JP3602022B2 - ルウの加熱攪拌方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱調理中に物性が非常に硬くなる被攪拌材料すなわちルウ材料を効率的かつ均一に加熱攪拌して調理するルウの加熱攪拌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平10−278499号公報及び特開平10−278500号公報には、底部が球面であり加熱機能を有する加熱攪拌容器内に、内側外側2つの攪拌部材を傾斜した軸線を中心に回転駆動可能に配置してなる攪拌装置を使用したルウの製造方法及びこれに用いる加熱装置が開示されている。
これらの技術は、(1)加熱工程の前半:油脂と小麦粉からなる被攪拌材料は低品温では軟らかく流動状である。内側攪拌羽根及び外側攪拌羽根は、同一回転方向に30rpmで回転させる。釜内の被攪拌材料は流動的であり、効率的に流動させて高い攪拌効率でかつ速やかに昇温させる。
【0003】
(2)加熱工程の後半及び冷却工程の前半:被攪拌材料は、70ないし90℃の品温において急激に比較的硬い物性になりかつ塊になり易くなる。従って、内側攪拌羽根及び外側攪拌羽根を互いに逆方向に回転させ、かつ内側攪拌羽根を60rpmで回転させ、外側攪拌羽根を30rpmで回転させる。こうして内側攪拌羽根と外側攪拌羽根とによって塊かけた被攪拌材料を挟み込むようにして捕らえて破壊粉砕し、また回転軸Aに関し非対称に設けられた攪拌棒によって攪拌混合することができる。さらに、内側攪拌羽根及び外側攪拌羽根はこの回転によって回転軸Aの近傍の被攪拌材料を遠心力によって釜の内面に向けて送り出し、被攪拌材料の均一かつ効率的な攪拌調理を行う。
(3)冷却工程の後半:被攪拌材料は60ないし80℃の品温において再び軟らかい物性で流動状になり、内側攪拌羽根及び外側攪拌羽根を同一方向に30rpmで回転させる。釜内の被攪拌材料は高率的に流動攪拌され、かつ速やかに冷却することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ルウの製造工程において、油脂原料及び澱粉質原料に水系原料を加えて70℃以上の高温で加熱調理することにより、さらに好ましくは合成乳化剤を使用しないことにより、水系原料を加えない場合に比較して、焙煎特性を充分に生かして風味、香りにおいて非常にコクのあるルウを製造することができるという知見を得た。
しかし、このような場合(特に合成乳化剤を使用しない場合)、水系原料を加えて70℃以上(特に90℃以上)での加熱時にルウ材料の硬度が極めて高くなり、ルウ材料の攪拌が困難になり、製造の効率が非常に低くなるという問題があった。
【0005】
【発明の目的】
本発明は、従来のルウの製造工程における上述した問題点に鑑みてなされたものであって、合成乳化剤を含まず水系原料を含むルウ材料が高温に加熱されても、攪拌羽根に付着して供回りすることがなく、かつ攪拌羽根が高い破壊効率及び攪拌効率を発揮し、高度に均等混合しながら加熱することによって、焙煎特性を充分に生かして風味、香りにおいてはるかにコクのあるルウを効率的に製造することができるルウの加熱攪拌方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決する手段】
本発明は、底部が球面であり加熱機能を有する加熱攪拌容器内に、内側外側2つの攪拌部材を同一軸線を中心に回転駆動可能に配置してなる攪拌装置を配置し、該攪拌装置の前記内側攪拌部材が回転軸線に対し直交する方向に延びた攪拌突起を有し、前記外側攪拌部材が環状で、周囲に前記加熱攪拌容器の内面に接触して油脂原料及び澱粉質原料を含むルウ材料を掻き取る掻取羽根が取付けられており、前記加熱攪拌容器にルウ材料を投入し、該ルウ材料を前記内側外側2つの攪拌部材を同一方向に回転させて加熱攪拌する第1ステップと、
前記加熱攪拌容器に得られるルウの水分が1〜5重量%となるように水系原料を投入し、該水系原料の加わった前記ルウ材料を前記内側外側2つの攪拌部材を反対方向に回転させてルウ材料を70℃以上に加熱して攪拌する第2ステップとを行うことを特徴とするルウの加熱攪拌方法である。
【0007】
本発明の実施形態は以下のとおりである。前記第2ステップにおいて、ルウ材料を70℃以上に加熱することを特徴とする。前記第2ステップの次に、ルウ材料を、前記内側外側2つの攪拌部材を同一方向に回転させて攪拌する第3ステップを有することを特徴とする。前記ルウ材料に合成乳化剤を実質的に含めないことを特徴とする。前記内側攪拌部材は、回転軸線を中心に非対称であることを特徴とする。前記内側攪拌部材は、回転軸線を中心に該回転軸線方向において非対称な位置に攪拌突起を設けたことを特徴とする。前記内側攪拌部材は、回転軸線を中心として前記内側攪拌部材の一方の側のみに攪拌突起を設けたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を図に基づいて説明する。実施形態の攪拌装置は、図1に示すように、架台10に支持された半球形の釜12に、回転軸線Aが垂直線に対し25ないし40°、好ましくは30°傾斜した回転軸14に内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18が配置されている。釜12は、所望により外面周囲に蒸気、高熱水、冷水等を供給するようにジャケット構造にし、攪拌装置に調理機能を持たせている。
【0009】
釜12の上端部は蓋部材20によって開放自在に閉塞され、蓋部材20には被攪拌材料投入口22及び回転軸14が取り付けられている。回転軸14の上端には攪拌羽根の駆動源となる反転変速機能付きのモータ30が取り付けられ、従って内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18は同一方向にも反対方向にも回転駆動され、しかもその回転速度も任意に選択制御可能である。内側攪拌羽根16の回転速度は20ないし150rpmの範囲であり、外側攪拌羽根18の回転速度は10ないし50rpmの範囲である。内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18の下端部は、軸支部材32によって回転軸線Aを中心に回転可能に支持されている。
【0010】
内側攪拌羽根16は、回転軸線Aからの距離が異なるようにアーム34,35によって支持された攪拌軸36,37を有し、攪拌軸36,37には回転軸線Aに関し対称でなく配設された複数の攪拌棒40が取り付けられている。攪拌棒40は回転軸線Aに対し直交する方向に延びており、攪拌棒40の少なくともあるものは外側攪拌羽根18の近傍まで延びた長さを有する。内側攪拌羽根16の回転軸線Aを含む平面の断面は、図1に示すような矩形に限らず、楕円形や円形であってもよく、また回転軸線Aを中心とする楕円形であってもよい。
【0011】
外側攪拌羽根18は環状であって、周囲に釜12の内面に接触してルウ材料を掻き取る合成樹脂製の掻取羽根50が取り付けられている。掻取羽根50は、回転軸線Aの両側の掻取羽根50が釜12の同一の領域を掻き取ることがないように回転軸線Aに関し非対称に配置される。内側攪拌羽根18の回転軸線Aを含む平面の断面は、図1に示すような円形に限らず、楕円形や矩形であってもよい。また、外側攪拌羽根18には、内側攪拌羽根16に近傍まで延びる得る攪拌棒を取り付けてもよい。
内側攪拌羽根16には、回転軸線Aの近くに釜12の下方部に当たる位置に、回転軸線Aから若干ずらして設けられた温度センサー取り付け部材70を介して温度センサー72が取り付けられ、攪拌中のルウ材料の温度を測定する。
【0012】
以上の攪拌装置を用いて製造するルウには、例えば、ルウ材料全体に対して、牛脂や豚脂等の油脂原料を20〜40重量%、小麦粉等の澱粉質原料を5〜30重量%の割合で使用するのが好ましい。また、本発明において、前記油脂原料及び澱粉質原料を含むルウ材料に加える水系原料としては、例えば、乳製品、肉類・魚介類・野菜・果実等の汁液、エキス、ブイヨン等が挙げられる。かかる水系原料は、得られるルウの水分が1〜5重量%程度となるように使用するのが好ましい。
【0013】
また、このような油脂原料及び澱粉質原料を含むルウ材料には、上述した原料の他にも食塩、砂糖、調味料等の各種原料を使用することができるが、合成乳化剤を実質的に含めないのが好ましい。尚、ここで、合成乳化剤を実質的に含めないとは、ルウの加熱攪拌に際して合成乳化剤を積極的に加えないことを意味し、乳製品等からもたらされる少量の合成乳化剤、例えば、0.002重量%程度の合成乳化剤の存在を排除するものではない。
【0014】
【実験例】
油脂と小麦粉とを調理してなる小麦粉ルウは、水系原料を加えること及び加熱調理時すなわち攪拌中の品温の変化によってその物性が大きく異なる。従って、以下に示すように攪拌羽根の回転速度及び回転方向を順次変えて攪拌した。
(1)加熱工程の前半:油脂(牛脂と豚脂の混合脂)15重量部と小麦粉10重量部からなるルウ材料は低品温では軟らかく流動状である。内側攪拌羽根16を30rpm で及び外側攪拌羽根18を15rpmで同一回転方向に回転させた。釜12内のルウ材料は流動的であり、効率的に流動させて高い攪拌効率でかつ速やかに昇温させることができた。
【0015】
(2)加熱工程の後半及び冷却工程の前半:さらに、油脂(牛脂と豚脂の混合脂)10重量部、水系原料としてチーズペースト2重量部、野菜ペースト1重量部及びビーフエキス2重量部、並びに、粉体原料としてコーンスターチ5重量部、カレーパウダー10重量部、食塩5重量部、砂糖10重量部、粉乳8重量部及びグルタミン酸ナトリウム2重量部を加えて加熱した。加熱されたルウ材料は、90ないし110℃の品温において急激に極めて硬い物性になりかつ塊になり易くなった。従って、内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18を互いに逆方向に回転させ、かつ内側攪拌羽根16を30rpmで回転させ、外側攪拌羽根18を15rpmで回転させた。こうして内側攪拌羽根16と外側攪拌羽根18とによって塊かけたルウ材料を挟み込むようにして捕らえて破壊粉砕し、また回転軸Aに関し非対称に設けられた攪拌棒40によって攪拌混合することができた。さらに、内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18はこの回転によって回転軸Aの近傍のルウ材料を遠心力によって釜12の内面に向けて送り出し、ルウ材料の均一かつ効率的な攪拌加熱調理を行うことができた。
【0016】
(3)冷却工程の後半:ルウ材料は60ないし80℃の品温において再び軟らかい物性で流動状になり、内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18を同一方向回転させ、かつ内側攪拌羽根16を30rpmで回転させ、外側攪拌羽根18を15rpmで回転させた。釜12内のルウ材料は高率的に流動攪拌され、かつ速やかに冷却することができた。
また、前記(1)及び(3)において内側攪拌羽根16及び外側攪拌羽根18を同一方向に回転させることによって、前記(1)〜(3)において全て反対方向に回転させる場合と比較して、回転軸14に対する負荷と少なくすることができた。
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、水系原料を含むルウ材料が高温に加熱されても、攪拌羽根に付着して供回りすることがなく、かつ攪拌羽根が高い破壊効率及び攪拌効率を発揮し、高度に均等混合しながら加熱することによって、焙煎特性を充分に生かして風味、香りにおいてはるかにコクのあるルウを効率的に製造することができる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のルウの加熱攪拌方法を実施した攪拌装置の断面図である。
【符号の説明】
A 回転軸線
10 架台
12 釜
14 回転軸
16 内側攪拌羽根
18 外側攪拌羽根
20 蓋部材
22 被攪拌材料投入口
30 モータ
32 軸支部材
34,35 アーム
36,37 攪拌軸
40 攪拌棒
50 掻取羽根
70 温度センサー取り付け部材
72 温度センサー
Claims (6)
- 底部が球面であり加熱機能を有する加熱攪拌容器内に、内側外側2つの攪拌部材を同一軸線を中心に回転駆動可能に配置してなる攪拌装置を配置し、該攪拌装置の前記内側攪拌部材が回転軸線に対し直交する方向に延びた攪拌突起を有し、前記外側攪拌部材が環状で、周囲に前記加熱攪拌容器の内面に接触して油脂原料及び澱粉質原料を含むルウ材料を掻き取る掻取羽根が取付けられており、前記加熱攪拌容器にルウ材料を投入し、該ルウ材料を前記内側外側2つの攪拌部材を同一方向に回転させて加熱攪拌する第1ステップと、
前記加熱攪拌容器に得られるルウの水分が1〜5重量%となるように水系原料を投入し、該水系原料の加わった前記ルウ材料を前記内側外側2つの攪拌部材を反対方向に回転させてルウ材料を70℃以上に加熱して攪拌する第2ステップとを行うことを特徴とするルウの加熱攪拌方法。 - 前記ルウ材料に合成乳化剤を実質的に含めないことを特徴とする請求項1に記載のルウの加熱攪拌方法。
- 前記第2ステップの次に、ルウ材料を、前記内側外側2つの攪拌部材を同一方向に回転させて攪拌する第3ステップを有することを特徴とする請求項1に記載のルウの加熱攪拌方法。
- 前記内側攪拌部材は、回転軸線を中心に非対称であることを特徴とする請求項1に記載のルウの加熱攪拌方法。
- 前記内側攪拌部材は、回転軸線を中心に該回転軸線方向において非対称な位置に攪拌突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載のルウの加熱攪拌方法。
- 前記内側攪拌部材は、回転軸線を中心として前記内側攪拌部材の一方の側のみに攪拌突起を設けたことを特徴とする請求項1に記載のルウの加熱攪拌方法。
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1999
- 1999-12-27 JP JP36865099A patent/JP3602022B2/ja not_active Expired - Lifetime
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