JP3593994B2 - 双方向伝送用利得等化器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、双方向伝送用利得等化器に関し、特に、上りと下りに共用される1本の伝送路における上りと下りのWDM信号の各チャネルの特性を同一にするための双方向伝送用利得等化器に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバを用いて双方向伝送による光通信を行う場合、従来、上り用と下り用に専用の光ファイバを布線して行っていた。しかし、1本の光ファイバを上りと下りに共用できれば、本数を低減できることになる。そこで、1本の光ファイバを上りと下りに共用して双方向伝送を行うことが考えられる。この場合に問題となるのは、中継器や監視回路の設置である。1本の光ファイバを上りと下りに共用した場合、光信号の流れに方向性があるため、1本の光ファイバの中に単純に中継器や監視回路を設置することはできない。
【0003】
これを解決するため、特開平4−291525号公報に開示された双方向中継装置では、伝送路内に入力光を2つに分波/合波する第1,第2の光合分波器を設け、この第1,第2の光合分波器により形成された上り用と下り用の各分岐路内に中継器と光アイソレータを直列接続した回路を挿入し、上りと下りの夫々に中継器を挿入できるようにしている。また、特開平4−23628号公報に開示された光中継器においては、特開平4−291525号公報に示された中継器に代えて光増幅器が用いられている。以上の構成により、1本の光ファイバにより双方向伝送が可能になる。
【0004】
また、特開平6−268600号公報に開示された双方向中継器は、伝送路内に入力光を2つに分波/合波する第1,第2の方向性結合器を設け、この第1,第2の方向性結合器により形成された上り用と下り用の各分岐路内に光増幅器を挿入し、上りと下りの夫々で光増幅器が機能するようにし、簡略な構成による双方向中継器を達成し、また、光中継器の近傍及び内部で発生した障害を識別できるようにしている。さらに、特許第3052598号では、特開平6−268600号公報の双方向中継器における第1,第2の方向性結合器に代えて光サーキュレータを用い、また、光増幅器を半導体レーザモジュールによる構成にし、発振や信号歪みによる光信号の伝送劣化を防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の双方向伝送用機器によると、光伝送路内に複数の光中継器が設けられているとき、これらをWDM(Wavelength Division Multiplexing:波長多重)信号が通過する過程で、水平なスペクトルで入力されても光中継器の特性が影響し、出力スペクトルの特性は図6のようになる。
【0006】
最初の光中継器に水平なスペクトルが入力されても、例えば、5〜10個の光中継器を通過した後では、図6に示すように、WDMの内波長毎に光強度が異なる特性になる。これは、光増幅器を構成する光ファイバ(EDF:エルビウム・ドープ・ファイバ)の損失等が波長によって異なるために生じる。WDM信号の全チャネルの特性を同一にするためには、光中継器の数台目おきに(数台目の段階で特性の劣化が顕著になるため)スペクトルを水平に戻す必要がある。しかし、上記従来技術では、通過信号に対して光増幅を行うのみであり、WDM信号のスペクトル特性を改善することはできない。
【0007】
本発明の目的は、中継器におけるWDM信号の全チャネルの特性を同じにすることが可能な双方向伝送用利得等化器を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、第1の特徴として、上りと下りに共用され、双方向に光信号が伝送される光伝送路の途中に直列的に配設され、部分的に上り用の経路と下り用の経路を形成する第1及び第2のサーキュレータと、前記上り用の経路又は前記下り用の経路の少なくとも一方に挿入され、通過するWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の全チャネルのスペクトル特性を均一にする利得等化モジュールを備え、前記利得等化モジュールは前記WDM信号の各波長を選別し或いは反射させる光学素子からなることを特徴とする双方向伝送用利得等化器提供する。
【0009】
この構成によれば、光伝送路の途中に直列的に配設された第1及び第2のサーキュレータの間に形成された上り用の経路又は下り用の経路の少なくとも一方に挿入された利得等価器により、WDM信号の全チャネルのスペクトルを水平に戻し、光中継器で劣化したチャネル特性を入力時の状態に回復させる。したがって、同一ファイバを用いた系における光中継器の出力スペクトルがチャネル間に光強度差を生じる場合でも、WDM信号の全チャネルの特性を同じにすることが可能になる。
【0010】
さらに、本発明は、上記の目的を達成するため、第2の特徴として、上りと下りに共用され、双方向に光信号が伝送される光伝送路の途中に直列的に配設され、部分的に上り用の経路と下り用の経路を形成する第1及び第2の光カプラと、前記上り用の経路又は前記下り用の経路の少なくとも一方に挿入され、通過するWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の全チャネルのスペクトル特性を均一にする利得等化モジュールと、前記上り用の経路に挿入された第1の光アイソレータと、前記下り用の経路に挿入された第2の光アイソレータを備え、前記利得等化モジュールは前記WDM信号の各波長を選別し或いは反射させる光学素子からなることを特徴とする双方向伝送用利得等化器を提供する。
【0011】
この構成によれば、光伝送路の途中に直列的に配設された第1及び第2の光カプラの間に形成された上り用の経路と下り用の経路のそれぞれに設けられた第1,第2の光アイソレータは光信号が逆方向から進入して来るのを防止し、上り用及び下り用に専用の経路を形成する。さらに、上り用の経路と下り用の経路の少なくとも一方に挿入された利得等価器により、WDM信号の全チャネルのスペクトルを水平に戻し、光中継器で劣化したチャネル特性を入力時の状態に回復させる。したがって、同一ファイバを用いた系における光中継器の出力スペクトルがチャネル間に光強度差を生じる場合でも、WDM信号の全チャネルの特性を同じにすることが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を基に説明する。
図1は、本発明の双方向伝送用利得等化器を示す。
光ファイバ1a,1bの端部には、光サーキュレータ2,3が接続されている。光サーキュレータ2,3は同一構成であり、共に1つの入・出力ポートを備えるほか、各1つの入力ポートと出力ポートを備えている。光サーキュレータ2の出力ポートと光サーキュレータ3の入力ポートとの間に接続された光ファイバ4には利得等化回路部としての利得等化モジュール5が挿入され、光サーキュレータ2の入力ポートと光サーキュレータ3の出力ポートとの間に接続された光ファイバ6には利得等化モジュール7が挿入されている。利得等化モジュール5と利得等化モジュール7は同一の構成及び仕様であるが、図6の特性とは逆の特性(WDM信号の波長毎に光強度が異なる特性)を持つように設定されている。このような特性に変化させる処理を、以下においては利得等化という。利得等化モジュール5,7の構成は、WDM信号の各波長を選別し或いは反射させる光フィルタや光グレーティングを用いて構成され、必要に応じて光増幅器や光減衰器を含む構成になっている。
【0013】
次に、図1の構成の双方向伝送用利得等化器の動作について説明する。まず、上り側から信号が入力された場合について説明する。上り側からの信号Su (WDM信号)は光サーキュレータ2に入光し、この光サーキュレータ2から光ファイバ4を介して利得等化モジュール5に入光する。この利得等化モジュール5によって、図6の特性図において全チャネルのスペクトルが同一になるように利得等化が行われる。利得等化されたWDM信号は、光ファイバ4を介して光サーキュレータ3に入光し、更に光ファイバ1bに出力され、下り側へ伝送される。
【0014】
次に、下り側から信号が入力された場合について説明する。下り側からの信号Sd (WDM信号)は、光ファイバ1bから光サーキュレータ3に入光し、この光サーキュレータ3から光ファイバ6を介して利得等化モジュール7に入光する。この利得等化モジュール7によって所定の利得等化が行われた後、信号Sd は光ファイバ6を介して光サーキュレータ2に入光し、さらに光ファイバ1aに出力されることにより、上り側に伝送される。
【0015】
以上の構成による本発明の双方向伝送用利得等化器は、1本の伝送路(光ファイバ)において、上り側と下り側のそれぞれに対して独立に利得等化を施すことができ、WDM信号のスペクトル不揃いを補正することができる。そして、本発明の双方向伝送用利得等化器は、中継器に設けることも、必要に応じて伝送路の任意の場所に設置することができる。
【0016】
図2は本発明の双方向伝送用利得等化器の変形例を示す。図1においては、利得等化モジュールを上り側と下り側のそれぞれに設けたが、図2の(a)のように上り側のみに設けることも、図2の(b)のように下り側のみに設けることも可能である。
【0017】
図3は、本発明の双方向伝送用利得等化器の第1の適用例を示す。
図1に示した双方向伝送用利得等化器10の下り側の光ファイバ1b内には、双方向伝送用光中継器20が配設されている。また、双方向伝送用利得等化器10においては、利得等化モジュール5と直列に光ATT(光アッテネータ)8が接続されている。
【0018】
図3において、上り側からのWDM信号SWDM が規定の入力パワーよりも小さかった場合、双方向伝送用光中継器20から出力される出力パワーは、規定値よりも小さくなり、WDM信号SWDM に傾きが生じる。そこで、利得等化モジュール5を通過したWDM信号SWDM に対して光ATT8による減衰量を小さくし、光サーキュレータ2を介して双方向伝送用光中継器20に入力されるWDM信号SWDM の信号レベルを大きくする。
【0019】
また、上り側からのWDM信号SWDM が規定の入力パワーよりも大きかった場合、双方向伝送用光中継器20から出力される出力パワーは、規定値よりも大きくなり、同様にWDM信号SWDM に傾きが生じる。そこで、利得等化モジュール5を通過したWDM信号SWDM に対して光ATT8による減衰量を大きくし、光サーキュレータ2を介して双方向伝送用光中継器20に入力されるWDM信号SWDM の信号レベルを小さくする。
【0020】
このように、光ATT8の減衰量を調整することによって、双方向伝送用光中継器20に入力されるパワーを規定のパワーにすることが可能になり、双方向伝送用光中継器20から出力されるWDM信号SWDM の傾きを補正することができる。
【0021】
図3の構成においては、光ATT8を利得等化モジュール5側に設けたが、利得等化モジュール7側に設けてもよい。また、利得等化モジュール5と利得等化モジュール7のそれぞれに設けてもよい。さらに、双方向伝送用光中継器20は、光ファイバ1a側に設けてもよいし、利得等化モジュール5,7の両方に設けてもよい。
【0022】
図4は本発明の双方向伝送用利得等化器の第2の適用例を示す。
図4は、図3の構成から利得等化モジュール5を除去した構成となっている。図3と同様に、双方向伝送用光中継器20は、双方向伝送用利得等化器10の下り側の光ファイバ1b内に配設されている。この場合も、図3と同様に、光サーキュレータ2に入光されたWDM信号SWDM の入力パワーが双方向伝送用光中継器20にとって過大または過少のとき、光ATT8を調整し、双方向伝送用光中継器20の出力パワーが最適になるようにする。これにより、双方向伝送用光中継器20から出力されるWDM信号SWDM の傾きを補正することができる。なお、光ATT8は、図2の(a)の光ファイバ6内に設けてもよい。
【0023】
図5は、本発明の他の実施の形態を示す。
本実施の形態は、図1の光サーキュレータ2,3に代えて光カプラ11,12を用い、利得等化モジュール5と光カプラ12の間に光アイソレータ13を接続し、利得等化モジュール7と光カプラ11の間に光アイソレータ14を接続した構成としている。光アイソレータ13及び14は、光信号を一方向にのみ通過させ、逆方向からの光信号は遮断する。この構成によれば、光サーキュレータを用いることなく、上りと下りの双方向の利得等化器を構成することができる。
【0024】
なお、図5においては、図2と同様に、利得等化モジュールは光ファイバ4と6のいずれか一方のみに設けてる構成でもよい。また、図3に示した光ATT8を利得等化モジュール5または7の少なくとも一方に接続することも、図4に示した光ATT8を利得等化モジュール5または7に置き換えることも可能である。この場合の効果は、図3及び図4で説明した通りである。
【0025】
図5において、上り側からの信号Su は光カプラ11を介して利得等化モジュール5に入光する。この利得等化モジュール5で利得等化が施された信号Su は、光アイソレータ13を通過し、光カプラ12に入光した後、光ファイバ1bへ送出される。一方、下り側からの信号Sd は光カプラ12を介して利得等化モジュール7に入光する。この利得等化モジュール7で利得等化が施された信号Sd は、光アイソレータ14を通過し、光カプラ11に入光した後、光ファイバ1aへ送出される。
【0026】
このように、図5の構成においても、1本の伝送路(光ファイバ)における上り側と下り側のそれぞれに対して独立に利得等化を施すことができ、WDM信号の傾きを補正することができる。
【0027】
【発明の効果】
以上より明らかなように、本発明の双方向伝送用利得等化器によれば、光伝送路の途中に直列的に第1,第2のサーキュレータを配設し、両者間に形成された上り用の経路又は下り用の経路の少なくとも一方に利得等化回路部を挿入し、これを通過するWDM信号の全チャネルのスペクトルを水平に戻す構成にしたので、同一光ファイバを用いて上り信号と下り信号を伝送する双方向伝送におけるWDM信号の全チャネルのスペクトル特性を同じにすることが可能になる。
【0028】
また、本発明の他の双方向伝送用利得等化器によれば、光伝送路の途中に直列的に第1,第2の光カプラを配設し、両者間に形成された上り用の経路又は下り用の経路の少なくとも一方に光アイソレータを介して利得等化回路部を挿入し、これを通過するWDM信号の全チャネルのスペクトルを水平に戻す構成にしたので、同一光ファイバを用いて上り信号と下り信号を伝送する双方向伝送におけるWDM信号の全チャネルのスペクトル特性を同じにすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の双方向伝送用利得等化器を示すブロック図である。
【図2】本発明の双方向伝送用利得等化器の変形例を示すブロック図である。
【図3】本発明の双方向伝送用利得等化器の第1の適用例を示すブロック図である。
【図4】本発明の双方向伝送用利得等化器の第2の適用例を示すブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示すブロック図である。
【図6】複数の光中継器を通過した後のWDM信号の出力スペクトルの特性図である。
【符号の説明】
1a,1b,4,6 光ファイバ
2,3 光サーキュレータ
5,7 利得等化モジュール
8 光ATT
11,12 光カプラ
13,14 光アイソレータ
20 双方向伝送用光中継器
Claims (5)
- 上りと下りに共用され、双方向に光信号が伝送される光伝送路の途中に直列的に配設され、部分的に上り用の経路と下り用の経路を形成する第1及び第2のサーキュレータと、
前記上り用の経路又は前記下り用の経路の少なくとも一方に挿入され、通過するWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の全チャネルのスペクトル特性を均一にする利得等化モジュールを備え、
前記利得等化モジュールは前記WDM信号の各波長を選別し或いは反射させる光学素子からなることを特徴とする双方向伝送用利得等化器。 - 前記利得等化モジュールは、前記第1の経路及び前記第2の経路のそれぞれに挿入されていることを特徴とする請求項1記載の双方向伝送用利得等化器。
- 前記利得等化モジュールは、一方が光アッテネータであることを特徴とする請求項2記載の双方向伝送用利得等化器。
- 前記利得等化モジュールは、光アッテネータが接続されていることを特徴とする請求項1記載の双方向伝送用利得等化器。
- 上りと下りに共用され、双方向に光信号が伝送される光伝送路の途中に直列的に配設され、部分的に上り用の経路と下り用の経路を形成する第1及び第2の光カプラと、
前記上り用の経路又は前記下り用の経路の少なくとも一方に挿入され、通過するWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の全チャネルのスペクトル特性を均一にする利得等化モジュールと、
前記上り用の経路に挿入された第1の光アイソレータと、
前記下り用の経路に挿入された第2の光アイソレータを備え、
前記利得等化モジュールは前記WDM信号の各波長を選別し或いは反射させる光学素子からなることを特徴とする双方向伝送用利得等化器。
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