JP3599210B2 - 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オフセット印刷等に利用される平版印刷版用支持体の粗面化処理方法、および、前記方法による粗面化処理を含む平版印刷版用支持体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、平版印刷版用支持体として、アルミニウム板が広く使用されている。そしてアルミニウム支持体上に設けられる、中間層および感光層との密着性を良好にし、かつ非画像部の保水性を改善することを目的としてアルミニウム支持体の表面は粗面化処理されている。
この粗面化処理は、いわゆる砂目立てと称され、機械的な粗面化、化学的な粗面化、電気化学的な粗面化およびこれらを組み合わせた方法に大別される。これらの組み合わせで、例えば、図12(A)に示すような製造工程で電気化学的な方法と、化学的な方法を組み合わせた方式(特開平1−141904号公報、特開昭58−167196号公報など)、および図12(B)に示すような製造工程で機械的な粗面化方法と、化学的な粗面化方法と、電気化学的な粗面化方法を組み合わせた方式(特開平6−24166号公報)が一般的に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化処理において、前記アルミニウム支持体(以下平版印刷版用アルミニウム支持体を単にアルミニウム支持体と略記することがある。)を前記したように機械的な粗面化処理および/あるいは化学的な粗面化処理と組み合わせて、硝酸または塩酸を主体とする酸性水溶液中で電気化学的な方法をも導入して粗面化処理する場合、前記電気化学的な方法を1段の処理でおこなった場合、粗面化処理されたアルミニウム支持体の表面に、予めアルミニウム板の圧延工程でアルミニウム板表面に銅成分が付着し、付着した銅成分が圧延されて線状に延ばされ、その部分が電気化学的な粗面化を行った後に光沢感を持った粗面化されていない部分が生じるため、幅約0.1〜3mm、長さ約1〜50mmの細長いレンズ状の処理ムラとして残り、外観上の故障となる問題があった。
また、直流を用いて行う電気化学的な粗面化方法では、該粗面処理されたアルミニウム支持体表面に長さ約50μm以上の溝状のピットが発生し易いため、印刷汚れが出やすいアルミニウム支持体となる問題があった。
これらの故障が発生しないようにするためには、アルミニウム材料を限定して使用する必要があるのでコストが高くつき、また粗面化方法に制限がつくという問題がある。本発明はこれらの問題点を解決しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意研究した結果、下記の方法により問題点
を解決できることを見いだした。
その方法とは、(i)液温10〜20℃および電気量1〜100C/dm2の塩酸を主体とする酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理を、硝酸を主体とした酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理の前におこなうこと。(ii)直流を用いた電気化学的な粗面化方法をとる場合には走行するアルミニウム板のローラとの相互スリップを防止する等の方法である。
【0005】
本発明の第1態様として、連続して走行するアルミニウム板の表面を順に、(a)アルカリ水溶液中でアルミニウム板をエッチング処理し、(b)酸性水溶液中でデスマット処理し、(c)液温10〜20℃の塩酸を主体とする水溶液中で1〜100C/dm2 の電気量で、電流密度1〜50A/dm2 の交流を用いて電気化学的に粗面化処理し、(d)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(e)酸性水溶液中でデスマット処理し、(f)硝酸を主体とした酸性水溶液中で直流または交流を用いて100〜800C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理し、(g)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、(h)酸性水溶液中でデスマット処理し、(i)陽極酸化処理して陽極酸化皮膜を形成させることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法がある。
【0006】
本発明の第2態様として、連続して走行するアルミニウム板の表面を順に、
(a)アルカリ水溶液中でアルミニウム板をエッチング処理し、
(b)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(c)液温0〜25℃の塩酸を主体とする水溶液中で1〜600C/dm2 の電気量で、電流密度1〜50A/dm2 の交流または直流を用いて電気化学的に粗面化処理し、
(d)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、
(e)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(f)硝酸または塩酸を主体とした酸性水溶液中で直流または交流を用いて100〜800C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理し、
(g)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、
(h)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(i)硝酸を主体とする酸性水溶液中で交流または直流を用いて100〜600C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理し、
(j)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、
(k)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(l)陽極酸化処理して陽極酸化皮膜を形成させることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法がある。
【0007】
第1または第2の態様において、第1段目のエッチング処理の前に、毛径が0.2〜0.8mmの回転するナイロンブラシローラと、アルミニウム板表面に供給されるスラリー液で機械的に粗面化してもよい。また、陽極酸化皮膜を形成した後に親水化処理を行ってもよい。
第1または第2の態様において、(c)に記載の液温0〜25℃の塩酸を主体とする水溶液中で交流または直流を用いて電気化学的に粗面化処理するにあたり、使用する塩酸を主体とする水溶液は、塩化水素を1〜10g/リットル含有する水溶液に塩化アルミニウムを1重量%から飽和まで添加したものであることが好ましい。
【0008】
さらに第1または第2の態様において、(f)に記載の硝酸または塩酸を主体とした酸性水溶液中で直流を用いて電気化学的に粗面化処理する前に、液温40〜80℃、濃度5〜50重量%の硫酸、リン酸または硝酸を主体とする水溶液で表面処理中のアルミニウム支持体の表面をデスマット処理することによって、アルミニウム支持体表面に長さ約50μm以上の溝状のピットが発生することを防止することができる。
また、第1または第2の態様において、(f)に記載の硝酸または塩酸を主体とした酸性水溶液中で直流を用いて電気化学的に粗面化処理する際に、該電気化学的粗面化処理工程に入る前の工程領域で、粗面化処理面が接触するパスロールの周速と、走行するアルミニウム板の速度との差が1%以下であるように該工程領域におけるアルミニウム支持体の走行条件を調整することによってアルミニウム支持体表面に長さ約50μm以上の溝状のピットが発生することを防止することができる。
【0009】
本発明は、常法に従い、前記平版印刷版用アルミニウム支持体表面に感光層または中間層および感光層を塗布・乾燥するこによって印刷性能が優れたPS版とすることができる。また、感光層の上には常法に従い、マット層を設けるなどしてもよい。さらにまた、現像時のアルミニウムの溶け出しを防ぐ目的で裏面にバックコート層を設けてもよい。本発明は片面のみでなく両面を処理したPS版の製造にも適応できる。
本発明は、平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化のみならず、電解コンデンサ用電極、塗装の下地処理、電池用電極などの粗面化にも応用できる。
本発明の装置は、金属ウェブの連続的表面処理に使用するものがいずれも適用できる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法について詳しく述べる。本発明に使用されるアルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウムがラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムの中から選ばれる。
該アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン、ガリウムなどがある。合金中の異元素の含有量は10重量%以下である。
【0011】
本発明に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精練技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えばJIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005、JIS A 3004などを適宜利用することが出来る。
本発明に用いられるアルミニウム板の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。
【0012】
〔製造方法I〕
本発明の製造方法I(すなわち、本発明の前記第1態様による製造方法である。)に関する工程をフロー図で示すと図1(A)の通りである。
図1(A)の工程フローに従って要素処理について以下に説明する。
【0013】
(1) 第1化学的エッチング処理:
第1化学的エッチング処理は、酸性またはアルカリ水溶液中でエッチング処理が行なわれる。この第1化学的エッチング処理は、交流電圧を用いた電気化学的に粗面化処理の前処理として行なわれるもので、圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的としている。かかる化学的エッチング方法の詳細については、USP3834398号明細書などに記載されている。
酸性水溶液に用いられる酸としては、特開昭57−16918号公報に記載されているように、弗酸、弗化ジルコン酸、燐酸、硫酸、塩酸、硝酸等があり、これらを単独または組み合わせて用いることができる。
アルカリ水溶液に用いられるアルカリとしては、特開昭57−16918号公報に記載されているように、水酸化カリウム、第3燐酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等がある。これらを単独または組み合わせて用いることができる。
酸性水溶液の濃度は、0.5〜80重量%が好ましく、特に5〜50重量%が好ましい。酸性水溶液中に溶解しているアルミニウムは0.5〜5重量%が好ましい。
【0014】
アルカリ水溶液の濃度は、5〜30重量%が好ましく、特に20〜30重量%が好ましい。アルカリ水溶液中に溶解しているアルミニウムは0.5〜30重量%が好ましい。酸性またはアルカリ水溶液によるエッチングは、液温40−90℃で1〜120秒処理するのが好ましい。
エッチング処理の量は、1〜30g/m2 溶解することが好ましく、1.5〜20g/m2 溶解することがより好ましい。
【0015】
(2) 第1デスマット処理
前記第1化学的エッチングを、アルカリ性の水溶液を用いて行なった場合には、一般にアルミニウムの表面にスマットが生成するので、この場合には、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸またはこれらの内の2以上の酸を含む混酸で処理するデスマット処理を施すことが好ましい。
デスマット時間は1〜30秒が好ましい。液温は常温〜70℃で実施される。
この電気化学的な粗面化処理のデスマット処理は省略することもできる。また、電気化学的な粗面化処理で用いる電解液のオーバーフロー廃液を使用することもできる。電気化学的な粗面化処理で用いる電解液のオーバーフロー廃液を使用するときは、デスマット処理の後の水洗工程は省略してもよいが、アルミニウム板が乾いてデスマット液中の成分が析出しないように濡れたままの状態でアルミニウム板をハンドリングする必要がある。
【0016】
(3) 塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理
塩酸を主体とする水溶液中での直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理は、後段で行う硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化で、発生する細長いレンズ状の処理ムラが発生しないようにする目的で行う。
本発明の製造方法において塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理は、粗面化処理中、塩酸水溶液の温度を0〜25℃の範囲に維持し、電流密度を1〜50A/dm2 、好ましくは1〜25A/dm2 とする交流を用い1〜600C/dm2 、好ましくは1〜300C/dm2 、さらに好ましくは1〜100C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理する。また直流を用いても1〜50A/dm2 の電流密度で、1〜600C/dm2 、好ましくは1〜300C/dm2 、さらに好ましくは1〜100C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理することができる。
前記したように該交流あるいは直流を用いた第1段の塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理を、前記限定された処理条件内で実施することによって、後段で行う硝酸または塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化で、発生する細長いレンズ状の処理ムラをより完全になくすることができる。
【0017】
以下に、本発明の塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理の前記交流を用いておこなう電気化学的な粗面化処理を先ず説明し、続いて直流を用いておこなう電気化学的な粗面化処理について説明する。
塩酸を主体とする水溶液は、通常の交流または直流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/l、好ましくは1〜20g/l、さらに好ましくは1〜10g/lの塩酸水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素イオンを有する塩素化合物を1g/l〜飽和まで添加して使用することができる。また塩酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。温度は0〜50℃が好ましく、0〜25℃がより好ましく、さらに好ましくは0〜10℃である。
【0018】
本発明の交流による電気化学的な粗面化に用いる台形波とは、図2に示したものをいう。電流が0からピークに達するまでの時間(TP)は0.5〜2msecが好ましい。0.5msecよりも小さいと、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが2msecよりも大きいと、電気化学的な粗面化に用いる電解液中のアンモニウムイオンなどに代表される硝酸液中での電解処理で、自然発生的に増加する微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てがおこなわれにくくなる。その結果、汚れ性能が低下する傾向にある。
台形波交流のDUTY比は1:2から2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300公報に記載のようにアルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはDUTY比1:1のものが好ましい。
台形波交流の周波数は50〜70Hzが好ましい。50Hzよりも低いと主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、70Hzよりも大きいと電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
この工程は、特開平1−141094号公報に記載されているような直流を用いた電気化学粗面化としてもよい。
【0019】
塩酸水溶液中で直流電圧を用いて電気化学的に粗面化を行なうには、電解槽に酸性水溶液を充填し、この塩酸水溶液中に陽極と陰極を交互に配置し、これらの陽極と陰極との間に直流電圧を印加するとともに、アルミニウム板をこれらの陽極及び陰極と任意の間隔を保って通過させて行なうものである。
【0020】
塩酸を主体とする水溶液は、通常の交流または直流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/l、好ましくは1〜20g/l、さらに好ましくは1〜10g/lの塩酸水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素イオンを有する塩素化合物を1g/l〜飽和まで添加して使用することができる。また塩酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。温度は0〜50℃が好ましく、0〜25℃がより好ましく、さらに好ましくは0〜10℃である。
【0021】
本発明でいう直流電圧とは、連続直流電圧はもちろん、商用交流をダイオード、トランジスタ、サイリスタ、GTOなどで整流したものや、矩形のパルス直流などをいい、一般的な直流の定義にあてはまる極性の変化しない電圧のことをいい、とくにリップル率10%以下の連続直流電圧が好ましい。
直流を用いた電気化学的な粗面化に用いる装置は、酸性水溶液中で1対以上の陽極と陰極を交互に配置し、その上をアルミニウム板を通過させる粗面化方式を用いることが有利である。アルミニウム板の電気化学的な反応は、アノード反応から開始してもカソード反応から開始しても良い。
【0022】
(4) 第2化学的エッチング処理
第2化学的エッチング処理は、塩酸を主体とする水溶液中で、交流を用いた電気化学的な粗面化で生成したスマット成分を速やかに除去する目的で行われる。この第2化学的エッチング処理により後段で行なう電気化学的な粗面化でハニカムピットを均一に生成することができる。
エッチング量は0.5〜10g/m2 が好ましい。
エッチングに用いる水溶液の組成、温度、処理時間などは、第1化学的エッチング処理に記載した範囲から選択される。
【0023】
(5) 第2デスマット処理
直流を用いた粗面化処理以前に、処理面を高温、高濃度の酸でデスマット処理すると、長さ約50μm以上の溝状のピットが発生し難くなる。これは、アルミニウム板とパスローラの間で発生した傷や酸化皮膜の欠点が高温高濃度の酸で処理することにより低減するためである。
【0024】
(6) 硝酸または塩酸を主体とした酸性水溶液中で交流または直流を用いた電気化学的に粗面化処理する。
塩酸を主体とする水溶液は、通常の交流または直流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/lの塩酸水溶液に、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素イオンを有する塩素化合物を1g/l〜飽和まで添加して使用することができる。。温度は0〜50℃が好ましく、0〜25℃がより好ましい。
硝酸を主体とする水溶液の場合、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物を用いることができる。また、アルミニウム塩、アンモニウム塩の1以上を1〜150g/lの量で混合することが好ましい。なお、アンモニウムイオンは硝酸水溶液中で電解処理することによっても、自然発生的に増加していく。
また、酸性水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中の含まれる金属を溶解していてもよい。さらにアンモニウムイオン、硝酸イオン等を添加してもよい。
【0025】
交流または直流を用いた電気化学的に粗面化の電流密度は20〜200A/dm2 であることが好ましく、25〜120A/dm2 がより好ましい。電気化学的な粗面化でアルミニウム板に加わる電気量は10〜1000C/dm2 が好ましく、とくに100〜800C/dm2 が好ましい。
電源波形は、前記した製造方法Iの▲3▼に記載したものと同様である。装置としては、電気化学的粗面化用のものが適用可能である。
【0026】
(7) 第3化学的エッチング処理:
第3化学的エッチング処理は、アルミニウム板表面に生成したスマット成分を除去し、ブラシ汚れ、地汚れ性能を向上させるためのものである。
酸性水溶液としては、弗酸、弗化ジルコン酸、燐酸、硫酸、塩酸、硝酸などの水溶液、アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、第3燐酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム、硅酸ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液が用いられる。これらの酸またはアルカリ水溶液は、それぞれ一種または二種以上を混合して使用することができる。
エッチング量は、0.02〜3g/m2 が好ましく、0.1〜1.5g/m2 がより好ましい。上記エッチング量を0.02〜3g/m2 の範囲にするには、酸またはアルカリの濃度を0.05〜40%、液温を40℃から100℃、処理時間を5〜300秒間の範囲において行なう。
この第3化学的エッチング処理を行なった後には、特開平3−104694号公報に記載されているような、平均直径0.5〜2μmのハニカムピットの内部に0.1μm以下の凹凸が形成されている。
また、化学的エッチング処理の代わりに中性塩水溶液中でアルミニウム板を陰極にして直流電圧を加え電気化学的に軽度なエッチング処理、またはリン酸や硫酸を主体とする水溶液中でのアルミニウム板を陽極にした電解研磨処理を併用してもよい。
【0027】
(8) 第3デスマット処理
アルミニウム板表面の軽度なエッチングを行った場合、その表面に不溶解物すなわちスマットが生成する。このスマットは、燐酸、硫酸、硝酸、クロム酸及びこれらの混合物で洗浄することにより除去することができる。
第3デスマット処理の条件は、第1デスマット処理に記した条件から選ぶことができる。とくに硫酸を主体とする水溶液を用い、液温50〜70℃で処理することが好ましい。
【0028】
(9) 陽極酸化処理
さらに表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80重量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲にあれば適当である。
硫酸法は通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。硫酸の濃度は5〜30%で使用され、20〜60℃の温度範囲で5〜250秒間電解処理される。この電解液には、アルミニウムイオンが含まれている方が好ましい。さらにこのときの電流密度は1〜20A/dm2 が好ましい。
【0029】
リン酸法の場合には、5〜50%の濃度、30〜60℃の温度で、10〜300秒間、1〜15A/dm2 の電流密度で処理される。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2 以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2 の範囲である。
陽極酸化皮膜が1.0g/m2 より少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0030】
陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、第3,181,461号、第3,280,734号および第3,902,734号各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法に於いては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液中で浸漬処理されるか、または電解処理される。他に、特公昭36−22063号公報に開示されている弗化ジルコン酸カリウムおよび米国特許第3,276,868号、第4,153,461号および第4,689,272号各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
また、砂目立て処理及び陽極酸化後、封孔処理を施したものも好ましい。かかる封孔処理は熱水及び無機塩または有機塩を含む熱水溶液への浸漬ならびに水蒸気浴などによって行われる。
【0031】
このようにして得られた平版印刷版用支持体の上には、従来より知られている感光層を設けて、感光性平版印刷版を得ることができ、これを製版処理して得た平版印刷版は、優れた性能を有している。この感光層中に用いられる感光性物質は、特に限定されるものではなく、通常、感光性平版印刷版に用いられている。例えば特開平6−135175号公報に記載のような各種のものを使用することができる。
アルミニウム板は感光層を塗布する前に必要に応じて有機下塗層(中間層)が設けられる。この下塗層に用いられる有機下塗層としては従来より知られているものを用いることができ、例えば、特開平6−135175号公報に記載のものを用いることができる。感光層はネガ型でもポジ型でもよい。
【0032】
製造方法Iの第1化学的エッチング処理の前には機械的な粗面化処理を行うことができる。
この時、機械的な粗面化処理の後に行う第1化学的エッチング処理は、ブラシグレイニング処理されたアルミニウム板の表面に食い込んだ研磨剤、アルミニウム屑などを取り除く目的で行い、その後に施ごされる電気化学的な粗面化をより均一に、しかも効率的に行う目的で実施される。
アルミニウム板の化学的なエッチング量としては1〜30g/m2 が好ましく、とくに5〜20g/m2 が好ましい。このエッチング量はブラシグレインの際の研磨剤の種類および使用するブラシの毛径、回転数、回転方向、ブラシの押し込み力(ブラシをアルミニウム板に押さえつけたときのブラシの回転駆動モータの消費電力に比例する)や、これらの組み合わせによって最適値をもつ。
【0033】
製造方法Iの第1化学的エッチング処理の前に行う機械的な粗面化処理は、 まず、アルミニウム板をブラシグレイニングするに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための脱脂処理、例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行なわれる。但し、圧延油の付着が少い場合は脱脂処理は省略することが出来る。引き続いて、1種類または毛径が異なる少なくとも2種類のブラシを用いて、研磨スラリー液をアルミニウム板表面に供給しながら、ブラシグレイニングを行う。該ブラシグレイニングにおいて初めに用いるブラシを第1ブラシと呼び、最終に用いるブラシを第2ブラシと呼ぶ。該グレイン時、図3に示すように、アルミニウム板1を挟んでローラ状ブラシ2及び4と、それぞれ二本の支持ローラ5、6及び7、8を配置する。二本の支持ローラ5、6及び7、8は互の外面の最短距離がローラ状ブラシ2及び4の外径よりそれぞれ小なるように配置され、アルミニウム板1がローラ状ブラシ2及び4により加圧され、2本の支持ローラ5、6及び7、8の間に押し入れられる様な状態でアルミニウム板を一定速度で搬送し且つ研磨スラリー板3をアルミニウム板上に供給してローラ状ブラシを回転させることより表面を研磨することが好ましい。
【0034】
本発明に用いられるブラシは、ローラ状の台部にナイロン、ポリプロピレン、動物毛、あるいは、スチールワイヤ等のブラシ材を均一な毛長及び植毛分布をもって植え込んだもの、台部に小穴を開けてブラシ毛束を植込んだもの、又、チャンネルローラ型のものなどが好ましく用いられる。その中でも好ましい材料はナイロンであり、好ましい植毛後の毛長は10〜200mmである。なおブラシローラに植え込む際の植毛密度は1cm2 当り30〜1000本が好ましく、さらに好ましくは50〜300本である。
該ブラシの好ましい毛径は、0.24mmから0.83mmであり、更に好ましくは0.295mmから0.6mmである。毛の断面形状は円が好ましい。毛径が0.24mmよりも小さいとシャドウ部での汚れ性能が悪くなり、0.83mmよりも大きいとブランケット上の汚れ性能が悪くなる。毛の材質はナイロンが好ましく、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10などが用いられるが、引っ張り強さ、耐摩耗性、吸水による寸法安定性、曲げ強さ、耐熱性、回復性などでナイロン6・10が最も好ましい。
【0035】
ブラシの本数は、好ましくは1本以上10本以下であり、更に好ましくは1本以上6本以下である。ブラシローラは特開平6−135175号公報に記載のように毛径の異なるブラシローラを組み合わせてもよい。
次にブラシローラの回転は好ましくは100rpmから500rpmで任意に選ばれる。支持ローラはゴムあるいは金属面を有し真直度のよく保たれたものが用いられる。ブラシローラの回転方向は図3に示すようにアルミニウム板の搬送方向に順転に行うのが好ましいが、ブラシローラが多数本の場合は一部のブラシローラを逆転としてもよい。
【0036】
本発明に用いられる研磨スラリー液は、珪砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の平均粒径5〜150μmの研磨材を、5〜40wt%、比重1.05〜1.3の範囲で用いることができる。研磨材は、角があることが粗面化をおこなう上で重要であり、ガラスビーズなど、角のない研磨材粒子では、スラリー液とブラシの組み合わせによる粗面化をおこなうことはむずかしい。
ブラシの押し込み力は、回転駆動モータの消費電力が2.5〜15kw、更に3〜10kwが好ましい。
【0037】
【製造方法II】
本発明の製造方法II(すなわち、本発明の前記第2態様による製造方法である。)に関する工程をフロー図で示すと図1(B)の通りである。
図1(B)の工程フローに従って要素処理について以下に説明する。
(1) 第1化学的エッチング処理
製造方法Iに記載の第1化学的エッチング処理と同様である。
(2) 第1デスマット処理
製造方法Iに記載の第1デスマット処理と同様である。
(3) 塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理
製造方法Iに記載の塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理と同様、製造方法IIでも、電気化学的な粗面化処理は、粗面化処理中、塩酸水溶液の温度を0〜50℃、好ましくは0〜25℃、さらに好ましくは0〜10℃の範囲に維持し、電流密度を1〜50A/dm2 、好ましくは1〜25A/dm2 、とする交流を用い1〜600C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理する。また直流を用いても1〜50A/dm2 の電流密度で1〜600C/dm2 、好ましくは1〜300C/dm2 、さらに好ましくは1〜100C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理することができる。
【0038】
(4) 第2化学的エッチング処理
製造方法Iに記載の第2化学的エッチング処理と同様である。
(5) 第2デスマット処理
製造方法Iに記載の第2デスマット処理と同様である。
第2デスマット処理工程では、処理されるアルミニウム板が処理工程におかれているパスロールとの間でスリップ率2%を越えるようなスリップを起こすことがないように、アルミニウム板の搬送に留意することが必要である。直流を用いた電気化学的な粗面化処理工程の前でアルミニウム板がパスロールとの間でスリップすると、長い溝状のピットが発生するからである。
(6) 硝酸または塩酸を主体とする水溶液中で、交流または直流を用いた電気化学的な粗面化処理。
製造方法Iの▲6▼に記載の処理と同様である。
(7) 第3化学的エッチング処理
製造方法Iの第1化学的エッチング処理と同様であるが、前段の直流を用いた電気化学的な粗面化処理で生成した水酸化アルミニウムを除去し、更に、生成したハニカムピットのエッジを溶解して表面のうねりを滑らかにし、汚れ性能の良い支持体にすることにある。
【0039】
(8) 第3デスマット処理
製造方法Iに記載の第1デスマット処理同様である。
(9) 硝酸を主体とする水溶液中で、交流または直流を用いた電気化学的な粗面化処理
製造方法Iに記載の硝酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理と同様である。
(10)第4化学的エッチング処理
製造方法Iに記載の第3化学的エッチング処理と同様である。
(11)第4デスマット処理
製造方法Iに記載の第3デスマット処理と同様である。
(12)陽極酸化処理
製造方法Iに記載の陽極酸化処理同様である。
【0040】
本発明で交流を用いた電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、例えば前記図5に示したラジアル型が好ましい。縦型およびフラット型ではアルミニウムウエブと電極間のクリアランスを一定に維持することが難しく、アルミニウムウエブの幅方向での印刷性能にバラ付きが出る。ラジアル型セルには各電解槽毎に電解電源を1個以上接続することができる。
主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極の電流比をコントロールし、均一な砂目立てをおこなうことと、主極のカーボンの溶解を防止する目的で設ける補助陽極は、主極であるカーボン電極が設置されたラジアルセルとは別のセルに設けることが好ましい。補助陽極には白金、フェライトなどが用いられるが、交流電流が流れる電解槽と同一の槽に設置すると交流電流の回りこみにより、補助陽極に交流成分が流れ、補助陽極の溶解速度が直流のパルス電流が流れているときに比較して著しく短くなる。
【0041】
整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を2つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム表面上で作用するアノード電流にあずかる電流値とカソード反応にあずかる電流値との比を制御することで電源トランスの偏磁がおきにくくなり、偏磁制御をしなくてすむため電源コストが安価になる利点がある。
【0042】
本発明において交流を用いた電気化学的な粗面化をおこなう装置を図5に示す。
図5において、11はアルミニウムウエブであり、12はアルミニウムウエブを支えるラジアルドラムローラである。アルミニウムウエブはカーボン製の主極13a、13bおよびフェライトまたは白金の補助陽極18とクリアランスを一定に保って走行している。クリアランスは通常3〜50mm程度が適当である。主電極と補助陽極の処理長さの比、主極13aと13bの長さの比は求める電解条件によって異なる。主極13aと13bの処理長さの比は1:2から2:1の範囲から選択できるが、できるだけ1:1となるようにすることが好ましい。主極13aまたは13bと補助陽極18の処理長さの比は1:1から1:0.1であることが好ましい。また、チャタマークと呼ばれるアルミニウムウエブの進行方向と垂直に発生する横縞状の処理ムラを抑えるため、特公昭63−16000号公報に記載のように低電流密度処理をおこなう図6に示すソフトスタートゾーンを13a、13bの電極の先頭に設けることが好ましい。主極13はラジアルドラムローラ12に沿ってRをつけることが難しいので特開平5−195300号公報に記載のようにインシュレータと呼ばれる厚さ1〜5mmの絶縁体を挟んで並べることが通例である。
【0043】
補助陽極に流す電流は19の整流素子またはスイッチング素子により電源から任意の電流値となるように制御されて分流する。19の整流素子としてはサイリスタが好ましく、点弧角で補助陽極18に流れる電流を制御することができる。補助陽極に電流を分流することで主極のカーボン電極の溶解を抑え、電気化学的な粗面化工程での粗面化形状をコントロールすることができる。カーボン電極に流れる電流と、補助陽極に流れる電流の電流の比は0.95:0.05乃至0.7:0.3であることが好ましい。
【0044】
液流は、アルミニウムウエブの進行とパラレルでもカウンターでもよいが、カウンターのほうが、処理ムラの発生は少ない。
電解処理液14は電解液供給口15内にはいり、ディストリビュータを経てラジアルドラムローラ12の幅方向全体に均一に分布するようキャビティー内にはいり、スリット16より電解液通路17の中に噴出される。
図5の電解装置を図6のように2つ以上並べて使用してもよい。
【0045】
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法における、親水化処理、化学的なエッチング処理、デスマット処理および水洗処理に用いる装置は、浸漬でも、例えば図7に示すようなスプレーでもよい。
本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法における、電気化学的な粗面化処理槽、親水化処理槽、化学的なエッチング処理槽、デスマット処理槽および水洗処理槽を通過したアルミニウム板はニップロールによる液切りをおこなうことにより、アルミニウム板の幅方向で均一な処理を行うことが出来る。
【0046】
次に本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法における直流電圧を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる装置を図を用いて説明する。
図8に示す直流電圧を用いた粗面化処理装置は、まず最初にアルミニウム板のカソード電解処理をおこなう電解槽と、次にアルミニウム板のアノード電解処理を行う電解槽がそれぞれ設けてある。
図9に示す直流電圧を用いた粗面化処理装置は、アルミニウム板のカソード電解処理をおこなう電解槽を挟んで、アルミニウム板のアノード電解処理を行う電解槽が設けてある。
図10に示す直流電圧を用いた粗面化処理装置は、まず最初にアルミニウム板のアノード電解処理をおこなう電解槽と、次にアルミニウム板のカソード電解処理を行う電解槽がそれぞれ設けてある。
図11に示す装置はひとつの電解槽の中に、アルミニウム板のカソード電解処理をおこなう陽極とアルミニウム板のアノード電解処理を行う陰極がそれぞれ設けてある。
【0047】
陽極及び陰極の長さは、アルミニウム板の走行速度をV(m/min)としたとき、0.05V〜5V(m)の範囲に設定される。
アルミニウム板のアノード反応の開始では、低電流密度電解を行うゾーンを設け、アルミニウム電極間の電流分布を任意にコントロールすることで、ビット形状をコントロールすることができる。低電流密度電解をおこなうゾーンの電流分布のコントロールの方法については、特開平6−328876号公報、特願平6−205657号明細書などに記載されている。
【0048】
ソフトスタートゾーンにおける低電流密度は、主電解の平均電流密度の約90%の電流密度であり、ソフトスタートゾーンの電流密度をコントロールする方法は、電極からアルミニウムウエブ間の電解液内の電圧の広がりを利用したり、独立した低電流密度電解用電源と電極を用いたりする方法があり、これらを単独で用いても、組み合わせて用いてもよい。また、ソフトスタートゾーンの電流密度をコントロールすることにより、表面形状を変更することができる。
前記電極からアルミニウム板の間の電解液内の電圧の広がりを利用する方式は、電解液の電気的な抵抗により、電極に対向したアルミニウム支持体上の任意の点から、アルミニウム支持体に沿ってアルミニウム支持体の入口に近づくにしたがい、アルミニウム支持体と電解液間に加わる電圧が低くなる現象を利用するものである。
【0049】
前記独立した低電流密度電解用電源と電極を用いる方式は、電解反応に用いる主電源と電極とは独立に低電流密度電解用電源と電極を用いて低電流密度処理を行なうものである。前記電解液内の電圧の広がりを利用する方式では、アルミニウムの厚さや幅が変わったとき、電解槽内の負荷インピーダンスが変化し、ソフトスタートゾーン内の電圧変化のカーブに差ができてしまい、その結果、粗面化形状に差が出来てしまうことがある。しかし、この方式では、アルミニウム板の厚さや幅が変化しても、粗面化形状に差が出ることがない。
また、アルミニウム板を酸性電解液中で、少なくとも1対の陽極と陰極と、金属ウエブの入口部分に同じ及び/又は異なったソフトスタートゾーンを有する電解槽を3つ以上組み合わせ、各電解槽の主電解に用いる電源を、各電解槽毎または1対の陽極と陰極毎にそれぞれ独立させ、各電解槽毎または1対の陽極と陰極毎に平均電流密度を変えて調整することが、最適な表面形状を得ることができるので好ましい。
【0050】
なお、ソフトスタートゾーンは、主電源が接続された陰極が先頭に配置してある入り口側に設けることが表面形状を制御するうえで好ましい。また、出口側の陽極から液面までの長さは、できるだけ短いほうがよい。
ソフトスタートゾーンで電解が行なわれる時間は、0.0001sec〜5secが好ましく、0.0005sec〜1secがより好ましく、0.001〜0.5secが最も好ましい。
【0051】
ソフトスタートゾーンの電流密度は、0から徐々に電流密度を上げていってもよいし、2段階以上のステップで電流密度を上げていってもよい。徐々に電流密度を上げていく場合、直線的、指数関数的又は対数関数的に電流密度を上げていってもよい。低電流密度用電極上での電流密度は、100A/dm2 以下が好ましく、50A/dm2 以下がより好ましく、30A/dm2 以下が最も好ましい。
ソフトスタートゾーンを電解槽のアルミニウム板の入口側のアルミニウム板が陽極反応する部分に設けるのは、ソフトスタートゾーンでアルミニウム板の表面に酸化被膜等表面状態をコントロールすることで、その後の高電流密度電解ゾーンで生成するハニカムピットの生成状態をコントロールする目的である。もちろん電解槽の出口側のアルミニウム板の陽極反応部分にソフトスタートゾーンを設けてもよい。アルミニウム板の陰極反応部分のアルミニウム板の入口側や出口側に設けることも水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の生成を変えることで、結果として次のアルミニウム板の陽極反応でのピッティング反応をコントロールすることになるが、アルミニウム板の陽極反応部に設けるソフトスタートゾーンほど効果はない
【0052】
電解槽の構造、電極構造及び給液方法は、印刷版または電解コンデンサ用アルミニウム板の表面処理、鉄鋼、ステンレス鋼などの金属ウエブ一般の表面処理に用いられる公知のものを用いることができる。給液口、廃液口は電解槽の中間に1個以上設けてもよい。
電解槽は、縦型、横型、ラジアル型、V型などが一般的に用いられるが、スペースセイビング、ソフトスタートゾーンの確保のしやすさの点で、縦型が好ましい。ウエブ状のアルミニウム板のハンドリングの安定性はラジアル型電解槽が優れている。縦型電解槽の場合、アルミニウム板の液流による振動を抑止する点で、両面に1個以上の給液口及び/又は廃液口を設けることが望ましい。ラジアル型電解槽の場合は、給液には公知の方法を適用する。
【0053】
各電解槽の主電解に用いる電源は、1個の電源で各電解槽に供給しても、各電解槽毎に独立した別個の電源を設けても、1対の陽極と陰極毎(それぞれ別の電解槽に配置されている)に独立した別個の電源を設けてもよい。電解槽毎又は1対の陽極と陰極毎に独立した電極を設けた場合は、電解槽毎又は1対の陽極及び陰極毎に電流密度を制御することが出来るので、各電解槽毎又は1対の陽極及び陰極毎に任意の粗面化形状にコントロールすることが出来る。なお、1つの電源で複数の電極に給電すると、アルミニウム板の厚さ及び幅、電解液組成、液温などによって、アルミニウム板の負荷インピーダンスが変化するので、各電極の電流の値がなり行きで変化し、一定条件での製造が困難になる場合があるので注意を要する。
【0054】
また、電解槽内の酸性水溶液の平均流速は、約50〜約500cm/secの範囲が好ましい。酸性水溶液の流れる方向は、アルミニウム板の進行方向と同じでも逆でもよく、各電解槽毎に同じでも異なっていてもよい。
陽極及び陰極は、水平に配置しても、特開平4−268097号公報で開示されているようなアノードケースを用いて垂直に吊り下げた状態で配置してもよい。陽極及び陰極を水平に配置する場合は、アルミニウム板の上面側であっても下面側であってもよい。
【0055】
陽極と陰極の配置は、アルミニウム板の走行方向に向かって、陽極が先頭に配置されていても、陰極が先頭に配置されていてもよい。陰極を先頭にし、アルミニウム板のアノード反応から処理を開始することは好ましい。
陽極及び陰極は、一つの部材で構成しても、複数の電極片を組み合わせて構成してもよく、簡単かつ安価に製作でき、しかも電流分布を均一にできるので、複数の電極片を組み合わせて構成することが好ましい。複数の電極片を組み合わせて製作する場合、例えば、複数の電極片を所定間隔で平行に配置したり、複数の電極片を1〜5mm程度の絶縁体を介して平行に配置したりする。このような電極片の形状は特に限定されず、角棒状であっても、丸棒状であってもよい。また、絶縁体としては、電気絶縁性と耐薬品性とを兼ね備えた材料が好ましく、塩化ビニル、ゴム、テフロン、FRPなどを用いる。
【0056】
各陽極は同一の長さでも異なる長さでもよく、各陰極も同一の長さでも異なる長さでもよい。陽極と陰極との間隔も、同一の長さでも異なる長さでもよいが、50mm以上が好ましく、150mm以上がより好ましい。また、陽極及び陰極の長さは、アルミニウム板の進行方向に対して段階的に長くしても、段階的に短くしてもよい。さらに、一対の陽極と陰極の長さを異ならせてもよい。また、陽極又は陰極とアルミニウム板との間隔は、5〜20mm程度が好ましい。
【0057】
陽極には、チタン、タンタル、ニオブなどのバルブ金属にプラチナなどの白金族系の金属をメッキまたはクラッドした電極やフェライト電極を用いることができる。
陰極には、ステンレス鋼、カーボンまたは、白金、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウムやその合金などを用いることができ、陰極の表面は0.8−S以下の表面仕上げをすることが好ましく、0.4−S以下がより好ましい。0.8−S以下の表面仕上げは、冷間圧延、ラップ仕上げ、平面研削、正面フライス削り、ペーパー仕上げ、パフ仕上げ、電解研磨、化学研磨、液体ホーニングなどによって行うことができる。常法ではこれら陽極または陰極の芯材には導電性を良好にするため、銅又はアルミニウムを用いる。
【0058】
1つの電解槽に一対の陽極及び陰極を配置する場合は、アルミニウム板を介さずに、陽極から陰極へ直接流れるバイパス電流を抑止する目的で陽極と陰極との間にパーテーションウォールを設けることができる。このパーテーションウォールは、高さがアルミニウム板とこれに対向する陽極又は陰極との間隔の20〜80%程度が好ましく、また、陽極と陰極との間隙の全面に設けることが好ましい。このパーテーションウォールとしては、電気絶縁性があり、なおかつ耐薬品性があることが好ましく、塩化ビニル、FRP、ゴム、テフロン等を用いることが可能である。また、前記バイパス電流を抑止する目的だけでなく、電極とアルミニウム板間の電位分布の拡がりを小さくする目的で、電極の両側にパーテーションウォールを設けてもよい。
【0059】
アルミニウム板の走行速度は、1〜300m/分まで、自由に選択でき、速度変動率は、1%以下が好ましく、速度変動の周期は、0.1Hz以下が好ましい。
アルミニウム板は片面のみ処理してもよいし、両面を処理してもよい。片面を処理するときはアルミニウム板のどちら側を処理しても差し支えない。両面処理するときは、片面側ずつ逐次処理してもよいし、アルミニウム板の両側に電極を設置して両面同時に処理してもよい。アルミニウム板に塗布する感光層はポジ型でもネガ型でもよい。
【0060】
【実施例】
実施例(1−1)〜(1−10)(ただし、実施例1−3,1−4,1−5は参考例)
厚さ0.3mmの幅1030mmのJIS A 3103材にマグネシウムを0.5wt%添加したアルミニウム板を用いて連続的に処理をおこなった。
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26wt%、アルミニウムイオン濃度6.5wt%、液温75℃でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を1.5g/m2 溶解し、圧延油や自然酸化皮膜を除去した。その後スプレーによる水洗をおこなった。
(b)液温30℃の塩酸濃度1wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた塩酸水溶液は、塩酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなう工程の廃液を用いた。
(c)交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%含む)、液温5℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理をおこなった。補助アノードにはフェライトを用いた。
【0061】
次に、第1表に示したように、塩酸を主体とする水溶液の塩酸濃度を5、7.5、10、12.5、15g/リットル、液温を15、20、35℃、電流密度は電流のピーク値で10、25、50、100A/dm2 とした。
電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
【0062】
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26wt%、アルミニウムイオン濃度6.5wt%でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を溶解し、前段の塩酸を主体とする水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、アルミニウム板を0.1g/m2 溶解する軽度のエッチングをおこなった。その後スプレーで水洗した。
(e)液温30℃の硝酸濃度1wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーによる水洗をおこなった。前記デスマットに用いた硝酸を主体とする水溶液は、交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなう工程の廃液を用いた。
【0063】
(f)交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)、液温45℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理をおこなった。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で230C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
【0064】
(g)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度5wt%、アルミニウムイオン濃度0.5wt%でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を0.1g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後スプレーで水洗した。
(h)液温60℃の硫酸濃度25wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーによる水洗をおこなった。
(i)液温35℃の硫酸濃度15wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2 で陽極酸化皮膜量が2.4g/m2 になるように陽極酸化処理をおこなった。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
【0065】
(j)親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
処理されたアルミニウム板の表面を日本電子製FESEMで観察したところ、5〜20μmの大きなうねりに、平均直径0.5〜1.5μmのハニカムピットが重畳していた。更にこのハニカムピットの底部を観察すると、0.1μm以下の凹凸が生成していた。
アルミニウム板の表面を観察したところ、光沢感のある細長いレンズ状の処理ムラの発生は第1表に示すとおりであった。
このアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2 のネガ型PS版を作成した。このPS版を用いて印刷したところ、良好な印刷版であった。
【0066】
【表1】
【0067】
レンズ状の処理ムラの評価
A:1個/m2 以下、 B:2〜5個/m2 、 C:6個/m2 以上
【0068】
実施例2
(j)の珪酸ソーダに浸漬しない以外は実施例1〜4と全く同じ条件で行った。この処理したアルミニウム板に中間層とポジ感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版を印刷したところ良好な印刷版であった。
【0069】
実施例3
厚さ0.3mmの幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて連続的に処理をおこなった。
(a)比重1.12の硅砂と水の懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラー状ナイロンブラシにより機械的な粗面化をおこなった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロンを使用し、毛長50mm、毛の直径は0.295mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラー(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kwプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。
(b)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26wt%、アルミニウムイオン濃度6.5wt%、液温75℃でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を15g/m2 溶解し、ブラシとスラリー液で生成した凹凸の尖った部分を溶解し、滑らかな、5〜20μmのピッチのうねりをもつ表面とした。その後スプレーによる水洗をおこなった。
【0070】
(c)液温15℃の塩酸濃度1wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた塩酸を主体とする水溶液は、塩酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなう工程の廃液を用いた。
(d)交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%含む)、液温15℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理をおこなった。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
【0071】
(e)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26wt%、アルミニウムイオン濃度6.5wt%でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を溶解し、前段の塩酸を主体とする水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、アルミニウム板を0.1g/m2 溶解する軽度のエッチングをおこなった。その後スプレーで水洗した。
(f)液温30℃の硝酸濃度1wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーによる水洗をおこなった。前記デスマットに用いた硝酸を主体とする水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなう工程の廃液を用いた。
【0072】
(g)交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)、液温45℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理をおこなった。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で230C/dm2 であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
【0073】
(h)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度5wt%、アルミニウムイオン濃度0.5wt%でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を1.1g/m2 溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後スプレーで水洗した。
(i)液温60℃の硫酸濃度25wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーによる水洗をおこなった。
(j)液温35℃の硫酸濃度15wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2 で陽極酸化皮膜量が2.4g/m2 になるように陽極酸化処理をおこなった。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
【0074】
(k)親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
処理されたアルミニウム板の表面を日本電子製FESEMで観察したところ、5〜20μmの大きなうねりに、平均直径0.5〜1.5μmのハニカムピットが重畳していた。
アルミニウム板の表面を観察したところ、光沢感のある細長いレンズ状の処理ムラは無かった。
このアルミニウム板に中間層、および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2 のネガPS版を作成した。このPS版を用いて印刷したところ、良好な印刷版であった。
このアルミニウム板の平均表面粗さは0.58μmであった。
【0075】
実施例4
(k)の珪酸ソーダに浸漬しない以外は実施例3と全く同じ条件で行った。この処理したアルミニウム板に中間層とポジ感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版を印刷したところ良好な印刷版であった。
【0076】
実施例5
実施例3のスラリー液を水酸化アルミニウムの懸濁液にした以外は実施例3と全く同様に処理し、中間層と感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。印刷したところ、珪砂の懸濁液を使って機械的な粗面化を行った実施例3よりも更に汚れ性能がよい印刷版であった。
【0077】
実施例6(参考例)
厚さ0.3mmの幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて連続的に処理をおこなった。
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26wt%、アルミニウムイオン濃度6.5wt%、液温75℃でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を5g/m2 溶解し、圧延油や自然酸化皮膜を除去した。その後スプレーによる水洗をおこなった。(b)デスマット液を第2表のように種類、濃度、温度を変えてデスマット処理を行い、その後スプレーで水洗した。
(c)直流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007重量%含む)、液温45℃であった。アノードにはフェライト、カソードにはチタンを用いた。電解にはリップル率20%以下の直流電圧を用いた。電流密度は80A/dm2 、電気量200C/dm2 であった。陰極と陽極は1対であり、アルミニウム板の陽極反応から処理を開始した。
【0078】
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26wt%、アルミニウムイオン濃度6.5wt%でスプレーによるエッチング処理をおこない、アルミニウム板を5g/m2 溶解し、前段の直流を用いて電気化学的な粗面化をおこなったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットの開口径を広げ、なおかつエッジ部分を滑らかにし、その後スプレーで水洗した。
(e)液温30℃の硫酸濃度1重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wtアンモニウムイオン0.007重量%含む))で、スプレーによるデスマット処理をおこない、その後スプレーによる水洗をおこなった。
前記デスマットに用いた硝酸を主体とする水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化をおこなう工程の廃液を用いた。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りをおこなった。
処理されたアルミニウム板の表面を日本電子製FESEMで観察した結果を第2表に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
溝状のピットの評価 A:非常に少ない。 B:少ない。 C: 多い。
実施例7(参考例)
実施例6の(b)の後から(c)の工程に入るまでの処理面に接触するパスローラにてアルミニウム板とパスローラ周速の速度差を0%、0.5%、2%としたところ、スリップ率2%の時に(c)の工程で長さ50μmを越える非常に長い溝状のピットが生成した。
【0081】
比較例1
実施例3の(c)、(d)、(e)の処理を行った以外は、実施例3と全く同様にしてPS版を作成した。このアルミニウム板の表面を日本電子製FESEMで観察した。このアルミニウム板の平均表面粗さは0.58μmであり、アルミニウム材料の成分や熱処理条件のバラツキに起因する処理ムラが目立った。
また、黒色の光沢感のあるレンズ状の処理ムラが観察された。
【0082】
【発明の効果】
本発明の表面処理方法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体では、その表面を観察したところ、
▲1▼アルミニウム材料の成分中の銅成分の偏りに起因する、光沢感のあるレンズ状の処理ムラが発生しにくい。
▲2▼長さ約50μm以上の溝状のピットが発生しにくい。
ことがわかる。
特に、塩酸水溶液中での電気化学的な粗面化処理を、硝酸または塩酸を主体とする酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理の前に付加することで、安価なアルミニウム板を使用しても、良好な面質のアルミニウム支持体が得られることが判明したことは予期せぬ効果であった。
さらに、本発明の表面処理方法は、平版印刷版用アルミニウム支持体の表面処理のみでなく、あらゆるアルミニウム板、アルミニウム箔の粗面化に応用できる表面処理方法である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は、本発明の製造方法Iに関する製造工程のフローを示す図である。
(B)は、本発明の製造方法IIに関する製造工程のフローを示す図である。
【図2】本発明の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いる台形波の1例を示す波形図である。
【図3】本発明の機械粗面化処理に使用するブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。
【図4】本発明のフェライト補助陽極の配置を示す平面図である。
【図5】本発明の交流粗面化処理に用いるラジアル型セルの1例を示す側面図である。
【図6】本発明の交流粗面化処理用ラジアル型セルを2基直列配置した例を示す側面図である。
【図7】化学的なエッチング処理、デスマット処理、水洗処理をスプレー処理にて行うための処理槽の概略図である。
【図8】本発明の直流粗面化処理におけるカソード及びアノード電解処理セルの配置の1例を示す側面図である。
【図9】本発明の直流粗面化処理におけるカソード及びアノード電解処理セルの配置の他の1例を示す側面図である。
【図10】本発明の直流粗面化処理におけるアノード及びカソード電解処理セルの配置の1例を示す側面図である。
【図11】一つの槽にカソード電極とアノード電極を配置した本発明の電解処理セル構造の1例を示す説明図である。
【図12】(A)は、化学的な方法と交流を用いた電気的な方法を組み合わせた粗面化に用いられた製造工程の1例を示すフロー図である。
(B)は、機械的な方法と交流を用いた電気的な方法と、化学的な方法を組み合わせた粗面化に用いられた製造工程の1例を示すフロー図である。
【符号の説明】
1 アルミニウムウェブ
2 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリ液
4 ローラ状ブラシ
5 支持ローラ
6 支持ローラ
7 支持ローラ
8 支持ローラ
11 アルミニウムウエブ
12 ラジアルドラムローラ
13a主極
13b主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19aサイリスタ
19b
20 交流電源
21 フェライト電極
22 導電性金属棒
23 ナット
24 液シール材料
25 導電性接着剤
26 ワッシャー
27 スプリングワッシャー
28 陰極
29 直流電源
30 陽極
31 パスロール
40 主電解槽
41 主電解槽
45 直流電源
50 補助陽極槽
51 補助陽極槽
60 処理槽
61 スプレー管
62 ニップローラ
Claims (4)
- 液温10〜20℃および電気量1〜100C/dm2の塩酸を主体とする酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理を、硝酸を主体とした酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理の前におこなうことを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法。
- 連続して走行するアルミニウム板の表面を順に、
(a)アルカリ水溶液中でアルミニウム板をエッチング処理し、
(b)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(c)液温10〜20℃の塩酸を主体とする水溶液中で1〜100C/dm2 の電気量で、電流密度1〜50A/dm2 の交流を用いて電気化学的に粗面化処理し、
(d)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、
(e)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(f)硝酸を主体とした酸性水溶液中で直流または交流を用いて100〜800C/dm2 の電気量で電気化学的に粗面化処理し、
(g)アルカリ水溶液中でエッチング処理し、
(h)酸性水溶液中でデスマット処理し、
(i)陽極酸化処理して陽極酸化皮膜を形成させることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。 - 前記請求項1または請求項2の(c)に記載の塩酸を主体とする水溶液は、1〜20g/リットルの塩酸水溶液に塩化アルミニウムを1重量%から飽和まで添加したものであることを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- 陽極酸化皮膜を形成した後に親水化処理を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体の製造方法。
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