JP3598455B2 - ハロゲン化銀乳剤、その製造方法及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ハロゲン化銀乳剤の製造方法に関し、迅速処理性に優れ、且つ高感度な平板状高塩化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤、並びにハロゲン化銀写真感光材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀写真感光材料は、高感度であること、階調性に優れていること等、他の感光材料に比べて非常に優れた特性を有しているため、今日盛んに用いられている。中でも処理の迅速性から塩化銀含有率の高いハロゲン化銀粒子を用いた感光材料が好ましい。このような塩化銀含有率の高いハロゲン化銀粒子において、近年さらなる高感度化、高鮮鋭化、粒状性の改良、処理の迅速化等を目指して、平板状のハロゲン化銀粒子に関する研究が盛んである。
【0003】
このような塩化銀含有率の高い平板状ハロゲン化銀粒子としては(111)主平面を有する粒子(以下(111)平板状粒子ともいう)と、(100)主平面を有する粒子(以下(100)平板状粒子ともいう)が知られている。
【0004】
このうち、(111)面を主平面とする平板状粒子の形成法としては、アミノアザインデン、ピリミジン、アミノアジン、チオ尿素、キサンチノイド等の晶癖制御剤の存在下で粒子形成を行う方法が知られている。しかし、一般には塩化銀含有率の高いハロゲン化銀粒子では(100)面が安定であり、ハロゲン化銀粒子の形成の際に生じた塩類を除去する際にこれらの晶癖制御剤が脱離して粒子の形状が変化する現象もみられ(111)面を主平面とする平板状粒子を安定に得ることは難しいことであった。
【0005】
また、このような晶癖制御剤はいわゆる抑制剤として知られているものも多く、これらの化合物の存在下では化学増感をうまく行えないという問題があった。一方、(100)面を主平面とする平板状粒子の形成方法が、特開平5−204073号、米国特許5,264,337号、同5,275,930号、特開平6−301131号、同6−308648号、同6−337489号、同6−337490号、同6−337507号等に開示されている。これら(100)面を主平面に有する平板状ハロゲン化銀粒子は、(111)面を主平面とする平板状ハロゲン化銀粒子に比べて形状が安定であり、晶癖制御剤を特に必要としないために分光化学増感が行いやすいという利点を有している。
【0006】
(100)平板状粒子へ成長させるため異方成長性を粒子に導入する方法として、イミダゾール、3,5−ジアミノトリアゾールのような(100)面形成促進剤を添加する方法と、核粒子とは組成の異なるハロゲン(以下異種ハロゲンという)の添加によってハロゲン組成のギャップを形成したり、高温、高圧などの条件によって結晶面にひずみを生じさせる方法がある。前者の(100)面形成促進剤による形成方法は、(111)面形成促進剤と同様に、これらの化合物の存在下では化学増感をうまく行えないという問題があり、写真性能への影響を無視しきれないため沃化銀相、臭化銀相によるハロゲン組成ギャップ面を利用する方法が好ましく用いられる。
【0007】
ハロゲン組成のギャップを利用した方法の代表的な例として、沃化銀、臭化銀を存在させ塩化銀との結晶格子の大きさの違いから核に歪みを生じさせる方法が多く報告されている。しかし、いずれの方法も、異型粒子を含む非平板粒子が形成してしまい平板粒子比率の高い乳剤を得ることは困難であった。また、異方成長を促す結晶欠陥が表面の構造によるものであり、表面が溶解してしまうと平板粒子成長が停止してしまうことも平板比率の低下につながると考えられるが、これらを改善した方法は報告されていない。
【0008】
一方、特公昭59−43727号、特開平6−67326号には、結晶成長中に限外濾過装置を用いて連続的に乳剤を濃縮する技術が開示されているが、反応容器中の総液量を一定に維持しながら連続的に結晶成長を行い、乳剤製造の生産性向上を目的とした沃臭化銀粒子の製造に関するものであり、塩化銀(100)平板粒子の成長に関するものではない。
【0009】
また、特開平9−15773号には平板状種粒子形成後に通常の脱塩操作をおこない、その後に粒子成長反応を再開する方法が示されているが、この方法では成長中の溶解度を下げることにはつながらず、前述した塩化銀(100)平板粒子成長の問題を解消する手段とはならない。さらに、塩化銀(100)平板粒子は非常にかぶりやすいという問題点があり、その改善手段を示したものはなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高感度で迅速処理性に優れたハロゲン化銀乳剤とその製造方法、並びに該ハロゲン化銀乳剤を用いたハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
【0012】
(1)ハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が総銀量の50mol%以上であり、(100)面を主平面に持ち、アスペクト比が2以上である平板状粒子が全投影面積の50%以上であるハロゲン化銀乳剤におけるa)核粒子形成過程、b)核粒子とは組成の異なるハロゲンの添加による異方成長欠陥形成過程、c)平板粒子成長のための銀、ハロゲンの添加過程を経る製造過程において、c)過程あるいはc)過程を含む前の過程でその過程が少なくとも終了するまで該ハロゲン化銀乳剤から可溶性塩を停止せずに除去することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方法。
【0013】
(2)前記可溶性塩を除去する過程が、前記b)過程終了以降であることを特徴とする前記(1)に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
【0014】
(3)前記可溶性塩を除去する過程が、限外濾過であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
【0015】
(4)前記(1)〜(3)の何れか1項に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法によって製造されたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【0016】
(5)少なくとも1層が前記(4)のハロゲン化銀乳剤を含むことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。立方体粒子に異方成長性を持たせ、(100)平板状粒子を成長させる形成過程に於いて、核形成時あるいは核形成直後に異種ハロゲンを存在させ塩化銀との結晶格子の大きさの違いから核に歪みを生じさせることにより平板を形成する方法が多く報告されている。しかし、異種ハロゲンが平板粒子の成長過程時まで溶液中に残存すると不要な歪み、転位が形成されてしまい、その結果目的の平板粒子に成長しないという問題が生じる。
【0018】
そのため、立方体核粒子に異方成長性の欠陥が導入された後は、過剰な異種ハロゲンイオンは除去されることが望ましい。さらに、核形成時に添加される添加剤等も除去されることが好ましい。そこで異種ハロゲンを導入後粒子の成長を止めて脱塩操作を行った後に成長を再開する特開平9−15773号に記載の方法を実施したが、好ましい平板比率のハロゲン化銀粒子を得ることはできなかった。(100)平板粒子の平板粒子比率が低くなってしまう原因として、(100)平板粒子の異方成長性は表面構造のステップによるため、系内の溶解度が高くなるとその表面構造が溶解してしまい、平板粒子の成長が停止してしまうためと考えられ、平板粒子成長中はできる限り低溶解度下で行う必要がある。
【0019】
特に塩化銀粒子の場合、他のハロゲン化銀、臭化銀、沃化銀、沃臭化銀より溶解度が低いため、表面溶解の可能性は高い。ところが本発明を実施したところ、いずれの公知の方法より効率よく高平板比率の(100)平板粒子乳剤を得ることができ、高いアスペクト比をもつ粒子を得ることができたことは予想外であった。この効果について以下のように考える。平板粒子成長のための銀、ハロゲンの添加過程では成長に必要な銀イオン、ハロゲンイオンとともに不要な複塩が反応容器内に添加されてしまう。これら無関係イオンの存在により系内のイオン強度が上がり、溶解度が高くなると予想される。低過飽和度下での塩化銀(100)平板粒子の製造方法として微細なハロゲン化銀微粒子を添加する方法が特開平7−225441号、同8−122953号に示されている。しかし、複塩の影響についての記載はなく、微粒子乳剤を脱塩する記載もないため、該公報記載の様に微粒子を形成後連続的に粒子成長を行う反応溶液内に添加する場合、上記複塩も同時に反応溶液内に添加されることになる。
【0020】
また、オストワルド熟成の性質から添加される微粒子はできるだけ小さい方がよく、微粒子乳剤を脱塩してから添加すると脱塩中に粗大化してしまう可能性が塩化銀は特に高くなってしまう。
【0021】
ところが本発明は、これらの供給と同時に塩除去操作を行うため、溶液中の不要な異種ハロゲン、添加剤が除去されるだけでなく、前記複塩も除去され、系内の過飽和度の低下につながるのではないかと考えた。この様に本発明は特に塩化銀(100)平板の製造に非常に有効な手段である。更に驚くべきことに塩化銀(100)平板粒子で課題であったカブリが、本発明で製造した塩化銀(100)平板粒子を使用した写真感光材料では改善されることがわかった。従来の技術では見られない効果であった。
【0022】
従って本発明はより高アスペクト比平板の比率の高いハロゲン化銀乳剤の製造を達成することができ、更に高感度でカブリの低いハロゲン化銀写真感光材料を得ることができる。
【0023】
〈全投影面積の50%以上が塩化銀含有率が総銀量の50mol%以上であり(100)面を主平面に持ち、アスペクト比が2以上である平板状粒子であるハロゲン化銀粒子〉
ここでいうアスペクト比とは、平板状粒子の投影面積と同一の面積を有する円の直径と2つの平行平面間距離の比を表す。本発明においてアスペクト比は2以上であり、3以上25未満であることが好ましく、4以上20未満であることが特に好ましい。
【0024】
本発明の平板状粒子は、厚み(主平面間の距離)が0.3μm以下であることが好ましい。また、平板状粒子の分布は、しばしば使用される変動係数(投影面積を円近似した場合の円の直径の分布の標準偏差Sを平均直径Dで割った値S/Dの100倍)が30%以下が好ましい。
【0025】
本発明に係わる平板状ハロゲン化銀粒子は、平行な主平面が(100)面であることが好ましい。ここでいう主平面は実質的に直方体乳剤粒子を形成する結晶表面のうち、面積が最も大きな平行する一組の面である。主平面の平均粒径は、例えば該粒子を電子顕微鏡で1〜5万倍に拡大して撮影し、そのプリント上の粒子の投影時の面積を実測することによって得られる(測定粒子個数は無差別に1000個以上あるものとする。)。また、粒子厚みも同様に電子顕微鏡写真を実測することによって得られる。
【0026】
主平面が(100)面であることは電子回折法やX線回折法により調べることができる。また、電子顕微鏡写真の観察では、(100)主平面を有する粒子は、その主平面が直交方形(正方形もしくは長方形)面であることから調べることができる。
【0027】
平板状ハロゲン化銀粒子の組成としてAgCl、AgClBr、AgClI、AgClBrI、等任意に用いることができるが、AgClが90モル%以上の高塩化銀粒子であることが好ましい。更に好ましくはAgCl95モル%以上、AgI1モル%以下のAgCl、AgClBr、AgClI又はAgClBrIである。迅速処理性、処理安定性からは、AgCl97モル%以上含有するハロゲン化銀乳剤がより好ましく、AgCl98モル%以上、AgI1モル%以下のAgCl、AgClBr、AgClI又はAgClBrIが特に好ましい。
【0028】
平板状粒子は、特定表面部位に組成の異なるハロゲン化銀をエピタキシャル成長させたり、シェリングさせたりすることができる。また感光核を制御するために、平板状粒子の表面或いは内部に転位線を持たせてもよい。
【0029】
〈ハロゲン化銀粒子核〉
本発明の粒子の核は実質的にヨードを含まず、更に双晶、転位線を持たない正常晶であることが好ましい。核粒子の粒径は全核粒子数の70%以上が0.2μm以下であることが好ましく、更には全核粒子数の70%以上が0.1μm以下0.005μm以上の範囲内にあることが最も好ましい。核粒径の変動係数は30%以下であることが好ましく、15%以下であることが最も好ましい。
【0030】
〈異種ハロゲン〉
本発明の製造方法で用いる異種ハロゲンイオンはホスト粒子よりも難溶性のハロゲン化銀を形成するハロゲンイオンであることが好ましい。ここで、ハロゲン化銀の溶解度の例を挙げると、AgCl>AgBr>AgIとなる。組成が二種以上の場合、単独で溶解度の低い組成を含有する程溶解度が下がる。
【0031】
例えばAgClBrではBr含有率が増すほど、Iを含む場合はI含有率が増すほど難溶性となる。
【0032】
〈製造方法〉
異種ハロゲン混合過程に引き続いて物理熟成を行う。熟成温度は、50〜90℃が好ましく、60〜80℃が特に好ましい。熟成時間はpCl等の条件によっても熟成の進行速度が異なるため実験的に決めることが好ましい。
【0033】
平板状粒子の形成時に粒子の成長を制御するためにハロゲン化銀溶剤として例えばアンモニア、チオエーテル化合物、チオン化合物などを使用することができる。また、物理熟成時や化学熟成時に亜鉛、鉛、タリウム、イリジウム、ロジウム等の金属塩等を共存させることができる。
【0034】
粒子成長過程は同時混合法が用いられる事が好ましいが、同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成する液相中のpAgを一定に保つ方法、即ち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。この方法によると結晶形が規則的で粒子サイズが均一に近いハロゲン化銀乳剤が得られる。
【0035】
本発明の平板状ハロゲン化銀粒子は、その粒子形成時の一部又は全工程が微細なハロゲン化銀粒子を供給することによる粒子形成工程であってもよい。微粒子の粒子サイズはハライドイオンの供給速度を支持するため、その好ましい粒子サイズはホストのハロゲン化銀粒子のサイズやハロゲン組成によって変わるが、平均球相当直径が0.3μm以下のものが好ましく用いられる。より好ましくは0.1μm以下である。微粒子がホスト粒子上に再結晶化によって積層するためには、この微粒子サイズはホスト粒子の球相当直径より小さいことが望ましく、更に好ましくは、この球相当直径の1/5以下である。
【0036】
本発明で言う成長中の塩除去過程は電気透析方法、限外濾過方法などが好ましく用いられるが、特に限外濾過方法がよい。
【0037】
本発明で使用される限外濾過装置は、公知の種々の形態ものを使用することが可能で、公知の種々の形態で反応容器に具備することが可能である。本発明ではその中でも、中空子膜を内部に有する限外濾過装置を用いるとが好ましく、更に該装置を反応容器に接続された外部循環経路中に具備する形態が最も好ましい。
【0038】
本発明で好ましく使用される反応容器、及び限外濾過装置の上記以外の点については、上記特公昭59−43727号等を参考にすることができる。次に、限外濾過装置が反応容器に接続された外部循環経路中に具備する形態で結晶成長過程に並行して連続的に塩除去を行う場合の具体的な一例としての方法を、概念図(図1)を用いて述べる。図1において、反応容器1には、最初に分散媒と共に前記粒子核形成過程または熟成過程を経たハロゲン化銀粒子を含むハロゲン化銀乳剤2を含有している。該ハロゲン化銀乳剤を撹拌するための機構3は、回転可能な軸に分散翼が付設されたものとして図示されているが、この機構を任意の常用の形状とすることが可能である。撹拌機構を運転しながら、第1のジェット4を通して結晶成長用の銀塩溶液を反応容器に、そしてこれと同時に第2のジェット5を通して結晶成長用のハロゲン化物塩溶液を反応容器に注加する。注加ノズル位置は任意の位置に設置することが可能であるが、反応容器下部から液中添加される位置に設置することが好ましい。反応容器内に含まれる物質の容量は、前記分散媒を含むハロゲン化銀乳剤の一部を外部循環経路6(限外濾過装置7に至る)により図示されるようにして取り出すことによって調節することができる。この時、反応条件により適宜分散媒を加えても構わない。限外濾過装置は、外部排出経路8により図示されるようにして分散媒の一部を分離することを通じて、受け取ったハロゲン化銀乳剤の可溶性塩を除去し、その間、保留物と呼ばれる残留ハロゲン化銀乳剤の内部においてハロゲン化銀粒子が保持される。このようにして可溶性塩を除去されたハロゲン化銀乳剤、即ち、保留物を外部循環経路9により図示されるようにして反応容器に戻すことによって達成される。
【0039】
本発明で言う成長中の塩除去過程は、前記c)平板粒子成長のための銀、ハロゲンの添加過程を含むハロゲン化銀乳剤の形成中に行われていればよく、特にb)核粒子とは組成の異なるハロゲンの添加による異方成長欠陥形成過程終了以降に実施されることがよい。塩除去過程は前記c)過程終了時に終了してもよく、前記c)過程終了時以降も所望の塩濃度になるまで塩除去を続けてもよい。
【0040】
また、本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子の成長の終了後に化学増感に適するpAgイオン濃度にするために新たに可溶性塩類除去過程を行ってもよい。成長終了後の可溶性塩類除去過程はヌーデル水洗法、フロキュレーション沈降法などを用いてもよく、例えば、特公昭35−16086号に記載のスルホ基を含む芳香族炭化水素系アルデヒド樹脂を用いる方法、又は特開平2−7037号に記載の高分子凝集剤である例示G−3、G−8などを用いる脱塩法を挙げることができる。また、リサーチ・ディスクロージャー(RD)Vol.102、1972、10月号、Item 10208及びVol.131、1975、3月号、Item 13122に記載されている限外濾過法を用いて脱塩を行ってもよい。
【0041】
〈ハロゲン化銀写真感光材料〉
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の少なくとも1層の感光性ハロゲン化銀乳剤層には平板状ハロゲン化銀粒子が含まれる。該乳剤層の全ハロゲン化銀粒子の投影面積の総和の50%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子である。特に平板状粒子の割合が70%、更に80%へと増大するほど好ましい結果が得られる。
【0042】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料は、平板状以外のハロゲン化銀粒子を併用することが出来る。好ましい一つの例は、(100)面を結晶表面として有する立方体である。また、米国特許4,183,756号、同4,225,666号、特開昭55−26589号、特公昭55−42737号や、ザ・ジャーナル・オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Photogr.Sci.)21、39(1973)等の文献に記載された方法等により、八面体、十四面体、十二面体等の形状を有する粒子をつくり、これを用いることもできる。更に、双晶面を有する粒子を用いてもよい。
【0043】
平板状以外のハロゲン化銀粒子の組成は特に制限はなく、好ましい範囲は前述の平板状粒子の場合と同じである。又、粒径は、特に制限はないが、迅速処理性及び、感度など、他の写真性能などを考慮すると好ましくは、0.1〜1.2μm、更に好ましくは、0.2〜1.0μmの範囲である。ここでいう粒径とは、ハロゲン化銀粒子を同体積の立方体に換算したときの立方体の一辺の長さを以て表す。
【0044】
平板状以外のハロゲン化銀粒子の粒径の分布は、好ましくは変動係数が22%以下、更に好ましくは15%以下の単分散ハロゲン化銀粒子である。
【0045】
平板状以外のハロゲン化銀乳剤の調製装置、方法としては、当業界において公知の種々の方法を用いることができる。
【0046】
平板状以外のハロゲン化銀乳剤は、酸性法、中性法、アンモニア法の何れで得られたものであってもよい。該粒子は一時に成長させたものであってもよいし、種粒子を作った後で成長させてもよい。種粒子を作る方法と成長させる方法は同じであっても、異なってもよい。
【0047】
また、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン化物塩を反応させる形式としては、順混合法、逆混合法、同時混合法、それらの組合せなど、何れでもよいが、同時混合法で得られたものが好ましい。更に同時混合法の一形式として特開昭54−48521号等に記載されているpAgコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
【0048】
また、特開昭57−92523号、同57−92524号等に記載の反応母液中に配置された添加装置から水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を供給する装置、ドイツ公開特許2,921,164号等に記載された水溶性銀塩及び水溶性ハロゲン化物塩水溶液を連続的に濃度変化して添加する装置、特公昭56−501776号等に記載の反応器外に反応母液を取り出し、限外濾過法で濃縮することによりハロゲン化銀粒子間の距離を一定に保ちながら粒子形成を行なう装置などを用いてもよい。
【0049】
更に必要で有ればチオエーテル等のハロゲン化銀溶剤を用いてもよい。また、メルカプト基を有する化合物、含窒素ヘテロ環化合物又は増感色素のような化合物をハロゲン化銀粒子の形成時、又は、粒子形成終了の後に添加して用いてもよい。
【0050】
本発明において、ハロゲン化銀粒子は平板状であるか否かを問わず、高塩化銀のAgBrCl又はAgBrClI粒子を用いる場合は、臭化銀を高濃度に含有する部分を有するハロゲン化銀粒子が特に好ましく用いられる。この場合、高濃度に臭化銀を含有する部分は、ハロゲン化銀乳剤粒子にエピタキシー接合していても、いわゆるコア・シェル乳剤であってもよいし、完全な層を形成せず単に部分的に組成の異なる領域が存在するだけであってもよい。また、組成は連続的に変化してもよいし不連続に変化してもよい。臭化銀が高濃度に存在する部分は、ハロゲン化銀粒子の表面の結晶粒子の頂点である事が特に好ましい。
【0051】
ハロゲン化銀粒子には重金属イオンを含有させるのが有利である。このような目的に用いることの出来る重金属イオンとしては、鉄、イリジウム、白金、パラジウム、ニッケル、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、コバルト等の第8〜10族金属や、カドミウム、亜鉛、水銀などの第12族遷移金属や、鉛、レニウム、モリブデン、タングステン、ガリウム、クロムの各イオンを挙げることができる。中でも鉄、イリジウム、白金、ルテニウム、ガリウム、オスミウムの金属イオンが好ましい。
【0052】
これらの金属イオンは、塩や、錯塩の形でハロゲン化銀乳剤に添加することが出来る。
【0053】
前記重金属イオンが錯体を形成する場合には、その配位子としてはシアン化物イオン、チオシアン酸イオン、シアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオン、硝酸イオン、カルボニル、アンモニア等を挙げることができる。中でも、シアン化物イオン、チオシアン酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン等が好ましい。
【0054】
ハロゲン化銀粒子に重金属イオンを含有させるためには、該重金属化合物をハロゲン化銀粒子の形成前、ハロゲン化銀粒子の形成中、ハロゲン化銀粒子の形成後の物理熟成中の各工程の任意の場所で添加すればよい。前述の条件を満たすハロゲン化銀乳剤を得るには、重金属化合物をハロゲン化物塩と一緒に溶解して粒子形成工程の全体或いは一部にわたって連続的に添加する事ができる。
【0055】
前記重金属イオンを添加するときの量はハロゲン化銀1モル当り1×10−9モル以上、1×10−2モル以下がより好ましく、特に1×10−8モル以上5×10−5モル以下が好ましい。
【0056】
本発明に係るハロゲン化銀カラー写真感光材料のハロゲン化銀乳剤層には、単一形状の粒子からなるハロゲン化銀乳剤が好ましく用いられるが、単分散のハロゲン化銀乳剤を二種以上同一層に添加してもよい。
【0057】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤は、金化合物を用いる増感法、カルコゲン増感剤を用いる増感法を組み合わせて用いることが出来る。
【0058】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に適用するカルコゲン増感剤としては、イオウ増感剤、セレン増感剤、テルル増感剤などを用いることが出来るが、イオウ増感剤が好ましい。イオウ増感剤としてはチオ硫酸塩、アリルチオカルバミドチオ尿素、アリルイソチアシアネート、シスチン、p−トルエンチオスルホン酸塩、ローダニン、無機イオウ等が挙げられる。
【0059】
本発明に係るイオウ増感剤の添加量としては、適用されるハロゲン化銀乳剤の種類や期待する効果の大きさなどにより変える事が好ましいが、ハロゲン化銀1モル当たり5×10−10〜5×10−5モルの範囲、好ましくは5×10−8〜3×10−5モルの範囲である。
【0060】
本発明に係る金増感剤としては、塩化金酸、硫化金等の他各種の金錯体として添加することができる。用いられる配位子化合物としては、ジメチルローダニン、チオシアン酸、メルカプトテトラゾール、メルカプトトリアゾール等を挙げることができる。金化合物の使用量は、ハロゲン化銀乳剤の種類、使用する化合物の種類、熟成条件などによって一様ではないが、通常はハロゲン化銀1モル当たり1×10−4モル〜1×10−8モルであることが好ましい。更に好ましくは1×10−5モル〜1×10−8モルである。
【0061】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤の化学増感法としては、還元増感法を用いて
もよい。
【0062】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤には、ハロゲン化銀写真感光材料の調製工程中に生じるカブリを防止したり、保存中の性能変動を小さくしたり、現像時に生じるカブリを防止する目的で公知のカブリ防止剤、安定剤を用いることが出来る。
【0063】
こうした目的に用いることのできる好ましい化合物の例として、特開平2−146036号7ページ下欄に記載された一般式(II)で表される化合物を挙げることができ、更に好ましい具体的な化合物としては、同公報の8ページに記載の(IIa−1)〜(IIa−8)、(IIb−1)〜(IIb−7)の化合物や、1−(3−メトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール、1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール等の化合物を挙げることができる。これらの化合物は、その目的に応じて、ハロゲン化銀乳剤粒子の調製工程、化学増感工程、化学増感工程の終了時、塗布液調製工程などの工程で添加される。これらの化合物の存在下に化学増感を行う場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−5モル〜5×10−4モル程度の量で好ましく用いられる。化学増感終了時に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−6モル〜1×10−2モル程度の量が好ましく、1×10−5モル〜5×10−3モルがより好ましい。塗布液調製工程において、ハロゲン化銀乳剤層に添加する場合には、ハロゲン化銀1モル当り1×10−6モル〜1×10−1モル程度の量が好ましく、1×10−5モル〜1×10−2モルがより好ましい。またハロゲン化銀乳剤層以外の層に添加する場合には、塗布被膜中の量が、1m2当り1×10−9モル〜1×10−3モル程度の量が好ましい。
【0064】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料には、イラジエーション防止やハレーション防止の目的で種々の波長域に吸収を有する染料を用いることができる。この目的で、公知の化合物を何れも用いることが出来るが、特に、可視域に吸収を有する染料としては、特開平3−251840号308ページに記載のAI−1〜11の染料及び特開平6−3770号に記載の染料が好ましく用いられ、赤外線吸収染料としては、特開平1−280750号2ページ左下欄に記載の一般式(I)、(II)、(III)で表される化合物が好ましい分光特性を有し、ハロゲン化銀写真乳剤の写真特性への影響もなく、また残色による汚染もなく好ましい。好ましい化合物の具体例として、同公報3ページ左下欄〜5ページ左下欄に挙げられた例示化合物(1)〜(45)を挙げることができる。
【0065】
これらの染料を添加する量として、鮮鋭性を改良する目的には感光材料の未処理試料の680nmにおける分光反射濃度が0.7以上にする量が好ましく更には0.8以上にする事がより好ましい。
【0066】
本発明に係る反射支持体を用いたハロゲン化銀写真感光材料中に、蛍光増白剤を添加する事が白地性を改良でき好ましい。好ましく用いられる化合物としては、特開平2−232652号に記載の一般式IIで示される化合物が挙げられる。
【0067】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料をカラー写真感光材料として用いる場合には、イエローカプラー、マゼンタカプラー、シアンカプラーに組み合わせて400〜900nmの波長域の特定領域に分光増感されたハロゲン化銀乳剤を含む層を有する。該ハロゲン化銀乳剤は一種又は、二種以上の増感色素を組み合わせて含有する。
【0068】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤に用いる分光増感色素としては、公知の化合物を何れも用いることができるが、青感光性増感色素としては、特開平3−251840号28ページに記載のBS−1〜8を単独で又は組み合わせて好ましく用いることができる。緑感光性増感色素としては、同公報28ページに記載のGS−1〜5が好ましく用いられる。赤感光性増感色素としては同公報29ページに記載のRS−1〜8が好ましく用いられる。また、半導体レーザーを用いるなどして赤外光により画像露光を行う場合には、赤外感光性増感色素を用いる必要があるが、赤外感光性増感色素としては、特開平4−285950号6〜8ページに記載のIRS−1〜11の色素が好ましく用いられる。また、これらの赤外、赤、緑、青感光性増感色素に特開平4−285950号8〜9ページに記載の強色増感剤SS−1〜SS−9や特開平5−66515号15〜17ページに記載の化合物S−1〜S−17を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0069】
これらの増感色素の添加時期としては、ハロゲン化銀粒子形成から化学増感終了までの任意の時期でよい。
【0070】
増感色素の添加方法としては、メタノール、エタノール、フッ素化アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶媒や水に溶解して溶液として添加してもよいし、固体分散物として添加してもよい。
【0071】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料に用いられるカプラーとしては、発色現像主薬の酸化体とカップリング反応して340nmより長波長域に分光吸収極大波長を有するカップリング生成物を形成し得るいかなる化合物をも用いることが出来るが、特に代表的な物としては、波長域350〜500nmに分光吸収極大波長を有するイエロー色素形成カプラー、波長域500〜600nmに分光吸収極大波長を有するマゼンタ色素形成カプラー、波長域600〜750nmに分光吸収極大波長を有するシアン色素形成カプラーとして知られているものが代表的である。
【0072】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料に用いられるカプラーやその他の有機化合物を添加するのに水中油滴型乳化分散法を用いる場合には、通常、沸点150℃以上の水不溶性高沸点有機溶媒に、必要に応じて低沸点及び/又は水溶性有機溶媒を併用して溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて乳化分散する。分散手段としては、攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いることができる。分散後、又は、分散と同時に低沸点有機溶媒を除去する工程を入れてもよい。カプラーを溶解して分散するために用いることの出来る高沸点有機溶媒としては、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルフタレート等のリン酸エステル類、が好ましく用いられる。また高沸点有機溶媒の誘電率としては3.5〜7.0である事が好ましい。また二種以上の高沸点有機溶媒を併用することもできる。
【0073】
また、高沸点有機溶媒を用いる方法に代えて、又は高沸点有機溶媒と併用して、水不溶性かつ有機溶媒可溶性のポリマー化合物を、必要に応じて低沸点及び/又は水溶性有機溶媒に溶解し、ゼラチン水溶液などの親水性バインダー中に界面活性剤を用いて種々の分散手段により乳化分散する方法をとることもできる。この時用いられる水不溶性で有機溶媒可溶性のポリマーとしては、ポリ(N−t−ブチルアクリルアミド)等を挙げることができる。
【0074】
写真用添加剤の分散や塗布時の表面張力調整のため用いられる界面活性剤として好ましい化合物としては、1分子中に炭素数8〜30の疎水性基とスルホン酸基又はその塩を含有するものが挙げられる。具体的には特開昭64−26854号に記載のA−1〜A−11が挙げられる。またアルキル基に弗素原子を置換した界面活性剤も好ましく用いられる。これらの分散液は通常ハロゲン化銀乳剤を含有する塗布液に添加されるが、分散後塗布液に添加されるまでの時間、及び塗布液に添加後塗布までの時間は短いほうがよく各々10時間以内が好ましく、3時間以内、20分以内がより好ましい。
【0075】
上記各カプラーには、形成された色素画像の光、熱、湿度等による褪色を防止するため褪色防止剤を併用することが好ましい。特に好ましい化合物としては、特開平2−66541号3ページに記載の一般式I及びIIで示されるフェニルエーテル系化合物、特開平3−174150号に記載の一般式IIIBで示されるフェノール系化合物、特開昭64−90445号に記載の一般式Aで示されるアミン系化合物、特開昭62−182741号に記載の一般式XII、XIII、XIV、XVで示される金属錯体が特にマゼンタ色素用として好ましい。また特開平1−196049号に記載の一般式I′で示される化合物及び特開平5−11417号に記載の一般式IIで示される化合物が特にイエロー、シアン色素用として好ましい。
【0076】
発色色素の吸収波長をシフトさせる目的で、特開平4−114154号9ページ左下欄に記載の化合物(d−11)、同号公報10ページ左下欄に記載の化合物(A′−1)等の化合物を用いることができる。また、これ以外にも米国特許4,774,187号に記載の蛍光色素放出化合物を用いることも出来る。
【0077】
本発明に係るハロゲン化銀感光材料には、現像主薬酸化体と反応する化合物を感光層と感光層の間の層に添加して色濁りを防止したりまたハロゲン化銀乳剤層に添加してカブリ等を改良する事が好ましい。このための化合物としてはハイドロキノン誘導体が好ましく、更に好ましくは2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノンのようなジアルキルハイドロキノンである。特に好ましい化合物は特開平4−133056号に記載の一般式IIで示される化合物であり、同公報13〜14ページに記載の化合物II−1〜II−14及び17ページに記載の化合物1が挙げられる。
【0078】
本発明に係る感光材料中には紫外線吸収剤を添加してスタチックカブリを防止したり色素画像の耐光性を改良する事が好ましい。好ましい紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール類が挙げられ、特に好ましい化合物としては特開平1−250944号に記載の一般式III−3で示される化合物、特開昭64−66646号に記載の一般式IIIで示される化合物、特開昭63−187240号に記載のUV−1L〜UV−27L、特開平4−1633号に記載の一般式Iで示される化合物、特開平5−165144号に記載の一般式(I)、(II)で示される化合物が挙げられる。
【0079】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料には、バインダーとしてゼラチンを用いることが有利であるが、必要に応じて他のゼラチン、ゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子のグラフトポリマー、ゼラチン以外のタンパク質、糖誘導体、セルロース誘導体、単一或いは共重合体のごとき合成親水性高分子物質等の親水性コロイドも用いることができる。
【0080】
これらバインダーの硬膜剤としてはビニルスルホン型硬膜剤やクロロトリアジン型硬膜剤を単独又は併用して使用する事が好ましい。特開昭61−249054号、同61−245153号に記載の化合物を使用する事が好ましい。また写真性能や画像保存性に悪影響するカビや細菌の繁殖を防ぐためコロイド層中に特開平3−157646号に記載のような防腐剤及び抗カビ剤を添加する事が好ましい。また感光材料又は処理後の試料の表面の物性を改良するため保護層に特開平6−118543号や特開平2−73250号に記載の滑り剤やマット剤を添加する事が好ましい。
【0081】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料に用いる反射支持体としては、どのような材質を用いてもよく、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートで被覆した紙、天然パルプや合成パルプからなる紙支持体、塩化ビニルシート、白色顔料を含有してもよいポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート支持体、バライタ紙などを用いることができる。なかでも、原紙の両面に耐水性樹脂被覆層を有する支持体が好ましい。耐水性樹脂としてはポリエチレンやポリエチレンテレフタレート又はそれらのコポリマーが好ましい。
【0082】
反射支持体に用いられる白色顔料としては、無機及び/又は有機の白色顔料を用いることができ、好ましくは無機の白色顔料が用いられる。例えば硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等があげられる。白色顔料は好ましくは硫酸バリウム、酸化チタンである。
【0083】
反射支持体の表面の耐水性樹脂層中に含有される白色顔料の量は、鮮鋭性を改良するうえで13重量%以上が好ましく、更には15重量%が好ましい。
【0084】
本発明に係る紙支持体の耐水性樹脂層中の白色顔料の分散度は、特開平2−28640号に記載の方法で測定することができる。この方法で測定したときに、白色顔料の分散度が前記公報に記載の変動係数として0.20以下であることが好ましく、0.15以下であることがより好ましい。
【0085】
また反射支持体の中心面平均粗さ(SRa)の値が0.15μm以下、更には0.12μm以下であるほうが光沢性がよいという効果が得られより好ましい。
【0086】
また反射支持体の白色顔料含有耐水性樹脂中や塗布された親水性コロイド層中に処理後の白地部の分光反射濃度バランスを調整し白色性を改良するため群青、油溶性染料等の微量の青味付剤や赤味付剤を添加する事が好ましい。
【0087】
本発明に係るハロゲン化銀写真感光材料は、必要に応じて反射支持体表面にコロナ放電、紫外線照射、火炎処理等を施した後、直接又は下塗層(支持体表面の接着性、帯電防止性、寸度安定性、耐摩擦性、硬さ、ハレーション防止性、摩擦特性及び/又はその他の特性を向上するための1又は2以上の下塗層)を介して塗布されていてもよい。
【0088】
本発明において、透明支持体としては各種のものが使用できる。使用できる支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム等を挙げることができる。
【0089】
ポリエステル支持体としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸とエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルキレングリコール類との縮合ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ジナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等、或いはこれらの共重合体が挙げられる。
【0090】
特に、現像処理後の巻きぐせ回復性から特開平1−244446号、同1−291248号、同1−298350号、同2−89045号、同2−93641号、同2−181749号、同2−214852号及び特開平2−291135号等に示されるような、含水率の高いポリエステルを用いることが好ましい。
【0091】
これらのポリエステルは極性基、その他の置換基を有していてもよい。本発明において、支持体としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0092】
上記ポリエステルは、フィルム支持体の機械的強度、寸法安定性などを満足させるために面積比で4〜16倍の範囲で延伸を行うことが好ましい。又、製膜後に特開昭51−16358号に記載されているような熱処理(アニール処理)を行うことが好ましい。
【0093】
透明支持体にはマット剤、帯電防止剤、滑剤、界面活性剤、安定剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、導電性物質、粘着性付与剤、軟化剤、流動性付与剤、増粘剤、酸化防止剤等を添加することができる。透明支持体は、最小濃度部の色味のニュートラル化、写真構成層を塗設したフィルムに光がエッジから入射した時に起こるライトパイピング現象(ふちかぶり)の防止、ハレーション防止等の目的で染料を含有させることができる。
【0094】
染料の種類は特に限定されないが、透明支持体としてポリエステルフィルムを用いる場合、製膜工程上、耐熱性に優れたものが好ましく、例えば、アンスラキノン系化学染料等が挙げられる。また、色調としては、ライトパイピング防止を目的とする場合、一般の感光材料に見られるようにグレー染色が好ましい。染料は1種類もしくは2種類以上の染料を混合して用いてもよい。三菱化成株式会社製Diaresin、Bayer社製 MACROLEX等の染料を単独又は適宜混合して用いることで目標を達成することが可能である。
【0095】
ハロゲン化銀乳剤を用いた写真感光材料の塗布に際して、塗布性を向上させるために増粘剤を用いてもよい。塗布法としては2種以上の層を同時に塗布することの出来るエクストルージョンコーティング及びカーテンコーティングが特に有用である。
【0096】
本発明において用いられる芳香族一級アミン現像主薬としては、公知の化合物を用いることができる。これらの化合物の例として下記の化合物を挙げることができる。
【0097】
CD−1) N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン
CD−2) 2−アミノ−5−ジエチルアミノトルエン
CD−3) 2−アミノ−5−(N−エチル−N−ラウリルアミノ)トルエン
CD−4) 4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−5) 2−メチル−4−(N−エチル−N−(β−ヒドロキシエチル)アミノ)アニリン
CD−6) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−(メタンスルホンアミド)エチル)−アニリン
CD−7) N−(2ーアミノ−5−ジエチルアミノフェニルエチル)メタンスルホンアミド
CD−8) N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン
CD−9) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−メトキシエチルアニリン
CD−10) 4−アミノ−3−メチル−N−エチル−N−(β−エトキシエチル)アニリン
CD−11) 4ーアミノ−3−メチル−N−エチル−N−(γ−ヒドロキシプロピル)アニリン
本発明においては、上記は色現像液を任意のpH域で使用できるが、迅速処理の観点からpH9.5〜13.0であることが好ましく、より好ましくはpH9.8〜12.0の範囲で用いられる。
【0098】
本発明に係る発色現像の処理温度は、35℃以上、70℃以下が好ましい。温度が高いほど短時間の処理が可能であり好ましいが、処理液の安定性からはあまり高くない方が好ましく、37℃以上60℃以下で処理することが好ましい。
【0099】
発色現像時間は、従来一般には3分30秒程度で行われているが、本発明では40秒以内が好ましく、更に25秒以内の範囲で行うことが更に好ましい。
【0100】
発色現像液には、前記の発色現像主薬に加えて、既知の現像液成分化合物を添加することが出来る。通常、pH緩衝作用を有するアルカリ剤、塩化物イオン、ベンゾトリアゾール類等の現像抑制剤、保恒剤、キレート剤などが用いられる。本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、発色現像後、漂白処理及び定着処理を施される。漂白処理は定着処理と同時に行なってもよい。定着処理の後は、通常は水洗処理が行なわれる。また、水洗処理の代替として、安定化処理を行なってもよい。
【0101】
本発明のハロゲン化銀写真感光材料の現像処理に用いる現像処理装置としては、処理槽に配置されたローラーに感光材料をはさんで搬送するローラートランスポートタイプであっても、ベルトに感光材料を固定して搬送するエンドレスベルト方式であってもよいが、処理槽をスリット状に形成して、この処理槽に処理液を供給するとともに感光材料を搬送する方式や処理液を噴霧状にするスプレー方式、処理液を含浸させた担体との接触によるウエッブ方式、粘性処理液による方式なども用いることができる。大量に処理する場合には、自動現像機を用いてランニング処理されるのが通常だが、この際補充液の補充量は少ない程好ましく、環境適性等より最も好ましい処理形態は、補充方法として錠剤の形態で処理剤を添加することであり、公開技報94−16935号に記載の方法が最も好ましい。
【0102】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されない。
【0103】
実施例1
〈平板状粒子乳剤Em−aの調製〉
以下の溶液を調製した。
【0104】
溶液G1
オセインゼラチン 31.45g
NaCl 1.26g
蒸留水で1534.5mlとする
溶液Ag1
1.18N 硝酸銀水溶液
溶液X1
1.21N NaCl水溶液
溶液X2
0.06N KI水溶液
溶液Ag2
2.94N 硝酸銀水溶液
溶液X3
3.01N NaCl水溶液。
【0105】
反応容器に溶液G1の全量をいれ40℃、pH4.3に調整した。十分に攪拌しながら溶液Ag1を17.98mlと同量の溶液X1を同時に15秒かけて添加した。3分間攪拌した後、65mlの溶液X2を186ml/分で反応容器内に添加した。9分間攪拌した後、溶液Ag1を53.95mlと同量の溶液X1を同時に45秒かけて添加した。9.6%過酸化水素水12.6ml添加した後pH6.5に調整して30分間攪拌した。pClを1.75に調整し、70℃まで昇温して20分間熟成し、溶液Ag2を211.22mlと同量の溶液X3を同時に20分かけて添加した。更に30分熟成した後に温度を45℃に下げ、限外濾過装置を用いて脱塩を行い、ハロゲン化銀粒子乳剤Em−aを得た。
【0106】
〈平板状粒子乳剤Em−bの調製〉
Em−aの調製において、溶液Ag2の添加開始から5分後に添加を止め、反応容器内の溶液を限外濾過によって脱塩した。塩濃度が1×10−2mol/lになったところで限外濾過脱塩を停止し、添加の間は脱塩せずに、再び添加を再開してハロゲン化銀粒子乳剤Em−bを得た。
【0107】
〈平板状粒子乳剤Em−cの調製〉
Em−aの調製において、溶液X2を186ml/分で反応容器内に添加し、9分間攪拌した後、溶液Ag1の添加と同時に反応容器内の溶液の限外濾過による脱塩を開始し、溶液Ag2添加直前に脱塩を停止し、溶液Ag2、X3は反応容器内を脱塩せずに添加を終了することでハロゲン化銀粒子乳剤Em−cを得た。
【0108】
〈平板状粒子乳剤Em−dの調製〉
反応容器に溶液G1の全量をいれ40℃、pH4.3に調整し、反応容器内溶液を限外濾過脱塩しながら溶液Ag1を17.98mlと同量の溶液X1を同時に15秒かけて添加した。3分間攪拌した後、65mlの溶液X2を186ml/分で反応容器内に添加した。9分間攪拌した後、溶液Ag1を53.95mlと同量の溶液X1を同時に45秒かけて添加した。9.6%過酸化水素水12.6ml添加した後pH6.5に調整して30分間攪拌した。pClを1.75に調整し、70℃まで昇温して20分間熟成し、溶液Ag2を211.22mlと同量の溶液X3を同時に20分かけて添加した。更に30分間の熟成終了まで限外濾過脱塩を続けた。その後温度を45℃に下げ、限外濾過装置を用いて脱塩を行い、ハロゲン化銀粒子乳剤Em−dを得た。
【0109】
〈平板状粒子乳剤Em−eの調製〉
Em−aの調製において、溶液X2を186ml/分で反応容器内に添加し、9分間攪拌した後、溶液Ag1の添加と同時に反応容器内の溶液の限外濾過による脱塩を開始し、溶液Ag2添加終了まで脱塩を続けることでハロゲン化銀粒子乳剤Em−eを得た。
【0110】
〈平板状粒子乳剤Em−fの調製〉
Em−aの調製において、溶液Ag2の添加開始と同時に反応容器内の溶液を限外濾過によって脱塩し、添加終了とともに脱塩も停止した以外は同様にしてハロゲン化銀粒子乳剤Em−fを得た。
【0111】
〈平板状粒子乳剤Em−gの調製〉
Em−fの調製において、溶液Ag2の添加開始と同時に反応容器内の溶液を電気透析によって脱塩した以外は同様にしてハロゲン化銀粒子乳剤Em−gを得た。
【0112】
得られた各ハロゲン化銀粒子はすべて(100)を主平面にもつ粒子であった。それぞれの測定結果を表1に示す。表1において、
R1:全投影面積に占めるアスペクト比2以上の平板状粒子の比
R2:平均厚み[μm]
R3:平均アスペクト比
R4:アスペクト比3以上、厚み0.3μm以下の平板状ハロゲン化銀粒子の粒径分布(粒径分布は、粒径分布の標準偏差を平均粒径で除した数に100を乗じた数値で示す。)
【0113】
【表1】
【0114】
表1から明らかなように、本発明の方法では、より平板比率の高い、高アスペクト(100)平板を得ることができることがわかる。
【0115】
実施例2
(青感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−B1)の調製)
40℃に保温した2%ゼラチン水溶液1リットル中に下記(A1液)及び(B1液)をpAg=7.3、pH=3.0に制御しつつ同時添加し、更に下記(C1液)及び(D1液)をpAg=8.0、pH=5.5に制御しつつ同時添加した。この時、pAgの制御は特開昭59−45437号に記載の方法により行い、pHの制御は硫酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて行った。
【0116】
(A1液)
塩化ナトリウム 3.42g
臭化カリウム 0.03g
水を加えて 200ml
(B1液)
硝酸銀 10g
水を加えて 200ml
(C1液)
塩化ナトリウム 102.7g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム 4×10−8モル
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 2×10−5モル
臭化カリウム 1.0g
水を加えて 600ml
(D1液)
硝酸銀 300g
水を加えて 600ml
添加終了後、花王アトラス社製デモールNの5%水溶液と硫酸マグネシウムの20%水溶液を用いて脱塩を行った後、ゼラチン水溶液と混合して平均粒径0.71μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−1Aを得た。次にEMP−1Aの調製において(A1液)と(B1液)の添加時間及び(C1液)と(D1液)の添加時間を変更した以外は同様にして平均粒径0.64μm、粒径分布の変動係数0.07、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−1Bを得た。
【0117】
上記EMP−1Aに対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行った。またEMP−1Bに対しても同様に最適に化学増感した後、増感されたEMP−1AとEMP−1Bを銀量で1:1の割合で混合し青感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−B1)を得た。
【0118】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤 STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素BS−2 1×10−4モル/モルAgX
STAB−1:1−(3−アセトアミドフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
STAB−2:1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール
STAB−3:1−(4−エトキシフェニル)−5−メルカプトテトラゾール
(青感光性ハロゲン化銀平板乳剤(Em−aB〜gB)の調製)
上記Em−a〜gに対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行い、青感光性ハロゲン化銀平板乳剤Em−aB〜gBを得た。
【0119】
チオ硫酸ナトリウム 0.8mg/モルAgX
塩化金酸 0.5mg/モルAgX
安定剤 STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
増感色素BS−1 4×10−4モル/モルAgX
増感色素BS−2 1×10−4モル/モルAgX
(緑感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−G1)の調製)
ハロゲン化銀乳剤EMP−1Aの調製において、(A1液)と(B1液)の添加時間及び(C1液)と(D1液)の添加時間を変更する以外は同様にして平均粒径0.40μm、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−11A及び、平均粒径0.45μm、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−11Bを得た。
【0120】
上記EMP−11Aに対し、下記化合物を用い55℃にて最適に化学増感を行った。またEMP−11Bに対しても同様に最適に化学増感した後、増感されたEMP−11AとEMP−11Bを銀量で1:1の割合で混合し、緑感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−G1)を得た。
【0121】
チオ硫酸ナトリウム 1.5mg/モルAgX
塩化金酸 1.0mg/モルAgX
増感色素 GS−1 4×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
(赤感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−R1)の調製)
前述のハロゲン化銀乳剤EMP−1Aの調製において、(A1液)と(B1液)の添加時間及び(C1液)と(D1液)の添加時間を変更する以外は同様にして平均粒径0.43μm、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−21A及び、平均粒径0.40μm、塩化銀含有率99.5モル%の単分散立方体乳剤EMP−21Bを得た。
【0122】
上記EMP−21Aに対し、下記化合物を用い60℃にて最適に化学増感を行った。またEMP−21Bに対しても同様に最適に化学増感した後、増感されたEMP−21AとEMP−21Bを銀量で1:1の割合で混合し、赤感光性ハロゲン化銀乳剤(Em−R1)を得た。
【0123】
チオ硫酸ナトリウム 1.8mg/モルAgX
塩化金酸 2.0mg/モルAgX
増感色素 RS−1 1×10−4モル/モルAgX
増感色素 RS−2 1×10−4モル/モルAgX
SS−1 2.0×10−3モル/モルAgX
安定剤 STAB−1 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−2 3×10−4モル/モルAgX
安定剤 STAB−3 3×10−4モル/モルAgX
【0124】
【化1】
【0125】
(感光材料(101)の作製)
坪量180g/m2の紙パルプの両面に高密度ポリエチレンをラミネートし、紙支持体を作製した。但し、乳剤層を塗布する側には、表面処理を施したアナターゼ型酸化チタンを15重量%の含有量で分散して含む溶融ポリエチレンをラミネートした。この反射支持体をコロナ放電処理した後、ゼラチン下塗層を設け、更に以下に示す構成の各層を塗設し、ハロゲン化銀写真感光材料(101)を作製した。感光材料の作製においては、下記の塗布量になるように各塗布液を調製し、又、硬膜剤として(H−1)、(H−2)を添加した。塗布助剤としては、界面活性剤(SU−1)、(SU−2)、(SU−3)を添加し、表面張力を調整した。また各層に(F−1)を全量が0.04g/m2となるように添加した。各層の塗布量を以下に示す。
【0126】
尚、ハロゲン化銀塗布量は銀に換算した値で示した。
【0127】
SU−1:トリ−i−プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム
SU−2:スルホ琥珀酸ジ(2−エチルヘキシル)・ナトリウム塩
SU−3:スルホ琥珀酸ジ(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)・ナトリウム塩
H−1 :テトラキス(ビニルスルホニルメチル)メタン
H−2 :2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン・ナトリウム
DBP :ジブチルフタレート
DIDP:ジイソデシルフタレート
DOP :ジオクチルフタレート
DNP :ジノニルフタレート
PVP :ポリビニルピロリドン
HQ−1:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン
HQ−2:2,5−ジ−sec−ドデシルハイドロキノン
HQ−3:2,5−ジ−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−4:2−sec−ドデシル−5−sec−テトラデシルハイドロキノン
HQ−5:2,5−ジ(1,1−ジメチル−4−ヘキシルオキシカルボニル)ブチルヒドロキノン
画像安定剤A:p−t−オクチルフェノール
【0128】
【化2】
【0129】
【化3】
【0130】
【化4】
【0131】
【化5】
【0132】
このようにして作製した試料を101とし、常法により光楔露光した後、下記現像処理工程により現像処理を行った。
【0133】
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 38.0±0.3℃ 45秒 80cc
漂白定着 35.0±0.5℃ 45秒 120cc
安定化 30〜34℃ 60秒 150cc
乾 燥 60〜80℃ 30秒
現像処理液の組成を下記に示す。
【0134】
【0135】
漂白定着液タンク液及び補充液
ジエチレントリアミン五酢酸第二鉄アンモニウム2水塩 65g
ジエチレントリアミン五酢酸 3g
チオ硫酸アンモニウム(70%水溶液) 100ml
2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール 2.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 27.5ml
水を加えて全量を1リットルとし、炭酸カリウム又は氷酢酸でpH=5.0に調整する。
【0136】
安定化液タンク液及び補充液
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
塩化ビスマス(45%水溶液) 0.65g
硫酸マグネシウム・7水塩 0.2g
PVP 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩 1.5g
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpH=7.5に調整する。
【0137】
試料101において、Em−B1の代わりに下表に示す乳剤に置き換えた試料をそれぞれ試料102〜9とし、試料101と同様に処理し下記の性能を測定した。
【0138】
得られた試料をPDA−65濃度計(コニカ株式会社製)を用いて青色濃度の特性曲線を測定し最高濃度と感度及びγを測定した。感度は濃度0.75を与える露光量の逆数に基づいて定義し、標準試料である101の感度を100として相対値で表した。
【0139】
なお、γはかぶり+0.3を与える露光量と、その100倍の露光量におけるセンシトメトリーカーブ上の2点を結ぶ傾きと定義し、標準試料である101のγを100として相対値で表した。
【0140】
【表2】
【0141】
表2から分かるように、本発明の試料は感度が高く、ハロゲン化銀の塗布量が少なくても最高感度も高く、且つ硬調な画像を与えることが分かる。
【0142】
実施例3
実施例2において下記の様に変更した処理を行った。
【0143】
処理工程 処理温度 時間 補充量
発色現像 38.0±0.3℃ 22秒 81ml
漂白定着 35.0±0.5℃ 22秒 54ml
安定化 30〜34℃ 25秒 150ml
乾 燥 60〜80℃ 30秒
現像処理液の組成を下記に示す。
【0144】
【0145】
【0146】
安定化液タンク液及び補充液
o−フェニルフェノール 1.0g
5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン 0.02g
ジエチレングリコール 1.0g
蛍光増白剤(チノパールSFP) 2.0g
1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸 1.8g
PVP 1.0g
アンモニア水(水酸化アンモニウム25%水溶液) 2.5g
エチレンジアミン四酢酸 1.0g
亜硫酸アンモニウム(40%水溶液) 10ml
水を加えて全量を1リットルとし、硫酸又はアンモニア水でpH=7.5に調整する。
【0147】
実施例2と同様に評価し、本発明の効果が有効に得られることを確認した。
【0148】
実施例4
実施例2において、自動現像機としてコニカ(株)製NPS−868J、処理ケミカルとしてECOJET−Pを使用し、プロセス名CPK−2−J1に従ってランニング処理した。実施例1と同様に評価し本発明の効果が得られる事を確認した。
【0149】
実施例5
下引層を設けたセルローストリアセテートフィルム支持体上に以下の組成物を塗布して多層カラー感光材料である試料301を作製した。
【0150】
以下の全ての実施例において、ハロゲン化銀写真感光材料中の添加量は特に記載のない限り1m2当たりのグラム数を示す。また、ハロゲン化銀及びコロイド銀は、銀に換算して示し、増感色素はハロゲン化銀1モル当たりのモル数で示した。
【0151】
第1層:ハレーション防止層
黒色コロイド銀 0.18
紫外線吸収剤(UV−11) 0.30
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.17
ゼラチン 1.59
第2層:中間層
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.01
ゼラチン 1.27
第3層:低感度赤感性層
乳剤(Em−2) 0.80
増感色素(SD−1) 5.0×10−5
増感色素(SD−2) 9.0×10−5
増感色素(SD−3) 1.9×10−5
増感色素(SD−4) 2.0×10−4
増感色素(SD−5) 2.8×10−4
シアンカプラー(C−11) 0.42
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.02
高沸点溶媒(Oil−1) 0.35
ゼラチン 1.02
第4層:中感度赤感性層
乳剤(Em−1) 0.40
増感色素(SD−3) 1.8×10−5
増感色素(SD−4) 2.4×10−4
増感色素(SD−5) 4.5×10−4
シアンカプラー(C−11) 0.26
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.05
DIR化合物(D−1) 0.01
高沸点溶媒(Oil−1) 0.31
ゼラチン 0.78。
【0152】
第5層:高感度赤感性層
乳剤(Em−3) 1.51
増感色素(SD−3) 1.8×10−5
増感色素(SD−4) 3.1×10−4
増感色素(SD−5) 2.7×10−4
シアンカプラー(C−12) 0.11
カラードシアンカプラー(CC−1) 0.02
DIR化合物(D−2) 0.04
高沸点溶媒(Oil−1) 0.17
ゼラチン 1.15
第6層:中間層
ゼラチン 0.80
第7層:低感度緑感性層
乳剤(Em−2) 0.21
増感色素(SD−1) 5.9×10−5
増感色素(SD−6) 3.1×10−4
増感色素(SD−9) 1.8×10−4
増感色素(SD−11) 5.6×10−5
マゼンタカプラー(M−11) 0.20
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.05
DIR化合物(D−1) 0.02
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.27
ゼラチン 1.34。
【0153】
第8層:中感度緑感性層
乳剤(Em−2) 0.82
増感色素(SD−1) 5.0×10−5
増感色素(SD−6) 2.7×10−4
増感色素(SD−9) 1.7×10−4
増感色素(SD−11) 4.8×10−5
マゼンタカプラー(M−11) 0.21
カラードマゼンタカプラー(CM−1) 0.05
DIR化合物(D−4) 0.02
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.33
ゼラチン 0.89
第9層:高感度緑感性層
乳剤(Em−3) 0.99
増感色素(SD−6) 3.6×10−4
増感色素(SD−7) 7.0×10−5
増感色素(SD−8) 4.8×10−5
増感色素(SD−11) 6.2×10−5
マゼンタカプラー(M−11) 0.05
マゼンタカプラー(M−12) 0.06
カラードマゼンタカプラー(CM−2) 0.03
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.25
ゼラチン 0.88
第10層:中間層
高沸点有機溶媒(Oil−1) 0.25
ゼラチン 0.50
第11層:イエローフィルター層
黄色コロイド銀 0.11
色汚染防止剤(SC−1) 0.12
高沸点溶媒(Oil−2) 0.16
ゼラチン 1.00。
【0154】
第12層:中間層
ゼラチン 0.36
第13層:低感度青感性層
乳剤(Em−2) 0.37
増感色素(SD−10) 5.6×10−4
増感色素(SD−11) 2.0×10−4
増感色素(SD−13) 9.8×10−5
イエローカプラー(Y−11) 0.39
イエローカプラー(Y−12) 0.14
DIR化合物(D−5) 0.03
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.11
ゼラチン 1.02
第14層:中感度青感性層
乳剤(Em−2) 0.46
乳剤(Em−1) 0.10
増感色素(SD−10) 5.3×10−4
増感色素(SD−11) 1.9×10−4
増感色素(SD−13) 1.1×10−5
イエローカプラー(Y−11) 0.28
イエローカプラー(Y−12) 0.10
DIR化合物(D−5) 0.05
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.08
ゼラチン 1.12。
【0155】
第15層:高感度青感性層
乳剤(Em−3) 0.04
乳剤(Em−4) 0.28
増感色素(SD−11) 8.4×10−5
増感色素(SD−12) 2.3×10−4
イエローカプラー(Y−11) 0.04
イエローカプラー(Y−12) 0.12
高沸点有機溶剤(Oil−2) 0.03
ゼラチン 0.85
第16層:第1保護層
乳剤(Em−5) 0.30
紫外線吸収剤(UV−12) 0.03
紫外線吸収剤(UV−13) 0.015
紫外線吸収剤(UV−14) 0.015
紫外線吸収剤(UV−15) 0.015
紫外線吸収剤(UV−16) 0.10
高沸点有機溶剤(Oil−1) 0.44
高沸点有機溶剤(Oil−3) 0.07
ゼラチン 1.35
第17層:第2保護層
アルカリ可溶性マット剤(PM−1、平均粒径2μm) 0.15
ポリメチルメタクリレート(平均粒径3μm) 0.04
滑り剤(WAX−1) 0.02
ゼラチン 0.54
尚上記組成物の他に、化合物SU−11、SU−12、SU−13、SU−14、粘度調整剤V−1、硬膜剤H−11、H−12、安定剤ST−11、カブリ防止剤AF−1、AF−2、重量平均分子量:10,000及び重量平均分子量:1,100,000の2種のAF−3、染料AI−11、AI−12、AI−13、化合物FS−1、FS−2、及び防腐剤DI−1を各層に適宜添加した。
【0156】
【化6】
【0157】
【化7】
【0158】
【化8】
【0159】
【化9】
【0160】
【化10】
【0161】
【化11】
【0162】
【化12】
【0163】
【化13】
【0164】
【化14】
【0165】
【化15】
【0166】
【化16】
【0167】
【化17】
【0168】
【化18】
【0169】
上記試料に用いた乳剤は、下記の通りである。尚平均粒径は立方体に換算した粒径で示した。また、各乳剤は、金、硫黄、セレン増感を最適に施した。
【0170】
次に試料301において、Em−4を、Em−a〜Em−gの各乳剤を、金、硫黄、セレン増感を最適に施した各乳剤に置き換えた試料をそれぞれ302〜308とした。このようにして得られた試料301〜308に白色光のウェッジ露光を与えて下記に示す現像処理を行ない、試料301の青感性層の感度を100とした相対値とカブリ(Dmin)を比較した。
【0171】
【表3】
【0172】
ただし、安定化処理は3槽カウンタカレントで行い、安定化液の最終槽に補充され、その前槽にオーバフローが流入する方式で行った。更に、定着槽に続く安定化槽のオーバフローの一部(275ml/m2)を定着槽に流し込んだ。
【0173】
使用した発色現像液及びその補充液の組成は次の通りである。
【0174】
【0175】
【0176】
使用した漂白液の組成は、次の通りである。
【0177】
1,3−ジアミノプロパン四酢酸第2鉄アンモニウム 0.35モル
エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム 2g
臭化アンモニウム 150g
氷酢酸 40ml
硝酸アンモニウム 40g
水を加えて1リットルとし、アンモニア水又は氷酢酸を用いてpH4.5に調整する。
【0178】
使用した漂白補充液の組成は、次の通りである。
【0179】
1,3−ジアミノプロパン四酢酸第2鉄アンモニウム 0.40モル
エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム 2g
臭化アンモニウム 170g
硝酸アンモニウム 50g
氷酢酸 61ml
水を加えて1リットルとし、アンモニア水又は氷酢酸を用いてpH3.5にし、漂白タンク液のpHが保てるように適宜調整する。
【0180】
使用した定着液及び定着補充液の組成は次の通りである。
【0181】
チオ硫酸アンモニウム 100g
チオシアン酸アンモニウム 150g
無水重亜硫酸ナトリウム 20g
メタ重亜硫酸ナトリウム 4.0g
エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム 1.0g
水を加えて700mlとし、氷酢酸とアンモニア水を用いてpH6.5に調整する。
【0182】
使用した安定化液及び安定化補充液の組成は次の通りである。
【0183】
【0184】
【表4】
【0185】
表4に示すようにカラーネガ処理において迅速処理を行っても、本発明は比較乳剤に比べてカブリが低く、さらに高感度を達成できることがわかる。
【0186】
【発明の効果】
本発明により、高感度、低カブリで迅速処理性に優れたハロゲン化銀乳剤とその製造方法、並びにハロゲン化銀写真感光材料を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハロゲン化銀乳剤の製造方法を示す概念図である。
【符号の説明】
1 反応容器
2 ハロゲン化銀乳剤
3 攪拌機構
4 第1ジェット
5 第2ジェット
6 外部循環経路
7 限外濾過装置
8 外部排出経路
9 外部循環経路
Claims (5)
- ハロゲン化銀粒子の塩化銀含有率が総銀量の50mol%以上であり、(100)面を主平面に持ち、アスペクト比が2以上である平板状粒子が全投影面積の50%以上であるハロゲン化銀乳剤におけるa)核粒子形成過程、b)核粒子とは組成の異なるハロゲンの添加による異方成長欠陥形成過程、c)平板粒子成長のための銀、ハロゲンの添加過程を経る製造過程において、c)過程あるいはc)過程を含む前の過程でその過程が少なくとも終了するまで該ハロゲン化銀乳剤から可溶性塩を停止せずに除去することを特徴とするハロゲン化銀乳剤の製造方法。
- 前記可溶性塩を除去する過程が、前記b)過程終了以降であることを特徴とする請求項1に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
- 前記可溶性塩を除去する過程が、限外濾過であることを特徴とする請求項1又は2に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法。
- 請求項1〜3の何れか1項に記載のハロゲン化銀乳剤の製造方法によって製造されたことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
- 少なくとも1層が請求項4記載のハロゲン化銀乳剤を含むことを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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