JP3599431B2 - 仮締切の施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設のダム堤体の下部に設けられた取水口などを後から増設する場合や、沈埋トンネルの立坑の補修等を行なう場合等水中構造物に接して仮締切を施工する際に有効な仮締切の施工方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
従来、既設のダム堤体の下部に設けられた取水口などを増設する場合には、冬季の渇水時の低水位期間を利用してダム堤体の上流面の地盤上に門型構造などの仮締切構造物を据え付けた後、取水口の増設などの作業を行なっている。
このため仮締切の施工時期が限定され、仮締切を施工するのに数回の冬季の低水位期間が必要となるためそれだけ施工工期が長くなり、工事費がかさむという問題があった。
また、沈埋トンネルの立坑の補修の場合にも、仮締切を施工するのに、ほとんど潜水夫による水中作業となるため、安全性及び経済性の面でも問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来の問題点を解決するためになされたものであり、短期間に水中構造物に接して仮締切構造物の据え付けを行なうことができる安全で経済的な仮締切の施工方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の仮締切の施工方法は、水中構造物に隣接した基礎地盤上に台座コンクリートを打設の後、その水面上に浮設した作業足場用浮桟橋とクレーンとを使用して、水中構造物壁面への対向面が凹状部を形成する隔壁を有し、さらに凹状部の周縁支承部に水密用シール材を配置し、かつ最下部に底版を有する二重鋼殻構造の仮締切構造物を複数のブロックに分割し、下部から上部に各ブロックを順次接合しながら注水により沈設して台座コンクリート上に着底させ、仮締切構造物の上記凹状部内の水を排水して水中構造物に圧着させ、仮締切構造物の下端部の周囲に台座コンクリートを打設した後、隔壁を撤去することを特徴とするものであり、また仮締切構造物のブロックの沈設時に、各ブロックの隔壁の二重鋼殻構造内にバラスト材を中詰めすることを特徴としている。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の仮締切の施工方法を用いてダム堤体に接して仮締切構造物を据え付ける手順の一実施例を説明するが、図1はその仮締切構造物1を台座コンクリート2上に着座した状態を示す斜視図であり、この仮締切構造物1は、複数のブロック1A、1B、1Cからなり、図2以降に示すダム堤体3の上流壁面への対向面が凹状部4を形成する隔壁11を有し、しかも最下部のブロック1Aに底版12を有する二重鋼殻構造から構成され、最下部のブロック1Aの上に次々と各ブロック1B、1Cを溶接・ボルト・クリップ・クサビなどで接合するものである。
【0006】
なお、本実施例では、仮締切構造物1を、1A、1B、1Cの3つのブロックに分割しているが、分割する数は3に限らず、仮締切構造物1の大きさに応じて決定すればよい。
次に、この仮締切構造物1をダム堤体3に接して据え付ける手順につき説明すると、ダム堤体3上流部に基礎地盤5を形成するため、図4に示すごとく、ダム堤体3の頂部に作業構台6を設置し、トラッククレーン7の附属の密閉式グラブバケット等により台座コンクリート2の基礎部分の沈木や塵芥等を撤去し、台座コンクリート2施工のための測量を行う。
【0007】
その後、図5に示すように潜水夫8により台座コンクリート2の基礎部となる基礎地盤5の清掃及び型枠設置を行ない、コンクリートポンプ9により水中不分離性コンクリートを打設し、所定の天端高さの台座コンクリート2を完成する。次に、図6及びその平面図である図7に示すごとく、打設した台座コンクリート2の水面上に作業足場用の浮桟橋20を浮設し、アンカー21を用いてダム3の壁面に係留し、さらに仮締切沈設用ガイド22(図12に示す)を潜水夫8により、アンカーボルト(図12の42)でダム面に固定する。
【0008】
そこで、図1のごとく複数に分割された二重鋼殻構造の仮締切構造物1のブロックの最下部のブロック1Aを、浮桟橋20及びクローラクレーン7を使用して、所定の位置に浮かせた後、最下部のブロック1A内に注水パイプ23で注水して次のブロック1Bを載せて溶接作業が行える高さまで最下部のブロック1Aを沈設し、次のブロック1Bを載せて溶接・ボルト・クリップ・クサビなどにより接合して、最終的には最下部のブロック1Aの底版12が台座コンクリート2上に着底するまでブロックの沈設と接合作業を図8に示すように行なうが、図8の仮締切構造物1内への注水を図2に示している。
【0009】
なお、上記仮締切構造物1の沈設時において、各ブロック1A、1B、1Cの隔壁11の二重鋼殻構造内には、各ブロックの前壁との重量バランスを保つために、各ブロックごとに前もってバラスト30を中詰めしておくことが望ましい。なお、バラスト30としては、砕石、砂、袋詰の砂、コンクリートブロック等固体状のものがバランス上好ましい。
【0010】
また、各ブロックはクローラクレーン7により浮桟橋20内側に吊り降ろされて下部から上部に順次接合されるが、底版12を有する二重鋼殻構造による浮力を利用し、内部に注水することにより沈設が安全に行われる。
次に、仮締切構造物1の沈設終了後、図9の状態で仮締切全体をウインチによりダム堤体3側に引き込み、図3に示すごとく、ダム堤体3の上流壁面と仮締切の隔壁11との間に挟まれた凹状部4内の水を注水ポンプ31を用いて排水することにより、図3に示す外圧Pと内圧との差により仮締切のブロック1はダム堤体3面に固定される。
【0011】
上記仮締切構造物1の沈設時に、ダム堤体3の上流壁面と、それに接合する仮締切の隔壁11の外側の凹状部4の周縁支承部14との接合部には、図12に示すような水密用シール材40として、例えばこの実施例ではゴムガスケットを介設しており、このゴムガスケットは水圧に対して所要な伸縮量を保つような諸元を持たせている。
【0012】
上記の仮締切構造物1の沈設後に台座コンクリート2上の仮締切の周囲に図1に24で示す平面形状がコの字型の残りの台座コンクリートを打設して、仮締切構造物1の底版12に揚圧力が作用するのを防止する。
なお、図12に示すこの実施例では、上記周縁支承部14のゴムガスケットの周囲に、二次止水用の単泡スポンジ41を挿設し、さらにこの周縁支承部14はダム3側にアンカーボルト42で固定するようになっている。
【0013】
仮締切構造物1をダム堤体3に接合後、速やかに隔壁11を搬出可能な分割片に切断し、クローラクレーン17により撤去し、図10に示すごとく、仮締切構造物1内に足場を設け、アンカーボルト50によりダム面に仮締切構造物を固定し、ダム堤体3内の水位の低下時の転倒防止対策とする。
次に、仮締切内に階段51やエレベータなどを設置し、ダム堤体3の取水口60や止水ゲート取付・スクリーン設置などの施工を行う。
【0014】
一方、取水口60などの工事が終了した後には、図11に示すごとく足場70を設置し、仮締切構造物1の固定用のアンカーボルト50を撤去し、次に仮締切構造物1内に注水を行い、各ブロックごとにクローラクレーン17で吊り上げ可能な大きさに潜水夫8により分割し、仮締切構造物1を撤去することになる
なお、上記実施例は、ダム堤体への適用について述べたが本発明は、沈埋トンネルの立坑の補修、防波堤の補修等水中構造物に接して仮締切を施工する際に適用できる。
【0015】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の仮締切の施工方法によれば、仮締切構造物をトラッククレーンなどで吊り降ろし可能な最下部に底版を有する二重鋼殻構造の複数のブロックに分割し、浮力を利用しながら順次注水することにより、下部から上部に接合の都度沈設させているので、潜水夫による作業が従来に比べて大幅に削減されることになり、安全性の向上がはかれると共に、施工の無人化及びプレハブ化がはかれて作業コストを低減することができる。
【0016】
また、本発明では仮締切構造物の壁面への対向面に凹状部を形成し、仮締切構造物の沈設完了後に、その凹状部の水を排水することで、内外水圧差によりダム面に仮締切を確実に固定でき、さらに、仮締切構造物の沈設時に各ブロックの隔壁内に砕石を中詰めしておくことにより、各ブロックの重量バランスが良好に保たれ、安全確実な仮締切の施工が行われうることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の仮締切の施工方法に適用される仮締切構造物の一実施例に係る斜視図である。
【図2】図1の仮締切構造物の各ブロックを、ダム堤体上流面の台座コンクリート上にブロック内への注水により沈設する状態の説明図である。
【図3】図2の仮締切構造物が台座コンクリート上に着底した状態の説明図である。
【図4】図1の仮締切構造物の据え付け施工時の基礎地盤の準備の説明図である。
【図5】図4の準備の後、台座コンクリートの打設を示す説明図である。
【図6】図5の後の仮締切施工の準備の説明図である。
【図7】図6の要部平面図である。
【図8】図6の後の仮締切構造物のブロックの沈設の説明図である。
【図9】図8のブロックの沈設後の内外水圧差により仮締切構造物をダム堤体側に接合する説明図である。
【図10】図9の後の仮締切構造物の隔壁撤去の説明図である。
【図11】図10による仮締切施工後の仮締切構造物の撤去の説明図である。
【図12】図1の仮締切構造物の周縁支承部要部の拡大平断面図である。
【符号の説明】
1 仮締切構造物 2 台座コンクリート
3 ダム堤体 4 凹状部
5 基礎地盤 11 隔壁
12 底版 14 周縁支承部
20 浮桟橋 30 バラスト材
40 水密用シール材

Claims (2)

  1. 水中構造物に隣接した基礎地盤上に台座コンクリートを打設の後、その水面上に浮設した作業足場用浮桟橋とクレーンとを使用して、水中構造物壁面への対向面が凹状部を形成する隔壁を有し、さらに凹状部の周縁支承部に水密用シール材を配置し、かつ最下部に底版を有する二重鋼殻構造の仮締切構造物を複数のブロックに分割し、下部から上部に各ブロックを順次接合しながら注水により沈設して台座コンクリート上に着底させ、仮締切構造物の上記凹状部内の水を排水して水中構造物に圧着させ、仮締切構造物の下端部の周囲に台座コンクリートを打設した後、隔壁を撤去する仮締切の施工方法。
  2. 仮締切構造物のブロックの沈設時に、各ブロックの隔壁の二重鋼殻構造内にバラスト材を中詰めする請求項1記載の仮締切の施工方法。
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