JP3595515B2 - 静電チャック - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、液晶ディスプレイ用薄膜トランジスタやアモルファスシリコン太陽電池などの種々の半導体薄膜デバイスの製造に用いられる双極型の静電チャックであって、簡単な電極パターンによってウエハ吸着領域のほぼ全域に安定で均一な吸着力を得ることができる静電チャックに関する。
【0002】
【従来の技術】
静電チャックは、電極とウエハとの間に作用するクーロン力によってウエハをステージに吸着させるものであり、機械的なチャックに比べてウエハ下面をステージ上に略全面密着できウエハの冷却性能が優れているため、従来から半導体製造装置に多用されている。また、前記静電チャックには単極式と双極式があり、単極式の静電チャックはチャンバー内にプラズマを発生させないと吸着が起こらないため、プラズマ処理装置にしか用いることができないが、双極式の静電チャックは、プラズマの発生を必要とすることなく吸着を行うことができるという特徴がある。
【0003】
図5は、従来の静電チャックの電極パターンを示す平面図である。この静電チャック500は、表面の絶縁体内部に正負一対の同心円状の電極(電極パターン)501a、501bを埋設した構成であり、その一方の同心円状の電極501aが正極となり、他方の同心円状の電極501bが負極となる。また、これら同心円状電極501a、501bは、静電チャック500のウエハ吸着領域の全域に渡って形成されている。前記正極側の同心円状電極501aは、半径方向に形成した直線部502aと、この直線部502aから枝状に且つ同心円状に複数延出した円弧部503aとで構成し、全体的に円形になるように対向して配置したものである。対向する電極501a、501a同士は、最外周で接続されている。
【0004】
他方、負極側の同心円状電極501bも同様の構成であるが、対向する電極502b、502b同士が中心部で結合している点が異なる。この正極および負極の電極501a、501bは、円弧部503a、503bにおいて相互にくし歯状に入り組んで形成されている。なお、これら電極パターン501a、501bは、フォトファブリケーション方法などによって精密に形成することができる。静電チャック500の正負両電極501a、501bに電圧を印加すると、当該電極パターン501a、501bによってウエハ吸着領域のほぼ全域に安定した均一な吸着力が発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような静電チャック500を用いたウエハステージでは、ウエハを分離するためのリフトピンを備えていることがある。このようなリフトピンは、ウエハステージに均等に設けたリフトピン穴から突き出るように設けられている。また、リフトピンによってウエハを確実に支持するため、3つのリフトピンを120度間隔で設けるのが好ましい(図示省略)。
【0006】
しかしながら、上記静電チャック500では、正極および負極で電極501a、501bの半径方向直線部502a、502bが90度間隔で形成されているから、リフトピン穴の1つ又は2つが当該直線部502a、502b上に位置することになり、これを避けるようにして電極パターンを設計する必要がある。また、枝状形成した電極パターン501a、501bを対向させ、最外周或いは中心部で連結した構成である。このため、電極パターン501a、501bが複雑になるという問題点がある。
【0007】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な電極パターンによってウエハ吸着領域のほぼ全域に安定で均一な吸着力を得ることができる静電チャックを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、請求項1に係る静電チャックは、ウエハステージ上の絶縁体内に正負両電極を埋設した双極型の静電チャックにおいて、前記それぞれの正負電極が、半径方向に延びる半径分の直線部と、この直線部両側から複数の枝状に延出した同心円のC字形状部とを備え、前記直線部が互いに対向して直径方向となる略一直線上に位置し、前記正負電極のC字形状部が相互にくし歯状に入り込んで電極パターンを形成し、前記直線部に電力供給用の接点を設けたことを特徴とする。
【0009】
半径分の直線部からC字形状部を枝状に延出し、このC字形状部を相互にくし歯状に入れ込むと、全体的に円形となり、正負極が均一に分布した状態になる。また、半径分の直線部から枝状にC字形状部が延出する形状のため、電極パターンは比較的簡単である。この正負電極に直流電流を印加することでウエハとの間にクーロン力が働いて当該ウエハを吸着する。このとき、正負電極が均一に分布していることから、均一で安定な吸着力が得られるようになる。また、この静電チャックの電極パターンは枝状形成した複数のC字形状部を有する対称形状となっているから、前記直線部に接点を設けることで電極パターンの抵抗値が同じになる。これにより、より均一で安定な吸着力を得ることができる。
【0010】
また、請求項2に係る静電チャックは、ウエハステージ上の絶縁体内に正負両電極を埋設した双極型の静電チャックにおいて、前記それぞれの正負電極が、複数の同心円のC字形状部と、径方向に隣接するC字形状部を連結する複数の短直線部とを備え、前記正負電極のC字形状部が相互にくし歯状に入り込むと共に、前記短直線部が径方向に隣接する同極のC字形状部同士の間ごとに円周方向にずらして配置され、前記短直線部に電力供給用の接点を設けたことを特徴とする。
【0011】
すなわち、前記短直線部が径方向に隣接する同極のC字形状部同士の間ごとに円周方向にずらして配置され、前記短直線部に電力供給用の接点を設けたので、正負極のいずれか又は両方が偏在する部分を少なくできる。これにより、より均一で安定な吸着力を得ることができる。
【0013】
また、請求項3に係る静電チャックは、上記静電チャックにおいて、さらに、ウエハリフトピンを、隣接するC字形状部の間であって、前記直線部を避けて設けたことを特徴とする。
【0014】
ウエハリフトピンは、120度間隔で均等配置するようにするのが好ましい。この発明では、直線部が互いに対向して直径方向となる略一直線上に位置するから、この直線部を避ければ、ウエハリフトピンを120度間隔で設けることができる。そして、このウエハリフトピンを隣接するC字形状部の間に設けることで、当該ウエハリフトピンを回避するような複雑な電極パターンを形成する必要がなくなる。なお、ウエハリフトピンをC字形状部の間に設けることは、その中心がC字形状部の間に位置することを意味し、C字形状部と多少干渉する場合も含まれる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当該技術に関する当業者が設計変更し得る内容が含まれる。
【0018】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1にかかる静電チャックの電極パターンを示す平面図である。図2は、図1に示した静電チャックの断面図である。この静電チャック100は、ウエハステージ1と、ウエハステージ1上に設けた絶縁体2と、絶縁体2に埋設した双極型電極3(電極パターン3)とを有する。正極の電極3aおよび負極の電極3bは、半径方向に直線部31a、31bを有し、この直線部31a、31bから枝状に複数のC字形状部32a、32bを延出した形状となる。直線部31a、31bは、互いに対向して直径方向となる略一直線上に位置している。また、前記C字形状部32a、32bは複数の同心円パターンを形成され、相互にくし歯状に入り込むようになっている。
【0019】
また、正極の直線部31aの端部は、負極の最小径となるC字形状部32bに入る円形となる。この電極パターン3は、フォトリソグラフィー・プロセスによって精密に形成することができる。延出するC字形状部32a、32bは、パターンの簡単化と、電極面積を大きくするために3本〜4本程度とするのが好ましい。なお、前記絶縁体2には、アルミナなどのセラミックスを用いる。
【0020】
リフトピン穴4は、電極パターン3が形成されていない部分を穴の中心として配置する。リフトピン穴4は、120度間隔で3つ設けられており、それぞれ正極および負極の直線部31a、31bを避けて配置されている。このため、当該直線部31a、31bに影響を与えないから、複雑な回避形状が不用であり、それだけ形状を簡単にできる。また、前記電極パターン3は、ウエハステージ1上に設けた絶縁体2内に埋設されている。前記ウエハステージ1は、その内部に冷却水配管(図示省略)やリフトピン機構5等を内設している。また、正極および負極の電極3a、3bには、直流電源6が接続されている。
【0021】
前記リフトピン機構5は、リフトピン穴4を貫通するアルミナ製のピンシャフト51と、ピンシャフト51が収容され且つヘリウムガスが導入されるフランジ52と、ピンシャフト51の昇降動作を行うエアシリンダー53とから構成される。フランジ52内は、ベローズ54によって外気から遮断されている。また、ウエハステージ1の中央には、ヘリウム出口7が設けられている。
【0022】
電極パターン3の直線部31a、31bの略中央には、直流電源6との接点8が設けられている。まず、この電極パターン3は、正極および負極の電極3a、3bでその幅が共に均一であり、面積および厚さとも略同一であること、電極パターン3が対称形状であり正極および負極で電極パターン3が極めて類似していることから、電極パターン3の抵抗値が略同じとなる。このため、正極と負極で対応する位置であれば、接点8をどの位置に設けても良く、それゆえ設計の自由度が極めて高いものとなっている。特に、接点8が単数の場合のみならず、複数設ける場合に有効である。
【0023】
正極および負極の電極3a、3bに直流電流6を印加すると、ウエハWと電極3との間にクーロン力が作用し、ウエハWが電極3に吸着される。このとき、電極パターン3が上記のように形成されていることから、ウエハ吸着領域のほぼ全域でウエハWに対するクーロン力が働くことになる。また、一般的に正極および負極の電極パターンはその面積を互いに等しくするのが好ましいが、この電極パターン3によれば、簡単な形状のパターンを用いておりリフトピン機構5に起因する形状の複雑化を最小にしているから、正負極の面積を等しくしやすい。
【0024】
以上、この静電チャック100によれば、簡単な電極パターン3によってウエハ吸着領域のほぼ全域に安定で均一な吸着力を得ることが可能になる。この結果、ウエハWの温度ムラが解消されて、均一な加工が可能になる。
【0025】
また、電極パターン3にRF(radio frequency)を重畳してスパッタエッチングを行う場合があるが、従来の静電チャックのように、対向する電極パターンを一部で接続すると、正負極のそれぞれで電流の集中が起こり難くなる。これに対して、この発明の静電チャック100によれば、電流の集中が起こり難い部分が殆どない、くし歯形状の電極パターン3を採用しているため、電極3の発熱を抑制できるといった効果がある。
【0026】
また、プラズマ処理装置に上記静電チャック100を適用した場合、ウエハWが負に帯電することで当該ウエハWに誘起した負電荷と正極の電極3aの正電荷との間で吸着力が作用するが、負極の電極3bとの間では斥力が働くことになる。しかしながら、正極および負極の電極パターン3が面積を同一にし、これらがくし歯状に入り込んで均一配置されているから、プラズマ処理装置に適用した場合でも全体的に密着性を向上させることが可能になる。
【0027】
図3は、図1に示した電極パターンの変形例を示す平面図である。この電極パターンは、隣接するC字形状部32a、32b間の直線部(短直線部)33a、33bを円周方向にずらして形成した点に特徴がある。短直線部33a、33bをずらして形成することにより正負極の一方が位置的に集中することを防止し、正負極をより均一に分布させることができる。この構成によってもウエハ吸着領域のほぼ全域に安定で均一な吸着力を得ることができ、特にプラズマ処理装置に適用する場合において優れた効果を奏する。
【0028】
[実施の形態2]
図4は、この発明の実施の形態2にかかる静電チャックの電極パターンを示す平面図である。この静電チャック200の電極201(電極パターン201)は、正極および負極の電極202a、202bが勾玉形状をしており、それぞれが中心部をもって点対称となるようにパターン化されている。この勾玉形状の電極202a、202bは、それぞれその終端が外周に進むにつれて幅細になっている。
【0029】
さらに、勾玉形状の電極202a、202bの間には、正極および負極の電極203a、203bがS字形状に形成され、前記同様、その終端は外周に進むにつれて幅細になっている。これにより、正極の勾玉形状の電極202aに隣接するのは、負極のS字形状の電極203bであり、負極の勾玉形状の電極202bに隣接するのは、正極のS字形状の電極203aとなる。直流電源204との接点205は、勾玉形状の電極202a、202bの頭部分と、S字形状の電極203a、203bの途中部分に設けられている。
【0030】
この電極パターン201によれば、殆の半径方向において3つの同極が存在し、さらに勾玉形状の電極202a、202bの面積を大きくとることができる。また、正極と負極とが対称構造となり且つ電極面積が全く同じとなる。このため、ウエハ吸着領域のほぼ全域に安定で均一な吸着力を得ることができる。また、プラズマ処理装置に適用した場合においても、殆どの半径方向に3つの正極が存在することになるから、安定的な吸着を得ることができる。さらに、電極パターン201にRFを重畳する場合、電流が集中する部分が殆どないため、電極パターン201の発熱を効果的に抑制できる。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の静電チャック(請求項1)によれば、半径方向に延びる半径分の直線部と、この直線部両側から複数の枝状に延出した同心円のC字形状部とからなり、前記C字形状部が相互にくし歯状に入り込むことで正負電極のパターンを形成し、前記直線部に電力供給用の接点を設けたので、簡単な電極パターンにより均一で安定な吸着力を得ることができる。また、前記直線部に接点を設けることで電極パターンの抵抗値が同じになる。これにより、より均一で安定な吸着力を得ることができる。
【0032】
また、この発明の静電チャック(請求項2)では、複数の同心円のC字形状部と、径方向に隣接するC字形状部を連結する複数の短直線部とから正負電極を構成し、前記C字形状部を相互にくし歯状に入り込むようにする。さらに、前記短直線部をその径方向に隣接する同極のC字形状部同士の間ごとに円周方向にずらして配置することで、正負極のいずれか又は両方が偏在する部分を少なくできる。これにより、静電チャックの吸着力をより均一で安定にすることができる。また、前記短直線部に電力供給用の接点を設けたので、電極パターンの抵抗値が同じになる。これにより、より均一で安定な吸着力を得ることができる。
【0034】
また、この発明の静電チャック(請求項3)では、ウエハリフトピンを、隣接するC字形状部の間であって、前記直線部を避けて設けたので、静電チャックにウエハリフトピンを設けた場合でも、比較的簡単な電極パターンを形成すれば済むことになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1にかかる静電チャックの電極パターンを示す平面図である。
【図2】図1に示した静電チャックの断面図である。
【図3】図1に示した電極パターンの変形例を示す平面図である。
【図4】この発明の実施の形態2にかかる静電チャックの電極パターンを示す平面図である。
【図5】従来の静電チャックの電極パターンを示す平面図である。
【符号の説明】
100 静電チャック
1 ウエハステージ
2 絶縁体
3 電極パターン
3a、3b 電極
31a、31b 直線部
32a、32b C字形状部
4 リフトピン穴
5 リフトピン機構
6 直流電源
7 ヘリウム出口
8 接点
Claims (3)
- ウエハステージ上の絶縁体内に正負両電極を埋設した双極型の静電チャックにおいて、
前記それぞれの正負電極が、半径方向に延びる半径分の直線部と、この直線部両側から複数の枝状に延出した同心円のC字形状部とを備え、
前記直線部が互いに対向して直径方向となる略一直線上に位置し、前記正負電極のC字形状部が相互にくし歯状に入り込んで電極パターンを形成し、
前記直線部に電力供給用の接点を設けたことを特徴とする静電チャック。 - ウエハステージ上の絶縁体内に正負両電極を埋設した双極型の静電チャックにおいて、
前記それぞれの正負電極が、複数の同心円のC字形状部と、径方向に隣接するC字形状部を連結する複数の短直線部とを備え、
前記正負電極のC字形状部が相互にくし歯状に入り込むと共に、前記短直線部が径方向に隣接する同極のC字形状部同士の間ごとに円周方向にずらして配置され、
前記短直線部に電力供給用の接点を設けたことを特徴とする静電チャック。 - さらに、ウエハリフトピンを、隣接するC字形状部の間であって、前記直線部を避けて設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の静電チャック。
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