JP3735040B2 - 電動車の速度制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気ゴルフカー等の電動車に使用され、電動車の速度制御を行う電動車の速度制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、電気ゴルフカー等の電動車に用いる速度制御装置おいては、アクセルペダルの踏み込み量に応じた設定速度を設定し、設定速度に向けて徐々に変化する指令速度と電動車の検出速度が一致するように駆動源である電動機への通電を調整して走行速度を制御している。また、電動車にはブレーキペダルが設けてあり、ブレーキペダルを操作する(踏み込む)と、ワイヤ等を介してブレーキペダルに連結されているドラムブレーキが駆動されて車輪に制動力がはたらき、電動車を減速あるいは停止させることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記従来の速度制御装置においては、指令速度を低下する減速時には電動機の回生制動を利用して駆動輪に電気的制動力をかけている。このように回生制動による電気的制動力と、上記ドラムブレーキによる機械的制動力とを合わせた制動力が車輪にはたらくため、指令速度が低下するよりも早くに検出速度が低下して検出速度が指令速度を下回る場合がある。このような場合、従来の速度制御装置では検出速度を指令速度に一致させようとして電動機への通電を増加し、電動車を加速させてしまう虞がある。このように運転者がフットブレーキを踏み込んで減速させようとしているにもかかわらず、従来の速度制御装置では電動機を加速側に制御してしまい、ドラムブレーキに過度の負荷がかかったり、制動距離が伸びてしまうなどの不具合が生じる。
【0004】
本発明は上記問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、電動車に対して機械的制動がかけられている場合に電動機を加速側に制御するのを防止した電動車の速度制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、電動機を駆動源とし、運転者のアクセル操作に応じて加速するとともに運転者のブレーキ操作に応じて車輪に機械的制動をかける電動車に用いられ、電動機への通電を制御して電動車の速度を可変制御する電動車の速度制御装置において、運転者によるアクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、運転者によるブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段と、アクセル操作検出手段並びにブレーキ操作検出手段の検出結果に応じて電動車の走行速度を設定する速度設定手段と、電動車の走行速度を検出する速度検出手段と、速度設定手段で設定される設定速度に電動車の走行速度を略一致させるまでの間における電動車の走行速度を指令する指令速度を演算する指令速度演算手段と、速度検出手段による検出速度を指令速度に略一致させるために必要な電動機への通電電流を演算する演算手段と、演算手段による通電電流の演算値に応じて電動機への通電電流を調整する調整手段とを備え、指令速度演算手段は、走行中に運転者によるブレーキ操作がブレーキ操作検出手段により検出されて指令速度を徐々に低下させる場合において、検出速度が指令速度を下回れば指令速度を検出速度を超えない値まで低下させることを特徴とし、運転者のブレーキ操作により電動車に対して機械的制動がかけられて指令速度が低下するよりも早くに検出速度が低下して検出速度が指令速度を下回った場合においても、指令速度演算手段が指令速度を検出速度を超えない値まで低下させることで電動機を加速側に制御するのを防止することができる。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、演算手段は、電動機への通電電流が上限を超えないように演算値を求めるとともに、指令速度が徐々に低下する減速時には減速時以外の場合に対して通電電流の上限を低下させることを特徴とし、通電電流の上限を低下させることにより、減速時における電気的制動力を弱めて急激な制動がかかって運転者に不快感を与えるのを防ぐことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
まず、本実施形態の速度制御装置を備えた電動車の全体構成を図2に基づいて概説する。なお、図2は電動車の構成を示すブロック図である。
【0008】
本実施形態における電動車は、例えばゴルフ場において使用される電気ゴルフカーとして利用されるものであって、所定の誘導経路に沿う自動走行と乗員の手動操作による手動走行が可能である。この電動車には駆動源としての直流電動機(以下、「メインモータ」という)1並びにメインモータ1の電源としてメインバッテリ2が搭載されており、メインモータ1から供給される駆動力を駆動輪である後輪3a,3bに伝達するためのトランスミッション4、操舵輪である前輪3c,3dを操舵するためのハンドル5、本発明に係る速度制御装置を構成するコントローラ11、車速を変えるためのアクセルペダル7、車両に機械的制動力を加えるためのブレーキペダル8とドラムブレーキ9、車両の前後進を切り換えるためのシフトレバー10、コントローラ11やメインモータ1以外の各種モータ等に電源を供給する補機バッテリ6、外部電源によりメインバッテリ2並びに補機バッテリ6を充電する充電器28とが設けられている。
【0009】
また、電動車には、自動走行のためのステアリングモータ13、ブレーキモータ16、電磁ブレーキ18の他、誘導線センサ19a,19b,19c、定点センサ20、左右のバンパスイッチ21、追突防止センサ受信機22a並びに追突防止センサ送信機22b、左右の障害物センサ23等の各種センサ群、自動制動と手動制動を切り換えるための切換機構24、リモコン送信器25からの信号を受信してコントローラ11に入力するためのリモコン受信器26、追突防止センサ受信機22a並びに追突防止センサ送信機22bを駆動制御して追突防止信号をコントローラ11に入力する追突防止コントローラ27等が設けられている。
【0010】
コントローラ11はCPUやメモリ、入出力のインタフェース等で構成される制御部48を有し、制御部48にて所定の制御プログラムを実行することで後述する速度制御を行う。また、コントローラ11はステアリングドライバ12を備え、このステアリングドライバ12は、自動走行時にコントローラ11から出力される操舵指示信号に応じた駆動電流をステアリングモータ13に供給するものであって、ステアリングモータ13の回転はギヤ29,30を介してステアリング軸31に伝達され、ステアリング軸31が回動することによって所望のステアリング操作がなされる。なお、自動走行時には、コントローラ11からの信号によってクラッチモータリレー32aを介してクラッチモータ32bが駆動されてステアリングクラッチ32がオフされ、ハンドル5はステアリング軸31から切り離されて手動によるステアリング操作が不能となる。
【0011】
また、コントローラ11にはアクセルペダル7の操作をアクセルスイッチ34によって検知した検知信号と、アクセルペダル7の踏み込み度合をアクセルポテンショメータ35によって検出した検出信号がそれぞれ入力される。
【0012】
さらに、コントローラ11はブレーキモータ出力部15を備えており、自動走行時にコントローラ11から出力されるブレーキモータ指令電流に応じた駆動電流をブレーキモータ出力部15からブレーキモータ16に供給させ、ブレーキモータ16によりギヤ37及び切換機構24を介して後輪3a,3b及び前輪3c,3dの各々に設けられたドラムブレーキ9を駆動して車両に機械的制動力を加える。そして、自動走行時においても、ブレーキペダル8は切換機構24を介してドラムブレーキ9に接続されており、ブレーキペダル8の踏み込み操作による制動も可能である。但し、ブレーキペダル8の踏み込み操作はブレーキスイッチ38によって検出され、その検出信号はコントローラ11に入力される。
【0013】
電磁ブレーキ18は、コントローラ11によってオン/オフ制御され、メインモータ1の回転をトランスミッション4に伝達する回動軸(図示せず)にスプライン嵌合されたディスク18aと、回動軸と非接触で、かつディスク18aに対向するようトランスミッション4の外壁等に固定された固定盤18bとで構成されている。ディスク18aは、回動軸にスプライン嵌合されていることから、回動軸と一体となって回転する一方、回動軸の軸方向に移動可能となっている。また、固定盤18bは、ディスク18aを吸引する磁界を発生する永久磁石と、この永久磁石の磁界を打ち消すようコントローラ11によって励磁される電磁石とで構成されている。すなわち、この電磁ブレーキ18は、走行中において電磁石に対する励磁がオンとされ、この磁界によって永久磁石の磁界が打ち消されることによりディスク18aに対する吸引力が無くなり、結果的に回動軸に対し制動がかからない状態(開放状態)となる。一方、電磁石に対する励磁がオフとされると、ディスク18aが永久磁石の磁力によって固定盤18bに吸着され、回動軸に対し制動がかかる状態(ロック状態)となる。
【0014】
誘導線センサ19a〜19cは、車両の前端部に水平方向に回動自在に取り付けられたT字状アーム39の中央と左右に地面と対向するように配置され、ゴルフ場のコースに沿って埋設され且つ交流電圧が印加された誘導線(図示せず)を磁気的に検出し、誘導線との距離に応じた検出信号を誘導線センサ用アンプ14で増幅してコントローラ11の制御部48に入力する。すなわち、コントローラ11の制御部48は誘導線センサ19a〜19cからの検出信号に基づいて車両位置の誘導線からの偏差量を算出し、この偏差量を「0」とするような操舵指示信号をステアリングドライバ12に対して出力することによって車両を誘導線に沿って自動走行させる。
【0015】
また、定点センサ20は、地面と対向するよう車両の所定位置に取り付けられており、ゴルフ場のコース等に所定間隔を置いて埋設された複数の永久磁石からなる定点を磁気的に検出し、その並びのパターンに対応した検出信号を定点センサ用アンプ17で増幅してコントローラ11の制御部48に対して出力することによって車両の停止/発進、加速等の速度制御を行うための情報をコントローラ11に提供するものである。
【0016】
追突防止センサ受信機22aは車両の前端部に設けられており、前方を走行する電動車の追突防止センサ送信機22bから送信される電波を受信する。追突防止コントローラ27では追突防止センサ受信機22aで受信した電波の強度に応じた検出信号をコントローラ11へ出力する。コントローラ11は、この追突防止コントローラ27からの検出信号に基づき、前方車両との距離が所定の設定値以下であるか否かを判断し、設定値以下であると判断した場合には、追突を防止すべく車両を停止させる。
【0017】
障害物センサ23は、車両の前端部の左右2箇所にそれぞれ設けられた光反射型の赤外線センサであり、車両前方に存在する障害物(人、動物等の生物を含む)との距離に応じた検出信号を出力する(但し、この検出信号のレベルは障害物との距離が短くなるにつれて大きくなる)。コントローラ11は、各々の障害物センサ23の出力をそれぞれ第1及び第2の設定値と比較し、何れか一方のセンサ出力(障害物との距離)が第1の設定値以上である場合には車両を減速させ、第1の設定値よりさらに大きい第2の設定値以上である場合には車両を停止させる。これにより、障害物との接触が回避される。
【0018】
バンパスイッチ21は、フロントバンパと車両本体との隙間の左右2箇所に設けられ、通常時はオフ状態となっているが、フロントバンパが何らかの障害物によって押圧されるとオン状態になる。コントローラ11は何れかのバンパスイッチ21がオン状態になると車両を停止させる。
【0019】
その他、車両の走行状態を検出するセンサ群として、トランスミッション4には車速を検出するためのエンコーダからなる2つの車速センサ41,42、ギヤ37にはドラムブレーキ9及び制動力伝達経路を含むブレーキ系のストロークが大きくなったためにブレーキモータ16の回転角が一定の限界値を超えたか否かを検出するブレーキリミットスイッチ44がそれぞれ設けられており、これらの検出信号はコントローラ11に入力される。なお、車速センサ41,42を2つ設けているのは、一方の車速センサが故障した場合でも速度制御を可能として車両を安全に停止させるためと、2つの車速センサ41,42の出力に位相差を持たせてその位相差によりメインモータ1の回転方向、すなわち車両の進行方向(前進と後進)を検出するためである。
【0020】
また、シフトレバー10の近傍には、シフトレバー10の操作位置(前進位置及び後進位置)を検出する前進検出スイッチ45と後進検出スイッチ46が設けられるとともに、後進時に警報を発するための警報ブザー47が設けられており、前進検出スイッチ45並びに後進検出スイッチ46の検出信号がコントローラ11に入力されている。
【0021】
ところで、運転席の近傍には操作盤40が設置されており、この操作盤40には、メインバッテリ2からメインモータ1への給電経路に挿入されたメインリレー36をオン/オフするためのメインスイッチ40aの他、手動走行と自動走行の切換を指示する自動/手動切換スイッチ40b、発進と停止を指示する発進/停止スイッチ40c等の各種スイッチ、警告表示等を行う警告灯40dや走行状態等の各種情報が表示される表示灯40e並びにメインバッテリ2の残容量を表示する残量計40fが設けられている。而して、操作盤40の自動/手動切換スイッチ40bにて自動走行が選択されると、コントローラ11は車両の走行モードを手動走行から自動走行に切り換え、後述するような自動走行のための制御を行う。
【0022】
また、リモコン送信器25は操作盤40の発進/停止スイッチ40cと同様の機能を有しており、リモコン送信器25から無線信号で送信される発進/停止の指示をリモコン受信器26で受信してコントローラ11に送ることにより、電動車の遠隔操作が可能となっている。
【0023】
さらに、車両故障やメインバッテリ2の残容量不足等によって車両が自力走行不能となった場合のために牽引スイッチ49が設けてある。すなわち、この牽引スイッチ49をオンするとコントローラ11により電磁ブレーキ18に通電されて開放状態となり、他の電動車等によって牽引が可能になる。
【0024】
次に、本実施形態における電動車の動作を概略的に説明する。まず、メインスイッチ40aがオンされると、コントローラ11の制御部48が所定の制御プログラムを実行し、自動/手動切換スイッチ40bが「自動走行」と「手動走行」の何れに切り換えられているかを判断する。仮に自動/手動切換スイッチ40bが自動走行に切り換えられているとすると、制御部48は自動走行用のルーチンを実行して、以下の自動走行制御を行う。
【0025】
制御部48はシフトレバー10が前進位置に操作されているか否か、すなわち、前進スイッチ45からオン状態を示す検出信号が入力されているか否かを判断し、前進スイッチ45がオン状態でなければ車両の停止状態を維持し、前進スイッチ45がオン状態であれば、操作盤40あるいはリモコン送信器25から発進指示があったか否かを判断する。ここで、操作盤40の発進/停止スイッチ40cあるいはリモコン送信器25の発進/停止スイッチ(図示せず)が操作されて発進指示がなされると、制御部48がクラッチモータリレー32aをオン,オフし、ステアリングクラッチ32がオフする位置にクラッチモータ32bを停止することによって、ハンドル5をステアリング軸31から切り離す。これにより、ハンドル5の操作による手動操舵が不能になるとともに、自動操舵に伴うハンドル4の回動が防止される。
【0026】
そして、制御部48はメインリレー36をオンしてメインバッテリ2からの給電経路を閉成するとともに、メインモータ1の界磁巻線及び電機子巻線(図示せず)に電圧を印加するメインモータ出力部50を制御してメインモータ1を起動する。メインモータ1の起動後、制御部48が電磁ブレーキ18に通電して開放状態とすることで駆動輪(後輪3a,3b)が回動して車両が前方へ走行する。走行開始後は、制御部48が車速センサ42の車速検出値等の各種センサ出力に基づいてメインモータ出力部50、ブレーキモータ出力部15並びに電磁ブレーキ18を制御し、車両の速度制御を行う。同時に、制御部48では誘導線センサ19a〜19cからの検出信号に基づいて車両位置の誘導線からの偏差量を算出し、この偏差量を「0」とするような操舵指示信号をステアリングドライバ12に対して出力し、ステアリングドライバ12を介してステアリングモータ13を駆動することで操舵制御を行う。このような速度制御と操舵制御により自動走行が行われる。
【0027】
一方、自動/手動切換スイッチ40bが手動走行に切り換えられている場合、制御部48が手動走行用のルーチンを実行し、クラッチモータリレー32aをオン,オフし、ステアリングクラッチ32がオンする位置でクラッチモータ32bを停止することによって、ハンドル5がステアリング軸31と接続されてハンドル5の操作による手動操舵が可能になる。そして、アクセルスイッチ34並びにアクセルポテンショメータ35によって検出されるアクセルペダル7の踏み込み量に応じて、制御部48がメインモータ1への通電を制御して車両の速度制御を行う。なお、手動走行中にアクセルペダル7から足を離す、すなわちアクセルペダル7の踏み込み量をゼロにすれば、メインモータ1に回生電流が流れて制動(回生制動)がかかる。
【0028】
次に本発明に係る速度制御装置、すなわちコントローラ11の操舵制御並びに自動走行時の速度制御を除く手動走行時の速度制御に関わる部分について、さらに詳しく説明する。図1は本実施形態の速度制御装置(コントローラ11の手動走行時の速度制御に関わる部分)の概略構成を示すブロック図である。なお、図1に示す入力処理部60、指令速度演算部61、速度制御処理部62、電流制御処理部63の各部は、制御部48のCPUにて制御プログラムを実行することで実現される。
【0029】
入力処理部60では、アクセルペダル7の操作をアクセルスイッチ34によって検知した検知信号、アクセルペダル7の踏み込み度合をアクセルポテンショメータ35によって検出した検出信号等の信号処理を行い、これらの信号に応じて車両の設定速度を決定する。ここで、手動走行時にはアクセルポテンショメータ35の検出信号、すなわちアクセルペダル7の踏み込み度合に応じて設定速度が決まり、検出信号に応じた設定速度の値が予め制御部48のメモリに格納されている。入力処理部60ではアクセルポテンショメータ35からの検出信号に応じた設定速度をメモリから読み出して指令速度演算部61に出力する。また、入力処理部60は、ブレーキペダル8の操作をフットブレーキスイッチ38で検出した検出信号を指令速度演算部61及び速度制御処理部62に出力している。
【0030】
指令速度演算部61は、入力処理部60から与えられる設定速度に基づいて車両の実際の走行速度を決める指令速度を演算するものであって、例えば、停止又は一定速度で走行中に設定速度が現在の値よりも高い値(あるいは低い値)に変更された場合、現在の設定速度から変更後の設定速度に徐々に且つ滑らかに加速(あるいは減速)するように指令速度を変化させる。
【0031】
速度制御処理部62は、指令速度演算部61から与えられる指令速度と車速センサ41,42の検出信号(検出速度)とを一致させるためにメインモータ1に流す必要がある電流値を演算し、この電流値に応じたメインモータ指令電流を電流制御処理部63に出力する。ここで、メインモータ1に流すことのできる電流には直流電動機の仕様に応じた上限が存在し、本実施形態の場合にはその上限が約250Aに設定されているため、速度制御処理部62では指令速度と車速センサ41,42を一致させるために必要な電流値がこの上限(約250A)を超えない範囲でメインモータ指令電流を決定する。
【0032】
電流制御処理部63は、速度制御処理部62から与えられるメインモータ指令電流と電流検出部51で検出されるメインモータ1の電流(検出電流)とを一致させるために必要となるメインモータ1への印加電圧を演算し、この印加電圧に応じた指令電圧をメインモータ出力部50に出力する。ここで、本実施形態においてはメインモータ1として直流分巻電動機を用いているが、直流分巻電動機では一般に回転速度と電機子電圧とが比例し且つ回転速度と界磁電流とが反比例することから、電機子電圧(電機子電流)及び界磁電流を調整することでメインモータ1の回転速度を制御することができる。すなわち、電機子電流を増大するとともに界磁電流を減少させることでメインモータ1の回転数を上昇させて車両を加速し、電機子電流を減少するとともに界磁電流を増大させることでメインモータ1の回転数を下降させて車両を減速する、つまり電気的制動(回生制動)をかけることができる。但し、直流分巻電動機ではトルクが電機子電流と磁束(界磁電流)の相乗積に比例するため、登板時のように速度をできるだけ落とさずに大きなトルクを得たい場合には、電機子電流と界磁電流の両方を増大させる必要がある。
【0033】
而して、速度制御処理部62からは指令速度と検出速度を一致させるためにメインモータ1の電機子巻線及び界磁巻線(何れも図示せず)にそれぞれ流す必要がある電機子電流及び界磁電流の指令値がメインモータ指令電流として出力されており、電流制御処理部63では、電流検出部51で各々検出される電機子電流の検出値及び界磁電流の検出値とメインモータ指令電流の電機子電流及び界磁電流の各指令値とを一致させるために必要となる電機子巻線への印加電圧及び界磁巻線への印加電圧に応じた指令電圧をメインモータ出力部50に出力する。メインモータ出力部50は、メインバッテリ2からメインモータ1の電機子巻線及び界磁巻線への印加電圧を電流制御処理部63から与えられる指令電圧に応じて調整する。
【0034】
次に、図3のフローチャートを参照して手動走行時の制御部48の処理動作を説明する。
【0035】
まず、指令速度演算部61では、入力処理部60から与えられる設定速度と現在の指令速度が一致するか否かを判断し(ステップ1)、一致する場合にはメインモータ1に流す電流の上限を約250Aに設定する(ステップ4)。そして、速度制御処理部62が指令速度と検出速度とを一致させるためのメインモータ指令電流を演算して電流制御処理部63に出力する。電流制御処理部63では与えられたメインモータ指令電流と電流検出部51で検出される検出電流とを一致させるために必要となるメインモータ1への印加電圧を演算し、この印加電圧に応じた指令電圧をメインモータ出力部50に出力する(ステップ10)。
【0036】
一方、設定速度と現在の指令速度が一致しない場合、指令速度演算部61ではさらに設定速度が現在の指令速度を上回っているか否かを判断し(ステップ2)、上回っている(設定速度が現在の指令速度よりも大きい)、すなわち、運転者によるアクセルペダル7の踏み込み量が増やされた場合、現在の指令速度からそれよりも大きい設定速度に達するまで徐々に指令速度を増加させ(ステップ3)、ステップ4及びステップ10の処理を実行する。
【0037】
これに対して設定速度が現在の指令速度を上回っていない(設定速度が現在の指令速度よりも小さい)、すなわち、運転者によるアクセルペダル7の踏み込み量が減らされた場合、現在の指令速度からそれよりも小さい設定速度に達するまで徐々に指令速度を減少させる(ステップ5)。そして、速度制御処理部62では、運転者がブレーキペダル8を操作しているか否かを入力処理部60より入力されるフットブレーキスイッチ38の検出信号から判断し(ステップ6)、ブレーキペダル8が操作されていない場合にはメインモータ1に流す電流の上限を約250Aからそれよりも低い値(例えば、50A)に設定し(ステップ9)、ステップ10の処理を実行する。また、ブレーキペダル8が操作されている場合、速度制御処理部62ではさらに指令速度が検出速度を上回っているか否かを判断し(ステップ7)、上回っていない場合にはステップ9及びステップ10の処理を実行する。
【0038】
一方、指令速度が検出速度を上回っている場合、速度制御処理部62は指令速度を低下させて検出速度に一致させ(ステップ8)、その後、ステップ9及びステップ10の処理を実行する。このとき、指令速度と検出速度が一致しているのであるから、速度制御処理部62から出力されるメインモータ指令電流が増加することはなく、メインモータ1を加速側に制御することがない。
【0039】
このように、走行中に運転者によるブレーキ操作がブレーキ操作検出手段たるフットブレーキスイッチ38により検出されて指令速度を徐々に低下させる場合において、検出速度が指令速度を下回れば、指令速度演算手段たる指令速度演算部61が指令速度を検出速度を超えない値(例えば、検出速度と同じ値)まで低下させることによって、指令速度が低下するよりも早くに検出速度が低下して検出速度が指令速度を下回った場合においても、指令速度演算部61が指令速度を検出速度まで低下させることでメインモータ1を加速側に制御するのを防止することができる。
【0040】
また、演算手段たる速度制御処理部62では、指令速度が徐々に低下する減速時に、減速時以外の場合に対して通電電流の上限を250Aから50Aに低下させることにより、減速時における電気的制動力(メインモータ1の回生制動)を弱めている。すなわち、減速時に大きな電気的制動力がはたらくと急激な制動がかかって運転者に不快感を与えることになるため、通電電流の上限を低下させて減速時の電気的制動力を弱めることでこれを防いでいる。
【0041】
【発明の効果】
請求項1の発明は、電動機を駆動源とし、運転者のアクセル操作に応じて加速するとともに運転者のブレーキ操作に応じて車輪に機械的制動をかける電動車に用いられ、電動機への通電を制御して電動車の速度を可変制御する電動車の速度制御装置において、運転者によるアクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、運転者によるブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段と、アクセル操作検出手段並びにブレーキ操作検出手段の検出結果に応じて電動車の走行速度を設定する速度設定手段と、電動車の走行速度を検出する速度検出手段と、速度設定手段で設定される設定速度に電動車の走行速度を略一致させるまでの間における電動車の走行速度を指令する指令速度を演算する指令速度演算手段と、速度検出手段による検出速度を指令速度に略一致させるために必要な電動機への通電電流を演算する演算手段と、演算手段による通電電流の演算値に応じて電動機への通電電流を調整する調整手段とを備え、指令速度演算手段は、走行中に運転者によるブレーキ操作がブレーキ操作検出手段により検出されて指令速度を徐々に低下させる場合において、検出速度が指令速度を下回れば指令速度を検出速度を超えない値まで低下させるので、運転者のブレーキ操作により電動車に対して機械的制動がかけられて指令速度が低下するよりも早くに検出速度が低下して検出速度が指令速度を下回った場合においても、指令速度演算手段が指令速度を検出速度を超えない値まで低下させることで電動機を加速側に制御するのを防止することができるという効果がある。
【0042】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、演算手段は、電動機への通電電流が上限を超えないように演算値を求めるとともに、指令速度が徐々に低下する減速時には減速時以外の場合に対して通電電流の上限を低下させるので、通電電流の上限を低下させることにより、減速時における電気的制動力を弱めて急激な制動がかかって運転者に不快感を与えるのを防ぐことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】同上を用いた電動車の構成を示すブロック図である。
【図3】同上の動作説明用のフローチャートである。
【符号の説明】
1 メインモータ
11 コントローラ
40 操作盤
41 車速センサ
42 車速センサ
48 制御部
50 メインモータ出力部
51 電流検出部
60 入力処理部
61 指令速度演算部
62 速度制御処理部
63 電流制御処理部
Claims (2)
- 電動機を駆動源とし、運転者のアクセル操作に応じて加速するとともに運転者のブレーキ操作に応じて車輪に機械的制動をかける電動車に用いられ、電動機への通電を制御して電動車の速度を可変制御する電動車の速度制御装置において、運転者によるアクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、運転者によるブレーキ操作の有無を検出するブレーキ操作検出手段と、アクセル操作検出手段並びにブレーキ操作検出手段の検出結果に応じて電動車の走行速度を設定する速度設定手段と、電動車の走行速度を検出する速度検出手段と、速度設定手段で設定される設定速度に電動車の走行速度を略一致させるまでの間における電動車の走行速度を指令する指令速度を演算する指令速度演算手段と、速度検出手段による検出速度を指令速度に略一致させるために必要な電動機への通電電流を演算する演算手段と、演算手段による通電電流の演算値に応じて電動機への通電電流を調整する調整手段とを備え、指令速度演算手段は、走行中に運転者によるブレーキ操作がブレーキ操作検出手段により検出されて指令速度を徐々に低下させる場合において、検出速度が指令速度を下回れば指令速度を検出速度を超えない値まで低下させることを特徴とする電動車の速度制御装置。
- 演算手段は、電動機への通電電流が上限を超えないように演算値を求めるとともに、指令速度が徐々に低下する減速時には減速時以外の場合に対して通電電流の上限を低下させることを特徴とする請求項1記載の電動車の速度制御装置。
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