JP3595103B2 - ジョイントシート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、石油化学プラント、各種工業用機械装置、自動車、家電など広範囲な分野で使用されるガスケットの基材として用いられるジョイントシートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ジョイントシートは、基材繊維・充填材・ゴム薬品に、溶剤に膨潤させたゴム(あるいは粉末ゴムまたはラテックスに溶剤を加えたもの)をヘンシェルミキサー等で十分に混練し、ジョイントシート形成用組成物(以下、混練物という)を調製し、次いでこの混練物を熱ロール(約150 ℃)と冷ロール(約20℃)とからなる一対のロール(カレンダーロール)間に投入し、熱ロール側に加熱・圧延しながら積層し、溶剤の蒸発・加硫を行い、所定の厚さに積層したシートを熱ロールから剥離することによって製造されてきた。製品によっては、加硫を進めるために得られたシート状物をさらにオートクレーブ等の中で二次加硫を行う場合もあった。なお、混練物には、用途に応じて、上記のものの他、軟化剤、可塑剤、水膨潤剤、油膨潤剤等が少量添加され、また、保管、識別の点から顔料が配合されることもある。
【0003】
そして従来は、石綿繊維を用いた石綿ジョイントシートが多用され、石綿繊維の独特の形状や、優れた耐熱性を利用して、水、油、空気、水蒸気などの配管や機器用のガスケットとして打抜き加工されてきた。この石綿ジョイントシートには、無機繊維でありながら非常に柔軟で高度にフィブリル化している石綿繊維を60〜85重量%程度含んでいて、石綿繊維がジョイントシート中に十分に分散、密着した状態となっており、熱水や蒸気などの高温配管のガスケットとして使用される場合でも使用上全く問題がなかった。
【0004】
ところが、石綿繊維は天然鉱物であり資源の枯渇が心配されること等から、最近では石綿繊維を全く使用せず、石綿繊維以外の無機繊維と有機繊維の両方又はいずれか一方を使用したジョイントシート(アスベストフリージョイントシートまたはノンアスベストジョイントシートと呼ばれる。以下、NAジョイントシートと略する)が使用されるようになってきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この従来のNAジョイントシートに用いられる繊維材料としては、有機繊維と無機繊維があるが、石綿繊維以外の無機繊維は、石綿繊維に比べると繊維径が太くて剛直なものが多く、ゴム材との密着性が悪いのでシートの引張強さが低く、一方、有機繊維、特にフィブリル化した有機繊維は、ゴム材と絡みやすく、引張強さは大きくなるが耐熱性が低いから、NAジョイントシートでは用途に応じて各種繊維を組み合わせて使用しているが、引張強さや耐熱性の点で完全に石綿ジョイントシートに匹敵するまでには至っていなかった。
【0006】
そのため、NAジョイントシートを使用するにあたっては、石綿ジョイントシートと比べて製品寿命が短くなることから、プラントの安全性を考えて、点検等の際に定期的にNAガスケットを交換することが望ましい。ところが、NAジョイントシートは、石綿ジョイントシートに比べ、シート中に分散する無機繊維の量が少なく繊維の絡み合いもないため、100 ℃以上の温度で使用するとゴム等の有機物がフランジに貼り付き、剥がすときにガスケットが破断し、一部がフランジに貼り付いてしまうため、ガスケットの交換に時間がかかるという問題があった。また、逆にガスケットがフランジに貼り付きにくいものは、フランジとガスケットとの密着性が低下して、シール性に問題が生じるということも判っていた。
【0007】
本発明の目的は、シール性が良く、またフランジからの剥離性が良いNAジョイントシートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための、請求項1の発明は、基材繊維、ゴム材、充填材及びゴム薬品からなる組成物で構成されるジョイントシートにおいて、上記ジョイントシートの少なくとも一表面層を構成する混練物の充填材が、ウォラストナイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの2種類以上の組合せのものであるか、又は他の充填材とともに上記充填材を含むものであって、上記充填材の量が該表面層における全充填材量に対して65重量%以上であることを要旨とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、基材繊維、ゴム材、充填材及びゴム薬品からなる組成物で構成されるジョイントシートにおいて、上記ジョイントシートの少なくとも一表面層を構成する混練物の充填材が、ウォラストナイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの2種類以上の組合せのものであるか、又は他の充填材とともに上記充填材を含むものであって、上記充填材の量が該表面層における全充填材量に対して35重量%以上であり、かつステアリン酸及び/又はパラフィンワックスが該表面層を構成する混練物に対して0.5 〜7 重量%の割合に配合されたことを要旨とする。
【0010】
ここで、ジョイントシートの表裏面とも本発明の混練物を用いてフランジからの剥離性を高めることが望ましいが、使用目的によっては少なくとも片面の剥離性が良ければよいことがある。表面層あるいは裏面層における混練物の組成を所定のものとするためには、引張強さや応力緩和率等の物性に大きく影響する中芯部分の混練物の組成を別に分けて複層のジョイントシートとするのが好ましいが、生産性等の点で単一組成の混練物を使用し、中芯部分の混練物が表面に出る単層のジョイントシートも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0011】
本発明に用いる充填材の種類は、ウォラストナイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムであり、表面層の充填材としては、上記充填材を2種類以上組合せたものであるか、又は他の充填材とともに上記充填材を含むものである。上記充填材とともに用いる他の充填材としては、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、グラファイト、カオリナイト、セリサイト、焼成クレー、ガラスビーズ等が挙げられる。
【0012】
表面層におけるウォラストナイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの充填材量は、全充填材量に対して65重量%以上、好ましくは80重量%以上含むのがよい。もし混練物にステアリン酸及び/又はパラフィンワックスを0.5 〜7 重量%含む場合は、上記充填材の量を35重量%以上とすればよい。なお、ステアリン酸及び/又はパラフィンワックス量の0.5 〜7 重量%は、より好ましくは1 〜3 重量%の範囲である。ステアリン酸及び/又はパラフィンワックスが、0.5 重量%未満では効果がなく、7 重量%を超えると製造中にシートがロールから剥がれてしまい、製造性が低下するので好ましくない。
【0013】
本発明に用いる基材繊維としては、ロックウール、カーボン繊維、ガラス繊維、セピオライト、セラミック繊維、溶融石英繊維、化学処理高シリカ繊維、溶融珪酸アルミナ繊維、アルミナ連続繊維、安定化ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、チタン酸アルカリ繊維、ウィスカー、ボロン繊維、金属繊維等の無機繊維や、芳香族ポリアミド繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ尿素系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリフルオロカーボン系繊維、フェノール系繊維、セルロース系繊維等の有機繊維が挙げられ、これらは単独あるいは併用して用いることができる。
【0014】
本発明に用いるゴム材としては、耐熱性が高い水素化アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴムが好ましいが、普通のアクリロニトリルブタジエンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムも用いることができる。
【0015】
本発明に用いるゴム薬品としては、硫黄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、過酸化物、ジニトロソベンゼン等の加硫剤、ポリアミン系化合物、アルデヒドアミン系化合物、チウラム系化合物、ジチオカルバミン酸塩系化合物、スルフェンアミド系化合物、チアゾール系化合物、グアニジン系化合物、チオウレア系化合物、キサントゲン酸塩系化合物等の加硫促進剤や、老化防止剤、スコーチ防止剤、可塑剤、着色剤等、従来ジョイントシート形成用ゴム薬品として公知のものが広く用いられる。
【0016】
本発明のジョイントシートの調製は、基材繊維、ゴム材、充填材及びゴム薬品からなる組成物を溶剤とともに常法により混練して得た混練物を、熱ロールと冷ロールからなる一対のロール間に投入し、熱ロール側へ所定の厚さまで積層させた後、熱ロールから剥離して製造することができる。
【0017】
【作用】
本発明者らは、従来よりNAジョイントシートのフランジからの剥離性を高めるために基材繊維、ゴム材、ゴム薬品の種類や量について鋭意研究を行ってきたが、剥離性の良いNAジョイントシートは、シートの表面粗さが大きくシール性が悪かったり、カレンダーロールでシートを製造中にシートがロールから剥がれたりして、製造性、シール性、剥離性の優れたシートを得るのは非常に困難であった。
【0018】
このような点を解決するために、表面層の充填材についてさらに検討を行った結果、充填材のなかに剥離性の良いものがあり、この量を全充填材量に対して65重量%以上配合することによって、ジョイントシートのシール性と剥離性が両立できることを見いだした。
【0019】
このうち、ウォラストナイトは、針状結晶をしているので、シートの引張強度を上げるのに効果があり、また、表面が不活性でヘキ開性を有しているので一定以上の力が加わると簡単に剥がれたり、あるいは割れてしまうので、フランジへ貼り付きにくいものと考えられる。ホワイトカーボンは、粒子同士がくっつき合うことによりストラクチャー(凝集塊)を形成し、シートの空隙率を下げて繊維とゴムの接触性を向上させてシール性および剥離性が改善されると推測される。また、水酸化アルミニウムと水酸化マグネシウムは、粒子表面に水酸基(−OH)がつき粒子表面が活性化しており、補強性があることが影響してるのではないかと思う。
【0020】
さらに、シール性等を重視してこれらの充填材の量を減らすときは、このシートの表面層にステアリン酸及び/又はパラフィンワックスを0.5 〜7 重量%用いることにより剥離性の低下を補えることが判った。これはステアリン酸、パラフィンワックスは熱を加えると、シートの表面に溶けだし、このことにより、シートがフランジに貼り付くのを防ぐものと思われる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0022】
実施例1
ゴム素練りロールによって約1 mmの厚さに薄出し処理をしたNBRを所定量計量した後、トルエン中に膨潤させ、表1の中芯材料の項に示す基材繊維、ゴム薬品および充填材とともにヘンシェルミキサーにて80分間混練し、中芯材料を調製した。次に、中芯材料と同様の方法で、表1の実施例1の項に示す配合の表面材料を調製した。
【0023】
そしてまず表面材料を150 ℃に加熱された熱ロールと、20℃に保たれた冷ロール間に投入し、次いで中芯材料、最後に表面材料を投入しながら加圧加硫成形して、厚さ 1.5mm、3 層のNAジョイントシートを得た。
【0024】
実施例2〜5
表1の実施例2〜5の項に示す配合の表面材料を実施例1と同様に調製し、実施例1と同様に厚さ 1.5mm、3 層のNAジョイントシートを得た。
【0025】
実施例6
表1の実施例1に示す配合の材料を中芯材料とし、表面材料は用いずに中芯材料だけを用いて実施例1と同様に製造し、厚さ 1.5mm、単層のNAジョイントシートを得た。
【0026】
比較例1〜3
表1の比較例1〜3に示す配合の表面材料を実施例1と同様に製造し、厚さ 1.5mmのNAジョイントシートを得た。
【0027】
実施例1〜6および比較例1〜3のNAジョイントシートのシール性および剥離性を表2に示す。なお、NAジョイントシートのシール性の測定は、リング状に打ち抜いたガスケットを2 枚のフランジ間に挟み、N2 ガス圧15kgf/cm2 を負荷したときの1 時間の漏れ量を水中置換法により求めた。剥離性は、シール性の測定で使用したガスケットとフランジを用い、200 ℃で70時間加熱後、フランジからガスケットを剥がした時の状態で判断した。
【0028】
実施例1〜6では、シール性、剥離性とも良いNAジョイントシートが得られることが判る。一方、比較例1はシール性は良いが、剥離性の良い充填材が入っていないため、完全に貼り付いてしまった。比較例2は、ホワイトカーボンの量が少ないため、剥離性が悪い。比較例3は、剥離性は良かったが、表面の平滑度が悪くシール性が悪かった。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によればシール性がよく、剥離性の良いNAジョイントシートが得られる。
Claims (1)
- 基材繊維、ゴム材、充填材及びゴム薬品からなる組成物で構成されるジョイントシートにおいて、上記ジョイントシートの少なくとも一表面層を構成する混練物の充填材が、ウォラストナイト、ホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの2種類以上の組合せのものであるか、又は他の充填材とともに上記充填材を含むものであって、上記充填材の量が該表面層における全充填材量に対して35重量%以上であり、かつステアリン酸及び/又はパラフィンワックスが該表面層を構成する混練物に対して0.5 〜7重量%の割合に配合されたことを特徴とするジョイントシート。
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