JP3593721B2 - ネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気光学的表示材料として有用なネマチック液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子の代表的なものにTN−LCD(ツイスティッド・ネマチック液晶表示素子)があり、時計、電卓、電子手帳、ポケットコンピュータ、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどに使用されている。一方、OA機器の処理情報の増加に伴い、一画面に表示される情報量が増大しており、シェファー(Scheffer)等[SID ’85 Digest, 120頁(1985年)]、あるいは衣川等[SID ’86 Digest, 122頁(1986年)]によって、STN−LCD(スーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示素子)が開発され、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータなどの高情報処理用の表示に広く普及しはじめている。
【0003】
更に、その表示品質が優れていることから、アクティブ・マトリクス形液晶表示装置が液晶テレビ、プロジェクター表示、コンピューター等のディスプレイの応用分野に有力なものとして市場に出されている。アクティブ・マトリクス表示方式は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)あるいはMIM(メタル・インシュレータ・メタル)等のスイッチング素子が設けられている。(以下、これらアクティブ・マトリクス表示方式の液晶表示素子を総称してTFT−LCDと呼称する)
この様な表示素子に対応するために、現在も新しい液晶化合物あるいは液晶組成物の提案がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
TN−LCDやSTN−LCDの応用製品の広がりの中で、1.4V以下の低い駆動電圧で動作できる液晶材料が必要とされている。 例えば、携帯用装置やパーソナルコンピューター等の表示には高時分割数で良好な駆動特性が要求されている。しかしながら、このような液晶材料は、粘性の増加により応答特性の悪化、各画素毎のキャパシタンス成分の増加により表示のちらつきやクロストーク現象の発生、低電圧で調製された液晶材料の抵抗値の低下による耐熱性及び耐光性等の問題があった。この様な特性を得るために、例えば、下記のような一般式(aー1)の化合物が多用されてきた。
【0005】
【化6】
【0006】
(式中、Rは直鎖状アルキル基を表わす。)
また、本発明に係わる、例えば一般式(I−1)の様なフルオロトラン系化合物は、本発明者らが特開平6−4097号公報でその物性特性等を開示しただけであり、これを用いた組成物の特性等は未だ知られていないのである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題に応えることにあり、特にしきい値電圧が1.4V以下と低い液晶組成物及びこれを用いた液晶表示装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、本発明の第1の液晶組成物として、(1)一般式(I−1)及び(I−2)
【0009】
【化7】
【0010】
(式中、R11は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCpH2p+1OCqH2qを表わし、R12は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、p及びqはそれぞれ独立的に1〜5の整数を表わし、X11及びX12はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、Y11はフッ素原子、塩素原子又はトリフルオロメチル基を表わし、Z11及びZ12のうち少なくとも一方は単結合を表わし、他方は単結合、−C2H4−又は−C4H8−を表わし、fは0又は1を表わす。)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物及び(2)一般式(II−1)〜(II−3)
【0011】
【化8】
【0012】
(式中、R21及びR23はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、R22は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCrH2r+1OCsH2sを表わし、r及びsはそれぞれ独立的に1〜5の整数を表わし、X21〜X23はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、gは0又は1を表わす。)で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物を含有し、且つ該2つの群から選ばれる化合物のうちの少なくとも1種が、1,4−シクロヘキシレン基の少なくとも1個の水素原子(H)が重水素原子(D)で置換された化合物であることを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0013】
上記の一般式(I−1)〜(II−3)及び後述の一般式(III−4)、(IV−2)〜(IV−4)で表わされる化合物において、水素原子(H)を重水素原子(D)に置換した1,4−シクロヘキシレン基を有する化合物の代表的な化合物を下記に示す。尚、これらの化合物中、式(b−1)
【0014】
【化9】
【0015】
で表わされるシクロヘキサン環は、天然に存在する質量数1の水素原子に対する存在比に相当した確率で重水素原子(D)を有することを表わし、式(b−2)
【0016】
【化10】
【0017】
で表わされるシクロヘキサン環は、天然に存在する比と著しく異なった確率でDで示した位置に重水素原子(D)を有することを表わす。以下、本発明においてはこの2つのシクロヘキサン環を同様の定義で用いる。
【0018】
【化11】
【0019】
【化12】
【0020】
(式中、R11、R12、R22、R34、R42、R43、R44、X11、X12、X22、X42、X43、X44、Y11、Y34は前述と同じ意味を表わす。)
本発明は第2の液晶組成物として、上記の第1の液晶組成物に添加することができる第3成分として、(3)一般式(III−1)〜(III−5)
【0021】
【化13】
【0022】
(式中、R31〜R35はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、X31は水素原子、フッ素原子又はCH3を表わし、Y31〜Y33はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基又はアルケニルオキシ基を表わし、Y34及びY35はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルケニルオキシ基又はCtH2t+1OC2H4Oを表わし、tは1〜5の整数を表わし、h、i及びjはそれぞれ独立的に0又は1を表わす。)で表わされる化合物からなる第3群から選ばれる化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0023】
また、本発明の第3の液晶組成物として、上記の第1又は第2の液晶組成物に添加することができる第4成分として、(4)一般式(IV−1)〜(IV−5)
【0024】
【化14】
【0025】
(式中、R41〜R44はそれぞれ独立的に炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基又はアルケニル基を表わし、R45は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、アルケニル基又はCuH2u+1OCvH2vを表わし、u及びvはそれぞれ独立的に1〜5の整数を表わし、X41〜X44はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表わし、kは0、1又は2を表わし、l及びmはそれぞれ独立的に0又は1を表わす。)で表わされる化合物からなる第4群から選ばれる化合物を含有することを特徴とするネマチック液晶組成物を提供する。
【0026】
更に、本発明は上記の第1、第2又は第3のネマチック液晶組成物を用いたツイスティッド・ネマチック又はスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置を提供する。
【0027】
本発明に係わる一般式(I−1)〜(II−3)で表わされる代表的な化合物例を下記第1表に示す。下記表中、m.p.は結晶相から液晶相又は等方性液体相に相転移する温度を、c.p.は液晶相から等方性液体相に相転移する温度をそれぞれ表わす。また、各液晶化合物は、蒸留、カラム精製、再結晶等の方法を用いて不純物を除去し、充分精製したものを使用した。
【0028】
【表1】
【0029】
本発明の液晶組成物の特徴は、一般式(I−1)及び(I−2)で表わされる化合物からなる第1群から選ばれる化合物と、一般式(II−1)〜(II−3)で表わされる化合物からなる第2群から選ばれる化合物を必須成分として組み合わせて用いる点にある。この様にして得られた液晶組成物は、しきい値電圧が1.4V以下の特性を示すことが可能となる。
【0030】
このことを示すために、下記の液晶組成物(2−1)及び比較のための混合液晶(2−2)〜(2−4)をそれぞれ調製し、その特性を測定した結果を示す。尚、測定した特性の各記号の意味は以下の通りである。
【0031】
TN−I : ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
Vth : 液晶層の厚みが8μmでのTN−LCDのしきい値電圧(V)
△ε : 誘電異方性
△n : 複屈折率
τr=τd:電圧無印加状態から電圧を印加して光が透過する状態になるまでの立ち上がり時間τrと、電圧印加状態から電圧を除いて光が透過しなくなるまでの立ち下がり時間τdが等しくなる応答時間(msec)
【0032】
【化15】
【0033】
TNI : 65.9 ℃
Vth : 1.05 V
Δε : 15.1
Δn : 0.111
τr=τd : 58.9 msec
【0034】
【化16】
【0035】
TNI : 65.0 ℃
Vth : 1.43 V
Δε : 15.4
Δn : 0.142
τr=τd : 57.2 msec
【0036】
【化17】
【0037】
TNI : 62.9 ℃
Vth : 1.95 V
Δε : 4.2
Δn : 0.095
τr=τd : 55.5 msec
【0038】
【化18】
【0039】
TNI : 44.0 ℃
Vth : 1.00 V
Δε : 18.1
Δn : 0.110
τr=τd : 91.4 msec
液晶組成物(2−1)は、本発明のネマチック液晶組成物である。本発明外の液晶組成物(2−2)は、本発明に係わる一般式(II−2)で表わされる化合物からなる液晶材料「ZLI−1132」(メルク社製)に、本発明に係わる一般式(II−1)で表わされる化合物を液晶組成物(2−1)と同等量添加したものである。本発明外の液晶組成物(2−3)及び(2−4)は、本発明外のエステル系化合物からなる液晶材料「DON−103」(RODIC社製)に、本発明に係わる一般式(II−1)の化合物を添加量を変えて添加したものである。液晶組成物(2−2)〜(2−4)は、現在汎用されている代表的な液晶材料である。
【0040】
液晶組成物(2−1)〜(2−3)は、ネマチック相−等方性液体相転移温度がほぼ同じである。しかしながら、しきい値電圧は本発明の液晶組成物(2−1)が最も低く優れていることが明らかである。応答速度では、本発明の液晶組成物(2−1)は、液晶組成物(2−2)及び(2−3)とほぼ同等であった。従って、本発明の液晶組成物が最も優れていることが明らかである。
【0041】
液晶組成物(2−4)は、液晶組成物(2−1)とほぼ同じしきい値電圧を示しているが、誘電率異方性が大きくなっている。従って、本発明の液晶組成物のほうが、画素毎のキャパシタンス成分をより低減させ、また耐久性を改善できることが明らかである。
【0042】
この様に優れた特性を得ることができたのは、第1群と第2群のそれぞれから選ばれる化合物を組み合わせた効果であり、この発明により低い電圧で駆動可能なネマチック液晶組成物を調製できることを示している。
【0043】
本発明の液晶組成物の更なる特徴は、第1群から選ばれる化合物と第2群から選ばれる化合物を必須成分とする液晶組成物が、特に低温においてネマチック相を誘起拡大させる性質があり、また低温に保存してもネマチック液晶性をより長期に保持できる点にある。
【0044】
一般式(I−1)で表わされる化合物は、誘電率異方性Δεが15〜25の範囲にあり、フルオロトラン構造を有するものである。この化合物は、液晶材料との相溶性において特異な性質があり、例えば下記一般式(2−5)〜(2−7)と組み合わせた場合、誘起した結晶相あるいは一部が結晶化したスメクチック相が発現し、液晶相を逆に狭くさせてしまう問題を有し、組み合わせとしては不適合であった。
【0045】
【化19】
【0046】
(式中、Rはアルキル基を、R’はアルキル基又はアルコキシ基を表わす。)
しかしながら、本発明に係わる他の化合物と組み合わせた時、低温側においてネマチック相を誘起拡大させる相溶性を示し、駆動電圧を維持あるいは低減させる効果がある。特に、相溶性については、一般式(I−2)の化合物と併用すると効果的であり、より好ましい。
【0047】
一般式(I−2)で表わされる化合物は、3,4,5−トリフルオロフェニル基を有するものである。この化合物において、R12がアルキル基であり、且つZ11及びZ12が単結合の化合物は長期の低温保存において結晶の析出がみられる問題があった。本発明者らはこの問題を解決する方法として、R12がアルケニル基であり、且つZ11及びZ12が単結合の化合物と、R12がアルキル基であり、且つZ11及びZ12の一方が−C2H4又は−C4H8−であり、他方が単結合の化合物を組み合わせると、低温側においてネマチック相を誘起拡大させる特段の効果があることを既に明らかにしている。一般式(I−2)で表わされる化合物と第2の化合物群で表わされる化合物とを組み合わせた本発明の液晶組成物は、相溶性において更に有為なものとなることを見い出した。
【0048】
一般式(I−1)及び(I−2)においてR11及びR12がアルケニル基である化合物は、表示特性に重要な役割を果たす弾性定数比(K33/K11)が比較的大きいあるいは小さい特徴を有しており、用途に応じた弾性定数比を示す液晶組成物を調製することができるものである。更に、液晶組成物の粘性を低下させることもできるので、高速応答性を有する液晶材料を容易に得ることができる。この様な化合物として特に下記のものが優れている。
【0049】
【化20】
【0050】
この様な本発明の優位性は、例えば特公表5−501735号公報で開示された技術と比較するとより明確にされる。これによれば、3,4,5−トリフルオロフェニル基を有する化合物は含有量を50重量%以下にすることが好適であるとしている。このため、より低いしきい値電圧を課題とするも充分に低減させるに到っておらず、その原因が低温での相溶性あるいはネマチック相の狭さに問題を有し、多くの量を含有させることができないことに由来することと思われる。
【0051】
本発明における3,4,5−トリフルオロフェニル基を有する第1群の化合物は、総含有量で50%以上含有させても、広い温度範囲で使用できるネマチック液晶組成物を調製できるのである。
【0052】
本発明の液晶組成物の第2の特徴は、第1群及び第2群からそれぞれ選ばれる化合物のうちの少なくとも1種が、1,4−シクロヘキシレン基の少なくとも1個の水素原子(H)を重水素原子(D)に置換された化合物を用いる点にある。この様な液晶組成物は、低温でのネマチック相を安定化させる性質があり、特に低温に保存してもネマチック液晶性をより長期に保持できるものである。本発明者らは、このような重水素原子(D)を有する化合物のこの様な効果を特願平5−104144号明細書、特願平5−182734号明細書等で明らかにしたが、本発明は更にこの効果を優れたものとしている。即ち、本発明の第2の特徴により、例えば、本発明の液晶組成物は、後述の実施例で詳述するが、−25℃あるいは−40℃に保存してもネマチック液晶性を長期に保持することができるものである。
【0053】
また、重水素原子(D)を有する一般式(I−1)〜(II−3)で表わされる化合物は、重水素原子で置換されていない化合物と比較して、有為さのある弾性定数及びそれらの比、あるいは有利なしきい値電圧を示しており、用途に応じた電気光学特性に調製できるものである。
【0054】
本発明のネマチック液晶組成物に用いる一般式(III−1)〜(IV−5)で表わされる化合物は上述の特性及びTN−LCD、STN−LCD等に要求される特性を維持向上する効果を有する。
【0055】
詳しくは、一般式(III−1)〜(III−4)で表わされる化合物は、液晶組成物の複屈折率(△n)を0.08〜0.13に最適化して、液晶表示装置の視角特性の向上、コントラスト比の増加等を行うことができる。また、組成物のネマチック相温度範囲を高温側及び低温側に拡大させる効果を有し、液晶表示装置の駆動可能な温度範囲を拡大することができる。更に、低温側での応答特性を改善させることができる。
【0056】
一般式(III−5)の化合物は、液晶組成物の複屈折率(△n)を0.10〜0.24に最適化して、液晶表示装置の色ムラを低減させることができる。また、この様にして得られた液晶組成物は、日経マイクロデバイス1994年1月号99頁で提案されている位相差フィルムとLCDの複屈折率を調整してカラー表示をさせる液晶表示装置にも有用である。
【0057】
一般式(IV−1)〜(IV−5)の化合物は、上記液晶組成物のネマチック相の温度範囲を高温域及び/又は低温域に拡大し得るものであり、複屈折率(△n)をより小さくあるいはより大きく調整するのに有用である。
【0058】
更に、本発明の液晶組成物は、一般式(I−1)〜(IV−5)の化合物に加えて、液晶組成物の他の特性を改善するために、液晶化合物として認識される通常のネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶などを含有してもよい。
【0059】
本発明の液晶組成物における各化合物の含有量は、一般式(I−1)で表わされる化合物を0〜20重量%、一般式(I−2)で表わされる化合物を0〜25重量%の範囲で含有することが好ましい。一般式(II−1)で表わされる化合物を0〜15重量%、一般式(II−2)で表わされる化合物を0〜35重量%、一般式(II−3)で表わされる化合物を0〜35重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0060】
また、液晶組成物における各化合物の総含有量は、一般式(I−1)の化合物群を0〜40重量%、一般式(I−2)の化合物群を0〜80重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(II−1)の化合物群を0〜35重量%、一般式(II−2)の化合物群を0〜70重量%、一般式(II−3)の化合物群を0〜70重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0061】
より好ましくは、一般式(I−1)の化合物群を10〜30重量%、一般式(I−2)の化合物群を20〜70重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(II−1)の化合物群を10〜20重量%、一般式(II−2)の化合物群を5〜20重量%、一般式(II−3)の化合物群を5〜30重量%の範囲である。
【0062】
更に、各化合物群の総含有量は、一般式(I−1)及び(I−2)の第1群の化合物を10〜90重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(II−1)〜(II−3)の第2群の化合物を5〜70重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0063】
より好ましくは、第1群の化合物を30〜85重量%の範囲で含有することが好ましく、第2群の化合物を5〜40重量%の範囲である。
【0064】
一般式(III−1)〜(III−5)で表わされる化合物は各々0〜25重量%の範囲で含有することが好ましく、一般式(IV−1)〜(IV−5)で表わされる化合物は各々0〜20重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0065】
本発明に係わる各化合物は、液晶組成物あるいは液晶表示特性に要求される目的に応じて以下のように組み合わせることができる。液晶表示のしきい値電圧Vthを低くする目的には、[(I−1)、(I−2)]+[(II−1)〜(II−3)]+[(IV−1)〜(IV−5)]の組み合わせが好ましく、更にしきい値電圧Vthを低くする目的には、一般式(I−1)+(II−1)を組み合わせることが特に好ましい。液晶表示の応答特性を速くする目的には、[(I−1)、(I−2)]+[(II−2)〜(II−3)]+[(III−1)〜(III−4)]の組み合わせが好ましく、更に一般式(VI−2)の化合物を組み合わせることが好ましい。液晶組成物の複屈折率△nを0.08〜0.13とする目的には、(I−2)+[(II−2)〜(II−3)]+[(III−1)〜(III−4)]の組み合わせが好ましく、液晶組成物の複屈折率△nを0.15〜0.24とする目的には、(I−1)+[(II−1)、(II−2)]+(III−5)+(IV−5)の組み合わせが好ましい。
【0066】
この様にして得られた本発明の液晶組成物は、後述の実施例に示したように、60〜100℃のネマチック相−等方性液体相転移温度(TN−I)を有し1.1〜1.4Vしきい値電圧(Vth)、−40℃以下の結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(T→N)、0.08〜0.20の複屈折率△nの特性を得ることができる。
【0067】
また、本発明のネマチック液晶組成物は、後述の実施例に示した加熱促進テスト、紫外線照射促進テストを行ったところ、各促進テスト後も化学的にも非常に安定で高い抵抗値を有することが確認された。
【0068】
このように、本発明のネマチック液晶組成物は、広い温度範囲で液晶性を示し、しきい値電圧が低く、更に、この組成物を用いてTN−LCDやSTN−LCD液晶表示パネルを作製したところ、優れた表示が可能であることが確認された。
【0069】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中、測定した特性の各記号の意味は以下の通りである。
【0070】
TN−I : ネマチック相−等方性液体相転移温度(℃)
T→N : 結晶相又はスメクチック相−ネマチック相転移温度(℃)
Vth : 液晶層の厚みが8μmでのTN−LCDのしきい値電圧(V)
△ε : 誘電異方性
△n : 複屈折率
Pr−25:−25℃に保存してネマチック性を有した時間(日間)
Pr−40:−40℃に保存してネマチック性を有した時間(日間)
又、組成物の促進テストは、液晶組成物2gをアンプル管に入れ、真空脱気後、窒素置換の処理をして封入し、180℃、1時間の加熱促進テスト、及び10時間の紫外線照射促進テスト「SUNTEST」(オリジナルハナウ社製)で行った。液晶組成物の比抵抗と電圧保持率は促進テスト前後で測定した。
【0071】
(実施例1)
【0072】
【化21】
【0073】
からなるネマチック液晶組成物(3−1)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 60.7 ℃
T→N :<−60 ℃
Vth : 1.07 V
△ε : 16.2
△n : 0.119
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
加熱促進テスト後比抵抗 : 2.5×1011Ω cm
紫外線照射促進テスト後比抵抗: 6.9×1010Ω cm
このネマチック液晶組成物(3−1)にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製した。一方、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成し、ツイスト角220度のSTN−LCD表示用セルを作製した。上記の混合液晶をこのセルに注入して液晶表示装置を構成し、表示特性を測定した。その結果、しきい値電圧が低く、高時分割特性に優れ、表示画面のちらつきやクロストーク現象が改善されたSTN−LCD表示特性を示す液晶表示装置が得られた。
【0074】
(実施例2)
【0075】
【化22】
【0076】
からなるネマチック液晶組成物(3−2)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 94.6 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 1.10 V
△ε : 18.2
△n : 0.121
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0077】
このネマチック液晶組成物(3−2)にカイラル物質「S−811」(メルク社製)を添加して混合液晶を調製した。一方、対向する平面透明電極上に「サンエバー150」(日産化学社製)の有機膜をラビングして配向膜を形成し、ツイスト角220度のSTN−LCD表示用セルを作製した。上記の混合液晶をこのセルに注入して液晶表示装置を構成し、表示特性を測定した。その結果、しきい値電圧が低く、高時分割特性に優れ、表示画面のちらつきやクロストーク現象が改善されたSTN−LCD表示特性を示す液晶表示装置が得られた。
【0078】
(実施例3)
【0079】
【化23】
【0080】
からなるネマチック液晶組成物(3−3)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 97.2 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 1.35 V
△ε : 14.0
△n : 0.130
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0081】
(実施例4)
【0082】
【化24】
【0083】
からなるネマチック液晶組成物(3−4)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 90.9 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 1.40 V
△ε : 11.4
△n : 0.123
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0084】
(実施例5)
【0085】
【化25】
【0086】
からなるネマチック液晶組成物(3−5)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 83.3 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 1.39 V
△ε : 9.7
△n : 0.127
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0087】
(実施例6)
【0088】
【化26】
【0089】
からなるネマチック液晶組成物(3−6)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 76.4 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 1.19 V
△ε : 15.9
△n : 0.109
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0090】
(実施例7)
【0091】
【化27】
【0092】
からなるネマチック液晶組成物(3−7)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 80.0 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 1.12 V
△ε : 15.7
△n : 0.127
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0093】
(実施例8)
【0094】
【化28】
【0095】
からなるネマチック液晶組成物(3−8)を調製し、この組成物の諸特性を測定した。結果は以下の通りであった。
TN−I : 77.9 ℃
T→N :<−70 ℃
Vth : 0.98 V
△ε : 22.3
△n : 0.141
Pr−25 : 30 日間
Pr−40 : 30 日間
【0096】
【発明の効果】
本発明のネマチック液晶組成物は、広い温度範囲でネマチック相を示し、しかも長期の低温保存にネマチック液晶性をより保持する改善効果を有し、しきい値電圧が低く、しかも化学的安定性が高い。従って、これを用いた本発明の液晶表示装置は、情報量の多いTN−LCD、STN−LCDあるいは携帯用のLCDとして良好な表示特性が得られる。
Claims (19)
- (1)一般式(I−1)及び(I−2)
- 第2群から選ばれる化合物が、一般式(II−1)及び(II−2)で表わされる化合物からなる群から選ばれる化合物であることを特徴とする請求項1記載のネマチック液晶組成物。
- (3)一般式(III−1)〜(III−5)
- 第2群から選ばれる化合物が、一般式(II−1)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5記載のネマチック液晶組成物。
- 第2群から選ばれる化合物が、一般式(II−2)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5記載のネマチック液晶組成物。
- 第2群から選ばれる化合物が、一般式(II−1)及び(II−2)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項5記載のネマチック液晶組成物。
- 第3群から選ばれる化合物が、一般式(III−4)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項7又は8記載のネマチック液晶組成物。
- 第3群から選ばれる化合物が、一般式(III−1)及び(III−4)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項8記載のネマチック液晶組成物。
- 第4群から選ばれる化合物が、一般式(IV−3)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項6又は8記載のネマチック液晶組成物。
- 第4群から選ばれる化合物が、一般式(IV−1)及び(IV−3)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項6記載のネマチック液晶組成物。
- 一般式(I−1)において、R11が炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表わし、fは1を表わし、X11及びX12は共に水素原子を表わし、Y11はフッ素原子を表わすことを特徴とする請求項6乃至12記載のネマチック液晶組成物。
- 一般式(I−2)において、Z11は単結合を表わすことを特徴とする請求項6乃至13記載のネマチック液晶組成物。
- 一般式(II−1)において、R21は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表わすことを特徴とする請求項6、11、12、13又は14記載のネマチック液晶組成物。
- 一般式(III−1)において、R31は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表わし、Y31は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表わし、hは0を表わすことを特徴とする請求項10、13又は14記載のネマチック液晶組成物。
- 一般式(IV−1)において、R41は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表わし、X41は水素原子を表わすことを特徴とする請求項12乃至15記載のネマチック液晶組成物。
- 一般式(IV−3)において、R43は炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基を表わし、lは0を表わすことを特徴とする請求項11乃至15記載のネマチック液晶組成物。
- 請求項1乃至18記載のネマチック液晶組成物を用いたツイスティッド・ネマチック又はスーパー・ツイスティッド・ネマチック液晶表示装置。
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