JP3592096B2 - インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録装置、特に文字や画像の記録に必要なときのみインクを吐出させて記録するオンデマンド型インクジェット記録装置に関するものである。また、本発明はオフィスで用いられる紙だけでなく、布、糸、シート等のインク付与を受けるインク支持体全ての媒体に対して記録を行う産業用装置ヘも適用することができる。
【0002】
【従来の技術】
熱エネルギーを液体に作用させることで起こる気泡の発生によって所望の液体を吐出させ記録を行なうインクジェット記録方法は、小型の装置で高解像度のカラー記録画像を高速かつ低騒音で得られるという優れた点を有している。このためインクジェット記録方法は、近年、プリンター、複写機、ファクシミリなど多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置などの産業用システムにまで利用されるようになっている。
【0003】
このようにインクジェット記録技術が多方面の製品に利用されるに従い、更なる高階調化、高画質化が求められている。
【0004】
高階調化、高画質化を実現する方法の1つとして、ディザ等の疑似多値記録方式がある。これは記録ヘッドのノズル密度を高くし、液滴の体積を小さくして一画素をより多くのドットで形成する方法である。しかし被記録紙1枚あたりの液滴の吐出回数が増えるため、ヘッド寿命が短くなる。また記録ヘッドのノズル密度を高くするためへッド製作コストが高くなるなどの問題点がある。
【0005】
そこで高階調化、高画質化を実現する別の方法として、特開昭55−132259号公報、特開平08−332727号公報では、1ノズル内に2つ以上の電気熱変換素子を設ける構造が提案されている。具体的には、1ノズル内に2つの電気熱変換素子が配列された場合、大きな吐出量の液滴(大液滴)を得るときには2つの電気熱変換素子を両方とも駆動し、小さな吐出量の液滴(小液滴)を得るときはいずれか片一方の電気熱変換素子を駆動することで吐出量を変化させる。このように、ノズル密度を従来の記録ヘッドと変えることなく、非常に簡単な構成で吐出量を変化させ、高階調、高画質を実現するものである。
【0006】
この1ノズル内に複数の電気熱変換素子を設け、吐出する液体の量に応じて駆動パターンを変える方法による記録ヘッドでは、従来の記録ヘッドの製造装置を流用することで低コスト化が実現できる。
【0007】
【発明が解決しょうとする課題】
ところで、上述の更なる高階調化、高画質化に対する要求と並行して、インクジェット記録方法には、更なる印字速度の向上が求められている。高速に印字を行なうためには高周波数で電気熱変換素子を駆動することが必要となる。
ここで、高速化を妨げる要因の一つとして、ヘッドの昇温がある。インクジェット記録ヘッドの場合、投入エネルギーのおよそ3割が吐出に使用され、残りはほとんど熱エネルギーとなり、ヘッドの温度を上げることになる。ヘッドを高速駆動すればするほど、ヘッドは昇温し、液滴の吐出状態を不安定にさせる要因となる。
【0008】
そこで、発泡効率を上げ、ヘッド昇温を抑える為に、電気熱変換素子の保護膜厚を薄くする方法が提案されている。図10(a)にその平面図を示す。ここでノズル109の中に電気熱変換素子53が配置されている。また図10(b)は、図10(a)に示した電気熱変換素子部分のC−C線に沿った断面構造の模式図である。ここで71は蓄熱層を形成したシリコン基板であり、その上にHfB2などの抵抗体材料による抵抗層72、ALの配線層73、PSGなど絶縁材料による保護膜下層75、SiO2など絶縁材料による保護膜上層76などが形成される。保護膜下層75は電気熱変換素子部分のみエッチングにより除去されており、保護膜下層75の厚み0.6μm分保護膜が薄くなり、それにより熱伝導性が良くなり、発泡効率が上がる。上記のような構成により、保護膜に吸収され、熱に変わるエネルギーの量が減少し、記録ヘッドの昇温を抑えることができる。
【0009】
一方、熱特性以外の主な要因としては、吐出口から吐出された液滴に相当する液体がノズル後端よりリフィルされるのに要する時間が挙げられる。特に、1ノズル内に2つの電気熱変換素子を設けた構成の吐出量変調ヘッドにおいては、小液滴のリフィル時間より大液滴のリフィル時間の短縮が高速印字化達成には大きな鍵となる。これは、吐出量のばらつきなどを考慮すると、実用的には大液滴の量に対し小液滴の量はなるべく小さく(例えば大液滴が40plに対し、小液滴が10〜15pl)することが階調性を上げるためには望ましく、そのため、小液滴では大液滴に比べリフィルしなければならない液の量も少なくて済むためである。
【0010】
そこで、本発明者らは大液滴の発泡中心の2つのヒータに対する位置に注目することで、従来のノズルの製造装置を流用するなどのノズルの設計の自由度を確保しつつ、リフィル時間の短縮を図る本願発明を想起するに至った。
【0011】
すなわち、本願発明の目的は、上述した1ノズル内に2つの電気熱変換素子を設けて吐出量の変調を行なう記録ヘッドを前提として、大液滴のリフィル時間を短くすることにより、より高速印字が可能な高画質、高階調のインクジェット記録ヘッド及び該記録ヘッドを用いた記録装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出するための吐出口と、該インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する2つの電気熱変換素子と、該2つの電気熱変換素子を備えるとともに前記吐出口に連通するインク流路と、を備え、前記2つの電気熱変換素子のうち吐出口に近い側の電気熱変換素子が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から液滴を吐出する第1の吐出モードと、前記2つの電気熱変換素子の両方が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から前記第1の吐出モードより大きな吐出量の液滴を吐出する第2の吐出モードと、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、前記2つの電気熱変換素子のうち吐出口から遠い側の前記電気熱変換素子のインク吐出方向の長さが、もう一方の電気熱変換素子のそれに比ベ短いことを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明によれば、上述の構成をとることにより、大液滴の発泡中心(2つの電気熱変換素子を1つの電気熱変換素子としたときの重心位置)を、2つの電気熱変換素子を1つの大きな電気熱変換素子としてとらえた場合の電気熱変換素子の中央部より後方(インク供給方向における上流側)に配置することができるので、発泡中心がより後方(反オリフィス側)に移動し、発泡中心から後方の流抵抗が減少し、インクがノズル後端よりリフィルされ易くなり、リフィル時間は短くなる。
【0014】
本発明は上述の構成だけでも本願発明の課題を解決し、高速かつ高階調・高画質な記録を実現することができるが、さらに前記2つの電気熱変換素子は前記インクを吐出するために必要な最低印加電圧が実質的に同一とすることは以下の点から望ましいものである。すなわち、一般的には電気熱変換素子のインク供給方向における長さが増大すると吐出するために必要な最低印加電圧も異なるが、本発明のより望ましい構成ではこれを実質的に同一とすることで、複数種類の印加回路による装置本体のコスト上昇や複雑化の問題点を解消することができる。
【0015】
ここで、実質的に同一にさせるための具体的手段としては、「吐出口から遠い方の前記電気熱変換素子の保護膜の厚みが、もう一方の電気熱変換素子のそれに比べ厚いこと」、「吐出口から遠い方の前記電気熱変換素子の保護膜の熱伝導率が、もう一方の電気熱変換素子のそれに比べ低いこと」などにより、実現することが可能である。
【0016】
従って、吐出量変調ヘッドのリフィル時間が短くなることにより、上述の課題を解決し、より高速印字が可能な高画質、高階調を実現しうるインクジェット記録ヘッドを提供することができる。
【0017】
また、本発明のインクジェット記録装置は、インクを吐出するための吐出口と、該インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する2つの電気熱変換素子と、該2つの電気熱変換素子を備えるとともに前記吐出口に連通するインク流路と、を備えるインクジェット記録ヘッドと、該ヘッドを載置するための載置手段と、を具備し、前記2つの電気熱変換素子のうち吐出口に近い側の電気熱変換素子が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から液滴を吐出する第1の吐出モードと、前記2つの電気熱変換素子の両方が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から前記第1の吐出モードより大きな吐出量の液滴を吐出する第2の吐出モードと、を有するインクジェット記録装置において、前記2つの電気熱変換素子のうち、吐出口から遠い側の前記電気熱変換素子のインク吐出方向の長さが、もう一方の電気熱変換素子のそれに比べ短いことを特徴とすることで、上述の課題を解決し、より高速印字が可能な高画質、高階調インクジェット記録装置を提供することができる。
【0018】
なお、本願発明において、「2つの電気熱変換素子のうち吐出口から近い側」とは、インク流路内のインク吐出方向に対して吐出口側を前方、と定義したとき、2つの電気熱変換素子のうち、電気熱変換素子の後端部(もっとも吐出口から遠い側の端部)がより前方、すなわちより吐出口側に近い側(インク供給方向に対して下流側)にある電気熱変換素子を指すものとする。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各実施例では同様の機能を有するものには同一の符号をつけて説明する。
【0020】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例のインクジェット記録ヘッドのノズル周りの斜視図である。これはエッジシユータータイプと呼ばれる構成であり、吐出ノズル109内のインクを電気熱変換素子53及び54で加熱発泡して、側方に解放されたオリフィス(吐出口と同義であり、以下では「吐出口」と称する場合もある)40から吐出させるものである。
【0021】
それぞれの電気熱変換素子53、54はスルーホール2を介して下層の層間絶縁膜下にあるコモン配線(不図示)と接続されており、このコモン配線より電圧を印加される。電気熱変換素子53、54に設けられた配線3は、それぞれ下層の層間絶縁膜下にあるスイッチングトランジスタ(不図示)に接続される。そして、トランジスタのON、OFFを制御するため、信号配線がトランジスタと図8などに示されるシフトレジスタ・ラッチ回路に接続してある。
【0022】
また、基板23はベースプレート41に接着されており、ノズル壁5は天板101に設けられている。ノズル壁5と基板23により形成されるノズルのインク供給方向上流側の端部(吐出口と反対側の端部)は共通液室になっており、この共通液室に不図示のインク供給手段(インクタンクなど)から液体が供給される。
【0023】
図2は図1に示す本発明の第1の実施例のインクジェット記録ヘッドの説明図であり、(a)はノズル詳細図、(b)は図1のA−A線に沿った電気熱変換素子の断面図、(c)はB−B線に沿った電気熱変換素子の断面図である。図2(a)において、吐出ノズル109の中に、電気熱変換素子53と電気熱変換素子54の2つの電気熱変換素子が配置されている。110はノズル109の後端であり、ノズル長Lは300μmである。ノズル109の先端にはオリフィス40が設けられる。
【0024】
また、図2(a)において電気熱変換素子53の長さHlは120μm、電気熱変換素子54の長さH2は90μmとなっている。そして、オリフィス40の後端から電気熱変換素子53、54までの距離をそれぞれEl,E2とすると、本実施例ではEl=80μm、E2=150μmである。このように、本発明の記録ヘッドは、2つの電気熱変換素子のうち、吐出口から近い方の電気熱変換素子53のインク吐出方向における長さH1より、吐出口から遠い方の電気熱変換素子54のインク吐出方向における長さH2が短くなっている。
【0025】
まず最初に、このへッドを用いた階調制御の説明を図3に示す模式図を使って簡単に行う。なお、以下の各実施例において使用したインクの組成は以下のとおりであるが、本発明の効果は、このインクに限られるものではない。
水 82.8%
グリセリン 5%
エチレングリコール 5%
尿素 5%
染料(ダイレクトブラック 195) 2.2%
図3(a)において、ノズル壁5で囲まれた吐出ノズル109にはインクが満たされ、ノズル109には電気熱変換素子53と電気熱変換素子54が備えられている。ここで電気熱変換素子53に駆動信号を加え電気熱変換素子53が加熱されると、図3(a)のように発泡泡113により圧力が発生し、オリフィス40より小液滴(小ドロップ)114が吐出される。この時の吐出量は約30ng、吐出速度は12m/sであった。図3(b)は両方の電気熱変換素子53、54を共に加熱し、大液滴(大ドロップ)を吐出する状態を示す。電気熱変換素子53が加熱されると発泡泡113が発生し、電気熱変換素子54が加熱されると発泡泡112が発生し、この2つの発泡により大ドロップ115が吐出される。この時の吐出量は80ng、吐出速度は16m/sであった。このように、本発明の記録ヘッドは、吐出量のばらつきなどを考慮に入れて、大液滴に対する小液滴の量をなるべく小さく(具体的には大液滴の量/小液滴の量≧2)することで、階調性をより高めている。本実施例では2つのヒータの面積比をほぼ1:1としている。
【0026】
このような大ドロップを吐出するための発泡について考えると、その発泡の中心は、便宜的に2つの電気熱変換素子を一つの電気熱変換素子として捉えた場合の、電気熱変換素子の重心位置となる。従って、本発明の記録ヘッドの場合、吐出口から遠い方の電気熱変換素子54の後端部から大ドロップの発泡中心までの距離C2は、吐出口から遠い方の電気熱変換素子54の後端部から吐出口に近い側の電気熱変換素子53の前端部と吐出口に遠い側の電気熱変換素子54の後端部との中点までの距離C1より短くなる。すなわち、発泡中心がより後方(反オリフィス側)に移動させることができる。
【0027】
ここで、本発明の特徴である、大ドロップの発泡中心について、比較例を用いて説明する。図4は本発明の第1実施例と比較例の大液滴の発泡状態を比較した模式図であり、(a)は第1実施例、(b)及び(c)は比較例の発泡状態を示す。
【0028】
図4(a)〜(c)に示すそれぞれの記録ヘッドの電気熱変換素子53は面積が等しく、長さはH1である。また、電気熱変換素子53の前端部(吐出口側)から吐出口までの距離(図2(a)におけるE1)、及びノズル長(図2(a)におけるL)は図4(a)〜(c)に示すそれぞれの記録ヘッドで互いに等しくなっている。
【0029】
図4(a)に示すヘッドにおいて、吐出ノズル109内の電気熱変換素子54,53に駆動信号を加え電気熱変換素子54,53が加熱されると、発泡泡112,113が発生する。このとき、上述した大液滴の発泡泡の発泡中心と、ノズル109の後端110との距離CRlは、約130μmとなり、リフィル時間は約83μsecであった。駆動周波数に換算すると、約12kHzに相当する。このとき、電気熱変換素子54の後端部59からノズルの共通液室側の端部までの距離l1は60μmであった。
【0030】
これに対し、図4(b)に示す比較例1は、本発明の第1実施例に対し、吐出口から遠い方の電気熱変換素子54を、面積はそのままで長さを電気熱変換素子53と同じにするとともに、電気熱変換素子54の前端部(吐出口側)から吐出口までの距離(図2(a)におけるE2)を短くすることで、電気熱変換素子54の後端部59からノズルの共通液室側の端部までの距離l1が第1実施例と等しくなるように配置している。
【0031】
比較例1のヘッドについて、吐出ノズル109内の電気熱変換素子53、54に駆動信号を加え、発泡泡113,114が発生させると、電気熱変換素子53と54の長さと幅が等しいので、合体液滴の発泡中心は、吐出口に近い側の電気熱変換素子53の前端部と、吐出口に遠い側の電気熱変換素子54の後端部との中点になる。従って、上述した大液滴の発泡泡の発泡中心と、ノズル109の後端110との距離CR2は約140μmとなる。その結果、リフィル時間は100μsecであり、駆動周波数に換算すると、10kHzとなる。
【0032】
この第1実施例、及び比較例1の2つのヘッドについて、駆動周波数を変化させ、印字特性を試験したところ、表1に示すような結果を得た。
【0033】
【表1】
Figure 0003592096
この表より明らかなように、比較例1のヘッドでは、10kHzぐらいまでは、ほぼ正常な印字結果であるが、12kHzではサテライトが目立ってくる。これはインクのリフィルが間に合っていないために、発生するものである。つまり、インクのメニスカス面が静的な初期状態まで、戻らない内に次の発泡が開始されるため、若干、吐出が炸裂状態になり、インク滴がバラバラな状態でメディアに着弾することにより、印字品位が悪化するものである。これに対し、本願発明のヘッドでは、リフィルが間に合うために、印字結果も良好であり、高階調・高画質を実現すると同時により一層の高速化をはかることができる。
【0034】
一方、図4(c)に示す比較例2は、本発明の第1実施例に対し、吐出口から遠い方の電気熱変換素子54を、面積はそのままで長さを電気熱変換素子53と同じにするとともに、電気熱変換素子54の後端部59からノズルの共通液室側の端部までの距離l2が40μmと、l1より短くなるように配置している。
【0035】
比較例2のヘッドについて、吐出ノズル109内の電気熱変換素子53、54に駆動信号を加え、発泡泡113,114が発生させると、比較例1と同様、合体液滴の発泡中心は、吐出口に近い側の電気熱変換素子53の前端部と、吐出口に遠い側の電気熱変換素子54の後端部との中点になる。従って、上述した大液滴の発泡泡の発泡中心と、ノズル109の後端110との距離はCR1と等しくなる。
【0036】
そこで、この第1実施例、及び比較例2の2つのヘッドについて、駆動周波数を変化させ、印字特性を試験したところ、表2に示すような結果を得た。
【0037】
【表2】
Figure 0003592096
比較例2の場合、ノズル後端から発泡中心までの距離は実施例1と同じであるが、駆動周波数が高くなってくると不吐出するノズルが発生し、12kHzでは不吐出が多くなった。これは、比較例2のl2が実施例1のl1よりも短いために、駆動周波数の上昇によりヘッドが昇温して発泡する泡自身も大きくなると、電気熱変換素子54により発生する泡がノズル後端からはみだし、リフィルが大幅に遅れ、その状態で電気熱変換素子に次の発泡のための印可が加えられることにより、不吐出が引き起こされると考えられる。
【0038】
これに対し、本発明のヘッドによれば、吐出口から遠い方の電気熱変換素子により発生する泡がノズル後端からあふれない一定の間隔を保ちつつ、大液滴吐出時の発泡中心を共通液室側(吐出口から遠い側)に移動させ、リフィル時間を短縮させるとともに安定した吐出により、高階調・高画質の記録を得ることができる。
【0039】
このように、本発明の記録ヘッドは高階調・高画質をより高速に行うことができるが、一般的には電気熱変換素子のインク供給方向における長さが増大すると吐出するために必要な最低印加電圧も異なってしまう。これでは、記録装置側で複数種類の印加回路を用意することになり、その分装置自体が複雑化する。
【0040】
そのため、本実施例の記録ヘッドでは、発泡に必要な最低印加電圧を合わせる構成を備えている。そこで、この構成について図2(b)、(c)を用いて説明する。
【0041】
図2(b)は、図2(a)のA−A線に沿った電気熱変換素子の断面図、図2(c)は、図2(a)のB−B線に沿った電気熱変換素子の断面図である。図2(b)の71は蓄熱層を形成したシリコン基板であり、その上にHfB2、などの抵抗体材料による抵抗層72、ALの配線層73、SiO2など絶縁材料による保護膜層74(厚み1.3μm)などが形成される。図2(c)の71は蓄熱層を形成したシリコン基板であり、その上にHfB2などの抵抗体材料による抵抗層72、ALの配線層73、PSGなどの絶縁材料による保護膜下層75(厚み0.6μm)、SiO2など絶縁材料による保護膜上層76(厚み0.7μm)などが形成される。このような電気熱変換素子部分のみの薄膜化は製造工程において保護膜下層75のパターンニング後に電気熱変換素子部分のみをエッチングすることによって形成される。
【0042】
このように、本発明の第1実施例では、前記オリフィスから遠い方の前記電気熱変換素子54の保護膜の厚みが、もう一方の電気熱変換素子53のそれに比べ厚くすることで、保護膜が薄い電気熱変換素子53はインクに熱エネルギーを伝える効率が他方の電気熱変換素子54に比べて良くなり、保護膜の厚さが電気熱変換素子54の厚みと同じ場合に比べ、低い電圧でも発泡することができるようになる。従って、長さの差にあわせて適当な厚みを選択することで、発泡に必要な最低印加電圧を合わせ、複数種類の印加回路による装置本体のコスト上昇や、複雑化の問題を解消することができる。
【0043】
なお、電気熱変換素子54は大液滴吐出時のみに駆動されるが、電気熱変換素子53は小液滴吐出時、大液滴吐出時両方に駆動される。本発明では電気熱変換素子54の保護膜薄化は行っていないが、電気熱変換素子54の使用頻度がそれほど高くないため、ヘッド昇温において実用上問題はなかった。
【0044】
(第2実施例)
次に図5、図6を用いて、本発明の第2実施例の説明を行なう。
【0045】
前述の第一の実施例では、保護膜の厚みを変えることにより電気熱変換素子の長さを短くし、リフィル時間を短縮したが、本発明者は、鋭意研究努力した結果、保護膜の熱伝導率を電気熱変換素子によって変えることによっても、電気熱変換素子の長さを短くし、リフィル時間を短縮可能なことを見いだした。
【0046】
図5(a)において、吐出ノズル109の中に、電気熱変換素子55と電気熱変換素子56の2つの電気熱変換素子が配置されている。110はノズル109の後端であり、ノズル長Lは300μmである。ノズルの先端にはオリフィス40が設けられる。また、図5(b)は図5(a)の断面D−D線に沿った断面図であり、71は蓄熱層を形成したシリコン基板であり、その上にHfB2などの抵抗体材料による抵抗層72、ALの配線層73、SiO2など絶縁材料による熱伝導性の高い保護膜層77などが形成されている。
【0047】
本実施例において、電気熱変換素子55の長さH3は120μm、電気熱変換素子56の長さH4は80μmである。またオリフィス40の後端から電気熱変換素子55,56までの距離をそれぞれE3,E4とすると、本実施例ではE3=80μm、E4=160μmである。
【0048】
本実施例では、発泡に必要な最低印加電圧を合わせるために、電気熱変換素子56の保護膜の熱伝導率が、電気熱変換素子55の保護膜の熱伝導率に比ベ低くなっている。そのため、電気熱変換素子56は、電気熱変換素子55と同じ保護膜の場合に比べ、インクに熱エネルギーを伝える効率が悪くなることにより、より高い電圧が必要となる。従って、長さの差にあわせて適当な厚みを選択することで、発泡に必要な最低印加電圧を合わせ、複数種類の印加回路による装置本体のコスト上昇や、複雑化の問題を解消することができる。
【0049】
なお、本実施例の場合も、第1実施例同様、電気熱変換素子56に比べ使用頻度の低い電気熱変換素子55について熱伝導率のより低い部材を使用しているため、ヘッド昇温において実用上問題はなかった。
【0050】
このような構成によって、大液滴を吐出した揚合の発泡状態を図6に示す。電気熱変換素子56,55に駆動信号を加え電気熱変換素子56,55が加熱されると、発泡泡115,113が発生する。ノズル109の後端110からの発泡泡115と発泡泡113の中心までの距離CR3は、120μmであり、リフィル時間は約77μsecであった。そこで、13kHzで駆動すると、このとき、電気熱変換素子56の泡が共通液室側に抜けることによる不吐の問題も発生せず、安定した吐出を行うことを確認できた。これは、吐出口から遠い方の電気熱変換素子の後端部とノズルの共通液室側の端部までの距離が、第1実施例同様、十分にあるためであると考えられる。
【0051】
(第3実施例)
次に、図7(a)及び(b)を用いて、本発明の第3実施例の説明を行なう。
【0052】
前述の第1、第2の実施例では、電気熱変換素子は吐出方向に対し平行に配置されていたが、本実施例では直列方向に配置されている点が異なっている。電気熱変換素子を平行に配置した場合、ノズル密度を高くするには限界がある。高密度化の1つの方法として、電気熱変換素子を直列に配置する方法があるが、この場合においても、オリフィスから遠い電気熱変換素子の長さを短くすることにより、リフィル時間を短縮化することができる。
【0053】
図7(a)は本発明の第3実施例によるインクジェット記録ヘッドのノズル詳細図であり、(b)は比較例のインクジェット記録ヘッドのノズル詳細図である。図7(a)において、ノズル109の中に、電気熱変換素子57と電気熱変換素子58の2つの電気熱変換素子が配置されている。110はノズル109の後端であり、ノズル長Lは300μmである。ノズル109の先端にはオリフィス40が設けられる。図7(a)において電気熱変換素子57の長さH5は100μm、電気熱変換素子58の長さH6は60μmである。このとき、大液滴の発泡中心とノズル後端との距離CR5は、約130μmとなった。
【0054】
これに対し、図7(a)に示すように、電気熱変換素子58の長さを電気熱変換素子57の長さと同じにし、電気熱変換素子57の吐出口側からの位置関係を変えずに、かつ、電気熱変換素子58の後端部とノズルの共通液室側の端部までの距離が第3実施例と同じになるような比較例3を作成したところ、大液滴の発泡中心とノズル後端との距離CR4はCR5に比べて大きくなり、また、ノズル長L1もLに比べて長くなった。前述の第1実施例と同様の印字試験を行なったところ、駆動周波数が低い領域ではいずれも良好に印字を行なえたが、駆動周波数が高い領域では、実施例3が良好なままであるのに対し、比較例3ではサテライトが目立つようになっていた。
【0055】
このように、本実施例の場合でも、リフィル時間を短縮し、高速駆動することが可能となる。
【0056】
なお、本実施例において、それぞれの電気熱変換素子の最低印加電圧をそろえる方法としては、第1実施例、第2実施例いずれの方法でもよく、これらを組み合わせたものであってもよい。これは、前述の各実施例についても適用することができる。
【0057】
以上、本発明の要部の実施例について説明を行なったが、本発明に適用可能な他の適用例について、以下に説明する。なお、特に断りのない限り、以下の各適用例は本発明のいずれの実施例にも適用可能である。
【0058】
まず、2つの電気熱変換素子の面積について補足する。
【0059】
上述の各実施例では、2つの電気熱変換素子の面積はほぼ等しかったが、大液滴の発泡中心を、2つの電気熱変換素子の中央部より後方にするためには、吐出口に近い側の電気熱変換体の面積より、吐出口から遠い側の電気熱変換体の面積が等しいか、大きいことが望ましい。このことは、2つのヒータによる小液滴、大液滴の階調記録を行なう場合、吐出ばらつきなどまで考慮に含めた実際の階調性を高めることになるので、高階調の点からも望ましいものである。なお、2つの電気熱変換素子の面積が等しい場合は、大液滴の発泡中心は、それぞれの電気熱変換素子の重心同士を結ぶ線分の中点となる。
【0060】
次に、本発明の記録ヘッドを従来のインクジェット記録装置に搭載する場合について説明する。
【0061】
本発明の記録ヘッドは、その設計の条件によれば、従来の記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置に搭載すると、本来のヘッドの記録特性(すなわち、大小の液滴による階調記録)は実現されないにしても大液滴の吐出により従来の記録ヘッドと同等の記録性能を達成させることもできる。
【0062】
この場合、新しいインクジェット記録ヘッドは、従来ヘッドとの互換性を維持するために、記録時に消費する電力量も従来のインクジェット記録ヘッドのそれよりも大きくなることは許されない。しかし、電気熱変換素子を1つから2つに分割した場合、電気熱変換素子の全面が発泡に寄与するわけではないので、電気熱変換素子の合計面積が1つの電気熱変換素子の面積よりも大きくしないと、同じ大きさのインク滴は吐出できなくなる。よって、2つの電気熱変換素子の場合、1つの電気熱変換素子の場合と同じ吐出量になるよう電熱変換素子の面積を設定すると、当然消費される電力量も大きくなるとともに、ヒータの配置によっては上述した各種比較例のように、高速記録に不向きなヒーターは位置にならざるをえない場合がある。
【0063】
そこで、本願発明を適用することにより、高速記録にも対応でき、かつ、記録時に消費する電力量も従来と同じ記録ヘッドを提供することができる。この場合、流用するノズル形状などに応じて、発泡中心の位置、及びノズル内でのヒータ位置を適宜定めることで、従来の記録装置に搭載した場合には従来ヘッドに対する完全な互換性を実現すると共に、本来の性能を発揮させることのできる記録装置に搭載したときには、高速かつ高階調・高画質な記録を実現することができる。
【0064】
このように従来の記録ヘッドに対する互換性を保持させることで、消費量の増大が見込まれることから大量に生産することが可能となり、単に製造装置の一部流用による生産コストの低減より一層の生産コストを引き下げることが可能となり、製品をより安価に提供することができる。
【0065】
次に、上述の各実施例の記録ヘッドを駆動可能な等価回路の一例について説明する。
【0066】
図8は、本発明のインクジェット記録ヘッドを駆動する等価回路の一例を示す説明図である。図8では前述したシフトレジスターラッチ回路19,20を詳細に示す。シフトレジスター36には、CLK信号線37とシリアルデーター線35とが入力され、シリアルデーターをクロック信号によりシフトレジスタ36に展開する。シフトレジスタ36に入力されたデーターはラッチ33にラッチ信号線34からのラッチ信号で、保持される。次に、イネーブル信号32はANDゲート31に接続され、ラッチ33のデーターをトランジスター11に印加するタイミング信号を入力する。イネーブル信号32がある2本あるため吐出ヒーター22a,22bは同時でもタイミングをずらしても駆動可能である。実際の小液滴吐出と大液滴吐出の選択は該2本のイネーブル信号線にスイッチングすることにより、吐出ヒーター22aのみによる印字及び吐出ヒーター22a,22bの両者を駆動した印字を選択することが可能である。
最後に、各実施例の記録ヘッドを装着可能な記録装置の一例について説明する。
【0067】
図9は、本発明のインクジェット記録ヘッドが搭載されるインクジェット記録装置の一例の外観図を示す。このインクジェット記録装置IJRAは、駆動モーターの2010の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア2020、2030を介して回転するリードスクリュウ2040を有する。本発明のインクジェット記録ヘッドとインクタンクとが一体化されたインクジェットカートリッジIJCが搭置されるキャリッジHCは、キャリッジ軸2050及びリードスクリュウ2040に支持され、リードスクリュウ2040の螺旋溝2041に対して係合するピン(不図示)を有しており、リードスクリュウ2040の回転にともなって、矢印a,b方向に往復移動される。
【0068】
ここで、インクジェット記録ヘッドがインクジェット記録装置に搭載されるときには、不図示の電気的接続部により記録ヘッドと記録装置との電気的接続がなされ、記録ヘッドは記録装置に設けられた不図示の電気信号供給手段から、熱エネルギーによる発泡のための電気信号を受けることができる。
【0069】
2060は紙押さえ板であり、キャリッジ移動方向にわたって紙Pを被記録媒体を搬送する搬送手段を構成するプラテンローラ2070に対し押圧する。2080および2090はフォトカプラで、これらは、キャリッジHCに設けられたレバー2100のこの域での存在を確認してモーター2010の回転方向切り換え等を行うためのホームポジション検知手段として動作する。
【0070】
2110は記録ヘッドの全面をキャップする部材であり、支持部材2120により支持されている。2130はこのキャップ内を吸収する吸収手段であり、キャップ内開口を介して記録ヘッドの吸引回復を行う。記録ヘッドの端面をクリーニングするクリーニングブレード2140は、前後方向に移動可能に部材2150に設けられており、これらは本体支持板2160に支持されている。ブレード2140はこの形態に限定されず、周知のクリーニングブレードが本例に適用できることはいうまでもない。
【0071】
また、2170は吸引回復の吸引を回復するためのレバーであり、キャリッジHCと係合するカム2180の移動にともなって移動するようになっており、これにより駆動モーター2010からの駆動力がクラッチ切り換え等の周知の伝達手段で移動制御される。これらのキャッピング、クリーニング、吸引回復はキャリッジHCがホームホジション側領域にきたときにリードスクリュウ2040の作用によってそれらの対応位置で所望の処理が行えるように構成されているが、周知のタイミングで所望の動作を行うようにすれば、本例には何れも適応できる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の記録ヘッドによれば、大液滴の発泡中心(2つの電気熱変換素子を1つの電気熱変換素子としたときの重心位置)を、2つの電気熱変換素子を1つの大きな電気熱変換素子としてとらえた場合の電気熱変換素子の中央部より後方(インク供給方向における上流側)に配置することができるので、発泡中心がより後方(反オリフィス側)に移動し、発泡中心から後方の流抵抗が減少し、インクがノズル後端よりリフィルされ易くなり、リフィル時間は短くなる。従って、高速かつ高階調・高画質な記録を実現することができる。
【0073】
さらに、本発明の記録ヘッドは、従来の記録ヘッドの製造装置を流用することで低コスト化が実現できるほか、従来の記録ヘッドに対する互換性を保持させることも容易に実現できるので、消費量の増大が見込まれることから大量に生産することが可能となり、より一層の生産コストを引き下げることが可能となり、製品をより安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例によるインクジェット記録ヘッドのノズル周りの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例によるインクジェット記録ヘッドの説明図であり、(a)はノズル詳細図、(b)は(a)のA−A線に沿った電気熱変換素子の断面図、(c)は(a)のB−B線に沿った電気熱変換素子の断面図である。
【図3】本発明の第1実施例によるインクジェット記録ヘッドの発泡状態図であり、(a)は小液滴、(b)は大液滴の発泡状態を示す。
【図4】本発明の第1実施例と比較例の大液滴の発泡状態を比較した模式図であり、(a)は第1実施例、(b)及び(c)は比較例の発泡状態を示す。
【図5】本発明の第2実施例によるインクジェット記録ヘッドの説明図であり、(a)はノズル詳細図、(b)は(a)のD−D線に沿った電気熱変換素子の断面図である。
【図6】本発明の第2実施例によるインクジェット記録ヘッドの大液滴の発泡状態を説明する説明図である。
【図7】本発明の第3実施例と比較例のインクジェット記録ヘッドを比較した模式図であり、(a)は第3実施例、(b)は比較例のインクジェット記録ヘッドのノズル詳細図である。
【図8】本発明のインクジェット記録ヘッドを駆動することができる等価回路の一例を示す説明図である。
【図9】本発明を適用可能なインクジェット記録装置の一例を示す斜視図である。
【図10】従来例によるインクジェット記録ヘッドのノズル詳細図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿った断面図である。
【符号の説明】
40 オリフィス
53、54、55、56、57、58 電気熱変換素子
71 シリコン基板
72 抵抗層
73 配線層
74 保護膜層
75 保護膜下層
76 保護膜上層
109 吐出ノズル(ノズル)
112、113、114、115 発泡泡
114 小ドロップ(小液滴)
115 大ドロップ(大液滴)

Claims (9)

  1. インクを吐出するための吐出口と、該インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する2つの電気熱変換素子と、該2つの電気熱変換素子を備えるとともに前記吐出口に連通するインク流路と、を備え、
    前記2つの電気熱変換素子のうち吐出口に近い側の電気熱変換素子が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から液滴を吐出する第1の吐出モードと、
    前記2つの電気熱変換素子の両方が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から前記第1の吐出モードより大きな吐出量の液滴を吐出する第2の吐出モードと、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、
    前記2つの電気熱変換素子のうち吐出口から遠い側の前記電気熱変換素子のインク吐出方向の長さが、もう一方の電気熱変換素子のそれに比ベ短いことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  2. 前記2つの電気熱変換素子は前記インクを吐出するために必要な最低印加電圧が実質的に同一であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  3. 前記吐出口から遠い側の前記電気熱変換素子の面積が、もう一方の電気熱変換素子の面積以上であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
  4. 前記2つの電気熱変換素子が前記インク流路内でインク吐出方向に関し、平行に配置されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 前記2つの電気熱変換素子が前記インク流路内でインク吐出方向に関し、直列に配置されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録ヘッド。
  6. 前記吐出口から遠い方の前記電気熱変換素子の保護膜の厚みが、もう一方の電気熱変換素子のそれに比べ厚いことを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録ヘッド。
  7. 前記吐出口から遠い方の前記電気熱変換素子の保護膜の熱伝導率が、もう一方の電気熱変換素子のそれに比べ低いことを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録ヘッド。
  8. インクを吐出するための吐出口と、該インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する2つの電気熱変換素子と、該2つの電気熱変換素子を備えるとともに前記吐出口に連通するインク流路と、を備えるインクジェット記録ヘッドと、
    該ヘッドを載置するための載置手段と、を具備し、
    前記2つの電気熱変換素子のうち吐出口に近い側の電気熱変換素子が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から液滴を吐出する第1の吐出モードと、
    前記2つの電気熱変換素子の両方が駆動信号を受けて前記熱エネルギーを発生し、前記吐出口から前記第1の吐出モードより大きな吐出量の液滴を吐出する第2の吐出モードと、を有するインクジェット記録装置において、
    前記2つの電気熱変換素子のうち、吐出口から遠い側の前記電気熱変換素子のインク吐出方向の長さが、もう一方の電気熱変換素子のそれに比ベ短いことを特徴とするインクジェット記録装置。
  9. 前記2つの電気熱変換素子は前記インクを吐出するために必要な最低印加電圧が実質的に同一であるとともに、前記熱エネルギーを発生させるための電気信号供給手段を有することを特徴とする請求項8に記載のインクジェット記録装置。
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