JP3599441B2 - 型内被覆成形法用の金型 - Google Patents

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    • B29C45/00Injection moulding, i.e. forcing the required volume of moulding material through a nozzle into a closed mould; Apparatus therefor
    • B29C45/16Making multilayered or multicoloured articles
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    • B29C2045/1687Making multilayered or multicoloured articles preventing leakage of second injected material from the mould cavity

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂から成る射出成形品の表面に各種の機能を有する皮膜を容易に形成し得る金型に関し、更に詳しくは、溶融樹脂射出部を介して金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂とキャビティの金型面との間に皮膜原料を注入したとき、溶融樹脂射出部へ皮膜原料が流入することを効果的に防止し得る型内被覆成形法用の金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂から成る射出成形品の表面特性の向上を目的として、射出成形品の表面に各種皮膜を形成する場合がある。このような皮膜として、例えば、塗料皮膜、ハードコート皮膜、紫外線防止皮膜、防曇皮膜等を挙げることができる。通常、射出成形法にて射出成形品を製造した後、別工程にて射出成形品の表面に各種の機能を有する皮膜を形成する。皮膜の形成方法としては、例えば、皮膜原料のスプレー、射出成形品の液状皮膜原料への浸漬を挙げることができる。このような工程を経るために、表面に皮膜が形成された最終製品が得られるまでの工程が多岐に亙る。それ故、このような射出成形品においては、最終製品に至るまでの製造工程の削減、製造設備の縮小、加工・処理時間の短縮、製造コストの低減等が大きな課題である。
【0003】
熱可塑性樹脂の射出成形法において、成形工程中に射出成形品の表面に皮膜を形成する方法が提案されている。例えば特開平5−301251号公報には、熱可塑性樹脂を金型内に設けられたキャビティ内に射出した後、金型の型締力を軽減し又は同一型締力の状態で、樹脂成形品の塗装面と金型との間に形成された空間内に熱硬化性の塗料を注入する技術が開示されている。あるいは又、特開平5−318527号公報には、熱可塑性樹脂を射出成形し、引き続き未硬化の熱硬化性樹脂を注入した後、熱硬化性樹脂を硬化させ、一部の表面が熱硬化性樹脂で被覆された熱可塑性樹脂より成る成形体の製造方法が開示されている。尚、これらの技術は、通常、型内被覆成形法(インモールドコーティング成形法)と呼ばれている。
【0004】
従来の型内被覆成形法においては、例えば図17の模式的な断面図を示す金型を使用する。この金型は、固定金型部10及び可動金型部12から構成されており、キャビティ30が、固定金型部10と可動金型部12によって形成されている。固定金型部10には、溶融樹脂50をキャビティ30内に射出するために、キャビティに開口した開口部20を有する溶融樹脂射出部が設けられている。溶融樹脂射出部は、具体的には、ランナー部16、ゲート部18及び開口部20から成る。そして、ゲート部18の一端は開口部20を介してキャビティ30に連通し、ゲート部18の他端はランナー部16の一端に連通している。尚、ランナー部16の他端はスプルー部14に連通している。固定金型部10には、更に、皮膜原料をキャビティ内に注入するために、キャビティに開口した皮膜原料注入部24が備えられており、かかる皮膜原料注入部24内に皮膜原料注入装置40の一部が装着されている。
【0005】
射出成形装置の加熱シリンダー(図示せず)内で溶融、可塑化及び計量された熱可塑性樹脂から成る溶融樹脂が、スプルー部14、ランナー部16及びゲート部18を介して、開口部20からキャビティ30内に射出される。所定量の溶融樹脂の射出が完了した後、所定の時間、保圧操作を行う。次いで、皮膜原料注入装置40を作動させて、キャビティ内の樹脂50Aとキャビティの金型面との間に皮膜原料52を注入する。この状態を、模式的な断面図である図17に示す。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
これらの公知の技術を用いて射出成形品の表面に皮膜を形成する場合、キャビティ内の樹脂50Aとキャビティの金型面との間に注入された皮膜原料52が、ゲート部18へ流入し、更にランナー部16やスプルー部14へも流入する場合がある。このような現象が発生すると、射出成形品の表面に形成される皮膜の厚さを正確に制御することができなくなるといった重大な問題が発生する。更には、皮膜原料がランナー部やスプルー部へ流入すると、ランナー部内やスプルー部内で冷却、固化した樹脂をランナー部やスプルー部から脱離させることが困難となる。その結果、図18に模式的な断面図を示すように、金型の離型後、射出成形品60を固定金型部10から取り出すことができなくなるといった問題が生じる。尚、参照番号52’は射出成形品60の表面に形成された皮膜である。
【0007】
従って、本発明の目的は、溶融樹脂射出部を介して金型のキャビティ内に射出された溶融樹脂とキャビティの金型面との間に皮膜原料を注入したとき、皮膜の厚さを正確に制御でき、しかも、溶融樹脂射出部に皮膜原料が流入することを効果的に防止し得る金型を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る型内被覆成形法用の金型は、
固定金型部と可動金型部から成り、
固定金型部と可動金型部によって形成されたキャビティ、
溶融樹脂をキャビティ内に射出するための溶融樹脂射出部、及び、
皮膜原料をキャビティ内に注入するために、キャビティに開口した皮膜原料注入部、を備えており、
溶融樹脂射出部は、ランナー部、及び、該ランナー部に連通し、キャビティに開口したゲート部から成り、
該ランナー部及び/又はゲート部には、皮膜原料流入防止のための凹部が形成されていることを特徴とする。
また、上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る型内被覆成形法用の金型は、
固定金型部と可動金型部から成り、
固定金型部と可動金型部によって形成されたキャビティ、
溶融樹脂をキャビティ内に射出するための溶融樹脂射出部、及び、
皮膜原料をキャビティ内に注入するために、キャビティに開口した皮膜原料注入部、を備えており、
溶融樹脂射出部は、キャビティに開口したゲート部から成り、
該ゲート部には、皮膜原料流入防止のための凹部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る型内被覆成形法用の金型(以下、これらを総称して、本発明の型内被覆成形法用の金型と呼ぶ)における凹部は、皮膜原料の流入を防止できる形態であれば如何なる形態であってもよいが、溶融樹脂射出部を流れる溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に設けられた溝部から構成することが好ましい。この場合、溝部の深さは0.2乃至10mmであり、溝部の幅は0.2乃至10mm、より好ましくは、溝部の深さは0.5乃至5mmであり、溝部の幅は0.5乃至3mmであることが、皮膜原料の流入を効果的に防止するために、望ましい。
【0010】
本発明の型内被覆成形法用の金型においては、皮膜原料注入部が固定金型部に設けられ、そして皮膜原料流入防止のための凹部が固定金型部に形成されている態様、皮膜原料注入部が可動金型部に設けられ、そして皮膜原料流入防止のための凹部が可動金型部に形成されている態様、皮膜原料注入部が、固定金型部に設けられた第1の皮膜原料注入部と、可動金型部に設けられた第2の皮膜原料注入部とから成り、そして皮膜原料流入防止のための凹部が固定金型部及び可動金型部に形成されている態様を挙げることができる。
【0011】
本発明の金型の溶融樹脂射出部における凹部の位置及び数は任意であり、型内被覆成形法にて射出成形品の表面に皮膜を形成し、かかる皮膜の形成される部位を調べることによって凹部の位置及び数を決定すればよい。
【0012】
溶融樹脂射出部の形態としては、ランナー部と、このランナー部に連通しそしてキャビティに開口したゲート部の組み合わせ(本発明の第1の態様に係る型内被覆成形法用の金型)、あるいは、ゲート部単独(本発明の第2の態様に係る型内被覆成形法用の金型)を挙げることができる。ゲート部の形態としては、サイドゲート、オーバーラップゲート(ジャンプゲート)、タブゲート、フィルムゲート、ファンゲート、ディスクゲート、スパイダーゲート、リングゲート等を挙げることができる他、これらのゲートとピンポイントゲートやサブマリンゲート(トンネルゲート)の組み合わせを挙げることができる。また、ランナー部の形態としては、コールドランナー、あるいはホットランナーを挙げることができる。尚、ホットランナーの場合には、スプルー部は不要である。
【0013】
射出成形品の離型性の向上のために、固定金型部のキャビティを構成する面、溶融樹脂射出部の内面にメッキを施すことが好ましい。メッキとしては、クロムメッキ、ニッケルメッキ、銅メッキ、亜鉛メッキ、錫メッキ、鉛メッキ、アルミニウムメッキ、カドミウムメッキ等を挙げることができるが、耐磨耗性、金型からの射出成形品の離型性、コストの面からクロムメッキが好ましい。
【0014】
溶融樹脂を構成する熱可塑性樹脂としては、
ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等の結晶性ポリオレフィン樹脂;
ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等の結晶性汎用樹脂;
ポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂等の結晶性エンジニアリングプラスチックス;
その他フッ素樹脂、アセチルセルロース等の結晶性樹脂;
ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、アクリルニトリル−スチレン共重合体(AS)樹脂、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、AES樹脂、ASA樹脂、ACS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂等の非晶性汎用樹脂;
ポリカーボネート(PC)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の非晶性エンジニアリングプラスチックス;
その他ポリスチレン(PS)樹脂、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂、アイオノマー、熱可塑性エラストマー樹脂等の非晶性樹脂;
又は、これらの組み合わせ;
あるいは主成分としてこれら一種以上の熱可塑性樹脂と、副成分としてポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステエル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂とから構成されたポリマーアロイ;
更には、ポリマーアロイを含むこれらの材料を繊維系フィラー、鱗片状フィラー等で補強した複合材料を挙げることができる。尚、使用する熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、使用する皮膜原料との相性によって制限を受ける場合がある。
【0015】
また皮膜原料としては、アルキド樹脂系、エポキシ樹脂エステル系、脂肪酸変性ウレタン樹脂系等の酸化重合型塗料、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、不飽和ポリエステル系等の多液反応型塗料、アルキド樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系、ビニル樹脂系等の加熱硬化型塗料、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、若しくはこれらのオリゴマーとエチレン性不飽和モノマーから成るラジカル重合型塗料、あるいはこれらの塗料に金属粉、特殊顔料、紫外線吸収剤等の特殊添加剤等を混合させた各種機能性塗料、フッ素樹脂系ラッカー、シリコン樹脂系ラッカー、シラン系ハードコート剤等のハードコート剤等を例示することができる。
【0016】
本発明の型内被覆成形法用の金型においては、溶融樹脂射出部の一部に凹部が形成されているので、皮膜原料の流入を効果的に防止でき、射出成形品の表面に形成される皮膜の厚さを正確に制御することができる。しかも、金型作製時、かかる凹部の形成は左程の工数を必要としない。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、発明の実施の形態(以下、単に実施の形態と呼ぶ)及び実施例に基づき本発明を説明する。
【0018】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図を、図1に示す。型締め後の状態を示すこの金型は、固定金型部10及び可動金型部12から構成されており、キャビティ30が、固定金型部10と可動金型部12によって形成されている。固定金型部10には、溶融樹脂50をキャビティ30内に射出するために、キャビティに開口した開口部20を有する溶融樹脂射出部が設けられている。溶融樹脂射出部は、具体的には、ランナー部16、ゲート部18及び開口部20から成る。そして、ゲート部18の一端は開口部20を介してキャビティ30に連通し、ゲート部18の他端はランナー部16の一端に連通している。尚、ランナー部16の他端はスプルー部14に連通している。固定金型部10には、更に、皮膜原料をキャビティ30内に注入するために、キャビティ30に開口した皮膜原料注入部24が備えられている。そして、かかる皮膜原料注入部24内に皮膜原料注入装置40の一部が装着されている。皮膜原料注入部24は、キャビティ30と連通する副キャビティ32内に設けられている。最終的に得られる射出成形品からは、この副キャビティに相当する部分は除去されるので、射出成形品の表面に形成された皮膜に皮膜原料注入部の跡が残らなくなる。尚、射出成形品の形状等によっては、皮膜原料注入部をキャビティ30内に設け、副キャビティの設置を省略してもよい。金型をこのような構造にすることで、例えば箱状の射出成形品の外側の表面に皮膜を形成することができる。
【0019】
そして、溶融樹脂射出部の開口部20から離れた溶融樹脂射出部の部分(具体的には、ランナー部16)に、皮膜原料流入防止のための凹部22が形成されている。凹部は、溶融樹脂射出部を流れる溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に設けられた溝部から成り、固定金型部10に形成されている。尚、溶融樹脂射出部の開口部20から離れた溶融樹脂射出部の部分に凹部22が形成されているとは、具体的には、開口部20と凹部22とが隣接しているが、一体化していないことを意味する。尚、図4に示すように、開口部20から離れたゲート部18に部分に凹部22を設けてもよい。
【0020】
図2に、スプルー部14、ランナー部16、ゲート部18、凹部22、キャビティ30を透視した模式的な斜視図を示す。尚、副キャビティ32の部分の図示は省略した。また、図1の模式的な断面図は、図2の線I−Iに沿った断面図に相当する。
【0021】
図3に実施の形態1の金型を組み込んだ射出成形装置の模式的な部分的な断面図を示す。尚、金型は型開きされた状態にある。熱可塑性樹脂供給用スクリュー102を内部に有する射出シリンダー100の先端部は、スプルー部14と接する。固定金型部10は固定プラテン104に取り付けられ、可動金型部12は可動プラテン106に取り付けられ、可動プラテン106は、型締め用油圧シリンダー110内の油圧ピストン112の作動によってタイバー108上を平行移動できる構造となっている。図3の右手方向への可動プラテン106の移動によって可動金型部12が固定金型部10と係合し、金型が型締めされ、キャビティ30が形成される。型締め力は型締め用油圧シリンダー110によって制御される。また、図3の左手方向への可動プラテン106の移動によって可動金型部12が固定金型部10との係合を解かれ、金型は離型される。尚、可動金型部12には、金型の離型後に可動金型部に密着した射出成形品を取り出すためのイジェクターピンが配設されているが、図示は省略した。
【0022】
皮膜原料注入装置40は、皮膜原料供給部42、ピストン44、ピストン44に取り付けられたシャットオフピン46から構成されている。シャットオフピン46の位置によって、皮膜原料注入部24を開閉する。図1及び図3においては、シャットオフピン46によって皮膜原料注入部24は閉じられている。ポンプ120によって皮膜原料タンク122から皮膜原料52が耐圧配管124を経由して皮膜原料供給部42に送られる。更に、皮膜原料52は、ピストン44によってシャットオフピン46が後退した際、皮膜原料注入部24に流れ込み、シャットオフピン46の前進運動によって、皮膜原料注入部24を通って、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に注入される。これによって、高精度で計量された所定量の皮膜原料を注入することができる。
【0023】
このような皮膜原料注入システムにおいては、皮膜原料供給部42、ピストン44、シャットオフピン46等から構成されている皮膜原料注入機構が、皮膜原料の計量・注入機構を兼ねている。しかしながら、皮膜原料注入システムはこのような機構に限定されるものではない。例えば耐圧配管の途中に計量・注入シリンダーを設け、計量・注入機構とシャットオフピン開閉機構とを分けることもできる。
【0024】
(実施の形態2)
図11に、実施の形態2に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図を示す。この金型においては、実施の形態1と異なり、皮膜原料注入部24が可動金型部12に設けられ、皮膜原料流入防止のための凹部22が可動金型部12に形成されている。また、ゲート部18をサイドゲート構造としたが、このようなゲート構造には限定されない。尚、図4に示したと同様に、開口部20から離れたゲート部18に部分に凹部22を設けてもよい。金型のその他の構造は、実質的に、実施の形態1と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。金型をこのような構造にすることで、例えば箱状の射出成形品の外側の表面に皮膜を形成することができる。尚、射出成形品の形状等によっては、皮膜原料注入部24をキャビティ30内に設け、副キャビティの設置を省略してもよい。
【0025】
(実施の形態3)
図14に、実施の形態3に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図を示す。この金型においては、実施の形態1と異なり、皮膜原料注入部は、固定金型部10に設けられた第1の皮膜原料注入部24Aと、可動金型部12に設けられた第2の皮膜原料注入部24Bとから成り、皮膜原料流入防止のための環状の凹部22Aが固定金型部10に形成されており、一方、環状の凹部22Bが可動金型部12に形成されている。即ち、ランナー部16は凹部22A,22Bによって囲まれている。また、ゲート部18をサイドゲート構造としたが、このようなゲート構造には限定されない。尚、開口部20から離れたゲート部18に部分に凹部22A,22Bを設けてもよい。場合によっては、凹部22A,22Bのそれぞれを、ランナー部16とゲート部18のそれぞれ、若しくはゲート部18とランナー部16のそれぞれに設けてもよい。即ち、凹部22Aと凹部22Bを対向して設けることは必須ではない。金型のその他の構造は、実質的に、実施の形態1と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。金型をこのような構造にすることで、例えば箱状の射出成形品の外側及び内側の表面に皮膜を形成することができる。実施の形態3の金型においては、皮膜原料供給部42A、ピストン44A、ピストン44Aに取り付けられたシャットオフピン46Aから構成された第1の皮膜原料注入装置40Aが、第1の皮膜原料注入部24Aに配設されており、皮膜原料供給部42B、ピストン44B、ピストン44Bに取り付けられたシャットオフピン46Bから構成された第2の皮膜原料注入装置40Bが、第2の皮膜原料注入部24Bに配設されている。射出成形品の形状等によっては、皮膜原料注入部24Aをキャビティ30内に設け、副キャビティの設置を省略してもよい。
【0026】
本発明の型内被覆成形法用の金型を使用した、熱可塑性樹脂に基づく型内被覆成形法(以下、単に射出成形法と呼ぶ)は、特に限定されるものではないが、
(イ)固定金型部及び可動金型部から成る金型に設けられたキャビティ内に熱可塑性樹脂から成る溶融樹脂を射出する工程と、
(ロ)溶融樹脂の射出完了後、注入された皮膜原料によってキャビティ内の樹脂が圧縮され及び/又は可動金型部が型開き方向に移動するように、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に所定量の皮膜原料を注入する工程と、
(ハ)離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となるように型内圧を保持する工程、
から成ることが好ましい。ここで、型内圧とは、キャビティ内に射出された樹脂及び/又は注入された皮膜原料によって生成された、キャビティの金型面が受ける圧力を指す。型内圧は、例えば、キャビティの金型面に圧力センサーを取り付けることによって測定することができる。尚、型内圧はキャビティにおける測定位置によって若干異なることがあるので、成形品の中心部に対応するキャビティの金型面における型内圧をもって型内圧の値を代表させる。
【0027】
溶融樹脂射出部の開口部20から離れた溶融樹脂射出部の部分に、皮膜原料流入防止のための凹部22が形成されている本発明の金型を用い、しかも、所定量の皮膜原料を注入することによって、キャビティ内の樹脂表面に形成される皮膜の膜厚を正確に制御することができる。加えて、かかる皮膜原料の所定量は、キャビティ内の樹脂が圧縮され及び/又は可動金型部が型開き方向に移動するような量である。言い換えれば、かかる皮膜原料の所定量は、もしも、皮膜原料の注入前に、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間が形成されていた場合にあっても、かかる空間の体積よりも大きな体積である。即ち、皮膜原料は、かかる空間内に過充填される。尚、皮膜原料が、キャビティ内の樹脂を圧縮しつつ注入されるか、あるいは可動金型部を固定金型部から若干離間させつつ注入されるか、あるいはその双方の作用を生じさせつつ注入されるかといった、どのような状態で皮膜原料がキャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に注入されるかは、皮膜原料の注入圧力、型締め力、樹脂の柔軟度に依存する。
【0028】
通常、注入された皮膜原料には体積収縮が生じる。しかしながら、上記の射出成形法においては、場合によっては皮膜原料が過充填されており、しかも、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となるように型内圧は保持される。従って、注入後の皮膜原料に常にキャビティの金型面から圧力が加わっている。その結果、皮膜表面の光沢性が低下したり、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性が低下したり、皮膜が不均一になるという問題を確実に回避することができる。尚、後述するように、皮膜原料の注入前に、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間が形成されている場合には、かかる空間内への皮膜原料の過充填によって、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となるように保持される。一方、キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧Pが0kgf/cmよりも高い状態で皮膜原料を注入する場合には、皮膜原料及びキャビティ内の樹脂に起因して、あるいは又、注入された皮膜原料に起因して、あるいは又、キャビティ内の樹脂に起因して、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となるように保持される。
【0029】
かかる射出成形法においては、キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧が0kgf/cmと等しい状態で皮膜原料を注入することができる。尚、このような態様を、以下、射出成形法の第1の態様と呼ぶ。ここで、型内圧Pが0kgf/cmと等しい状態とは、キャビティの金型面が受ける圧力、あるいは又、キャビティ内の樹脂に加わっている圧力が大気圧であることを意味する。具体的には、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間が形成されている状態、若しくは、空間は形成されていないが、キャビティ内に射出された樹脂によってキャビティの金型面に、大気圧の他、何ら圧力が加わっていない状態を指す。
【0030】
射出成形法の第1の態様においては、前記工程(イ)と工程(ロ)の間で、保圧を行う工程を更に含み、皮膜原料の注入を、保圧期間の終了と同時に、若しくは保圧期間の終了以降に行うことが好ましい。この場合、保圧期間の終了後、皮膜原料を注入するまでの時間は、10乃至120秒であることが好ましい。尚、保圧期間の終了前に皮膜原料の注入を開始した場合、キャビティ内の溶融樹脂が皮膜原料注入装置内に流入する危険がある。皮膜原料の注入開始を、保圧期間の終了と同時若しくはそれ以降にすることによって、このような危険性を回避することができる。
【0031】
保圧とは、溶融樹脂の射出後、射出成形装置の射出シリンダー側から金型の溶融樹脂射出部を通じてキャビティ内の溶融樹脂に圧力を加え続ける作業を指す。冷却に伴いキャビティ内の樹脂は体積収縮するが、保圧を行うことによって、キャビティ内に溶融樹脂を補充し、キャビティ内の樹脂全体の過剰な体積収縮を抑制しつつキャビティ内の樹脂の重量を増加させることができる。このような操作を保圧操作と呼び、このときの溶融樹脂に加えられる圧力が保圧圧力である。保圧期間(保圧時間)とは、溶融樹脂を規定量射出した後、溶融樹脂に保圧を加え続けている期間(時間)を意味する。尚、保圧期間中にゲート部内の樹脂の冷却固化が進行し、保圧を加え続けてもキャビティ内の樹脂の重量増加には何ら寄与しなくなることがある。このような現象をゲートシールと呼ぶ。一般に、保圧圧力が小さい場合、保圧時間が長い場合、あるいは又、成形すべき射出成形品の厚さが比較的薄い場合、ゲートシールが観察されることが多い。一方、保圧期間中にゲート部内の樹脂の冷却固化が十分に進行せず、ゲートシールが観察されない場合もある。即ち、保圧圧力が大きい場合、保圧時間が短い場合、成形すべき射出成形品の厚さが比較的厚い場合、ゲートシールは観察されないことが多い。
【0032】
射出成形法の第1の態様においては、溶融樹脂の射出開始から金型の離型までの間、金型の型締め力を一定に保持することができる。尚、以下、便宜上、このような操作を高圧型締め操作と呼ぶ。この場合、保圧操作によるキャビティ内の樹脂の重量増加が完了した時点における型内圧をP10、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT10とし、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度をT12、大気圧をPとし、(圧力P10,温度T10)における熱可塑性樹脂の比容積をV10、(圧力P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積をV12としたとき、V12≦V10である熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
あるいは又、射出成形法の第1の態様においては、保圧工程の完了後、金型の型締め力を工程(イ)における型締め力よりも減少させることができる。尚、以下、便宜上、このような操作を低圧型締め操作と呼ぶ。この場合、使用する熱可塑性樹脂の種類や成形条件等に依存して、低圧型締め操作の完了時、型内圧が0kgf/cmとなる場合もあるが、型内圧が0kgf/cmではない場合もある。後者の場合、金型の型締め力を減少させた直後の型内圧をP11、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT11とし、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度をT12、大気圧をPとし、(圧力P11,温度T11)における熱可塑性樹脂の比容積をV11、(圧力P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積をV12としたとき、V12≦V11である熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0034】
低圧型締め操作においては、前記工程(イ)における型締め力をF10、低減された型締め力をF11としたとき、0≦F11/F10≦0.3、更に好ましくは0≦F11/F10≦0.1を満足することが望ましい。F11/F10の値が0.3を越える場合、使用する熱可塑性樹脂や成形条件に依っては、皮膜原料注入時に生じるキャビティ内の樹脂の圧縮状態が不均一となり、皮膜の厚さが不均一となったり、射出成形品の一部分にしか皮膜が形成されない場合がある。更には、皮膜原料注入前10秒以内に、金型の型締め力を低減させることが望ましい。
【0035】
あるいは又、射出成形法の第1の態様においては、保圧工程の完了後、金型の型締め力を0とし、次いで、固定金型部と可動金型部とでキャビティを形成した状態で可動金型部を固定金型部から離間する工程を更に含むことができる。尚、以下、便宜上、このような操作を可動金型部離間操作と呼ぶ。この場合、使用する熱可塑性樹脂の種類や成形条件等に依存して、可動金型部離間操作の完了時、型内圧が0kgf/cmとなる場合もあるが、型内圧が0kgf/cmではない場合もある。後者の場合、可動金型部を固定金型部から離間させた直後の型内圧をP’11、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT’11とし、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度をT12、大気圧をPとし、(圧力P’11,温度T’11)における熱可塑性樹脂の比容積をV’11、(圧力P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積をV12としたとき、V12≦V’11である熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
高圧型締め操作、低圧型締め操作、あるいは可動金型部離間操作においては、皮膜原料の注入によって生成した型内圧のピーク圧をppeakとした場合、0<ppeak≦500kgf/cm、好ましくは50kgf/cm≦ppeak≦300kgf/cmを満足することが望ましい。キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧Pは、皮膜原料の注入時、0kgf/cmと等しい状態になっている。従ってppeakの値が0kgf/cmでは、注入された皮膜原料によってキャビティ内の樹脂が圧縮され及び/又は可動金型部が型開き方向に移動されることがない。このことは、形成された空間の体積と等しい体積の皮膜原料が注入されたか、又は、形成された空間の体積よりも少ない体積の皮膜原料が注入されたことを意味する。このような場合、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性が不十分となり、あるいは又、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性が低下する。一方、ppeakの値が500kgf/cmを越えると、皮膜原料注入時に皮膜原料によって生じるキャビティ内の樹脂の圧縮状態が不均一となる結果、皮膜の厚さが不均一となったり、射出成形品の一部分にしか皮膜が形成されない場合がある。ppeakの値がこれらの範囲にあるとき、言い換えれば、ppeakの値がこれらの範囲になるように、形成された空間の体積よりも大きな体積の皮膜原料を注入することにより、射出成形品の表面に均一な厚さの皮膜を形成することができ、しかも、熱可塑性樹脂に対する優れた皮膜の密着性を得ることができる。
【0037】
更には、離型直前の型内圧をp’としたとき、0<p’/ppeak≦1.0、より好ましくは0.5≦p’/ppeak≦1.0を満足することが望ましい。p’/ppeakの値が0では、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となるように型内圧が保持されていないことになる。その結果、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性が不十分となり、あるいは又、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性が低下する。p’/ppeakの値がこれらの範囲にあるとき、注入された皮膜原料、更には収縮しつつある皮膜原料に対して一層確実にキャビティの金型面から圧力が加わり続ける。その結果、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性に優れ、皮膜表面の光沢性が向上する。また、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性も向上する。
【0038】
射出成形法の第1の態様においては、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間の空間を一層形成し易くするために、キャビティへの溶融樹脂の射出後、金型を閉じ且つ金型の型締め力を保持した状態で、通常必要とされる保圧圧力よりも低い保圧圧力で保圧してもよい。この場合、通常必要とされる保圧圧力よりも低い保圧圧力は、通常必要とされる保圧圧力の30乃至90%、より好ましくは40乃至60%であることが望ましい。保圧期間中の金型の型締め力は、一定であっても、逐次変化させてもよい。例えば、溶融樹脂の冷却・固化の間に金型の型締め力を段階的に減少させてもよい。あるいは又、キャビティへの溶融樹脂の射出後、金型を閉じ且つ金型の型締め力を保持した状態で、通常必要とされる保圧圧力で、しかも通常必要とされる保圧時間(保圧期間)よりも短い時間、保圧してもよい。この場合、通常必要とされる保圧時間よりも短い保圧時間は、通常必要とされる保圧時間の20乃至80%、より好ましくは30乃至50%であることが望ましい。
【0039】
射出成形法の第1の態様においては、主に射出成形品の肉厚、射出成形品の表面に形成する皮膜の厚さに依存して、高圧型締め操作、低圧型締め操作あるいは可動金型部離間操作のいずれかを選択すればよい。射出成形品の肉厚が薄い場合には、可動金型部離間操作を選択することが好ましく、射出成形品の肉厚が厚い場合、高圧型締め操作あるいは低圧型締め操作を採用することが望ましい。射出成形品の表面に形成する皮膜の厚さを厚くしたい場合、低圧型締め操作を採用することが望ましく、更に皮膜の厚さを厚くしたい場合、可動金型部離間操作を採用することが望ましい。
【0040】
一般に、使用する熱可塑性樹脂が非強化の非晶性樹脂若しくは非晶性樹脂アロイ材から成る場合、キャビティの金型面近傍の樹脂が固化し始めても、金型面から離れた所に位置する樹脂は溶融状態にあり、しかも、固化した樹脂の部分と溶融状態の樹脂の境界は明確ではない。従って、樹脂がこのような状態にあるとき、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間(隙間)を形成しないで皮膜原料を注入すると、場合によっては、皮膜原料によってキャビティ内の樹脂は圧縮されるが、圧縮状態が不均一になる。その結果、注入された皮膜原料の厚さが不均一になり易い。
【0041】
然るに、射出成形法の第1の態様においては、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間(隙間)を形成し、かかる空間に皮膜原料を注入する。従って、熱可塑性樹脂として非強化の非晶性樹脂若しくは非晶性樹脂アロイ材を使用した場合であっても、均一な皮膜が射出成形品の表面に形成される。また、所定の期間の間保圧を行うことによって、射出成形品にひけやボイドが発生することを防止することができ、しかもキャビティによって形成される形状の射出成形品への転写性を良くすることができる。尚、熱可塑性樹脂が非晶性熱可塑性樹脂であるか否かは、一般に示差走査熱量測定(DSC)法により明確な融点(急激な吸熱を示す温度)が確認されるか否かによって判断される。明確な融点が確認されない樹脂が非晶性熱可塑性樹脂である。一方、明確な融点が確認される樹脂が結晶性熱可塑性樹脂である。
【0042】
また、V12≦V10(高圧型締め操作時)、V12≦V11(低圧型締め操作時)、若しくはV12≦V’11(可動金型部離間操作時)といった、熱可塑性樹脂の比容積を規定することで、キャビティ内での溶融樹脂の過剰充填分が型締め力によって受ける圧縮圧を確実に0kgf/cmにすることができ、射出成形品表面とキャビティの金型面との間に空間(隙間)が確実に生じる。更には、キャビティ内の樹脂に加わる圧力が大気圧まで低下した後(即ち、型内圧が0kgf/cmとなった後)、皮膜原料を注入することによって、かかる空間に皮膜原料を確実に且つ均一に注入することができる。あるいは又、ppeakの値を規定することによって、注入された皮膜原料、更には収縮しつつある皮膜原料に確実に圧力が加わり続ける。その結果、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性に優れ、皮膜表面の光沢性が向上する。また、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性も向上する。
【0043】
射出成形法の第1の態様においては、成形すべき射出成形品の形状に特に制限はない。
【0044】
あるいは又、上述の射出成形法においては、キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧Pが0kgf/cmよりも高い状態で皮膜原料を注入することができる。尚、このような態様を、以下、射出成形法の第2の態様と呼ぶ。具体的には、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間が形成されていない状態で、皮膜原料を注入する。
【0045】
射出成形法の第2の態様においては、前記工程(イ)と工程(ロ)の間で、保圧を行う工程を含み、皮膜原料の注入を、保圧期間の終了と同時に、若しくは保圧期間の終了以降に行うことが好ましい。
【0046】
この場合、金型に設けられたキャビティ内に溶融樹脂を射出した後の保圧期間を3秒以上とし、保圧圧力を300kgf/cm以上とすることが望ましい。保圧圧力が300kgf/cm未満で且つ保圧期間が3秒未満では、皮膜原料を注入する直前の型内圧Pが0kgf/cmにまで低下し易くなる場合がある。型内圧がこのように低下すると、使用する熱可塑性樹脂や皮膜原料、成形条件によっては、キャビティ内の樹脂あるいは注入された皮膜原料を加圧し続けることができなくなり、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性が不十分になったり、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性が低下する場合がある。然るに、保圧圧力及び保圧期間の値を上記のとおりとすれば、キャビティ内に樹脂が過剰充填された状態となり、型内圧Pが0kgf/cmより高い状態で皮膜原料を注入することができ、しかも、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に注入された皮膜原料を加圧し続けることができる。
【0047】
尚、保圧期間の終了前に皮膜原料の注入を開始した場合、キャビティ内の溶融樹脂が皮膜原料注入装置内に流入する危険がある。皮膜原料の注入開始を、保圧期間の終了と同時若しくはそれ以降にすることによって、このような危険性を回避することができる。更には、皮膜原料の注入開始を保圧期間の終了後5秒以内に行うことが好ましく、これによって、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性を一層向上させることが可能になる。
【0048】
射出成形法の第2の態様においては、溶融樹脂の射出開始から離型までの間、金型の型締め力を一定に保持することができる。即ち、高圧型締め操作を採用することができる。
【0049】
あるいは又、射出成形法の第2の態様においては、保圧工程の完了後、金型の型締め力を溶融樹脂の射出時における型締め力よりも減少させることができる。即ち、低圧型締め操作を採用することができる。この場合には、前記工程(イ)における型締め力をF20、低減された型締め力をF21としたとき、0≦F21/F20≦0.3、更に好ましくは0≦F21/F20≦0.1を満足することが望ましい。これによって、皮膜原料を注入する直前の、樹脂に起因した型内圧を低下させることで、均一な皮膜を確実に樹脂表面に形成することが可能となる。
【0050】
あるいは又、射出成形法の第2の態様においては、保圧工程の完了後、金型の型締め力を0とし、次いで、固定金型部と可動金型部とでキャビティを形成した状態で可動金型部を固定金型部から離間する工程を更に含むことができる。即ち、可動金型部離間操作を採用することができる。これによっても、皮膜原料を注入する直前の、樹脂に起因した型内圧を低下させることで、均一な皮膜を確実に樹脂表面に形成することが可能となる。
【0051】
これらの高圧型締め操作、低圧型締め操作若しくは可動金型部離間操作においては、皮膜原料の注入直前の樹脂に起因した型内圧をP22、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT22、大気圧をPとし、(圧力P22,温度T22)における熱可塑性樹脂の比容積をV22、(圧力P、温度T22)における熱可塑性樹脂の比容積をVとしたとき、V>V22である熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。
【0052】
尚、射出成形法の第2の態様においては、これらの高圧型締め操作、低圧型締め操作、可動金型部離間操作の全ての場合、型内圧Pが0kgf/cmより高い状態で、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に皮膜原料を注入する。尚、使用する熱可塑性樹脂等に依存するが、キャビティ内の皮膜原料及び樹脂に起因して、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となる場合、キャビティ内の樹脂のみに起因して、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となる場合、あるいは又、キャビティ内の皮膜原料のみに起因して、離型前における型内圧が0kgf/cmよりも高い状態となる場合がある。
【0053】
高圧型締め操作、低圧型締め操作、あるいは可動金型部離間操作においては、皮膜原料の注入直前の型内圧Pの値は、0<P≦500kgf/cm、より好ましくは、0<P≦300kgf/cmを満足することが望ましい。Pの値が500kgf/cmを越える場合、溶融樹脂の収縮し易い部分に皮膜原料が流れ易くなり、その結果、皮膜の膜厚の減少や膜厚のむら、あるいは又、皮膜が射出成形品の一部分にしか形成されないという問題が生じる。然るに、Pの値を上記の範囲とすることによって、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に皮膜原料を確実に注入することができる。
【0054】
更には、皮膜原料の注入直後の型内圧Ppeakの値は、0<Ppeak≦500kgf/cm、より好ましくは、0<Ppeak≦300kgf/cmを満足することが望ましい。尚、Ppeakは、キャビティ内の樹脂及び/又は皮膜原料の注入に起因した型内圧であり、ピーク値である。Ppeakの値は、皮膜原料注入直前の型内圧、キャビティ内の樹脂の柔軟度、可動金型部の移動のし易さによって決定される。Ppeakの値が500kgf/cmを越えると、皮膜の厚さが不均一となったり、射出成形品の一部分にしか皮膜が形成されない場合がある。一方、Ppeakの値が0kgf/cmでは、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性が不十分となり、あるいは又、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性が低下する。
【0055】
射出成形法の第2の態様においては、主に熱可塑性樹脂の種類、強化樹脂であるか非強化樹脂であるかに基づき、実際に射出成形試験を行って、高圧型締め操作、低圧型締め操作あるいは可動金型部離間操作のいずれかを選択すればよい。射出成形法の第2の態様においては、結晶性熱可塑性樹脂あるいは結晶性樹脂がリッチなポリマーアロイから成る熱可塑性樹脂の使用が特に好ましい。
【0056】
尚、成形すべき射出成形品の形状に特に制限はないが、結晶性熱可塑性樹脂あるいは結晶性樹脂がリッチなポリマーアロイから成り、厚さが3mm以上の射出成形品を成形する場合、射出成形法の第2の態様を適用することが好ましい。射出成形品の厚さが3mm以上にもなると、キャビティ内に射出された溶融樹脂の、射出成形品の厚さ方向の収縮が大きくなる。従って、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間が形成され易くなる。かかる空間が形成された後に皮膜原料を注入すると、樹脂の表面の固化が相当進行した状態で皮膜原料が注入されるため、場合によっては、皮膜と射出成形品との間の密着不良が生じ易くなる。
【0057】
射出成形法の第2の態様においては、キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧が完全に低下しないうちに(言い換えれば、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に隙間を設けることなく)、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に皮膜原料を注入する。その結果、注入された皮膜原料には確実に圧力が加わり続けるので、皮膜原料が収縮しても、皮膜表面へのキャビティの金型面の転写性に優れ、皮膜表面の光沢性が向上するし、熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性も向上する。また、熱可塑性樹脂の比容積を規定することで、キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧が完全に低下しないうちに、即ち、P>0の状態において、確実にキャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に皮膜原料を注入することができる。更には、皮膜原料注入の際の型内圧Pの値を規定することによって、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に皮膜原料を確実に注入することができ、しかも、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面の間に注入された皮膜原料を加圧し続けることができる。また、皮膜原料の注入開始を、保圧期間の終了と同時若しくはそれ以降とすることによって、皮膜原料を注入する装置への溶融樹脂の流入を防止することができ、しかも熱可塑性樹脂に対する皮膜の密着性を一層向上させることができる。
【0058】
皮膜原料を注入した直後の型内圧ppeak,Ppeakは、先に説明したように0kgf/cmを超え、500kgf/cm以下であることが好ましい。これらの型内圧は、皮膜原料注入直前の型内圧、キャビティ内の樹脂の柔軟度、可動金型部の移動のし易さに依存する。そして、皮膜原料を注入した直後の型内圧ppeak,Ppeakがこのような範囲内に収まるように、適宜、射出成形方法の第1の態様若しくは第2の態様を選択し、併せて、型締め操作の形態(高圧型締め操作、低圧型締め操作、可動金型部離間操作)を選択すればよい。どの組み合わせが最適かは、熱可塑性樹脂の種類、皮膜原料注入直前のキャビティ内の樹脂の柔軟度、皮膜原料の注入量(即ち、射出成形品の表面に形成すべき皮膜の厚さ)、射出成形品の肉厚や形状等に基づき、決定すればよい。例えば、非強化の非晶性樹脂若しくは非晶性樹脂アロイ材を使用する場合には、射出成形方法の第1の態様を採用することが好ましく、結晶性熱可塑性樹脂あるいは結晶性樹脂がリッチなポリマーアロイから成り、厚さが3mm以上の射出成形品を成形する場合には、射出成形方法の第2の態様を採用することが好ましい。この際、皮膜原料の注入量の多少に依存して、ppeak,Ppeakが所定の範囲内に収まるように、適宜、型締め操作の形態を選択、決定すればよい。
【0059】
【実施例】
(実施例1)
実施例1においては、図1に示した型内被覆成形法用の金型を用いて、射出成形品の成形を行った。実施例1における射出成形法は、キャビティ30内に射出された樹脂によって生成された型内圧が0kgf/cmと等しい状態で皮膜原料52を注入する。言い換えれば、皮膜原料52の注入前に、キャビティ30内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間54が形成されており、この空間54内に皮膜原料を注入する。更に、実施例1においては、前記工程(イ)と工程(ロ)の間で、保圧を行う工程を更に含む。また、低圧型締め操作を採用した。具体的には、実施例1においては、溶融樹脂の射出時における型締め力F10を約100トンf、低減された型締め力F11を約5トンfとした。即ち、F11/F10≒0.05である。このような型締め力の低減によって、高圧型締め操作の場合よりも、空間54の体積を増加させることができる。そして、かかる空間54に、空間の体積よりも若干多量に計量された皮膜原料52を確実に且つ均一に注入することができる。
【0060】
また、金型の型締め力を低減させた直後の型内圧をP11、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT11とし、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度をT12、大気圧をPとし、(圧力P11,温度T11)における熱可塑性樹脂の比容積をV11、(圧力P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積をV12としたとき、V12≦V11である熱可塑性樹脂を用いた。
【0061】
以下、図1〜図9を参照して、実施例1を詳しく説明する。尚、図1、図4〜図16においては、射出シリンダー100、固定プラテン104、可動プラテン106、タイバー108、型締め用油圧シリンダー110、油圧ピストン112の図示は省略した。
【0062】
以下の実施例においては、東芝機械株式会社製IS100射出成形装置を用いて、金型の型締め力を約100トンfとして金型の型締めを行い、溶融樹脂の射出成形を行った。キャビティ形状は、縦約100mm×横約30mm×深さ約10mm、肉厚2mmの略箱型である。尚、キャビティ形状はこのような形状に限定されず、所望に応じて任意の形状とすることができる。一方、ランナー部16の断面形状は矩形であり、断面の寸法を、幅6mm、高さ(深さ)5mmとした。更に、ゲート部の断面形状も矩形であり、断面の寸法を、幅4mm、高さ(深さ)2mmとした。固定金型部10に形成された凹部22は、溶融樹脂射出部を流れる溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に設けられた溝部から成り、幅を2mm、深さを3mm、長さを6mmとした。ここで、凹部22の幅は、凹部を溶融樹脂の流れの方向に沿って測定した値であり、凹部22の長さは、凹部を溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に沿って測定した値である。尚、凹部がランナー部を囲むように、環状の凹部を設けてもよい。
【0063】
実施例1において使用した原料は、以下のとおりである。
成形用の熱可塑性樹脂:ポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートアロイ樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユーピロンMB2112)
Figure 0003599441
【0064】
また、射出成形条件を、以下のとおりとした。
金型温度 : 130゜C
溶融樹脂の温度: 290゜C
射出圧力 : 800kgf/cm−G
【0065】
尚、金型温度はキャビティ30の金型面における温度であり、溶融樹脂の温度は射出シリンダー100内における溶融樹脂の温度であり、射出圧力の値は熱可塑性樹脂供給用スクリュー102に加える圧力の値とした。以下の実施例においても同様である。
【0066】
先ず、図1に模式的な断面図を示すように、金型を型締めした後、図5の模式的な断面図に示すように、熱可塑性樹脂から成る溶融樹脂50を、射出シリンダー100からスプルー部14、ランナー部16、ゲート部18を経由して、開口部20からキャビティ30に射出し、キャビティ30内を溶融樹脂50で充填する。尚、キャビティ30は、固定金型部10と可動金型部12とが高圧にて型締めされる(実施例1ではF10=約100トンf)ことによって形成されている。この場合、皮膜原料注入装置40のピストン44を前進させておき、シャットオフピン46の先端で皮膜原料注入部24を閉じておく。これによって、皮膜原料供給部42とキャビティ30とは連通せず、皮膜原料52がキャビティ30内に流入することはないし、溶融樹脂50が皮膜原料供給部42に流入することもない。
【0067】
溶融樹脂の射出完了直後から、熱可塑性樹脂供給用スクリュー102を用いて、キャビティ30内の樹脂に圧力を加えた。尚、キャビティ30内の樹脂に圧力を加えるこの操作を、以下、保圧操作と呼び、この圧力を保圧圧力と呼ぶ。保圧操作の条件を、以下のとおりとした。
保圧圧力 : 500kgf/cm−G
保圧時間(期間): 10秒
【0068】
保圧圧力の値は熱可塑性樹脂供給用スクリュー102に加えられた圧力の値であり、保圧時間はほぼゲートシール時間と同一であった。尚、射出成形品にひけやボイドが発生することを防止し、しかも形成される形状の射出成形品へのキャビティ30による転写性を良くするために、保圧操作を実行する。
【0069】
保圧操作を終了した後、型締め用油圧シリンダー110を操作して金型の型締め力を低減させた。型締め力の低減条件を以下のとおりとした。尚、型締め力の低減によって、キャビティ30の金型開閉方向の厚さは、溶融樹脂の射出時に比べて、約0.1mm程度増加する。
低減後の型締め力(F11):約5トンf
低減開始時間 :保圧終了より50秒後
【0070】
実施例1で使用した成形用の熱可塑性樹脂の体積収縮率は大きい。その結果、樹脂に起因した型内圧を0kgf/cmまで低減させることができ、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に塗膜を形成するに十分なる大きな空間54が形成された。この状態を、図6に模式的な断面図で示す。樹脂50Aは、通常、可動金型部12側に収縮するため、型締め力の低減と相まって、固定金型部10のキャビティ部分と樹脂50Aとの間に空間54が形成される。
【0071】
その後、皮膜原料注入装置40のピストン44を後退させることによって、シャットオフピン46の先端を後退させて、皮膜原料注入部24を開く。これによって、皮膜原料供給部42と空間54とは連通する。併せて、ポンプ120を介して皮膜原料52を皮膜原料供給部42に供給する。これによって、皮膜原料注入部24まで皮膜原料は充填されるが、連通している空間54の厚さは皮膜原料注入部24の流路幅と比較して非常に小さく、皮膜原料の粘度が十分には低くないこともあって、この時点では皮膜原料52が連通している空間54を満たすまでには至らない(図7参照)。
【0072】
その後、皮膜原料注入装置40のピストン44を前進させることによって、シャットオフピン46の先端を前進させる。シャットオフピン46の先端が前進することによって、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に皮膜原料52が注入される。皮膜原料の注入開始を保圧期間の終了後54秒とした。このとき皮膜原料52は、キャビティ30内の樹脂50Aを圧縮しつつ注入されるか、あるいは可動金型部12を固定金型部10から若干離間させつつ注入されるか、あるいはその双方の作用を生じさせつつ注入される。尚、どのような状態で皮膜原料52がキャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間の空間(隙間)54に注入されるかは、皮膜原料の注入圧力、型締め力、樹脂50Aの柔軟度に依存する。また、低圧型締め操作を行っているが故に、空間(隙間)54の体積を大きくすることが可能になり、厚い皮膜を射出成形品の表面に均一に形成することが可能になる。
【0073】
皮膜原料の注入条件を以下のとおりとした。
皮膜原料の注入圧力(pinj) :約15kgf/cm−G
皮膜原料の注入前の型内圧(P):0kgf/cm
皮膜原料の注入完了直後の型内圧のピーク圧(ppeak):15kgf/cm
皮膜原料注入量:0.47cm
【0074】
キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に注入された皮膜原料52は、ゲート部18からランナー部16へ侵入する。図7においては、空間54は均一な厚さ(距離)をもって図示している。しかしながら、実際には、凹部22の幅が小さいので、凹部22内の樹脂の凹部幅方向の体積収縮は小さい。その結果、凹部22の幅方向における空間の厚さ(距離)は小さい。即ち、凹部22の型開き方向と平行な面(凹部22の側面)と凹部22内の樹脂によって形成される空間の厚さ(距離)は小さい。それ故、皮膜原料52の流れは、凹部22の側面と凹部22内の樹脂によって形成される空間までしか到達せず、皮膜原料52は、凹部22を越えて更にランナー部16を流れることはない。この状態を、図8に模式的な断面図で示す。その結果、射出成形品の表面に形成される皮膜の厚さを正確に制御することができるばかりか、皮膜原料がランナー部16からスプルー部14にまで侵入し、ランナー部内やスプルー部内で冷却、固化した樹脂をランナー部やスプルー部から取り外すことが困難になるといった問題の発生を確実に回避することができる。
【0075】
尚、皮膜原料の注入完了後、金型の型締め力は低下させたまま保持してもよいし、皮膜を破損しない程度にまで再加圧してもよい。
【0076】
次いで、完全にあるいは離型作業に支障がない程度に皮膜原料52を固化させて、キャビティ30内の樹脂50Aの表面に皮膜52’を形成する。固化の時間を120秒間とした。尚、この時間は射出成形された樹脂の冷却時間でもある。次いで、型締め用油圧シリンダー110を後退させて、これまで加えていた型締め力を解除して、離型操作を行う。この状態を、図9の(A)の模式的な断面図に示す。最後に、表面に皮膜52’が形成された射出成形品60を可動金型部12から取り外す。尚、不要な部分を除去した後の射出成形品60の模式的な断面図を図9の(B)に示す。
【0077】
こうして、塗料皮膜から成る皮膜が射出成形品の表側の表面の略全面に亙って形成された射出成形品を得た。皮膜の厚さは、底部に開口部を有する箱型の射出成形品の底部で平均80μmであった。
【0078】
実施例1においては、皮膜原料に起因した型内圧のピーク圧ppeakは15kgf/cmであり、離型直前の皮膜原料に起因した型内圧p’は5kgf/cmであった。尚、このように、離型直前の型内圧p’が0kgf/cmではない高い値に保持される理由は、体積収縮した皮膜の体積(但し、大気圧下に放置したと仮定したときの体積である)が、未だ、空間54の体積より大きいことにある。
【0079】
このように、皮膜原料に起因した離型直前の型内圧p’を0kgf/cmではない高い値に保持することによって、皮膜は常にキャビティ30の金型面にて加圧される。その結果、射出成形品の表面に形成される皮膜に、高い均一性、光沢性、密着性を付与することができた。
【0080】
実施例1にて使用したポリカーボネート/ポリエチレンテレフタレートアロイ樹脂(ユーピロンMB2112)のPVT図を図19に示す。尚、図19中、(A)は圧力1kgf/cm(大気圧)のときの樹脂温度と比容積の関係を示し、(B)は同じく300kgf/cm、(C)は500kgf/cm、(D)は700kgf/cm、(E)は1000kgf/cmのときの樹脂温度と比容積の関係を示す。
【0081】
溶融樹脂のキャビティ内への保圧圧力P10は約500kgf/cm−Gであり、かかる樹脂の温度T10は290゜Cである。従って、(圧力P10=500kgf/cm,温度T10=290゜C)における熱可塑性樹脂の比容積V10は約0.9cm/gである。一方、金型の型締め力を減少させる直前の型内圧は既に大気圧と等しかったので、金型の型締め力を減少させた直後の型内圧P11も0kgf/cm、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度T11は140゜Cであった。それ故、(圧力P11,温度T11)における熱可塑性樹脂の比容積V11は約0.86cm/gであった。更には、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度T12は140゜Cであり、(大気圧P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積V12は約0.86cm/gであった。従って、V12≦V11を満足していた。
【0082】
即ち、温度T10(290゜C)から或る温度(図19では約220゜C)までは等比容積V10のままキャビティ内の樹脂は冷却される。次いで、図19においては、約220゜Cから約140゜Cまで、線Aに沿って、今度は比容積が小さくなるように、キャビティ内の樹脂は変化する。温度が約140゜C(T11)の時点で低圧型締め操作が行われ、キャビティの体積は若干増加するが、キャビティ内の樹脂に起因する型内圧は既に大気圧Pと等しくなっているので、PVT図上には変化が現れない。また、低圧型締め操作から皮膜原料の注入までに短時間(4秒)しか経過していないため、皮膜原料注入直前の樹脂の温度T12はT11とほぼ等しい。この結果、k(V11−V12)、及び低圧型締め操作に起因するキャビティの体積増加分の和に相当する体積変化が、キャビティの金型面とキャビティ内の樹脂との間に形成される空間54に相当する。このように、V12≦V11なる熱可塑性樹脂を使用し、低圧型締め操作を行うことによって、キャビティの金型面とキャビティ内の樹脂との間に空間を確実に形成することができる。
【0083】
(実施例2)
実施例2も、図1に示した型内被覆成形法用の金型を用い、射出成形法の第1の態様にて射出成形品の成形を行った。実施例2においては、溶融樹脂の射出開始から金型の離型までの間、金型の型締め力を一定に保持する。即ち、実施例2においては、高圧型締め操作を採用した。より具体的には、溶融樹脂の射出開始から金型の離型までの間、金型の型締め力を約100トンfに保持した。尚、ランナー部16、ゲート部18及び凹部22の寸法は、実施例1と同様とした。
【0084】
実施例2においては、皮膜原料注入直前のキャビティ内の樹脂が冷却することによって生じる樹脂の体積収縮作用に起因して、キャビティ内に射出された樹脂によって生成された型内圧Pが0kgf/cmに低下する。実施例2においては、保圧操作によるキャビティ内の樹脂の重量増加が完了した時点における型内圧をP10、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT10とし、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度をT12、大気圧をPとし、(圧力P10,温度T10)における熱可塑性樹脂の比容積をV10、(圧力P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積をV12としたとき、V12≦V10である熱可塑性樹脂を用いた。これによって、キャビティ内の樹脂によって生成した型内圧Pが0kgf/cmまで低下する。
【0085】
実施例2においては成形用の熱可塑性樹脂原料として、以下の原料を使用した。また、射出成形条件、保圧操作条件を、以下のとおりとした。尚、使用した皮膜原料を、実施例1と同様とした。
成形用の熱可塑性樹脂:ポリアミドMXD6(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:レニー1022)
射出成形条件
金型温度 : 130゜C
溶融樹脂の温度: 270゜C
射出圧力 : 700kgf/cm−G
保圧操作条件
保圧圧力 : 500kgf/cm−G
保圧時間 : 2.5秒
【0086】
実施例2における保圧圧力の値は通常の値であるが、保圧時間は、通常の保圧時間と比較して短い。尚、通常の保圧時間は9秒程度で、この時間はほぼゲートシール時間に等しい。従って、保圧操作による溶融樹脂の重量増加は、通常の保圧操作による溶融樹脂の重量増加よりも少ない。その結果、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に空間54が形成され易くなる。
【0087】
実施例2では保圧操作終了後、50秒間冷却時間をおいた後、型締め力を100トンfに保持したまま、皮膜原料を注入した。皮膜形成条件、皮膜原料注入後の冷却条件、皮膜固化条件は以下のとおりである。
皮膜形成条件
皮膜原料の注入開始:保圧期間の終了後50秒
皮膜原料の注入圧力(pinj):約150kgf/cm−G
皮膜原料の注入完了直後の型内圧のピーク圧(ppeak):150kgf/cm
皮膜原料の注入前の型内圧(P):0kgf/cm
皮膜原料注入量:0.55cm
皮膜固化条件
固化時間 : 120秒
尚、この固化時間は射出成形された樹脂の冷却時間でもある。
【0088】
離型直前における型内圧p’は40kgf/cmであった。実施例2にて用いた熱可塑性樹脂のPVT図を図20に示す。尚、図20中、(A)は圧力1kgf/cm(大気圧)のときの樹脂温度と比容積の関係を示し、(B)は同じく510kgf/cm、(C)は700kgf/cm、(D)は1020kgf/cm、(E)は1530kgf/cmのときの樹脂温度と比容積の関係を示す。保圧圧力P10は500kgf/cm−Gであり、保圧工程におけるキャビティ内の樹脂の温度T10は270゜Cである。従って、図20からも明らかなように、(圧力P10=500kgf/cm,温度T10=270゜C)における熱可塑性樹脂の比容積V10は、約0.65cm/gである。温度T10(270゜C)から或る温度(図20では約235゜C)までは等比容積V10のままキャビティ内の樹脂は冷却される。次いで、図20においては、約235゜Cから約140゜Cまで、線Aに沿って、今度は比容積が小さくなるように、キャビティ内の樹脂は変化する。温度が約140゜C(T11)の時点で皮膜原料の注入が行われる。皮膜原料の注入直前の樹脂に起因した型内圧は0kgf/cmであり、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度T12は約140゜Cである。従って、(型内力P=0kgf/cm,温度T12=140゜C)における熱可塑性樹脂の比容積V12は0.623cm/gである。即ち、V12≦V10を満足している。
【0089】
実施例2においても、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に注入された皮膜原料52は、ゲート部18からランナー部16へ侵入する。しかしながら、ランナー部16には凹部22が形成されているので、皮膜原料52が凹部22を越えて更にランナー部16を流れることはなかった。また、高圧型締め操作において、V12≦V10の関係を満足する熱可塑性樹脂を使用し、更には、好ましくは保圧時間を短くすることによって、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に空間54を形成することができ、塗料皮膜から成る平均厚さ100μmの皮膜が射出成形品の表側の表面の略全面に亙って形成された射出成形品を得ることができた。
【0090】
(実施例3)
実施例3においては、図10の型内被覆成形法用の金型を使用し、射出成形法の第1の態様に基づき射出成形品の成形を行った。実施例3においては、キャビティ30内への溶融樹脂の射出完了後、皮膜原料の注入前に、金型の型締め力を0とし、次いで、固定金型部10と可動金型部12とでキャビティ30を形成した状態で可動金型部12を固定金型部10から離間する工程を含む。実施例3の熱可塑性樹脂の射出成形法の実施に適した金型の概要を、図10の模式的な断面図を参照して説明する。尚、ランナー部16、ゲート部18及び凹部22の寸法は、実施例1と同様とした。
【0091】
実施例3の実施に適した型内被覆成形法用の金型も、固定金型部10と可動金型部12から構成されている。そして、固定金型部10と可動金型部12は、固定金型部10と可動金型部12とでキャビティ30を形成した状態で可動金型部12を固定金型部10から離間し得る構造を有している。即ち、可動金型部12を固定金型部10から離間することによってキャビティ30の体積を増加させ得る構造となっている。
【0092】
より具体的には、図10に示すように、可動金型部12を固定金型部10に対して若干移動させても閉じたキャビティ30が形成されるように、可動金型部12と固定金型部10のパーティング面12A,10Aが印篭構造となっている。尚、図10には、型締めされた状態の金型を示す。金型のその他の構造は、実施例1にて説明した金型と同様とすることができるので、説明は省略する。また、実施例3の実施に適した射出成形装置は、図3にて説明した射出成形装置と同様とすることができるので、その説明は省略する。
【0093】
実施例3においては、溶融樹脂の射出時の型締め力を約100トンfとし、皮膜原料の注入前に、型締め用油圧シリンダー110を動作させて、型締め力を開放(0トンf)とし、更に、可動金型部12を固定金型部10から離間し、キャビティ30の金型開閉方向の厚さを広げた。固定金型部10からの可動金型部12の離間量を0.1mmとした。尚、キャビティ30の金型開閉方向の厚さは、溶融樹脂の射出時に比べて、約0.3mm程度増加する。
【0094】
実施例3においては、可動金型部を固定金型部から離間させた直後の型内圧をP’11、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT’11とし、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度をT12、大気圧をPとし、(圧力P’11,温度T’11)における熱可塑性樹脂の比容積をV’11、(圧力P,温度T12)における熱可塑性樹脂の比容積をV12としたとき、V12≦V’11である熱可塑性樹脂を用いた。
【0095】
実施例3においては、使用した成形用の熱可塑性樹脂及び皮膜原料を、実施例1と同様とした。また、射出成形条件、保圧操作条件を、以下のとおりとした。尚、
射出成形条件
金型温度 : 130゜C
溶融樹脂の温度: 290゜C
射出圧力 : 800kgf/cm−G
保圧操作条件
保圧圧力 : 500kgf/cm−G
保圧時間 : 10秒
【0096】
実施例3では保圧操作終了後、50秒経過後、型締め用油圧シリンダー110を作動させて、金型の型締め力を0トンfとし、更に、固定金型部10と可動金型部12とでキャビティ30を形成した状態で可動金型部12を固定金型部10から0.1mm離間した。固定金型部10に対する可動金型部12の位置は、溶融樹脂の射出直前を基準とした場合、離間後では0.3mm移動していた。そして、保圧期間の終了後54秒経過した後、形成された空間54内に皮膜原料52を注入した。皮膜形成条件、皮膜原料注入後の冷却条件、皮膜固化条件は以下のとおりである。
皮膜形成条件
皮膜原料の注入開始:保圧期間の終了後54秒
皮膜原料の注入完了直後の型内圧のピーク圧(ppeak):20kgf/cm
皮膜原料の注入前の型内圧(P):0kgf/cm
皮膜原料注入量:1.7cm
皮膜固化条件
固化時間 : 120秒
尚、この固化時間は射出成形された樹脂の冷却時間でもある。
【0097】
離型直前における型内圧p’は5kgf/cmであった。保圧圧力P10は500kgf/cm−Gであり、保圧工程におけるキャビティ内の樹脂の温度T10は290゜Cである。従って、図19のPVT図から、(圧力P10=500kgf/cm,温度T10=290゜C)における熱可塑性樹脂の比容積V10は約0.90cm/gである。一方、可動金型部を固定金型部から離間させた直後の型内圧P’11は離間前に0kgf/cm、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度T’11は約140゜Cであった。また、皮膜原料の注入直前のキャビティ内の樹脂の温度T12もほぼ140゜Cであった。(圧力P’11=0kgf/cm,温度T’11=140゜C)における熱可塑性樹脂の比容積V’11は約0.86cm/gであり、(圧力P=0kgf/cm,温度T12=140゜C)における熱可塑性樹脂の比容積V12も約0.86cm/gであり、V12≦V’11を満足していた。
【0098】
実施例3においても、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に注入された皮膜原料52は、ゲート部18からランナー部16へ侵入する。しかしながら、ランナー部16には凹部22が形成されているので、皮膜原料52が凹部22を越えて更にランナー部16を流れることはなかった。また、実施例3においては、V12≦V’11の関係を満足する熱可塑性樹脂を使用し、更には、可動金型部離間操作を行うことによって、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に一層確実に空間54を形成することができ、塗料皮膜から成る皮膜が射出成形品の表側の表面の略全面に亙って形成された射出成形品を得ることができた。尚、皮膜の厚さは、箱型の射出成形品の底部で平均260μmであった。
【0099】
(実施例4)
実施例4では、図11に示した型内被覆成形法用の金型を使用し、射出成形法の第2の態様に基づき射出成形品の成形を行った。即ち、実施例4においては、キャビティ30内に射出された樹脂50Aによって生成された型内圧Pが0kgf/cmよりも高い状態で皮膜原料52を注入する。尚、実施例4の熱可塑性樹脂の射出成形法においては、金型を閉じ型締め力を保持した状態でキャビティ30内に溶融樹脂50を射出した後、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に空間(隙間)を形成することなく、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に皮膜原料52を注入する。即ち、実施例4においては、溶融樹脂の射出開始から離型までの間、金型の型締め力を一定に保持する、高圧型締め操作を採用した。尚、実施例4の実施に適した射出成形装置は、図3にて説明した射出成形装置と同様とすることができるので、その説明は省略する。キャビティ形状は、縦約100mm×横約30mm×深さ約10mm、肉厚4mmの略箱型としたが、キャビティ形状はこのような形状に限定されず、所望に応じて任意の形状とすることができる。一方、ランナー部16の断面形状は矩形であり、断面の寸法を、幅6mm、高さ(深さ)5mmとした。更に、ゲート部の断面形状も矩形であり、断面の寸法を、幅4mm、高さ(深さ)2mmとした。可動金型部12に形成された凹部22は、溶融樹脂射出部を流れる溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に設けられた溝部から成り、幅を2mm、深さを3mm、長さを6mmとした。
【0100】
実施例4においては、皮膜原料の注入直前の樹脂に起因した型内圧をP22、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度をT22、大気圧をPとし、(圧力P22,温度T22)における熱可塑性樹脂の比容積をV22、(圧力P、温度T22)における熱可塑性樹脂の比容積をVとしたとき、V>V22である熱可塑性樹脂を用いた。
【0101】
実施例4において使用した成形用の熱可塑性樹脂原料は、実施例2と同様とした。また、使用した皮膜原料は、実施例1と同様とした。
【0102】
また、射出成形条件を、以下のとおりとした。
金型温度 : 130゜C
溶融樹脂の温度: 270゜C
射出圧力 : 700kgf/cm−G
【0103】
先ず、図11に模式的な断面図を示すように、金型を型締めした後、図12に模式的な断面図を示すように、熱可塑性樹脂から成る溶融樹脂50を、射出シリンダーから、スプルー部14、ランナー部16、ゲート部18を経由して、開口部20からキャビティ30に射出し、キャビティ30内を溶融樹脂50で充填する。尚、キャビティ30は、固定金型部10と可動金型部12とが高圧にて型締めされる(実施例4では約100トンf)ことによって形成されている。この場合、皮膜原料注入装置40のピストン44を前進させておき、シャットオフピン46の先端で皮膜原料注入部24を閉じておく。これによって、皮膜原料供給部42とキャビティ30とは連通せず、皮膜原料52がキャビティ30内に流入することはない。
【0104】
溶融樹脂の射出完了直後から、以下の条件で保圧操作を行った。尚、この保圧操作の条件は、通常の条件であり、保圧時間はゲートシール時間とほぼ同一である。
保圧圧力 : 800kgf/cm−G
保圧時間(期間): 9秒
【0105】
保圧期間の終了後、皮膜原料注入装置40のピストン44を後退させることによって、シャットオフピン46の先端を後退させて、皮膜原料注入部24を開く。併せて、ポンプを介して皮膜原料52を皮膜原料供給部42に供給する。これによって、皮膜原料注入部24まで皮膜原料は充填される。尚、射出成形方法の第2の態様においては、樹脂50Aに起因する型内圧Pが0kgf/cmよりも高いので、この時点で樹脂50Aが皮膜原料注入部24に流入することを防止する必要がある。そのためには、キャビティの金型面と接する樹脂50Aの部分を或る程度硬化させておけばよい。具体的には、保圧期間の経過後、シャットオフピン46の後退までの時間を長くする方法、キャビティの金型面と接触する樹脂の部分及びその近傍の樹脂は冷却され、硬化するが、かかる硬化が早い結晶性樹脂を使用する方法が挙げられる。
【0106】
その後、皮膜原料注入装置40のピストン44を前進させることによって、シャットオフピン46の先端を前進させる。シャットオフピン46の先端が更に前進することによって、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間56に皮膜原料52が注入される。この状態を、図13の(A)の模式的な断面図に示す。皮膜原料の注入開始を保圧期間の終了後4秒とした。
【0107】
このとき皮膜原料52は、キャビティ30内の樹脂50Aを圧縮しつつ注入されるか、あるいは可動金型部12を固定金型部10から若干離間させつつ注入されるか、あるいはその双方の作用を生じさせつつ注入される。尚、どのような状態で皮膜原料52がキャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間56に注入されるかは、皮膜原料の注入圧力、型締め力、樹脂50Aの柔軟度に依存する。図13の(A)においては、樹脂50Aが皮膜原料52によって圧縮されている状態を拡大して模式的に示した。
【0108】
皮膜原料の注入条件を以下のとおりとした。
皮膜原料の注入圧力(pinj) :500kgf/cm−G
皮膜原料の注入時の型内圧(P):300kgf/cm
皮膜原料の注入直後の型内圧(Ppeak):500kgf/cm
皮膜原料注入量:0.2cm
【0109】
実施例4においても、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間56に注入された皮膜原料52は、ゲート部18からランナー部16へ侵入する。射出成形方法の第2の態様においては、注入された皮膜原料52は、キャビティ30内の樹脂50Aを圧縮しつつ注入されるか、あるいは可動金型部12を固定金型部10から若干離間させつつ注入されるか、あるいはその双方の作用を生じさせつつ注入される。樹脂の圧縮のし易さ(柔軟度)は、一般に温度に依存する。即ち、ランナー部16に設けた凹部22を先の寸法にすることによって、凹部22内の樹脂50Aの冷却を他の部分における樹脂の冷却よりも早く進行させることで、キャビティ30内、ゲート部18内やランナー部16内の樹脂よりも凹部22内の樹脂50Aは早く固化し、圧縮され難くくなる。また、凹部22の型開き方向と平行な面(凹部22の側面)と樹脂との間に侵入した皮膜原料52は、その圧力をかかる凹部22の面に主に伝えるだけであり、凹部22の型開き方向と直角の面(凹部22の底面)方向の力の成分は極めて小さくなる。その結果、皮膜原料52が凹部22を越えて更にランナー部16を流れることはなかった。
【0110】
次いで、完全にあるいは離型作業に支障がない程度に皮膜原料52を固化させて、キャビティ30内の樹脂50Aの表面に皮膜を形成する。固化の時間を120秒間とした。尚、この期間に射出成形された樹脂は冷却し続ける。次いで、型締め用油圧シリンダー110の油圧ピストン112を後退させて、これまで加えていた型締め力を解除して、離型操作を行う。最後に、金型から射出成形品を取り出す。尚、離型直前における型内圧P’の値は約320kgf/cmであった。
【0111】
こうして、塗料皮膜から成る皮膜が射出成形品の表側の表面の略全面に亙って形成された射出成形品を得た。皮膜の厚さは、箱型の射出成形品の底部で平均30μmであった。尚、表面に皮膜52’が形成され、不要な部分が除去された後の射出成形品60の模式的な断面図を図13の(B)に示す。
【0112】
実施例4における皮膜原料注入直前における型内圧P22は300kgf/cm、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度T22は235゜Cであった。実施例4においては、(圧力P22=300kgf/cm,温度T22=235゜C)における熱可塑性樹脂の比容積をV22、(圧力P=1kgf/cm,温度T22=235゜C)における熱可塑性樹脂の比容積をVとしたとき、V22=0.643cm/g、V=0.653cm/gである。即ち、V>V22を満足している。それ故、皮膜原料注入直前の型内圧は0kgf/cmまで低下しなかった。尚、実施例4にて使用した熱可塑性樹脂のPVT図は、図20と同じである。
【0113】
(実施例5)
実施例5では、図14に示した型内被覆成形法用の金型を使用し、射出成形法の第2の態様に基づき射出成形品の成形を行った。射出成形法において実施例5が実施例4と相違する点は、金型の型締め力を、皮膜原料52の注入前に、溶融樹脂の射出時における型締め力よりも減少させる点にある。即ち、溶融樹脂の射出時の型締め力を約100トンf(=F20)とし、皮膜原料52の注入前に、型締め力を約5トンf(=F21)に下げた。即ち、F21/F20≒0.05である。尚、ランナー部16及びゲート部18の寸法、並びに凹部22A,22Bの幅及び深さは、実施例4と同様とした。
【0114】
図14に示した型内被覆成形法用の金型においては、皮膜原料流入防止のための環状の凹部22Aが固定金型部10に形成されており、一方、環状の凹部22Bが可動金型部12に形成されている。即ち、ランナー部16は凹部22A,22Bによって囲まれている。固定金型部10に形成された凹部22Aは、溶融樹脂射出部を流れる溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に設けられた溝部から成り、幅を2mm、深さを3mmとした。また、可動金型部12に形成された凹部22Bは、溶融樹脂射出部を流れる溶融樹脂の流れの方向と略直角の方向に設けられた溝部から成り、幅を2mm、深さを3mmとした。尚、実施例5の実施に適した射出成形装置は、図3にて説明した射出成形装置と同様とすることができるので、その説明は省略する。
【0115】
実施例5において使用した成形用の熱可塑性樹脂原料を実施例4と同様とし、射出成形条件、保圧操作条件を実施例4と同様とした。また、第1の皮膜原料注入部24Aから注入する皮膜原料52Aを、実施例1と同様とした。第2の皮膜原料注入部24Bから注入する皮膜原料52Bとして、三菱化学株式会社製銅系導電性塗料(MCP−1000)を遅乾性シンナー(三菱化学株式会社製:MCPシンナーBM)で希釈したものを使用した。尚、型締めした後の金型の模式的な断面図を図14に示す。また、溶融樹脂50をキャビティ30内に射出した状態を、図15の模式的な断面図に示す。
【0116】
実施例5においては、保圧期間の終了直後、型締め用油圧シリンダー110を操作して、型締め力を約5トンfまで低下させる。これによって、キャビティの体積は若干増加するが、V>V22を満足する熱可塑性樹脂を使用するので、未だ、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間には空間は形成されない。次いで、皮膜原料注入装置40A,40Bのピストン44A,44Bを後退させることによって、シャットオフピン46A,46Bの先端を後退させて、皮膜原料注入部24A,24Bを開く。これによって、皮膜原料注入部24A,24Bまで皮膜原料は充填されるが、型内圧Pが0kgf/cmにまで低下していないので樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に空間(隙間)は形成されず、皮膜原料供給部42A,42Bとキャビティ30とは連通していない。従って、皮膜原料52A,52Bは、この段階ではキャビティ30側に流入しない。
【0117】
型締め力を低下させ、次いで、シャットオフピン46A,46Bの前進によって、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に、皮膜原料52A,52Bを注入する。この状態を、図16の(A)に模式的な断面図で示す。実施例4と比較すると、低圧型締め操作であるが故に、実施例4よりも厚い皮膜を形成することが可能となる。尚、皮膜原料の注入開始を保圧期間の終了後4秒とした。また、皮膜原料の注入時の型内圧(P)は100kgf/cmであった。
皮膜形成条件
第1の皮膜原料注入部24Aからの皮膜原料の注入
皮膜原料の注入圧力(pinj) :240kgf/cm−G
注入量:0.3cm
第2の皮膜原料注入部24Bからの皮膜原料の注入
皮膜原料の注入圧力(pinj) :240kgf/cm−G
注入量:0.1cm
皮膜原料の注入直後の型内圧(Ppeak):240kgf/cm
皮膜固化条件
固化時間 : 120秒
【0118】
尚、この皮膜の固化期間に、射出成形された樹脂は冷却され続ける。皮膜原料の注入完了後、金型の型締め力を低下させたまま保持しておいてもよいし、皮膜原料の注入によって樹脂表面に形成された皮膜を破損しない程度まで型締め力を増加させてもよい。尚、離型直前における型内圧P’の値は約190kgf/cmであった。
【0119】
実施例5において、皮膜原料注入直前における型内圧P22は100kgf/cm、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度T22は235゜Cであった。(圧力P22=100kgf/cm,温度T22=235゜C)における熱可塑性樹脂の比容積をV22、(圧力P=1kgf/cm,温度T22=235゜C)における熱可塑性樹脂の比容積をVとしたとき、V22=0.648cm/g、V=0.653cm/gであった。即ち、V>V22を満足している。尚、実施例5にて使用した熱可塑性樹脂のPVT図は、図20と同じである。
【0120】
こうして、皮膜52A’,52B’が射出成形品60の表側及び裏面の表面の略全面に亙って形成された射出成形品60を得ることができた。実施例5においても、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に注入された皮膜原料52A,52Bは、ゲート部18からランナー部16へ侵入する。しかしながら、ランナー部16には凹部22A,22Bが形成されているので、皮膜原料52A,52Bが凹部22A,22Bを越えて更にランナー部16を流れることはなかった。尚、表面に皮膜52A’(厚さ約50μm),52B’(厚さ約30μm)が形成され、不要な部分が除去された後の射出成形品60の模式的な断面図を、図16の(B)に示す。
【0121】
(実施例6)
実施例6では、図10に示した型内被覆成形法用の金型を使用し、射出成形法の第2の態様に基づき射出成形品の成形を行った。実施例6が実施例4と相違する点は、金型の型締め力を、皮膜原料52の注入前に、溶融樹脂の射出時における型締め力よりも減少させ、その後、固定金型部10と可動金型部12とでキャビティ30を形成した状態で可動金型部12を固定金型部10から離間した後、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面の間に皮膜原料52を注入する点にある。実施例6においては、金型の型締め力を、溶融樹脂の射出時の型締め力を約100トンfとし、皮膜原料52の注入前に、型締め力を開放(0トンf)とし、更には、可動金型部12を固定金型部10から離間させた。尚、離間量を0.1mmとした。固定金型部10に対する可動金型部12の位置は、溶融樹脂の射出直前を基準とした場合、離間後では0.3mm移動していた。実施例6の実施に適した射出成形装置は、図3にて説明した射出成形装置と同様とすることができるので、その説明は省略する。尚、キャビティ形状は、縦約100mm×横約30mm×深さ約10mm、肉厚4mmの略箱型である。また、尚、ランナー部16、ゲート部18及び凹部22の寸法を、実施例1と同様とした。
【0122】
実施例6において使用した成形用の熱可塑性樹脂原料及び皮膜原料を、実施例4と同様とした。また、射出成形条件、保圧操作条件も実施例4と同様とした。
【0123】
実施例6では保圧期間の終了直後、型締め用油圧シリンダー110を作動させて型締め力を解放し、可動金型部12を固定金型部10から約0.1mm離間させた後、皮膜原料注入装置40のピストン44を後退させることによって、シャットオフピン46の先端を後退させて、皮膜原料注入部24を開く。これによって、皮膜原料注入部24まで皮膜原料は充填されるが、キャビティは樹脂で完全に満たされており、型内圧0kgf/cmにまで低下していないので、樹脂50Aとキャビティ30の金型面の間に空間が形成されず、皮膜原料供給部42とキャビティ30とは連通していない。従って皮膜原料52は、この段階ではキャビティ30側に流入しない。
【0124】
可動金型部12を固定金型部10から離間させ、次いで、シャットオフピン46の前進によって、皮膜原料52はキャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に注入される。皮膜原料の注入開始を保圧期間の終了後4秒とした。尚、実施例5と比較すると、可動金型離間操作であるが故に、厚い皮膜を形成することが可能となる。
皮膜形成条件
皮膜原料の注入圧力(pinj) :200kgf/cm−G
皮膜原料の注入時の型内圧(P):50kgf/cm
皮膜原料の注入直後の型内圧(Ppeak):200kgf/cm
注入量:0.6cm
皮膜固化条件
固化時間 : 120秒
【0125】
尚、この皮膜の固化期間に、射出成形された樹脂は冷却され続ける。皮膜原料の注入完了後、金型の型締め力を開放したまま保持しておいてもよいし、皮膜原料の注入によって樹脂表面に形成された皮膜を破損しない程度まで型締め力を増加させてもよい。尚、離型直前における型内圧P’の値は約100kgf/cmであった。
【0126】
実施例6においては、皮膜原料注入直前における型内圧P22は50kgf/cm、かかる時点におけるキャビティ内の樹脂の温度T22は235゜Cであった。(圧力P22=50kgf/cm,温度T22=235゜C)における熱可塑性樹脂の比容積をV22、(圧力P=1kgf/cm,温度T22=235゜C)における熱可塑性樹脂の比容積をVとしたとき、V22=0.650cm/g、V=0.653cm/gである。即ち、V>V22を満足している。それ故、皮膜原料注入直前の型内圧は0kgf/cmまで低下せず、キャビティ50内の樹脂40Aとキャビティ50の金型面との間に空間(隙間)が発生することはない。尚、実施例6にて使用した熱可塑性樹脂のPVT図は、図20と同じである。
【0127】
こうして、塗料皮膜から成る皮膜が射出成形品の表側の表面の略全面に亙って形成された射出成形品を得た。皮膜の厚さは、箱型の射出成形品の底部で平均100μmであった。実施例6においても、キャビティ30内の樹脂50Aとキャビティ30の金型面との間に注入された皮膜原料52は、ゲート部18からランナー部16へ侵入する。しかしながら、ランナー部16には凹部22が形成されているので、皮膜原料52が凹部22を越えて更にランナー部16を流れることはなかった。
【0128】
以上、本発明を実施の形態及び好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施の形態にて説明した型内被覆成形法用の金型の構造は例示であり、適宜設計変更することが可能である。また、実施例にて説明した型内被覆成形法における各種の条件や使用した材料も例示であり、適宜変更することができる。実施例1及び実施例2で説明した射出成形法においては、実施の形態1にて説明した金型を使用したが、実施の形態2若しくは実施の形態3にて説明した金型を使用することもできる。一方、実施例4で説明した射出成形法においても、実施の形態1若しくは実施の形態3にて説明した金型を使用することもできる。図10に示した印篭構造を有する金型において、皮膜原料注入装置を可動金型部に配設してもよいし、固定金型部と可動金型部の両方に配設してもよい。
【0129】
熱可塑性樹脂の射出成形方法においては、皮膜原料を注入した直後の型内圧ppeak,Ppeakが先に説明した範囲内に収まるように、適宜、第1の態様若しくは第2の態様を選択し、併せて、型締め操作の形態(高圧型締め操作、低圧型締め操作、可動金型部離間操作)を選択すればよい。どの組み合わせが最適かは、熱可塑性樹脂の種類、皮膜原料注入直前のキャビティ内の樹脂の柔軟度、皮膜原料の注入量(即ち、射出成形品の表面に形成すべき皮膜の厚さ)、射出成形品の肉厚や形状等に基づき、決定すればよい。
【0130】
【発明の効果】
本発明の型内被覆成形法用の金型においては、溶融樹脂射出部の一部に凹部が形成されているので、皮膜原料の溶融樹脂射出部への流入を効果的に防止できる。それ故、正確に制御された所望の厚さの皮膜を射出成形品の表面に形成することができるし、金型の離型後、射出成形品が固定金型部から離れなくなることを効果的に防止し得る。その結果、安定した成形サイクルにて、各種の機能を有する皮膜を樹脂の表面上に形成することができ、最終製品に至る製造工程の削減、製造設備の縮小、加工・処理時間の短縮、製造コストの低減を図ることが可能となる。しかも、金型作製時、かかる凹部の形成は左程の工数を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図である。
【図2】スプルー部、ランナー部、ゲート部、凹部及びキャビティの部分を透視した模式的な斜視図である。
【図3】実施の形態1に係る型内被覆成形法用の金型を配設した射出成形装置の概要を示す模式的な断面図である。
【図4】実施の形態1の変形に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図である。
【図5】実施の形態1における型内被覆成形法用の金型に溶融樹脂を射出した状態を示す模式的な断面図である。
【図6】実施の形態1における型内被覆成形法用の金型において、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に空間が形成された状態を示す模式的な断面図である。
【図7】実施の形態1における型内被覆成形法用の金型において、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に形成された空間に皮膜原料を注入する直前の状態を示す模式的な断面図である。
【図8】実施の形態1における型内被覆成形法用の金型において、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に形成された空間に皮膜原料を注入した後の状態を示す模式的な断面図である。
【図9】実施の形態1における型内被覆成形法用の金型において、離型を行った後の状態を示す模式的な断面図、及び射出成形品の模式的な断面図である。
【図10】可動金型部と固定金型部のパーティング面が印篭構造となっている型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図である。
【図11】実施の形態2に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図である。
【図12】実施の形態2における型内被覆成形法用の金型に溶融樹脂を射出した状態を示す模式的な断面図である。
【図13】実施の形態2における型内被覆成形法用の金型において、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に皮膜原料を注入した後の状態を示す模式的な断面図、及び射出成形品の模式的な断面図である。
【図14】実施の形態3に係る型内被覆成形法用の金型の模式的な断面図である。
【図15】実施の形態3における型内被覆成形法用の金型に溶融樹脂を射出した状態を示す模式的な断面図である。
【図16】実施の形態3における型内被覆成形法用の金型において、キャビティ内の樹脂とキャビティの金型面との間に皮膜原料を注入した後の状態を示す模式的な断面図、及び射出成形品の模式的な断面図である。
【図17】従来のインモールドコーティング法において使用される金型の模式的な断面図である。
【図18】従来のインモールドコーティング法において使用される金型における問題を説明するための金型等の模式的な断面図である。
【図19】実施例1にて使用した熱可塑性樹脂のPVT図である。
【図20】実施例2にて使用した熱可塑性樹脂のPVT図である。
【符号の説明】
10 固定金型部
12 可動金型部
14 スプルー部
16 ランナー部
18 ゲート部
20 開口部
22,22A,22B 凹部
24 皮膜原料注入部
30 キャビティ
32 副キャビティ
40,40A,40B 皮膜原料注入装置
42,42A,42B 皮膜原料供給部
44,44A,44B ピストン
46,46A,46B シャットオフピン
50 溶融樹脂
50A 樹脂
52,52A,52B 皮膜原料
52’,52A’,52B’ 皮膜
60 射出成形品
100 射出シリンダー
102 熱可塑性樹脂供給用スクリュー
104 固定プラテン
106 可動プラテン
108 タイバー
110 型締め用油圧シリンダー
112 油圧ピストン
120 ポンプ
122 皮膜原料タンク
124 耐圧配管

Claims (7)

  1. 固定金型部と可動金型部から成り、
    固定金型部と可動金型部によって形成されたキャビティ、
    溶融樹脂をキャビティ内に射出するための溶融樹脂射出部、及び、
    皮膜原料をキャビティ内に注入するために、キャビティに開口した皮膜原料注入部、を備えた、型内被覆成形法用の金型であって、
    溶融樹脂射出部は、ランナー部、及び、該ランナー部に連通し、キャビティに開口したゲート部から成り、
    該ランナー部及び/又はゲート部には、皮膜原料流入防止のための凹部が形成されていることを特徴とする金型。
  2. 固定金型部と可動金型部から成り、
    固定金型部と可動金型部によって形成されたキャビティ、
    溶融樹脂をキャビティ内に射出するための溶融樹脂射出部、及び、
    皮膜原料をキャビティ内に注入するために、キャビティに開口した皮膜原料注入部、を備えた、型内被覆成形法用の金型であって、
    溶融樹脂射出部は、キャビティに開口したゲート部から成り、
    該ゲート部には、皮膜原料流入防止のための凹部が形成されていることを特徴とする金型。
  3. 凹部の深さは、0.2乃至10mmであり、凹部の幅は、0.2乃至10mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型内被覆成形法用の金型。
  4. 凹部の深さは、0.5乃至5mmであり、凹部の幅は、0.5乃至3mmであることを特徴とする請求項3に記載の型内被覆成形法用の金型。
  5. 皮膜原料注入部は固定金型部に設けられ、
    皮膜原料流入防止のための凹部が固定金型部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型内被覆成形法用の金型。
  6. 皮膜原料注入部は可動金型部に設けられ、
    皮膜原料流入防止のための凹部が可動金型部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型内被覆成形法用の金型。
  7. 皮膜原料注入部は、固定金型部に設けられた第1の皮膜原料注入部と、可動金型部に設けられた第2の皮膜原料注入部とから成り、
    皮膜原料流入防止のための凹部が固定金型部及び可動金型部に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の型内被覆成形法用の金型。
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