JP3600510B2 - 電動式パワーステアリング装置の制御装置 - Google Patents

電動式パワーステアリング装置の制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載される電動パワーステアリング装置に係り、特に、電動パワーステアリング装置により発生するアシストトルクの向きや大きさを制御する制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、運転者がハンドルを回転させることによって生じる操舵トルクを操舵トルク検出器によって検出し、検出されたトルクの値に応じた電流を電動モータに供給する。この給電により回転駆動される電動モータは、ステアリング装置に接続されており、必要なアシストトルクを発生させ、転舵を行う。また、一般にステアリング装置は、マニュアルステアリング装置、油圧パワーステアリング装置、或いは電動パワーステアリング装置のいずれでも、セルフアライニング機能を有する。即ち、転舵後に直進状態に戻る過程で、運転者がハンドルを回転させる力を緩めるか零(いわゆる手放し状態)にすれば、車輪は自動的に中立位置方向に戻ろうとする。この中立位置方向に戻ろうとするトルクは、車速が大きい程大きい。この時、電動パワーステアリング装置において、まず車輪が例えば右に転舵しているものとすれば、セルフアライニング機能により車輪は中立位置方向つまり左方向に動く。そして、運転者がハンドルを回転させる力は零なので、操舵トルクも本来は零のはずである。よって、操舵トルク検出器により検出される操舵トルク値も零になり、電動モータは通電されず、アシストパワーを発生せず、ステアリング装置に接続されたまま左方向に回転する。勿論、ハンドルも左へ回転する。
【0003】
しかしながら、従来の電動パワーステアリング装置においては、電動モーターのローターや車両及びステアリング系のフリクションに相当する摩擦力等により、低車速走行時に転舵後のハンドルの戻りが悪く、また高車速走行時にハンドルの戻り感やフリクション感等のオンセンタ感が悪いという問題点があった。即ち、低車速で運転者がハンドルを回転させて転舵した後に直進状態に戻る過程において、マニュアルステアリング装置や油圧パーワーステアリング装置に比べ戻りが悪く、甚だしい場合には、運転者がハンドルを直進方向へ回転し直す必要があった。また、高車速において車線変更や方向修正の為に転舵した後に直進に戻る過程(特に手放し状態で戻る過程)において、セルフアライニング機能により車輪が中立位置方向に戻ろうとする時にも、真ん中(中立位置)迄戻りきらず、甚だしい場合には、運転者がハンドルを直進方向へ回転し直す必要があった。
【0004】
これらの不具合を部分的に解消する方法として、例えば、特開平7−186994号公報には、低速走行時のハンドル戻りを改善する方法が提案されている。この従来例は、車速を検出する車速検出器と、運転者がハンドルを回転させることによって生じる操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、電動モータの回転速度を検出するモータ速度検出器と、電動モータの回転加速度を検出するモータ加速度検出器と、モータ速度検出器からの信号と操舵トルク検出器からの信号によりモータ回転方向と操舵トルクの方向とが同一方向か否かを判定する方向判定器と、この判定が同一方向であれば車速と操舵トルクとに応じたアシストトルクを決定し、判定が異なる方向であれば、車速と電動モータの回転速度または回転加速度とに応じて、低車速では、モータ回転方向と同一方向のアシストトルクを、高車速ではモータ回転方向と逆方向のアシストトルクを決定するアシストトルク決定器と、決定されたアシストトルクに応じた電流を電動モータに供給して回転駆動させる駆動器とを備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来例では、このような構成により、低車速では手放し時にハンドルの戻りを改善する効果は期待できるが、車両のフリクションの左右差や路面のカントの影響で、ハンドル戻り特性に左右差が生じてしまう欠点があった。特に、車両及びステアリング系のフリクション等は、フリクションの値が大きいと、その操舵の回転方向によるステアリング装置各部や車両の回転或いは運動方向でのフリクションの大きさの差も大きくなる傾向があり、補正を一定値で実施すると、補正値を引き算した後の、補正されていない残りのフリクションの差は益々大きくなり、セルフアライニング機能により車輪が中立位置方向に戻ろうとする力が同じ場合には、右と左の操舵からの戻りの戻しトルク感、速度、戻り角の特性に大きなアンバランスが生じる欠点があった。
【0006】
また、路面のカントは、セルフアライニング機能による車輪が中立位置方向に戻ろうとする力そのものに左右のアンバランスを発生させるので、これによっても、右と左の操舵からの戻りの戻しトルク感、速度、戻り角の特性に大きなアンバランスが生じる欠点があった。カントは車線の中央部から路肩へ傾斜しているため、一般的には、車線の中央部への操舵戻りは良い(強い)が、反対の路肩への操舵戻りは悪い(弱い)傾向があった。
【0007】
この発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、電動モーターのローターや車両及びステアリング系の操舵時のフリクションを補正或いは打ち消し、且つ、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向による方向差を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向による戻し力やフリクションのアンバランスを補正する補正量を、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるようにすることで、ハンドル戻り特性の左右差を解消することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するために、本発明に係る電動式パワーステアリング装置の制御装置は、ハンドルから車輪までの操舵トルク伝達機構中に介挿され、運転者による操舵トルクを補助するトルクを発生する電動モータと、前記電動モーターのローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクを補正するよう前記電動モータを制御するハンドル戻し補正部と、前記電動モーターのローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクの方向による路面反力トルクの違いを学習する学習部とを備え、前記ハンドル戻し補正部から出力するハンドル戻し補助トルクを、前記学習部の学習値に基づき最適値に設定するものである。
また、好ましくは、前記ハンドル戻し補正部は、タイヤが路面から受ける路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出器を備え、前記路面反力トルク検出器出力の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御するものである。
さらに、好ましくは、前記制御装置は、前記ハンドルの回転角度を検出する舵角検出器を備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記舵角検出器から出力されるハンドル角信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御するものである。
さらにまた、好ましくは、前記制御装置は、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器とを更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力に、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクを加算するとともに、ステアリング軸換算のモータ慣性トルクを減算して得られる値にローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御するものである。
また、好ましくは、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器を更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力に、ローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御するものである。
さらに、好ましくは、前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器を更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクにローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて制御するものである。
さらにまた、好ましくは、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器とを更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力或いは前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルク或いはステアリング軸換算のモータ慣性トルク等から得られる値から、ローパス或いは遅延フィルタを演算しないで、路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記路面反力トルク推定器より出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御するものである。
また、好ましくは、車速を検出する車速検出器と、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器とを更に備え、前記学習部は、前記路面反力トルクの零点のズレを学習しズレが零に修正されるように前記路面反力トルクを補正する左右ずれ学習器と、前記左右ずれ学習器の学習の可否を判別する学習可否判別器とを備え、前記学習可否判別器は、前記操舵トルク検出器により検出された操舵トルクが所定値以下で、前記車速検出器により検出された車速が所定値以上の状態が、所定時間継続した場合に、前記左右ずれ学習器による学習を許可し、それ以外の場合には学習を禁止するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る電動式パワーステアリング装置の制御装置の構成について、図1に基づいて説明する。尚、本発明は、マイコンのソフトウエアのみで従来技術の上記問題点を解決可能であり、ハードウエアについては従来公知の電動式パワーステアリング装置を用いることができるので、その説明は省略する。
【0010】
図1は、本実施の形態1に係る電動式パワーステアリング装置の制御装置の構成を示すブロック図である。この図において、制御装置は、ハンドルに加えられる操舵トルクを検出する操舵トルク検出器1と、車両速度を検出する車速検出器14と、操舵トルク検出器1の出力である操舵トルク信号に基づいて操舵補助トルク信号を演算する操舵トルク制御器2と、ハンドルを原点に復帰させる方向に電動モータ10がトルクを発生するようにハンドル戻し補助トルク信号を出力するハンドル戻り補正部100と、電動モーター10のローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクの方向による値の違いを学習する学習部110と、電動モータ10の回転速度を検出するモータ速度検出器5と、モータ速度検出器5で検出したモータ速度信号に基づいてダンピング補償信号を演算するダンピング補償器3と、モータ速度検出器5の出力からモータ加速度信号を生成するモータ加速度検出器6と、モータ加速度検出器6より出力されるモータ加速度信号と車速検出器14からの車速信号とに基づいて慣性補償信号を演算する慣性補償器4と、第1の加算器12で演算された補助トルク信号、方向によるアンバランスを補正されたハンドル戻し補助トルク信号、ダンピング補償信号、慣性補償信号の和である目標トルクから、目標電流信号を演算するモータ電流決定器7とを備える。
【0011】
ハンドル戻り補正部100は、電動モータのロータのフリクションや車両及びステアリング系のフリクションを補正するものである。ハンドル戻り補正部100は、ハンドルの中立位置からの回転角を舵角として検出する舵角検出器15から出力される舵角信号と車速検出器14から出力される車速信号とに基づいて路面反力トルクを演算する路面反力トルク検出器101と、ズレが零に修正されるように前記路面反力トルクの演算値を基にして、電動モータ10のロータのフリクション、車両及びステアリング系のフリクション等を打ち消すように電動モータ10がトルクを発生するようにハンドル戻し補助トルク信号を出力する戻しトルク補償器103と、路面反力トルク検出器101の出力からハンドル戻しの回転方向を判別する回転方向判別器105と、回転方向判別器105の出力に基づき左右の回転方向により異なる電動モータ10のロータのフリクション、車両及びステアリング系のフリクション等の方向差を補正する方向係数補償器107とを備える。ハンドル戻り補正部100の制御量は、路面反力トルク検出器101の出力に基づき制御される。
【0012】
学習部110は、前記路面反力トルクの演算値の零点(左右中点)のズレを学習し、ズレが零に修正されるように前記路面反力トルクの演算値を補正する左右ずれ学習器111と、その左右ずれ学習器111の学習の可否を判別する学習可否判別器113とを備える。学習可否判別器113は、本実施の形態1では、車速検出器14の出力Aと操舵トルク検出器1の出力Bとを入力されて、操舵トルクが所定値以下で、車速が所定値以上の状態が、所定時間継続した場合に、左右ずれ学習器111による学習を許可し、それ以外の場合には学習を禁止するものである。
【0013】
モータ駆動器9は、第2の加算器13で得られた、目標電流信号とモータ電流検出器11で検出されたモータ電流信号との誤差(偏差)に基づいて印加電圧を決定するとともに、電動モータ10に電圧を印加する。電動モータ10では、印加された電圧に応じてモータ電流値が応答し、モータ電流値に略比例関係でアシストトルクを発生してステアリング機構を駆動する。車速検出器14は、車速を検出して、操舵トルク制御器2、ダンピング補償器3、慣性補償器4、路面反力トルク検出器101及び戻しトルク補償器103へ車速信号を出力する。
【0014】
次に、本実施の形態1の動作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。従来技術と異なる点は、図1のブロック図中の一点鎖線で囲まれた、目標電流を演算するまでのアルゴリズムであり、電流制御に関しては、PID式の電流フィードバック(F/B)制御、或いは、目標電流とモータ速度信号に基づくオープンループ制御等、一般的に行われる制御を、ディジタル制御、アナログ制御いずれの方式に基づいて実施しても良い。従って、以下では、目標電流を演算するまでのアルゴリズムに限定して説明を行う。
【0015】
図2において、まず、ステップS101で、操舵トルク検出器1で検出された操舵トルク信号を読み込みメモリに記憶する。次にステップS102で、モータ速度検出器5にて検出されたモータ速度信号を読み込みメモリに記憶する。ステップS103はモータ加速度検出器6での動作を示し、モータ速度信号を微分演算してモータ加速度信号を得てメモリに記憶する。
【0016】
ステップS104〜S105は操舵トルク制御器2における動作を示し、まずステップS104で操舵トルク信号の周波数特性を改善するために操舵トルク信号を位相補償器に通すとともに、ステップS105で位相補償器に通した操舵トルク信号に対してマップ演算で、操舵補助トルク信号を求めメモリに記憶する。
【0017】
次いで、ステップS106〜S110はハンドル戻し補正部100の動作を説明するものである。ステップS106は、路面反力トルク検出器101の動作を説明するもので、本実施の形態1では、舵角検出器15により舵角(ハンドル回転角)そのものを測定して車速等を基に、例えば舵角×車速をベースにマップ演算で、路面反力トルク信号を求めてメモリに記憶する。
ステップS107は、読み込んだ操舵トルク値Bと車速信号Aとから、路面反力の中点の学習を実施するか、しないかを判断し、例えば、操舵トルク値が所定の値(例えば左右1Nm)以下で、車速が所定値(例えば30Km/h)以上の状態が、所定時間(例えば15秒)継続した場合に、ステップS108に進み、所定時間(例えば15秒)継続毎に、その間の路面反力トルク信号或いはハンドル戻し補助トルク信号の平均値の中点からのズレを補正する方向にオフセットの補正演算を行う。路面反力の中点の学習をしない場合は、そのままステップS109に進む。
ステップS109は戻しトルク補償器103での動作を示し、路面反力トルク信号に対してマップ演算で、ハンドル戻し補助トルク信号を求めてメモリに記憶する。ここで、ハンドル戻し補助トルク信号は、路面反力トルクがステアリング機構内の摩擦トルクより小さい時に、ハンドルが自動的に原点に復帰しない現象を避けるためのものであり、図5のように、ハンドル戻し補助トルク信号は、ステアリング機構内の概ね摩擦トルク程度の値を上限としてリミッタで制限し、リミッタの範囲内では路面反力トルク信号に比例ゲインを乗じて定める。
更に、ステアリング機構内の、例えばラック&ピニオンや車両のステアリングに連動して運動する機構部の摩擦トルクの値は、ハンドルの操舵方向によって異なり、フリクションの値が大きいと、その操舵の回転方向による各々の回転方向でのフリクションの大きさの差も大きくなる傾向があり、回転或いは運動方向に応じてそれぞれの異なるフリクションを、適切に補償する必要がある。
ステップS110は回転方向判別器105の動作を説明したもので、路面反力トルク信号からどちらの回転或いは運動方向のフリクションを補正するかの方向判定を行ってメモリに記憶する。
【0018】
ステップS111は方向係数補償器107の動作を説明したもので、補正すべきフリクションの方向に応じたハンドル戻し補助トルク信号の補正係数を掛けた方向補正後のハンドル戻し補助トルク信号を演算してメモリに記憶する。例えば、ハンドル軸で右操舵回転時のフリクションの方が左操舵回転時より20%大きければ、右回転で戻す場合のハンドル戻し補助トルク信号を20%大きくなるように補正係数を設定する。ハンドル戻し補助トルク信号の補正係数の例を図6に示す。
【0019】
次に、ステップS112は、ダンピング補償器3での動作を示し、モータ速度信号に比例ゲインを乗じてダンピング補償信号を求めてメモリに記憶する。ステップS113は慣性補償器4での動作を示し、モータ加速度信号に比例ゲインを乗じて慣性補償信号を求めてメモリに記憶する。
ステップS114は、第1の加算器12での動作を示し、操舵補助トルク信号、ハンドル戻し補助トルク信号、ダンピング補償信号、慣性補償信号の和を求めて目標トルクとしてメモリに記憶する。
次いで、ステップS115は、モータ電流決定器7での動作を示し、ステップS114で求められた目標トルクにゲインを乗じて目標電流を求めてメモリに記憶する。この時のゲインは、電動モータ10のハンドル軸換算でのトルク定数の逆数とする。
【0020】
操舵トルク制御器2、路面反力トルク検出器101、戻しトルク補償器103、ダンピング補償器3、慣性補償器4の各制御パラメータは、車速信号に応じて変更する。この時、ステアリング機構自身のダンピングが強い車両や、ハンドル軸換算の慣性モーメントが小さなモータを装着した車両については、ダンピング補償器3、慣性補償器4の各ゲインを零としてもよく、この場合には、モータ速度検出器5、モータ加速度検出器6、ダンピング制御器3、慣性補償器4は不要となる。
【0021】
本実施の形態1で用いるモータ速度検出器5は、例えばタコジェネレータ等のモータ速度センサを用いてもよいし、ロータリエンコーダのパルス出力を差分して求めてもよいし、或いは、モータに印加する電圧から、モータに通電される電流値とコイル抵抗値の積を減じる等して得られる逆起電圧からモータ速度を検出しても良い。
【0022】
本実施の形態1では、ステップS105、S106、S107をマップ演算、ステップS111、S112、S113をゲインを乗じる構成としたが、各ステップとも何れもゲインを乗じる構成としても、或いは、マップ演算とする構成としてもよい。
また、ステップS109とS111とをまとめて、補正係数を掛けた方向補正後のハンドル戻し補助トルク信号を合成した1つのマップとしても良い。
【0023】
自動車の運転者は、ハンドルを切った後に手を放して路面反力トルクによる自己復元力によりハンドルを中心に戻す場合が多く、これにより操舵の労力を低減している。また、電動式パワーステアリング装置は、電動モータ10及びギアの摩擦トルクによりハンドルの戻り性が悪い。操舵トルク信号のみを検出して目標トルクを定める場合には、ハンドルを切った後に手を放すと、操舵トルク信号が零となってしまうので、ハンドル戻しトルクを発生させることができない。さらに、操舵トルク信号に加えて、モータ回転信号に基づいて目標トルクを定める場合にも、電動モータ10の回転が止まってしまった場合には、電動モータ10はハンドルを戻す方向のトルクを発生させることが難しい。
【0024】
これに対し、本実施の形態1では、路面反力トルク検出器101は、ハンドル手放しを行っても、ハンドルの角度に略比例した路面反力トルクを検出できるので、この路面反力トルク信号に応じてハンドル戻し補助トルク信号を演算する構成としたことにより、手放しを行った後にも、電動モータ10がハンドル戻し方向にトルクを出力することが可能となり、確実にハンドルを中心に且つ左右差を改善して戻すことができる。
【0025】
本実施の形態1では、運転者がハンドルを保持して操舵している場合には、操舵をアシストする操舵補助トルク信号を操舵トルク信号に基づいて発生させるとともに、運転者がハンドルを戻そうとした場合には、ハンドルを原点(中立位置)に復帰させるのを妨げるフリクションを打ち消すハンドル戻し補助トルク信号をハンドルの左右別々の回転方向に対応したフリクションを打ち消すのに必要な最適値として発生させることができるので、運転者がハンドルを保持している場合には従来の制御アルゴリズムをそのまま流用し、手放し時にはハンドルを原点に復帰させる制御アルゴリズムを新たに付け加えるだけで、手放しを行った後にも、モータがハンドル戻し方向にトルクを出力することが可能となり、確実にハンドルを中心に、左右差無く戻すことができるようになる。
【0026】
更に、本実施の形態1では、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるようにすることで、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0027】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2は、路面反力トルク検出器101を、例えば前輪の操舵の舵角により発生するトルク、即ち、ハンドルを原点に復帰させようとする車両のキングピン回りのトルク(タイヤと路面との間に生ずる力)を、例えば、図示しないが、非接触の磁歪式トルクセンサのような歪測定器により直接測定するように構成したものであり、これ以外の構成は図1の実施の形態1と同様である。
【0028】
また、この実施の形態2の作用も、ステップS107において、歪測定器等よりなる路面反力トルク検出器101により前輪の操舵の舵角により発生するトルクを直接測定して路面反力トルク信号としてメモリに記憶する点を除けば、図2のフローチャートと同様である。
【0029】
実施の形態3.
図3は、この発明の実施の形態3の構成を示すブロック図である。
本実施の形態3では、ハンドル戻し補正部100aが、上記実施の形態1に示す路面反力トルク検出器101の代わりに、操舵トルク検出器1の出力である操舵トルク信号、モータ加速度検出器6の出力であるモータ加速度信号、及びモータ電流検出器11の出力であるモータ電流値から、前輪の舵角を原点に復帰させようとする路面反力トルクを検出する路面反力トルク推定器101aを備えるものであり、それ以外の部分については、上記実施の形態1の構成と同様である。ここでは、図4のフローチャートに基づき本実施の形態3の動作の説明のみ行う。
【0030】
本実施の形態3も上記従来例と異なる点は、目標電流を演算するまでのアルゴリズムであり、電流制御に関しては、PID式の電流フィードバック(F/B)制御、或いは、目標電流とモータ速度信号に基づくオープンループ制御等、一般的に行われる制御を、ディジタル制御、アナログ制御いずれの方式に基づいて実施しても良い。従って、以下では、目標電流を演算するまでのアルゴリズムに限定して説明を行う。
【0031】
まず、ステップS201で、操舵トルク検出器1で検出された操舵トルク信号を読み込みメモリに記憶し、ステップS202で、モータ速度検出器5にて検出されたモータ速度信号を読み込みメモリに記憶する。次に、ステップS203はモータ加速度検出器6での動作を示し、モータ加速度検出器6は、モータ速度検出器5で検出されたモータ速度信号を微分演算してモータ加速度信号を得てメモリに記憶し、ステップS204でモータ電流信号を読み込みメモリに記憶する。
【0032】
次いで、ステップS205〜S208は、路面反力トルク推定器101aでの動作を示している。まず、ステップS205で操舵トルク信号の絶対値が閾値以上かどうか判断する。この時の閾値は、直進時のハンドル保持に必要なトルクと操舵トルク検出器1の測定オフセットの和付近になるように予め設定し、ROMに記憶させておく。
次に、ステップS206〜S207で以下の演算を行い路面反力トルク信号を得る。ステップS205で操舵トルク信号の絶対値が閾値以上であると判断されると、そのままステップS207に進み、閾値未満であると判断されると、ステップS206に進み、路面反力トルク推定器101aでの演算に用いる操舵トルク信号Tsensを零に置き換えた上で、ステップS207に進む。
次に、ステップS207で、操舵トルク信号Tsens、モータ加速度信号dω(ハンドル軸回転加速度)、モータ電流信号Imtrから、次式(1)により定常反力信号T’rea_estを得る。
T’rea_est=Tsens + Kt×Imtr − J×dω (1)
ここで、Ktはモータのトルク定数(ハンドル軸換算)、Jはステアリング機構の慣性モーメントである。
次に、ステップS208で、次式(2)により1次フィルタ演算を行い路面反力トルク信号Trea_estを得てメモリに記憶する。
dTrea_est/dt=−Trea_est/T1 + T’rea_est/T1 (2)
ここで、T1は1次フィルタの時定数であり、折点周波数fc=1/(2π×T1)がおよそ0.05〜1.0Hzの間になるように定めておく。
【0033】
次いで、ステップS209〜S210は操舵トルク制御器2での動作を示している。まず、ステップS209で操舵トルク信号の周波数特性を改善するために位相補償器に通して位相補償を行い、ステップS210で位相補償器に通した操舵トルク信号に対してマップ演算で、操舵補助トルク信号を求めてメモリに記憶する。
【0034】
次に、ステップS211〜S214はハンドル戻し補正部100aの動作を説明するものである。S211は路面反力トルク推定器101aの動作を示すもので、演算された路面反力トルク信号Trea_estの大きさと方向をメモリに記憶する。このようにして演算された路面反力トルク信号Trea_estは、図5と同様の値になる。
ステップS212は、読み込んだ操舵トルク値Bと車速信号Aとから、路面反力の中点の学習を実施するか、しないかを判断し、例えば、操舵トルク値が所定の値(例えば左右1Nm)以下で、車速が所定値(例えば30Km/h)以上の状態が、所定の時間(例えば15秒)継続した場合に、ステップS213に進み、15秒継続毎に、その間の路面反力トルク信号或いはハンドル戻し補助トルク信号の平均値の中点からのズレを補正する方向にオフセットの補正演算を行う。一方、ステップS212で路面反力の中点の学習をしない場合は、そのままステップS214に進む。
ステップS214は戻しトルク補償器103での動作を示し、路面反力トルク信号Trea_estに対して、マップ演算で、ハンドル戻し補助トルク信号を求めてメモリに記憶する。
【0035】
更に、ステアリング機構内の摩擦トルクの値は、ハンドルの操舵方向によって異なり、フリクションの値が大きいと、その操舵の回転方向による各々の回転方向でのフリクションの大きさの差も大きくなる傾向があり、操舵方向に応じてそれぞれのフリクションを、適切に補償するハンドル戻し補助トルク信号を求める必要がある。
ステップS215は回転方向判別器105の動作を説明するもので、路面反力トルク信号Trea_estの大きさと方向からどちらの回転或いは運動方向のフリクションを補正するかの方向判定を行ってメモリに記憶する。ステップS216は方向係数補償器107の動作を説明するもので、補正すべきフリクションの方向に応じたハンドル戻し補助トルク信号の補正係数を掛けた方向補正後のハンドル戻し補助トルク信号を演算してメモリに記憶する。
【0036】
次に、ステップS217は、ダンピング補償器3での動作を示し、モータ速度信号に比例ゲインを乗じてダンピング補償信号を求めてメモリに記憶する。ステップS218は、慣性補償器4での動作を示し、モータ加速度信号に比例ゲインを乗じて慣性補償信号を求めてメモリに記憶する。
ステップS219は、第1の加算器12での動作を示し、操舵補助トルク信号、ハンドル戻し補助トルク信号、ダンピング補償信号、慣性補償信号の和を求め目標トルクとしてメモリに記憶する。
ステップS220は、モータ電流決定器7での動作を示し、ステップS219で求められた目標トルクにゲインを乗じて目標電流を求めてメモリに記憶する。この時のゲインは、電動モータ10のハンドル軸換算でのトルク定数の逆数とする。
以上のステップS201からS220までの動作を繰り返す。
【0037】
本実施の形態3においては、ステップS205で操舵トルク信号の絶対値が閾値以上であると判断されると、そのままステップS207に進み、閾値未満であると判断されると、ステップS206に進み、路面反力トルク推定器101a内での演算に用いる操舵トルク信号Tsensを零に置き換えた上で、ステップS207に進むように設定した。この場合、路面反力トルク推定器101aへの入力となる操舵トルク信号と、路面反力トルク推定器101aでの演算に用いる操舵トルク信号の関係から演算されるハンドル戻しトルクは、図7のようになり、不連続が発生するが、図5に示すように不連続点の無いように設定しても良い。この場合、ステップS205で操舵トルク信号の絶対値が閾値以上であると判断されると、閾値の値を減算した上でステップS207に進む動作を行う。
【0038】
また、本実施の形態3においても、上記実施の形態1、2と同様に、トルク制御器2、戻しトルク補償器103、ダンピング補償器3、慣性補償器4の各制御パラメータは、車速検出器14の出力に応じて変更する。この時、ステアリング機構自身のダンピングが強い車両や、ハンドル軸換算の慣性モーメントが小さなモータを装着した車両については、ダンピング補償器3、慣性補償器4の各ゲインを零としてもよく、この場合は、モータ速度検出器5、モータ加速度検出器6、ダンピング制御器3、慣性補償器4は不要となる。
上記式(1)の演算においても、ステアリング機構の慣性モーメントJが小さい車両においては、Jの値を零としても良い。
また、上記式(1)の演算において、ハンドルを戻そうとする路面反力トルクは操舵トルク信号Tsens、モータ加速度信号dω(ハンドル軸回転加速度)、モータ電流信号Imtrのうちの操舵トルク信号Tsensだけで演算しても効果が期待できるので、このようにすると演算を簡略化でき、能力の低いマイクロコンピュータのS/Wでも実現できる効果がある。
さらに、上記式(1)の演算において、ハンドルを戻そうとする路面反力トルクは操舵トルク信号Tsens、モータ加速度信号dω(ハンドル軸回転加速度)、モータ電流信号Imtrのうちのモータ電流信号Imtrだけで演算しても、例えば油圧式パワーステアリングの油圧反力機構のメカの機能と同じになり効果が期待できるので、演算を簡略化でき能力の低いマイクロコンピュータのS/Wでも実現できる効果がある。
【0039】
また、ステップS208で、上記式(2)の1次フィルタ演算を行い路面反力トルク信号Trea_estを得てメモリに記憶するようにしたが、これは完全にハンドルから手を放した場合に、ハンドル戻しトルクを所定の時間持続させて、より確実にハンドルを戻す為のものである。しかし、ステップS208をスキップし、上記式(2)の1次フィルタ演算を実施しなくても、ハンドルから手を緩めてから完全にハンドルから手を放す迄に既に作用しているハンドル戻しトルクだけでも効果が期待できるので、演算を簡略化でき、能力の低いマイクロコンピュータのS/Wでも実現できる効果がある。
【0040】
上記各実施の形態においては、ハンドル戻りの左右差の学習を、路面反力トルク検出信号のオフセットを直接学習することで実施したが、路面反力トルクを演算する基になっている、操舵トルク信号や、ハンドル角信号の平均値の中点からのズレを学習することにより実施しても、同様の効果が期待できる。
上記各実施の形態においては、ハンドル戻りの左右差の学習の可否(更新)を、所定の車速以上で、操舵トルク信号が所定値以内で実施するようにしたが、操舵角信号の値が所定の範囲以内で実施するようにしても、同様の効果が期待できる。
【0041】
本実施の形態3においても、上記実施の形態1と同様に、本実施の形態3に用いるモータ速度検出器5は、例えばタコジェネレータ等のモータ速度センサを用いてもよいし、ロータリエンコーダのパルス出力を差分して求めてもよいし、或いは、モータに印加する電圧から、モータに通電される電流値とコイル抵抗値の積を減じる等して得られる逆起電圧からモータ速度を推定しても良い。
【0042】
本実施の形態3では、ステップS210とS211をマップ演算、ステップS214とS216をゲインを乗じる構成としたが、各ステップとも、いずれもゲインを乗じる構成としても、或いは、マップ演算とする構成としてもよい。
【0043】
道路には、一般に雨水を路肩側に流すために、道路の中心付近が高く路肩付近が低くなるカントが設けられている。このため、道路を直進しようとする場合、ハンドルを僅かなトルクで保持する必要がある。また、操舵トルクを検出する操舵トルク検出器1は、電圧のドリフト等で僅かにオフセットする場合が多い。従って、操舵トルク検出信号をそのまま使うと、路面反力トルク推定器101aは、直進時も路面反力トルク検出値が零とならないので、この路面反力トルク検出値に基づいてハンドル戻し補助トルク信号を演算すると、直進時も不必要なトルクを運転者が感じてしまう場合がある。本発明による学習によって、これらのオフセットは、効果的に低減されるが、学習の途中では、完全にオフセットが零ではない。このため適切なハンドル戻し補助トルク信号の制御の不感帯を設けることが有効である。
【0044】
本実施の形態3においては、操舵トルク信号の絶対値が閾値未満であると判断されると、路面反力トルク推定器101aでの演算に用いる操舵トルク信号Tsensを零に置き換えた上で、上式(1)の定常反力信号T’rea_estを演算する構成とするとともに、この時の閾値を、直進時のハンドル保持に必要なトルクと操舵トルク検出器1の測定オフセットの和付近に設定したことにより、上述のような不惑帯を適切に設けることができる。
【0045】
また、本実施の形態3では、操舵トルク信号の絶対値が閾値未満であることを利用して制御の不感帯を設けたが、操舵トルク信号に不感帯を設けて演算する代わりに、演算された定常反力信号T’rea_estや演算された路面反力トルク信号Trea_estに不感帯を設けることにより、適切なハンドル戻し補助トルク信号の制御の不感帯を設けることも可能であることは言うまでもない。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、本発明による電動式パワーステアリング装置の制御装置によれば、ハンドルから車輪までの操舵トルク伝達機構中に介挿され、運転者による操舵トルクを補助するトルクを発生する電動モータと、前記電動モーターのローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクを補正するよう前記電動モータを制御するハンドル戻し補正部と、前記電動モーターのローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクの方向による路面反力トルクの違いを学習する学習部とを備え、前記ハンドル戻し補正部から出力するハンドル戻し補助トルクを、前記学習部の学習値に基づき最適値に設定することにより、ハンドル戻り特性の左右差を解消することができ、従って、運転者がハンドルを切った後、ハンドルを原点へ復帰させる際に手放しを行っても、電動モータがハンドル戻し方向にトルクを出力し、しかも、補正すべきフリクションの回転或いは運動の方向の違いによるアンバランスを適正に補正することが可能となり、方向の違いによる戻り特性のアンバランス無く、確実にハンドルを中心に戻すことができる。更に、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整することにより、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0047】
また、前記ハンドル戻し補正部は、タイヤが路面から受ける路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出器を備え、前記路面反力トルク検出器出力の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することにより、ハンドルの戻り(回転)の方向によるフリクションのアンバランスを調整することができ、ハンドル戻り特性の左右差を解消することができる。従って、手放しを行った後にも、モータがハンドル戻し方向にトルクを出力することが可能となり、確実に方向の違いによる戻り特性のアンバランス無くハンドルを中心に戻すことができる。更に、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるので、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0048】
さらに、前記制御装置は、前記ハンドルの回転角度を検出する舵角検出器を備え、前記舵角検出器から出力されるハンドル角信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することにより、ハンドルの戻り(回転)の方向によるフリクションのアンバランスを調整することができ、ハンドル戻り特性の左右差を解消することができる。従って、手放しを行った後にも、モータがハンドル戻し方向にトルクを出力することが可能となり、確実に方向の違いによる戻り特性のアンバランス無くハンドルを中心に戻すことができるようになる。更に、ハンドル戻し補正部は、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるので、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0049】
さらにまた、前記制御装置は、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器とを更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力に、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクを加算するとともに、ステアリング軸換算のモータ慣性トルクを減算して得られる値にローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御するように構成したので、路面反力検出器及びそれに付随する配線が不要となり、電動式パワーステアリング制御装置のコストを低減することが可能となる。また、運転者がハンドルを保持して操舵している場合には、操舵をアシストする操舵補助トルク信号を操舵トルク信号に基づいて発生させるとともに、運転者がハンドルを放した場合には、ハンドルを原点に復帰させるハンドル戻し補助トルク信号を発生させ、また、運転者がハンドルを保持している場合には従来の制御アルゴリズムをそのまま流用し、新たに手放し時にハンドルを原点に復帰させる制御アルゴリズムとして、前記モータ制御電流に、ハンドル或いは前記モータの回転方向に、補正電流として加算し、且つ、補正量は、ハンドルの戻り(回転)の方向によるフリクションのアンバランスを調整できるようにすることを付け加えるだけで、手放しを行った後にも、モータがハンドル戻し方向にトルクを出力することが可能となり、方向の違いによる戻り特性のアンバランス無く確実にハンドルを中心に戻すことができる。更に、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるので、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0050】
また、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器を更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力に、ローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することにより、ハンドル及びステアリング系の回転或いは運動の方向によるフリクションのアンバランスを調整することができ、従って演算を簡略化でき、能力の低いマイクロコンピュータのS/Wでも実現できる効果がある。更に、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるので、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0051】
さらに、前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器を更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクにローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて制御することにより、ハンドル及びステアリング系の回転或いは運動の方向によるフリクションのアンバランスを調整することができ、従って演算を簡略化でき、能力の低いマイクロコンピュータのS/Wでも実現できる効果がある。更に、ハンドル戻し補正部は、戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるので、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0052】
さらにまた、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器とを更に備え、前記ハンドル戻し補正部は、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクにローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて制御することにより、ハンドル及びステアリング系の回転或いは運動の方向によるフリクションのアンバランスを調整することができ、従って演算を簡略化でき、能力の低いマイクロコンピュータのS/Wでも実現できる効果がある。更に、ハンドル戻し力やフリクションの値の、回転或いは運動方向での差異を学習し、学習結果により、ハンドルの戻り(回転或いは運動)の方向によって異なる戻し力やフリクションのアンバランスを、それぞれの方向に合わせて適正値に調整できるので、ハンドル戻り特性の左右差を自動的に解消する効果が得られる。
【0053】
また、車速を検出する車速検出器と、前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器とを更に備え、前記学習部は、前記路面反力トルクの零点のズレを学習しズレが零に修正されるように前記路面反力トルクを補正する左右ずれ学習器と、前記左右ずれ学習器の学習の可否を判別する学習可否判別器とを備え、
前記学習可否判別器は、前記操舵トルク検出器により検出された操舵トルクが所定値以下で、前記車速検出器により検出された車速が所定値以上の状態が、所定時間継続した場合に、前記左右ずれ学習器による学習を許可し、それ以外の場合には学習を禁止するので、学習に不適切な条件下での学習を回避することができ、学習値の誤りや信頼性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態2の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態3のアルゴリズムを示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態1の戻しトルク補償器の特性図である。
【図6】本発明の方向係数補償器の特性図である。
【図7】本発明の実施の形態3の戻しトルク補償器の特性図である。
【符号の説明】
1 操舵トルク検出器 2 操舵トルク制御器、3 ダンピング補償器、4慣性補償器、5 モータ速度検出器、6 モータ加速度検出器、7 モータ電流決定器、8 判定器、9 モータ駆動器、10 モータ、11 モータ電流検出器、12 第1の加算器、13 第2の加算器、14 車速検出器、15 舵角検出器、100 ハンドル戻し補正部、100a ハンドル戻し補正部、101 路面反力トルク検出器、101a 路面反力トルク推定器、110 学習部、111 左右ずれ学習部、113 学習可否判別器。

Claims (8)

  1. ハンドルから車輪までの操舵トルク伝達機構中に介挿され、運転者による操舵トルクを補助するトルクを発生する電動モータと、
    前記電動モーターのローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクを補正するよう前記電動モータを制御するハンドル戻し補正部と、
    前記電動モーターのローターのフリクションや車両及びステアリング系のフリクション、ハンドルの戻しトルクの方向による路面反力トルクの違いを学習する学習部と、
    を備え、
    前記ハンドル戻し補正部から出力するハンドル戻し補助トルクを、前記学習部の学習値に基づき最適値に設定することを特徴とした電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  2. 前記ハンドル戻し補正部は、タイヤが路面から受ける路面反力トルクを検出する路面反力トルク検出器を備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク検出器出力の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  3. 前記ハンドルの回転角度を検出する舵角検出器を更に備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記舵角検出器から出力されるハンドル角信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  4. 前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、
    前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器と、
    を更に備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力に、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクを加算するとともに、ステアリング軸換算のモータ慣性トルクを減算して得られる値にローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  5. 前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器を更に備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力に、ローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  6. 前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器を更に備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルクにローパス或いは遅延フィルタを演算して路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク推定器から出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて制御することを特徴とする請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  7. 前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器と、
    前記電動モータの電流を検出するモータ電流検出器とを更に備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記操舵トルク検出器の出力或いは前記モータ電流検出器の出力から演算されるステアリング軸換算のモータトルク或いはステアリング軸換算のモータ慣性トルク等から得られる値から、ローパス或いは遅延フィルタを演算しないで、路面反力トルクを推定する路面反力トルク推定器を備え、
    前記ハンドル戻し補正部は、前記路面反力トルク推定器より出力される路面反力トルク推定信号の学習値に基づきハンドル戻し補助トルクを求めて前記電動モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
  8. 車速を検出する車速検出器と、
    前記ハンドルの操舵トルクを検出する操舵トルク検出器とを更に備え、
    前記学習部は、前記路面反力トルクの零点のズレを学習しズレが零に修正されるように前記路面反力トルクを補正する左右ずれ学習器と、前記左右ずれ学習器の学習の可否を判別する学習可否判別器とを備え、
    前記学習可否判別器は、前記操舵トルク検出器により検出された操舵トルクが所定値以下で、前記車速検出器により検出された車速が所定値以上の状態が、所定時間継続した場合に、前記左右ずれ学習器による学習を許可し、それ以外の場合には学習を禁止することを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の電動式パワーステアリング装置の制御装置。
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