JP3787735B2 - 平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法および支持体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法及びその方法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体に関するものである。
特に、本発明は平版印刷版用支持体として使用されるアルミニウム板の粗面化に特徴を有する平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法及びその方法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体に関するものであって、従来の化学的なエッチング方法で発生しやすい、結晶粒の方位差に起因するストリークスと呼ばれる畳目状の筋や、面質ムラと呼ばれるザラツキ状の処理ムラなどが発生することなくアルミニウム板の粗面化を行うことができる。
また、本発明は、このような粗面化を含む製造方法によって製造され平版印刷版用支持体として好ましい表面形状を有する平版印刷版用アルミニウム支持体に関する。
【0002】
【従来の技術】
印刷版用アルミニウム支持体、特にオフッセト印刷版用支持体としてはアルミニウム板(アルミニウム合金板を含む)が用いられている。
一般にアルミニウム板をオフッセト印刷版用支持体として使用するためには、感光材料との適度な接着性と保水性を有していることが必要である。
このためにはアルミニウム板の表面を均一かつ緻密な砂目を有するように粗面化しなければならない。この粗面化処理は製版後実際にオフセット印刷を行ったときに版材の印刷性能や耐刷力に著しい影響をおよぼすので、その良否は版材製造上重要な要素となっている。
【0003】
印刷版用アルミニウム支持体の粗面化法としては、交流電解エッチング法が一般的に採用されており、電流としては、普通の正弦波交流電流、矩形波などの特殊交番波形電流が用いられている。そして、黒鉛等の適当な電極を対局として交流電流により、アルミニウム板の粗面化処理を行うもので、通常一回の処理で行われているが、そこで得られるピット深さは全体的に浅く、耐刷性能に劣るものであった。このため、その直径に比べて深さの深いピットが均一かつ緻密に存在する砂目を有する印刷版用支持体として好適なアルミニウム板が得られるように、数々の方法が提案されている。その方法としては、特殊電解電源波形を使った粗面化方法(特開昭53−67507号公報)、交流を使った電解粗面化時の陽極時と陰極時の電気量の比率(特開昭54−65607号公報)、電源波形(特開昭55−25381号公報)、単位面積あたりの通電量の組み合わせ(特開昭56−29699号公報)などが知られている。
また、機械的な粗面化と組み合わせた方法(特開昭55−142695号公報)なども知られている。
【0004】
一方、アルミニウム支持体の製造方法としては、アルミニウムのインゴットを溶解保持してスラブ(厚さ400〜600mm、幅1000〜2000mm、長さ2000〜6000mm)を鋳造し、スラブ表面の不純物組織部分を面削機にかけて3〜10mmづつ切削する面削工程を経た後、スラブ内部の応力の除去と組織の均一化の為、均熱炉において480〜540℃、6〜12時間保持する均熱化処理工程を行い、しかる後に熱間圧延を480〜540℃で行う。熱間圧延で5〜40mmの厚みに圧延した後、室温で所定の厚みに冷間圧延を行う。またその後組織の均一化のため焼鈍を行い圧延組織等を均質化した後、規定の厚みに冷間圧延を行い、平坦度の良い板にするため矯正する。この様にして作られたアルミニウム支持体を平版印刷版用支持体としていた。
【0005】
しかしながら、電解粗面化処理の場合は特に対象となるアルミニウム支持体の影響を受けやすく、アルミニウム支持体を溶解保持→鋳造→面削→均熱という工程を通して製造する場合、加熱、冷却を繰り返し、面削という表面層を削り取る工程があったとしても、表面層に金属合金成分などのばらつきを生じて平版印刷版としては得率低下の原因となっていた。
【0006】
これに対して、本出願人は先にアルミニウム支持体の材質のバラツキを少くし、電解粗面化処理の得率を向上させることによって品質の優れた得率のよい平版印刷版を作れる方法として、アルミニウム溶湯から鋳造、熱間圧延を連続して行い、薄板の熱間圧延コイルを形成させた後、冷間圧延、熱処理、矯正を行ったアルミニウム支持体を粗面化処理することを特徴とする平版印刷版用支持体の製造方法を提案した。(特開平3−79798号公報)
さらに鋳造方法に関しては、一般的な方法として、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造法からアルミニウム板を製造するには、、一般に中間焼鈍処理及び/又は均熱処理を行い、また連続鋳造法からアルミニウム板を製造するには、一般に中間焼鈍処理を行っている。
このような、一般的なアルミニウム板の製造工程から中間焼鈍処理や均熱処理を省略したアルミニウム板を用いることは省エネルギー、資源の有効利用の観点から望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら先に提案した本出願人の製造方法についても、連続鋳造後の板厚が厚い場合には、冷間圧延の通過回数が多くなる。また熱処理に時間がかかるなど、生産性、ランニングコストの面でコストダウン効果が半減するという不具合がある。
また、上記した、DC鋳造法や連続鋳造法から中間焼鈍処理や均熱処理を省略して製造したアルミニウム板を用いて平版印刷版用アルミニウム支持体を製造したときは、ストリークスや面質ムラと呼ばれる処理ムラが発生し易かった。これは、アルミニウムの化学的な溶解反応が進む際に、結晶方位によって溶解速度が違うため、または、アルミニウムの電気化学的なピッティング反応が進む際に結晶方位によって反応が違うためといわれている。
【0008】
本発明の目的は電解粗面化性や面質などの性能を維持しつつ、しかも工程の簡略化によるコストダウンをはかった平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法及びその方法によって製造した平版印刷版用アルミニウム支持体を提供することにある。
本発明の他の目的は、DC鋳造法や連続鋳造法から中間焼鈍処理や均熱処理を省略した製造したアルミニウム板を用いて、ストリークや面質ムラと呼ぶ故障の発生しない平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法及びその方法によって製造した平版印刷版用アルミニウム支持体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意研究の結果以下に示すストリークや面質ムラと呼ぶ故障が発生しない製造方法および表面形状を見出した。
▲1▼ DC鋳造法から中間焼鈍処理と均熱処理または中間焼鈍処理と均熱処理を省いて製造されたアルミニウム板、または、連続鋳造法から中間焼鈍処理を省いて製造されたアルミニウム板を粗面化処理する平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法において、塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理する工程を含むことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法、および、該方法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体。
▲2▼ アルミニウム板の表面をバフ研磨により鏡面仕上げし、アルカリエッチングし、酸性水溶液中でデスマット処理したアルミニウム板の表面をAFMで観察したとき、エッチング速度差により発生した段差が0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とするアルミニウム板を用いて、塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理する工程を含ことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法、および、該方法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体。
▲3▼ 走査型電子顕微鏡で観察したとき平均ピッチ0.01〜0.5μmのピットが占める面積の割合が80−100%であり、平均表面粗さ0.3〜1.5μmの▲1▼または▲2▼に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体。
▲4▼ 走査型電子顕微鏡で観察したとき平均直径0.1〜3μmのハニカムピットが占める面積の割合が80−100%であり、平均表面粗さ0.3〜1.5μmの▲1▼または▲2▼に記載の平版印刷版用アルミニウム支持体。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法に用いられる、アルミニウム板の粗面化方法の実施態様について詳細に説明する。
実施形態1
アルミニウム板を順に
(1)酸またはアルカリ水溶液中でアルミニウム板を化学的なエッチング処理
表面の自然酸化皮膜や汚れ、圧延油等を取り除き、表面の状態を均一にする目的でアルミニウム板を0.1〜20g/m2溶解する。前段の処理に機械的な粗面化をおこなったときは機械的な粗面化で生成した急峻な凹凸を滑らかにする作用も兼ねる。
(2)酸性水溶液中で、直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理
アルミニウム板表面に、平均直径0.1〜3μm のハニカムピットまたは、平均ピッチ0.01〜0.5μm のピットを生成する目的で行われる。ハニカムピットの平均直径は1μm 以下であることが特に好ましい。アルミニウム板表面にピットが生成している面積の割合は80〜100%であることが特に好ましい。
(3)酸またはアルカリ水溶液中で、アルミニウム板を化学的にエッチング処理または電解研磨処理
電気化学的な粗面化処理で生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除 去と、ピットのエッジの部分を滑らかにする目的で行われる。アルミニウム板の溶解量は0.1〜5g/m2が好ましい。
(4)陽極酸化処理
アルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。
【0011】
実施形態2
アルミニウム板を順に
(1)酸またはアルカリ水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチング処理
実施形態1と同様である。
(2)硝酸水溶液中で、直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理
実施形態1と同様である。
(3)酸またはアルカリ水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチング処理または電解研磨処理
実施形態1と同様である。
(4)塩酸を主体とする水溶液中で電気化学的な粗面化処理
平均ピッチ0.01〜0.5μm のピットを表面に均一に生成する目的で行われる。
(5)酸またはアルカリ水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチング処理または電解研磨処理
実施形態1と同様である。
(6)陽極酸化処理
実施形態1と同様である。
【0012】
実施形態3
酸またはアルカリ水溶液中での電解研磨処理の前、後または前後に酸またはアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理を、アルミニウム板の溶解量が0.01〜3g/m2となるように行うと、より優れた平版印刷版用アルミニウム支持体とすることができる。
酸またはアルカリ水溶液中での電解研磨処理の後におこなう、酸またはアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理は、電解研磨処理で生成した酸化皮膜や、スマットなどの副生成物を除去する目的で行われる。このエッチング処理を行うことで、電解研磨処理で生成した、酸化皮膜やスマットなどの副生成物を除去し、後の工程で行われる電気化学的な粗面化を均一に行うことができ、また、陽極酸化処理後のアルミニウム板をより優れた平版印刷版用アルミニウム支持体とすることができる。
【0013】
実施形態4
実施形態1〜3のいずれかの方法で、化学的なエッチングをアルカリの水溶液を用いて行った場合、一般にアルミニウムの表面にはスマットが生成するので燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸でデスマット処理することが好ましいスマットを除去することが好ましい。
【0014】
実施形態5
機械的な粗面化処理に続いて実施形態1〜4のいづれかに記載の処理を行うことにより、電気化学的な粗面化で消費する電力を軽減できる。
アルミニウム板の表面をバフ研磨により鏡面仕上げし、アルカリエッチングし、酸性水溶液中でデスマット処理したアルミニウム板の表面をAFMで観察したとき、エッチング速度差により発生した段差が0.01μm 以上0.5μm 以下、更に好ましくは0.02μm 以上0.2μm 以下、特に好ましくは0.05μm 以上0.15μm 以下であるアルミニウム合金板である。
具体的なバフ研磨の方法は、
▲1▼平均粒径0.3μm のアルミナ粉と水を用いて30秒間バフ研磨し、
▲2▼平均粒径0.1μm のアルミナ粉と水を用いて60秒間バフ研磨し、
▲3▼水を用いて120秒間バフ研磨し、
表面の圧延スジ、圧延油、酸化皮膜を除去して鏡面仕上げした。
アルカリエッチングの方法は水酸化アルミニウム27wt%、アルミニウム7wt%の水溶液70℃でアルミニウムの溶解量が15g/m2である。酸性水溶液中でのデスマット処理は硫酸25wt%の水溶液60℃に10秒間浸漬した。
アルミニウム板をバフ研磨処理し、フッ酸でエッチングした表面を観察したときの圧延方向に長い結晶粒の幅は約0.01mm以上10mm以下、長さは0.5mm以上300mm以下である。圧延方向に長い結晶粒の幅は5mm以下が好ましく、3mm以下が更に好ましい。
本発明に使用されるアルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分として微量の異元素を含む合金板、またはアルミニウムがラミネートまたは蒸着されたプラスチックフィルムの中から選ばれる。該アルミニウム合金に含まれる異元素には、珪素、鉄、ニッケル、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、チタン、バナジウムなどがある。通常はアルミニウムハンドブック第4版(1990、軽金属協会)に記載の、従来より公知の素材のもの、例えJIS A 1050材、JIS A 3103材、JIS A 3005材、JIS A 1100材、JIS A 3004材または引っ張り強度を増す目的でこれらに5wt%以下のマグネシウムを添加した合金を用いることが出来る。特に、結晶粒の方向起因の故障が発生するアルミニウム板の粗面化に好適である。
上記アルミニウム板は通常のDC鋳造法によるアルミニウム板の他、連続鋳造圧延法により製造されたものでも良い。連続鋳造圧延の方法としては双ロール法、ベルトキャスター法、ブロックキャスター法などを用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1〜0.6mm程度である。
アルミニウム板がDC鋳造法から中間焼鈍処理または均熱処理または中間焼鈍処理と均熱処理を省いて製造されたアルミニウム板を用いることが本発明の効果を出す上で特に好ましい。
アルミニウム板が連続鋳造法から中間焼鈍処理を省いて製造されたアルミニウム板を用いることが本発明の効果を出す上で特に好ましい。
本発明の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化または電解研磨処理に用いる装置は、金属ウェブの連続的表面処理に使用する公知のものがいずれも適用できる。
本発明の粗面化方法は、機械的な粗面化、化学的なエッチング、電解研磨処理、陽極酸化処理、親水化処理などのうち1つ以上と組み合わせて表面処理することで平版印刷版用アルミニウム支持体として好適な表面とすることが出来る。
その後、常法に従い、感光層または、中間層および感光層を塗布・乾燥することによって印刷性能が優れたPS版となる。感光層の上には真空焼き付け時のリスフィルムとの密着性を良好にするためにマット層を設けるなどしてもよい。現像時のアルミニウムの溶け出しを防ぐ目的で裏面にバックコート層を設けてもよい。本発明は片面のみでなく両面を処理したPS版の製造にも適応できる。
本発明は、平版印刷版用アルミニウム支持体の粗面化のみならず、あらゆるアルミニウム板の粗面化にも応用できる。
【0015】
アルカリ水溶液中での電解研磨処理
本発明で言うアルカリ水溶液中での電解研磨処理は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムおよびリン酸ナトリウムのようなアルカリ性物質の単独か、またはそれらの混合物、またはアルカリ性物質と水酸化亜鉛、水酸化アルミニウムとの混合物、またはこれらアルカリ性物質と塩化ナトリウムあるいは塩化カリウム等の塩類との混合物の水溶液を使用し、しかも電気的に脱酸素材になるような電解液組成、温度および濃度でアルミを陽極にして電解処理する場合のことをいう。均一な酸化皮膜を安定的に生成するために、過酸化水素、りん酸塩などを1wt%以下の濃度で添加してもよい。公知の電解研磨に用いる水溶液が使用できるが、好ましくは水酸化ナトリウムを主体とする水溶液である。好ましくは、水酸化ナトリウムを2〜30wt%含有する水溶液であり、とくに水酸化ナトリウムを3〜20%含有する水溶液である。2wt%未満だと陽極酸化皮膜が生成しやすくなり電解電圧が高くなりやすい、30wt%を超えると化学的な溶解力が強くなって、ストリークが見えやすくなる。液温は20〜80℃が好ましく、特に30〜50℃が好ましい。25℃未満だと陽極酸化皮膜が生成しやすくなり、80℃を超えると化学的な溶解力が強くなって、ストリークが見えやすくなる。電流密度5〜200A/dm2、さらに10〜80A/dm2、特に10〜60A/dm2 が好ましい。電解時間は1〜600秒の範囲から選択できる。また、アルカリ水溶液中にアルミニウムは0.5〜10wt%含有していることが好ましいが、1〜8wt%含有していることが特に好ましい。アルミニウムが0.5wt%未満だと廃液量が多くなると同時に晶析法によるアルカリの回収、アルミニウムの系外排出がし難くなる。アルカリ水溶液中のアルミニウムが10wt%を超えると強い酸化皮膜が生成しやすくなったり、アルカリ水溶液の導電率が下がるため電解電圧が高くなる。もちろんアルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜1wt%含有していてよい。
電流は直流、パルス直流、交流を用いることが可能である。パルス直流または連続直流がとくに好ましい。連続直流は商用交流を整流素子を用いた整流回路で直流に変換した後、平滑化回路で平滑化した連続直流を用いることが設備コストでは好ましい。整流回路、平滑回路は、一般的なものが使用可能である。連続直流のリップル率は、0〜80%が好ましい。パルス直流では、通電時間Ton と休止時間Tbのduty比が100:1〜1:100、1パルスあたりの通電時間はTon は1msec〜200sec であることが好ましい。波形の立ち上がり時間、立ち下がり時間は0〜10秒が好ましい。パルス直流の電流の休止時間Tbに流れる電流lbは0が好ましいが、0にすることは困難なため、lbの電流密度は0〜10A/dm2 とすることが好ましい。
電解処理装置はフラット型槽、ラジアル型槽など公知の電解処理に使われているものを用いることができる。電解処理装置は複数をならべて、アルミニウム板が順次通過して処理するようにしてもよい。
流速はアルミニウム板に対して、パラレルフロー、カウンターフローどちらでもよく、アルミニウム板と電極の間の平均流速は10〜400cm/秒が好ましく、とくに15〜200cm/秒が好ましい。平均流速が10cm/秒未満だと、アルカリ水溶液中のアルミ濃度を高く設定したときにストリークが見え易くなり、400cm/秒を超えるとポンプの動力費が大きくなって経済的でない。アルカリ水溶液は、スリット状の吹き出し口を有する吹き出しノズルから給液し、平均流速をコントロールすることがとくに好ましい。アルミニウム板と電極との距離は0.3〜30cmが好ましい。
給電方法はコンダクタロールを用いた直接給電方式を用いてもよいし、コンダクタロールを用いない液給電方式(間接給電方式)を用いても良い。使用する電極材質、構造は電解処理に使われている公知のものが使用可能である。液給電方式を用いるときは、陽極が配置された電解槽と陰極が配置された電解槽を分離することが好ましい。陽極が配置された電解槽と陰極が配置された電解槽の間を通過するアルミニウム板は電流が流れることによる発熱でアルミが溶断する可能性があるため、冷却を目的として電解液をスプレーノズルから吹き付けることが好ましい。
陰極材質はカーボン、銀、ニッケル、純鉄、ステンレス、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。陰極材料としてカ−ボンを用いる場合には樹脂含浸カーボンを用いることが特に好ましい。陽極材質はフェライト、白金、白金族系が好ましい。白金または白金族系を用いるときは、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウムなどのバルブ金属に白金をクラッドまたはメッキして用いることが好ましい。
電解処理装置は、公知の装置を用いることができる。アルミニウム板の処理面は、上面でも下面でも両面でもよい。
間接給電方式を用いるときは、陽極の消耗を抑止するため、陽極を配置する電解槽を電解研磨を行う電解槽と分離し、陽極を配置する電解槽の液組成、温度等は電解研磨の条件よりも低く設定することが好ましい。
図1は上記した、アルカリ水溶液中で電解研磨処理を実施するのに好適な装置の一例を示す概略図である。
図示されるように、アルミニウム板Wは先ず給電槽10に送られ、ここで電解処理される。電解槽10には電解液11である上記したアルカリ水溶液が貯留されており、アルミニウム板Wは対向配置された陽極12の間を通るようにパスロール13により搬送される。陽極12は複数個で構成され、直流電源27に接続されており、給液ノズル14からは電解液11(アルカリ水溶液)がアルミニウム板Wと陽極12との間の空間を通過するように廃液口15に向かって送出される。給液ノズル14及び廃液口15は、それぞれアルミニウム板Wの表裏両面側に配設される。
【0016】
給電槽10から搬出されたアルミニウム板Wは、次いで電解研磨槽20に送られる。この時、上記給電槽10と電解研磨槽20との間を通過するアルミニウム板Wを冷却するために、スプレーノズル16から電解処理に使用されるものと同一の電解液11を噴射する。
電解研磨槽20には電解液であるアルカリ水溶液が貯留されており、アルミニウム板Aを陽極とした電解処理がおこなわれる。アルミニウム板Wと対向配置される陰極21は複数に分割され、インシュレータ22を介して連結されている。各陰極は、それぞれに対応する直流電源27に接続される。また、アルミニウム板Wの陰極21と反対側には、電流裏回りを防止するための摺動板23が配置されている。
陰極21の下流側には給液ノズル24が配置されており、給液ノズル24からは電解液11(アルカリ水溶液)がアルミニウム板Wと陰極21との間の空間を流通するように排出される。また、給液ノズル24からの電解液11の供給により電解研磨槽20から溢出する余剰の電解液11は、電解研磨槽20の上流側に付設された廃液槽25の廃液口26を通じて系外に送液される。
【0017】
電解研磨処理を行ったアルミニウム板表面には酸化皮膜やスマットなどの副生成物が0.01〜10g/m2生成する。この酸化皮膜や、スマットなどの副生成物が存在すると平版印刷版用アルミニウム支持体としたとき好ましくないので電解研磨処理の後工程としては酸又はアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理、アルミニウム板を陰極にした電解エッチング処理、またはデスマット処理を行うことがさらに好ましい。
電解研磨処理を行う前処理としても、表面の状態が不均一だと電解研磨処理が均一に行われないので、酸又はアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理またはアルミニウム板を陰極にした電解エッチング処理を行うことがさらに好ましい。
【0018】
酸性水溶液中での電解研磨処理
本発明で言う酸性水溶液中でアルミニウム板を電解研磨処理は公知の電解研磨に用いる水溶液が使用できるが、好ましくは硫酸またはリン酸を主体とする水溶液である。特に好ましくは、硫酸又はリン酸を20〜90wt%(好ましくは40〜80wt%)含有する水溶液である。液温10〜90℃(好ましくは50〜80℃)、電流密度1〜200A/dm2 (好ましくは5〜80A/dm2)、電解時間は1〜180秒の範囲から選択できる。前記水溶液中に、硫酸、リン酸、クロム酸、過酸化水素、クエン酸、硼酸、フッ化水素酸、無水フタール酸などを1〜50wt%添加しても良い。また、アルミニウムはもちろんアルミニウム合金中に含有する合金成分が0〜10wt%含有していてよい。硫酸イオンまたはリン酸イオンの濃度と、アルミニウムイオン濃度は、常温でもアルミニウムが析出しない濃度で用いることが好ましい。
電流は直流、パルス直流、交流を用いることが可能であるが、連続直流が好ましい。電解処理装置はフラット型槽、ラジアル型槽など公知の電解処理に使われているものを用いることができる。流速はアルミニウム板の進行方向に対して、パラレルフロー、カウンターフローどちらでもよく、1〜400cm/secの間から選定される。アルミニウム板と電極との距離は0.3〜30cmが好ましい。給電方法はコンダクタロールを用いた直接給電方式を用いてもよいし、コンダクタロールを用いない間接給電方式(液給電方式)を用いても良い。使用する電極材質、構造は電解処理に使われている公知のものが使用可能である。陰極材質はカーボン、銀、白金、アルミニウムが好ましい。人造カーボンを使用する場合、使用するグラファイトの粒子径ができるだけきめ細かいものが寿命の点から好ましい。陽極材質はフェライト、酸化イリジウム、鉛または白金が好ましい。アルミニウム板の処理面は、上面でも下面でも両面でもよい。
間接給電によって通電するときは、後記する図1のようなフラット型セルを用いてもよい。またラジアル型セルを用いてもよい。電解研磨処理を行う槽はラジアル型セルを用いるとアルミニウム板の非処理面に電流が流れないために効率よく電解研磨処理を行うことができ好ましい。陽極を配置した電解槽をフラット型にするのは、両面からアルミニウム板に通電するため、電解電圧の減少がはかれるためである。
液給電方式を用いるときは、陽極が配置された電解槽と陰極が配置された電解槽を分離することが好ましい。陽極が配置された電解槽と陰極が配置された電解槽の間を通過するアルミニウム板は電流が流れることによる発熱でアルミが溶断する可能性があるため、冷却を目的として電解液をスプレーノズルから吹き付けることが好ましい。
また、液給電方式を用いるとき、陽極が配置される電解槽の液は酸性電解液でもアルカリ性電解液でも良い。
両面を電解研磨処理するときは片面ずつ順に行ってもよいし、同時に行っても良い。また、両面同時に電解研磨処理を行うときは、それぞれの面に対向する陰極に流れる電流を別々に制御することが好ましい。
間接給電方式を用いるときは、陽極の消耗を抑止するため、陽極を配置する電解槽を電解研磨を行う電解槽と分離し、陽極を配置する電解槽の液組成、温度等を電解研磨の条件よりも低く設定することが好ましい。
電解研磨処理を行ったアルミニウム板表面には酸化皮膜やスマットなどの副生成物が0.01〜10g/m2生成する。この酸化皮膜や、スマットなどの副生成物が存在すると平版印刷用アルミニウム支持体としたとき好ましくないので電解研磨処理の後工程としては酸又はアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理またはデスマット処理を行うことが好ましい。
電解研磨処理を行う前処理としても、表面の状態が不均一だと電解研磨処理が均一に行われないので、酸又はアルカリ水溶液中でのエッチング処理を行うことが最も好ましい。
酸またはアルカリ水溶液中の電解研磨処理工程で、アルミニウム板とこれに対向する陰極間の電解電圧は1〜20Vであることが好ましい。20Vを越えると強い酸化皮膜が生成し、次の工程での処理が均一に行われ難くなる。
【0019】
酸またはアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理
アルカリ水溶液の濃度は1〜30wt%が好ましく、さらにアルカリ水溶液中に溶解しているアルミニウムは1〜30wt%が好ましい。アルカリ水溶液としては、とくに苛性ソーダを主体とする水溶液が好ましい。液温は常温〜95℃で、1〜120秒間処理することが好ましい。
酸性水溶液に用いることのできる酸は、燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸を用いることが出来る。酸性水溶液の濃度は0.5〜65wt%が好ましく、さらに酸性水溶液中に溶解しているアルミニウムは0.5〜5wt%が好ましい。液温は30〜95℃で、1〜120秒間処理することが好ましい。酸性水溶液としてはとくに硫酸が好ましい。硫酸濃度とアルミニウム濃度は常温で晶出しない範囲から選択することが好ましい。
エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
【0020】
酸性水溶液中でのデスマット処理
化学的なエッチングをアルカリの水溶液を用いて行った場合は一般にアルミニウムの表面にはスマットが生成するので、この場合には燐酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、またはこれらの2以上の酸を含む混酸でデスマット処理する。酸性水溶液の濃度は0.5〜60wt%が好ましい。さらに酸性水溶液中にはアルミニウムが0〜5wt%が溶解していても良い。液温は常温から95℃で実施され、処理時間は1〜120秒が好ましい。デスマット処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。
【0021】
機械的な粗面化処理
本発明でいう機械的な粗面化とは、毛径が0.2〜1.61mmの回転するナイロンブラシロールと、アルミニウム板表面に供給されるスラリー液で機械的に粗面化処理することが有利である。研磨剤としては公知の物が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウムまたはこれらの混合物が好ましい。特開平6−135175号、特公昭50−40047号に詳しく記載されている。スラリー液の比重は1.05〜1.3が好ましい。
もちろんスラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム板に転写する方式などを用いても良い。その他の方式としては、特開昭55−074898号、特開昭61−162351号、特開昭63−104889号各公報等に記載されている。
【0022】
硝酸を主体とする水溶液
本発明でいう硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/リットルの硝酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/リットル〜飽和まで添加して使用することができる。硝酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、硝酸5〜20 g/ リットル水溶液中にアルミニウムイオンが3〜50g/リットルとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いることが好ましい。温度は10〜90℃が好ましく、40〜80℃がより好ましく、とくに60〜80℃が好ましい。
【0023】
塩酸を主体とする水溶液
本発明で言う塩酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用でき、1〜100g/リットルの塩酸水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、等の硝酸イオン、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、等の塩酸イオンを有する塩酸または硝酸化合物の1つ以上を1g/リットル〜飽和まで添加して使用することができる。塩酸を主体とする水溶液中には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸5〜20g/リットル水溶液中にアルミニウムイオンが3〜50g/リットルとなるように塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムを添加した液を用いることが好ましい。温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。次亜塩素酸を添加してもよい。
【0024】
交流を用いた電気化学的な粗面化
本発明でいう硝酸を主体とする水溶液は、通常の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いるものを使用できる。有利には、前記硝酸を主体とする水溶液または塩酸を主体とする水溶液から選ぶことができる。
硝酸を主体とした水溶液中での電気化学的な粗面化では平均直径0.5〜3μmのピットが生成する。但し、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、3μmを越えるハニカムピットも生成する。また、電気量を比較的高く設定するにしたがい大きなうねりを持つ表面となる。
塩酸を主体とした水溶液中で電気化学的に粗面化したときは、平均ピッチが 0.01〜0.5μmのピットが生成する。電気量を多くするとクレーター状の凹凸に重畳して平均ピッチ0.05〜0.5μmのピットが生成し、平均表面粗さは通電量に比例して大きくなってくる。
結晶粒の方位差、即ちアルミニウム板のエッチング速度差に起因するストリークスが見えにくくするには、ハニカムピットが密に生成していることが好ましい。ハニカムピットまたは平均ピッチ0.01〜0.5μmのピットがSEM で観察した表面に占める面積に占める割合は80〜100%であることが好ましく、とくに90〜100%であることが特に好ましい。
電気化学的な粗面化に用いる交流電源波形は、サイン波、矩形波、台形波、三角波などを用いることができるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。周波数は0.1〜250Hzが好ましい。
【0025】
交流電源波形を図3を参照してより具体的に説明する。
台形波において、電流が0からピークに達するまでの時間tpは1〜10msecが好ましい。電源回路のインピーダンスの影響のため、tpが1未満であると電流波形の立ち上がり時に大きな電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる。10msecより大きくなると、電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり均一な粗面化が行なわれにくくなる。
電気化学的な粗面化に用いる交流の1サイクルの条件が、アルミニウム板のアノード反応時間taとカソード反応時間tcの比(tc/ta)が1〜20、アルミニウム板がアノード時の電気量Qcとアノード時の電気量Qaの比(Qc/Qa)が0.3〜20、アノード反応時間taが5〜1000msec、の範囲にあることが好ましい。特に、(tc/ta)は2.5〜15であることがより好ましく、(Qc/Qa)は2.5〜15であることがより好ましい。
【0026】
アルミニウム板表面に均一なハニカムピットを生成させるためには、アルミニウム板表面の酸化皮膜の分布と水酸化アルミニウムを主体とするスマットの生成され方のバランスが重要になってくる。酸化皮膜の分布はアルミニウム板のアノード反応のときのピッティング反応の開始点の分布を意味する。スマットの生成のされ方は、一度ピッティング反応が起こった部分に再度ピッティング反応が起こることを阻止し、ハニカムピット分散する上で重要な役割を担っている。スマットはアルミニウム板がアノード反応の時も反応が起きている界面近傍のアルミニウムイオン濃度がリッチになり、特に、水酸化アルミニウムはカソード反応の直前のアノード反応でピッティングが行われた部分に析出し易く、ピットに蓋をするような形でスマットが生成するため、その部分には電流が流れにくくなり、電流を集中させない役目をする。電気化学的な粗面化が終了したアルミニウム板の表面には、0.8g/m2 以上の水酸化アルミニウムを主体とするスマットが生成されている時、平均直径0.5〜3μmのハニカムピットが均一に分散している。
【0027】
(tc/ta)が1未満であると、アルミニウム板のアノード反応で生成した酸化皮膜の溶解による、ピッティング反応の開始点が少なくなり、均一なハニカムピットが生成できなくなる。(tc/ta)が20より大きいと、アルミニウム板のアノード反応で生成した酸化皮膜が溶解されすぎ、ピッティング反応の開始点が大きくなりすぎ、均一なハニカムピットが生成されず、表面積が増えなくなる。
(Qc/Qa)が0.3未満であるとアルミニウム板のアノード反応で生成した酸化皮膜の溶解による、ピッティング反応の開始点が少なくなり、均一なハニカムピットが生成できなくなる。(Qc/Qa)が20より大きいと、アルミニウム板のアノード反応で生成した酸化皮膜が溶解されすぎ、ピッティング反応の開始点が多くなりすぎ、均一なハニカムピットが生成されず、表面積が増えなくなる。
電流密度は台形波のピーク値で電流のアノードサイクル側 Ia,カソードサイクル側 IC ともに10〜200A/dm2 が好ましい。(Ic /Ia) は0.3〜20の範囲にあることが好ましい。
電気化学的な粗面化が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和は10〜2000 C/dm2が好ましい。前記処理として、機械的な粗面化と化学的エッチング、または機械的な粗面化と電解研磨処理を行ったときは、10〜300 C/dm2が特に好ましい。
本発明で交流を用いた電気化学的な粗面化に用いる電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型など公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号に記載のようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液はアルミニウムウェブの進行とパラレルでもカウンターでもよい。1つの電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。
交流を用いた電気化学的な粗面化には図2に示した装置を用いることができる。電解槽を2つ以上用いるときには電解条件は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0028】
図2に示す装置による電気化学的な粗面化においては、アルミニウム板Wは主電解槽50中に浸漬して配置されたラジアルドラムローラ52に巻装され、搬送過程で交流電源51に接続する主極53a、53bにより電解処理される。電解液55は電解液供給口54からスリット56を通じてラジアルドラムローラ52と主極53a、53bとの間の電解液通路57に供給される。主電解槽50で処理されたアルミニウム板Wは次いで補助陽極槽60で電解処理される。この補助陽極槽60には補助陽極58がアルミニウム板Wと対向配置されており、電解液55が補助陽極58とアルミニウム板Wとの間の空間を流れるように供給される。
【0029】
直流を用いた電気化学的な粗面化
本発明で言う直流を用いた電気化学的な粗面化処理とは、アルミニウム板とこれに対向する電極間に直流電流を加え、電気化学的に粗面化する方法を言う。電解液は、公知の直流または交流を用いた電気化学的な粗面化処理に使用するものを用いることができる。有利には、前記硝酸を主体とする水溶液または塩酸を主体とする水溶液から選ぶことができる。温度は10〜80℃が好ましい。直流を用いた電気化学的な粗面化に用いる処理装置は公知の直流を用いたものを使用することが出来るが、特開平1−141094号に記載されているように一対以上の陽極と陰極を交互に並べた装置を用いることが好ましい。公知の装置の一例としては特開平6−328876号、特開平8−67078号、特開昭61−19115号、特公昭57−44760号各公報などに記載されている。また、アルミニウム板に接触するコンダクタロールと、これに対向する陰極との間に、直流電流を加え、アルミニウム板を陽極にして電気化学的な粗面化処理を行っても良い。電解処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないためにニップローラーによる液切りとスプレーによる水洗を行うことが好ましい。電気化学的な粗面化に使用する直流はリップル率が20%以下の直流を用いることが好ましい。電流密度は10〜200A/dm2 が好ましく、アルミニウム板が陽極時の電気量は10〜2000C/dm2 が好ましい。陽極はフェライト、酸化イリジウム、白金、白金をチタン、ニオブ、ジルコニウムなどのバルブ金属にクラッドまたはメッキしたものなど公知の酸素発生用電極から選定して用いることが出来る。陰極はカーボン、白金、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレスや燃料電池用陰極に用いる電極から選定して用いることもできる。
【0030】
陽極酸化処理
アルミニウム板の表面の耐磨耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならば、いかなるものでも使用することができる。一般には硫酸、リン酸、シュウ酸、クロム酸、またはそれらの混合液が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質によって変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80wt%、液温は5〜70℃、電流密度1〜60A/dm2 、電圧1〜100V、電解時間10秒〜300秒の範囲にあれば適当である。
硫酸法は通常直流電流で処理が行われるが、交流を用いることも可能である。陽極酸化皮膜の量は1〜10g/m2の範囲が適当である。1g/m2よりも少ないと耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付きやすくなって、同時にキズの部分にインキが付着する、いわゆるキズ汚れが生じやすくなる。
【0031】
陽極酸化処理が施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、第3,181,461号、第3,280,734号及び第3,902,734号各明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えば珪酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体が珪酸ナトリウム水溶液中で浸漬されるか、また電解処理される。他に特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム、および、米国特許第3,276,868号、第4,153,461号および第4,689,272号各明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
また、砂目立て処理及び陽極酸化処理後、封孔処理を施したものも好ましい。かかる封孔処理は熱水および無機塩または有機塩を含む熱水溶液への浸漬ならびに水蒸気浴等によって行われる。
【0032】
本発明の方法で粗面化されたアルミニウム板は、特願平8−296708号、特願平8−176568号各明細書に記載された測定法で測定した物性値が以下の値を満足する支持体である。
具体的には下記の表面形状を満足する支持体である。
(1)AFM((原子間力顕微鏡)で測定した値を用いて定義した表面形状が下記の範囲にある。
▲1▼水平(X,Y)方向の分解能が0.1μm としたAFM を用いて100μm 角の測定範囲で測定し、近似三点法により求めた表面積をa、上部投影面積をbとしたとき、a/bの値(比表面積)が1.15〜1.5。
▲2▼水平(X,Y)方向の分解能が1.9μm としたAFM を用いて240μm 角の測定範囲で測定した平均表面粗さが0.3〜1.5μm 。
▲3▼水平(X,Y)方向の分解能が1.9μm としたAFM を用いて240μm 角の測定範囲で測定した傾斜度が30度以上の割合が5〜40%。
▲4▼アルミニウム板の表面が粗面化によって起伏を有する平版印刷版用支持体で、原子間力顕微鏡により0.1μm 分解能で、50μm 角を計測した際の表面傾斜度分布の傾斜度が45度以上の割合が5%以上50%以下であることを特徴とする平版印刷版用支持体。
(2)感光層を塗布する前のJIS Z9741-1983に規定の85度光沢度が30以下。
(3)走査型電子顕微鏡で、倍率750倍で観察したとき、80μm の視野の中に、平均直径0.1〜3μm のハニカムピットが占める面積の割合が80〜100%。
(4)フラクタル次元が、水平(X,Y)方向の分解能が0.1μm または1.9μm としたAFM を用いて100μm 角または240μm 角の測定範囲で測定したボックスカウンティング法、スケール変換法、カバー法、回転半径法、密度相関関数法などで求めたフラクタル次元が2.1〜2.5。
である。
とくに、硝酸水溶液中で交流又は直流を用いた電気化学的な粗面化で生成したハニカムピット、または硝酸水溶液中で交流又は直流を用いた電気化学的な粗面化で生成したピットの密度が、走査型電子顕微鏡で観察したとき、80μm 角の視野の中に、80〜100%であると結晶粒に起因するストリークや面質ムラの発生を少なくすることができる。
【0033】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
DC鋳造法で中間焼鈍処理と均熱処理を省略し、酸またはアルカリ水溶液中での化学的なエッチングでストリークスが発生しやすくなった厚さ0.24mm、幅1030mmの、JIS A 1050アルミニウム板を用いて連続的に処理を行った。このアルミニウム板の表面をバフ研磨により鏡面仕上げし、アルカリエッチングし、酸性水溶液中でデスマット処理してその表面をAFMで観察したとき、エッチング速度差により発生した段差が0.03μmであった。
(1)機械的な粗面化処理
比重1.12の水酸化アルミニウムと水の懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラー状ナイロンブラシにより機械的な粗面化をおこなった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロンを使用し、毛長50mm、毛の直径は0.48mmであった。ナイロンブラシは直径300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛して作製した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(直径200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して6kwプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。その後、水洗した。アルミニウム板の移動速度は50m/minであった。
(2)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27wt%、アルミニウムイオン6.5wt%含有する水溶液、70℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は10g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(3)デスマット処理
次に硝酸1wt%含有する水溶液、45℃に10秒間浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(4)酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理
交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)、液温80℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、duty比1:1、60Hz、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で、125C/dm2(実施例1ー1)、150C/dm2(実施例1ー2)、200C/dm2(実施例1−3)、250C/dm2(実施例1−4)であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(5)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH5wt%、アルミニウムイオン0.5wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は0.3g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(6)デスマット処理
次に硫酸10wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(7)陽極酸化処理
液温35℃の硫酸濃度10wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2で陽極酸化皮膜量が2.4g/m2になるように陽極酸化処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。 このアルミニウム板の表面には結晶粒の方位が起因のストリークス、面質ムラは観察されなかった。
このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、平均直径約0.5〜1μmのハニカムピットが占める面積の割合は100%で、全面に均一に生成していた。このアルミニウム板の平均表面粗さは0.55〜0.65μmであった。
実施例のアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例2
実施例1ー2の陽極酸化処理後の基板に、親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りをおこなった。
この処理したアルミニウム板に中間層とネガ型感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例3
実施例1の(3)、(4)の処理を以下の処理とした以外は実施例1と全く同様にアルミニウム板を処理した。
(3)デスマット処理
次に塩酸1wt%含有する水溶液、35℃に10秒間浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(4)酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理
交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%含む)、液温35℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、duty比1:1、60Hz、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で75C/dm2(実施例3ー1)、200C/dm2(実施例3ー2)、300C/dm2(実施例3ー3)であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
このアルミニウム板の表面には結晶粒の方位が起因のストリークス、面質ムラは発生していなかった。 このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、塩酸グレイン特有のピットが占める面積の割合は100%で、全面に均一に生成していた。このアルミニウム板の平均表面粗さは0.55〜0.65μmであった。
このアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例4
実施例3−1の陽極酸化処理後の基板に、親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りをおこなった。
この処理したアルミニウム板に中間層とネガ型感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例5
DC鋳造法で中間焼鈍処理と均熱処理を省略し、酸またはアルカリ水溶液中での化学的なエッチングでストリークスが発生しやすくなった厚さ0.24mm、幅1030mmの、JIS A 1050アルミニウム板を用いて連続的に処理を行った。このアルミニウム板の表面をバフ研磨により鏡面仕上げし、アルカリエッチングし、酸性水溶液中でデスマット処理したアルミニウム板の表面をAFMで観察したとき、エッチング速度差により発生した段差が0.1μmであった。
(1)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27wt%、アルミニウムイオン6.5wt%含有する水溶液、70℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は10g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(2)デスマット処理
次に硝酸1wt%含有する水溶液、45℃に10秒間浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(3)酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理
交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)、液温80℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、duty比1:1、60Hz、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理をおこなった。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2, 電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/dm2(実施例5ー1)、350C/dm2(実施例5ー2)、550C/dm2(実施例5ー3)であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(4)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH5wt%、アルミニウムイオン0.5wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は0.1g/m2 であった。その後、水洗処理を行った。
(5)デスマット処理
次に硫酸10wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(6)陽極酸化処理
液温35℃の硫酸濃度10wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2 で陽極酸化皮膜量が2.4g/m2になるように陽極酸化処理を行った。その後、スプレーによる水洗をおこなった。
このアルミニウム板の表面には結晶粒の方位が起因のストリークス、面質ムラは観察されなかった。
このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、平均直径0.5〜1μmのハニカムピットが占める面積の割合は100%で、全面に均一に生成していた。このアルミニウム板の平均表面粗さは0.35μm(実施例5−1)、0.45μm(実施例5−2)、0.6μm(実施例5−3)であった。
実施例のアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例6
実施例5−2の陽極酸化処理後の基板に、親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りをおこなった。
この処理したアルミニウム板に中間層とネガ型感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例7
実施例5と同じアルミニウム板を用いて以下の処理を行った。
(1)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27wt%、アルミニウムイオン6.5wt%含有する水溶液、70℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は10g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(2)デスマット処理
次に硝酸1wt%含有する水溶液、45℃に10秒間浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(3)酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理
交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%)、液温35℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、duty比1:1、60Hz、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2 、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で、それぞれ400C/dm2(実施例7ー1)、800C/dm2(実施例7ー2)、1600C/dm2(実施例7ー3)であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(4)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH5wt%、アルミニウムイオン0.5wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は0.3g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(5)デスマット処理
次に硫酸10wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(6)陽極酸化処理
液温35℃の硫酸濃度10wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2で陽極酸化皮膜量が2.4g/m2になるように陽極酸化処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
このアルミニウム板の表面には結晶粒の方位が起因のストリークス、面質ムラは観察されなかった。
このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理特有のピットが全面に均一に生成していた。クレーター状のピットも生成していた。このアルミニウム板の平均表面粗さは、それぞれ0.4μm、0.8μm、1.2μmであった。
実施例のアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例8
実施例7ー1、実施例7ー2、実施例7ー3の陽極酸化処理後の基板に、親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りをおこなった。
この処理したアルミニウム板に中間層とネガ型感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
【0034】
実施例9
実施例1と同様なアルミニウム板を用いて以下の処理を行った。
(1)機械的な粗面化処理
比重1.12の水酸化アルミニウムと水の懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラー状ナイロンブラシにより機械的な粗面化をおこなった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロンを使用し、毛長50mm、毛の直径は0.72mmであった。ナイロンブラシは直径300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛して製作した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(直径200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して6kwプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。その後、水洗した。アルミニウム板の移動速度は50m/minであった。
(2)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH27wt%、アルミニウムイオン6.5wt%含有する水溶液、70℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は10g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(3)デスマット処理
次に硝酸1wt%含有する水溶液、45℃に10秒間浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(3)酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理
交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%、アンモニウムイオン0.007wt%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、duty比1:1、60Hz、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理をおこなった。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2,電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で100C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(4)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH70wt%、アルミニウムイオン6.5wt%含有する水溶液、70℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は4g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(5)デスマット処理
次に塩酸1wt%含有する水溶液、35℃に10秒間浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(6)酸性水溶液中での電気化学的な粗面化処理
交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸1wt%水溶液(アルミニウムイオン0.5wt%含む)、液温35℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが1msec、duty比1:1、60Hz、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。
電流密度は電流のピーク値で60A/dm2,電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で150C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(7)アルカリ水溶液中でのエッチング処理
アルミニウム板を、NaOH5wt%、アルミニウムイオン0.5wt%含有する水溶液、45℃に浸漬してアルミニウム板のエッチング処理を行った。アルミニウム板の溶解量は0.3g/m2であった。その後、水洗処理を行った。
(8)デスマット処理
その後、水洗処理を行った。次に硫酸25wt%含有する水溶液、60℃に浸漬してデスマット処理を行った。その後、水洗処理を行った。
(9)陽極酸化処理
液温35℃の硫酸濃度15wt%水溶液(アルミニウムイオンを0.5wt%含む)で、直流電圧を用い、電流密度2A/dm2で陽極酸化皮膜量が2.4g/m2になるように陽極酸化処理を行った。その後、スプレーによる水洗を行った。
このアルミニウム板の表面には結晶粒の方位が起因のストリークス、面質ムラは発生していなかった。 このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、塩酸電解グレイン特有のピットが全面に均一に生成していた。このアルミニウム板の平均表面粗さは0.7μmであった。
このアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例10
実施例9の陽極酸化処理後の基板に、親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りをおこなった。
この処理したアルミニウム板に中間層とネガ型感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例11
実施例1(5)のアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理を電解研磨処理とした以外は実施例1と全く同様に処理した。 アルミニウム板を、水酸化ナトリウム9wt%、アルミニウムを3wt%含有する水溶液で、電流密度20A/dm2でアルミニウム板を陽極にして連続直流を用いて電解研磨処理を行った。アルカリ水溶液の液温は35℃であった。アルミニウム板の溶解量は0.3g/m2であった。アルミニウム板と電極間の平均流速は、80cm/秒であった。
このアルミニウム板の表面には結晶粒の方位が起因のストリークス、面質ムラは発生していなかった。 このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、一辺の長さ約0.5−1μmのハニカムピットが占める面積の割合は100%で、全面に均一に生成していた。このアルミニウム板の平均表面粗さは0.6μmであった。
このアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例12
実施例11の陽極酸化処理後の基板に、親水化処理する目的で、珪酸ソーダ2.5wt%、70℃の水溶液に14秒間浸漬し、その後スプレーで水洗し、乾燥した。各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
この処理したアルミニウム板に中間層とネガ型感光層を塗布、乾燥してPS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
実施例のアルミニウム板に中間層および感光層を塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.0g/m2のポジ型PS版を作成した。このPS版に公知の処理を施し、良好な平版印刷版を得ることができた。
比較例1
実施例1(4)の電気化学的な粗面化に用いる電気量を65C/dm2とした以外は実施例1とまったく同様にアルミニウム板を処理した。このアルミニウム板の表面を目視で観察したところ、ストリークが目立った。このアルミニウム板の表面をSEMで観察したところ、一辺の長さ約0.5−1μmのハニカムピットが占める面積の割合は約70%であった。
比較例2
実施例9(6)の塩酸を主体とする水溶液中での電気化学的な粗面化処理を行なわない以外は実施例9とまったく同様にアルミニウム板を処理した。このアルミニウム板の表面を目視で観察したところ、ストリークが目立った。
【0035】
【発明の効果】
ストリーク、面質ムラと呼ぶ結晶粒の方位差によるアルミ溶解速度の差に起因する処理ムラの発生を伴わずアルミニウム板を粗面化し、良好な印刷適性を有する印刷版を与える平版印刷版用アルミニウム支持体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルカリ水溶液中で電解研磨処理を実施するのに適した装置の一例を示す概略図である。
【図2】交流を用いた電気化学的粗面化に用いる装置の一例を示す概略図である。
【図3】交流を用いた電気化学的な粗面化処理に用いる交流波形の一例を示す波形図である。
【符号の説明】
10 給電槽
11、55 電解液
12 陽極
13、24 給液ノズル
15、26 廃液口
20 電解研磨槽
21 陰極
27 直流電源
50 主電解槽
51 交流電源
53a,53b 主極
54 電解液供給口
w アルミニウム板
Claims (7)
- DC鋳造法から中間焼鈍処理と均熱処理を省いて製造されたアルミニウム板を、塩酸または硝酸を主体とする水溶液中で電気化学的に粗面化処理する工程を含むことを特徴とする平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- DC鋳造法から中間焼鈍処理と均熱処理を省いて製造されたアルミニウム板が、その表面をバフ研磨により鏡面仕上げし、アルカリエッチングし、酸性水溶液中でデスマット処理したアルミニウム板であり、その表面をAFMで観察したとき、エッチング速度差により発生した段差が0.01μm以上0.5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- 上記の電気化学的な粗面化処理する工程において、アルミニウム板の陽極反応に預かる電気量が10〜2000 C/ d m 2 である請求項1又は2記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- 上記の電気化学的な粗面化処理工程の後、さらにアルミニウム板に、アルカリ水溶液中での電解研磨処理を施すことを特徴とする、請求項 1 〜3の何れかに記載の平版印刷版用アルミニウム支持体の製造方法。
- 請求項1〜4の何れかに記載の方法によって製造された平版印刷版用アルミニウム支持体。
- 上記支持体が、塩酸を主体とする水溶液によって電気化学的に粗面化処理する工程を含む製造方法により得られた支持体であり、走査型電子顕微鏡で観察したとき平均ピッチが0.01〜0.5μmのピットが占める面積の割合が80〜100%であり、平均表面粗さが0.3〜1.5μmである請求項5記載の平版印刷版用アルミニウム支持体。
- 上記支持体が、硝酸を主体とする水溶液によって電気化学的に粗面化処理する工程を含む製造方法により得られた支持体であり、走査型電子顕微鏡で観察したとき平均直径が0.1〜3μmのハニカムピットが占める面積の割合が80〜100%であり、平均表面粗さが0.3〜1.5μmである請求項5記載の平版印刷版用アルミニウム支持体。
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