JP3601132B2 - 帯状シート巻取装置の速度設定装置 - Google Patents

帯状シート巻取装置の速度設定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は帯状シートを原反ロールから巻き戻しながら巻き取ることにより所要巻取長さの巻取ロールを形成する巻取装置の速度設定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、上述の巻取装置では、一般に、帯状シートは原反ロールから巻き戻されて所要の速度で送りローラにより巻取位置へ送り出され、その送り速度に応じた巻取速度で巻き取られて巻取ロールになる。送りローラは、速度制御装置により速度制御されるモータにより回転駆動され、速度制御装置は、速度設定装置から送りローラによる帯状シートの巻取位置への送り速度の目標値を得る。
【0003】
図5は従来の速度設定装置より速度制御装置へ目標値として与えられる送り速度の変化曲線の代表例を示している。この送り速度の変化曲線において送り速度vは巻取開始から時間t1まで一定の加速度で加速され、所要送り速度Vsになる。そして、所要送り速度Vsで一定に維持され、時間t2において減速指令を受けると一定の負の加速度で減速され、時間t3において所定の微小速度V0になり、時間t4において巻取停止指令を受けとる更に減速して零になる。
【0004】
送り速度の変化曲線において、所要送り速度Vsやその加速・減速時の加速度が大きすぎると巻き取られた帯状シートが幅方向にずれて不良品となり、それらが小さすぎると巻取時間が長くなり能率が低下する。また、巻取終了直前において微小速度での巻取時間が長いと、巻取ロールの表層部が硬巻きとなって品質低下の原因になる。そして、最適な変化曲線は帯状シート滑り易さやその他の巻取条件に応じて変わり得る。それゆえ、送り速度の変化曲線を必要に応じて変えることができるようにするために、従来の速度設定装置は、通常、所要送り速度Vs、加速時間T1、減速時間T2、微小速度V0の各設定部を備えている。また、従来の速度設定装置には、減速開始時期を自動的に演算して減速を指令する演算回路と、巻取停止を指令するためのプリセットカウンタとを備え、帯状シートが所要量巻き取られるのとほぼ同時に減速が完了して巻取運転が自動的に停止するようにしたものがある。そして、一般に巻取ロールの巻取量は巻取長さで管理されるので、前記プリセットカウンタには、検出した巻取長さが入力され、その設定部には必要な巻取長さが設定される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、図5に示すような送り速度変化曲線に基づき送り速度が制御される帯状シート巻取装置では、巻き始め及び加速終了時、減速開始時、巻取終了時に加速度が急激に変化する。そのため巻取ロールの駆動系と帯状シートの搬送駆動系との慣性力が衝撃的に変化すると共に両者の慣性力が相違すること等に起因して、巻取張力が変動したり、巻取中の巻取ロールに衝撃が生じたりする。それによって巻取中の帯状シートが幅方向にずれ、巻取ロールが端面不揃いを生じて不良品になるという問題を生じる。つまり、図5において送り速度の変化曲線が屈折している部分で帯状シートが幅方向にずれ易い。更に、帯状シートの搬送駆動系、巻取駆動系に衝撃力が作用するので機械寿命の観点からも好ましくない。
【0006】
一般に、巻取条件が変わったとき、巻取不良を生じず、かつ能率のよい運転が可能な送り速度を、その送り速度の設定を巻取中多様に変更して試行錯誤により求めることが必要である。また、加速中に巻取不良の兆候か認められると加速を停止し、又は減速し、その状態で巻取不良の発生を防ぎ、その後、様子を見て加速したり、或るいは巻取停止後、再始動したりすることが必要になる。しかし、従来の装置では、加速時間、減速時間、所要送り速度により送り速度の変化曲線を設定するので、巻取ロールの駆動系や帯状シートの搬送駆動系の慣性力の大きさに比例的に関係する加速度の大きさを把握しにくい。そのため、巻取条件が変わったとき適正な送り速度の変化曲線を的確に設定するのが難しい。そして、巻取ロールは局部的に巻きずれを生じても、また所要の巻取長さに満たなくても製品価値を失う。そのため、従来の巻取装置では、巻取中の送り速度の設定変更が歩留低下の一因になっている。そして、最近の送り速度が高速化した巻取装置、大型化した巻取装置ほど前述の問題が顕著になる傾向にある。
【0007】
本発明の目的は、巻取開始時、加速終了時、減速開始及び停止直前の送りローラによる帯状シートの巻取位置への送り速度の加速度の急変による巻取不良だけでなく、送り速度の加速時における送り速度の設定変更による巻取不良を防止でき、かつ、巻取停止直前の低速運転による巻取ロール表層の硬巻きや、送り速度の減速時に巻取長さが所要値に達して急停止することによる巻取不良を防ぐことができると共に、能率的な巻取運転ができる送り速度の設定が的確にできるようになる帯状シート巻取装置の速度設定装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、上記目的を達成するために、本発明は、帯状シートを原反ロールから巻き戻しながら巻き取って所要巻取長さの巻取ロールを形成する巻取装置において前記原反ロールから巻き戻された帯状シートを巻取位置へ送るための送りローラを回転駆動するモータの速度制御装置に、前記送りローラによる帯状シートの送り速度の目標値を与える速度設定装置であって、図1に示すように、入力装置より入力される、定常時における所要送り速度Vs加速時の送り速度に係る加速度の上限を決める加速度制限値A、減速時の送り速度に係る加速度の下限を決める負の加速度制限値D、送り速度に係る加速度の漸増率Ja、加速度の漸減率Jd、及び所要巻取長さLsをそれぞれ設定するための設定手段15と、設定手段15から所要送り速度Vs、加速度制限値A、負の加速度制限値D、加速度の漸増率Ja及び加速度の漸減率Jdを受けて、送り速度に係る加速度の目標値aを、加速が必要なときは送り速度に係る加速度の目標値aが前記漸増率Jaに基づき漸増し、かつ漸増中に前記加速度制限値Aを越えようとすると該加速度制限値Aに抑えられ、その後、前記漸減率Jdに基づき零まで漸減するように、また、減速が必要なときは送り速度に係る加速度の目標値aが前記漸減率Jdに基づき漸減し、かつ漸減中に前記負の加速度制限値Dを越えようとすると該負の加速度制限値Dに抑えられ、その後、前記漸増率Jaに基づき零まで漸増するように、刻々算出する加速度演算手段16と、前記加速度演算手段16で発生した加速度の目標値aに基づき、送り速度vの目標値を刻々演算する送り速度演算手段17と、帯状シートの巻取長さ検出手段21と、設定手段15から負の加速度制限値D、加速度の漸増率Ja及び加速度の漸減率Jd、前記加速度演算手段16から加速度の目標値a、送り速度演算手段17から送り速度の目標値vを受け、加速度演算手段16からの送り速度に係る加速度の目標値aをシミュレーションにおける減速開始時の加速度の目標値とし、送り速度演算手段17からの送り速度の目標値vをシミュレーションにおける減速開始時の送り速度の目標値として、前記加速度演算手段16が現時点で減速指令を受けてから巻取停止に至るまでに刻々算出する減速時送り速度に係る加速度の目標値a、及びこの加速度の目標値a´に基づく減速時の送り速度の目標値v´をシミュレーションし、このシミュレーションした減速時の送り速度の目標値v´に基づき、現時点で減速指令を受けてから巻取停止に至るまでの送り速度の減速時の巻取長さLdを刻々演算する模擬演算手段18と、前記模擬演算手段18で得た送り速度の減速時の巻取長さLdを前記所要巻取長さLsから差し引いて減速開始時巻取長さLを刻々演算する減速開始時巻取長さ演算手段19と、 前記巻取長さ検出手段21で検出した巻取長さlが、前記減速開始時巻取長さ演算手段19により演算した減速開始巻取長さLに達したとき、前記加速度演算手段16へ減速指令を出す減速指令手段20とを備えることを特徴とする。
【0009】
【作用】
本発明によれば、設定手段15により、所要送り速度Vs、加速時の加速度制限値A、減速時の負の加速度制限値D、加速度の漸増率Ja及び漸減率Jdを設定し、加速度演算手段16により、加速度の目標値aを刻々算出し、この加速度の目標値aに基づき送り速度演算手段17により送り速度の目標値vを演算して速度制御装置5へ与え、これに基づき送りローラによる帯状シートの送り速度が制御されるので、帯状シート巻取装置では、送りローラにより帯状シートの送り速度を加速するとき、加速度の目標値aに基づく加速度が生じる。そのため、巻取運転中の送り速度に係る加速度の大きさや変化の状態が、設定値より把握できる。また、加速、減速時に、加速度の目標値aが漸増・漸減するので、加速度の急激な変化を避けることができ送り速度が滑らかに変化する。しかも、送り速度の加速時に所要送り速度Vs、加速度制限値A、負の加速度制限値D等の設定変更を行っても、加速度の急激な変化を自動的に避けることができ、随時に送り速度を滑らかに変化させることができる。
【0010】
更に、加速度演算手段16が減速指令を受けてから巻取停止に至るまでに発生させる減速時の送り速度に係る加速度の目標値a′を、模擬演算手段18により刻々シミュレーションし、前記減速時の送り速度に係る加速度の目標値a′に基づき、現時点で減速指令を受けてから巻取停止に至るまでの送り速度の減速時の巻取長さLdを刻々演算するので、送り速度の加速時、定常時に関わらず、また送り速度が曲線的に変化する部分においても巻取長さを正確に算出でき、送り速度の減速時の巻取長さLdが正確に得られる。そして、この送り速度の減速時の巻取長さLdに基づき自動的に減速指令をするので、巻取長さが所要値になる時期と、減速完了時期との誤差を殆ど無くすることができる。
【0011】
【実施例】
図2は本発明の一実施例に係る帯状シート巻取装置の速度設定装置の説明図である。帯状シート巻取装置において、帯状シートSは原反ロール1から巻き戻され、モータ2により回転駆動される送りローラ3により所要の速度で巻取位置へ送られ、その送り速度に応じた巻取速度で巻き取られて巻取ロール4になる。そして、モータ3は速度制御装置5により回転速度を自動制御され、速度制御装置5は速度設定装置6により、送りローラ3による帯状シートSの巻取位置への送り速度の目標値vを巻取中に時々刻々入力される。
【0012】
速度設定装置6は、主にマイクロコンピュータ7により構成され、入力インターフェイス部8、出力インターフェイス部9、記憶部10を備えている。入力インターフェイス部8には、巻取長さlを検出するために、送りローラ3の回転に応じてパルス信号を発生するパルス発生器11よりパルス信号が入力される。また、始動スイッチ12より巻取開始信号が入力される。更に、例えばキーボードからなる入力装置13から所要送り速度Vs、加速時における加速度制限値A、加速度の漸増率Ja及び漸減率Jd、減速時における負の加速度制限値D、所望の巻取ロールを形成するための所要巻取長さLsがそれぞれ入力される。そして、出力インターフェイス部9から速度制御装置5へ送り速度の指令信号vが出力される。また、出力インターフェイス部9には、各入力値や出力値を表示するための、例えばCRTからなる表示装置14が接続されている。
【0013】
図1に示すように、マイクロコンピュータ7には、設定手段15と、加速度演算手段16と、送り速度演算手段17と、減速指令が出る前に、送り速度の減速時の巻取長さを模擬演算するための模擬演算手段18と、減速指令時巻取長さ演算手段19と、減速指令手段20と、巻取長さ検出手段21とが構成されている。そして、これらはクロックパルスに応じて刻々作動する。
【0014】
設定手段15には、前記入力装置13より入力されたVs、A、Ja、Jd、D、Lsの値がそれぞれ記憶されている。
【0015】
加速度演算手段16は、現在の加速度の目標値aを記憶する加速度記憶部22、現在の送り速度から目的の送り速度まで加速又は減速するときの、現在の送り速度の目標値vと目的の送り速度の値との差つまり所要加速量ΔVを演算する加速量演算部23、加速度記憶部22に記憶されている加速度の目標値aに、設定された漸増率Jaに基づく増分を加算するための加速度加算部24、加速度記憶部22に記憶されている加速度の目標値aから、設定された漸減率Jd基づく減分を減算するための加速度減算部25、加速度の目標値aが加速度制限値Aから漸減率Jdに基づき零まで変化したとき、その変化中に生じる送り速度差ΔVa3を演算する第1速度差演算部26、加速度の目標値aが負の加速度制限値Dから漸増率Jaに基づき零まで変化したとき、その変化中に生じる送り速度差ΔVd3を演算する第2速度差演算部27、及び制御部28とからなる。
【0016】
加速量演算部23は、巻取開始後、減速指令S1を受けるまでは、設定された所要送り速度Vsから送り速度演算手段17に記憶されている送り速度の目標値vを差し引いて所要加速量ΔVを刻々演算し、その所要加速量ΔVを記憶する。また、減速指令S1を受けると、現在の送り速度の目標値vの負の値を所要加速量ΔVとして刻々記憶する。
【0017】
制御部28は、加速量演算部23の所要加速量ΔVが正の値のとき、加速度加算部24により、加速度記憶部22に記憶されている加速度の目標値aに、漸増率Jaに基づく増分を加算し、それを加速度の目標値aとして加速度記憶部22に記憶させるという動作を刻々繰り返すことによって、加速度の目標値aを漸増率Jaに基づき、図3における時間ta0からta1の期間のように漸増させることができる。そして、加速度の目標値aが加速度制限値Aに達すると、加速度制限値Aを加速度記憶部22に記憶させ、かつ、加速量演算部23の所要加速量ΔVが、第1速度差演算部26で演算された速度差ΔVd3以下になると、加速度減算部25により、加速度記憶部22に記憶されている加速度の目標値aから漸減率Jdに基づく減分を減算し、それを加速度の目標値aとして加速度記憶部22に記憶させるという動作を刻々繰り返すことによって、加速度の目標値aを漸減率Jdに基づき、図3における時間ta2からta3の期間のように漸減させることができる。
【0018】
また、制御部28は、加速量演算部23の所要加速量ΔVが負の値のとき、加速度の目標値aを加速度減算部25により、図3における時間td0からtd1の期間のように漸減率Jdに基づき漸減させ、加速度の目標値aが負の加速度制限値Dに達すると、負の加速度制限値Dを加速度記憶部22に記憶させ、かつ、加速量演算部23の所要加速量ΔVの絶対値が、第2速度差演算部27で演算された速度差ΔVa3の絶対値以下になると、加速度の目標値aを加速度加算部24により、図3における時間td2からtd3の期間のように漸増させることができる。
【0019】
送り速度演算手段17は、加速時又は減速時には加速度演算手段16で発生した加速度の目標値aに基づき、記憶している現在の送り速度の目標値vを増減して新たに送り速度の目標値vを演算して刻々記憶する。また、記憶した送り速度の目標値vが所要送り速度Vsに達して加速度が零になると所要送り速度Vsを送り速度目標値vとして記憶する。そして、記憶した送り速度の目標値vを時々刻々速度制御装置5へ出力することができる。
【0020】
模擬演算手段18は、加速度演算手段16が減速指令S1を受けてから巻取停止まで間に発生する加速度の目標値a′を演算する加速度模擬演算手段29と、この加速度模擬演算手段29で演算された加速度の目標値a′に基づき減速時の送り速度の目標値v′を刻々演算する送り速度模擬演算手段30と、この送り速度模擬演算手段30で演算された送り速度の目標値v′に基づき、減速指令S1を受けてから巻取停止までに巻き取られる送り速度の減速時の巻取長さLdを演算するための巻取長さ演算手段31とからなる。
【0021】
加速度模擬演算手段29は、加速度演算手段16と同様に加速度記憶部32、加速度加算部33及び加速度減算部34を備え、また、第2速度差演算部27から速度差ΔVa3、加速度記憶部22から加速度の目標値a、送り速度模擬演算手段30から送り速度の目標値v′が入力される制御部35を備えている。この制御部35は、シミュレーション開始時、そのときの加速度演算手段16における加速度の目標値aを、減速開始時の加速度の目標値a′として加速度記憶部32に記憶させ、この減速開始時の加速度の目標値a′に基づき、減速指令S1を受けてから巻取停止に至るまでの間の、減速時の送り速度に係る加速度の目標値a′を、加速度演算手段16と同様に加速度模擬演算手段29に算出させることができる。
【0022】
送り速度模擬演算手段30はシミュレーション開始時に送り速度演算手段17から送り 速度の目標値vを入力し、それをシミュレーションにおける送り速度の目標値として記憶する。そして、その記憶した送り速度の目標値vを、加速度模擬演算手段29からの刻々の加速度の目標値a′に基づき減少させ、送り速度演算手段17により送り速度の目標値vを演算する場合と同様に減速時の刻々の送り速度の目標値v′を算出することができる。
【0023】
巻取長さ演算手段31は、送り速度模擬演算手段30で演算された刻々の送り速度の目標値v′を積分して、現時点において減速指令S1を受けてから巻取が停止するまでの送り速度の減速時の巻取長さLdを刻々得ることができる。
【0024】
減速指令時巻取長さ演算手段19は、模擬演算手段18で得た送り速度の減速時の巻取長さLdを、設定された所要巻取長さLsから差し引いて減速開始時巻取長さLを演算することができる。そして、減速指令手段20は、前記減速指令時の巻取長さLと、巻取長さ検出手段21で検出した巻取長さlとを受け取り、両者を時々刻々比較して、巻取長さlが減速指令時の巻取長さLに達したとき加速量演算部23に減速指令S1を送ることができる。この実施例では巻取長さ検出手段21は図2のパルス発生器11からのパルス信号を計数するカウンタ回路からなる。
【0025】
この実施例の速度設定装置において、図2に示す始動スイッチ12を押して巻取開始信号を出すと、加速量演算手段23により所要加速量ΔVが演算され、この場合、所要加速量ΔVは正の値であるため、加速度演算手段16は、図3の左部分に示す加速度変化曲線Ca1のように時間の経過に従い変化する加速度の目標値aを発生させる。このとき、送り速度の目標値vは送り速度変化曲線Cv1のように変化して所要送り速度Vsになる。そして加速度の目標値aが零になると送り速度の目標値vは所要送り速度Vsに維持される。送り速度の加速時、時間t1における送り速度の演算値V1は、図3の加速度変化曲線Ca1、時間tに対応する横軸、及びt1を通る縦軸に囲まれる部分の面積に相当する。また、送り速度の目標値vは加速度の目標値aの漸減中にΔVa3だけ増加する。そして、ΔVa3は加速度変化曲線Ca1、時間tに対応する横軸、及び時間ta2を通る縦軸に囲まれる部分の面積に相当し、ΔVa3=A・A/(2・Jd)となる。そこで、加速度演算手段16は、加速度の目標値aが零になったとき送り速度の目標値vがVsになるようにするために、ΔVがΔVa3になると漸減を開始する。
【0026】
減速指令手段19より減速指令S1が出ると、所要加速量ΔVが負の値になるので、加速度演算手段16は、図3の右部分に示す加速度変化曲線Ca2のように変化する加速度の目標値aを発生させる。このとき、送り速度の目標値vは送り速度変化曲線Cv2のように変化して零になる。送り速度の減速時、時間をt2における送り速度の目標値V2は、図3の加速度変化曲線Ca2、時間tに対応する横軸、td0を通る縦軸、及びt1を通る縦軸により囲まれる部分の面積に相当する。また、送り速度の目標値vは加速度の目標値aの漸増中に、ΔVd3だけ減少する。そして、ΔVd3は、加速度変化曲線Ca2、時間に対応する横軸、及び時間td2を通る縦軸に囲まれる部分の面積に相当し、ΔVd3=D・D/(2・Ja)となる。そこで、加速度演算手段16は、加速度の目標値aが零になったとき送り速度の目標値vが零になるようにするために、ΔVがΔVa3になると加速度の目標値aの漸増を開始する。
【0027】
加速度が零のとき、模擬演算手段18では、図3の右部分に示す加速度変化曲線Ca2と同じ加速度変化曲線となるように刻々加速度の目標値aが発生する。そして、その加速度の目標値aに基づき、減速時の送り速度の目標値vが、送り速度変化曲線Cv2と同様に変化するように演算され、巻取長さ演算手段31では送り速度の減速時の巻取長さが演算される。そして、この演算された送り速度の減速時の巻取長さは、図3の送り速度変化曲線Cv2、時間tの横軸、時間td0を通る縦軸、及び時間td3を通る縦軸とで囲まれる部分の面積に相当する。
【0028】
加速度演算手段16が、送り速度の加速時に減速指令S1を受けると、所要加速量ΔVは負の値になって、図1に示す加速度減算部24が働き、加速度の目標値aは、図4に示す加速度変化曲線Ca3のように変化し、送り速度の目標値vは送り速度変化曲線Cv3のように変化する。この場合、減速指令を受けた時間をt3、そのときの送り速度の目標値をV3とすると、送り速度の目標値vは、t3から加速度の目標値aが零になる時間ta3まで、送り速度の目標値V3より大きくなり、その後漸減する。そして、模擬演算手段18では、シミュレーション開始時毎に、加速度演算手段16に記憶された加速度の目標値aを現在の加速度の目標値a′として記憶するので、送り速度の加速時は加速度の目標値a′が現在の加速度の目標値aから漸減することになり、加速度変化曲線Ca3のように変化する加速度の目標値a′が発生する。そして、この加速度の目標値a′に基づき送り速度の目標値v′を図4に示す送り速度変化曲線Cv3と同様に変化させ、送り速度変化曲線Cv3、時間tに対応する横軸、時間t3を通る縦軸で囲まれる部分の面積に相当する巻取長さが、送り速度の減速時の巻取長さLdとして算出される。
【0029】
加速時に所要送り速度Vsが設定変更された場合、その所要送り速度Vsが現在の時間t3における現在の送り速度v3よりも大きいときは、そのまま加速を続け、ΔVが第1速度差演算手段26で演算されたΔVa3になると、加速度の目標値aを漸減させる。また、変更した所要送り速度Vsが現在の送り速度v1より小さいときは、所要加速量ΔVが負の値になるので、加速度減算部25が働き、加速度の目標値aは、図4に示すように、現在の時間t3における現在の加速度の目標値Aから漸減し、加速度変化曲線Ca4のように変化し、送り速度の目標値vは送り速度変化曲線CV4のように変化して所要送り速度Vsになる。
【0030】
以上、本発明を一実施例により説明したが、実施態様は上述に限らず必要に応じて多様に変わり得る。たとえば、加速度の漸増率と漸減率は、大きさが異なってもよいし、大きさを同じにして、設定手段には、それらの値を共通に設定するようにしてもよい。また、加速度制限値と負の加速度制限値は、その絶対値が異なる大きさであってもよいし、その絶対値を同じ大きさとし、設定手段には、それらの値を共通に設定するようにしてもよい。
【0031】
【発明の効果】
発明によれば、設定手段で設定値を変えることにより、送りローラによる帯状シートの巻取位置への送り速度に係る加速度の大きさや、その漸減、漸増の勾配が多様に異なる加速度変化曲線を得ることができる。そして、加速・減速時の巻取不良の原因となる、巻取ロールの駆動系や帯状シートの搬送駆動系の慣性力の大きさに対して、送り速度の加速度の大きさは比例的に関係するので、設定された送り速度の適否を予測し易い。そのため、帯状シート表面の滑り易さ等の巻取条件が変わったとき、それに応じて最適のパターンで変化する送り速度を的確に得ることが可能になる。また、送り速度を滑らかに変化させることができるので、巻取開始時、加速終了時、減速開始時及び巻取停止時に、帯状シート張力が変動したり巻取ロールが衝撃力を受けたりすることが防止できる。それゆえ、巻きずれを防ぐことができ、品質の良い巻取ロールが得られる。そして、巻取装置の故障も生じにくい。
【0032】
また、送り速度の減速時の巻取長さを、送り速度の変化曲線が湾曲している部分においても正確に求めることができ、減速開始時における巻取長さを正確に演算して自動的に減速を開始させることができる。そのため、巻取長さが所要値になる時期と減速が終了する時期との誤差を殆ど無くすることができる。それゆえ、減速途中での急停止による巻きずれや、減速終了後の低速運転による巻取ロール表層の硬巻きを防ぐことができる。したがって、加速、減速に伴う巻きずれだけでなく巻取終了直前での巻きずれや巻取ロール表層部の硬巻きを防止できる共に能率的な巻取運転ができる送り速度を的確に設定することができる。
【0033】
更に、加速時に所要送り速度の設定を変更しても、送り速度が滑らかに変化するので加速時の巻取不良の防止が可能になり、かつ巻取長さが所要値になる時期と減速終了時期との誤差も殆どない。それゆえ、シート材質等が変わった場合における送り速度の不適正や、帯状シートの不良などにより、送り速度の加速時に巻取不良の兆候が認められた場合、直ちに加速を停止し、或は減速して、その状態で巻取不良の発生を防ぎ、その後、様子を見て加速したり、あるいは巻取停止後、再始動したりすることができる。したがって、巻取開始後の加速時に巻取不良を防止することができ、それによって歩留を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る速度設定装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の一実施例に係る帯状シート巻取装置と速度設定装置とのハードウェアの関連を示す説明図である。
【図3】本発明において得られる加速度変化曲線及び送り速度変化曲線を示す線図である。
【図4】加速中に減速が必要になった場合の加速度変化曲線及び送り速度変化曲線を示す線図である。
【図5】従来の加速度の変化曲線、送り速度の変化曲線に関する線図である。
【符号の説明】
S 帯状シート
1 原反ロール
2 モータ
3 送りローラ
4 巻取ロール
5 速度制御装置
6 速度設定装置
7 マイクロコンピュータ
12 始動スイッチ
15 設定手段
16 加速度演算手段
17 送り速度演算手段
18 模擬演算手段
19 減速指令時巻取長さ演算手段
20 減速指令手段
21 巻取長さ検出手段
22 加速度記憶部
23 加速量演算部
24 加速度加算部
25 加速度減算部
26 第1速度差演算手段
27 第2速度差演算手段
28 制御部
29 加速度模擬演算手段
30 送り速度模擬演算手段
31 巻取長さ演算手段
32 加速度記憶部
33 加速度加算部
34 加速度減算部
35 制御部

Claims (1)

  1. 帯状シートを原反ロールから巻き戻しながら巻き取って所要巻取長さの巻取ロールを形成する巻取装置において前記原反ロールから巻き戻された帯状シートを巻取位置へ送るための送りローラを回転駆動するモータの速度制御装置に、前記送りローラによる帯状シートの送り速度の目標値を与える速度設定装置であって、
    入力装置より入力される、定常時における所要送り速度加速時の前記送り速度に係る加速度の上限を決める加速度制限値、減速時の前記送り速度に係る加速度の下限を決める負の加速度制限値、前記送り速度に係る加速度の漸増率、加速度の漸減率、及び所要巻取長さをそれぞれ設定するための設定手段と、
    前記設定手段から前記所要送り速度、前記加速度制限値、前記負の加速度制限値、前記加速度の漸増率及び前記加速度の漸減率を受けて、前記送り速度に係る加速度の目標値を、加速が必要なときは前記送り速度に係る加速度の目標値が前記漸増率に基づき漸増し、かつ漸増中に前記加速度制限値を越えようとすると該加速度制限値に抑えられ、その後、前記漸減率に基づき零まで漸減するように、また、減速が必要なときは前記送り速度に係る加速度の目標値が前記漸減率に基づき漸減し、かつ漸減中に前記負の加速度制限値を越えようとすると該負の加速度制限値に抑えられ、その後、前記漸増率に基づき零まで漸増するように、刻々算出する加速度演算手段と、
    前記加速度演算手段で発生した加速度の目標値に基づき、前記送り速度の目標値を刻々演算する送り速度演算手段と、
    帯状シートの巻取長さ検出手段と、
    前記設定手段から前記負の加速度制限値、前記加速度の漸増率及び加速度の漸減率、前記加速度演算手段から前記加速度の目標値、前記送り速度演算手段から送り速度の目標値を受け、前記加速度演算手段からの前記送り速度に係る加速度の目標値をシミュレーションにおける減速開始時の加速度の目標値とし、前記送り速度演算手段からの送り速度の目標値をシミュレーションにおける減速開始時の送り速度の目標値として、前記加速度演算手段が現時点で減速指令を受けてから巻取停止に至るまでに刻々算出する減速時前記送り速度に係る加速度の目標値、及びこの加速度の目標値に基づく減速時の前記送り速度の目標値をシミュレーションし、このシミュレーションした減速時の送り速度の目標値に基づき、現時点で減速指令を受けてから巻取停止に至るまでの前記送り速度の減速時の巻取長さを刻々演算する模擬演算手段と、
    前記模擬演算手段で得た前記送り速度の減速時の巻取長さを前記所要巻取長さから差し引いて減速開始時巻取長さを刻々演算する減速開始時巻取長さ演算手段と、
    前記巻取長さ検出手段で検出した巻取長さが、前記減速開始時巻取長さ演算手段により演算した減速開始巻取長さに達したとき、前記加速度演算手段へ減速指令を出す減速指令手段とを備えることを特徴とする帯状シート巻取装置の速度設定装置。
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