JP3593619B2 - 水中油型乳化組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、食品、化粧品などの分野における、油脂を油相とする水中油型乳化組成物に関する。更に詳しくは融点又はSFC( Solid Fat Content ;固体脂含量、油脂中の固体脂の量を表す)の異なる油脂及び/又は配合油を油相とする水中油型乳化物を混合してなる水中油型乳化組成物、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
水中油型乳化物は、牛乳、マヨネーズ、濃縮乳、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー、パイ・ロールイン用乳化脂等の食品、或いは化粧品など種々の分野で知られている。これらの水中油型乳化物は油相が油脂で構成されることが多い。従来は、油相として単一の油脂も用いられているが、その水中油型乳化物の目的用途に応じて二種以上の油脂を配合した配合油を用いるのが通例であった。そして従来は、製品たる水中油型乳化物の粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの調節には、配合油の成分割合の調合による融点、SFCの調整、及び油相区分の配合油と水相区分の蛋白質、糖類等との配合割合の調整などで行なっている。
【0003】
水中油型乳化物の粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの調節には乳化剤の選定も重要であるが、配合油の融点、SFCの調整が特に重要である。しかして、配合油の融点、SFCの調整によって、水中油型乳化物の粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの物性を調節するのは、特に融点差の大きい二種の油脂、例えばサラダ油と固体脂を混合した配合油を使用する場合には、両者の微妙な混合比率が、水中油型乳化物の粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などに大きく影響を及ぼすため、非常に難しく苦心を要した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたもので、油相を構成する配合油の調整に苦心を要することなく、粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの物性の調節が容易な、また極めて広範な温度域で乳化状態が安定な新規な水中油型乳化組成物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、油脂を油相とする水中油型乳化物の粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの物性の調節について種々検討する過程において、常温液体の植物性液状油と常温固体の植物性固体脂を原料にして、これらで別々に水中油型乳化物を製造し、その後これらの水中油型乳化物を混合した水中油型乳化組成物は、常温液体の植物性液状油と常温固体の植物性固体脂とを事前に配合した配合油を原料にして水中に乳化した従来の水中油型乳化物には見られない種々の特性を有することを知見し、この知見を従来のマヨネーズ、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー、パイ・ロールイン用乳化脂、化粧品等の水中油型乳化物の改質に利用することを思い付き、本発明を完成した。すなわち、本発明は、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油との各々の水中油型乳化物の混合物からなることを特徴とする水中油型乳化組成物である(請求項1)。
【0006】
本発明について詳しく説明する。
本発明で用いる油脂は、例えばオリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ油、トウモロコシ油、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及びそれらの硬化油又は分別油などである。また本発明で用いる配合油とは、上述の植物性油脂を二種以上混合したものである。この植物性配合油の油脂の組合せに当たっては、これを水中に乳化した際、乳化安定性を損ねるような油脂の混合を避けることは勿論である。そして、本発明ではこれらの植物性油脂、植物性配合油について、融点又はSFCが異なるものを二種或いは二種以上組み合わせて使用する。
【0007】
本発明では、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油との組合せである。例えば、常温液体の一種以上の植物性液体油と常温固体の一種以上の植物性固体脂との組合せ、常温液体の植物性配合油と常温固体の植物性配合油との組合せ、常温液体の植物性配合油と常温固体の植物性固体脂との組合せなどで、目的に応じて適宜組合せ使用する。
【0008】
したがって、本発明の水中油型乳化組成物は、具体的には、例えば植物性液体油を水中に乳化した水中油型乳化物と植物性固体脂を水中に乳化した水中油型乳化物との混合物、融点の高い常温固体の植物性配合油を水中に乳化した水中油型乳化物と融点の低い常温液状の植物性配合油を水中に乳化した水中油型乳化物との混合物などである。
【0009】
上記では、二種の水中油型乳化物を混合した水中油型乳化組成物を例示したが、本発明の水中油型乳化組成物は、二種以上の各々の水中油型乳化物の混合物、すなわち二種以上の水中油型乳化物の混合物でもよい。この二種又は二種以上の水中油型乳化物の混合は、撹拌することにより容易に行なえる。また、混合は任意の割合で行なえる。しかして、水中油型乳化物の種類、混合割合を変えることによって、水中油型乳化組成物の粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの物性を調節できる。そのため、所望とする物性の水中油型乳化組成物を簡単に得ることができる。
【0010】
また、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油を原料にして、これらで別々に水中油型乳化物を製造し、その後これらの水中油型乳化物を混合した水中油型乳化組成物は、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを事前に配合した配合油を原料にして水中に乳化した従来の水中油型乳化物には見られない物性を有する。例えば、植物性液体油を水中に乳化した水中油型乳化物と植物性固体脂を水中に乳化した水中油型乳化物との混合物を例にとると、この水中油型乳化物を混合した水中油型乳化組成物は、植物性液体油と植物性固体脂とを配合した植物性配合油を水中に乳化した水中油型乳化物に比し、乳化物の粘度、固さ、乳化の安定性、パンに塗った時の伸び、パイ・ペーストリーの生地に包み込んだ時の伸展性及びホイップ性及びその保形性を大きく改良することができる。このことは他の水中油型乳化物の混合物組成物にも言える。
【0011】
また、本発明の水中油型乳化組成物は、二種又は二種以上の植物性油脂を事前に混合した植物性配合油を油相にして乳化した従来の水中油型乳化物に比し、更に、(1)乳化安定性がよく、また広い温度域での安定性に優れており、(2)乳化組成物が柔らかく扱いやすい、(3)可塑性、伸展性が優れ、パン等に塗りやすく、またパイ・ペーストリーの生地に包んだ場合の伸展性に優れている、(4)温度変動に対する稠度変化が少ないので使用できる温度幅が広い、(5)口当たりがマイルドでソフト感があり、口どけも良好である、という長所を持つ。本発明の水中油型乳化組成物は、食品用としては、パン用スプレッド、ホイップクリーム、コーヒーホワイトナー、パイ・ロールイン用乳化脂等に用いることができる。またマヨネーズ類の如く酢等を配合した酸性水中油型乳化物にも適用できる。
【0012】
本発明において、植物性油脂又は植物性配合油は乳化剤を使用して水中に乳化させて乳化組成物となす。本発明において使用する乳化剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン等各種の乳化剤、卵黄、卵黄加水分解物、リゾホスファチド、キラヤ抽出物、レシチン、カゼインナトリウム、各種アルブミン等通常使用されるものが全て使用可能で、水中油型乳化物のpH、塩濃度、使用する油脂、配合油の種類、融点を勘案して選択することができる。乳化剤は、0.01〜10重量%使用する。
【0013】
次に本発明の水中油型乳化組成物の製造方法について説明する。この製造方法の一つは、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを別々に水中に乳化させて各々の水中油型乳化物を作り、その後これらの水中油型乳化物を混合することを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法である(請求項2)。
【0014】
この請求項2の発明において、植物性液体油を用いて水中油型乳化物を製造する場合は、乳化剤を含有する水相中に植物性液体油からなる油相を添加して、常法に従い乳化する。この時の乳化温度は油相が液体油であるから低い温度で行うのがよい。また植物性固体脂を用いて水中油型乳化物を製造するには、乳化剤を含有する加温した水相中に、撹拌しながら、加熱して溶融させた植物性固体脂を添加する常法の乳化方法を採用することができる。この際の乳化は、油相が固体脂であるから、固体脂の融点以上の温度で行う。植物性配合油の場合も上記と同様にして乳化することができる。
植物性固体脂と植物性液体油とを事前に混合した配合油を水中に乳化する場合には、常温液体の油の割合が多くなると、この水中油型乳化物は油分離を生じ易く、安定な乳化状態が得られにくいが、植物性液体油と植物性固体脂とを別々に水中に乳化し、これら乳化した状態で両者を混合する請求項2の発明を採用すると、液体油の水中油型乳化物の配合割合を多くしても安定な乳化物が得られる。請求項2の発明にはこのような効果もある。
【0015】
本発明の水中油型乳化組成物の他の製造方法は、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを順次に水中に乳化分散させることを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法である(請求項3)。この製造方法において、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを順次に水中に乳化分散するに際し、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油から順に乳化させてもよいし(請求項4)、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを順次に水中に乳化分散するに際し、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油から順に乳化させてもよい(請求項5)。
【0016】
具体的に説明する。請求項4の発明では、例えば、水と乳化剤等からなる水相を撹拌しながら、まず常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油を添加し乳化させ、その後常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油を添加し乳化させて本発明の水中油型乳化組成物を得る。請求項5の発明は油相の乳化手順が請求項4の逆で、例えば、水と乳化剤等からなる水相を、撹拌しながら、まず常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油を添加し乳化させ、その後常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油を添加して乳化させて本発明の水中油型乳化組成物を得る。上記いずれの場合も、二種以上の植物性油脂及び/又は植物性配合油を用い、水相に順次に添加してもよく、また植物性油脂又は植物性配合油が常温固体の場合は、加熱溶融し液状にしてから水相に添加する。この時水相も加温しておく。請求項4の方法で得た水中油型乳化組成物は使用適温が低温側に広く安定であり、請求項5の方法で得た水中油型乳化組成物は高温側での伸展性、可塑性に優れている。
これら請求項3〜5の発明の製造方法によると、同一の乳化槽を使用して目的とする水中油型乳化組成物が、温度、時間を制御することで効果的に実施できる利点がある。
【0017】
前述した本発明の水中油型乳化組成物及びその製造方法は、上記した食品分野以外の水中油型乳化組成物全般に広く適用可能である。例えば、油相がワックス、ホホバ油など二種以上の油脂類で構成されている水中油型乳化組成物を採用する乳液、クレンジングクリーム等の化粧品の分野に適用できる。
【0018】
【実施例】
次に実施例をもって本発明を説明する。
実施例1.
融点35℃のパーム分別油80重量部、水8.0重量部、10%加塩殺菌チルド卵黄8.0重量部、15%アルコール酢4.0重量部とを、40℃に加温し、激しく撹拌して乳化させて水中油型乳化物(H)を得た。なお、上記のパーム分別油のSFCは、0℃、10℃、20℃、25℃、30℃及び35℃において、それぞれ77.5、70.1、68.7、52.3、30.2、及び6.2であった。
大豆油を精製したサラダ油80重量部、水8.0重量部、10%加塩殺菌チルド卵黄8.0重量部、15%アルコール酢4.0重量部とを常温で混合し、激しく撹拌して乳化させて水中油型乳化物(S)を得た。なお、大豆サラダ油のSFCは0である。
上記の水中油型乳化物(H)と上記の水中油型乳化物(S)とを表1の割合で混合し、よく撹拌した。両者は如何なる割合でも良好に混ざり、安定な乳化物が得られた。これらの混合物について、それぞれの混合物の固さ測定(25℃、レオメーター応力、アダプター5mm平板)を行った。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1から明らかなように、固体脂を油相とする水中油型乳化物(H)とサラダ油を油相とする水中油型乳化物(S)とは種々の割合でよく混ざり合い、固体脂を油相とする水中油型乳化物(H)の割合を多くする程、固さ測定値が大きくなる。
【0021】
比較例1.
比較のため、融点35℃のパーム分別油と大豆油(サラダ油)とを表2の割合で混合した混合油80重量部と、水8.0重量部と、10%加塩殺菌チルド卵黄8.0重量部と、15%アルコール酢4.0重量部とを混合し、40℃に加温した後、激しく乳化して水中油型乳化物を得た。得られた水中油型乳化物の固さを測定した。その結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
表2から明らかなように、硬化油(固体脂)と大豆油(サラダ油)と混合した配合油を原料に用いて乳化する方法では、配合油の混合割合が乳化物の固さに大きく影響し、乳化物にソフト感がない。また大豆油の割合が50重量%以上になると、乳化物は油分離を起こし製品にならない。
なお、硬化油のみを原料とした乳化物の固さは22.4g/cm2であった。
【0024】
実施例2.
実施例1の15%アルコール酢4.0重量部の代わりに水を置き換えて用いた以外は、実施例1と同様に行って80重量%油分の水中油型乳化物(H)及び(S)を調製し、表3に示される配合割合で両者を混合した。この混合物、すなわち本発明の水中油型乳化組成物の固さの測定結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
比較例2.
比較例1の15%アルコール酢の代わりに水を置き換えて用いた以外は、比較例1と同様に行って水中油型乳化物を調製した。この乳化物の固さを測定した。その結果を表4に示す
【0027】
【表4】
【0028】
実施例3.
融点35℃のパーム分別油40重量部、10%加塩卵黄8重量部及び15%アルコール酢4重量部を混合し、40℃に加温し、激しく撹拌して乳化させ水中油型乳化物を調製した。この乳化物に、その温度を保ったまま、更に大豆サラダ油40重量部を添加し、激しく撹拌して乳化させて、最終油分80重量%の水中油型乳化物を得た。この乳化物の固さの測定結果を表5に示す。
【0029】
実施例4.
実施例3で、パーム分別油と大豆サラダ油の乳化順序を変更して行なった。すなわち、大豆サラダ油40重量部、10%加塩卵黄8重量部及び15%アルコール酢4重量部を混合し、激しく撹拌して乳化させ水中油型乳化物を調製した。この乳化物を40℃に加温し、融点35℃のパーム分別油40重量部を添加し、激しく撹拌して乳化させて、最終油分80重量%の水中油型乳化物を得た。この乳化物の固さの測定結果を表5に示す。
【0030】
比較例3.
融点35℃のパーム分別油と大豆サラダ油とを1:1に混合した配合油80重量部、10%加塩卵黄8重量部及び15%アルコール酢4重量部を混合し、40℃に加温し、激しく撹拌して乳化させ油分80重量%の水中油型乳化物を調製した。この乳化物の固さの測定結果を表5に示す。
【0031】
【表5】
【0032】
実施例3の水中油型乳化組成物は、低温でも固くならず、パイ・ペーストリーの生地に包み込み圧延した場合の伸展性が良好である。また実施例4の水中油型乳化組成物は、高温側でもある程度の固さを保っており、安定性のよいことを示している。これに対し比較例3の水中油型乳化物は低温では固くソフト感がなく、高温では急激に柔らかくなって、保持性がなくなる。
【0033】
実施例5〜7及び比較例4.
油脂〔大豆硬化油(融点35℃)、ヤシ油、大豆サラダ油〕45重量部、脱脂粉乳4.5重量部、ヘキサメタリン酸ソーダー0.1重量部、乳化剤(主成分;ソルビタン脂肪酸エステル、シュガーエステル及びグリセリンモノ脂肪酸エステルの7:2:1の混合物)1.0重量部及び水49.4重量部を原料に用いてホイップクリームを製造した。なお、上記の大豆硬化油のSFCは、0℃、10℃、20℃、25℃、30℃及び35℃において、それぞれ67.0、57.0、48.1、35.0、18.1、及び5.2であった。上記ヤシ油のSFCは、0℃、10℃、20℃及び25℃において、それぞれ83.5、70.7、36.6及び5.9であった。大豆サラダ油のSFCは0である。
【0034】
実施例5では、(a)脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ソーダー、乳化剤及び水を上記割合で混合した水相に、大豆硬化油(融点35℃)45重量部を添加し乳化させて水中油型乳化物を調製し、また(b)脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ソーダー、乳化剤及び水を上記割合で混合した水相に、ヤシ油と大豆サラダ油を1:1の割合で混合した配合油45重量部を添加し乳化させて水中油型乳化物を調製した。そして、上記の(a)乳化物及び(b)乳化物を4:1の割合で混合し、ホイップクリームを製造した。このホイップクリームのホイップ性を測定した。その結果を表6に示す。
実施例6では、脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ソーダー、乳化剤及び水を上記割合で混合した水相に、まず大豆硬化油(融点35℃)36重量部を添加して乳化させ、次いでヤシ油とサラダ油との1:1の配合油9重量部を添加して乳化させてホイップクリームを製造した。このホイップクリームのホイップ性を測定した。その結果を表6に示す。
【0035】
実施例7では、実施例6と逆に、脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ソーダー、乳化剤及び水を上記割合で混合した水相に、まずヤシ油とサラダ油との1:1の配合油9重量部を添加して乳化させ、次いで大豆硬化油(融点35℃)36重量部を添加して乳化させてホイップクリームを製造した。このホイップクリームのホイップ性を測定した。その結果を表6に示す。
比較例4では、常法通り、油脂として、大豆硬化油(融点35℃)80重量%、ヤシ油10重量%及び大豆サラダ油10%を溶融混合した単一の配合油45重量部を用い、脱脂粉乳、ヘキサメタリン酸ソーダー、乳化剤及び水を上記割合で混合した水相に、水中油型に乳化させてホイップクリームを製造した。このホイップクリームのホイップ性を測定した。その結果を表6に示す。
【0036】
【表6】
【0037】
実施例5、6、7はいずれも粘度が低く、昇温振盪とうでも凝固せず、また、ヒートショックにも耐性があり、乳化状態が良い。また、ホイップに要する時間も短く、オーバーランも好ましい値で、ホイップクリームを絞った保形性も比較例4と比べ非常に良好であった。
【0038】
【発明の効果】
常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油との各々の水中油型乳化物を混合してなる本発明の水中油型乳化組成物は、従来の予め常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性 配合油と常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを混合した配合油を水相に乳化した水中油型乳化物に比し、乳化状態が安定で、乳化物の粘度が低く、固さも軟らかく扱い易く、乳化物の使用適温幅が広がり、また、可塑性、伸展性があってパン等に塗りやすく、かつ温度変動に対する稠度変化が少なく、口当たりがマイルドでソフト感があり、口どけも良好である。したがって、製パンや製菓におけるフィリング材やトッピング材、ロールイン用乳化脂に好適である。
また、本発明における上記の乳化物は二種以上を任意の割合で混合できるので、この混合によって、粘度、固さ、保形性、伸展性、可塑性、ホイップ性能などの乳化物の物性を容易に調節でき、したがって所望の物性を有する乳化組成物を簡単に得ることができる。
また本発明の製造方法によると、本発明の水中油型乳化組成物を容易に製造することができ、特に請求項3〜5の方法によると、一つの乳化槽によって本発明の水中油型乳化組成物を製造できる利点がある。また、本発明は食品以外の化粧品等の他の水中油型乳化の分野にも適用できる有用性がある。
Claims (5)
- 常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油との各々の水中油型乳化物の混合物からなることを特徴とする水中油型乳化組成物。
- 常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを別々に水中に乳化させて各々の水中油型乳化物を作り、その後これらの水中油型乳化物を混合することを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法。
- 常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを順次に水中に乳化分散させることを特徴とする水中油型乳化組成物の製造方法。
- 常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを順次に水中に乳化分散するに際し、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油から順に乳化させることを特徴とする請求項3記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
- 常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油と、常温固体の一種以上の植物性固体脂及び/又は植物性配合油とを順次に水中に乳化分散するに際し、常温液体の一種以上の植物性液体油及び/又は植物性配合油から順に乳化させることを特徴とする請求項3記載の水中油型乳化組成物の製造方法。
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