の断面形状が台形である微細孔を有するシートの微細孔に、該シートとは別の所定の特性を有する素材を充填材として充填させ、製版時に原稿に対応した部分の充填材のみを取り除いて貫通孔とすることにより、上記課題を達成できることを見いだし、本発明に到達したものである。
上記課題を達成するために本願で特許請求される発明は以下の通りである。
【0005】
(1)厚み方向の断面形状が台形である多数の微細孔を有するシートであって、微細孔に下記(A) 、(B) または(C) の充填材が充填されていることを特徴とする孔版印刷用原紙。
(A) 前記シートの融点より低い融点を有する樹脂
(B) 溶剤可溶性樹脂
(C) 加熱粘着性樹脂
(2)前記シートが合成樹脂フィルムであることを特徴とする(1)に記載の孔版印刷用原紙。
(3)前記微細孔の開孔部の面積分率が20〜70%の範囲にあり、開孔部を円とみなした場合の等価円直径が5〜200μmの範囲にあることを特徴とする(1)または(2)に記載の孔版印刷用原紙。
)前記シートの厚さが1.5〜20μmの範囲であることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の孔版印刷用原紙。
)前記シートの微細孔の開孔径の大きい方の面に多孔性支持体が積層されていることを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の孔版印刷用原紙。
【0006】
)表面に錐状の突起が形成されたローラを合成樹脂フィルムに圧接させて微細孔を形成させ、次いで該微細孔に充填材を充填することを特徴とする(1)〜()のいずれかに記載の孔版印刷用原紙の製造方法。
)表面に錐状の突起が形成されたローラを合成樹脂フィルムに圧接させて微細孔を形成し、該微細孔に充填材を充填させた後、該合成樹脂フィルムの片面に多孔性支持体を積層させることを特徴とする()に記載の孔版印刷用原紙の製造方法。
)(1)〜()のいずれかに記載の孔版印刷用原紙を製版するに際し、該孔版印刷用原紙の微細孔に充填された充填材の種類に応じて下記(a) 、(b) または(c) の方法により製版することを特徴とする孔版印刷用原紙の製版方法。
(a) 充填材が(A) である場合は該孔版印刷用原紙のシート面に熱エネルギーを付与し、該充填材を加熱溶融させて除去する
(b) 充填材が(B) である場合は該孔版印刷用原紙のシート面に該充填材を溶解する液体を付与し、該充填材を溶解させて除去する
(c) 充填材が(c) である場合は該孔版印刷用原紙のシート面に原稿を熱圧着させ、該充填材を熱接着させて除去する
【0007】
【作用】
本発明の孔版印刷用原紙では、インクの通過が可能な多数の厚み方向の断面形状が台形である微細孔を有するシートの前記微細孔に、該シートの融点より低い融点を有する樹脂、溶剤可溶性樹脂または加熱粘着性樹脂が充填材として充填され、原稿の文字や画像に対応した部分の充填材を、その充填材の特性に応じて溶融、溶解または熱接着により除去して製版することができるため、従来のように熱可塑性樹脂フィルム自体を溶融、穿孔して製版する場合に比べ、低エネルギーで製版を行うことができる。また孔版印刷用原紙の強度と感度がシートの厚さに依存しないため、強度と感度の双方を同時に満足させることが可能となる。また印刷時には、充填材の除去により生じた微細な厚み方向の断面が台形である貫通孔によってインクの過剰な通過が抑えられ、裏移りのない良好な印刷画像を得ることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における孔版印刷用原紙は、厚み方向の断面形状が台形である多数の微細孔を有するシートで構成され、該微細孔には(1) 上記シートの融点より低い融点を有する樹脂、(2) 溶剤可溶性樹脂または(3) 加熱粘着性樹脂が充填材として充填されている。
本発明に用いられる多数の微細孔を有するシートとしては、シートの一方の面から他方の面に通じるインクの通過が可能な微細な連通孔を有するか、または該連通孔を形成させることができるシートであれば特に制限はなく、例えば、微細孔が形成された合成樹脂フィルム、スポンジゴムシート、合成樹脂発泡体シートなどを用いることができる。
【0009】
前記合成樹脂フィルムにはフィルム形成性能のある合成樹脂が用いられ、例えば、従来公知の結晶性熱可塑性樹脂、例えば、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂を用いることができる。生産性等の点からはポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレートおよびこれらと他の成分との共重合体が好ましく用いられる。
またスポンジゴムとしては、天然ゴムシート、各種合成ゴムなどを用いることができる。また合成樹脂発泡体としてはポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォームなどを用いることができる。
【0010】
上記シートの厚さは、孔版印刷用原紙としての強度、微細孔の形成の容易性、コスト等の点から、1.5〜20μmとするのが好ましく、2〜15μmの範囲がより好ましい。
前記シートに形成される多数の微細孔は、画像再現性等の点からシート全面に均一に形成されていることが好ましく、また微細孔の開孔部の面積分率は20〜70%の範囲とするのが好ましく、より好ましくは25〜65%の範囲、さらに好ましくは30〜60%の範囲である。開孔部の面積分率が70%を超えるとインクが通過し易くなり、印刷物に裏移りが生じ易く、また印刷画像が滲みやすくなる。一方、開孔部の面積分率が20%未満ではインクの透過性が劣り、印刷画像がかすれて鮮明性が低下する場合がある。なお、本発明でいう開孔部の面積分率は、シートの一定面積を平面的に観察した場合に開孔部の占める面積を百分率で表したものをいう。
【0011】
微細孔の大きさは、微細孔の開孔部を円とみなした場合の等価円直径が5〜200μmの範囲であるのが好ましく、より好ましくは10〜100μm、さらに好ましくは15〜50μmの範囲である。等価円直径が200μmを超えるとインクが通過し易くなり、印刷物に裏移りが生じ易くなり、印刷画像が滲む場合がある。一方、等価円直径が5μm未満ではインクの透過性が劣り、印刷画像がかすれて鮮明性が低下する場合がある。
【0012】
微細孔は、合成樹脂フィルムの場合には、表面に突起が形成されたローラを該フィルム面に熱圧接することにより形成することができる。突起の形状は、形成される微細孔の断面が台形状となるように錐状の突起が用いられる。微細孔の断面を台形状として開孔径の小さい方の面を被印刷体と接する面とすることにより、インクの被印刷体への転移量の調節が容易となり、裏移りを効果的に防止することができる。
またスポンジゴムシートおよび合成樹脂発泡体シートの場合には、これらのシート自身が有する連通孔が微細孔となるが、台形状の均一な貫通孔を得るために上記合成樹脂フィルムの場合と同様の方法が施される。
【0013】
本発明に用いられる充填材は、上記シートの融点より低い融点を有する樹脂、溶剤可溶性樹脂または加熱粘着性樹脂であるが、これらの充填材には、本発明の目的を害さない範囲で染料や顔料等の他の成分が含まれていてもよい。
充填材として使用するシートの融点より低い融点を有する樹脂を用いることにより、低エネルギーでの熱製版が可能になる。例えば、シートとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを使用する場合には、低融点樹脂として、例えば、ポリ酢酸ビニルや、ポリエチレンテレフタレートの重合時に他のモノマーや反応成分を共重合させた共重合ポリエステルなどを用いることができる。他のモノマーまたは反応成分としては、イソフタル酸、アジピン酸、ダイマ酸などのジカルボン酸、ジエチレングリコール、ブタンジオール等の低分子量グリコール、ポリエチレングルコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングルコールなどのポリアルキレングリコール等を用いることができる。
【0014】
微細孔に充填された上記樹脂は、例えばハロゲンランプ、キセノンランプ、フラッシュランプ等による閃光照射、赤外線照射、レーザー光線等のパスル的照射、またはサーマルヘッド等による熱エネルギーの付与により、熱溶融し、これにより原稿の文字や画像に対応した微細な貫通孔、すなわちインクの通過孔を形成する。この場合に付与される熱エネルギーの量は、合成樹脂フィルムなどのシートを溶融しないエネルギー量とされる。
【0015】
また充填材として溶剤可溶性樹脂を用いる場合には、製版時に熱エネルギーを付与することなく、該溶剤可溶性樹脂を溶解する溶液をシートに付与することにより製版することができるため、製版エネルギーの大幅な低減を図ることができる。このような溶剤可溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアクリルアミド、澱粉、デキストリン、アルギン酸、アスコルビン酸、水溶性ポリウレタン等の水溶性樹脂が用いられる。またポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の有機溶剤可溶性樹脂を用いることもできる。これらの樹脂は単独で用いてもよいし、複数混合して用いても、共重合体として用いてもよい。
【0016】
上記溶剤可溶性樹脂を溶解する製版溶液としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、エチレングルコール、ジエチレングルコール、プロピレングリコール、グリセリン、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、メチルアミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの他、ヘキサン、ペプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶剤を単独でまたは混合して用いることができる。また製版溶液には、必要に応じて染料、顔料、防腐剤、湿潤剤等を含有させることができる。
【0017】
微細孔に充填された上記溶剤可溶性樹脂を上記製版溶液で製版する際には、例えば、スポイト、注射器、刷毛、スタンプ等の部材、万年筆、ボールペン、サインペン等の筆記具、インクジェットプリンター等の装置などを使用することができる。
この場合の合成樹脂フィルムなどのシートの素材としては、充填材を溶解するために使用する溶剤に対して耐性の良好な素材を選択することが好ましく、例えば、高密度ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンなどが好ましく用いられる。
【0018】
さらに充填材として加熱粘着性樹脂を用いる場合は、例えば、PPCトナー等により文字や画像が形成された原稿をシート表面に重ね合わせ、熱ローラやアイロン等の加熱手段を用いて熱圧着し、該原稿の文字や画像部分に、該部分に相当する微細孔内に充填された加熱粘着性樹脂を熱接着させ、該原稿をシートから剥離すると同時に文字や画像部分の充填材を剥離して微細な貫通孔を形成する。この場合の加熱粘着性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、スチレン−アクリル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ブチラール樹脂等が用いられる。
【0019】
シートの微細孔への充填材の充填は、例えば、図1に示す(A) 、(B) および(C) の工程により行うことができる。まず(A) に示すように、微細孔2が設けられた合成樹脂フィルム1を、ポリプロピレンシート3の上に載置し、充填材4の溶液またはエマルジョン等を合成樹脂フィルム1の表面に流し、その後、(B) に示すようにスキージ5でスキージングして充填材4を微細孔2に押し込み、次いで、(C) に示すように充填材4を固化させ、合成樹脂フィルム1をポリプロピレンシート3から剥がして本発明の孔版印刷用原紙6を得る。なお、本発明において、微細孔の厚み方向の断面は台形状であるが、図1では、矩形状で説明している。
【0020】
本発明において、上記充填材が充填された微細孔を有するシートはそれ自体で孔版印刷用原紙として用いることができるが、該シートの微細孔の開孔径の大きい方の面に、従来公知の薄葉紙、不織布、スクリーン紗等の多孔性支持体を積層して孔版印刷用原紙として用いてもよい。該シートと多孔性支持体との積層は接着剤を介して接着するか熱圧着するなどの方法等により行うことができる。また多孔性支持体として、鞘部に融点の低い合成樹脂成分を用いた鞘芯構造の複合繊維からなるスクリーン紗を使用してもよい。
【0021】
図2は、本発明の他の実施例を示す孔版印刷用原紙の断面説明図である。
図2において、孔版印刷用原紙10は、合成樹脂フィルム7と、該合成樹脂フィルム7の片面に積層された多孔性支持体8で構成され、前記合成樹脂フィルム7は、断面が台形状である微細孔2をフィルム全面に均一に多数有し、該微細孔には充填材4が充填されている。なお、9は、図示しないサーマルヘッドの熱素子により熱エネルギーが付与されて熱溶融して形成された貫通孔(インク通過孔)である。
このような孔版印刷用原紙では、印刷時には多孔性支持体側から印刷用インクが供給され、該印刷用インクは合成樹脂フィルム1の貫通孔9を経て図示しない被印刷体に転写されるため、被印刷体へのインク供給が過剰になるのを容易に防止でき、ひいては印刷物の裏移りを防止することができる。
【0022】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、例中の開孔部の面積分率は、微細孔を有するシートを直接、光学顕微鏡の明視野透過法で観察し、ピアス社製のハイビジョン対応画像装置を用いてモニター倍率240倍で面積分率を求め、任意の測定点10箇所についての平均値で示した。また開孔部の等価円直径は、前記画像を白黒反転処理して開孔部の等価直径を求めて算術平均し、かつ任意の測定点10箇所についての平均値で示した。
【0023】
実施例1
厚さ3μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに、先端に向かうにつれ先細りとなり、その最も細い部分の直径が40μmである錐状の突起を有する熱ローラ(温度150℃)を圧接し、該フィルムに微細孔を形成した。得られた微細孔の断面は台形状であり、開孔径が小さい方の面の面積分率は35%、等価円直径は42μmであった。また開孔径が大きい方の面の面積分率は45%、等価円直径は48μmであった。該フィルムに形成された微細孔に、図1の方法で酢酸ビニル樹脂を充填し、本発明の孔版印刷用原紙を得た。
この孔版印刷用原紙をサーマルヘッドにより製版した後、理想科学工業社製の孔版印刷機リソグラフGR375(商品名)に開孔径の小さい方の面が印刷用紙に接するように装着し、印刷を行ったところ、良好な印刷物を得ることができた。
【0024】
実施例2
実施例1において、充填材として加熱粘着性樹脂(スチレン−アクリル共重合体)を使用した以外は実施例1と同様の方法で孔版印刷用原紙を得た。
この孔版印刷用原紙の開孔径の大きい方の面にPPCトナー原稿を重ね合わせて100℃に加熱した加熱ローラで熱圧着し、その後、該PPC原稿を原紙から剥離して製版を行った。該製版済の原紙を理想科学工業社製の孔版印刷機リソグラフGR375に開孔部の小さい方の面が印刷用紙に接するように装着し、印刷を行ったところ、良好は印刷物を得ることができた。
【0025】
実施例3
実施例1において、充填剤として溶剤可溶性樹脂(ポリビニルアルコール樹脂)を使用した以外は実施例1と同様の方法で孔版印刷用原紙を得た。
この孔版印刷用原紙にインクジェット方式により水を付与して製版を行った後、理想科学工業社製の簡易印刷機プリントゴッコ(商品名)に開孔径の小さい方の面が印刷用紙に接するように装着し、油性インクを供給して印刷を行ったところ、良好は印刷物を得ることができた。
【0026】
【発明の効果】
本発明の孔版印刷用原紙によれば、多数のインキ通過が可能な厚み方向の断面形状が台形である微細孔を有するシートの微細孔に、該シートとは別の所定の特性を有する充填材を充填させることにより、原稿に対応した部分の充填材のみを取り除いて製版することができるため、孔版印刷用原紙の強度と感度が従来のように合成樹脂フィルムなどのシートの厚さに依存することがなく、必要な強度を維持しながら、低エネルギーで高感度で製版することができ、かつインク転移量の調整が容易で裏移りが少なく、原紙の搬送性も良好で印刷性と画像鮮明性に優れた印刷物を得ることができる。また低エネルギーで製版できるため製版装置の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す孔版印刷用原紙の製造方法の説明図。
【図2】本発明の他の実施例を示す孔版印刷用原紙の断面説明図。
【符号の説明】
1…微細孔が形成された合成樹脂フィルム、2…微細孔、3…ポリプロピレンシート、4…充填材、5…スキージ、6…孔版印刷用原紙、7…微細孔に充填材が充填された合成樹脂フィルム、8…多孔性支持体、9…貫通孔、10…孔版印刷用原紙。

Claims (8)

  1. 厚み方向の断面形状が台形である多数の微細孔を有するシートであって、微細孔に下記(A) 、(B) または(C) の充填材が充填されていることを特徴とする孔版印刷用原紙。
    (A) 前記シートの融点より低い融点を有する樹脂
    (B) 溶剤可溶性樹脂
    (C) 加熱粘着性樹脂
  2. 前記シートが合成樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1に記載の孔版印刷用原紙。
  3. 前記微細孔の開孔部の面積分率が20〜70%の範囲にあり、開孔部を円とみなした場合の等価円直径が5〜200μmの範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の孔版印刷用原紙。
  4. 前記シートの厚さが1.5〜20μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の孔版印刷用原紙。
  5. 前記シートの微細孔の開孔径の大きい方の面に多孔性支持体が積層されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の孔版印刷用原紙。
  6. 表面に錐状の突起が形成されたローラを合成樹脂フィルムに圧接させて微細孔を形成させ、次いで該微細孔に充填材を充填することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の孔版印刷用原紙の製造方法。
  7. 表面に錐状の突起が形成されたローラを合成樹脂フィルムに圧接させて微細孔を形成し、該微細孔に充填材を充填させた後、該合成樹脂フィルムの片面に多孔性支持体を積層させることを特徴とする請求項に記載の孔版印刷用原紙の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれかに記載の孔版印刷用原紙を製版するに際し、該孔版印刷用原紙の微細孔に充填された充填材の種類に応じて下記(a) 、(b) または(c) の方法により製版することを特徴とする孔版印刷用原紙の製版方法。
    (a) 充填材が(A) である場合は該孔版印刷用原紙のシート面に熱エネルギーを付与し、該充填材を加熱溶融させて除去する
    (b) 充填材が(B) である場合は該孔版印刷用原紙のシート面に該充填材を溶解する液体を付与し、該充填材を溶解させて除去する
    (c) 充填材が(c) である場合は該孔版印刷用原紙のシート面に原稿を熱圧着させ、該充填材を熱接着させて除去する
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