JP3596389B2 - バッテリー式乗用ゴルフカート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はバッテリー式の乗用ゴルフカートに関するものであり、詳細にはその制動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、国内では1パーティのゴルファー4人とキャディ1人が乗ることが可能な、5人乗りのゴルフカートとして、エンジン式乗用ゴルフカートが使用されている。しかしながら、前記したエンジン式乗用ゴルフカートは、騒音や排気ガスを出すため、ゴルファーに不快さを与えるという問題点がある。
【0003】
一方、米国においては、前記したエンジン式乗用ゴルフカートとともに、5人乗りの電動式乗用ゴルフカートが使用されている。なお、電動式乗用ゴルフカートは、騒音や排気ガスを出さず、環境にやさしいという特長がある。しかしながら、電動式乗用ゴルフカートは、電源としてバッテリーを使用しているため、エンジン式に比べて車体重量が重い。したがって、このゴルフカートを安全に、かつ乗車しているゴルファーやキャディーに違和感のない状態で制動または停止させる手段が重要となってくる。
【0004】
ゴルフカートを含めた広い範囲の自動走行車として、特開平8−133037号公報では、ドラムブレーキと電磁ブレーキの2系統ブレーキ装置を使用して制動をする方法が開示されている。しかしながら上記した公報に記載された2系統のブレーキ装置を用いた場合には、ドラムブレーキの負担が大きいため、ブレーキシューの摩耗が激しく、その結果ドラムブレーキの寿命が短い。したがって、ドラムブレーキの交換にコストがかかるという問題があった。
【0005】
一方、エンジン式のゴルフカートの場合であるが、エンジンに接続されたスタータダイナモによる回生制動を利用した回生ブレーキと、電磁ブレーキの併用により制動する手法が特開平5−73144号で開示されている。すなわち、ゴルフカートが走行中は、スタータダイナモの使用による回生ブレーキを作動させて車両を減速した後、電磁ブレーキを用いて車両を停止させる方法である。
【0006】
なお、小型のゴルフカートでは上記したような2系統のブレーキ装置の併用で十分であった。しかしながら、乗用ゴルフカートなどの大型の車両や、車体重量が増加した場合には、より強く、安定した制動力が必要となってくる。また、この種の乗用ゴルフカートを駐車する場合には、運転者がブレーキペダルを強く踏み込んでロックをかける方式が一般に用いられている。しかし、運転者がロックをかけ忘れたり、踏み込みが弱かったりした場合には、傾斜地などで車体が動き出してしまうという問題点があった。さらに、自動運転時においては、傾斜地などでの駐車ができないという問題点があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記した欠点を解消することにあり、より強く、安定した制動力を備えるとともに、自動運転時においても傾斜地などで駐車をすることが可能な、バッテリー式乗用ゴルフカートを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、第一の発明は、バッテリーを電源とする乗用ゴルフカートにおいて、駆動モータの回生制動、ドラムブレーキ及び電磁ブレーキの3系統の制動装置を併用することを特徴とし、第二の発明は、請求項1記載の電磁ブレーキは、走行速度がゼロの時に作動する駐車用のブレーキであることを特徴とし、第三の発明は、請求項1又は2記載の電磁ブレーキは、回生制動及びドラムブレーキの故障やそれらの作動が不十分な場合に作動する非常用ブレーキであることを特徴としている。
【0009】
第四の発明は、請求項1、2又は3記載のバッテリー式乗用ゴルフカートが、手動運転と電磁誘導式による自動運転とが可能であることを特徴としている。
【0010】
【実施例】
1.バッテリー式乗用ゴルフカートの構成
本発明の一実施例である、バッテリー式乗用ゴルフカートの構成を示すブロック図を図1に示す。この乗用ゴルフカートは、バッテリー1によって駆動モータ4を回転させ、トランスミッション5を介して後輪(タイヤ6a,b)を回転させて前進または後進させるものである。手動運転時においては、前輪(タイヤ6c、d)を操舵するためのハンドル7、車両速度を調整するためのアクセルペダル8及び車両に制動をかけるためのブレーキペダル9で操作できる。なお、図1に示すコントローラ2、ステアリングモータドライバ11、ブレーキモータドライバ13などの電源は、すべてバッテリー1より供給される。
【0011】
この乗用ゴルフカートは、運転席の前方に操作パネル24が取り付けられている。操作パネル24には自動運転または手動運転の切り換えスイッチ、発進スイッチ、停止スイッチ、前進スイッチ、後進スイッチ及び、何らかの故障を検知した場合に、それを表示する表示部と警報を鳴らすブザーなどが装着されている。
【0012】
車両の速度はトランスミッション5に取り付けられた2個の車両速度センサ20により検出され、フィードバック方式を用いたPID制御で速度の制御を行っている。車両速度センサ20からはコントローラ2に速度に応じたパルスが出力される。なお、PID制御を用いた場合において、車速センサ20からの信号が無くなった場合には、車速を最大にするように制御される。したがって、2個の車速センサ20を使用して、片方の車速センサ20が壊れた場合でも、他方の車速センサ20で安全に停止できるようにした。
【0013】
一方、車両速度の制動は後述するように、
a)電磁ブレーキ15、
b)ドラムブレーキ10a〜d、
c)駆動モータ4による回生ブレーキ、
の3種類のブレーキを用いた。
【0014】
2.自動運転
自動運転が可能なゴルフ場のコースには、あらかじめ誘導線が埋設されており、該誘導線に1000Hzの交流を流すことにより、その近傍には交流磁場が形成されている。この乗用ゴルフカートには、車両の前端部に水平方向に回転するT字状アームがあり、該T字状アームの3カ所には、誘導センサ16a〜cが配置され、その信号はコントローラ2に出力される。この誘導センサ16a〜cはコイルを用いたものであり、前記交流磁場によって該誘導センサに発生する起電力を検出して誘導線の位置を判断し、乗用ゴルフカートを誘導するものである。
【0015】
前記コントローラ2は、誘導センサ16a〜cからの信号に基づいて処理をし、ステアリングモータドライバ11を介して操舵指示信号に対応した駆動電流をステアリングモータ12に送る。そして、この駆動電流によってステアリング軸を回転させ、前輪6c、dを操舵して車両が誘導線からはずれないように走行制御をする。なお、自動運転時にハンドル7は、ステアリングクラッチ19によりステアリング軸から切り離されて固定された状態となり、その手動による操作が不能とされる。またステアリングモータ12の故障を検出をするために、その駆動電流をコントローラ2に出力して常に監視している。
【0016】
マグネットセンサ17はコイルを用いたものであり、地面と対向するように車両の所定位置に取り付けられている。一方、ゴルフ場のコースには、所定の間隔をあけて複数個の永久磁石が、N極またはS極を地表に向けた状態で埋設されている。埋設された複数個の永久磁石の上方を、マグネットセンサ17を装着した車両が通過することによって、前記マグネットセンサ17に誘導起電力が生ずる。そして、マグネットセンサ17によってそれぞれの永久磁石の磁極パターンを検出することにより、車両の速度を変更させたり、停止させるなどの走行制御を行うものである。
【0017】
また車両には、傾斜センサ18も取り付けられており、車両が走行している走行路の勾配をコントローラ2に出力する。コントローラ2では平地をゼロとし、上りをプラス、下りをマイナスの符号をつけ、勾配が大きいほど大きな値として算出し、後述する各制動装置を作動させる。
【0018】
3.手動運転
このバッテリー式乗用ゴルフカートは、通常のマニュアル操作による手動走行が可能である。この場合、ハンドル7はステアリングクラッチ19によりステアリング軸に接続されて自動運転が不能となる。アクセルペダル8を踏むことにより電磁ブレーキ15が開放し、駐車が解除され、車体を加速する。そして、アクセルペダル8から足を離すことにより、車体に後述する回生制動がかかるようにした。ブレーキペダル9を踏むことにより、車体に後述するドラムブレーキ10a〜dによって制動をかけることができる。なお、アクセルペダルの踏み込みが無く、かつ車速センサ20で検出した車両速度がゼロであることをコントローラ2が確認したときには電磁ブレーキ15により駐車する。
【0019】
4.本実施例の制動手段
(1)回生による制動
本実施例では、コントローラ2から出力される減速信号によって、後輪の回転力によってトランスミッション5を介して駆動モータ4を回転させ、発電機として回生電流を発生させ、その回生電流でバッテリー1を充電する方式を用いた。すなわち回生制動をかけることにより、車両速度を減速する方式を最も頻繁に用いるようにした。また駆動モータ4の異常を検出するために、駆動モータ4に流れている駆動電流や回生電流をコントローラ1に出力して常に監視するようにした。
【0020】
自動走行時は傾斜センサ18によって測定される走行路の勾配や、上記したマグネットセンサ17による信号により、目標速度がコントローラ2で決定される。そして、車両が急な下り勾配の斜面にある場合には、安全のために速度を落とすように制御する。すなわち、車両の速度を速度センサ20で監視し、目標速度と車両の速度に応じてコントローラ2によって回生電流を制御した。すなわち、回生電流を大きくすると大きな制動力が得られため、車両が急激に減速して乗り心地が悪くなることや、車両自体がスリップするためである。そこで、この場合には後述するドラムブレーキ10a〜dも併用することにした。一方、手動走行時においても、アクセルペダル8から足を離すことにより回生制動がかかるようにした。
【0021】
(2)ドラムブレーキによる制動
前記した回生制動による方式よりも、より強力な制動が要求される場合には、ドラムブレーキ10a〜dも併用される。ドラムブレーキ10a〜dによる制動力は4輪のタイヤa〜dに伝わるため、スリップする可能性を少なくできる。
【0022】
ブレーキモータドライバ13は、自動走行時にはコントローラ2から出力される制動信号に対応した駆動電流をブレーキモータ14に供給する。そして、ブレーキモータ14の作動によって、ギア21および油圧シリンダ22を介してドラムブレーキ10a〜dを駆動させて車体に制動をかける。なお、緊急時においては、自動走行時においてもブレーキペダル9を踏み込むことによって、油圧シリンダ22を介してドラムブレーキ10a〜dを駆動し、車両に制動をかけることができるようにした。
【0023】
ギア21にはブレーキモータ動作スイッチ23があり、ブレーキモータ14が動作した場合、ブレーキモータ動作スイッチ23がオンする。ブレーキモータ動作スイッチ23がオフの時はドラムブレーキ10a〜dによる制動力はゼロとなる。ブレーキモータ14が故障か否かを検出するために、ブレーキモータ14の駆動電流をコントローラ2に出力し、設定された範囲内にあるか否かを監視している。
【0024】
下り坂などにおいて、前記した回生制動では目標速度を超えてしまうとコントローラ2が判断した場合には、ドラムブレーキ10a〜dも併用して制動をかける。車両の目標速度と、車速センサ20からの信号の偏差と、傾斜センサ18からの信号によって計算された最適値をブレーキモータドライバ13に出力する。傾斜センサ18からの出力値は平地をゼロとし、下りの勾配が大きくなるほど大きな値が出力される。また、3度以上の揺るやかな下り道では、ドラムブレーキ10a〜dの制動はかけないようにした。
【0025】
一方、ブレーキペダル9の踏み込みや、操作パネル24のスイッチの切り換え、またはマグネットセンサ17などから停止信号がコントローラ2に入力された場合には、車両の目標速度はゼロに設定される。この場合に車両は、上記した回生制動とドラムブレーキ10a〜dによって減速させる。なお、車両速度がゼロに近くなると回生制動力は弱くなる。したがって、この場合には主にドラムブレーキ10a〜dによって制動がかかるようにした。
【0026】
(3)電磁ブレーキによる制動
電磁ブレーキ15は、コントローラ2によってオン/オフ制御され、主に駐車用のブレーキ装置として使用される。電磁ブレーキ15はトランスミッション5に取り付けられており、オンの状態では電磁ブレーキ15が開放され、制動力が効かない。一方、オフの状態では電磁ブレーキ15が閉じ、トランスミッション5をロックすることにより制動がかかるため、長期間の駐車を可能とすることができる。また故障か否かを検出するために、電磁ブレーキ15の電流値をコントローラ2で監視するようにした。
【0027】
手動運転時において、電磁ブレーキ15はアクセルペダル9の踏み込みが無く、かつ車両速度センサ20で検出した車両の速度がゼロになった場合には駐車と判断して作動する。自動運転時においては、速度センサ20からの信号によって、車両の速度がゼロになった場合には駐車と判断して動作する。
【0028】
なお、前述した回生制動またはドラムブレーキ10a〜dが故障した場合や、それらのブレーキの併用による制動が充分でないような非常の場合においても、コントローラ2は電磁ブレーキ15をオフにして、緊急に車両を停止させることが可能となるようにした。
【0029】
【発明の効果】
上述したように、本発明では3系統のブレーキを使用することを特徴としている。これら3系統のブレーキのうちで、本発明では回生制動を多用しているためにドラムブレーキ10a〜dの負担が軽く、ドラムブレーキ10a〜dのブレーキシューの摩耗が少ない。その結果、ドラムブレーキの寿命を長くすることができる。また、回生により得られた電力はバッテリーの充電に用いているため、従来に比べて容量の小さなバッテリーを用いることができる。
【0030】
また、車両速度がゼロになった場合には、駐車と判断して自動的に電磁ブレーキ15が作動するため、ブレーキペダルのロックをかけ忘れた場合にも安全に駐車できる。本発明では車両の制動を3系統のブレーキで分担しており、いずれかのブレーキが故障した場合においても残りのブレーキで制動をかけることができる。したがって、安全性の向上した車両を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のバッテリー式乗用ゴルフカートの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1:バッテリー、2:コントローラ、3:駆動モータドライバ、4:駆動モータ、
5:トランスミッション、6a〜d:タイヤ、7:ハンドル、8:アクセルペダル、
9:ブレーキペダル、10a〜d:ドラムブレーキ、
11:ステアリングモータドライバ、12:ステアリングモータ、
13:ブレーキモータドライバ、14:ブレーキモータ、15:電磁ブレーキ、
16a〜c:誘導センサ、17:マグネットセンサ、18:傾斜センサ、
19:ステアリングクラッチ、20:車両速度センサ、21:ギア、22:油圧シリンダ、
23:ブレーキモータ動作スイッチ、24:操作パネル
Claims (4)
- バッテリーを電源とする乗用ゴルフカートにおいて、
駆動モータの回生制動、ドラムブレーキ及び電磁ブレーキの3系統の制動装置を併用し、
前記乗用ゴルフカートの目標速度がコントローラによって決定され、
該コントローラは、前記目標速度と前記乗用ゴルフカートの速度に応じて、駆動モータドライバと駆動モータとを用いた回生電流で回生制動と、前記ドラムブレーキによる制動とを制御し、駐車時には前記電磁ブレーキを作動させることを特徴とするバッテリー式乗用ゴルフカート。 - 前記回生制動又は前記ドラムブレーキによる制動の少なくとも一方の制御は、傾斜センサを用いて行うことを特徴とする請求項1記載のバッテリー式乗用ゴルフカート。
- 前記電磁ブレーキは、前記乗用ゴルフカートの速度がゼロの時に作動する駐車用のブレーキであることを特徴とする請求項1又は2記載のバッテリー式乗用ゴルフカート。
- 前記バッテリー式乗用ゴルフカートは、手動運転と電磁誘導式による自動運転が可能であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のバッテリー式乗用ゴルフカート。
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