JP3599583B2 - 乗客コンベア及びその駆動スプロケットの位相調整方法 - Google Patents

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    • B66B23/02Driving gear
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エスカレーターや電動道路等の乗客コンベア及びその駆動スプロケットの位相調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、乗客コンベアは、複数の踏段の幅方向の両側を一対の無端状の踏段チェーンによって連結し、これら踏段チェーンを一対の駆動スプロケットと一対の被駆動スプロケットに巻掛け、駆動スプロケットを回転することにより踏段を循環移動させている(特開平3−297792号公報)。
【0003】
上記構成において、左右の駆動スプロケットは同軸に固定されているので、左右の駆動スプロケットの歯の位相がズレは問題がなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、左右の駆動スプロケットを独立して軸支し、一対の踏段チェーンを夫々駆動する構成の乗客コンベアにおいては、左右の駆動スプロケットの歯の位相がズレが発生し、その調整に多大な労力を費やしていた。
【0005】
本発明の目的は、左右独立して軸支された駆動スプロケットにより踏段チェーンがそれぞれ駆動された場合でも、左右の駆動スプロケットの歯の位相調整が容易な乗客コンベアを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、踏段を連結した一対の踏段チェーンと、これら一対の踏段チェーンを夫々駆動し夫々単独に軸支された駆動スプロケットと、これら駆動スプロケットの夫々に2系統に分けた歯車伝達機構を介して動力を伝達する駆動機とを備えた乗客コンベアにおいて、前記2系統の歯車伝達機構の一方側の動力伝達経路の途中に前記各駆動スプロケットの歯の位相を調整する位相調整機構を設け、この位相調整機構は、ボルトを緩めた状態で前記一対の駆動スプロケットに捻りトルクを与え、この状態でボルトを締め付けて固定するものとしたのである。
【0007】
上記構成により、移送調整機構を緩めた状態で前記一対の駆動スプロケットに捻りトルクを与え、2系統の歯車伝達機構の歯車の歯と歯の間に設けた隙間(以下バックラッシュという)が回転方向に対して同一方向に発生するようにし、この状態で緩めた前記位相調整機構を固定することにより、駆動スプロケットの位相調整を行うことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の一実施の形態を図1〜図10により説明する。
【0009】
上下階に跨って設置されたフレーム1内には、駆動装置2,独立に軸支された一対の駆動スプロケット3,3、一対の被駆動スプロケット4が設置されている。5は手摺りベルトで、フレーム1に設けられた左右一対の欄干の周縁を移動するように案内されている。6は前記駆動スプロケット3,3及び被駆動スプロケット4に巻き掛けられた踏段チェーンで、複数の踏板段7を連結している。
【0010】
上記構成において、駆動装置2で駆動スプロケット3を回転することにより踏板段7が移動し、手摺りベルト5が踏板段7と同期した速度で移動する。
【0011】
駆動装置2から駆動スプロケット3,3への2系統の歯車伝達機構は、以下のように構成されている。即ち、駆動スプロケット3は、軸12に取付けられ、この軸12に歯車11も同様にして取付けられている。軸12は左右の軸受け13によって第一歯車装置のギヤケース10に支持されている。
【0012】
歯車14は、軸15及び軸受け16によってギヤケース10に支持されている。18は第一歯車装置の入力軸であり、ここに歯車17を取付け、軸受け19によりギヤケース10に支持している。
【0013】
以上は左右の第一歯車装置共通の構造である。
【0014】
一方、30は第二歯車装置であり、入力軸33に取付けたカプリング34と、モータ36に取付けたカプリング35により結合されている。第一歯車装置の入力軸18は、カプリング20によって第二歯車装置30の両側から突出した出力軸31に取付けたカプリング32と結合されている。
【0015】
22〜24は本発明の位相調整機構であり、設置位置はどちらかの第一歯車装置の入力軸18に取付けられる。
【0016】
カプリング21と入力軸18の間に、各々テーパ部を有するスリーブ22,
23をはめ込み、ボルト24を締め付けてスリーブ22をスリーブ23に引き寄せることにより、スリーブ22の外径が膨らみ、スリーブ23の内径が縮む。このため、スリーブ22とカプリング21及、スリーブ23と入力軸18の間に半径方向の締め付け力が発生し、この摩擦力によりカプリング21は入力軸18に嵌合される。締め付け力はボルト24の締め付けトルクにより増減できる。スリーブ22,23にはそれぞれ内径と外径が変化し易いようにスリット25を設けている。
【0017】
ボルト24を緩めた状態にしておけば、カプリング21は入力軸18に対して回転が可能となることにより、カプリングは出力軸31に対して任意の位置に調整し固定できる。
【0018】
尚、本実施の形態では位相調整機構22〜24は第一歯車装置の入力軸18に取付けしているが、第二歯車装置の出力軸31に取付けても構わない。
【0019】
以上の駆動装置において左右の駆動スプロケット3の位相調整を行う場合、
(1)位相調整機構のボルト24を緩めた状態にし、カプリング21に対して入力軸18の回転が可能の状態にする。
【0020】
この状態では、云うまでもなく第二歯車装置30の出力軸31のカプリング
32と第一歯車装置の入力軸18のカプリング21は、ボルト等により固定した状態である。
【0021】
(2)図4,図5に示すように、駆動スプロケット3の歯形の凹部に合うように凸部をもつ棒41を板40に固定した治具を、左右の駆動スプロケット3の歯形の凹部にはめ込み、駆動装置を固定しているベース(図示しない)に固定する。
【0022】
こうすることにより、左右の駆動スプロケット3の歯の位相はズレがない(歯の位相差が無い)状態となる。
【0023】
(3)次に、図1に示した如く、第一歯車装置の入力軸18に、例えば矢印のように時計方向に捻りトルクを与える。トルクの与え方は第一歯車装置の入力軸18端にねじ穴18a(図2)を設け、これを利用して左右の第一歯車装置に同一のトルクを与える。
【0024】
また図の想像線で示した如く入力軸18にスプロケット18bを設け、これをチェーンにより駆動してトルクを与える方法もある。
【0025】
(4)トルクを与えた状態で位相調整機構のボルト24を締め付け、カプリング21と入力軸18を嵌合,固定する。
【0026】
以上の手順により左右の駆動スプロケットの位相調整作業が終了する。
【0027】
この調整により左右の駆動スプロケット3の歯の位相差は、駆動スプロケット3の負荷方向がトルクを与えた方向と一致する場合(本例では時計方向であり、図2のB方向すなわち、スプロケット3の下側に負荷がかかっている状態)は0となる。また、駆動スプロケット3の負荷方向がトルクを与えた方向と異なる場合(本例では反時計方向であり、図2のC方向すなわちスプロケット3の上側に負荷がかかっている状態)は左右の第一歯車装置の歯車対のバックラッシュの差に抑えることができる。
【0028】
この理由について下記に説明する。
【0029】
〜図は、トルクを与えたことによる歯車17,14,11の歯の接触状態を示したもので、図に示した如く、歯車間のバックラッシュ分だけ歯車17,14は微少回転し(歯車11は固定しているので静止)、各々の歯同士が接触する。図は歯車14と17、図は歯車11と14の歯の接触状態を拡大したものである。図においてg1が歯車14と17のバックラッシュ、図においてg2が歯車11と14のバックラッシュである。
【0030】
上述したようにトルクを与えることにより、歯車11と14、および14と
17の歯が接触するため、左右の第一歯車装置において歯車のバックラッシュは同一方向に発生する。したがって左右の駆動スプロケット3の歯の位相差は、駆動スプロケット3の負荷方向がトルクを与えた方向と一致する場合は0となり、異なる場合は左右の第一歯車装置の歯車対のバックラッシュの差に抑えることができる。
【0031】
このことから駆動スプロケットの負荷方向があらかじめ決められている場合は、トルクを与える方向を同じにすれば、左右の駆動スプロケットの歯の位相差を0に抑えることが可能となる。
【0032】
もしトルクを与えない場合は、左右の第一歯車装置の歯車のバックラッシュは同一方向に発生しないので、最悪全く逆の方向にバックラッシュが発生している状態で位相調整機構のボルト24を締め付けてカプリングを入力軸に嵌合することになる。この場合は最大で左右の第一歯車装置の歯車のバックラッシュの合計が位相差となり、この数値は左右の駆動スプロケット3の歯の位相差としては許容できない数値となる。
【0033】
例えば本実施例においてトルクを与えた場合と、そうでない場合で駆動スプロケットの位相差を比較すると下記の様になる。
【0034】
《設定値》
(1)一対の歯車のバックラツシュを0.15〜0.30mmとする。本実施例では二対であるので0.30〜0.60mmとなる。
【0035】
(2)駆動スプロケットの中心径を300mmとする。
【0036】
《位相差》
Figure 0003599583
【0037】
尚、駆動スプロケット3の位相差は、入力軸18のバックラッシユの差を駆動スプロケット3の半径(この場合150mm)で除したものである。この例でわかるようにトルクを与えない場合は、与えた場合と比較して非常に大きいことがわかる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば次の効果がある。
【0039】
(1)駆動装置の組立は、駆動スプロケットを圧入または焼きばめにて組み付けした第一歯車装置を左右分2組と、第二歯車装置をそれぞれ単独で部分組立し、それらをベースに組み付けし、第二歯車装置の出力軸と左右の第一歯車装置の入力軸を各々カプリングで結合する。次に前述した治具を使用して左右の駆動スプロケットの歯の位相を合わせた状態で、カプリング部に設けた位相調整機構でカプリングと出力軸の位相調整をすれば良い。したがって、従来の如く組立行程に後戻りの発生がなく組立工数がかからない。
【0040】
(2)第一歯車装置の1〜2組の歯車にあるバックラッシュを左右の第一歯車装置について、同一方向に発生させることができるので、左右の駆動スプロケットの歯の位相差は、駆動スプロケットの負荷方向がトルクを与えた方向と一致する場合は0となり、異なる場合は左右の第一歯車装置の歯車対のバックラッシュの差に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の乗客コンベアの駆動スプロケットの駆動機構を示す平面図。
【図2】図1の側面図。
【図3】本発明による駆動スプロケットの位相調整機構を示す一部断面図。
【図4】図3の正面図。
【図5】本発明の駆動スプロケットの位相調整方法を示す平面図。
【図6】図5の側面図。
【図7】歯車のバックラシュの発生方向を示す側面図。
【図8】図7の拡大図。
【図9】図7の拡大図。
【図10】乗客コンベアであるエスカレーターを示す概略側面図。
【符号の説明】
1…フレーム、2…駆動装置、3…駆動スプロケット、4…被駆動スプロケット、5…手すりベルト、6…踏板チェーン、7…踏板、11,14,17…歯車、12…第一歯車装置の出力軸、18…第一歯車装置の入力軸、20,21…カプリング、22,23…スリーブ、24…ボルト、36…モータ。

Claims (2)

  1. 乗降口間を循環移動する複数の踏板と、これら踏板の幅方向両側に連結した一対の踏板チェーンと、これら踏板チェーンを巻掛けて駆動する一対の駆動スプロケット及び被駆動スプロケットと、前記駆動スプロケットを駆動する駆動装置とを備えた乗客コンベアにおいて、前記一対の駆動スプロケットは夫々単独で軸支され、各駆動スプロケットは夫々同構成の第一歯車装置を備え、これら第一歯車装置は第二歯車装置の共通の出力軸に連結され、前記第二歯車装置を前記駆動装置に連結し、かつ第二歯車装置と前記第一歯車装置のいずれかとの連結部に前記各駆動スプロケットの歯の位相を調整する位相調整機構を設け、この位相調整機構は、ボルトを緩めた状態で前記一対の駆動スプロケットに捻りトルクを与え、この状態でボルトを締め付けて固定するものであることを特徴とする乗客コンベア。
  2. 乗降口間を循環移動する複数の踏板と、これら踏板の幅方向両側に連結した一対の踏板チェーンと、これら踏板チェーンを巻掛けて駆動する一対の駆動スプロケット及び被駆動スプロケットと、前記駆動スプロケットを駆動する駆動装置とを備え、前記一対の駆動スプロケットを夫々単独で軸支し、各駆動スプロケットは夫々同構成の第一歯車装置を備え、これら第一歯車装置を前記駆動装置に連結された第二歯車装置の共通の出力軸に連結し、かつ第二歯車装置と前記第一歯車装置のいずれかとの連結部に前記各駆動スプロケットの歯の位相を調整する位相調整機構を設けた乗客コンベアにおいて、前記各第一歯車装置に連結された駆動スプロケットの歯の位相を調整するに際し、前記位相調整機構を緩めて前記各第一歯車装置に捻りトルクを与え、各第一歯車装置の歯車の歯と歯の間に設けた隙間が回転方向に対して同一方向に発生するようにし、この状態で緩めた前記位相調整機構を固定することを特徴とする乗客コンベアの駆動スプロケットの位相調整方法。
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