JP3596216B2 - 電子写真法を用いた多色印刷方法及び多色印刷装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法を用いた多色印刷方法及び多色印刷装置、特に中間転写体を用いた電子写真印刷における当該中間転写体に対するトナー画像の静電転写性を向上する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から印刷技術の一つとして電子写真法を用いた印刷が行われている。この電子写真法は感光体表面にコロナ放電によって電荷を与え(帯電)、次に被写体像を前記感光体表面に投影する(露光)。この結果、感光体の露光部では電荷が中和され、感光体表面に電荷パターン(潜像)が形成される。この電荷パターン上に摩擦帯電する現像剤(トナーなど)を散布すると、電荷に対して静電吸着が生じてトナー画像が形成される(現像)。さらに、前記トナー画像を記録媒体に転写して、トナーを溶融することによって、記録媒体に定着させて、電子写真を完成することができる。
【0003】
なお、単色印刷の場合は、前述した構成で良好な印刷を行うことができるが、多色印刷(カラー印刷)を行う場合には、各色のトナー画像を順次中間転写体上に転写して、記録媒体に転写する前にカラートナー画像を合成する。そして、一括して前記カラートナー画像を記録媒体に転写する。これは、各色トナー画像の重ね合わせ転写を行う場合に、装置内で相対的な位置決めがされた中間転写体と感光体との位置合わせ精度の方が、搬送機構等によって搬送される印刷媒体と感光体との位置合わせ精度より高いためである。また、中間転写体の表面に柔軟性を持たせることも可能なので、記録媒体として普通記録紙以外に凹凸面を有する記録紙や金属、樹脂の他、曲面を有する缶や箱等の立体物にもトナー画像の転写を行うことができる。
【0004】
上述のような中間転写体は、一般にロール形状を呈し、その表面でトナーの電荷と逆電荷によって発生する静電力によって、前記トナー画像を吸着保持する。例えば、前記中間転写体は、導体の表面に体積抵抗率が108〜1012Ωcm程度の導電性ゴムが巻き付けられ、前記導体に1.5kV程度の電圧が印加され前記導電性ゴムの表面に電荷が集まり静電力を発生している。
【0005】
ところで、前述したように中間転写体に複数色のトナー画像を重ね合わせると、先に転写保持されているトナー画像の有する抵抗等によって、静電力が弱められるため、2色目以降のトナー画像の転写保持が良好に行われないという問題がある。これに対して、例えば、特開平6−202500号公報には、中間転写体に供給する電圧をトナー画像の重ね合わせを行う度に増加して静電力を維持する多色印刷装置が示されている。この画像形成装置は、図6に示すように、感光ドラム100に現像器102Mによって、第1色目のトナー画像(マゼンダ)を形成した後、中間転写体104に第1色目のトナー画像を転写する。この時、中間転写体104の導体104aには、出力調整可能な定電圧電源106から所定の電圧(例えば,1.0kV)が供給され、導体104aの表面に配置された中抵抗弾性層104b上に必要な電荷が集まり静電力を発生し、この静電力によって転写が行われる。次に、現像器102Cによって、第2色目のトナー画像(シアン)を形成する。この時、中間転写体104の導体104aには、定電圧電源106から前回の印加電圧より高い電圧(例えば,1.5kV)が供給される。この結果、中抵抗弾性層104bは第1色目のトナー画像の影響を受けることなく必要な静電力を発生し、第1色目、第2色目のトナー画像の転写保持を行う。同様に、現像器102Yによる第3色目のトナー画像(イエロー)、現像器102Bによる第4色目のトナー画像(ブラック)を感光ドラム100から転写する場合に、順次定電圧電源106からの供給電圧を例えば2.0kV、2.5kV等に増加して、トナー画像重ね合わせによる静電力の低下を補って、中間転写体104による安定したトナー画像重ね合わせ保持を行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した多色印刷装置は、トナー画像を転写する度に中間転写体に供給する電圧を増加して行くため、中間転写体1回転に付き1画像のトナー画像しか転写することができない。その結果、4色のトナー画像を重ね転写する場合、中間転写体を4回転させる必要があり、印刷装置の転写処理速度が著しく遅くなるという問題がある。また、中間転写体の1回転の間に4色のトナー画像の転写を行うことが考えられるが、各色ごとに順次印加電圧を増加させると、相互に電圧干渉が発生し、特に連続的に複数回(枚)印刷する場合、転写再現性が不安定となるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、複数の色のトナー画像を迅速に中間転写体に転写し、効率的な転写処理が行えると共に、転写再現性の良い安定した転写を行うことのできる電子写真法を用いた多色印刷方法及び多色印刷装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記のような目的を達成するために、本発明の構成は、感光体表面に結像された単色潜像に基づいて、複数色からなるカラートナー画像を中間転写体上に重ね合わせながら静電転写し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷する電子写真法を用いた多色印刷方法において、前記中間転写体の表面に沿って複数に分割した分割領域に、該中間転写体の移動に伴って、複数の電圧供給源から供給される個別電圧が切り替えられて順次印加され、前記中間転写体の移動方向に沿って個別の独立静電領域を形成し、当該独立静電領域に順次単色トナー画像を重ね合わせながら静電転写してカラートナー画像を形成し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の構成は、感光体表面に結像された単色潜像に基づいて、複数色からなるカラートナー画像を中間転写体上に重ね合わせながら静電転写し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷する電子写真法を用いた多色印刷装置において、前記中間転写体は、表面に沿って複数に分割された分割体で構成され、各分割体表面は、前記中間転写体の移動に伴って、複数の電圧供給源から供給される個別電圧が切り替えられて順次印加され、前記中間転写体の移動方向に沿って個別の静電力を有する独立静電層を形成し、当該独立静電層に順次単色トナー画像を重ね合わせながら静電転写してカラートナー画像を形成し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷することを特徴とする。
【0010】
ここで、中間転写体の分割数は最低限、重ね合わせるトナー画像の色数であるが、被印刷体に印刷するステーションや印刷を効率的に行うための加熱ステーション、その他、印刷後の中間転写体の除電やクリーニング等を行うことを考慮すると、色数より3〜4個多く分割数を設定することが好ましい。また、カラートナー画像を構成するトナー色は、例えば、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの4色である。
【0011】
この構成によれば、中間転写体が少なくとも1回転する間に個別の静電力を有する独立静電領域(層)によって、所定色のトナー画像の重ね合わせ転写を行うことができるので、複数の色のトナー画像を迅速に中間転写体に転写し、効率的な転写処理が行うことができる。
【0012】
また、本発明の構成は、各分割体は、個別電圧の供給を順次受けるための接触子を有し、前記接触子が中間転写体の移動に伴って、個別電圧値の電圧供給源に順次接触することを特徴とする。
【0013】
ここで、分割体は、例えば、電圧供給源の電圧出力端子の周囲に移動自在に配置されたものであり、接触子が前記電圧出力端子の表面を摺動するものである。この構成によれば、分割体の移動のみで、順次探触子が異なる電圧出力端子に順次接触するので、簡単な構成により分割体表面に集まる電荷による静電力の生成切替を行うことができる。
【0014】
また、本発明の構成は、前記分割体の表面には、カラートナー画像が転写される導電性弾性体が配置されていることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記導電性弾性体とは、例えば、導電性ゴムであり、体積抵抗率が103〜1012Ωcm程度、好ましくは、105〜1010Ωcmであり、弾性係数はゴム硬度ASTMショアA:30〜60度程度である。また、前記導電性弾性体は分割体毎に個別に配置されても良いし、連続したシート状で分割体間に掛け渡されたものでも良い。なお、後者の場合、導電性弾性体の抵抗値が低い場合、隣接する分割体間で印加電圧が干渉する場合があるため、分割体の面積をトナー画像の面積より大きく設定する等の干渉防止対策を採ることが望ましい。
【0016】
この構成によれば、中間転写体が柔軟性を有し、記録媒体の表面形状に追従することができるので、記録媒体として普通記録紙以外に凹凸面を有する記録紙や金属、樹脂の他、曲面を有する缶や箱にもトナー画像の転写を行うことができる。
【0017】
また、本発明の構成は、独立静電層に保持されたカラートナー画像を被印刷体に転写印刷する直前位置に、前記カラートナー画像を構成するトナーと同じ極性の電荷またはゼロ電荷を転写印刷直前の独立静電層に供給する電源手段を有することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、独立静電層の静電力によって、吸着されているトナーを静電力から解放し、被印刷体にトナー粒子をスムーズに渡すことができる。また、転写印刷終了後の残留トナーの排除をスムーズに行うことができる。
【0019】
さらに、本発明に構成は、前記独立静電層が異なる電圧の供給を順次受け、中間転写体の移動に沿って順次静電力が大きくなることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、中間転写体の移動方向に沿って、異なる電圧が順次分割体に供給され、形成される独立静電層の静電力が分割体毎に増加するので、トナー画像の転写効率は電圧供給源の電圧に応じて一定となり転写再現性が安定する。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下、実施形態という)を図面に基づき説明する。なお、本実施形態では、電子写真法を用いた4色のトナー(イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック)による多色印刷を円筒形の缶の側面に施す例を説明する。
【0022】
図1は本実施形態の多色印刷装置10の中間転写体を中心とする説明模式図である。この多色印刷装置10は装置全体の制御を行うCPU12と、各トナー色毎に設けられた電子写真ユニット14Y,14M,14C,14Kと、前記電子写真ユニット14Y,14M,14C,14Kで形成された各色のトナー画像を重ね合わせるドラム状の中間転写体16と、被印刷体である例えば缶18を印刷位置に搬送する図示しない搬送装置と、缶に転写されたトナー画像を定着させる図示しないトナー定着装置等から構成されている。なお、前記電子写真ユニット14Y,14M,14C,14Kはトナーの色毎(例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K))に配置され、それぞれ露光装置20Y,20M,20C,20K、感光体22Y,22M,22C,22K、帯電装置24Y,24M,24C,24K、現像装置26Y,26M,26C,26K、クリーニング装置28Y,28M,28C,28K等から構成されている。また、前記中間転写体16は略ドラム状を呈し、導体16aの表面に体積抵抗率が103〜1012Ωcm程度、好ましくは、105〜1010Ωcmの導電性弾性体、例えば導電性ゴム16bが周設されている。
【0023】
本実施形態の特徴的事項は、前記中間転写体16が回転方向に沿って複数に分割された分割体30を形成し、当該分割体30がそれぞれ独立した静電力を有する独立静電層を表面に複数形成し、複数のトナー画像を順次転写保持するところである。なお、中間転写体16に転写保持されるトナーの摩擦帯電性は、トナーの構成材料によって異なるため各独立静電層に形成される静電力は使用するトナーの摩擦帯電性を考慮して決定されることが望ましい。
【0024】
図1に基づいて、カラートナー画像の転写印刷について説明する。図示しない画像読み取り装置や外部入力装置等がカラーフィルタ等を用いて色分離しながら認識した画像情報は、CPU12の指示に基づき色毎に順次電子写真ユニット14Y,14M,14C,14Kの露光装置20Y(イエロー用),20M(マゼンダ用),20C(シアン用),20K(ブラック用)に入力される。なお、色毎の処理は同じなので、イエロー(Y)を例に取って転写原理を説明する。前記露光装置20Yは、イエローの画像情報に基づいてレーザビームを照射し、感光体22Y上に潜像を形成する。前記感光体22Yは、例えば、ドラム状の導電体上に蒸着アモルファスシリコン、蒸着メモルファスセレンまたは酸化亜鉛や有機光導電体が散布された樹脂で形成され、帯電装置24Yによって、表面に電荷層が形成される。この電荷層に前記露光装置20Yからのレーザビームが照射されると、露光部で電荷が中和され、感光体22Y表面に電荷パターン(潜像)が形成される。この電荷パターン上に現像装置26Yによって、摩擦帯電する現像材(イエローのトナー)を散布すると、電荷に対して静電吸着が生じてイエローのトナー画像が形成される(現像)。同様な、潜像形成処理、現像処理等がマゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)において行われる。
【0025】
前述したように、本実施形態において中空ドラム状の中間転写体16は回転方向(例えば、反時計回り方向)に沿って、複数(例えば8等分)に分離され分割体30を形成している。前記分割体30の内周側、すなわち中間転写体16の内部には、前記分割体30に所定の電圧を印加するための電圧供給源(本実施形態では電極)が配置されている。トナー色が4色の場合、前記電圧供給源が供給する電圧の種類も4種類であり、中間転写体16の回転方向に沿って異なる電圧供給源32a〜32dが配置されている。前述したように転写保持するトナーの摩擦帯電性はトナー毎に異なるので、使用するトナーに応じて各分割体30の静電力が変更できるようにしておくことが望ましい。従って、トナーの種類によっては、隣接する分割体30の表面に形成される静電力が同じでよい場合もある。また、分割体30毎に異なる静電力を形成する場合もある。本実施形態の場合、トナーの摩擦帯電性は、個々に異なるものとして、隣接する分割体30の表面に異なる静電力を形成する場合を例にとって説明する。この場合、各電圧供給源から供給される電圧がそれぞれ異なり、4種類の電圧V1〜V4は、例えば300V、350V、400V、450Vである。なお、本実施形態では、電圧が順次大きくなる例を説明しているが、トナーの転写順序によっては、必ずしも順次大きくなる必要はなく、300V、400V、350V、450Vのような順番になる場合もある。そして、前記電圧供給源32a〜32dは中間転写体16内部に固定され、その周囲を分割体30が順次回転する(構造に付いては後述する)。従って、電圧供給源32aの位置に移動してきた分割体30が電圧供給源32aの電圧供給を受け、その電圧に対応する静電力による独立静電層を導電性ゴム16b上に形成する。続いて、同一の分割体30が電圧供給源32bの位置に移動すると、電圧供給源32bの電圧供給を受け、その電圧に対応する静電力による新たな独立静電層を形成する。以下、同様に分割体30の移動に伴って電圧供給源32c,32dからの電圧供給を順次受け、分割体30上に形成される独立静電層の静電力を増加していく。
【0026】
上述したように順次静電力を変化させていく分割体30には、まず、電圧供給源32aによる静電力により、感光体22Y上に形成されているイエローのトナー画像が吸着転写される。なお、この転写動作後、感光体22Y上に残留しているトナーはクリーニング装置28Yによって除去され、感光体22Yは次の潜像形成に備える。イエローのトナー画像を保持した分割体30は、次に電圧供給源32bの位置に移動し、前記電圧供給源32bにより発生する静電力により、感光体22M上に形成されているマゼンダのトナー画像をイエローのトナー画像の上面に吸着転写する。このように、分割体30毎に個別の独立静電層を形成するため、分割体30毎の電圧制御が容易になる。なお、この時、電圧供給源32bは電圧供給源32aより大きな電圧を供給すれば、分割体30はイエローのトナー画像の転写による静電力の低下を補い、良好なマゼンダのトナー画像の吸着転写が行われる。同様に、電圧供給源32c、32dの位置で、順次更新的に発生する静電力によって、シアン、ブラックのトナー画像の吸着転写を行い、最終的にカラートナー画像を安定して形成することができる。
【0027】
4色のトナー画像が重ね合わせが完了したら、重ね合わせ状態を維持したまま被印刷体である缶18に転写印刷を行うための準備を行う。本実施形態の場合、転写印刷前に重ね合わせしたトナーを赤外線ヒータ34等によって加熱溶融する。そして、缶18を図示しない搬送機構によって順次転写印刷位置に移動し、前記缶18を転写印刷の準備ができた分割体30に押圧し、溶融したカラートナー画像を当該缶18に転写印刷する。この後、分割体30は缶18に転写されずに残留したトナーを回収したり、分割体30上に残留する電荷(静電力)の除去を行った後、新たなイエロートナー画像の転写の為に電圧供給源32aの位置に移動する。
【0028】
なお、図1において、各画像情報を露光装置20Y,20M,20C,20Kに供給するタイミングやレーザービームを発生するタイミング、感光体22Y,22M,22C,22Kや中間転写体16の回転速度、缶18の供給タイミング等すべての動作で同期を取る必要があるが、これらは前記CPU12によって全て行われる。
【0029】
図2〜図4を用いて、多色印刷装置10の中間転写体16及びその周辺の具体的な構造を説明する。図2、図3に示すように中間転写体16は中空のドラム形状を呈し、リング状の外周部36aと円筒状の中心部36bとが複数のスポーク38によって接続されている。そして、前記中心部36bには、中心軸40が固定され、中間転写体16の回転駆動源であるモータ(望ましくはフィードバック制御可能なモータ)42の出力軸42aに接続され、当該中間転写体16を精密に回転駆動するようになっている。また、前記中心軸40と同軸に前記電圧供給源32a〜32dを保持する固定プレート44が固定されている。この固定プレート44は多色印刷装置10の図示しないフレームに固定されている。すなわち、中間転写体16が電圧供給源32a〜32dに対して相対移動可能に配置されることになる。
【0030】
前記固定プレート44の一面側には凸部44aがリング状に形成され、各色のトナー画像の転写位置に対応する位置で所定の電圧印加ができるように電圧供給源32a〜32dが固定されている。なお、本実施形態の場合、図3に示すようにリング状の電極保持体32が前記凸部44aに固定され、電圧供給源32a〜32dの電極が所定位置に固定されている。なお、電圧供給源32a〜32dの本体は、多色印刷装置10の任意の位置の固定されている。また、固定プレート44と中心軸40との接触部分にはベアリング等が挿入され、中間転写体16が固定プレート44に対してスムーズに回転できるようになっている。
【0031】
一方、中間転写体16は、図3に示すようにドラム表面が複数(図3の場合12等分)に分割され分割体30を形成している。本実施形態の場合、図3、図4に示すように、12角形の外周部36aの外周側に絶縁シート46が配置され、その上面に導体(例えば、銅版)16aが分割配置され、個々の分割体30を形成している。なお、本実施形態の場合、導体16aは前記12角形の一辺より小さく形成され、隣接する導体16a同士が電気的に非接触になるように配置されている。また、前述したように前記導体16aの上面には体積抵抗率が103〜1012Ωcm程度、好ましくは、105〜1010Ωcmであり、弾性係数はゴム硬度ASTMショアA:30〜60度程度の導電性ゴム16bが固定配置されている。この導電性ゴム16bは図1に示すように導体16a毎に分離して固定しても良いし、図4に示すように導電性ゴム16bを連続したシート状に形成し、分割体30間に掛け渡してもよい。この場合、表面的が不連続にならないためトナー等が分割体30の繋ぎ目にたまってしまうことがなく、残留トナーによる色滲み等を防止することができるが、各分割体30に電圧を印加した場合、隣接する分割体30間で電圧の干渉を起こす場合があるため、分割体の面積をトナー画像の有効面積より大きく設定して、分割体30の外縁部干渉がトナー画像の転写の影響しないようにすることが望ましい。なお、本実施形態の場合、隣接する分割体30同士で電圧干渉が少ないので、導電性ゴム16bの体積抵抗率を一般の中間転写体を利用したシステムより小さくすることが可能になる。その結果、転写時に導電性ゴム16bに注入された電荷の放出時間が短くなり、システムの駆動サイクルタイム短縮し、高速印刷に対応することが可能になる。
前記スポーク38には、前記分割体30と電圧供給源32a〜32dの電極とを電気的に接続するための接触子48を保持するためのアーム50が固定されている。図2、図4に示すように、前記アーム50の開放端には略L字形に成形された板ばね52が取り付けられ、その先端に接触子48(例えば、カーボンブラシ)が固定されている。前記板ばね52は接触子48が電極保持体32に接触するように常時付勢力を発生している。従って、中間転写体16が回転した場合でも接触子48は常に電極保持体32上を摺動することになる。本実施形態では、図4に示すように、前記接触子48は、板ばね52に接続されたワイヤー54によって、所定の導体16aに接続されている。この結果、中間転写体16の回転に伴って接触子48が電圧供給源32a〜32dの電極上を順次移動することによって、導体16aに順位電圧が印加され、分割体30に所定の静電力が発生する。なお、図2は図面の簡略化のためアーム50等は1セットのみ示している。
【0032】
次に、図3の構成の多色印刷装置10の動作を図3中符号Aで示される分割体30(以下、分割体Aという)に着目して説明する。なお、多色印刷装置10は中間転写体16が12等分され、12個の分割体30が形成されていると共に、中間転写体16の周囲に7箇所の作業ステーションが形成されている。Y,M,C,Kの電子写真ユニット14Y,14M,14C,14Kは転写ステーションS100,S200,S300,S400に配置され、その下流側に転写されたカラートナーを加熱溶融する加熱ステーションS500、さらに下流に被印刷体である缶18に転写印刷を行う印刷ステーションS600、さらに下流に残留トナーを除去回収するクリーニングステーションS700が設けられている。
【0033】
分割体Aは、図3に示す現位置では電圧が印加されていないためその表面には静電力は発生していない。中間転写体16がモータ42(図2参照)の駆動により反時計回り方向に回転すると、分割体Aに接続された接触子48A(図4参照)が転写ステーションS100に到達し、電圧供給源32aの電極と接触し始める。この瞬間、分割体Aの表面(導伝性ゴム16bの表面)には、電圧供給源32aの電圧に応じた静電力が発生すると共に、中間転写体16の回転に伴って電子写真ユニット14Yで作成されたイエローのトナー画像が前記静電力によって吸着され転写保持される。中間転写体16の回転が進みイエローのトナー画像の転写が終了すると、分割体Aは転写ステーションS200に到達し、接触子48Aは電圧供給源32bの電極の接触し始める。この瞬間、分割体Aの表面(導伝性ゴム16bの表面)には、電圧供給源32bの電圧に応じた静電力(本実施形態の場合、電圧供給源32aによる静電力より大きい)が発生すると共に、中間転写体16の回転に伴って電子写真ユニット14Mで作成されたマゼンダのトナー画像が前記静電力によってイエロートナー画像の上面に重ね合わされた状態で吸着され転写保持される。
【0034】
同様に、中間転写体16の回転に伴って接触子48Aが転写ステーションS300,S400に到達し、電圧供給源32c,32dの電極と順次接触すると、それぞれ対応した静電力が発生し、シアン、ブラックのトナー画像が順次重ね合わされて保持される。そして、4色のトナー画像を重ね合わせ保持している分割体Aは、加熱ステーションS500に配置された赤外線ヒータ56等の加熱手段により加熱溶融される。一方、缶18はループ搬送型の搬送装置58によって、印刷ステーションS600に導かれ、中間転写体16に押圧される。この時、カラートナー画像の転写印刷をより良好に行うために、缶18の搬送途中に赤外線ヒータ60等の加熱装置を配置し、缶18自体の加熱を行うことが好ましい。また、前記印刷ステーションS600には、分割体Aの表面からカラートナーをより効率的に剥離し、缶18に転写印刷するために、トナーと同じ極性の電荷またはゼロ電荷を分割体Aの表面に供給する電圧供給源32eを配置しても良い。この場合、分割体Aは接触子48Aによって転写ステーションS100等と同様に電圧の供給を受け、形成されている独立静電層はトナーを反発する反発力を発生するようになる。なお、印刷ステーションS600で静電力を利用してカラートナー画像の転写印刷を行う場合、加熱ステーションS500における加熱は実施されず、カラートナー画像の転写後に、缶18の搬送路内で加熱し、カラートナー画像の融解定着を行う。なお、缶18に転写印刷されたカラートナー画像は必要に応じて、強制冷却され缶18に定着され、多色印刷処理を終了する。
【0035】
印刷ステーションS600を通過した分割体AがクリーニングステーションS700に到達すると、周知のクリーニング装置62によるクリーニング処理を行う。このクリーニング処理は、例えば、逆バイアスによる分割体Aの除電処理やスクレーパや転写熱ロールを用いた残留トナーの除去処理である。
【0036】
このように、中間転写体16が複数の分割体30から構成され、中間転写体が少なくとも1回転する間に異なる静電力を有する独立静電層によって、所定色のトナー画像の重ね合わせを行うことができるので、複数の色のトナー画像を迅速に中間転写体に転写し、効率的な転写処理が行うことができる。また、中間転写体16の移動方向に沿って、個別電圧が順次分割体30に供給され、形成される独立静電層の静電力が分割体30毎に増加するので、トナー画像の転写効率は電圧供給源の電圧の応じて一定となり転写再現性が安定する。
【0037】
なお、本実施形態では、被印刷体として円筒の缶(アルミ製、スチール製等)を例に取って説明したが、印刷対象は任意であり、例えば、プラスチック製ボトル、カップ、チューブ等やシート状の紙や布、フィルム(プラスチックや金属箔等で形成された積層フィルムも含む)、積層フィルムで構成される袋や紙コップ等でも同様な効果を得ることができる。なお、ロール状に巻かれたシート状の被印刷体にカラートナー画像の転写印刷を行う場合、例えば、図5に示すように、巻き出しロール64から巻き出されるシート66(被印刷体)を印刷ステーションS600に配置された加熱装置を有する加熱ロール68に供給し転写印刷を行う。この時、シート66がたるまないように加熱ロール68の前後に張力制御装置70a、70bを配置することが望ましい。転写印刷が終了したシート66は、冷却処理等が施され、巻き取りロール72に巻き取られる。
【0038】
また、図2〜図4に示した実施形態の構造は一例であり、中間転写体が複数に分割され、表面に複数の独立静電領域が形成されれば、上記実施形態と同様の効果を得ることが可能で、例えば、作業ステーションの配置やその構成、また転写するトナーの種類や数、印加電圧の値、各分割体に電圧を印加する方法や中間転写体の回転構造等は適宜選択することができる。また、中間転写体もドラム形状に限定されることなく任意に変形しても良いし、柔軟性を有するベルトで構成してもよい。
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、中間転写体を複数に分割し、その表面に、個別電圧の印加によって、独立した静電力の複数の独立静電領域を形成し、中間転写体が少なくとも1回転する間に順次トナー画像の重ね合わせ転写保持を行うので、複数の色のトナー画像を迅速に中間転写体に転写し、効率的な転写処理が行えると共に、独立静電領域の静電力が順次大きくなるように設定すれば、転写再現性の良い安定した転写を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る多色印刷方法を説明する説明模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る多色印刷装置の中間転写体とその周辺を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る多色印刷装置の中間転写体を中心とする全体構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係る多色印刷装置の中間転写体の部分拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る多色印刷装置でシート状の被印刷体を供給する供給機構を説明する説明図である。
【図6】従来の多色印刷装置を説明する説明図である。
【符号の説明】
10 多色印刷装置、14Y,14M,14C,14B 電子写真ユニット、16 中間転写体、16a 導体、16b 導電性ゴム、18 缶、30 分割体、32a,32b,32c,32d 電圧供給源、46 絶縁シート、48 接触子。
Claims (6)
- 感光体表面に結像された単色潜像に基づいて、複数色からなるカラートナー画像を中間転写体上に重ね合わせながら静電転写し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷する電子写真法を用いた多色印刷方法において、
前記中間転写体の表面に沿って複数に分割した分割領域に、該中間転写体の移動に伴って、複数の電圧供給源から供給される個別電圧が切り替えられて順次印加され、前記中間転写体の移動方向に沿って個別の独立静電領域を形成し、当該独立静電領域に順次単色トナー画像を重ね合わせながら静電転写してカラートナー画像を形成し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷することを特徴とする電子写真法を用いた多色印刷方法。 - 感光体表面に結像された単色潜像に基づいて、複数色からなるカラートナー画像を中間転写体上に重ね合わせながら静電転写し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷する電子写真法を用いた多色印刷装置において、
前記中間転写体は、表面に沿って複数に分割された分割体で構成され、
各分割体表面は、前記中間転写体の移動に伴って、複数の電圧供給源から供給される個別電圧が切り替えられて順次印加され、前記中間転写体の移動方向に沿って個別の静電力を有する独立静電層を形成し、当該独立静電層に順次単色トナー画像を重ね合わせながら静電転写してカラートナー画像を形成し、このカラートナー画像を被印刷体に印刷することを特徴とする電子写真法を用いた多色印刷装置。 - 請求項2記載の装置において、
各分割体は、個別電圧の供給を順次受けるための接触子を有し、
前記接触子が中間転写体の移動に伴って、個別電圧値の電圧供給源に順次接触することを特徴とする電子写真法を用いた多色印刷装置。 - 請求項2または請求項3記載の装置において、
前記分割体の表面には、カラートナー画像が転写される導電性弾性体が配置されていることを特徴とする電子写真法を用いた多色印刷装置。 - 請求項2から請求項4までのいずれか1の請求項に記載の装置において、
独立静電層に保持されたカラートナー画像を被印刷体に転写印刷する直前位置に、前記カラートナー画像を構成するトナーと同じ極性の電荷またはゼロ電荷を転写印刷直前の独立静電層に供給する電圧供給源を有することを特徴とする電子写真法を用いた多色印刷装置。 - 請求項2から請求項5までのいずれか1の請求項に記載の装置において、
前記独立静電層が異なる電圧の供給を順次受け、中間転写体の移動に沿って順次静電力が大きくなることを特徴とする電子写真法を用いた多色印刷装置。
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