JP3592756B2 - ドライクリーニング用洗浄剤組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、石油系溶剤の体積抵抗率を低下させる能力が大きく、また、石油系溶剤の体積抵抗率の経時変化を極めて少なくさせるドライクリーニング用洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ドライクリーニングは、繊維製品の洗浄を有機系溶剤を用いて行う洗浄方法であるが、有機系溶剤として、テトラクロルエチレン、トリクロルエタン、トリクロルトリフルオロエタンなどのハロゲン系炭化水素、あるいはパラフィン、ナフテン、芳香族炭化水素からなる石油系溶剤が用いられてきた。これらの溶剤を用いるドライクリーニングにおいては、水溶性汚れ及び固体汚れ除去のために種々の活性剤が用いられている。
【0003】
ドライクリーニング用洗浄剤組成物は、一般に界面活性剤(使用上の便宜から配合組成物中の5〜80重量%配合されている)、ドライクリーニング溶剤、粘度低下剤及び防錆剤等が配合された液状洗浄剤組成物であって、使用に際しては、この液状洗浄剤組成物を上記のようなドライクリーニング溶剤に対して 0.1〜5%の割合に希釈して使用している。ドライクリーニング用洗浄剤に要求される性能は、洗浄力、再汚染防止能、抱水能、帯電防止能、柔軟性能などであり、これらの性能を満たすため種々の配合系が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
近年、環境への影響や安全性の面から、トリクロルトリフルオロエタンやトリクロルエタンなどの使用が規制されつつあり、これらの溶剤に代わって石油系溶剤を用いるドライクリーニング機への移行が進むものと予想されている。
【0005】
しかしながら石油系溶剤を用いるドライクリーニングでは、導電性の低い石油系溶剤を使用するため、引火爆発の危険性がある。引火爆発の要因としては、衣類や溶剤の摩擦によって発生する静電気が主要なものである。石油系溶剤のワッシャーでの爆発事故の可能性は、石油系溶剤の抵抗(体積抵抗率)が1010Ω・cm(10GΩ・cm) 以上で、衣類が乾燥された状態で摩擦を受ける時に静電気が発生し、静電気の発生量が着火エネルギー以上であり、石油系溶剤のワッシャー内の濃度が爆発限界範囲内の場合において事故が発生する可能性があるとされている。
【0006】
その一方で、特定のドライクリーニング用洗浄剤を石油系溶剤に添加することにより、当該石油系溶剤の導電性を向上させる傾向を示すことが見出されている。
【0007】
このような背景から近年、石油系溶剤の体積抵抗率を測定することでドライクリーニング用洗浄剤の添加量を管理し、適性な体積抵抗率を維持する機能を有するドライクリーニング機が普及し始めている。
【0008】
しかしながら、従来のドライクリーニング用洗浄剤は、溶剤の体積抵抗率の低下能が十分でなく、センサー感度が悪く、また低い体積抵抗率を安定に保つ組成は知られていない。
【0009】
例えば、アルキルリン酸エステル塩を配合し、その性能について検討した先行技術としては次に挙げるものが知られている。例えば、アルキルリン酸エステル塩とノニオン界面活性剤との併用により、カチオン界面活性剤を使用することなく、帯電防止能、柔軟性能を付与せんとするもの(特開昭54−1307号公報)、カチオン界面活性剤、カチオン性共重合体及びアルキルリン酸エステル塩のうち2種以上の化合物を併用することにより、洗浄力、再汚染防止能を向上させ、併せて帯電防止能、柔軟性を付与せんとするもの(特開昭55−31862号公報)、アミドアミン型両性界面活性剤、アルキルリン酸エステル塩、ジアルキルスルホサクシネート及び非イオン界面活性剤を併用し、親水性汚垢を効果的に除去し、併せて帯電防止性、柔軟性能を付与せんとするもの(特開昭56−72093号公報)、ノニオン界面活性剤、スルホン化型、又は硫酸化型アニオン界面活性剤及びリン酸エステル型界面活性剤を併用することにより、抱水力を増大すると共に、クリーニング装置の金属腐食を抑制せんとするもの(特公昭44−6974号公報)、高級脂肪酸のアルカノールアミドとアルキルリン酸エステルを併用したドライクリーニング溶剤用防錆剤(特公昭61−25760号公報)、カチオン界面活性剤と高級脂肪酸、アルキルリン酸エステルとを併用し、組成物のpHが6〜8で防錆性の優れたドライクリーニング用洗浄剤(特開平1−139863号公報)等である。
【0010】
しかしながら、上記に列挙した何れの従来技術においても石油系溶剤の体積抵抗率の低下と経時変化については言及されておらず、石油系溶剤の体積抵抗率を測定することでドライクリーニング用洗浄剤の添加量を管理する機能を有するドライクリーニング機に適合したアルキルリン酸エステルを配合するドライクリーニング用洗浄剤は示されていない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
かかる状況のもとに、本発明者らは、ドライクリーニング用洗浄剤に求められる基本性能を損なうことなく、石油系溶剤の体積抵抗率低下能が大きく、しかも石油系溶剤の経時的な体積抵抗率変化を極めて少なくし、特にドライクリーニング用洗浄剤の添加量を、石油系溶剤の体積抵抗率で管理する機能を装備したドライクリーニング機への機械適性に優れた洗浄剤組成物を鋭意研究した結果、アルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を特定量含有する組成物が、前述の問題点を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
即ち本発明は、下記一般式(1) で表されるアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を8〜18重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルからなる群より選ばれるノニオン界面活性剤を1〜40重量%、及び石油系溶剤を含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、アルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を含めてアニオン界面活性剤を10〜50重量%含有し、かつ石油系溶剤中に1%(v/v)添加した時に当該石油系溶剤の体積抵抗率を少なくとも2.0 GΩ・cm以下とさせる導電性向上能を有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物を提供するものである。
【0013】
【化3】
【0014】
〔式中、 Rは炭素数8〜20のアルキル基、R’は−OM 又はRO−(CH2CH2O)n−、n は
1〜6、M は水素、アルカリ金属又はアルカノールアミンを表す。〕
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、石油系溶剤の体積抵抗率を管理する上で非常に有用であり、特に近年普及している石油系溶剤の体積抵抗率の変動によりドライクリーニング用洗浄剤の添加量を操作する型のドライクリーニング機を使用する場合に、適性な体積抵抗率を維持することができ、優れた安全性を得ることができる。
【0015】
なお、体積抵抗率は導電率の逆数のことであり、その測定方法は、後述の実施例における方法による。
【0016】
本発明で使用するアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩は、アニオン界面活性剤の一種であり、前述した一般式(1) で表されるエチレンオキサイド付加型のものである。 Rは好ましくはC10〜C16のアルキル基であり、また分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。塩はその対イオンとしてアルカリ金属又はアルカノールアミンを用いることができ、特にトリエタノールアミンが好ましい。アルキルエーテルリン酸エステル塩は、塩で本発明の組成物に配合するか、酸の形で配合した後で上記対イオンを含むアルカリ剤で中和してもよい。また、モノアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩、ジアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩単独よりは、モノ体及びジ体の約1/1モル比の混合物であるセスキアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩において特に優れた石油系溶剤の体積抵抗率低下能と安定した体積抵抗率の経時変化が認められる。
【0017】
一般式(1) で表されるアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩は、組成物中に8〜18重量%、好ましくは9〜11重量%配合される。
【0018】
本発明では上記のアルキルエーテルリン酸エステル(塩)型の界面活性剤以外のアニオン界面活性剤が併用される。アニオン界面活性剤は上記アルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を含めて組成物中に10〜50重量%配合される。
【0019】
その他に併用するアニオン界面活性剤は限定されるものではないが、下記一般式(2) で表されるジアルキルスルホコハク酸塩型の界面活性剤が好ましい。
【0020】
【化4】
【0021】
〔式中、R1, R2は、同一又は異なって、それぞれ炭素数6〜12のアルキル基又
はアルケニル基、 XはNa又はK 、好ましくはNaを表す。〕
好ましいジアルキルスルホコハク酸塩型界面活性剤としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジデシルスルホコハク酸ナトリウム、ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム等が例示できる。一般式(2) で表されるジアルキルスルホコハク酸塩型界面活性剤は、配合する全アニオン界面活性剤中に1〜50重量%配合されるのが好ましい。また、このジアルキルスルホコハク酸塩型界面活性剤の溶媒としては、種々の組み合わせが考えられるが、プロピレングリコール/水等の引火点の高い溶媒が好ましい。
【0022】
本発明の組成物には、更にポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルからなる群より選ばれるノニオン界面活性剤を1〜40重量%配合する。これにより、石油系溶剤中での電気的特性を悪化させることなく、洗浄力、再汚染防止能をより高めることができる。
【0023】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物には上記の必須成分の他にバランス剤として、パラフィン(沸点 120〜 220℃) 、ナフテン及び/又は芳香族炭化水素を含有するいわゆる石油系溶剤などのドライクリーニング用溶剤が使用される。
【0024】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物のpHは、防錆性を考慮して 6.0〜8.0 の範囲に調整される。pH調整はアルカノールアミンで行うことが溶解性、保存安定性の面で望ましい。
【0025】
本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物は、通常石油系溶剤に対して0.1 〜5重量%の割合で希釈して使用される。
【0026】
【発明の効果】
石油系溶剤に本発明のドライクリーニング用洗浄剤組成物を配合することで、洗浄性能、再汚染防止効果を損なうことなく、石油系溶剤の体積抵抗率を低下させ、かつ体積抵抗率の経時変化を安定させることができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を挙げ本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制約されるものではない。
【0028】
実施例1
表1,2に示す組成物を調製し、下記に示す方法で、(1) 石油系溶剤に添加したときの当該石油系溶剤の体積抵抗率及び(2) 石油系溶剤に添加したときの体積抵抗率の経時変化を測定した。
【0029】
<(1) 体積抵抗率>
石油系溶剤として「エクソールD40」(エクソン社製、ノルマルパラフィン50重量%、ナフテン50重量%、芳香族炭化水素1%以下)を用い、これに洗浄剤組成物を1% (v/v)添加したとき、添加1分後の当該石油系溶剤の体積抵抗率を測定する。
【0030】
<(2) 体積抵抗率の経時変化>
石油系溶剤の体積抵抗率の測定は、図1のような装置を作製し、石油系溶剤を循環させる系において絶縁抵抗計により測定した。
【0031】
図1中、1は絶縁抵抗計、2は測定器、3は測定電極であり、Pは溶剤循環ポンプであり、用いた計器は以下の通りである。
絶縁抵抗計:東亜電波SME−8203(測定電位5V)
測定電極:東亜電波SME−8335(電極定数70cm)
また、石油系溶剤として「エクソールD40」(エクソン社製)3リットルを用い、当該石油系溶剤に対して表1,2の洗浄剤組成物を1% (v/v)添加し、循環速度は10リットル/分とした。
【0032】
表中の体積抵抗率の経時変化は以下の式により算出されたものである。
体積抵抗率の経時変化=〔洗浄剤添加45分後の測定値〕−〔洗浄剤添加1分後の測定値〕。
【0033】
<評価>
上記の評価結果を表1,2に示すが、ドライクリーニング用洗浄剤組成物を石油系溶剤中に1%(v/v)添加したときの石油系溶剤の体積抵抗率(GΩ・cm) と石油系溶剤の体積抵抗率の経時変化が小さいほど、ドライクリーニング機に装備されているドライクリーニング用洗浄剤組成物の濃度管理のセンサー対応性が良好で引火爆発の危険性も低くなることを意味する。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で体積抵抗率の測定に用いた装置の略図
【符号の説明】
1:絶縁抵抗計
2:測定器
3:測定電極
P:溶剤循環ポンプ
Claims (3)
- 下記一般式(1) で表されるアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を8〜18重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルからなる群より選ばれるノニオン界面活性剤を1〜40重量%、及び石油系溶剤を含有するドライクリーニング用洗浄剤組成物であって、アルキルエーテルリン酸エステル又はその塩を含めてアニオン界面活性剤を10〜50重量%含有し、かつ石油系溶剤中に1%(v/v)添加した時に当該石油系溶剤の体積抵抗率を少なくとも2.0 GΩ・cm以下とさせる導電性向上能を有することを特徴とするドライクリーニング用洗浄剤組成物。
- アルキルエーテルリン酸エステル又はその塩がセスキアルキルエーテルリン酸エステル又はその塩である請求項1記載のドライクリーニング用洗浄剤組成物。
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JP21125494A JP3592756B2 (ja) | 1994-09-05 | 1994-09-05 | ドライクリーニング用洗浄剤組成物 |
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- 1994-09-05 JP JP21125494A patent/JP3592756B2/ja not_active Expired - Fee Related
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