JP3591801B2 - 口腔内速崩壊性製剤の製法 - Google Patents

口腔内速崩壊性製剤の製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔内速崩壊性製剤の製法および該製法により得られる口腔内速崩壊性製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、高齢者や小児は嚥下能力が低く、錠剤など成型製剤の服用が困難である。しかしながら成型製剤は、散剤や顆粒剤に比べ、利用者にとって非常に扱い易いため、服用後、速やかに口腔内で崩壊し、高齢者や小児にも容易に服用できる成型製剤の開発が望まれている。
【0003】
単に崩壊の速い製剤であれば、薬物処方成分を低圧力で圧縮成型することにより容易に得られるが、このような製剤は、非常に製剤強度が低く、製剤の包装工程や流通過程さらには利用者の服用時における包装からの製剤の取り出し時などにおいて、その形状を保持できず崩壊してしまう。従って、口腔内速崩壊性製剤においては、優れた口腔内速崩壊性と共に、ある程度の製剤強度を兼ね備えている必要がある。このような問題点を解決した製剤の製法として、(1)薬物、糖類、糖類の粒子表面が湿る程度の水分を含む混合物を打錠し、乾燥させる方法(特開平5−271054)、(2)薬物、水溶性結合剤、水溶性賦形剤を含む混合物を低圧力で打錠後、加湿し、乾燥させる方法(特開平8−291051)、が知られている。
【0004】
しかしながら、(1)の方法は、湿潤した混合物を打錠するため、通常の打錠機を用いるのは困難であり、(2)の方法は、製造時の工程数が多い(打錠後、加湿、乾燥)、などの問題があり、さらに、(1)、(2)の方法は共に、水に不安定な薬物に適用することができない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、製剤強度の優れた口腔内速崩壊性製剤を、通常の圧縮成型機を用い、少ない製造工程で製造することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の結果、マンニトールなどの水溶性賦形剤および噴霧乾燥や凍結乾燥などの手段で非晶質化した白糖との混合物を低圧力で圧縮成型し、これを一晩放置しておくと、全く意外にも、製剤の速崩壊性は維持したまま、製剤強度が圧縮成型直後に比べ格段に上昇することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、薬物、水溶性賦形剤および非晶質糖類を圧縮成型後、エージングすることを特徴とする口腔内速崩壊性製剤の製法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる薬物としては、経口投与可能な薬物であれば特に限定されず、例えば化学療法剤、抗生物質、呼吸促進剤、鎮咳去たん剤、抗悪性腫瘍剤、自律神経用薬剤、精神神経用薬剤、局所麻酔剤、筋弛緩剤、消化器官用薬剤、抗ヒスタミン剤、中毒治療剤、催眠鎮静剤、抗てんかん剤、解熱鎮痛消炎剤、強心剤、不整脈治療剤、利尿剤、血管拡張剤、抗脂血剤、滋養強壮剤、抗凝血剤、肝臓用薬剤、血糖降下剤、血圧降下剤など種々の薬物があげられる。
【0009】
製剤中の薬物の配合量は、薬物の種類によっても異なるが、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。
【0010】
本発明に用いられる水溶性賦形剤としては、非晶質糖類と共に圧縮成型後、エージングすると成型物の硬度がエージング前よりも上昇するような物質であればいかなるものであってもよいが、このような物質としては、例えば、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコール、白糖、乳糖などの糖類があげられ、とりわけマンニトール、乳糖が好ましい。これらの水溶性賦形剤は1種のみならず2種以上を混合して用いてもよい。
【0011】
また、非晶質糖類としては、グルコース、フルクトース、マルトース、白糖、乳糖などの単糖類もしくは少糖類を、噴霧乾燥法や凍結乾燥法などの既知の手段により非晶質化して用いればよく、とりわけ白糖、マルトースが好ましい。これら糖類が非晶質化しているかどうかは、熱分析、X線回折などによって容易に確認できる。これら非晶質糖類は1種のみならず2種以上を混合して用いてもよい。
【0012】
水溶性賦形剤と非晶質糖類との好ましい組み合わせとしては、水溶性賦形剤としてマンニトールと非晶質糖類として白糖との組み合わせ、水溶性賦形剤として乳糖と非晶質糖類としてマルトースとの組み合わせなどがあげられる。
【0013】
製剤中の水溶性賦形剤と非晶質糖類の配合量は、水溶性賦形剤と非晶質糖類両者合わせて通常50〜99.9重量%、好ましくは60〜99.9重量%、さらに好ましくは80〜99重量%である。
【0014】
水溶性賦形剤と非晶質糖類との配合比率は、水溶性賦形剤1重量部に対して、非晶質糖類を0.01〜100重量部配合すればよく、この配合比率を変化させることによりエージングによる製剤強度の上昇率(エージング後の製剤強度/エージング前の製剤強度)を変化させることができる。例えば、水溶性賦形剤としてマンニトール、非晶質糖類として白糖を用いた場合には、マンニトール1重量部に対し非晶質白糖を1重量部配合したときに、エージングによる製剤強度の上昇率は最大となり、これよりも非晶質白糖の比率を高くするに従い、或いは低くするに従い、製剤強度の上昇率は小さくなる。従って、試みに種々の配合比率で製剤を調製し、用いる薬物の種類、目的とする製剤の崩壊性もしくは強度に応じて適宜その配合比率を選択すればよい。
【0015】
以下、上記成分、すなわち薬物、水溶性賦形剤および非晶質糖類の3成分を、本発明の処方成分と称す。
【0016】
本発明の処方成分中には、薬物、水溶性賦形剤、非晶質糖類以外に、製剤技術の分野で汎用される各種製剤添加物が配合されていてもよい。かかる製剤添加物としては、例えばクエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、結晶セルロースなどの賦形剤、トウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、カルボキシメチルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、デキストリン、アルファー化デンプンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素などの滑沢剤、更にはリン脂質、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、或いはオレンジ、ストロベリーなどの香料、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色4号、アルミニウムキレートなどの着色剤、サッカリン、アスパルテームなどの甘味剤、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルタミン酸などの矯味剤、シクロデキストリン、アルギニン、リジン、トリスアミノメタンなどの溶解補助剤があげられる。
【0017】
本発明の処方成分は、薬物、水溶性賦形剤、非晶質糖類および必要に応じ添加してもよい製剤添加物を単に混合したものでもよいが、流動性、圧縮成型性などを改善するため上記成分の一部もしくは全てを造粒顆粒として含んでいてもよい。一例として、薬物を適当な結合剤を用いて造粒したのち、得られた顆粒を水溶性賦形剤および非晶質糖類と混合したものなどがあげられる。造粒は、既知の方法、例えば撹拌造粒、押し出し造粒、流動層造粒、転動流動層造粒などの湿式造粒の他、白糖、結晶セルロースなどの不活性な担体上に薬物を被覆していくレイヤリング造粒、加熱により溶融するワックス類を用いる加熱溶融造粒、乾式圧縮造粒などにより実施すればよい。
【0018】
本発明において、糖類を非晶質化する方法としては、例えば、前記噴霧乾燥法や凍結乾燥法があげられる。また、撹拌造粒機、流動層造粒機など通常の造粒機を用い、薬物と水溶性賦形剤との混合物に糖類の水溶液を結合剤として添加あるいは噴霧して湿式造粒し、得られる造粒顆粒中で糖類が非晶質化された状態となるような処理、例えば加熱乾燥などによっても実施することができる。要するに、処方成分中の糖類は、圧縮成型前に非晶質化された状態となっていればよく、これが満たされる限りにおいては、非晶質化させる手段や時期は特に限定されない。
【0019】
本発明の処方成分の圧縮成型には、ロータリー式錠剤機などの通常用いられる圧縮成型機を用いればよい。圧縮成型の際の圧縮圧力は、圧縮後、成型物の圧縮成型機からの排出、次のエージング工程に移行する際の運搬などで崩壊してしまうことなく、かつ口腔内では速やかに崩壊しうる程度の低圧力で行うことが好ましく、このような圧力としては、例えば、10〜800kg/杵、好ましくは10〜500kg/杵、さらに好ましくは20〜500kg/杵である。
【0020】
エージングとは、それによって成型物の製剤強度が上昇するような条件下に一定時間放置することを意味し、その条件とは、例えば温度10〜40℃、湿度0〜75%RHの大気雰囲気下などがあげられる。
【0021】
一般に、エージングによる製剤強度の上昇率は、エージング時間が長いほど大きいが、ある一定時間を過ぎるとそれ以上製剤強度が上がらなくなる。したがって、エージングを開始してから経時的に製剤強度を測定し、製剤強度の上昇がほぼ停止した時間をエージング時間とすればよく、あるいは所望の製剤強度に達した時間をエージング時間としてもよい。好ましいエージング時間は、用いる薬物、水溶性賦形剤、非晶質糖類、圧縮圧力、製剤の形状や大きさなどによっても異なるが、例えば3〜72時間、好ましくは5〜30時間、より好ましくは10〜20時間である。
【0022】
温度約25℃、湿度約30%RH下の約15時間のエージングによる効果を具体的に例示するならば、薬物の種類や配合量によっても異なるが、水溶性賦形剤/非晶質糖類の組み合わせとして、マンニトール/白糖を4:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約1kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約3.5kgになり、マンニトール/マルトースを4:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約1kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約4.5kgになり、マンニトール/乳糖を4:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約2.5kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約3.5kgになり、ソルビトール/白糖を4:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約1kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約4.5kgになり、乳糖/白糖を4:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約0.5kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約5.5kgになり、エリスリトール/白糖を4:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約0.5kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約5.5kgになり、ソルビトール/マルトースを5:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量250mg、硬度約0.5kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約5kgになり、乳糖/グルコースを18:1の重量比で用いた場合には、直径10mm、重量200mg、硬度約0.5kgの錠剤が、前記条件のエージングにより硬度約3kgになる。
【0023】
エージングによる硬度上昇は、エージング中に非晶質糖類が大気中或いは成型物中の水分を吸収したのち、結晶化して水分を放出する際(アグリカルチュラルアンド フード ケミストリー、AGRICULTURAL AND FOOD CHEMISTRY、第4巻、72−81頁、1956年)、水溶性賦形剤が何らかの形で関与して生じるものと思われる。従って、成型物と大気との間で水分の移動が起こり難い極端に狭い密閉空間(例えば、錠剤瓶に成型物を詰め込んで密封した状態など)よりも、比較的広い空間の確保された大気雰囲気下でエージングすることがより好ましい。
【0024】
また、本発明の処方成分を圧縮成型する際、圧縮成型機器、例えば錠剤機の杵や臼に処方成分の一部が付着してしまい、連続的な操作が困難な場合には、圧縮成型製剤の製造時に通常行われているように、圧縮成型する処方成分中にステアリン酸アルカリ土類金属塩などの滑沢剤を添加してやることにより解決できるが、このような滑沢剤は成型製剤の崩壊を遅延させるため、口腔内速崩壊性製剤の製造において使用することは好ましくない。
【0025】
そこで、滑沢剤を添加することなく上記問題を解決するために、まず滑沢剤と流動化剤との混合物を圧縮成型機で成型し(以下、一次成型)、一次成型による成型物を排出したのち、滑沢剤の付着した該圧縮成型機で本発明の処方成分を成型(以下、二次成型)することが好ましい。
【0026】
一次成型において使用される滑沢剤としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸またはそのアルカリ土類金属塩、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、含水二酸化ケイ素、タルクなどのケイ素化合物、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプンなどのデンプン類、ショ糖脂肪酸エステルなどがあげられる。なかでも、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸アルカリ土類金属塩が好ましい。
【0027】
また、滑沢剤と混合する流動化剤としては、経口投与用製剤に通常用いられる製剤添加物であって流動性に優れた粉体であれば特に制限されない。流動性に優れた粉体とは、例えば、注入法により測定した安息角が60゜以下、好ましくは40゜以下の粉体を意味し、このような粉体であれば、製剤添加物そのままであっても、粉砕、造粒したものであっても、さらにはこれらを混合したものであってもよい。滑沢剤との混合性の面からは、該流動化剤の粒度は、粒子径が5〜2000μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは50〜750μmの範囲内である。また、圧縮成型性に優れたものであることがより好ましい。
【0028】
上記条件を満たすものであれば、いかなる製剤添加物であっても流動化剤として好適に用いることができるが、製剤添加物をそのままで用いることができれば、粉砕や造粒などの操作が必要なく、とくに好ましい。このような製剤添加物としては、例えば、結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウムなどがあげられ、これらは入手容易であり、流動性、圧縮成型性、滑沢剤との混合性に優れており、中でも結晶セルロース、乳糖が最も好ましい。
【0029】
また、そのままでは流動性、滑沢剤との混合性、圧縮成型性などに問題がある場合であっても、粉砕または造粒することによりそれらは改善することが可能である。
【0030】
粉砕は、ジェットミル、ハンマーミル、ボールミル、振動ボールミル、ピンミルなどを用いて、常法により実施することができる。
【0031】
造粒も既知の方法、例えば撹拌造粒、押し出し造粒、流動層造粒、転動流動層造粒などの湿式造粒、ローラーコンパクター及びロールグラニュレーターなどによる乾式圧縮造粒などにより好適に実施することができる。また、造粒に際しては、必要に応じポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デキストリンなどの結合剤を添加してもよい。
【0032】
一次成型において、滑沢剤と流動化剤との比率は、圧縮成型機の種類、滑沢剤、流動化剤の種類、二次成型する処方成分の性質などによって変動するが、滑沢剤の流動性を改善し成型機への供給を良好にすること、成型後の成型物排出が容易であること、かつ成型物排出後の成型機内部の表面、例えば打錠機であれば臼、杵などの表面に二次成型物が付着せず、効率的に成型しうる程度に滑沢剤が付着するような比率であればよく、特に限定されない。
【0033】
かかる比率は当業者であれば、実際に適宜試みに成型し、一次成型物、二次成型物及び成型機の状態を確認すればよく、容易に決定することができるが、一例をあげるとすれば、例えば滑沢剤1重量部に対し流動化剤が約2〜20重量部の範囲内が好ましく、さらに好ましくは約2〜10重量部の範囲内である。
【0034】
一次成型の圧縮圧力は、成型機の内部表面、例えば錠剤機の杵や臼表面に二次成型物の付着を防止できる程度に滑沢剤が残留し、かつ一次成型物の排出に困難をきたさない範囲の圧力であればよい。該圧力の例を打錠機を例にとってより具体的に説明するとすれば、例えば約0.01〜5000kg/杵、好ましくは約0.1〜4000kg/杵、より好ましくは約1〜3000kg/杵、とりわけ好ましくは約5〜2000kg/杵であり、約10〜1000kg/杵が最も好ましい。
【0035】
なお、本方法においては、一次成型という表現は使用しているが、一次成型物は必ずしも排出したのち、明確な形状を維持するようなものである必要はなく、成型機の内部表面に上記したように滑沢剤が二次成型容易なように残留する限り、排出と同時に崩壊するようなものであってもよい。
【0036】
かくして一次成型された成型物は排出され、二次成型が行われる。二次成型する本発明の処方成分中には、既に述べたとおり、一次成型により滑沢剤が成型機の内部表面に残留しているので、滑沢剤を添加する必要がない。しかしながら、二次成型物の崩壊性に支障をきたさない程度であれば、処方成分中に滑沢剤を含んでいてもより効率的に成型できるので、何ら支障がない。
【0037】
二次成型には、本発明の処方成分を圧縮するのであるから、この際の圧縮圧力は、二次圧縮後、二次成型物の圧縮成型機からの排出、次のエージング工程に移行する際の運搬などで崩壊してしまうことなく、かつ口腔内では速やかに崩壊しうる程度の低圧力で行えばよく、このような圧力は前述した通りである。
【0038】
上記方法で圧縮成型を行う場合、一次および二次成型を交互に連続して行うことが最も効果的であることから、打錠機を用いる場合には、通常の打錠機よりも多層錠剤機(例えば、畑鐵工所の積層打錠機、菊水製作所の三層回転式錠剤機など)及び複式錠剤機(例えば、畑鐵工所の複式打錠機、菊水製作所の複式高速回転式粉末成型機など)などを用いた方が効率的である。
【0039】
複式錠剤機を用いる場合には、一方の圧縮部位(以下、圧縮部位Aと称す)に滑沢剤と流動化剤との混合物を供給し、もう一方の圧縮部位(以下、圧縮部位Bと称す)に本発明の処方成分を供給して操作すればよい。圧縮部位Aに供給された滑沢剤と流動化剤との混合物は、圧縮成型され(一次成型)、この際臼と杵の表面に滑沢剤が付着する。一次成型物は直ちに排出され回収される。続いて滑沢剤が付着した臼中に本発明の処方成分が供給され、圧縮部位Bにおいて圧縮成型される(二次成型)。二次成型物、すなわち目的成型物は直ちに排出され回収される。そして、再び圧縮部位Aに滑沢剤と流動化剤との混合物が供給され、上記のサイクルが繰り返される。
【0040】
多層錠剤機として三層錠剤機を用いる場合には、予備圧縮部位2カ所、主圧縮部位1カ所の3カ所ある圧縮部位のうち、2カ所の予備圧縮部位のいづれか1カ所に滑沢剤と流動化剤との混合物を供給し、主圧縮部位に本発明の処方成分を供給して操作すればよい。例えば、第一の予備圧縮部位に滑沢剤と流動化剤との混合物を供給し、第二の予備圧縮部位には何も供給せず、主圧縮部位に本発明の処方成分を供給した場合について以下に説明する。第1の予備圧縮部位に供給された滑沢剤と流動化剤との混合物は、圧縮成型され(一次成型)、この際臼と杵の表面に滑沢剤が付着する。一次成型物は直ちに排出され回収される。続く第二の予備圧縮部位では何も供給されず、主圧縮部位で本発明の処方成分が供給され、圧縮成型される(二次成型)。二次成型物、すなわち目的成型物は直ちに排出され回収される。そして、再び第一の予備圧縮部位に滑沢剤と流動化剤との混合物が供給され、上記のサイクルが繰り返される。
【0041】
上記方法を用いれば、同じ杵と臼で常に滑沢剤と流動化剤との混合物と本発明の処方成分が交互に打錠されるので、常に滑沢剤の付着した杵と臼で処方成分が打錠され、処方成分中に滑沢剤を添加しなくても打錠障害を起こすことなく連続打錠が可能である。
【0042】
回収した一次成型物、すなわち滑沢剤と流動化剤との混合物の圧縮成型物は、そのまま廃棄してもよいが、粉砕して再利用した方が経済的にも好ましい。
【0043】
本発明の方法により得られた口腔内速崩壊性製剤は、さらに、それが有する強度、溶解性に悪影響を与えない程度に、一般に被覆製剤の製造において用いられるコーティング法によって被覆されていてもよい。
【0044】
以下、実験例および実施例によって、更に本発明を詳細に説明する。
【0045】
【実施例】
試験例1
白糖、マルトース、乳糖の各種糖類の10%(w/w)水溶液を、凍結乾燥機(共和真空技術製)を用いて凍結乾燥し、或いはパルビスミニスプレーGS31(ヤマト科学社製)を用いて噴霧乾燥し、各種非晶質糖類を調製した。ソルビトール、乳糖、エリスリトール、マンニトールの各種水溶性賦形剤8重量部と各非晶質糖類2重量部とを混合し、この混合物をF−9打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:10mm)を用い打錠した。得られた錠剤を、25℃、40%RH下で15時間エージングし、エージング前後の錠剤硬度およびエージング後の口腔内崩壊時間を測定した。その結果を表1に示した。
【0046】
【表1】
Figure 0003591801
【0047】
水溶性賦形剤として、ソルビトール、乳糖、エリスリトール、マンニトールのいづれを用いた場合においても、また、非晶質糖類として、白糖、マルトース、乳糖のいづれを用いた場合においても、エージングにより錠剤硬度は有意に上昇し、かつエージング後の錠剤は優れた口腔内崩壊性を有していた。
【0048】
試験例2
10%(w/v)白糖水溶液をパルビスミニスプレーGS31(ヤマト科学社製)を用いて噴霧乾燥し、非晶質白糖を調製した。非晶質白糖とマンニトールを図1に示した種々の混合比で混合し、この混合物をF−9打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:10mm)を用い、200mg/錠、硬度が1kgになるように打錠した。得られた錠剤を、25℃、20%RH下で10時間エージングし、エージング後の錠剤硬度を測定した。その結果を図1に示した。
【0049】
水溶性賦形剤と非晶質糖類の混合比を変化させることにより、エージングによる錠剤硬度の上昇率を変化させることができることが判った。
【0050】
実施例1
10%(w/v)白糖水溶液をパルビスミニスプレーGS31(ヤマト科学社製)を用いて噴霧乾燥し、非晶質白糖を調製した。非晶質白糖10重量部、塩酸イミダプリル5重量部、マンニトール185重量部を混合し、これをF−9打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:10mm)を用い、200mg/錠、打錠圧75kg/杵で打錠し、硬度0.5kgの錠剤を得た。この錠剤を、23℃、37%RH下で20時間エージングし、硬度3kgの口腔内速崩壊性錠を得た。この口腔内速崩壊性錠はPTP包装から取り出すのに充分な製剤強度を有しており、口腔内崩壊時間は約5秒であった。
【0051】
実施例2
5%(w/v)白糖水溶液を凍結乾燥機(共和真空技術製)を用いて凍結乾燥し、非晶質白糖を調製した。非晶質白糖40重量部、塩酸イミダプリル10重量部、マンニトール150重量部を混合し、これをF−9打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:10mm)を用い、200mg/錠、打錠圧50kg/杵で打錠し、硬度1kgの錠剤を得た。この錠剤を、23℃、35%RH下で20時間エージングし、硬度4kgの口腔内速崩壊性錠を得た。この口腔内速崩壊性錠はPTP包装から取り出すのに充分な製剤強度を有しており、口腔内崩壊時間は約10秒であった。
【0052】
実施例3
5%(w/v)マルトース水溶液を凍結乾燥機(共和真空技術製)を用いて凍結乾燥し、非晶質マルトースを調製した。非晶質マルトース40重量部、フマル酸ビソプロロール10重量部、ソルビトール200重量部を混合し、これをF−9打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:10mm)を用い、250mg/錠、打錠圧60kg/杵で打錠し、硬度0.5kgの錠剤を得た。この錠剤を、23℃、35%RH下で20時間エージングし、硬度4kgの口腔内速崩壊性錠を得た。この口腔内速崩壊性錠はPTP包装から取り出すのに充分な製剤強度を有しており、口腔内崩壊時間は約10秒であった。
【0053】
実施例4
10%(w/v)乳糖水溶液を凍結乾燥機(共和真空技術製)を用いて凍結乾燥し、非晶質乳糖を調製した。非晶質乳糖40重量部、マレイン酸トリメブチン10重量部、マンニトール150重量部を混合し、これをF−9打錠機(菊水製作所製、杵サイズ:10mm)を用い、200mg/錠、打錠圧130kg/杵で打錠し、硬度1.5kgの錠剤を得た。この錠剤を、22℃、33%RH下で15時間エージングし、硬度3kgの口腔内速崩壊性錠を得た。この口腔内速崩壊性錠はPTP包装から取り出すのに充分な製剤強度を有しており、口腔内崩壊時間は約20秒であった。
【0054】
実施例5
塩酸イミダプリル5重量部、エリスリトール185重量部を混合し、これを流動層造粒機(マルチプレックスMP−01、パウレック社製)を用いて流動下に品温を25℃前後に保ちながら白糖10重量部を10%(w/w)水溶液で噴霧して造粒後、引き続き流動層中で品温が40℃に達するまで温風を吹き込み乾燥させて造粒顆粒を得た。また、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム15重量部と流動化剤として結晶セルロース85重量部を混合し、滑沢剤と流動化剤の混合物を調製した。三層錠剤機(菊水製作所製、杵サイズ:直径10mm)を用い、第1の予備圧縮部位に滑沢剤と流動化剤との混合物を供給し(一次成型)、第2の予備圧縮部位には何も供給せず、主圧縮部位に上記顆粒を供給(二次成型)し、連続打錠した。一次成型物は200mg/錠、硬度が1kgになるよう打錠し、二次成型物は200mg/錠、硬度が1.5kgになるよう打錠した。得られた二次成型物を、22℃、35%RH下で15時間エージングし、硬度4kgの口腔内速崩壊性錠を得た。この口腔内速崩壊性錠はPTP包装から取り出すのに充分な製剤強度を有しており、口腔内崩壊時間は約20秒であった。
【0055】
実施例6
フマル酸ビソプロロール10重量部、乳糖180重量部を混合し、これを流動層造粒機(マルチプレックスMP−01、パウレック社製)を用いて流動下に品温を25℃前後に保ちながらグルコース10重量部を10%(w/w)水溶液で噴霧して造粒後、引き続き流動層中で品温が40℃に達するまで温風を吹き込み乾燥させて造粒顆粒を得た。また、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム15重量部と流動化剤として乳糖85重量部を混合し、滑沢剤と流動化剤の混合物を調製した。三層錠剤機(菊水製作所製、杵サイズ:直径10mm)を用い、第1の予備圧縮部位に滑沢剤と流動化剤との混合物を供給し(一次成型)、第2の予備圧縮部位には何も供給せず、主圧縮部位に上記顆粒を供給(二次成型)し、連続打錠した。一次成型物は150mg/錠、硬度が2kgになるよう打錠し、二次成型物は200mg/錠、硬度が0.5kgになるよう打錠した。得られた二次成型物を、22℃、37%RH下で20時間エージングし、硬度4kgの口腔内速崩壊性錠を得た。この口腔内速崩壊性錠はPTP包装から取り出すのに充分な製剤強度を有しており、口腔内崩壊時間は約20秒であった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、製剤強度の優れた口腔内速崩壊性製剤を、通常の圧縮成型機を用いて、少ない製造工程で得ることができる。
【0057】
また、本発明の方法において、実施の形態によっては、全く水を使用しないため(例えば、予め糖類を非晶質化した後、薬物、水溶性賦形剤と混合した場合)、水に不安定な薬物であっても製剤化が可能である。
【0058】
さらに、本発明の方法は、低圧力での圧縮成型後に、製剤強度を上昇させるため、口腔内速崩壊性製剤に限らず、圧力により失活し易い薬物、圧力により生菌の生存率が低下してしまうような乳酸菌などの腸内有用細菌の成型製剤への製剤化にも適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】種々の混合比率のマンニトール(水溶性賦形剤)と非晶質白糖の混合物を、硬度が1kgになるよう打錠し、得られた錠剤をエージングした際のエージング後の錠剤硬度を示した。

Claims (7)

  1. (1)薬物、(2)グルコース、フルクトース、白糖および乳糖から選ばれる1種または2種以上の非晶質化された糖類並びに(3)白糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトール及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種以上の水溶性賦形剤からなる混合物を圧縮成型得られる成型物を温度10〜40℃、湿度20〜75%RHの実質的に開放系の大気雰囲気下に〜72時間保持して製剤強度を向上させることを特徴とする口腔内速崩壊性製剤の製法。
  2. 滑沢剤と流動化剤との混合物を圧縮成型機で成型し、成型物を排出したのち、該圧縮成型機に(1)薬物、(2)非晶質化された類並びに(3)水溶性糖類及び水溶性糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上の水溶性賦形剤からなる混合物を供給して成型し、得られた成型物を温度10〜40℃、湿度20〜75%RHの実質的に開放系の大気雰囲気下に〜72時間保持して製剤強度を向上させることを特徴とする口腔内速崩壊性製剤の製法。
  3. 薬物、非晶質化された類並びに水溶性賦形剤からなる混合物が、造粒顆粒である請求項1または2記載の製法。
  4. 造粒顆粒が、薬物並びに白糖、乳糖、マンニトール、ソルビトール、キシリトールおよびエリスリトールから選ばれる1種または2種以上の水溶性賦形剤に、グルコース、フルクトース、白糖および乳糖から選ばれる1種または2種以上の糖類水溶液を添加もしくは噴霧して湿式造粒後、乾燥して得られ造粒顆粒である請求項3記載の製法。
  5. 薬物、非晶質化された糖類並びに水溶性賦形剤からなる混合物の圧縮成型における圧力が10〜800kg/杵である請求項1〜4のいずれか1項記載の製法。
  6. 薬物およびマンニトールに、白糖水溶液を添加もしくは噴霧して湿式造粒後、乾燥することにより、非晶質化された白糖を含有する造粒顆粒を得て、次いで該顆粒を圧縮成型後、温度10〜40℃、湿度20〜75%RHの実質的に開放系の大気雰囲気下に5〜72時間保持して製剤強度を向上させることを特徴とする口腔内速崩壊性製剤の製法。
  7. 薬物および乳糖に、白糖水溶液を添加もしくは噴霧して湿式造粒後、乾燥することにより、非晶質化された白糖を含有する造粒顆粒を得て、次いで該顆粒を圧縮成型後、温度10〜40℃、湿度20〜75%RHの実質的に開放系の大気雰囲気下に5〜72時間保持して製剤強度を向上させることを特徴とする口腔内速崩壊性製剤の製法。
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