JP3595723B2 - 水性金属材料表面処理剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水性の金属材料表面処理剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、鉄、鉄鋼、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、スズ、チタン材料等の表面保護を必要とする金属材料、特に工業上最も重要な材料の1つである鉄鋼材料の表面に亜鉛、亜鉛基合金、アルミ亜鉛合金、アルミニウム等をめっきしためっき鋼材の防錆処理のために用いる水性金属材料表面処理剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属材料、とりわけその代表的存在である鉄鋼材料は、その優れた物理的性質と経済性により工業材料の不動の王座を依然として維持している。その背景には、鉄鋼材料の最大の弱点である腐食損耗に対する不断の対策努力が成されてきたことを見逃すことはできない。その代表的存在が鋼材表面に亜鉛、亜鉛基合金、アルミ亜鉛合金、アルミニウム等がめっきされためっき鋼材である。鋼材表面に被覆された亜鉛、亜鉛基合金、アルミ亜鉛合金、アルミニウム等のめっき金属は、母材の鋼材に対して、通常、電位的に卑となり犠牲防食作用を示すと共に、表面にバリヤー化合物層を形成してめっき層自身の損耗を防ぎ、長期間に亘り母材である鋼材の保護を可能ならしめている。
【0003】
めっき層である亜鉛、亜鉛基合金、アルミ亜鉛合金、アルミニウム等は実際の使用環境で酸化されて表面にこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、塩化物等からなるバリヤー化合物層を形成してめっき金属層を保護するが、バリヤー効果は完全ではないので、めっき層の損耗が徐々に進行し、めっき層の消滅した時点で母材の腐食が進行する。このバリヤー化合物層には白色を呈する白錆または灰色〜黒色を呈する黒錆等があり美観上は好まれず、特にめっき鋼材が実際の使用に供せられるまでの流通過程で発生した場合は不良クレームになる。このため通常これらのめっき鋼材はクロム酸塩を主成分とするクロメート処理を施されて出荷されている。
【0004】
これらめっき鋼材の中で最も生産量が多いものは板状および帯状の製品である。めっき鋼帯は帯状の鋼材を連続めっきラインでめっきすることにより生産される。板状製品は通常鋼帯状でめっきされた後、スリッターラインで切断されて作られる。連続めっきラインはきわめて生産性が高く通板速度は一般に100〜200メートル/分である。めっき鋼帯のクロメート処理は、通常連続めっきライン内で実施され、その工程はめっき工程と鋼帯巻取り装置の間に設置されている。
【0005】
連続めっきラインは高速であるため、反応時間と後水洗工程を要する反応型クロメート処理は長い処理ゾーンを必要とするので好ましくなく、通常非反応型の塗布型クロメート処理が採用されている。その処理方法はクロム酸を含有する水性組成物をスプレー法または浸漬法でめっき鋼板表面に接液させた後、余剰の液をロール絞りまたは気体絞りで排除して塗布するか、一定量をロールコーターで塗布した後、直ちに加熱エアー、赤外線、遠赤外線、誘導加熱等の加熱方法で乾燥させるものである。
【0006】
連続めっきラインが国内で初めて建設されてしばらくの期間は塗布型クロメート処理として単純な無水クロム酸水溶液による処理が実施されてきた。めっき鋼板が製品化された当初は短期間の防錆(白錆発生の抑制)だけが要求されたにすぎなかったが、近年では、さらに高度な耐食性、耐黒変性、加工性、耐指紋性、上塗り塗装密着性、低公害性(クロム固定率)、皮膜の耐薬品性等多岐に亘る要求項目を満足する必要が出てきている。
【0007】
これらの要求性能を満足すべく合成樹脂含有型クロメート処理液を用いた処理を施すことにより付加価値を高める表面処理方法が知られており、例えば、特公昭44−5285号、特公昭44−8337号、特公昭49−31026号、特公昭49−40865号、特開昭50−57931号、特公平7−6070号、特公平6−59717号、特開平5−279867号、特開平6−192850号公報等に数多くの関連技術が開示されている。これらの先行技術は、水溶性合成樹脂もしくは合成樹脂分散液とクロム酸化合物を主成分としており、これらの合成樹脂含有型クロメート処理により金属材料表面上に形成される皮膜は、通常の無機クロメート皮膜に比べて、耐食性、上塗り塗装密着性、耐指紋性、クロム固定率、潤滑性、加工性、外観等の性能において優れている。これらの先行技術は、その用途により以下に示すように大別できる。
【0008】
通常の無機クロメート皮膜に対して0.01〜2倍程度の合成樹脂材料をクロメート処理液に配合すると、通常、耐食性、耐指紋性、クロム固定率、潤滑性、加工性等の諸性能をワンランク向上させることができる。また、極性基を有するアクリル酸、マレイン酸等を構造中に多く含む水溶性高分子を配合すると、通常、特に上塗り塗装密着性を向上させることができる。以上のように、無機クロメート皮膜中に比較的少量の樹脂材料を配合した樹脂含有型クロメート処理は、通常の無機クロメート処理の高機能グレードとして位置付けられている。
【0009】
一方、クロメート皮膜に対して2〜300倍程度の合成樹脂材料を配合した合成樹脂含有型クロメート処理皮膜は、通常、合成樹脂分散液とクロム化合物水溶液との混合液を下地金属表面上に塗布乾燥することにより形成され、特に加工性、加工部を含めた耐食性、潤滑性、クロム固定率等を飛躍的に改良することができ、通常の無機クロメート処理とは別格の高級処理として位置付けられている。この系統の処理剤は、一般にクロム化合物に対する樹脂材料の比率が非常に多いため、クロメート含有樹脂皮膜剤として差別化され、最近では市場ニーズが非常に拡大している。
【0010】
しかし、前記クロメート含有型樹脂皮膜を工業的に使用するに当っては、クロム酸イオンが強酸化性物質であることにより合成樹脂分散液中の乳化剤成分が酸化分解され、系の分散安定性を損ねる場合があり、ロールコーター等での塗布工程にて処理液のゲル化や、極度な増粘等が発生し易くなるため安定な操業が望めなくなることがあった。この現象は、合成樹脂分散液に対するクロム酸イオンの配合量が多い場合や、3価クロムイオンや多価金属イオンを含有させるため、皮膜生成時に余剰の6価クロムイオンを還元することでのクロム固定率向上効果やクロム酸還元生成物との金属架橋効果、等を目的として系のpHを酸性サイドに調整した場合などでは特に発生し易くなる。これらの問題に対して、前記特公平7−6070号、特開平5−279867号、特開平6−192850号公報等では、合成樹脂分散液に対する乳化剤成分として特定のノニオン性界面活性剤を配合することで工業的操業安定性を向上させている。また、特公平6−59717号公報の様に、ラジカル重合可能なアニオン性および/またはノニオン性反応性乳化剤を含有し、かつpHを6〜8、樹脂固形分100重量部に対する6価クロムの配合量を0.1〜2重量部に調整することにより実用的な安定性を確保しようとする技術も開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記先行技術に示されているノニオン性界面活性剤を用いて分散安定性を高めたクロメート含有型樹脂皮膜剤を塗布乾燥することにより得られる皮膜中では、界面活性剤成分が比較的親水性であるため樹脂皮膜中に十分に相溶できずに偏析するため、これらが多く存在すると樹脂皮膜の連続性を大きく阻害し、耐水性に関する諸性能を低下させる原因となる。一方、ラジカル重合可能なアニオン性および/またはノニオン性反応性乳化剤を用いて乳化重合することによって分散安定化を目指した先願技術に関しても、pH領域の制限、6価クロム配合量の制限等に縛られるため薬剤設計上の自由度が低く、さらなる高性能化、高機能化を要求する今後の市場ニーズへの対応に関しては大きな障害となる。
【0012】
本発明の目的は、合成樹脂分散液に対して必要十分量の6価クロムイオン(クロム酸イオン)、さらに必要に応じ、6価クロムイオンの一部を代替する形での3価クロムイオン、多価金属イオン、無機酸、潤滑成分等をpH5以下の酸性サイドに調整した処理液中でも実用的な安定性を損なわずに含有できるにも拘らず、完成皮膜の耐水に関係する諸性能、すなわち、耐食性、耐黒変性、上塗り塗装の耐水二次密着性、低公害性(クロム固定率)、耐薬品性(特に耐酸性、耐アルカリ性)等の多岐に亘る要求項目を高度に満足する、水性の金属材料表面処理剤としてのクロメート含有型樹脂皮膜剤を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、ある特定のモノマー組成において、エマルジョン製造時における乳化剤としてノニオン性で1分子当りに少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤と、ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤とを組み合わせて使用することにより、上記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は下記合成樹脂エマルジョンと、6価クロムイオンを含有し、かつ5以下のpHを有することを特徴とする水性金属材料表面処理剤である。本発明に用いる合成樹脂エマルジョンとは、
1)、エチレン性不飽和カルボン酸の1種以上からなる第1単量体成分と、2)、N−非置換もしくは置換メチロール−カルバモイル基、ホスホン基、アルキコシ基、シアノ基およびカルバモイル基の少なくとも1個を含有する官能性アクリル系の第2単量体成分と、3)、1)、2)に含まれず、1)、2)と共重合可能であり、得られる共重合体の骨格を形成する第3単量体成分とを、ノニオン性で1分子当りに少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤と、ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤とを用いて乳化重合することにより得られた合成樹脂エマルジョンである。
【0015】
本発明の水性金属材料表面処理剤は上記のごとき一液型の組成物であるだけでなく、前記合成樹脂エマルジョンと6価クロムイオン含有水溶液とからなる二液型の水性金属材料表面処理剤であって、両者を混合した際に前記の水性金属材料表面処理剤とすることができる二液型の水性金属材料表面処理剤であることもできる。この形態は一液型よりもむしろ実用に適した形態であり得る。
【0016】
前記、ノニオン性で1分子当りに少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤:ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤の重量比は10:1〜50であることが好ましい。前記第1〜3の単量体間の使用比率は、第1〜3の単量体の合計量に対して、第1単量体が0.5〜10重量%、第2単量体が0.5〜60重量%、第3単量体が30〜99重量%であることが、後述する種々の観点から、好ましい。前記第3単量体成分としては、完成皮膜の諸物性を考慮し、2)に含まれない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、α位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル、塩化ビニル、ビニルトルエンおよびエチレンから選ばれる1種以上が好ましい。
【0017】
本発明の水性金属材料表面処理剤(二液型の場合、6価クロムイオン含有水溶液)は、さらに3価クロムイオンを6価クロムイオンの一部を代替する形で含有し、3価クロムイオン/(6価クロムイオン+3価クロムイオン)の重量比が0.1〜0.9であることが、金属材料表面に形成されるクロメート皮膜の水難溶性を高めてクロム固定率を向上するために好ましい。また、本発明の水性金属材料表面処理剤(二液型の場合、6価クロムイオン含有水溶液)は、3価クロムイオンを含有する場合において、さらにリン酸イオンを、リン酸イオン(PO3− )/(6価クロムイオン+3価クロムイオン)の重量比が0.05〜5.0となるように含有させる場合には、3価クロムイオン/(6価クロムイオン+3価クロムイオン)の重量比を高め、また3価クロム化合物による着色を抑止することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の水性金属材料表面処理剤は、金属材料への適用に際しては、一液型の、すなわち組成物として適用されるが、一液とした後は若干でも酸化還元反応が進行することを考慮し、製造、流通、貯蔵の期間を通しては二液型として、すなわち前記合成樹脂エマルジョンと6価クロムイオン含有水溶液とからなる二液型の表面処理剤として提供されるのが実用的である。二液型の表面処理剤は使用時ユーザーにて両液を指示されたまたは適当な比率で混合して、一液型の本発明の水性金属材料表面処理剤にする。
【0019】
本発明の水性金属材料表面処理剤は、基本的には従来のクロメート含有型樹脂皮膜剤に使用する合成樹脂エマルジョンとして、ノニオン性でラジカル重合可能な反応性乳化剤と、ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤とを組み合わせて乳化重合した、ある特定のモノマー組成からなる合成樹脂エマルジョンを使用したものである。
【0020】
本発明の水性金属材料表面処理剤において使用する合成樹脂エマルジョンは、クロメート含有型樹脂皮膜剤の主要成分として、樹脂膜のバリヤー効果による高耐食性、耐指紋性、クロム固定率、潤滑性、加工性、外観等の性能向上に絶大な効果を示すものであり、次の1)、2)、3)の各群の単量体を乳化共重合したものである。
1) エチレン性不飽和カルボン酸の1種以上からなる第1単量体成分、
2) N−非置換もしくは置換メチロール−カルバモイル基、ホスホン基、アルコキシ基、、シアノ基およびカルバモイル基の少なくとも1個を含有する官能性アクリル系の第2単量体成分、および
3) 1)、2)に含まれず、1)、2)と共重合可能であり、得られる共重合体の骨格を形成する第3単量体成分。
以下、各群の単量体について説明する。
【0021】
1)のエチレン性不飽和カルボン酸単量体とは、不飽和モノまたはジカルボン酸単量体を指す。エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、主として金属に対する密着性に寄与するカルボキシル基の供給源である。エチレン性不飽和カルボン酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸など、およびこれらのハーフエステルを含む。
【0022】
2)のN−非置換もしくは置換メチロール−カルバモイル基、ホスホン基、アルコキシ基、シアノ基およびカルバモイル基の少なくとも1個を含有する官能性アクリル系単量体とは、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のN−非置換もしくは置換(特に低級アルコキシ(C=1〜4、特に1もしくは2)置換)メチロール基を有する(メタ)アクリルアミド、ホスホニルオキシメチルアクリレート、ホスホニルオキシエチルアクリレート、ホスホニルオキシプロピルアクリレート、ホスホニルオキシメチルメタクリレート、ホスホニルオキシエチルメタクリレート、ホスホニルオキシプロピルメタクリレート等のホスホニルオキシ低級アルキル(C=1〜4、特に1もしくは2)(メタ)アクリレート、メトキシメチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート等の低級アルコキシ(C=1〜4、特に1もしくは2)低級アルキル(C=1〜4、特に1もしくは2)(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等を含む。
前記2)の単量体は、それぞれが有するN−非置換もしくは置換メチロール−カルバモイル基、ホスホン基、アルコキシ基、シアノ基またはカルバモイル基により、本発明の組成物が形成する金属表面処理皮膜と、その上に塗装した塗膜との密着性向上に寄与する。
【0023】
3)の1)、2)に含まれず、1)、2)と共重合可能であり、得られる共重合体の骨格を形成する第3単量体は、一般の乳化重合に使用可能なエチレン性の不飽和結合を有する単量体であれば、上記制限以外に特に制限なく使用できる。また、3)の単量体は、本発明で使用する合成樹脂エマルジョンの骨格を構成し、樹脂の硬軟、可撓性、強伸度、弾性、粘着性、ガラス転移温度、最低造膜温度などの物性、および化学的安定性などを支配する基本単量体であるので、用途により完成皮膜の諸物性を考慮する場合は、2)に含まれない(メタ)アクリル酸エステルの1種以上からなるアクリル系単量体、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート等の炭素数1〜8のアルカノールと(メタ)アクリル酸とのエステル、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、α位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル、塩化ビニル、ビニルトルエン、エチレンから選ばれた1種以上であることが好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステルは皮膜の耐候性に優れ、ガラス転移温度の設定が容易である。スチレンは耐水性、耐アルカリ性に優れているのでより好ましい。
【0024】
なお、前記2)に示したアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、2)の官能性単量体としての密着性向上作用を有すると共に、3)に示した骨格単量体としても作用する特異な単量体である。したがって、例えば、アクリル酸−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート−スチレンという組合せも可能であり、得られた共重合体は、本発明で用いる合成樹脂エマルジョンとして十分な効果を示す。
【0025】
単量体1)、2)、3)間の使用比率については、単量体1)+2)+3)に対し、1)が0.5〜10重量%、2)が0.5〜60重量%、3)が30〜99重量%であるのが適当である。1)が0.5重量%より少ないと重合安定性(重合時に凝集物の発生やゲル化が起こらない程度)が不良となり、10重量%より多いと得られる合成樹脂エマルジョンと6価クロムイオンを提供するクロム酸もしくはクロム酸塩との混和安定性が不良となる場合がある。1)は好ましくは1〜5重量%である。2)が0.5重量%より少ないと上塗り塗装密着性が不良となる場合があり、60重量%より多いと、重合安定性、エマルジョンの貯蔵安定性、クロム酸もしくはクロム酸塩との混和安定性、組成物の貯蔵安定性が不良となる場合がある。2)は好ましくは1〜50重量%である。3)が30重量%より少ないと、2)の成分が過剰になり、重合安定性、エマルジョンの貯蔵安定性、クロム酸もしくはクロム酸塩との混和安定性、組成物の貯蔵安定性が不良となる場合があり、99重量%より多いと、1)、2)の成分が過少となり、重合安定性や上塗り塗装密着性が不良となる場合がある。3)は好ましくは、45重量%以上、特に1)、2)の好ましい値との関係から45〜98重量%である。
【0026】
本発明に使用する合成樹脂エマルジョンの重合時に使用する乳化剤としては、ノニオン性で1分子当り少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤と、ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤とを組み合わせて使用する。
かかるノニオン性でラジカル重合可能な反応性乳化剤としては、従来既知のものを広範囲に使用することができ、それらの例として下記構造式のものが挙げられる。
【0027】
【化1】
Figure 0003595723
【0028】
【化2】
Figure 0003595723
【0029】
上記式1)中、mは種々変り得るが、通常8〜12特に8もしくは9である。上記式2)の反応性乳化剤は、ポリエチレンオキシドのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、ポリプロピレンオキシドのアクリル酸またはメタクリル酸エステル、およびエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック共重合体のアクリル酸またはメタクリル酸エステルを包含し、具体的には以下の化合物が好適なものとして列挙される。
【0030】
【化3】
Figure 0003595723
【0031】
上記式3)中、Rはそれぞれ炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはフェニルアルキルもしくはフェニルアルケニル基である。ここでアルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。また、アルケニル基としては、例えば、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。さらにフェニルアルキルもしくはフェニルアルケニル基としては、例えば、スチリル基、ベンジル基等が挙げられる。Rは水素原子、またはそれぞれ炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基またはフェニルアルキルもしくはフェニルアルケニル基である。ここでアルキル基、アルケニル基およびフェニルアルキルもしくはフェニルアルケニル基としてはRについて列挙したのと同様なものが挙げられる。Aは炭素数2〜4のアルキレン基を意味し、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられる。重合数nは1〜200の整数であり、好ましくは2〜100の整数である。式3)に入る好適な具体的化合物として、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド10モル付加体、オクチルジプロペニルフェノールエチレンオキシド100モル付加体、ドデシルプロペニルフェノールエチレンオキシド20モル・プロピレンオキシド10モルランダム付加体、ドデシルプロペニルフェノールブチレンオキシド4モル・エチレンオキシド30モルブロック付加体等が挙げられる。
【0032】
上記式4)中、Rに関し、炭化水素基は、通常、それぞれ炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基等を包含し、さらに炭素数8〜24の飽和もしくは不飽和カルボン酸のアシル基を包含する。Rの具体例として、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、エイコシル基、オクチルフェニル基、ジノニルフェニル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、オレオイル基、リノレオイル基、エイコサノイル基等が挙げられる。Aは炭素数が2〜4のアルキレン基であり、エチレン、プロピレン、ブチレン等を包含し、エチレンが特に好ましい。また、L+mは20〜80であることが好ましい。
【0033】
上記式5)中、R、Rに関し、炭化水素基は、通常、炭素数1〜18のアルキル基、オレイル基等のアルケニル基、炭素数6〜30のフェニル基もしくはアルキルフェニル基等を包含し、アシル基は炭素数2〜18の飽和もしくは不飽和カルボン酸のアシル基を包含する。炭化水素基の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、フェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、ジノニルフェニル基等が挙げられ、アシル基の好適な具体例としては、アセチル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、オレオイル基等が挙げられる。A、Aは炭素数2〜4のアルキレン基であるが、具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基を包含し、特にエチレン基が好ましい。式5)の化合物の1分子中のアルキレンオキシド単位の数は5〜150モルあれば良いが、さらに好ましくは10〜120モルであり、そのうち20重量%以上がエチレンオキシド単位であることが望ましい。
【0034】
また、前記ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤としては、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレン、特にポリオキシエチレン)型が好ましい。ポリオキシアルキレン型としてはエーテル型、エステル型、エステル・エーテル型等が使用でき、エーテル型としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキルは通常C8または9)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(アルキルは通常C8または9)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(アルキルは通常C8または9)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル(アルキルは通常C8または9)等が;エステル型としてはポリオキシエチレン高級脂肪酸エステル(モノもしくはジエステル)(高級脂肪酸は通常C12〜18の飽和もしくは不飽和一価脂肪酸)、ポリオキシエチレン高級多価脂肪酸エステル(モノ、ジもしくはトリエステル)(高級多価脂肪酸としては炭素数36の、オレイン酸もしくはリノール酸のダイマー酸、炭素数54の、オレイン酸もしくはリノール酸のトリマー酸等が挙げられる)、ポリオキシエチレン重縮合オキシ脂肪酸エステル(モノ、ジもしくはトリエステル)(重縮合オキシ脂肪酸としては炭素数36〜180程度のものが適当であり、例えば、リシノール酸、オキシステアリン酸等が2分子〜10分子繋がったものが挙げられる)等が;エステル・エーテル型としては、ポリオキシエチレンソルビタン高級脂肪酸エステル(通常モノエステル)(高級脂肪酸は通常C12〜18の飽和もしくは不飽和一価脂肪酸)、ポリオキシエチレンソルビトール高級脂肪酸エステル(通常モノエステル)(高級脂肪酸は通常C12〜18の飽和もしくは不飽和一価脂肪酸)等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としてはまた、ソルビタン、ソルビトール、グリセロール等の多価アルコールの高級脂肪酸エステル(通常モノエステル)(高級脂肪酸は通常C12〜18の飽和もしくは不飽和一価脂肪酸)も用いることができる。
【0035】
本発明における前記乳化剤成分は、乳化重合効率を十分に有するものであり合成樹脂エマルジョンの工業的生産性を満足するものでなければならないほか、これらにより乳化重合したエマルジョン中に、6価クロムイオンを含有し、かつ5以下のpHである場合においても、ロールコーター等での塗布工程にて処理液のゲル化や、極度の増粘等を引き起こさない十分な工業的操業安定性を有する必要がある。一方、本発明のクロメート含有樹脂皮膜剤を塗布乾燥することにより得られた皮膜の耐水性に関する諸性能を十分に確保するためには、比較的親水性成分であり皮膜中に偏析する可能性が高い乳化剤成分(特にラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤)の使用量は可能な限り抑える必要があるため、コーティング方法、速度、温度(雰囲気および素材)等の操業条件や、完成皮膜への要求性能レベルとのバランスによっては、本発明に使用する合成樹脂エマルジョンの乳化重合時に使用する乳化剤の配合重量比を、ノニオン性で1分子当りに少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤:ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤の重量比として、10:1〜50に調整することが好ましく、10:2〜30であることがより好ましい。また、本発明皮膜の耐水性に関する諸性能を重要視する場合においては、10:2〜10であることがさらに一層好ましい。この場合、ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤の重量比が1未満では乳化重合性が悪化し、粗大エマルジョン粒子やブロック凝集体等の生成が起こり易くなり合成樹脂エマルジョンの生産性を極端に悪化させる。逆にラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤の重量比が50を超えた場合には、本発明のクロメート含有樹脂皮膜剤からなる皮膜中に対するラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤の偏析部分が多くなるために、耐水性に関する諸性能の低下が顕著となる。
【0036】
また、本発明に使用する合成樹脂エマルジョンの重合時に使用する前記乳化剤の総量としては、合成樹脂エマルジョンの樹脂固形分に対して、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%の範囲にある。なお、本発明においては樹脂固形分は第1〜3単量体+ノニオン性反応性乳化剤の固形分+ノニオン性非反応性乳化剤の固形分を意味するものとする。乳化剤の総量が3重量%未満である場合は、エマルジョンの重合安定性が不良となりやすく、さらに5以下のpHにおける6価クロムイオンとの混和安定性が不十分となりやすくなる。20重量%を超えると完成皮膜の耐水性能の低下が顕著となり、さらに金属との密着性、上塗り塗料との密着性が不良となる場合がある。
【0037】
本発明に使用される6価クロムイオンはクロメート処理における主要成分であり、クロム酸もしくはクロム酸塩化合物の形で供給される。クロム酸は通常、無水クロム酸または無水クロム酸の水溶液の形で、クロム酸塩はクロム酸または重クロム酸のアンモニウム、カリウム、ストロンチウム、バリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩の形で供給することができる。6価クロムイオンは強酸化剤であり、鋼、亜鉛、アルミニウムなどの金属表面を不動態化し、金属を腐食から保護する作用を持つ。また、6価クロムイオンの一部は皮膜形成時の乾燥工程での加熱下にアクリル系共重合体エマルジョン中の乳化剤や樹脂中の官能基で還元され、3価クロムイオンとなり、6価クロムイオンの水難溶性化と樹脂の高分子化に役立っている。
【0038】
本発明の水性金属材料表面処理剤(二液型の場合は6価クロムイオン含有水溶液)は任意成分として3価クロムイオンを6価クロムイオンの一部を代替する形で含有していても良い。この場合は、6価クロムイオンを含む水溶液にメタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、サッカロース、デキストリン、澱粉化合物、タンニン酸、没食子酸、ポリビニルアルコール、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド、シュウ酸、過酸化水素、ピロガロール等の還元剤を加えて、6価クロムイオンを部分還元することにより生成させることができる。または、炭酸クロム、水酸化クロム、酸化クロムをクロム酸水溶液に溶解させることによっても3価クロムイオンを供給することができる。6価クロムイオン、クロム酸は金属に対し防錆作用を有するが、水に溶解しやすい性質があり、金属表面上に皮膜として形成された後、皮膜が水分と接触した際容易に溶解して皮膜中から離脱し、その結果皮膜による防錆効果が著しく失われるだけでなく6価クロムイオンによる環境汚染の問題を生じる恐れがある。3価クロムイオンは6価クロムイオン(クロム酸)と結合して水に難溶のクロム酸クロムを形成し、6価クロムの膜中からの溶出を抑制することにより防錆効果の維持と環境汚染防止の目的に寄与している。また、3価クロムは、本発明の水性金属材料表面処理剤中の共重合体樹脂の官能基と結合し、クロスリンクによる高分子化をもたらすため、完成皮膜は熱硬化型樹脂皮膜の物性に似通った性質を示す。その結果、耐熱性、加工性、耐水性に関する諸性能が大幅に向上する。
【0039】
本発明の水性金属材料表面処理剤に対する3価クロムイオンのもたらす前記効果を期待し、3価クロムイオンを6価クロムイオンの一部を代替する形で含有する場合は、3価クロムイオン/(3価クロムイオン+6価クロムイオン)の重量比が0.1〜0.9であることが好ましく、0.15〜0.7であることがさらに好ましい。
【0040】
さらに本発明の水性金属材料表面処理剤(二液型の場合は6価クロムイオン含有水溶液)中には任意成分として、リン酸イオンを含有させることができ、リン酸イオンとしては、オルソリン酸のような酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリリン酸塩、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のアルカリ土類リン酸塩、リン酸亜鉛、リン酸マンガン、リン酸ニッケル、リン酸コバルト、リン酸アルミニウム等の金属リン酸塩の形で供給することができる。
【0041】
単純な6価クロムイオンの部分還元では、クロム還元率(Cr3+/Cr6++Cr3+)(Cr3+およびCr6+はそれぞれのイオンの組成物中におけるグラムイオン濃度を示す)は、30%辺りが限界である。これ以上還元を進めると3価クロムイオンが水酸化クロムとして析出する。めっき鋼板表面に形成されるクロメート皮膜の水難溶化(クロム固定率)の向上のためにクロム還元率を30%超にするには、還元生成した3価クロムイオンを液中に溶解保持するためのアニオン成分が必要になる。そのためのアニオン成分として耐食性等の諸性能に対し比較的影響が少ないリン酸イオンが用いられる。また、リン酸イオンは3価クロム化合物による着色を抑止する効果を有するため外観向上の目的でも使用されるほか、皮膜形成時の6価クロムイオンのエマルジョン樹脂(乳化剤成分も含む)による還元を容易にすると同時に、リン酸イオンと3価クロムイオンとの難溶性塩を形成し金属上に形成された皮膜の耐食性や耐アルカリ性等をも向上させることができる。また、リン酸イオンの全部もしくは一部を代替するものとしてホスホン酸イオンを用いることもできる。
【0042】
本発明の任意成分として含まれるリン酸イオンは、特に水性金属材料表面処理剤中に3価クロムイオンを含有している場合に配合することが効果的であり、この場合、リン酸イオン(PO3− )/(6価クロムイオン+3価クロムイオン)の重量比が0.05〜5.0となるように含有させることが適当であり、0.2〜4.0となるように含有させることが好ましい。この重量比が0.05未満であるとリン酸イオンの添加効果が十分ではなく、5.0を超えると耐水性に関する諸性能が顕著に悪化する。
【0043】
本発明の水性金属材料表面処理剤はその他の任意成分として、以下のようなものをさらに含有することができる。
なお、二液型の場合、以下の任意成分中、特定多価金属イオン、フッ素化合物、有機酸、無機系分散物質、硝酸化合物は、通常、6価クロムイオン含有水溶液に含有させ、潤滑添加剤は、通常、合成樹脂エマルジョンに含有させるが、具体的化合物によっては逆サイドに入れたり、またはいずれにでも入れられる場合があり得る。また、その他の化合物中、シランカップリング剤、高分子電解質は、個々の物質の物性等を考慮して、いずれかに入れる。
【0044】
ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン、ジルコニウムイオン、チタニウムイオン、アルミニウムイオン等から選ばれる少なくとも1種であるその他特定多価金属イオン。
これらの金属イオンは、亜鉛または亜鉛基合金めっき鋼板の耐食性向上に効果があるとされており、通常のクロメート処理水性組成物に配合されている。これら金属イオンは、水溶性であるか、または本水性金属材料表面処理剤中もしくは、二液型の場合、6価クロムイオン含有水溶液中で水に溶解する、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、水酸化ニッケル、リン酸ニッケル、塩化ニッケル等のニッケル化合物、硝酸コバルト、炭酸コバルト、水酸化コバルト、リン酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト等のコバルト化合物、硝酸マンガン、炭酸マンガン、硫酸マンガン等のマンガン化合物、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛化合物、ジルコニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等によって供給される。
【0045】
弗素化合物
酸性サイドのpHに調整された本発明の水性組成物を金属材料表面上に塗布乾燥することにより、金属材料表面と本発明の完成皮膜との界面に置換析出する反応クロム化合物層が生成し、金属材料表面と完成皮膜との密着性、かかる加工部耐食性、クロム固定率等の性能向上に寄与するが、金属材料がアルミ亜鉛合金めっきや、アルミニウムめっきを施しためっき材料である場合等は金属材料表面に対する水性組成物による十分なエッチング反応が望めない場合がある。この場合、弗素化合物を配合することによって水性組成物の反応性を高めることができる。また、6価クロムイオンの耐食性作用を強化する目的で弗素化合物を配合する場合もある。弗素化合物としては、ジルコンフッ化水素酸、ジルコンフッ化アンモニウム、ジルコンフッ化リチウム、チタンフッ化水素酸、チタンフッ化アンモニウム、チタンフッ化リチウム、珪フッ化水素酸、珪フッ化アンモニウム、フッ化水素酸、酸性フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム、酸性フッ化ナトリウム、フッ化ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
有機酸
3価クロムイオン、ニッケルイオン、コバルトイオン、マンガンイオン等の金属イオンの析出を抑止する目的で配合することができる。有機酸としては、ギ酸、シュウ酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、スルファミン酸、グルコン酸、ヘプトグルコン酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロトリ酢酸等またはそれらの水可溶性塩が挙げられる。
【0047】
無機系分散物質
これらの物質の微粒子によって形成されるバリヤーの効果や、皮膜の耐熱性向上効果、耐加工性向上効果、さらには、これらの物質の吸着能による防錆剤(主として6価クロムイオン)の吸着徐放効果を狙って配合することができる。無機分散物質としては、シリカ、層状シリケート化合物、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等の水に不溶な無機物質を微粒子化させたものが挙げられ、これらは本発明の水性金属材料表面処理剤中に分散させて使用する。
【0048】
硝酸化合物
6価クロムイオンの耐食性作用を強化すると共に、耐黒変性を付与する目的で使用することができる。硝酸化合物としては、硝酸、硝酸アンモニウム、硝酸リチウム、硝酸亜鉛、硝酸マンガン、硝酸ニッケル、硝酸コバルト、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が挙げられる。
【0049】
潤滑添加剤
潤滑性、加工性、バリヤー効果等を向上するために配合することができる。潤滑添加剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フルオロカーボン、ポリテトラフルオロカーボン、ポリトリフルオロカーボン、ステアリン酸カルシウム、二硫化モリブデン等が挙げられ、通常水性分散液として用いる。
【0050】
その他の化合物
シランカップリング剤、高分子電解質等をクロム固定率、耐食性、塗装性、皮膜加工性等を改善するために配合することができる。
【0051】
上に列挙したその他の任意成分の各使用量はそれぞれの目的を達成する量である限り、特に制限はないが、その他の特定金属イオンについては、多すぎると本発明表面処理剤または二液型の場合6価クロムイオン含有水溶液中に沈殿を生じることがあるので、その他の特定金属イオンと3価クロムイオンの合計したグラムイオンが6価クロムイオンとリン酸とを合計したグラムイオンとの比で、(その他の特定金属イオン+Cr3+)/(Cr6++PO3− )≦0.5とするのが好ましい。また、潤滑添加剤については、一般に、全皮膜(=潤滑添加剤も含む全固形分)/潤滑添加剤重量比で2〜100の範囲で配合するのが好ましい。
【0052】
上記した必須成分および必要に応じさらに任意成分よりなる本発明組成物、すなわち一液型の場合はそのもの二液型の場合は混合後の組成物のpHは5以下であることが必要であり、好ましくは1〜5である。pH5を超えると、形成塗膜と金属材料表面との密着性が確保されない場合を生ずる。また、本発明組成物のpHが1未満の場合は、一般に、クロム酸の酸化力が強すぎ、かつエマルジョンの安定性を確保することでも困難を伴う傾向がある。また、本発明の任意成分として含まれる3価クロムイオンや多価金属イオンを安定に含有させるためや、皮膜形成時に余剰の6価クロムイオンを樹脂エマルジョン中の有機成分等により還元する場合の反応性向上による、クロム固定率や金属架橋(クロスリンク)の効率の向上等を考慮した場合のpHは1〜3に調整することが好ましい。
pHの調整については、一般にクロム酸(6価クロムイオン)を部分還元(30%程度以上)してもpHは5以下になり、また、多価金属イオンを含有する場合には、これらを浴中に保持するためにもリン酸などを配合することでもpHを酸性サイドに調整できる。また、単にpH調整のためにリン酸を使用しても良い。さらに、クロム酸水溶液をそのまま配合することも可能である。その他、任意成分中の有機酸、フッ化水素酸等、硝酸によってもある程度のpH調整が可能である。
【0053】
本発明の金属材料表面処理用水性組成物(すなわち一液型)の調製方法については、必要な成分を含有し、成分間の特定の使用比率が満足された組成物が得られる限り、制限されないが、特定の合成樹脂エマルジョンと、6価クロムイオンを含有するクロメート水溶液とを使用前に混合するような調製が適当である。得られる組成物中の固形分濃度は、特に制限される訳ではないが、10〜50重量%であるのが適当である。なお、本発明水性組成物を塗布乾燥して得られた皮膜の諸性能を実用的なバランスに整えるためには、合成樹脂エマルジョン中の樹脂固形分と全クロムとの重量比を、樹脂固形分/全クロムとして10〜300とすることが好ましく、さらには20〜200であることが好ましい。なお、前述のごとく、本発明においては樹脂固形分は第1〜3単量体+ノニオン性反応性乳化剤の固形分+ノニオン性非反応性乳化剤の固形分を意味する。
【0054】
本発明の金属材料表面処理用水性組成物を塗布する対象は、前述のごとく、例えば、鉄、鉄鋼、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ステンレス鋼、スズ、チタン材料等の表面保護を必要とする金属材料、特に工業上最も重要な材料の1つである鉄鋼材料の表面に亜鉛、亜鉛基合金、アルミ亜鉛合金、アルミニウム等をめっきしためっき鋼材である。
これらの金属材料は、そのまま本発明水性組成物の塗布に供しても良いが、通常、塗布に先立ち、脱脂、または必要に応じ化成処理等の前処理に付す。これらの前処理は金属材料にクロメート含有型樹脂皮膜剤を施す際に通常行われる前処理と同様に行えば良い。また、前処理としての塗布型クロメート処理を行った上層に本発明の水性組成物を塗布することにより、前処理のクロメート皮膜による緻密なバイヤー層を有することができるため、耐食性をさらに高めることができる。
【0055】
金属材料への本発明組成物の塗布は、特に制限される訳ではないが、通常スプレー法、浸漬法、ロール塗布法等によって行われる。この際の本発明組成物の温度は、特に制限される訳ではないが、一般に5〜40℃が適当である。塗膜の乾燥は、特に制限される訳ではないが、通常60〜200℃で行えば良く、通常熱風乾燥によって行う。乾燥皮膜の厚さは、用いる金属材料、使用樹脂、最終製品の用途等によって異なるが、一般に0.3〜5.0g/m程度、特に0.5〜3.0g/m程度が適当である。
なお、亜鉛、亜鉛基合金、アルミ亜鉛合金、アルミニウム等をめっきしためっき鋼帯は、既述のごとく、高速の連続めっきラインで効率的に生産されている。このようなラインでの従来のクロメート処理は、通常塗布型処理法で実施され、塗布方法はスプレー法または浸漬法で鋼板表面に本発明組成物を接液させた後、余剰の液をロール絞りまたは気体絞りで排除して塗布するのが一般的である。しかし、本発明組成物の場合は膜厚精度を高めるためや、処理液の発泡を避けるためにもロール塗布法での塗布が好ましい。
【0056】
【実施例】
本発明を下記実施例および比較例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
製造例1
次の処方によりレドックス重合法で合成樹脂エマルジョンを得た。
Figure 0003595723
【0057】
(重合法)
容量1Lの撹拌装置を備えた4つ口フラスコに、B)を仕込んで加温溶解し、撹拌下、40℃に保つ。別に容量0.5Lの共栓付き三角フラスコにA)を仕込んでモノマー乳化液を作り、その10重量%を上記4つ口フラスコの1つの口に入れ、5%過硫酸アンモニウム水溶液および5%酸性亜硫酸ナトリウム水溶液各々の25重量%を上記4つ口フラスコの別の1つの口に入れ、それぞれの口から内容物を4つ口フラスコに加えて40〜50℃で15〜20分間初期重合を行う。ついで、A)の残り(すなわち初めの90重量%)と、重合開始剤の各々の残り(すなわち各々初めの75重量%)を40〜50℃において3時間かけて滴下する。滴下終了後40〜50℃で1時間保持して重合を完結し、加水して不揮発分(固形分)を調整する。
得られたエマルジョンは不揮発分43%、粘度150mPa・s、pH2.1であった。
【0058】
製造例2〜6および比較製造例1〜3
製造例1において、モノマー組成および乳化剤を表1のように変えて重合して、合成樹脂エマルジョンを得た。なお、モノマー乳化液と仕込みで使用する乳化剤(反応性乳化剤+ラジカル重合性を有さない乳化剤)の比率はモノマー乳化液:仕込み=7:3とした。
【0059】
実施例1〜14および比較例1〜8
表1記載の製造例1〜6および比較製造例1〜3で得た合成樹脂エマルジョンと、6価クロム(CrOを用いた)またはそれに3価クロム(メタノールで6価クロムを部分還元した)等の無機化合物と、残部水とを含む、金属材料表面処理用の水性組成物(すなわち、一液型の水性金属材料表面処理剤)および比較水性組成物をそれぞれ表2のごとく調製した。なお、本発明の金属材料表面処理用水性組成物および比較水性組成物は、表3および表4に示すごとくすべての水準で実用的な液安定性を有していた。それらを、予め日本パーカライジング(株)製のアルカリ脱脂剤(商品名:ファインクリーナー4336、濃度=20g/L、脱脂剤温度=60℃、脱脂時間=10秒、脱脂方法=スプレー法)にて脱脂し、ついで水洗および乾燥をした市販の溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、アルミ亜鉛合金めっき鋼板(55%アルミニウム含有)、それぞれにロールコーターで塗布し、到達板温が100℃になるように雰囲気温度300℃で6秒間熱風乾燥し、供試板とした。
ここで得た金属材料表面処理用水性組成物の供試板での性能試験結果を表3に、比較水性組成物での供試板の性能試験結果を表4に示す。
【0060】
試験方法および評価基準
(1)液安定性
表2記載の水性組成物および比較水性組成物の実用的液安定性を調査すべく、できるだけ密閉した容器中で液温を40℃に保った各液を通常のプロペラ攪拌機で連続攪拌(200rpm)し続け、凝集物の発生の程度およびゲル化の有無について目視評価した。
評価基準:
A…3日間以上問題なし
B…1日間以上問題なし
C…1日間未満で多量の凝集物が発生、もしくはゲル化
D…6時間未満で多量の凝集物が発生、もしくはゲル化
【0061】
(2)クロム固定率
前記条件で作製した各供試板を、沸騰水中に30分間浸漬した。このときの浸漬前後の供試板のクロム付着量を蛍光X線分析装置(RIX1000、理学電機工業(株)製)にて測定して残存率を計算した。残存率(固定率)が高いほど良好である。
クロム固定率(%)=(b/a)×100
a:浸漬前のクロム付着量(mg/m
b:浸漬後のクロム付着量(mg/m
評価基準:
A…クロム固定率90%以上
B…クロム固定率70%以上90%未満
C…クロム固定率50%以上70%未満
D…クロム固定率50%未満
【0062】
(3)皮膜外観
前記条件で作製した各供試板の着色程度(黄色度)を色彩色差計(CR−300、ミノルタカメラ(株)製)を用い、JIS−Z−8722に準じて測定した。着色度(YI値)は低いほうが望ましい。
評価基準:
A…YI値が0未満
B…YI値が0以上1未満
C…YI値が1以上3未満
D…YI値が3以上
【0063】
(4)平面部耐食性
前記条件で作製した各供試板を、JIS−Z−2371に準じた塩水噴霧試験機での腐食促進試験に240時間施し、腐食生成物(錆)発生面積率を目視評価した。錆発生面積率が少ないほど耐食性は良好である。
評価基準:
A…錆発生面積率10%未満
B…錆発生面積率10%以上30%未満
C…錆発生面積率30%以上50%未満
D…錆発生面積率50%以上
【0064】
(5)加工部耐食性
前記条件で作製した各供試板に5mmエリクセン押し出し加工を行い、これらをJIS−Z−2371に準じた塩水噴霧試験機での腐食促進試験に120時間供し、加工部での腐食生成物(錆)発生面積率を目視評価した。錆発生面積率が少ないほど耐食性は良好である。
評価基準:
A…錆発生面積率10%未満
B…錆発生面積率10%以上30%未満
C…錆発生面積率30%以上50%未満
D…錆発生面積率50%以上
【0065】
(6)耐湿性
前記条件で作製した各供試板を恒湿恒温機(温度70℃、湿度98%)での耐湿試験に3日間供し、腐食生成物(粉状白錆、黒錆=黒変)の発生程度を目視評価した。腐食生成物の発生程度が少ないほど耐湿性(もしくは耐黒変性)が良好である。
評価基準:
A…腐食生成物の発生が見られない
B…部分的に軽度の腐食生成物の発生が見られる
C…ほぼ全面に軽度の腐食生成物の発生が見られる
D…ほぼ全面に顕著な腐食生成物の発生が見られる
【0066】
(7)耐酸性
前記条件で作製した各供試板を1重量%の硫酸水溶液中に60分間浸漬し、ついで水洗乾燥した皮膜外観変化および金属表面の変色(腐食)程度から耐酸性を目視評価した。
評価基準:
A…皮膜外観変化および金属表面の変色が見られない
B…部分的にわずかな皮膜剥離(溶解も含む)、または金属表面の変色が見られる
C…ほぼ全面に広がる部分的な皮膜剥離(溶解も含む)、または金属表面の顕著な変色が見られる
D…皮膜が剥離もしくは溶解することでほとんど残存しておらず、金属表面の変色も顕著である
【0067】
(8)耐アルカリ性
前記条件で作製した各供試板を1重量%の水酸化ナトリウム水溶液中に60分間浸漬し、ついで水洗乾燥した皮膜外観変化および金属表面の変色(腐食)程度から耐アルカリ性を目視評価した。
評価基準:
A…皮膜外観変化および金属表面の変色が見られない
B…部分的にわずかな皮膜剥離(溶解も含む)、または金属表面の変色が見られる
C…ほぼ全面に広がる部分的な皮膜剥離(溶解も含む)、または金属表面の顕著な変色が見られる
D…皮膜が剥離もしくは溶解することでほとんど残存しておらず、金属表面の変色も顕著である
【0068】
(9)上塗り塗装一次密着性
前記条件で作製した各供試板にメラミンアルキッド塗料(デリコン#700、大日本塗料(株)製)を塗膜厚25±5μmになるように塗布し、140℃で20分間焼き付け乾燥を行い塗装試験片とした。これらの塗装試験片にカッターを用いて素地に達する1mm角のゴバン目状の切込みを100個作り、さらにゴバン目箇所をエリクセン試験機にて5mm押し出し、セロテープ剥離を行った後の塗膜の残存ゴバン目個数で上塗り塗装一次密着性を評価した。塗膜残存数が多いほど密着性は良好である。
評価基準:
A…塗膜残存数が95個以上
B…塗膜残存数が70個以上95個未満
C…塗膜残存数が50個以上70個未満
D…塗膜残存数が50個未満
【0069】
(10)上塗り塗装二次密着性
前記条件で作製した各供試板にメラミンアルキッド塗料(デリコン#700、大日本塗料(株)製)を塗膜厚25±5μmになるように塗布し、140℃で20分間焼き付け乾燥を行い塗装試験片とした。これらの塗装試験片を沸騰水中に2時間浸漬した後、前記一次密着性と同様にゴバン目エリクセン試験を実施した。評価基準も(9)と同じ
【0070】
本発明の金属材料表面処理用水性組成物を用いた実施例1〜14においては、いずれの供試板も、クロム固定率、皮膜外観、耐食性(平板部、加工部)、耐湿性(耐黒変性も含む)、耐酸性、耐アルカリ性、上塗り塗装密着性(一次、二次)のいずれにおいても優れていた。一方、本発明範囲外の水性組成物を用いた比較例1〜8ではこれらの性能のいずれかが劣っていた。さらに詳しくは、比較例1、2、5は、使用する合成樹脂エマルジョンを製造する際にラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤のみを用いて乳化重合したため、耐水性に関係する諸性能(耐食性、耐湿性、耐酸性、耐アルカリ性、上塗り塗装二次密着性)のいずれかが特に劣っていた。比較例3、4、6は、使用する合成樹脂エマルジョンの原料として第2単量体成分を共重合しておらず下地金属や上塗り塗膜との密着性が不十分であるため、上塗り塗装密着性(一次、二次)が劣っていた。比較例7、8は、使用する合成樹脂エマルジョンを製造する際にラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤のみを用いて乳化重合したため、耐水性に関係する諸性能のいずれかが特に劣っている他、水性組成物としてのpHも本発明の範囲外であるために、クロム固定率、皮膜外観(比較例7)、上塗り塗装密着性(一次、二次)が劣っていた。
【0071】
【表1】
Figure 0003595723
【0072】
【表2】
Figure 0003595723
【0073】
【表3】
Figure 0003595723
【0074】
【表4】
Figure 0003595723
【0075】
【発明の効果】
ある特定のモノマー組成において、エマルジョン製造時における乳化剤としてノニオン性で1分子当りに少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤と、ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤とを組み合わせて使用することにより乳化重合される合成樹脂エマルジョンと、6価クロムイオンを含有し、かつ5以下のpHを有することを特徴とする本発明の金属材料表面処理用水性組成物の完成によって、従来のクロメート含有型樹脂皮膜剤のもつ実用的な液安定性を損なわずに、完成皮膜の耐水性に関係する諸性能、すなわち、耐食性、耐黒変性、上塗り塗装の耐水二次密着性、低公害性(クロム固定率)、耐薬品性(特に耐酸性、耐アルカリ性)等の多岐に亘る要求項目をより高度に満足することが可能となった。したがって、その実用上の価値は極めて大きい。

Claims (5)

  1. 合成樹脂エマルジョンと6価クロムイオンおよび3価クロムイオンとを含有する水性金属材料表面処理剤であって、5以下のpHを有し、前記合成樹脂エマルジョンが下記成分:
    1) エチレン性不飽和カルボン酸の1種以上からなる第1単量体成分、
    2) N−非置換もしくは置換メチロール−カルバモイル基、ホスホン基、アルコキシ基、シアノ基およびカルバモイル基の少なくとも1個を含有する官能性アクリル系の第2単量体成分、および
    3) 1)、2)に含まれず、1)、2)と共重合可能であり、得られる共重合体の骨格を形成する第3単量体成分
    を、ノニオン性で1分子当りに少なくとも1個の反応性炭素間二重結合を有するラジカル重合可能な反応性乳化剤およびラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤を用いて、乳化重合することにより得られた合成樹脂エマルジョンであり、該反応性乳化剤:ラジカル重合性を有さないノニオン性乳化剤の重量比が10:1〜50であり、3価クロムイオン/(6価クロムイオン+3価クロムイオン)の重量比が0.1〜0.9であり、樹脂固形分/全クロムの重量比が10〜300であることを特徴とする水性金属材料表面処理剤。
  2. 請求項1記載の合成樹脂エマルジョンと6価クロムイオンおよび3価クロムイオンを含有する水溶液とからなる二液型の水性金属材料表面処理剤であって、両者を混合した際に請求項1記載の水性金属材料表面処理剤とすることができる二液型の水性金属材料表面処理剤。
  3. 第1〜3の単量体間の使用比率が、第1〜3の単量体の合計量に対して、第1単量体が0.5〜10重量%、第2単量体が0.5〜60重量%、第3単量体が30〜99重量%である請求項1または2記載の水性金属材料表面処理剤。
  4. さらにリン酸イオンをリン酸イオン(PO3− )/(6価クロムイオン+3価クロムイオン)の重量比が0.05〜5.0となるように、二液型の場合には6価クロムイオンおよび3価クロムイオンを含有する水溶液中に、含有する請求項1〜3のいずれかに記載の水性金属材料表面処理剤。
  5. 第3単量体成分が、2)に含まれない(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、メチルスチレン、酢酸ビニル、α位で分岐した飽和カルボン酸のビニルエステル、塩化ビニル、ビニルトルエンおよびエチレンから選ばれる1種以上である請求項1〜のいずれかに記載の水性金属材料表面処理剤。
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