JP3593732B2 - 自動車エンジン試験装置に使用する二慣性系パラメータ同定装置 - Google Patents

自動車エンジン試験装置に使用する二慣性系パラメータ同定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、エンジン制御系とダイナモ制御系の非干渉化を図った自動車エンジン試験装置に使用する二慣性系パラメータ同定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境汚染の問題に鑑みて、自動車における排出ガス規制が厳しくなって、自動車エンジンは高性能、高精度化が図られるようになって来た。それに伴い、エンジン性能を評価する試験装置が重要な役割を担うようになって来た。エンジン試験装置は、図7に示すように構成されている。図7において、1はエンジン、2はダイナモで、エンジン1とダイナモ(動力計)2はペラ・シャフト3で連結されている。ダイナモ2はダイナモ制御装置4からの電圧・電流により制御される。ダイナモ2の出力は制御操作盤5に入力される。制御操作盤5からダイナモ速度と速度指令がダイナモ制御装置4に入力される。また、制御操作盤5からはダイナモ速度とトルク値がアナログあるいはディジタルPI制御装置6に入力される。この制御装置6に入力されたダイナモ速度とトルク値により、制御装置6からドライバ8にスロットルバルブ駆動用のアクチュエータ7を駆動するための位置指令値が与えられる。
【0003】
上記のように構成されたエンジン試験装置において、エンジン試験はダイナモ2と直結されたエンジン1の速度またはトルクをある所定のパターンで運転し、排気ガス・燃費等を計測することによって、エンジンの性能を評価するものである。特に、エンジンの性能を評価する際に前述のエンジントルクを用いる手段があるけれども、エンジントルクは直接検出することが困難であるため、一般に軸トルク検出器出力か、ダイナモ出力トルクが代替えとして前述のようにPI制御装置6に入力されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記エンジン試験を行う際に、エンジントルクを一定にしておき、ダイナモ2で速度変化を与えてエンジン特性を計測する手段がある。この場合、ダイナモ出力トルクや軸トルクを用いると、ダイナモの加減速トルク分がエンジントルクに干渉して、厳密なエンジントルク制御を行うことが困難になってしまう問題がある。
【0005】
また、エンジントルクを一定にして上述のようにエンジン試験を行うとき、ダイナモ2の速度変動試験において、ダイナモトルクを図8Aに示すように2000rpmから1800rpmへ速度変化させたとき、ダイナモ2の加速トルク分を補償する場合に、図8Cに示すようにトルク指令値からダイナモトルクが数%ずれてしまう問題がある。なお、図8A〜Eはダイナモトルクを用いたトルク制御を実行している状態で2000rpmから1800rpmへ速度を変化させたときの応答結果である。
【0006】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、ダイナモ速度制御系の干渉を除去することによりエンジントルク制御系のトルク変動を抑制するようにした自動車エンジン試験装置に使用する二慣性系パラメータ同定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記の目的を達成するために、第1発明は、自動車エンジンをダイナモに連結してエンジン試験を行うようにしたものにおいて、ダイナモ制御系とエンジントルク制御系を非干渉とする制御部を設けて、トルク制御を行う自動車エンジン試験装置であって、
前記制御部は、ダイナモトルクとダイナモ速度とが入力され、出力にエンジントルク推定値を得る最小次元オブザーバ部に、ダイナモトルクに代えて低周波数正弦波が供給される一慣性系モデル部と調整可能なモデル慣性部と、モデル部とモデル慣性部の出力の偏差信号に余弦波を乗算し、その乗算信号から直流分を発生する直流分発生部と、この発生部からの直流分が供給され、この直流分に応じて前記モデル慣性部を調整してエンジン慣性モーメントを同定させる同定機構部とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
第2発明は、自動車エンジンをダイナモに連結してエンジン試験を行うようにしたものにおいて、ダイナモ制御系とエンジントルク制御系を非干渉とする制御部を設けて、トルク制御を行う自動車エンジン試験装置であって、
前記制御部は、ダイナモトルクとダイナモ速度とが入力され、出力にエンジントルク推定値を得る最小次元オブザーバ部に、ダイナモトルクに代えて正弦波周波数とダイナモ慣性モーメント同定値との偏差出力が供給されるエンジン慣性モーメント同定値部と調整可能な軸バネ係数部と、エンジン慣性モーメント同定値部の出力とダイナモ速度との偏差を積分する積分部と、この積分部の出力と軸バネ係数部の出力との偏差信号に余弦波周波数を乗算し、その乗算信号から直流分を発生する直流分発生部と、この発生部からの直流分が供給され、この直流分に応じて前記軸バネ係数部を調整して軸バネ係数を同定させる同定機構部とを備えたことを特徴とするものである。
【0011】
【作用】
まず、エンジントルク制御系をオープンにして、ダイナモを一定速度で制御した状態で、スロットルアクチュエータ位置指令を変化させる。次に、トルク制御の目標応答を考慮して、オブザーバ応答速度がある値となるようにしたとき、エンジントルクは、吸気圧に対しほぼ比例関係にあるが、ダイナモトルクは速度制御系に起因する加減速トルク分が加わっている。これに対して、エンジン推定トルクは、吸気圧に対して推定遅れを有するがほぼ一致していて、定常状態においてはダイナモトルクと同じ値に収束している。この結果よりダイナモ制御系の影響を受けずにエンジントルクを推定でき、ダイナモ制御系とエンジントルク制御系の非干渉化を図ってトルク制御を行うことがきるようになり、トルク変動を抑制することができる。
【0012】
また、二慣性系は、反共振周波数より十分低い周波数領域においては一慣性系となるから、エンジントルクは同定中においては常に零とする。そこで、エンジン慣性モーメントの同定は、ダイナモトルクに低周波数正弦波を入力し、ダイナモ速度と一慣性系モデル速度の差が零となるように同定機構によりモデル慣性部を調整する。
【0013】
さらに、軸バネ係数の同定は、外乱オブザーバを用いて検出した軸ねじれ角とモデル軸バネ係数部を用いて推定される推定軸ねじれ角の偏差が零となるようにモデル軸バネ係数部を調整して行う。
【0014】
【実施例】
以下この発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1において、11はエンジン制御系制御対象部で、このエンジン制御系制御対象部11は、図7に示すエンジン1、ダイナモ2およびペラ・シャフト3をブロック構成にしたものである。このエンジン制御系制御対象部11は次のように構成されている。
【0015】
12はスロットルアクチュエータ位置制御系で、このスロットルアクチュエータ位置制御系12にスロットルアクチュエータ位置指令値が入力される。この位置制御系12は偏差器12a、Pアンプ12b、偏差器12c、PIアンプ12d、電流制御部(ACR)12eおよび定数部(Km)12fと定数部(Kx)12gから構成される。
【0016】
上記位置制御系12の出力は種々の機械的な定数(Kc),(Kd)およびスロットルバルブバネ係数(Kb)との偏差を取ったのち、その偏差出力はエンジン慣性部13と定数部14の(定数Kx/S)を加味してワイヤーヒステリシス部15に入力される。このワイヤーヒステリシス部15はアクチュエータとスロットルバルブとを連結するワイヤーから構成される。ワイヤーヒステリシス部15の出力はエンジン特性部16に入力されて、その出力にエンジントルクTを得る。このエンジントルクTはエンジンとダイナモが直結され二慣性系で構成された二慣性系モデルブロック17に入力される。
【0017】
二慣性系モデルブロック17は偏差器17a、17b、17c、エンジン慣性部17d、バネ係数部17eおよびダイナモ慣性部17fから構成される。偏差器17aにはエンジントルクTとバネ係数部17eの出力である軸トルクTが供給され、その偏差出力がエンジン慣性部17dに入力される。エンジン慣性部17dの出力にはエンジン速度Nが送出される。偏差器17bには軸トルクTとダイナモトルクTLCが供給され、その偏差出力がダイナモ慣性部17fに入力される。ダイナモ慣性部17fの出力にはダイナモ速度Nが送出される。偏差器17cにはエンジン速度Nとダイナモ速度Nが供給され、その偏差出力がバネ係数部17eに入力され、その出力に軸トルクTが得られる。この二慣性系モデルブロック17のモデル状態・出力方程式を示すと、次の(1)、(2)式になる。
【0018】
【数1】
Figure 0003593732
【0019】
18はダイナモ速度制御系で、この速度制御系18はダイナモ速度指令とダイナモ速度Nとの偏差を取る偏差器18a、この偏差器18aの出力を増幅するPIアンプ18b、電流制御部(ACR)18c、定数部(Kt)18dおよび二慣性系モデルブロック17の偏差器17bとダイナモ慣性部17fから構成される。
【0020】
21は制御部で、この制御部21はエンジントルク指令値と後述する最小次元オブザーバ部の出力であるエンジントルク推定値∧TE(以下推定値には記号∧を用いる)との偏差を取る偏差器22と、この偏差器22の偏差出力が入力されるPI制御器23と、このPI制御器23の出力にリミッタをかけて前記エンジン制御系制御対象部11にスロットルアクチュエータに位置指令値を与えるリミッタ部24と、ダイナモ速度制御系18からのダイナモトルクTLCとダイナモ速度Nがそれぞれ検出フィルタ25、26を介して入力される最小次元オブザーバ部27から構成される。
【0021】
最小次元オブザーバ部27で推定するパラメータは、エンジントルクT、エンジン速度N、軸トルクTで、推定する状態量の状態方程式は次の(3)、(4)式になる。
【0022】
【数2】
Figure 0003593732
【0023】
上記(3)、(4)式をGopinath設計法によりオブザーバを3重根となるように設計した。そのときの各パラメータA〜D,Gは次式のようになる。
【0024】
【数3】
Figure 0003593732
【0025】
図2は最小次元オブザーバ部27のブロック構成図で、検出フィルタ25の出力はパラメータBを通して加算器27aに供給される。加算器27aには検出フィルタ26の出力がパラメータGを介して与えられるとともに、パラメータAの出力も与えられる。加算器27aの加算出力は積分器27bに供給され、その出力はパラメータCを介して加算器27cに与えられるとともにパラメータAにも与えられる。加算器27cには検出フィルタ26の出力がパラメータDを介して与えられる。
【0026】
上記のように構成された実施例の動作を述べる。まず、エンジントルク制御系をオープンにして、ダイナモを例えば2000rpm、一定速度で制御した状態で、スロットルアクチュエータ位置指令を20%ステップ上に変化させる。図3A〜Eはダイナモトルク、速度、エンジン吸気圧とエンジントルク、速度、軸トルクの応答波形を示し、トルク制御の目標応答2〜5(rad/s)を考慮して、オブザーバ応答速度が50(rad/s)となるようにしたとき、エンジントルクは、吸気圧に対しほぼ比例関係にあるが、ダイナモトルクは速度制御系に起因する加減速トルク分が加わっている。これに対して、エンジン推定トルクは、吸気圧に対して推定遅れを有するがほぼ一致していて、定常状態においてはダイナモトルクと同じ値に収束している。この結果よりダイナモ制御系の影響を受けずにエンジントルクを推定できる。
【0027】
次に、エンジントルク推定値をエンジントルク制御に用いたときの効果を確認するため、エンジン推定トルク、また、ダイナモトルクを制御量としたときの比較を行った。このとき、トルク指令を10%に固定した状態で、ダイナモにより2000rpmと1800rpmの間を加減速したとき、トルク制御系は応答速度が約3(rad/s)となるようにPI制御を行った。このときの応答結果を図4A〜Eに示す。この図4A〜Eから速度変化に対するエンジン特性から多少トルク変動を生じるが、1%以内の変動に抑えられている。これに対して従来の場合には、図8A〜Eに示したような応答結果であるから、速度変化時に加速トルク分の影響を受けて数%も変動してしまう。
【0028】
上記の場合は、いずれも、ダイナモを制御量としたときのものであるが、この実施例を用いることにより、エンジントルクからダイナモトルクまでのダイナモ制御系を含めた高次系が介在しても、エンジントルクを直接推定し、制御量とすることにより、ダイナモ制御系の干渉を発生させない制御が可能となる。
【0029】
図5と図6は従来例とこの発明の実施例における実験結果を示す周波数特性図であり、図5(a)は従来例のエンジン出力トルクに対するダイナモトルクと軸トルクの利得対周波数特性図、図5(b)は同じく位相対周波数特性図であり、図6(a),(b)はこの発明の実施例のエンジン出力トルクに対するエンジン推定トルクの利得対周波数特性図と位相対周波数特性図である。図5(a)において図中破線の丸印で囲んだ部分がダイナモ制御系の干渉があることを示している。しかし、図6(a)では干渉を示すような特性にはなっていない。また、位相特性においても、この発明の実施例のものが優れている。
【0030】
上記実施例は、最小次元オブザーバ部によりエンジントルクを推定し、これをエンジントルク制御系にフィードバックし、ダイナモ速度制御系の干渉をキャンセルするものであるが、オブザーバにはエンジンとペラ・シャフトで直結したダイナモで構成される二慣性系モデルを使用しているため、エンジン慣性モーメント、軸バネ係数が既知であることが条件である。しかし、エンジン慣性モーメント、軸バネ係数が未知であると、オブザーバを構成できなく、ダイナモ速度制御系の干渉を受けてしまう。また、オブザーバに用いるエンジン慣性モーメント、軸バネ係数のモデル化誤差が存在する場合にも干渉の影響を受けてしまう。
【0031】
ここで、二慣性系のパラメータ誤差がオブザーバの推定応答に及ぼす影響について述べる。エンジントルクからエンジン推定トルクまでの伝達関数を導出し、パラメータ誤差の影響は次のようになる。エンジン推定トルク∧Tは、前記状態方程式(3)、(4)式よりダイナモトルクとダイナモ速度を用いて表すと次の(5)式となる。
【0032】
【数4】
Figure 0003593732
【0033】
速度指令一定状態において、エンジントルクに対するダイナモ速度とダイナモトルクは、ダイナモ速度制御系パラメータKDI,KDPを用いると次の(6)、(7)式となる。なお、T*はエンジントルク入力値である。
【0034】
【数5】
Figure 0003593732
【0035】
二慣性系モデルパラメータをJ’,J’,K’,L’,L’,L’で示し、真値をJ,J,Kとすると、エンジン推定トルクは(6)、(7)式を(5)式に代入することによって、次の(8)式が得られる。
【0036】
【数6】
Figure 0003593732
【0037】
二慣性系モデルと真値が等しい場合に(8)式右辺第2項が「1」となり、エンジントルクの推定応答は、応答周波数ωの3重根を持つ3次系となり、ダイナモ速度制御系の影響なく推定することができる。推定応答がパラメータ誤差により受ける影響は、(8)式右辺第2項に示される。エンジン慣性モーメントJ、軸バネ係数Kのそれぞれのモデル値J’、K’と真値に誤差が存在する場合に、推定応答に及ぼす影響をシミュレーションにより確認した。なお、このとき、エンジントルク制御系はオープンである。
【0038】
また、エンジン慣性モーメントJ、軸バネ係数Kは、モデル値J’、K’と変数m、mを用いてJ=m・J’、K=m・K’により表される。図9、図10は変数m,mそれぞれを任意に変化させ、エンジントルクをステップ的に変化させた場合のエンジン推定トルクの応答波形である。オブザーバの応答周波数ωは、50(rad/s)に設定した。エンジン推定トルクは、パラメータ誤差の影響により振動、オーバーシュートが発生する。パラメータモデル値と真値に誤差が存在するとエンジントルク推定量に、ダイナモ速度制御系や二慣性系の共振の影響を受ける。エンジン推定トルクのオーバーシュートが1%未満であるためには、パラメータは少なくとも10%以内の誤差が望ましいことが知られている。
【0039】
このため、オブザーバの内部パラメータであるエンジン慣性と軸バネ係数は試験されるエンジン個々に差があるため、これらの同定方法の確立が重要な要素となる。以下二慣性系パラメータの同定方法について述べる。二慣性系のダイナモトルクとダイナモ速度までの伝達関数は、粘性項は微小であるため無視すると、次の(9)式となる。
【0040】
【数7】
Figure 0003593732
【0041】
図11は(9)式で表される伝達関数の周波数特性である。この図11の周波数特性から制御対象は、低周波数領域において一慣性系として、また、高周波数領域において共振系として区別できる。図11のAは一慣性系モデルにおけるダイナモトルク−ダイナモ速度の伝達特性、同じくBは二慣性系モデルにおけるダイナモトルク−ダイナモ速度の伝達特性である。この性質を利用してエンジン慣性モーメントと軸バネ係数の同定方法を述べる。
【0042】
まず、エンジン慣性モーメント同定装置について述べる。二慣性系は、反共振周波数ωより十分低い周波数領域においては一慣性系となる。図12は一慣性系ブロック図で、エンジントルクTは同定中においては常に零とする。図13に示すように、エンジン慣性モーメントの同定は、ダイナモトルクTLCに低周波数正弦波を入力し、ダイナモ速度と一慣性系モデル速度の差が零となるように同定機構によりモデル慣性を調整して行う。図13において、31は一慣性系モデル部で、このモデル部31に低周波数正弦波sin(ωt)が供給される。低周波数正弦波は調整が可能なモデル慣性部32にも供給される。モデル部31とモデル慣性部32の出力は偏差部33に入力されて偏差が取られ、その偏差信号は前記正弦波と90°位相がずれた信号cos(ωt)と乗算されて直流分発生部34に入力される。この直流分発生部34の直流分が同定機構部35に供給される。同定機構部35は直流分に従ってモデル慣性部32を調整してエンジン慣性モーメントを同定する。
【0043】
次に、図13のように構成されたエンジン慣性モーメント同定装置の動作を述べる。まず、(10)式で示す同定信号をモデル部31とモデル慣性部32に入力すると、ダイナモ速度Nとモデル速度は、両者の慣性モーメント差による速度差が発生する。
【0044】
LC=sin(ω・t) ω<<ω ……(10)
この速度差は次式の(11)式となる。
【0045】
【数8】
Figure 0003593732
【0046】
(11)式をフーリエ級数展開し、同定信号の周波数成分ωについて解くと(12)式が得られる。
【0047】
【数9】
Figure 0003593732
【0048】
(12)式と同定信号に対して90°位相のずれた信号cos(ω・t)を積和演算する。(13)式は慣性モーメント差による速度差の直流分m(t)を示す。
【0049】
【数10】
Figure 0003593732
【0050】
エンジン慣性モーメントは、得られた直流分m(t)が零であるとき、モデルと真値の慣性モーメントが等しくなり、ダイナモ慣性も既知であることから真値に同定される。このように、(13)式に示す直流分m(t)によってモデル慣性モーメントを同定すると、一周期T(秒)毎の調整となり、収束性が悪いため、次の(14)式に示す信号n(t)に3次ローパスフィルタを介すことにより、直流分m(t)を出力する。この直流分m(t)を用いて、慣性モーメントを(15)式の調整則に従って同定する。
【0051】
【数11】
Figure 0003593732
【0052】
[N]=J[N−1]+K・m[N]・T ……(15)
:同定ゲイン、T:サンプリング時間
次に、軸バネ係数同定装置について述べる。軸バネ係数の同定は、外乱オブザーバを用いて検出した軸ねじれ角θとモデル軸バネ係数を用いて推定される推定軸ねじれ角θの偏差が零となるようにモデル軸バネ係数を調整して行う。軸バネ係数同定装置のブロック図を図14に示す。この図14に示す図示破線で囲んだ部分は、図1の制御部21内の最小次元オブザーバ部27に代えて構成したものであり、その他の箇所は図1と同様であるので、同一符号を付して示す。
【0053】
図14において、41は軸バネ係数同定部で、この同定部41は次のように構成されている。検出フィルタ25の出力は偏差部42のプラス端に供給され、そのマイナス端にはダイナモ慣性モーメント同定値J部43からの出力が供給される。検出フィルタ26の出力はJ部43と偏差部44のプラス端に供給される。前記偏差部42の偏差出力はエンジン慣性モーメント同定値J部45を介して偏差部44のマイナス端に供給されるとともに、軸バネ係数部46に供給される。軸バネ係数部46は後述の同定機構部により調整されるように構成されている。前記偏差部44の偏差出力は積分部47を介して偏差部48のプラス端に供給され、マイナス端には軸バネ係数部46の出力が供給される。偏差部48の偏差出力には、cos(ω・t)の信号が乗算されて直流分発生部49に供給される。直流分発生部49の出力は同定機構部50に入力され、ここで演算された後、前記軸バネ係数部46が調整されて、軸バネ係数は同定される。
【0054】
次に上記軸バネ係数同定装置の動作を述べる。軸ねじれ角θは、エンジン慣性モーメント同定値Jと外乱オブザーバによる推定軸トルク∧Tにより(16)式となる。
【0055】
【数12】
Figure 0003593732
【0056】
推定軸ねじれ角θは、外乱オブザーバ出力とモデル軸バネ係数Kを用いると次の(17)式で表される。
【0057】
【数13】
Figure 0003593732
【0058】
軸ねじり角θと推定軸ねじれ角θとの偏差は、モデル軸バネ係数と真値の差により発生する。従って、軸バネ係数部46はこの偏差が零となるように同定機構部50からの出力により同定される。軸ねじれ角θと推定軸ねじれ角θとの偏差qは次の(18)式となる。
【0059】
【数14】
Figure 0003593732
【0060】
偏差qは軸トルクのダイナモトルクに対する伝達関数を用いて表すと、次の(19)式となる。
【0061】
【数15】
Figure 0003593732
【0062】
上記(19)式をフーリエ級数展開すると、次の(20)式が得られる。
【0063】
【数16】
Figure 0003593732
【0064】
同定信号としてダイナモトルクTLCに周波数ωの正弦波sin(ω・t)を入力すると、前記偏差は(21)式で表される。
【0065】
q(t)=Q・sin(ωt)−Q・cos(ωt) ……(21)
軸バネ係数部46の同定は、上記偏差と90°位相のずれたcos(ωt)との相関関係がなくなるように調整して行われる。軸バネ係数部46の誤差により発生する直流分は、これらを積和演算することにより(22)式となる。
【0066】
【数17】
Figure 0003593732
【0067】
上記のことから次の関係が得られる。V(t)=0 → K=K あるいは
ω=√{(K/J)+(K/J)}=ω(ω:共振周波数)
すなわち、同定信号の周波数は、ω≠ωの制約条件が存在するが、軸バネ係数は以下の方式によって同定される。
【0068】
直流分V(t)は、エンジン慣性同定方法と同様に偏差q(t)に3次ローパスフィルタを介すことにより検出することができる。
【0069】
ω<ωの時
ω <K(J+J)より
[N]=K[N−1]+G・V[N]・T
また、ω>ωの時
ω >K(J+J)より
[N]=K[N−1]−G・V[N]・T
なお,Tはサンプリング時間、Gは同定ゲインである。
【0070】
次に、軸バネ係数同定方法を検証するために、エンジン慣性モーメントが同定された後、軸バネ係数のモデル初期値を真値の1.5倍に設定し、同定シミュレーションを行った。図15は軸バネ係数同定のシミュレーション結果を示す。次の表1はエンジン試験装置およびシミュレーションに用いた各パラメータ値を示す。
【0071】
【表1】
Figure 0003593732
【0072】
【発明の効果】
以上述べたように、この発明によれば、ダイナモ速度制御系の干渉をキャンセルした制御を行うようにしたので、エンジントルク制御系のトルク変動を抑制することができるようになる利点がある。また、エンジントルク制御系にエンジン慣性モーメントと軸バネ係数同定方法を組み込むことにより、未知な試験エンジンに対しても非干渉化を図ることができるようになり、さらに、エンジン慣性モーメントを知ることができるようになるので、トルク制御系のPI制御器のオートチューニングが可能となる。この他、エンジン慣性モーメント、軸バネ係数の各値を知ることに加えて既知のダイナモ慣性の値を用いることにより、共振周波数が分かるために、制御応答の限界を判断できるようになる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示すブロック構成図。
【図2】最小次元オブザーバ部の詳細な構成図。
【図3】実施例の動作を述べるための波形図。
【図4】実施例の動作を述べるための波形図。
【図5】従来例の実験結果を示す周波数特性図。
【図6】この発明の実施例の実験結果を示す周波数特性図。
【図7】従来例の自動車エンジン試験装置を示す構成図。
【図8】従来例の自動車エンジン試験装置の動作を述べるための波形図。
【図9】エンジン慣性モーメントの変数を変化させたときの応答波形図。
【図10】軸バネ係数の変数を変化させたときの応答波形図。
【図11】伝達関数の周波数特性図。
【図12】一慣性系を示すブロック図。
【図13】エンジン慣性モーメント同定装置を示すブロック図。
【図14】軸バネ係数同定装置を示すブロック図。
【図15】軸バネ係数同定のシミュレーション結果を示す特性図。
【符号の説明】
11…エンジン制御系制御対象部
12…スロットルアクチュエータ位置制御系
15…ワイヤーヒステリシス部
16…エンジン特性部
17…二慣性系モデルブロック
18…ダイナモ速度制御系
21…制御部
22…偏差器
23…PI制御器
24…リミッタ部
25、26…検出フィルタ
27…最小次元オブザーバ部

Claims (2)

  1. 自動車エンジンをダイナモに連結してエンジン試験を行うようにしたものにおいて、ダイナモ制御系とエンジントルク制御系を非干渉とする制御部を設けて、トルク制御を行う自動車エンジン試験装置であって、
    前記制御部は、ダイナモトルクとダイナモ速度とが入力され、出力にエンジントルク推定値を得る最小次元オブザーバ部に、ダイナモトルクに代えて低周波数正弦波が供給される一慣性系モデル部と調整可能なモデル慣性部と、モデル部とモデル慣性部の出力の偏差信号に余弦波を乗算し、その乗算信号から直流分を発生する直流分発生部と、この発生部からの直流分が供給され、この直流分に応じて前記モデル慣性部を調整してエンジン慣性モーメントを同定させる同定機構部とを備えたことを特徴とする自動車エンジン試験装置に使用する二慣性系パラメータ同定装置。
  2. 自動車エンジンをダイナモに連結してエンジン試験を行うようにしたものにおいて、ダイナモ制御系とエンジントルク制御系を非干渉とする制御部を設けて、トルク制御を行う自動車エンジン試験装置であって、
    前記制御部は、ダイナモトルクとダイナモ速度とが入力され、出力にエンジントルク推定値を得る最小次元オブザーバ部に、ダイナモトルクに代えて正弦波周波数とダイナモ慣性モーメント同定値との偏差出力が供給されるエンジン慣性モーメント同定値部と調整可能な軸バネ係数部と、エンジン慣性モーメント同定値部の出力とダイナモ速度との偏差を積分する積分部と、この積分部の出力と軸バネ係数部の出力との偏差信号に余弦波周波数を乗算し、その乗算信号から直流分を発生する直流分発生部と、この発生部からの直流分が供給され、この直流分に応じて前記軸バネ係数部を調整して軸バネ係数を同定させる同定機構部とを備えたことを特徴とする自動車エンジン試験装置に使用する二慣性系パラメータ同定装置。
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