JP2013056632A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段31と、車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段32と、操舵トルクの異常を検出したときに、第1のトルク指令値に代えて第2のトルク指令値をモータ制御手段に出力する異常時切換手段34と備えている。第2のトルク指令値演算手段32は、車輪回転速度に基づいて推定したセルフアライニングトルク推定値に不感帯を設定し、不感帯反映後のセルフアライニングトルクに基づいて第2のトルク指令値を演算する。
【選択図】 図2
Description
この種の電動パワーステアリング装置では、搭載対象車両が大型化することにより、電動パワーステアリング装置の高出力化が進み、モータトルクが増大すると共に大電流化が加速している。
このように、電動パワーステアリング装置の高出力化が進むと、電動パワーステアリング装置を停止させた状態での手動操舵時に必要な操舵トルクが大きくなって、操舵が困難となる状況となっている。
そこで、操舵トルクセンサが故障した場合に、操舵トルク推定手段で車速信号と操舵角信号とに基づいて操舵トルクを推定し、推定した操舵トルクに基づいて電動機を駆動制御するようにした電動パワーステアリング装置がある(例えば、特許文献1参照)。
ここでは、セルフアライニングトルク推定とは別に車輪回転速度及びモータ回転角センサから得られたモータ角度よりセルフアライニングトルクを計算し、セルフアライニングトルク推定値とセルフアライニングトルク計算値との比較によりセルフアライニングトルクの誤推定を防ぐようにしている。また、車輪回転速度より駆動輪スリップを推定することで駆動輪スリップ時におけるセルフステアを防ぐようにしている。さらに、車速とモータ回転角センサから得られたモータ角速度に応じた制御出力制限を行うことで、セルフステアや制御異常出力を確実に防ぐようにしている。
そこで、本発明は、車輪回転速度が設計的に持つ誤差に起因するセルフアライニングトルクの誤推定による制御異常出力を防止することができる電動パワーステアリング装置を提供することを課題としている。
これにより、不感帯領域から不感帯領域外へ変化した際のアシストの変動を無くす(あるいは抑制する)ことができる。このように、アシストをスムーズに出力することができるので、運転者に与える違和感を低減することができる。
これにより、不感帯領域外において、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値が過少となることを防止し、アシスト出力を極力保つことができる。
これにより、不感帯領域から不感帯領域外へ変化した際のアシストの変動を無くし(あるいは抑制し)、アシストをスムーズに出力することができると共に、不感帯領域外において、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値が過少となることを防止し、アシスト出力を極力保つことができる。
このように、車両走行状態や操舵状態に応じて不感帯の幅を設定するので、より確実に不正出力を防止することができる。
また、上記において、前記不感帯設定手段は、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて演算した前記第2のトルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御したときの車両挙動が、所望の車両挙動となるように、前記不感帯の幅を設定することを特徴としている。
これにより、不正出力により車両が運転者の意図しない挙動となることを防止することができ、安定した操舵補助制御を行うことができる。
このように、第2のトルク指令値の異常を検出した場合、第1のトルク指令値演算手段が選択されるときに、第2の指令値の出力を停止させるので、セルフステアの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
このように、車輪回転速度の異常を検出した場合に、第2のトルク指令値を車輪回転速度検出手段で検出した左右車輪回転速度差に基づいて制限するので、左右車輪回転速度差に応じて第2のトルク指令値を制限することにより、セルフステアの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
このように、車輪回転速度の異常を検出したときに、異常を検出する前の第2のトルク指令値を第2のトルク指令値として設定するので、異常が発生する前の第2のトルク指令値に基づいて操舵補助制御を継続することができ、セルフステアの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
このように、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値にゲインを乗算して第2のトルク指令値を演算するので、車両の操舵状態や走行状態に応じてゲインを設定することにより、第2のトルク指令値を適正化することができる。
このように、ゲイン調整後の第2のトルク指令値を車速及びモータ角速度の少なくとも一方に基づいて制限することにより、高車速領域や高モータ角速度領域での制御異常出力を抑制することができる。
これにより、操舵状態に応じた最適な操舵状態感応ゲインを調整することができ、操舵状態に応じて最適な第2のトルク指令値を算出することができる。
これにより、車速に応じて車速感応ゲインを調整することができるので、車両の操舵フィーリングを向上させることができる。
これにより、駆動輪スリップがセルフアライニングトルク推定値に影響を与える場合に、この駆動輪スリップの影響を抑制することができる。
このように、車輪回転速度に基づいて車両の車両横滑り角を推定し、推定した車両横滑り角に基づいてセルフアライニングトルクを推定するので、車両の走行状態を加味してより正確なセルフアライニングトルクを推定することができる。
このように、車両の車輪回転速度に基づいて車両の横滑り角を推定し、推定した横滑り角をモータ回転情報に基づいて補正するので、車両の操舵状況に基づいてより正確な横滑り角を推定することができる。
このように、車両の左右の車輪回転速度とモータ回転情報とに基づいてセルフアライニングトルクを推定するので、車両の操舵状況に応じたより正確なセルフアライニングトルクを推定することができる。
このように、第1のトルク指令値から第2のトルク指令値への切換え時にトルク指令値を徐々に変化させるので、電動モータで発生させる操舵補助力の急変を防止して、安定した操舵補助状態を継続することができる。
図1は、本実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。ステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速機構11と、この減速機構11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
すなわち、コントローラ15は、図2に示すように、モータ回転角センサ17で検出したモータ角度θに基づいてモータ角速度ω及びモータ角加速度αを演算する回転情報演算部20と、操舵補助トルク指令値Irefを演算する操舵補助トルク指令値演算部21と、この操舵補助トルク指令値演算部21で演算したトルク指令値Irefを補償する指令補償値Icomを算出するトルク指令値補償部22と、操舵補助トルク指令値演算部21で演算した操舵補助トルク指令値Irefとトルク指令値補償部22で算出した指令補償値Icomとを加算して補償後操舵補助トルク指令値Iref′を算出する加算器23と、この加算器23から出力される補償後操舵補助トルク指令値Iref′に基づいてモータ電流を生成して電動モータ12を駆動制御するモータ駆動回路24とで構成されている。
モータ角度信号センサ200は、モータ回転角センサ17で検出したモータ回転角検出信号に基づいてモータ角度θを演算する。モータ角速度演算部201は、モータ角度信号センサ200で演算したモータ角度θを微分してモータ角速度ωを算出する。モータ角加速度演算部202は、モータ角速度演算部201で算出したモータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出する。
第1の操舵補助トルク指令値演算部31は、操舵トルクセンサ14から入力される操舵トルクTと車速センサ16から入力される車速Vsとに基づいて、第1の操舵補助トルク指令値Iref1を演算する。この第1の操舵補助トルク指令値演算部31は、トルク指令値算出部311と、位相補償部312と、センタ応答性改善部としての微分器313と、加算器314とを備えている。
車両横滑り角推定部321は、左右の車輪回転速度VwL及びVwRに基づいて車両横滑り角βを推定する。先ず、駆動輪となる後輪の車輪回転速度センサ18RL及び18RRで検出された車輪回転速度VwRL及びVwRRに基づいて下記(1)式の演算を行って、車速に応じた左右の車輪回転速度差ΔVwRを算出する。
ΔVwR=(VwRL−VwRR)/{(VwRL+VwRR)/2} ………(1)
このセルフアライニングトルク初期推定値算出マップは、図5に示すように、横軸に車両横滑り角βをとり、縦軸にセルフアライニングトルク初期推定値SATiをとった実車の測定値から求められる特性線図で表され、車速相当値Vs′をパラメータとして車速相当値Vs′が大きな値となるに応じて傾斜角が大きくなる線形区間Lsとこの線形区間Lsの両端から延長する飽和区間Laとでなる特性線が設定されている。
ここでは、セルフアライニングトルク推定値SATの不感帯特性を、車輪回転速度VwFL〜VwRR、車速Vs、モータ角速度ω、モータ角度θ(推定操舵角θ)の何れかに応じて変化させるものとする。
なお、ここでは車速Vsに応じてSAT推定値不感帯SATDBを設定する場合についてのみ示したが、車輪回転速度VwFL〜VwRR、モータ角速度ω、モータ角度θ(推定操舵角θ)に応じて設定する場合にも、同様の設定方法を用いる。
図10は、SAT推定値の不感帯特性の設計例を示す図である。この図10において、破線はセルフアライニングトルク推定値(設計値)、実線は不感帯反映後のセルフアライニングトルクである。このように、−SATDB≦SAT≦SATDBである場合にはIref2DB=0として不正出力を確実に防止する。
例えば、図11に示すように、不感帯部分のみアシスト出力を制限する(零とする)ようにしてもよい。すなわち、不感帯以外の領域では、セルフアライニングトルク推定値SATをそのまま不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBとして出力するようにしてもよい。これにより、不正出力を防止することができると共に、アシスト出力を極力保つことができる。
図2に戻って、ゲイン調整部32Bは、操舵状態ゲイン調整部36、車速ゲイン調整部37、セルフアライニングトルクゲイン調整部38、及び駆動輪スリップゲイン調整部39を有する。
ここで、車速感応ゲイン算出マップは、車速Vsが零から所定値Vs1迄の間では所定値Kvを維持し、車速Vsが所定値Vs1を超えると、車速Vsの増加に応じて比較的大きな勾配でゲインが減少し、車速Vsが所定値Vs1より大きい所定値Vs2を超えると、車速Vsの増加に応じて比較的小さな勾配でゲインが減少するように特性線Lvが設定されている。
セルフアライニングトルクゲイン調整部38は、セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aと、ゲイン乗算部38Bとで構成されている。セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aは、セルフアライニングトルク演算値SAToを算出して補正ゲインK2を設定する。そして、ゲイン乗算部38Bは、セルフアライニングトルクゲイン計算部38Aで設定されたセルフアライニングトルクゲインK2を、ゲイン倍指令値Iref22に乗算してゲイン倍指令値Iref23を出力する。
すなわち、セルフアライニングトルク演算部381は、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRの平均値を車速Vsとして算出すると共に、モータ角度θを推定操舵角θとして、車両諸元定数を下記(2)式で表される車両モデルとなる車両横方向の運動方程式(状態方程式)に代入し、下記(3)式で表されるセルフアライニングトルク演算値算出式(出力式)を用いることで、セルフアライニングトルク演算値SAToを算出する。
m:車両質量
I:車両慣性モーメント
lf:車両重心点と前軸間の距離
lr:車両重心点と後軸間の距離
Kf:前輪タイヤのコーナリングパワー
Kr:後輪タイヤのコーナリングパワー
V:車速
N:オーバーオール舵角比
θ:推定操舵角
δf:実舵角(δf=θ/N)
β:車両重心点の横滑り角
γ:ヨーレート
ε:トレール
ここで、ゲイン算出部397は、入力される駆動輪車輪回転速度偏差の絶対値|ΔVw|に基づいて、図19に示す駆動輪スリップ感応ゲイン算出マップを参照して駆動輪スリップ感応ゲインK3を算出する。この駆動輪スリップ感応ゲイン算出マップは、駆動輪車輪回転速度偏差の絶対値|ΔVw|が0から増加するに応じて駆動輪スリップゲインK3が徐々に減少するように折れ線状の特性線Lwが設定されている。
ここで、制御出力制限値計算部40は、図20に示すように、車輪回転速度異常検出部40a、車輪回転速度制限値演算部40b、車速制限値演算部40c及びモータ角速度制限値演算部40dを備えている。
すなわち、車輪回転速度異常検出部40aでは、図21に示す車輪回転速度異常検出処理を実行する。この車輪回転速度異常検出処理は、先ず、ステップS1で、後述するトルクセンサ異常検出処理で、操舵トルクセンサ14の異常を表すトルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているか否かを判定し、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているときには、車輪回転速度異常検出処理の信頼性が低いものと判断してそのまま処理を終了する。
ステップS6では、各車輪回転速度VwFL〜VwRRの内の前後における左右の回転速度差ΔVwF及びΔVwRの絶対値が予め設定した閾値ΔVwsを超えているか否かを判定する。そして、ΔVwF≦ΔVws且つΔVwR≦ΔVwsであるときには、車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断して前記ステップS3に移行する。一方、ΔVwF>ΔVws又はΔVwR>ΔVwsであるときには、4輪のうちの1つにテンパタイヤ等の異径タイヤが装着されているか又は車輪回転速度センサ自体が異常となっており、車輪回転速度VwFL〜VwRRの何れか1つが異常であるものと判断してステップS7に移行する。
この図21の処理において、ステップS2、ステップS4〜ステップS6の処理が車輪回転速度異常検出手段に対応し、ステップS7の処理と制限値選択部40e及びリミッタ部41が異常時指令値制限手段に対応している。
ステップS12では、車輪回転速度制限値Limwを最大値Limwmaxに設定してからステップS13に移行し、ステップS13で、車輪回転速度制限値Limwを制限値選択部40eに出力してから車輪回転速度制限値演算処理を終了する。
ステップS16では、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRと閾値ΔVwRs2又は、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFと閾値ΔVwFs2との偏差ΔVwの絶対値に基づいて、図23に示す車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Linwを算出してから前記ステップS13に移行する。
ステップS17では、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が外乱による異常を判断する閾値ΔVwRs2を超えているか否かを判定する。そして、左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwRs2未満であるときには、外乱による車輪回転速度の変化がない正常状態であると判断して前記ステップS12に移行する。
この図22の処理において、ステップS11、S14、S15及びS17の処理が車輪回転速度異常検出手段に対応し、ステップS16の処理と制限値選択部40e及びリミッタ部41とが異常時指令値制限手段に対応している。
ここで、車速制限値算出マップは、車速Vsが零から所定値Vs3に達するまでの間は最大制限値Limmaxを維持し、車速Vsが所定値Vs3を超えると車速Vsの増加に応じて徐々に車速制限値Limvが減少し、さらに車速Vsが所定値Vs4を超えるとより大きな減少量で減少する折れ線状の特性線Lv1が設定されている。
ここで、モータ角速度制限値算出マップは、モータ角速度ωが零から運転者の操舵又は路面反力によって発生する設定角速度ω2に達する迄の間は最大制限値Limmaxを維持し、モータ角速度ωが設定角速度ω2を超えると、モータ角速度ωの増加に伴って比較的大きな勾配でモータ角速度制限値Limmが減少する特性線Lωが設定されている。
このトルクセンサ異常検出処理では、先ず、ステップS21で、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTを読込み、次いでステップS22に移行して、ステップS21で読込んだ操舵トルクTが操舵トルクセンサ異常検出条件を満足するか否かを判定する。この操舵トルクセンサ異常検出条件としては、車両の走行時に所定時間以上変化しない状態が継続した場合、操舵トルクTが予め設定した天絡による異常設定値を超えた状態が所定時間以上継続した場合、操舵トルクTが予め設定した地絡による異常閾値未満の状態を所定時間以上継続した場合等が挙げられる。
一方、ステップS22で、トルクセンサ異常検出条件を満足している(操舵トルクセンサ14が異常である)と判断した場合には、ステップS24に移行する。そして、ステップS24で、トルクセンサ異常検出フラグFlgを“1”にセットしてからトルクセンサ異常検出処理を終了する。
具体的には、トルクセンサ異常検出部33で設定されるトルクセンサ異常検出フラグFlgが“0”にリセットされているときには、前述した第1のトルク指令値演算部31で演算した第1の操舵補助トルク指令値Iref1を選択する。一方、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“1”にセットされているときには、前述した第2のトルク指令値演算部32で演算した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を選択する。
また、指令値補償部22は、収斂性補償部43と、慣性補償部44とを少なくとも有する。収斂性補償部43は、回転情報演算部20のモータ角速度演算部201で演算されたモータ角速度ωに基づいてヨーレートの収斂性を補償するものである。すなわち、収斂性補償部43は、モータ角速度演算部201で算出されたモータ角速度ωが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωに収斂性制御ゲインKcを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
そして、慣性補償部44で算出された慣性補償値Iiと収斂性補償部43で算出された収斂性補償値Icとが加算器45で加算されて、指令補償値Icomが算出される。この指令補償値Icomは、加算器23で前述した操舵補助トルク指令値演算部21から出力される操舵補助トルク指令値Irefに加算され、補償後操舵補助トルク指令値Iref′が算出される。この補償後操舵補助トルク指令値Iref′は、モータ駆動回路24へ出力される。
今、操舵トルクセンサ14が正常状態であるものとする。この場合、操舵補助トルク指令値演算部21に設けられたトルクセンサ異常検出部33において、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTがトルクセンサ異常検出条件を満足しないことにより、トルクセンサ異常検出フラグFlgが“0”にリセットされ、このトルクセンサ異常検出フラグFlgが指令値選択部34に出力される。このため、指令値選択部34は第1の操舵補助トルク指令値演算部31から出力される第1の操舵補助トルク指令値Iref1を選択する。したがって、この第1の操舵補助トルク指令値Iref1がレートリミッタ35で変化量が制限されて、操舵補助トルク指令値Irefとして加算器23に出力される。
したがって、モータ駆動回路24から補償後操舵補助トルク指令値Iref′に応じたモータ駆動電流Iref″が電動モータ12に出力されて、この電動モータ12が回転駆動され、操舵トルクTに応じた操舵補助力を発生する。これにより、運転者は軽い操舵トルクで転舵輪WL,WRを転舵することができる。
しかしながら、異常判定フラグFlgaが“1”にセットされた場合でも、操舵トルクセンサ14が正常である場合には、指令値選択部34が第2の操舵補助トルク指令値Iref2を選択することはないので、第1の操舵補助トルク指令値Iref1に基づく最適な操舵補助制御が継続される。
このとき、制御出力制限値計算部40の車輪回転速度異常検出部40aで、車輪回転速度センサ18から出力される車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であることが検出されているときには、この車輪回転速度異常検出部40aから出力される車輪回転速度異常制限値Limaが制御出力を制限しない最大値Limamaxに設定される。
さらに、他のアンチロックブレーキシステムに使用される車輪回転速度センサ18RL及び18RRを使用してセルフアライニングトルク初期推定値SATiを算出するので、部品点数の増加を抑制して、コストを低減することができる。
このため、異常となった車輪回転速度に基づいて第2の操舵補助トルク指令値Iref2が算出されることによる、セルフステアリングの発生や制御異常出力を確実に防止することができる。
そこで、制御出力制限値計算部40における車輪回転速度制限値演算部40bで、図22に示す車輪回転速度制限処理を常時実行している。このとき、直進走行状態である場合及び定常円旋回状態である場合には、モータ角速度ωの絶対値が閾値ωs2未満となる。このため、図22の車輪回転速度制限処理において、ステップS11からステップS14に移行し、従動輪となる前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2未満であるか否かを判定する。
また、従動輪となる前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFが閾値ΔVwFs2より小さく、直進走行状態と判断された状態で、駆動輪となる後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs3以下であるときには、車輪回転速度VwFL〜VwRRが正常であると判断される。
このため、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値と閾値ΔVwRs3との偏差ΔVwの絶対値に基づいて図17の車輪回転速度制限値算出マップを参照して車輪回転速度制限値Limwを算出し、算出した車輪回転速度制限値Limwを制限値選択部40eに出力する。
ステップS34では、操舵トルクTをもとに前述した操舵補助トルク指令値算出マップを参照して操舵補助トルク指令値Irefbを算出してからステップS35に移行する。
このステップS43では、算出した補償後操舵補助トルク指令値Iref′に対して最大値制限処理を行なって制限後操舵補助トルク指令値Iref″を算出し、次いでステップS44に移行して、算出した制限後操舵補助トルク指令値Iref″をモータ駆動回路24に出力して、電動モータ12を駆動する。
次いで、ステップS51に移行して、算出した操舵状態ゲインK0を前記ステップS49で算出した不感帯反映後のセルフアライニングトルクIref2DBに乗算してゲイン倍指令値Iref21(=Iref2DB*K0)を算出する。
次いで、ステップS56に移行して、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRに基づいて前述した駆動輪スリップ率ΔVwを算出し、その絶対値|ΔVw|に基づいて図19の駆動輪スリップゲイン算出マップを参照して駆動輪スリップゲインK3を算出する。
次いで、ステップS58に移行して、車速Vsに基づいて図24に示す車速制限値算出マップを参照して車速制限値Limvを算出する。次いでステップS59に移行して、モータ角速度ωに基づいて図25に示すモータ角速度制限値算出マップを参照してモータ角速度制限値Limmを算出する。
次いで、ステップS61に移行して、車速制限値Limv、モータ角速度制限値Limm及び車輪回転速度制限値Limwの最小値を出力制限値Limとして決定する。次いでステップS62に移行して、決定された出力制限値Limでゲイン倍指令値Iref24を制限して第2の操舵補助トルク指令値Iref2を算出する。そして、算出した第2の操舵補助トルク指令値Iref2を操舵補助トルク指令値Irefとして所定の指令値記憶領域に更新記憶してから前記ステップS38に移行する。
このため、操舵トルクセンサ14が正常な状態から異常な状態となった場合にも、第2の操舵補助トルク指令値Iref2に基づいて路面反力を考慮した最適な操舵補助制御を継続することができる。
ところで、アンチロックブレーキシステムが作動した場合にも、4輪の車輪回転速度VwFL〜VwRRに影響を与える。この場合、図21の車輪回転速度異常検出処理で、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwFの絶対値が閾値ΔVwFs2未満であるか否かの状態と、後輪側の左右車輪回転速度差ΔVwRの絶対値が閾値ΔVwRs2未満であるか否かの状態とが不一致であると判定される。そのため、アンチロックブレーキシステムの作動により車輪回転速度が変化している(外乱により車輪回転速度変化が生じている)と判断することができる。
なお、上記第1の実施形態においては、後輪駆動車を対象とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前輪駆動車や4輪駆動車にも本発明を適用することができる。
この第2の実施形態では、トルク制限部32Cの制御出力制限値計算部40における車輪回転速度制限値演算部40bにモータ角度信号センサ200で検出したモータ角度θも供給するようにし、このモータ角度θを使用して車輪回転速度制限値Limwを演算するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図28に示すように、制御出力制限値計算部40にモータ角度θが供給され、このモータ角度θが図29に示すように、車輪回転速度制限値演算部40bに入力されている。
図30の車輪回転速度制限値演算処理は、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS71で、モータ角度θ(n)及び4輪の車輪回転角度VwFL〜VwRRを読込んで、これらをRAM等のメモリに個別に形成した所定のm段数のシフトレジスタの初段に書込む。次いでステップS72に移行して、シフトレジスタに格納されているモータ角度θ(n)〜θ(n−m−1)を読込み、モータ角度が変化していないか否かを判定する。ここでは、モータ角度θ(n)〜θ(n−m−1)の最大値から最小値を減算した変動幅θwが予め設定したモータ角度が殆ど変化していないと判断可能な閾値θws以下であるか否かを判定する。
このステップS73では、前輪側の左右車輪回転速度差ΔVwF(n)〜ΔVwF(n−m−1)が略一定値であるか否かを判定する。ここでは、左右車輪回転速度差ΔVwF(n)〜ΔVwF(n−m−1)の最大値から最小値を減算した変動幅Wfが左右車輪回転速度差ΔVwFを一定と見做せる閾値Wfs以下であるか否かを判定する。
このように、上記第2の実施形態によると、前述した第1の実施形態の作用効果に加えて、モータ角度θに基づいて車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常を検出するので、より精度良く車輪回転速度VwFL〜VwRRの異常を検出することができる。
また、上記第2の実施形態では、制御出力制限値計算部40にモータ角度θが入力されているので、このモータ角度θの単位時間当たりのモータ角度変化量Δθを算出し、このモータ角度変化量Δθを前述した図21及び図22の演算処理でモータ角速度ωに代えて使用するようにしてもよい。
この第3の実施形態では、4輪車輪回転速度とモータ角度とに基づいてセルフアライニングトルク推定値SATの推定精度を向上させるようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態では、システム構成としては前述した第2の実施形態と同様の構成を有するが、セルフアライニングトルク推定部32Aで図32に示すセルフアライニングトルク推定値選択処理を行うようにしている。
このセルフアライニングトルク推定値選択処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS81で、位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SAT(n)及びモータ角度信号センサ200で検出したモータ角度θ(n)を読込む。
この第3の実施形態によると、セルフアライニングトルク推定部32Aの位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SATが急変したときに、この間のモータ角度変化量Δθの絶対値が閾値Δθs小さい場合には、車輪回転速度VwFL〜VwRRに異常が発生していないものと判断する。そして、位相補正部331から出力されるセルフアライニングトルク推定値SATをそのままゲイン調整部32Bに出力して、セルフアライニングトルク推定値SATによる第2の操舵補助トルク指令値Iref2の算出を継続する。
なお、上記第3の実施形態においても、モータ角度θは、レゾルバ等のモータ角度センサで検出されたモータ角度θを用いる場合に限らず、モータ角速度又はモータ逆起電圧から算出されるモータ角速度を積分した値を用いるようにしてもよい。
Claims (20)
- ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて第1のトルク指令値を演算する第1のトルク指令値演算手段と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記トルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記操舵トルク検出手段の異常を検出するトルク検出部異常検出手段と、
車両の車輪回転速度を検出する車輪回転速度検出手段と、
前記電動モータのモータ回転情報を検出するモータ回転情報検出手段と、
前記車輪回転速度検出手段で検出した前記車輪回転速度に基づいて第2のトルク指令値を演算する第2のトルク指令値演算手段と、
前記トルク検出部異常検出手段で前記トルク検出手段の異常を検出したときに、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて、前記第2のトルク指令値演算手段を選択して前記モータ制御手段に第2のトルク指令値を出力する異常時切換手段と、を備え、
前記第2のトルク指令値演算手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて、前記ステアリング機構に路面側から伝達されるセルフアライニングトルクを推定し、セルフアライニングトルク推定値として出力するセルフアライニングトルク推定手段と、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度が持つ誤差に起因して前記セルフアライニングトルク推定手段でセルフアライニングトルクが誤推定される領域を、前記セルフアライニングトルク推定値の不感帯として当該セルフアライニングトルク推定値をゼロとする不感帯設定手段と、該不感帯設定手段による不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて前記第2のトルク指令値を演算することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、前記セルフアライニングトルク推定値を、当該セルフアライニングトルク推定値の絶対値が小さくなる方向にオフセットして出力することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、前記セルフアライニングトルク推定値をそのまま出力することを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記不感帯設定手段は、不感帯領域外で、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値の変化率に上限を設けるレートリミット処理を行うことを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記不感帯設定手段は、車輪回転速度、車速、モータ角速度、操舵角度の何れかに応じて前記不感帯の幅を変更することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記不感帯設定手段は、不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値に基づいて演算した前記第2のトルク指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御したときの車両挙動が、所望の車両挙動となるように、前記不感帯の幅を設定することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記車輪回転速度検出手段で検出した前記車輪回転速度、前記操舵トルク検出手段が正常であるときに検出した操舵トルク及び前記モータ回転情報検出手段で検出した前記モータ回転情報の少なくとも一つに基づいて前記車輪回転速度の異常を検出する車輪回転速度異常検出手段と、
該車輪回転速度異常検出手段で前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記異常時切換手段で前記第2のトルク指令値を選択するときに、当該第2のトルク指令値を制限する異常時指令値制限手段と、を備えたことを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。 - 前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、当該第2のトルク指令値の出力を停止させるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、前記第2のトルク指令値を前記車輪回転速度検出手段で検出した左右車輪回転速度差に基づいて制限するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常時指令値制限手段は、前記車輪回転速度の異常を検出した場合、前記第2のトルク指令値演算手段が選択されるときに、当該異常を検出する前の第2のトルク指令値を第2のトルク指令値として設定するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記第2のトルク指令値演算手段は、前記不感帯設定手段による不感帯設定後のセルフアライニングトルク推定値にゲインを乗算して前記第2のトルク指令値を演算するゲイン調整手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記第2のトルク指令値演算手段は、前記ゲイン調整手段で演算した第2のトルク指令値を前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方とモータ角速度演算手段で算出したモータ角速度との少なくとも一方に基づいて制限するトルク制限手段をさらに備えることを特徴とする請求項11に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルクとに基づいて切増し状態、切り戻し状態及び保舵状態の何れの操舵状態であるかを判定し、操舵状態の判定結果に基づいて操舵状態感応ゲインを調整する操舵状態ゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11又は12に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ゲイン調整手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて算出した車速及び車速検出手段で検出した車速の一方に基づいて車速感応ゲインを調整する車速ゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11〜13の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ゲイン調整手段は、モータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報と前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度とに基づいて演算したセルフアライニングトルク演算値と前記セルフアライニングトルク推定手段で推定したセルフアライニングトルク推定値との偏差に基づいてセルフアライニングトルクゲインを調整するセルフアライニングトルクゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11〜14の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ゲイン調整手段は、前記車輪回転速度検出手段で検出した車輪回転速度に基づいて駆動輪スリップ状態を推定し、推定した駆動輪スリップ状態に基づいて駆動輪スリップ感応ゲインを調整する駆動輪スリップゲイン調整手段を有することを特徴とする請求項11〜15の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記セルフアライニングトルク推定手段は、前記車輪回転速度に基づいて車両横滑り角を推定する車両横滑り角推定手段を有し、該車両横滑り角推定手段で推定した車両横滑り角に基づいてセルフアライニングトルクを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記車両横滑り角推定手段は、前記車輪回転速度に基づいて車両横滑り角を推定し、推定した車両横滑り角をモータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報に基づいて補正するように構成されていることを特徴とする請求項17に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記セルフアライニングトルク推定手段は、前記車輪回転速度とモータ回転情報検出手段で検出したモータ回転情報とに基づいてセルフアライニングトルクを推定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常時切換手段は、前記第1のトルク指令値演算手段に代えて前記第2のトルク指令値演算手段を選択する場合に、前記第1のトルク指令値から前記第2のトルク指令値に徐々に変化させることを特徴とする請求項1〜19の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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