JP3600841B2 - 画像表示体 - Google Patents

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JP3600841B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に作製された任意の凸状線群或いは凸状点群において、それを構成する個々の線或いは点の、ある特定の照明に対する表面の直接反射光の強度の差異によって潜像情報が発現する画像表示体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
銀行券、株券、債券、商品券等の有価証券類、IDカード、出入国証、登録証等の証書類等の複製を防止するための方法として、特公昭56−19273号公報に示されているように、凹版印刷された3次元的模様要素の均一なディメンションを有する像配列と、バックグラウンド配列の一方が他方のディメンションとは異なることによりマークが現れまたは消えるように構成された書類や、像配列とバックグラウンド配列における線の向きが異なることによりマークが現れまたは消えるように構成された書類や、要素がドットであり一方の配列の要素間に他方の配列があることによりマークが現れまたは消えるように構成された書類が開示されている。
【0003】
また、特開昭60−155492号公報に示めされているように、2つの高さを有する平行な盛り上がったセグメントの線からなる群が交互に二つの所定の異なった方向に延在し、高い方の盛り上がりセグメントによって隠し画像が形成され、低い方のセグメントにより図柄の背景を形成する背景と少なくとも2つの隠し画像を有する有価証券が開示されている。
【0004】
さらに、特開昭55−117689号公報に示されているように、インキを適宜の高さに盛ってなる線と、インキを低く盛って成る低線により模様を構成すると共に、適宜の図柄に対応させて低線を設けている偽造防止印刷物が開示されている。
【0005】
さらに、特開平2−127478号公報に示されているように、互いに平行に微細な溝状と凸状とを交互に多数本刻設したマーク形成部を有したカードにおいて、突状の一部を他の部分に対して盛り上げて形成することによりマークを形成したカードが開示されている。
【0006】
上記した従来の技術を用いて得られた書類、有価証券、偽造防止印刷物、カードなどは、配列や群の画線の高さの差により又は画線の一部を高くすることにより、或いは配列や群の画線の向きを異ならせることによりマーク等の隠し画像を形成したものである。
【0007】
これらの従来の技術は、マーク等の隠し画像を表示する画線とその他の部分を表示する画線との画線の高さのわずかな違いを利用して隠し画像を視認するものであるため、マーク等の隠し画像は視認できる範囲が極めて小さくかつわかりにくいという欠点があった。
【0008】
また、画線の一部を高くした凹版画線は、段階的な腐食法による版面作製法で容易に作製されてしまうため偽造も容易である。また、画線の配列方向の差異を利用した潜像凹版は、コピー機によって容易に複写が可能であり、しかもその複写物は、傾けると画像部と非画像部の面積比率が画像の配列方向の差異によって生じるので、潜像の顕在化機能をもつことになる。
【0009】
また、前記配列や群の画線の向きを異ならせることによりマーク等の隠し画像を形成するものは、マーク等の隠し画像を形成する部分が周辺のマーク等の隠し画像を形成しない部分に比べ不自然に目立ってしまうという欠点があり、デザインが制約されてしまうという問題があった。さらに、マーク等の隠し画像を形成する部分が、周辺のマーク等の隠し画像を形成しない部分に比べ不自然にならないように配列や群の画線の向きを構成すると、マーク等の隠し画像は視認できる範囲が極めて小さく、且つ、わかりにくくなってしまうという欠点があった。
【0010】
また、万線パターンの配列方向の差異や画線の高さ(インキの盛り具合)を部分的に変えるなどして潜像化を行う方法においては、潜像の視認性を確保するためには、ある程度以上の凹版画線の高さを必要とした。しかしインキの盛り具合を多くした場合、印刷速度にインキの乾燥が間に合わないといった問題が生じ、画線高さの設計には限度がある。また、前記凹版画線の局所的な高さの差異は、数百枚もの大量枚数ごとに行われる後工程に支障をきたし、積み重ねられた印刷物は直方体とはならないために、正確な断裁寸法を得ることができなかったり、封包や箱詰の作業性も悪いという問題があった。
【0011】
また、市場に多く普及している自動販売機や両替機や現金自動支払い機においては、局所的な凹版画線高さの差異や、凹版画線インキの汚れやインキかすが、その搬送系や認証システムの動作に支障をきたすなどの問題も見受けられ、そのためには高さが低い凹版画線や少ないエンボッシング量によっても、視認性に優れる潜像凹版の開発や、安定した紙幣搬送や認証システムに適した凹版画線の開発が望まれていた。
【0012】
さらに近年、米ドル券の偽造については、デジタルカラーコピー機等による2次元的複写のレベルにはとどまらず、真券製造に用いる凹版印刷機と同一タイプの凹版印刷機を使用し、真券と寸分の狂いもない凹版印刷による精巧な偽造がなされるまでに事態は深刻化している。このような偽造券においては、もはや専門家ですら真偽判別が困難な状況となっており、通常の凹版画線では偽造防止効果や真偽判別の能力が低下してきている。その結果、観察する角度によって2色性をしめすような光学的変化凹版インキを使用したり、ホログラム等の光学的変化素子を貼付せねばならない状況にあり、これらの機能性材料、機能性素子を新たに採用することは、材料コスト及び生産コストの極めて著しい増加を招く結果となっている。
【0013】
本来、凹版印刷あるいは凹版版面を用いたエンボッシングにより基材上に作製された凸状の画線または点は、凹版転写の原理上3次元形状の転写が不可能な側面部を除いた部位の3次元形状の設計が可能であるにもかかわらず、凸状の画線または点の高低差程度の設計概念しかもたれていない。従って、凸状の画線または点の側面部を除く部位の形状設計の試みや、その実現に必要な具体的な凹版版面の製造方法、そして得られた凸状の画線または点の光学的特性や偽造防止技術への応用はなされていなかった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の画像表示体は、従来法による万線の配列方向の差異や、画線の高さの差異を利用したもの、或いは機能性インキを利用したものとは根本的に異なり、法線方向制御による4軸NC工作機の加工特徴を利用し、基材上に作製された、凹版転写の原理上3次元形状の転写の不可能な側面部を除いた部位の3次元形状の設計、彫刻形成について試み、単一の凹版画線及び/又は点において、部分的に直接反射光に強度差を生じるような画線形状を転写可能な、凹版版面を彫刻形成する方法である。
【0015】
また、本発明の画像表示体は、その潜像化の方法を見破ることが困難で、また、広く普及している腐食製版方法では偽造が困難でありながら、任意の線画及び/又は点画像中に、デザインの制約を受けることなく、文字、記号、イラスト又はパターン等の潜像情報の適用(潜像化)が可能で、特殊な印刷材料や特殊な印刷方法を必要とせずに低コストで印刷が可能であり、特殊な器具等を用いることなしに、潜像の顕在化によって真偽判別が可能である。
【0016】
また、本発明を構成する画線及び/又は点の側面部を除く部位の微細形状そのものが真偽判別の根拠ともなりうる特徴を兼ね備えた画像表示体を実現することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、基材上に凹版転写された、凸状の画線及び/又は点を少なくとも一以上有する画像表示体であって、おのおのの凸状の画線及び/又は点は、入射光に対する直接反射光の強度に部分的に差異が生じるように、前記おのおのの凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位の形状を、細かな溝の配列方向を部分的に異ならせて形成していることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、上記課題を解決するために、前記凸状の画線及び/又は点は、有意味情報が潜像化できるように複数配置し、前記おのおのの凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位のうち、潜像を構成する領域を、前記有意味情報に基づき個別に変化させて、画線模様及び/又は点模様で作製されていることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0019】
さらに、前記凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位の表面形状が、ジグザグ形状であり、更に前記ジグザグ形状の配列方向を90度異ならせる形状とすることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0020】
前記凸状の画線及び/又は点のジグザグ形状の配列は、有意味情報が潜像化できるように複数配置し、前記おのおのの凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位のうち、潜像を構成する領域を、前記有意味情報に基づき個別に変化させて、画線模様及び/又は点模様で作製されていることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0021】
前記画像表示体が、凹版インキを用いて印刷した凹版印刷物であることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0022】
前記凸状の画線及び/又は点で作製された画像表示体は、法線方向制御によるNC工作機械を使用し、輪郭画像部を得るためのカッターパスDと、背景上底部を得るための直万線状のカッターパスEと、前記カッターパスEと配列方向が90度異なる潜像上底部を得るための直万線状のカッターパスFの3種のカッターパスの彫刻深度を等しくし、切削面が2等辺3角形の彫刻バイトを用いて彫刻形成された凹版版面から得られることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0023】
前記画像表示体を印刷基材上に印刷する際に、通常の凹版インキに比較してより大きな直接反射光を発する金属粉体が分散された凹版インキや、ワニス配合比率が高く、より光沢性のある凹版インキで印刷することにより得られる画像表示体を提供する。
【0024】
前記画像表示体を得るための凹版版面から基材上に転写された凸状のエンボス形状を認証マークとして用いることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0025】
前記画像表示体を得るための凹版版面から複製された凸版面により基材上に転写された凹状のエンボス形状を認証マークとして用いることを特徴とする画像表示体を提供する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明に係る画像表示体の実施の形態を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例の説明中の夫々の文中でも明示するが、文中記載のアルファベット文字A、B、C、・・・・は、夫々次の構成を表示するものとして該構成の末尾に記載するものとする。即ち、Aは印刷用紙、Bは輪郭画像部、Cは上底面、Dは輪郭画像部を彫刻するカッターパス、Eは背景上底面を彫刻するカッターパス、Fは潜像上底面を彫刻するカッターパス、Gは直万線状カッターパスEによって彫刻形成される凹版版面から得られた背景上底面、Hは直万線状カッターパスFによって、彫刻深度をカッターパスEと等しくして彫刻形成される凹版版面から得られる潜像上底面、Lは観察者、Mは印刷物、Nは光源、Pは配列方向が30度異なるカッターパス、Qは配列方向が60度異なるカッターパス、Rは配列方向が90度異なるカッターパス、Sは背景上底面を彫刻するカッターパスである。
【0027】
(実施例)本出願人は、先に特願平11−72398及び特願平11−72399において、用紙上に描かれた任意の線画から、輪郭追跡等の処理を経て、法線方向制御によるNC工作機械用の切削データを作製する凹版版面の直刻方法を出願した。ここで、法線方向制御とは、X、Y、Z軸のバイトの位置データのほかに、バイトの進行方向を4軸目として制御するものであり、切削バイトは高速回転せずに、バイトの切削面が常に画線の法線方向と平行になるように制御され、彫刻用の基材を引っ掻くような要領で細かい溝が彫刻される。バイトが高速回転しないために、彫刻された画線の輪郭は非常になめらかである。また、彫刻された細かい溝の断面形状は、彫刻バイトの切削面の形状がそのまま反映されることが特徴である。また、前記発明によれば、任意の線画、点画において輪郭データさえ共通のものを使用すれば、その2次元形状を変えることなく、線画、点画の内部の切削データは任意の形態をとることができ、従って、凸状の画線または点の側面部を除く部位の3次元的な設計、彫刻形成が可能であり、本発明ではその特徴を有効に利用している。
【0028】
本発明を説明するにあたり、本実施例においては印刷用紙上に印刷された凹版万線パターンを用いる。本発明の画像表示体は、印刷用紙A、輪郭画像部B及び上底面Cからなる。前記画線のもとになる凹版版面を彫刻するためのカッターパス(工具経路)は、輪郭部を彫刻するためのカッターパスDと画線内部を彫刻するためのカッターパスEとFからなる。輪郭画像部Bとは、画線の輪郭を切削するカッターパスDによって彫刻形成された凹版版面から得られた、いわば実質的には凹版画線の側面部に相当する部位であり、上底面Cとは、画線の内部を彫刻形成する直万線状カッターパスEとFによって、彫刻深度をカッターパスDと等しくして彫刻形成された凹版版面から得られた、いわば実質的には凹版画線形状において側面部を取り除いた部位に相当する。
【0029】
上底面Cは直万線状カッターパスEによって彫刻形成される凹版版面から得られた背景上底面Gと、直万線状カッターパスFによって、彫刻深度をカッターパスEと等しくして彫刻形成される凹版版面から得られる潜像上底面Hとにさらに分かれる。
【0030】
本発明の潜像発現の原理は、背景上底面Gと潜像上底面Hの形状の差異に起因する光の反射状態の差異、さらには特定の照明に対する直接反射光の強度差異を利用したものである。本実施例では、彫刻バイトの切削面の形状に2等辺3角形のものを採用し、背景上底面Gと潜像上底面Hとを、同一の直万線状カッターパスを用いてジグザク形状で彫刻構成し、さらには、反射状態の差異を生み出す上底面Cの形状の一例として、直万線状カッターパスの配列方向を異ならせて、ジグザグ形状の配列方向を異ならせることを利用した。
【0031】
次に、本実施例の万線パターンの作製にあたり、具体的な設計値をあげて説明する。2等辺直角3角形を切削面の形状としてもつ彫刻バイトに使用し、深度を−40ミクロンに設定し、カッターパスD、E、Fにしたがい彫刻を行う。なお、本カッターパスにおいて深度の設定値は−20ミクロンまで小さく設定することができる。それ以上に小さく設定した場合、削り残しが発生し、画線に白抜けの領域が発生するので注意が必要である。法線方向制御による切削法によって彫刻された溝の断面形状は、彫刻バイトの切削面の形状がそのまま反映されるので、背景上底面Gを含む領域の画線の断面形状はジクザク形状が彫刻形成される。これは潜像上底面Hを含む領域の画線の断面とはまったく異なる。それはカッターパスEとカッターパスFはカッターパスの配列方向が90度異なるからである。
【0032】
また、印刷適性などの事情により、印刷画線の高さを例えば10ミクロンといったように極めて低い設計値が要求される場合には、上底面のカッターパスの画線ピッチを20ミクロンと設定すればよい。また、深度を−10ミクロンと設定した場合、カッターパスDの削り幅も減少するので、求められる設計精度に応じて、外側にオフセットしてもよい。
【0033】
本実施例においては、このように作製された単一の凹版画線を800ミクロンの間隔にしたがって16本配置した。ここで、本発明における潜像化が可能な情報としては、文字、記号またはイラストパターン等が可能であるが、本実施例では、例えば、全体としては「OK」の文字が表現されるように、おのおのの画線において潜像上底面Hの領域を変化させて設計した。なお、本万線パターンにおいては、上下三本ずつの画線の上底面は全て背景上底面で占められている。また、特にドットパターンのように、パターン構成要素が小さな場合、必ずしも全てのドットの上底面が背景上底面と潜像上底面の2つの領域から構成されるわけではない。
【0034】
以上のようにして作製された版面と通常の紺色の凹版インキを用いて、一般に公知な方法により印刷を行い印刷物を得た。この印刷物は、通常の照明下において、正面(真上)から観察すると万線パターンにしか見えず、そこに潜像を見出すことはできない。また、カッターパスD、E、Fの彫刻深度は全て等しいため、ただ傾けたりして観察しても潜像情報は顕在化しない。また、上底面Cのジグザグ形状は、数十ミクロンオーダーで設計された非常に微細な構造であるため、肉眼でそれを観察することは不可能である。また、ルーペ等を使用して背景上底部と潜像上底部の境界を検出できたとしても、それは局所的な情報にすぎず、そこから全体的な潜像情報を復元するのは困難である。
【0035】
しかし、印刷物(M)を照明方向(一般的には上の方)にかざして直接反射光を積極的に取り入れた観察環境において、観察者(L)には、潜像上底面Hの直接反射光の成分が、本万線パターンの観察環境において際立って(明るく白色に)観察され、潜像上底面H、すなわち「OK」の文字が容易に顕在化して、ネガイメージとして認識可能である。
【0036】
また、通常の照明下において正面から印刷物(M)を観察した場合にも、懐中電灯等(N)を使用して、周囲光を飽和するような強い強度の光を、印刷物の天地方向から印刷用紙面とほぼ平行になるように印刷物に照射して、印刷物に対して正面から観察した場合、観察者(L)には背景上底面Gの直接反射光の成分が、本万線パターンの観察環境において際立って(明るく白色に)観察され、潜像上底面H、すなわち「OK」の文字が容易に顕在化して、ポジイメージとして認識可能である。
【0037】
なお、潜像上底面Hがネガ、ポジどちらのイメージで顕在化するのかは、前記2種類の結果に限定はされず、照明方向にかざすときの印刷物の向き、或いは照明の照射方向に依存する。
【0038】
また、各画線の上底面Cのジグザグ形状は非常に微細な形状であるため、肉眼でそれを注意深く観察したとしても、確認することは不可能である。そのため観察者(L)は、本印刷物を画線幅400ミクロンの線分から構成される単なる万線パターンとしか実質上認知されないが、30倍程度のルーペでおのおのの画線の、側面部を除いた部位を観察すると、画線間隔40ミクロンの9本の稜線からなる上底面のジグザグ形状をはっきりと観察することができ、真偽判別の根拠として機能する。
【0039】
なお、本実施例では、直接反射光の強度の差異を生み出す手段として潜像上底面Hのジグザグ形状の配列方向を、背景上底面Gにおけるカッターパスの配列方向より90度異ならせて設計したが、文字、記号、イラスト又はパターン等の有意味情報に基づき、潜像上底面Hを3つの領域に区分けして、おのおのの領域のジグザグ形状の配列方向が、背景上底面Gにおけるカッターパスの配列方向より30度、60度、90度と多段階に異なる3種類の潜像上底面を設計してもよい。この場合、4段階の反射レベルを用いた文字、記号、イラスト又はパターン等の有意味情報の潜像化が可能である。背景上底面の反射レベルを基準にしたとき、3種類の潜像上底面における反射レベルの差異の大きさは、ジグザグ形状の配列方向が30度、60度、90度の順に大きくなる。版面作製方法としては、ジグザグ形状の配列方向が3段階に異なる潜像上底面を彫刻形成するカッターパスP、Q、Rは、背景上底面を彫刻形成するカッターパスSの配列方向よりそれぞれ30度、60度、90度と異ならせればよい。
【0040】
なお、本実施例では、本発明が直線状の万線パターンの場合を例に挙げて説明したが、波状に曲がりくねった万線パターン、同心円パターン、ドットパターン、或いは、有意味情報が観察者または読み取り機械にとって伝達、計測するに十分な領域と線密度または点密度が確保されている線群、あるいは点群ならば、任意の画像中に、文字、記号またはイラストパターン等の有意味情報の潜像化が可能である。上記いずれの画像を用いる場合にも、輪郭画像部Bに実質的に相当する前記画像の輪郭データから、その輪郭(側面部)を彫刻形成するためのカッターパスを作製し、その後、画像内部の切削データを、有意味情報に基づいて、背景上底面用のカッターパスと潜像上底面用のカッターパスとの領域に区分けし、さらに有意味情報に基づき潜像上底部用のカッターパスの配列方向を異ならせればよい。
【0041】
なお、本実施例では上底面の形状としてジグザグ形状を採用しているが、彫刻バイトの切削面の形状に台形形状のものを使用したときに彫刻される矩形波形状のものでも同様の効果が発揮される。
【0042】
なお、通常の凹版インキに比較してより大きな直接反射光を発する、例えば金属紛体が分散された凹版インキや、ワニス配合比率が高く、より光沢性のある凹版インキを使用すれば、上底面の配列方向の差異に起因する直接反射光の強度差が大きくなるので潜像の発現が効果的である。
【0043】
なお、凹版インキを使用せずに、エンボスによって本発明の万線パターンを作製したとしても同様の効果が発揮され、さらには、写真印画紙やコート紙のような、表面の光沢性が高い用紙上においては潜像の発現がより効果的である。
【0044】
なお、本発明の凹版版面から複製してえられた凸版面による、凹形状のエンボスによって万線パターンを作製したとしても同様の効果が発揮され、さらには写真印画紙やコート紙のような、表面の光沢性が高い用紙上においては潜像の発現がより効果的である。
【0045】
以上、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載の技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が考えられることはいうまでもない。
【0046】
【発明の効果】
本発明の画像表示体より得られる印刷物は、該印刷物を照明方向にかざすなどして直接反射光を積極的に取り入れて観察したり、UVランプ等の特殊光源ではない通常の懐中電灯やペンライトの光を印刷物の天地方向から印刷用紙面とほぼ平行になるように印刷物に照射して、印刷物に対して正面から観察するだけで、潜像が発現するので印刷物の真偽判定を簡単に行うことができる。
【0047】
また、本発明の画像表示体における潜像化の方法は、従来の万線の配列方向の差異や、画線の高さの差異を利用したものと比較して、その潜像化の方法を見破ることが非常に難しい。またその方法が見破られたとしても、広く普及している腐食法による凹版版面の作製方法では、マスキング技術による段階的な腐食方法に基づいた、段階的な腐食深度を達成する程度の設計能力しかないので、本実施例で提案したような微細なジグザグ形状の偽造は極めて困難である。
【0048】
また、本実施例でも述べたように、波状に曲がりくねった万線パターン、同心円パターン、ドットパターン、或いは、潜像としての有意性を伝達するに十分な領域と線密度、点密度が確保されている線群、あるいは点群ならば、任意の画像中に、情報の潜像化が可能であるので、本発明を実製品に適用する際にデザイン上の制約も極めて少ない。また、すでに完成された凹版デザインに対して潜像化を施すことも容易である。上記、潜像としての有意性を伝達するに十分な領域と線密度、点密度が確保されている線群、あるいは点群に対し、その内部(側面部を除く部位)のカッターパスを本実施例のようにピッチ40ミクロンの万線パターン状にしてその配列方向を潜像イメージに基づき異ならせればよい。
【0049】
また、通常の凹版インキを使用でき、通常の印刷条件で印刷を行うことができるので、材料コスト及び生産コストの面からみても非常に有利である。
【0050】
また、本発明において、潜像の発現を実現する根拠は、画線、或いは点の表面において、側面(高さ)を除く部位の微細形状であるので、画線、或いは点の高さの設計値が潜像の発現適性に主要な要因として影響を与えることはない。従って、印刷機の特性、印刷適性、後工程の作業性、そして市販に普及している自動販売機などにおける紙幣の読み取り適性が考慮された、画線高さの設計値を阻害することなく適用することができるので実製品への導入も容易である。
【0051】
また、本発明を構成するおのおのの凹版画線は、その上底部が微細なジグザグ形状を有している。従って、デジタルカラーコピー等による複製はもちろんのこと、実際に凹版版面を偽造し、有価証券印刷の現場と同型の凹版印刷機を使用した大掛かりな偽造に対しても、その凹版版面の作製法自体が、法線方向制御によるNC彫刻機の精密加工能力を有効に利用したものであり、腐食法などの従来方法では作製し得ないものである。従って凹版画線の上底部のジグザグ形状は有効な真偽判別の根拠ともなり得る。
【0052】
また、本発明の凹版版面から得られたエンボス用版面(凹凸含む)を、身分証明書類における個人認証用顔写真や、その他貴重文書などの割り印として使用することにより、大掛かりな装置や特殊な器具を必要とせずに、身分証明書類や貴重文書の発行や認証の現場においても、偽造防止効果に優れた機密文書の発行や認証が手軽にできるようになる。

Claims (9)

  1. 基材上に凹版転写された、凸状の画線及び/又は点を少なくとも一以上有する画像表示体であって、おのおのの凸状の画線及び/又は点は、入射光に対する直接反射光の強度に部分的に差異が生じるように、前記おのおのの凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位の形状を、細かな溝の配列方向を部分的に異ならせて形成していることを特徴とする画像表示体。
  2. 前記凸状の画線及び/又は点は、有意味情報が潜像化できるように複数配置し、前記おのおのの凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位のうち、潜像を構成する領域を、前記有意味情報に基づき個別に変化させて、画線模様及び/又は点模様で作製されていることを特徴とする請求項1記載の画像表示体。
  3. 前記凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位の表面形状が、ジグザグ形状であり、更に前記ジグザグ形状の配列方向を90度異ならせる形状とすることを特徴とする請求項1記載の画像表示体。
  4. 前記凸状の画線及び/又は点のジグザグ形状の配列は、有意味情報が潜像化できるように複数配置し、前記おのおのの凸状の画線及び/又は点の側面部を除く部位のうち、潜像を構成する領域を、前記有意味情報に基づき個別に変化させて、画線模様及び/又は点模様で作製されていることを特徴とする請求項3記載の画像表示体。
  5. 前記画像表示体が、凹版インキを用いて印刷した凹版印刷物であることを特徴とする請求項1,2、3または4記載の画像表示体。
  6. 前記凸状の画線及び/又は点で作製された画像表示体は、法線方向制御によるNC工作機械を使用し、輪郭画像部を得るためのカッターパスDと、背景上底部を得るための直万線状のカッターパスEと、前記カッターパスEと配列方向が90度異なる潜像上底部を得るための直万線状のカッターパスFの3種のカッターパスの彫刻深度を等しくし、切削面が2等辺3角形の彫刻バイトを用いて彫刻形成された凹版版面から得られることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の画像表示体。
  7. 前記画像表示体を印刷基材上に印刷する際に、通常の凹版インキに比較してより大きな直接反射光を発する金属粉体が分散された凹版インキや、ワニス配合比率が高く、より光沢性のある凹版インキで印刷することにより得られる請求項5記載の画像表示体。
  8. 前記画像表示体を得るための凹版版面から基材上に転写された凸状のエンボス形状を認証マークとして用いることを特徴とする請求項6記載の画像表示体。
  9. 前記画像表示体を得るための凹版版面から複製された凸版面により基材上に転写された凹状のエンボス形状を認証マークとして用いることを特徴とする請求項6記載の画像表示体。
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