JP3593677B2 - 湾曲面構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は離間した異方向の第一面部と第二面部を湾曲部材により連結してなるケーシング等に用いて好適な湾曲面構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、移動式除湿乾燥機等のケーシングは、上面部が開放された直方体形のケーシング本体に、上からカバー体を被せて構成することも多く、通常、カバー体は、四角形の天板部とこの天板部の各辺部から下方へ折曲形成した側板部を有する(図6参照)。ところで、このようなカバー体は、金属板で形成されるため、天板部が完全に四角形であれば、加工は容易であり、また、相隣る側板部同士も溶接やネジ止め等により容易に結合できる。しかし、天板部の角部にアールを形成した場合、角部の加工処理は困難となり、通常、平坦面となる側板部のみを天板部に一体形成し、相隣る側板部同士は、別途、合成樹脂等により一体成形した湾曲部材で連結する湾曲面構造を採用している。
【0003】
図7及び図8は、従来の湾曲面構造Moを示す。50はカバー体基部であり、角部51r…にアールを形成した四角形の天板部51とこの天板部51の各直線辺部から下方へ折曲形成した側板部52…を有する。また、53…は合成樹脂等により別途形成した湾曲部材であり、この湾曲部材53…を相隣る側板部52,52…同士間に付設して湾曲面構造Mo…を構成していた。この場合、湾曲部材53は、角部51rに沿って湾曲する湾曲板部53rとこの湾曲板部53rの上縁部から突出して天板部51に重なる係合板部53sを有し、カバー体基部50に付設する際には、天板部51に設けた二つの円孔61a,61bに、係合板部53sに設けたキノコ形の固定ボス部62a,62bを挿入(圧入)していた。固定ボス部62a,62bは弾性を有するキノコ形のため、円孔61a,61bへの挿入は許容されるも、挿入によりストッパ部63a,63bが円孔61a,61bに係止して抜止される。これにより、カバー体Ccoが得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述した従来の湾曲面構造Moは、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、固定ボス部62a,62bは同一平面上に同一方向を向いて設けられるため、固定ボス部62a,62bを支点に湾曲部材53がめくれ易く、結局、付設した湾曲部材53がガタついたり脱落する虞れがあるなど、湾曲部材53の十分な固定強度を確保できない。
【0006】
第二に、固定ボス部62a,62bを設ける係合板部53sの突出幅をある程度確保する必要があるため、天板部51に重なる係合板部53sにおける無用な面積が大きくなり、湾曲部材53の大型化及びコストアップを招くのみならず、製品の形状性(デザイン性,商品性)を大きく損ねてしまう。
【0007】
本発明はこのような従来の技術に存在する課題を解決したものであり、湾曲部材の十分な固定強度を確保して湾曲部材のめくれ,ガタ付き,脱落等を確実に防止するとともに、湾曲部材の小型化及びコストダウンを図り、しかも、製品の形状性を飛躍的に高めることができる湾曲面構造の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明は、角部11r…にアールを形成した多角形の天板部11及びこの天板部11の各直線辺部から下方へ折曲形成した側板部12…を有するカバー体基部10における相隣る離間した異方向の第一面部2aと第二面部2bを構成する当該側板部12…同士を、湾曲部材3により連結してなる湾曲面構造Mを構成するに際して、第一面部2aと第二面部2bに、少なくとも一方が連結方向に長い孔部4a,4bを形成するとともに、湾曲部材3に、孔部4a,4bの長手方向に対して直角方向に弾性変形し、当該弾性変形によって孔部4a,4bに挿入するとともに、挿入によりストッパ部15p,15qが孔部4a,4bの縁部に係止する固定ボス部5a,5bを設けたことを特徴とする。
【0009】
この場合、好適な実施の形態により、湾曲部材3は、固定ボス部5a,5bを設けた湾曲板部13及びこの湾曲板部13の上縁部から突出して天板部11に重なる係合板部14により構成する。また、固定ボス部5a,5bは、中央が湾曲板部13に一体の固定端になり、かつ両端が自由端となるM形状に形成し、両端にストッパ部15p,15qを設ける。さらに、固定ボス部5a,5bの両端に対向する湾曲板部13には、当該固定ボス部5a,5bの両端と当該湾曲板部13間の間隔を大きくする凹溝16a…,16b…を設ける。
【0010】
これにより、湾曲部材3に設けた二つの固定ボス部5a,5bは、離間した異方向の第一面部2aと第二面部2bにそれぞれ係止するため、湾曲部材3は安定に固定されるとともに、十分な固定強度が確保される。また、カバー体基部10に適用した場合には、天板部11に重なる係合板部14の突出幅は必要最小限で足りるため、係合板部14の面積が無用に大きくなることはない。
【0011】
【実施例】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
まず、本実施例に係る湾曲面構造Mの構成部材について、図1〜図6を参照して説明する。なお、実施例は、図6に示す移動式除湿乾燥機等のケーシングCに適用したものであり、湾曲面構造Mは、直方体形のケーシング本体Cmに上から被せるカバー体Ccの角部に設けたものである。
【0013】
10はカバー体基部であり、角部11r…にアールを形成した四角形の天板部11及びこの天板部11の各直線辺部からそれぞれ下方へ折曲形成した側板部12…を有する。このカバー体基部10はステンレス板等の金属板をプレス成形して製作できる。この場合、相隣る側板部12と12…は、離間した異方向の第一面部2aと第二面部2bとなり、この第一面部2aと第二面部2bは後述する湾曲部材3により連結する。また、第一面部2aと第二面部2bには、それぞれ連結方向に長い長方形状の孔部4a,4bを設ける。したがって、孔部4a…はカバー体基部10に計8つ設けられる。
【0014】
他方、3は湾曲部材であり、合成樹脂等により一体成形する。湾曲部材3は、湾曲板部13及びこの湾曲板部13の上縁部から直角方向に突出して天板部11に重なる係合板部14を有する。この場合、湾曲板部13は、長手方向中央に設けた角部11rに沿った湾曲部13rと、この湾曲部13rの両側に設けた平坦部13a,13bを有し、この平坦部13aと13bは第一面部2aと第二面部2bにそれぞれ重なる。また、湾曲板部13の上下幅は、側板部12…の上下幅に一致する。一方、係合板部14の突出幅は天板部11に重なる必要最小限の幅に選定する。
【0015】
さらに、湾曲板部13の内壁面、即ち、平坦部13a,13bの内壁面には、孔部4a,4bに挿入して係止する固定ボス部5a,5bをそれぞれ一体に設ける。固定ボス部5a,5bは、図4に示すように、中央が湾曲板部13に一体の固定端になり、かつ両端が自由端となるM形状に形成し、両端にストッパ部15p,15qを設ける。即ち、固定ボス部5a(5bも同じ)は、湾曲板部13から直角に突出した一対の突片部21p,21qと、各突片部21p,21qの先端から反対方向に折返した端片部22p,22qを有し、端片部22p,22qの端部外側面に鋸刃形のストッパ部15p,15qを一体形成する。
【0016】
これにより、固定ボス部5a,5bは、孔部4a,4bの長手方向に対して直角方向に弾性変形し、この弾性変形により孔部4a,4bに挿入できるとともに、挿入によりストッパ部15p,15qが孔部4a,4bの縁部に係止し、抜け止めされる。このような固定ボス部5a,5bは、M形状に形成するため、固定端からストッパ部15p,15qを形成した自由端までの長さが実質的に長くなり、ストッパ部15p,15qを形成した両端部位における十分な弾性が確保される。よって、比較的薄い側板部12…に設けた孔部4a…にも容易かつ確実に挿入できる。
【0017】
さらに、固定ボス部5a,5bの両端に対向する湾曲板部13には、凹溝16a…,16b…を設ける。これにより、固定ボス部5a,5bの両端と当該湾曲板部13間の間隔が大きくなり、側板部12…が薄くても金型加工及び成形処理が容易となる。特に、凹溝16a…,16b…は、側板部12…の板厚が1〔mm〕以下の場合に設けて極めて有効である。
【0018】
次に、本実施例に係る湾曲面構造Mの組立方法について、図5及び図6を参照して説明する。
【0019】
まず、カバー体基部10と四つの湾曲部材3…を用意する。湾曲部材3は図5に示すように、カバー体基部10における角部に配し、固定ボス部5a,5bを孔部4a,4bに位置させる。そして、手で湾曲部材3を矢印H1方向に押せば、固定ボス部5a,5bは、それぞれ孔部4a,4bに対して45゜の方向、即ち、矢印H2,H2方向に変位する。この際、固定ボス部5a,5bは、孔部4a,4bの長手方向に対して直角方向へ弾性変形するため、この弾性変形により孔部4a,4bに挿入(圧入)する。
【0020】
一方、固定ボス部5a,5bは孔部4a,4bに挿入されることにより、ストッパ部15p…,15q…が孔部4a,4bの縁部に係止し、抜け止めされる。固定ボス部5a,5bはM形状に形成され、ストッパ部15p,15qを形成した両端部位は十分な弾性が確保されているため、比較的薄い側板部12…に設けた孔部4a…に対しても容易かつ確実に挿入できるととともに、ワンタッチで行うことができる。なお、固定ボス部5a,5bは孔部4a,4bに対して45゜の方向に変位するため、孔部4a,4bの長手方向長さは、固定ボス部5a,5bの挿入開始から挿入終了までの変位を許容する長さに選定する。
【0021】
さらに、残りの湾曲部材3…も同様に組付を行う。これにより、図6に示すカバー体Ccが出来上がる。よって、直方体形のケーシング本体Cmに上から被せることにより、移動式除湿乾燥機等とケーシングCとして利用できる。なお、本発明に係る湾曲面構造Mによれば、湾曲部材3の固定ボス部5a,5bはカバー体基部10の側面部12…に係止するため、側面部12…に設けた孔部4a,4bの位置に対応させた同様の孔部をケーシング本体Cmに設ければ、固定ボス部5a,5bによりカバー体Ccとケーシング本体Cmを固定できる。したがって、この場合、固定ボス部5a,5bはカバー体Ccとケーシング本体Cmの固定部材を兼用する。
【0022】
よって、本実施例に係る湾曲面構造Mによれば、湾曲部材3に設けた二つの固定ボス部5a,5bは、離間した異方向の第一面部2aと第二面部2bにそれぞれ係止するため、湾曲部材3は安定に固定されるとともに、十分な固定強度が確保され、湾曲部材3のめくれ,ガタ付き,脱落等が確実に防止される。また、カバー体Ccに適用した場合には、天板部11に重なる係合板部14の幅は必要最小限で足り、係合板部14の面積が無用に大きくなることはない。したがって、湾曲部材3の小型化及びコストダウンが図られるとともに、製品の形状性(デザイン性,商品性)が飛躍的に高められる。
【0023】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,素材等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。例えば、実施例はケーシングCに用いるカバー体Ccを例示したが、このような用途に限定されるものではなく、同様の構造を有する任意の用途に利用できる。また、カバー体基部10の形状は、四角形を例示したが、三角形や六角形等の任意の多角形に適用できるし、固定ボス部5a,5bの形状等も例示に限定されるものではない。さらに、孔部4a,4bは、双方を連結方向に長い形状に形成したが、一方のみを長くし、他方は固定ボス部5a…の長さに略一致させてもよい。
【0024】
【発明の効果】
このように、本発明は、角部にアールを形成した多角形の天板部及びこの天板部の各直線辺部から下方へ折曲形成した側板部を有するカバー体基部における相隣る離間した異方向の第一面部と第二面部を構成する当該側板部同士を、湾曲部材により連結してなる湾曲面構造において、第一面部と第二面部に、少なくとも一方が連結方向に長い孔部を形成するとともに、湾曲部材に、孔部の長手方向に対して直角方向に弾性変形し、当該弾性変形によって孔部に挿入するとともに、挿入によりストッパ部が孔部の縁部に係止する固定ボス部を設けたため、次のような顕著な効果を奏する。
【0025】
(1) 湾曲部材を安定に固定できるとともに、十分な固定強度を確保できるため、湾曲部材のめくれ,ガタ付き,脱落等を確実に防止できる。特に、一対の固定ボス部の方向が異方向(実施例は90゜)となるため、互いに補い合うことにより双方の固定ボス部が抜けにくくなる。
【0026】
(2) 第一面部と第二面部を、カバー体基部における相隣る側板部同士に適用するとともに、湾曲板部及び係合板部を有する湾曲部材を用いたため、天板部に重なる係合板部の幅を必要最小限に済ませることができ、湾曲部材の小型化及びコストダウンを図れるとともに、製品の形状性(デザイン性,商品性)を飛躍的に高めることができる。
【0027】
(3) 好適な実施の形態により、固定ボス部をM形状に形成すれば、固定端からストッパ部を形成した自由端までの長さが実質的に長くなり、ストッパ部を形成した両端部位における十分な弾性を確保でき、もって、比較的薄い側板部に設けた孔部にも容易かつ確実に挿入できる。
【0028】
(4) 好適な実施の形態により、固定ボス部の両端に対向する湾曲板部に、当該固定ボス部の両端と当該湾曲板部間の間隔を大きくする凹溝を設けて構成すれば、側板部が薄くても金型加工及び成形処理が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る湾曲面構造の一部破断平面図、
【図2】図1中A−A線断面図、
【図3】同湾曲面構造に用いるカバー体基部の一部を示す正面図、
【図4】同湾曲面構造に用いる湾曲部材に設けた固定ボス部の断面図、
【図5】同湾曲面構造の組立説明図、
【図6】同湾曲面構造を用いたケーシングの一部を示す斜視図、
【図7】従来の技術に係る湾曲面構造の平面図、
【図8】図7中B−B線断面図、
【符号の説明】
M 湾曲面構造
2a 第一面部
2b 第二面部
3 湾曲部材
4a… 孔部
5a… 固定ボス部
10 カバー体基部
11 天板部
11r… 角部
12… 側板部
13 湾曲板部
14 係合板部
15p… ストッパ部
16a… 凹溝

Claims (4)

  1. 角部にアールを形成した多角形の天板部及びこの天板部の各直線辺部から下方へ折曲形成した側板部を有するカバー体基部における相隣る離間した異方向の第一面部と第二面部を構成する当該側板部同士を、湾曲部材により連結してなる湾曲面構造において、前記第一面部と前記第二面部に、少なくとも一方が連結方向に長い孔部を形成するとともに、前記湾曲部材に、前記孔部の長手方向に対して直角方向に弾性変形し、当該弾性変形によって前記孔部に挿入するとともに、挿入によりストッパ部が前記孔部の縁部に係止する固定ボス部を設けたことを特徴とする湾曲面構造。
  2. 前記湾曲部材は、前記固定ボス部を設けた湾曲板部及びこの湾曲板部の上縁部から突出して前記天板部に重なる係合板部を有することを特徴とする請求項1記載の湾曲面構造。
  3. 前記固定ボス部は、中央が前記湾曲板部に一体の固定端になり、かつ両端が自由端となるM形状に形成し、両端に前記ストッパ部を設けてなることを特徴とする請求項1記載の湾曲面構造。
  4. 前記固定ボス部の両端に対向する前記湾曲板部には、当該固定ボス部の両端と当該湾曲板部間の間隔を大きくする凹溝を設けてなることを特徴とする請求項3記載の湾曲面構造。
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